液体噴射装置および液体噴射装置の液体払拭装置
【課題】払拭手段を移動方向へ移動させるだけで、払拭手段を液体噴射ヘッドに対して傾斜した状態で移動しながら確実に払拭作業が行え、しかも占有スペースを小さくすることができ、小型化が図れる液体噴射装置および液体噴射装置の液体払拭装置を提供すること。
【解決手段】液体噴射ヘッド30のノズル面61から液体を噴射するようになっている液体噴射装置10において、ノズル面61に対して移動方向に沿って移動することでノズル面61の液体を払拭するための払拭手段151ないし154と、ノズル面61の払拭をする払拭時には、払拭手段151ないし154を液体噴射ヘッド30の側面30Sに対して傾斜した状態で移動方向Dに沿って移動操作させ、ノズル面61の払拭をしない非払拭時には側面30Sに対して平行な状態となるように移動方向Dに沿って移動操作させるための移動操作手段138と、を備える。
【解決手段】液体噴射ヘッド30のノズル面61から液体を噴射するようになっている液体噴射装置10において、ノズル面61に対して移動方向に沿って移動することでノズル面61の液体を払拭するための払拭手段151ないし154と、ノズル面61の払拭をする払拭時には、払拭手段151ないし154を液体噴射ヘッド30の側面30Sに対して傾斜した状態で移動方向Dに沿って移動操作させ、ノズル面61の払拭をしない非払拭時には側面30Sに対して平行な状態となるように移動方向Dに沿って移動操作させるための移動操作手段138と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドのノズル面から液体を噴射するようになっている液体噴射装置および液体噴射装置の液体払拭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインク滴を吐出させて、所望の文字や図形等の画像を記録する。
このインクジェット式記録装置は、記録動作時において、記録ヘッドが記録媒体と近接するために、インク滴が記録媒体と衝突した際に発生するインクの飛び散りが記録ヘッドのノズル面に跳ね返りノズル面を汚染することがある。
【0003】
特にオンデマンド型のインクジェット式記録装置の記録ヘッドにおいては、インク滴の吐出がノズル近傍のインクへの微弱な加圧力によるために、インク滴の吐出エネルギーが小さく、記録媒体と数mm程度の間隔でしか配置されておらず、インクの飛び散りの跳ね返りがノズル面に付着し易い。しかしながら加圧力が小さいため一旦ノズル内の目詰まりが発生すると、この目詰まりを容易に自己復帰させることはできない。
【0004】
このため、記録ヘッドのノズルの目詰まりを予防あるいは回復するために、非印字動作中にノズル開口よりインクを吸引して目詰まりをしたインクを排出させるために、吸引作業が行われる。
この吸引を行った後にノズル面にインクが残留することがあり、ノズル面を汚染することがある。このような記録ヘッドのノズル面の汚染は、記録媒体の繊維や塵埃の付着を招き、記録ヘッドの長時間の使用においてノズルの目詰まりの原因となったり、インクの吐出不良や吐出時のインク滴の飛行曲がり等の悪影響を及ぼすことがあった。
このような問題を解決するために、ノズル面のインクを拭き取って除去して、インクの吐出不良を防ぐために、ワイピング用のブレードを有するクリーニング装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特許第3327318号公報(第3頁、図5,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のクリーニング装置では、各ブレードが駆動手段の軸に対して取り付けられている。ブレードは、駆動手段の軸が回転することにより角度を持たせることができる。そして記録ヘッドがキャリッジと共にブレードに対して移動することにより、ブレードはノズル開口列に対して斜めになるようにしてノズルプレート面を払拭できる。
ところが、このような構造のクリーニング装置を用いると、払拭作業開始前には、ブレードは必ず軸を中心として回転することで、ノズルプレートのノズル開口列に対して角度を形成する動作が必要である。このブレードは軸だけで回転可能に支えられているので、ブレードがノズル面を払拭する時には安定してノズル面に押し付けられながら支持することができない可能性がある。
また、各ブレードごとに駆動手段が設けられているので、ブレードの数が多くなるとクリーニング装置の構造が大型化しかつ複雑になる。
【0006】
各ブレードが記録ヘッドから離れた位置でブレードの角度を予めそれぞれ設定する必要があり、そのブレードの角度を設定するために予めインクジェット式記録装置の内部に大きなスペースが必要になる。このようなブレードの角度の設定用のスペースと各ブレードに駆動手段が設けられていることから、クリーニング装置が占めるスペースは大きく、クリーニング装置の小型化とインクジェット式記録装置の小型化が難しくなる。
そこで本発明は上記課題を解消し、払拭手段を移動方向へ移動させるだけで、払拭手段を液体噴射ヘッドに対して傾斜した状態で移動しながら確実に払拭作業が行え、しかも占有スペースを小さくすることができ、小型化が図れる液体噴射装置および液体噴射装置の液体払拭装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明にあっては、液体噴射ヘッドのノズル面から液体を噴射するようになっている液体噴射装置において、前記ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで前記ノズル面の前記液体を払拭するための払拭手段と、前記ノズル面の払拭をする払拭時には、前記払拭手段を前記液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動操作させ、前記ノズル面の払拭をしない非払拭時には前記側面に対して平行な状態となるように前記移動方向に沿って移動操作させるための移動操作手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置により、達成される。
払拭手段は、ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで、ノズル面の液体を払拭する。
移動操作手段は、ノズル面の払拭をする払拭時には、払拭手段を液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で移動方向に沿って移動操作させる。そして移動操作手段は、ノズル面を払拭しない非払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対して平行な状態となるように移動方向に沿って移動操作させる。
これにより、移動操作手段は、払拭手段を移動方向に沿って液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で移動操作させるだけで、ノズル面を払拭手段により確実に払拭することができる。払拭手段が傾斜した状態で移動させることにより、払拭手段がノズル面から受ける払拭時の最大負荷の低減および負荷の変動を小さくすることができる。また払拭時のインクの飛び散りの方向性を予め持たせることができる。
ノズル面を払拭しない非払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対して平行な状態となるようにすることができるので、払拭しない待機時には、払拭手段は傾斜しておらず側面に平行であるので、その分払拭手段の占有スペースを小さくすることができる。
したがって、払拭手段は液体噴射ヘッドに対し傾斜した状態で移動しながら確実にノズル面を払拭でき、しかも占有スペースを小さくして液体の噴射装置の小型化が図れる。
【0008】
前記移動操作手段は、回転することで各前記払拭手段の前記保持部材を前記移動方向に沿って移動させる第1送り部材と第2送り部材と、前記第1送り部材と前記第2送り部材を同期して回転させる駆動部と、を有して、前記第1送り部材と前記第2送り部材では、前記移動方向に関して前側部分と後側部分に形成された第1送りねじ部分の第1送りピッチが、前記第1送り部材と前記第2送り部材とで異なり、前記前側部分と前記後側部分の間の中央部分に形成された第2送りねじ部分の第2送りピッチは、前記第1送り部材と前記第2送り部材で同じになるように設定されており、前記第1送り部材の前記第2送りねじ部分と前記第2送り部材の前記第2送りねじ部分が、各前記払拭手段を傾斜した状態で前記移動方向に沿って順次移動させることが望ましい。
このように構成されているので、移動操作手段の第1送り部材と第2送り部材は、回転することで各払拭手段の保持部材を移動方向に沿って移動させるものである。駆動部は、第1送り部材と第2送り部材を同期して回転させる。
これにより、駆動部の第1送り部材と第2送り部材を同期して回転させることにより、各払拭手段の保持部材は、スムーズに送ることができる。しかも、第1送り部材と第2送り部材では、移動方向に関して前側部分と後側部分に形成された第1送りねじ部分の第1送りピッチが、第1送り部材と第2送り部材とで異なっていて、中央部分に形成された第2送りねじ部分の第2送りピッチは、第1送り部材と第2送り部材で同じである。そして、第1送り部材の第2送りねじ部分と第2送り部材の第2送りねじ部分が払拭手段を傾斜した状態で移動方向に沿って順次移動させるようになっている。
これにより、払拭手段は、第1送り部材の前側部分の第1送りねじ部分と第2送り部材の前側部分の第1送りねじ部分により移動している間に平行状態から傾斜して液体噴射ヘッドに当たる。つまり払拭手段は斜めになって液体噴射ヘッドに当たり、払拭手段は一端側から徐々にノズル面に当たり始めるので負荷変動が小さくなる。また、拭き終わりの時には、払拭手段は第1送り部材の後側部分の第1送りねじ部分と第2送り部材の後側部分の第1送りねじ部分により斜め状態で液体噴射ヘッドから離れていくため、一気に斜め状態が復元しないので、液体の飛散り量自体も減る効果がある。つまり払拭手段は、液体噴射ヘッドから離れる時は斜めのままであり、離れきってから平行になる。
【0009】
前記払拭手段は、前記ノズル面を払拭するブレードと前記ブレードを保持する保持部材とを有しており、複数の前記払拭手段が前記移動方向に沿って並べられていることが望ましい。
このように構成されているので、各払拭手段のブレードはノズル面を払拭する。各払拭手段の保持部材はブレードを保持する。各払拭手段は移動方向に沿って並べられている。
これにより、払拭手段の数が増えても、各払拭手段は移動方向に沿って並べて配列するだけで、払拭手段の占有スペースを小さくして装置の大型化を避けることができる。
【0010】
各前記払拭手段の前記ブレードは、前記ノズル面のノズル開口列にそれぞれ対応して形成されていることが望ましい。
このように構成されているので、各払拭手段のブレードは、ノズル面のノズル開口列にそれぞれ対応して形成されている。
これにより、各払拭手段を選択して使用することにより、ノズル面の任意のノズル開口列のみを選択的に払拭することができる。
【0011】
各前記払拭手段の前記移動方向は、前記液体噴射ヘッドの主走査方向と交差していることが望ましい。
このように構成されているので、払拭手段の移動方向は、液体噴射ヘッドの主走査方向と交差している。
これにより、液体噴射ヘッドのノズル開口列の払拭を不要とする場合には、液体噴射ヘッドは主走査方向に移動して払拭領域外に出せば、各払拭手段は単に移動方向へ移動するだけでありノズル面を払拭することはない。
【0012】
前記移動操作手段は、回転することで前記払拭手段を前記移動方向に沿って移動させる第1送り部材と第2送り部材と、前記第2送り部材の回転動作に対して前記第1送り部材の回転動作を遅らせることで、前記ノズル面の払拭をする払拭時には前記払拭手段を前記傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動させる駆動部と、を有していることが望ましい。
このように構成されているので、移動操作手段の第1送り部材と第2送り部材は、回転することで払拭手段を移動方向に沿って移動させる。駆動部は、第2送り部材の回転動作に対して第1送り部材の回転動作を遅らせることで、ノズル面の払拭をする払拭時には払拭手段を傾斜した状態で移動方向に沿って移動させる。
これにより、払拭手段はノズル面を払拭する払拭時には、傾斜した状態で移動方向に沿って移動することで、ノズル面を傾斜した状態で払拭することができる。
【0013】
上記目的は、本発明にあっては、液体を噴射するための液体噴射ヘッドのノズル面に付着した前記液体を払拭するために液体噴射装置に設けられる液体払拭装置において、前記ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで前記ノズル面の前記液体を払拭するための払拭手段と、前記ノズル面の払拭をする払拭時には、前記払拭手段を前記液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動操作させ、前記ノズル面の払拭をしない非払拭時には前記側面に対して平行な状態となるように前記移動方向に沿って移動操作させるための移動操作手段と、を備えることを特徴とする液体払拭装置により、達成される。
これにより、移動操作手段は、払拭手段を移動方向に沿って液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で移動操作させるだけで、ノズル面を払拭手段により確実に払拭することができる。払拭手段が傾斜した状態で移動させることにより、払拭手段がノズル面から受ける払拭時の最大負荷の低減および負荷の変動を小さくすることができる。また払拭時のインクの飛び散りの方向性を予め持たせることができる。
ノズル面を払拭しない非払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対して平行な状態となるようにすることができるので、払拭しない待機時には、払拭手段は傾斜しておらず側面に平行であるので、その分払拭手段の占有スペースを小さくすることができる。
したがって、払拭手段は液体噴射ヘッドに対し傾斜した状態で移動しながら確実にノズル面を払拭でき、しかも占有スペースを小さくして液体噴射装置の小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の液体噴射装置の実施形態であるインクジェット式記録装置10を示している。
図1に示すインクジェット式記録装置10は、インクジェットプリンタとも呼んでいる。インクジェット式記録装置10は、本体部1を有している。この本体部1は、ガイドレール17、プラテン12、キャリッジ14、インク吸引装置20、記録ヘッド30、インク払拭装置130を備えている。記録ヘッド30は、印刷ヘッドとも言う。このインク吸引装置20は廃液システムの一部である。
【0015】
このインクジェット式記録装置10は、いわゆるオンキャリッジ形の記録装置であり、キャリッジ14の上部には、複数のインクカートリッジ2,3,4,5が着脱可能に装着できる。キャリッジ14の下部には、記録ヘッド30が設けられている。キャリッジ14は、ベルト15を介してモータ16に接続されている。ベルト15はプーリ16A,16Bに掛けてある。モータ16が作動することによって、キャリッジ14はガイドレール17に沿ってプラテン12の軸方向である主走査方向T(T1,T2)に往復走行して位置決め可能である。
【0016】
図1の本体部1の右側には、ワイピングポジションWPと待機ポジション18が設けられている。ワイピングポジションWPは払拭作業ポジションとも言い、あるいはホームポジションとも呼ぶことができる。
ワイピングポジションWPでは、記録ヘッド30のノズルプレート面61が、インク吸引装置20により吸引されたり、あるいはインク払拭装置130によりノズルプレート面61に付着しているインクの払拭を行うためのポジションである。
待機ポジション18は、記録ヘッド30からのインク払拭あるいはインクの吸引を行わない場合の待機位置である。
図1に示すインク吸引装置20は、液体吸引装置の一例であり、キャッピングシステムもしくはキャッピング手段とも呼ぶことができる。
【0017】
インク吸引装置20は、以下の2つの機能を有する。すなわち、インク吸引装置20は、長時間放置された時に記録ヘッド30のノズル開口のインクの乾燥を防止する保湿機能と、吸引ポンプ19からの負圧をノズル開口に作用させてノズル開口からインクを強制的に吸引して排出させる吸引機能を備える。
各インクカートリッジ2,3,4,5の各インクは液体の一例である。図1に示すインク払拭装置130は、液体払拭装置の一例であり、インク吸引装置20とほぼ同じ位置にある。
【0018】
図2は、図1に示すインクジェット式記録装置10の電気的な接続例を示している。インクジェット式記録装置10の制御装置7は、ローカルプリンタケーブルまたは通信ネットワークを介してホストコンピュータ40のプリンタドライバ41に接続されている。プリンタドライバ41は、インクジェット式記録装置10の各構成要素に対して印刷やノズルプレート面61のインク払拭動作あるいはインク吸引動作を実行させるためのコマンドを送るソフトウェアを搭載している。
【0019】
図2に示すインクジェット式記録装置10は、制御装置7の他に、センサー8、インク吸引装置20、インクカートリッジ2,3,4,5、記録ヘッド30、キャリッジ14、用紙搬送機構15A、インク払拭装置130を含んでいる。
図1の実施形態では、複数のインクカートリッジ2ないし5が、キャリッジ14の上に直接搭載されているが、本発明の実施形態は、これに限らずインクカートリッジ2ないし5をキャリッジとは別の位置に搭載している、いわゆるオフキャリッジ形のインクジェット式記録装置を採用しても勿論構わない。
図2の用紙搬送機構15Aは、図1の用紙29をプラテン12上を搬送するようになっている。用紙29は記録媒体の一種である。
【0020】
図3と図4は、図1に示す記録ヘッド30とインク吸引装置20の構造例を示す断面図である。
インクジェット式記録装置10は、特にカラープリンタとして用いられる場合には、この記録ヘッド30は、互いに種類の異なる複数種類のインクを吐出するために、インクの種類ごとに独立したインク経路50を有している。
各インクカートリッジ2ないし5からのインクは、インク供給針50Aを介してインク経路50に流入する。インクの種類ごとに独立したインク経路50は、それぞれ複数の圧力室51に接続されている。各圧力室51には、各ノズル開口列54A,54B,54C,54Dが接続されている。
ノズルプレート62はノズルプレート面61を有していて、このノズルプレート面61には複数のノズル開口列54A〜54Dが設けられている。圧力室51から押し出されたインク滴が、ノズル開口列54A〜54Dのノズル開口55A〜55Dから吐出される。
【0021】
図3と図4に示すインク吸引装置20は、ノズルプレート面61に密接もしくは圧着してノズル開口を吸引するためのものである。インク吸引装置20は、キャップ本体80と複数の吸収材90を有している。キャップ本体80は箱状であり、上部開口91を有している。キャップ本体80の底部92からは、隔壁81が突出して設けられている。キャップ本体80の4辺の側面部80Aと隔壁81の間には、吸収材90が収容されている。各吸収材90は、各ノズル開口列54A〜54Dを含むノズルプレート面61の領域に対応している。
【0022】
吸収材90は、インクを吸収可能な材料により作られていて、例えばポリビニルアルコール(PVA)のスポンジにより作ることができる。吸収材90は、好ましくは親水性に優れて、微細な連続した気孔構造を有しており、インクの吸収能力を有している。
この吸収材90は、図示しない押さえ部材により吸収材90を押さえて保持する構造を採用できる。
キャップ本体80の底部92は、吸引ポンプ19に接続されている。吸引ポンプ19は廃インクタンク100に接続されている。この廃インクタンク100は吸引ポンプ19によりキャップ本体80側から吸引されてくるインクを廃棄するためのタンクである。
【0023】
図3は、インク吸引装置20がノズルプレート面61から離れた待機状態を示している。図4では、インク吸引装置20はノズルプレート面61に密着もしくは圧着されて、ノズルプレート面61を封止している状態(吸引状態もしくは保湿状態)を示している。
記録ヘッド30内のインク中に気泡が混入したり、インク経路50や圧力室51内に増粘したインクが存在すると、インクの正常な流れが阻害されて、正常なインクの吐出が行えないことがある。この場合には、図2に示すインク吸引装置20が用いられ、このインク吸引装置20によるインクの強制排出が必要となる。
【0024】
また、インクジェット式記録装置10を最初に使用する際の開始時や、インクカートリッジを別の種類のインクカートリッジに交換した場合では、図3の記録ヘッド30内のインク経路50の中にインクを充填する必要がある。このような初期のインクの充填に際しても、インク吸引装置20が使用され、このインク吸引装置20を用いることで、図3の記録ヘッド30のノズル開口55A〜55Dから空気およびインクが、強制的に吸引されてノズル開口55A〜55Dから排出される。
【0025】
図5は、ノズルプレート面61におけるノズル開口列54A〜54Dの配列例を示している。異なるインクの種類とは、見かけ上の色の違いにとどまらず、インクの構成成分の種類や比率が異なることを意味する。各ノズル開口列54A〜54Dは、例えば数10から数1000のノズル開口55A〜55Dから構成されている。
【0026】
図6は、本発明のインクジェット式記録装置の記録ヘッド30の内部構造例を示している。上述したインクカートリッジから供給されるインクは、インク経路50を通って圧力室51へ供給される。印刷の際には、圧力発生素子としての圧電振動子39が伸縮動作することによって、圧力室51の容積を変化させて、圧力室51内のインクに圧力変動を生じさせる。これによって、ノズル開口55A〜55Dからインク滴が吐出できる。圧電振動子39は各ノズル開口55A〜55Dに対応して設けられている。
【0027】
図1に示すキャリッジ14は、記録ヘッド30とともに、ガイドレール17に沿って主走査方向Tに沿って往復移動可能である。キャリッジ14とともに記録ヘッド30は、ヘッド移動方向T1に移動することにより、図1に示すワイピングポジションWPと待機ポジション18に位置決めすることができる。
図1の記録ヘッド30は、液体噴射ヘッドの一種であるが、この記録ヘッド30はキャリッジ14の下面側に設けられている。記録ヘッド30の下面は、ノズルプレート面61である。このノズルプレート面61は、ノズル面の一例であり、図5にはノズルプレート面61の形状例を示している。ノズルプレート面61は、ノズルプレート62の下面である。
ノズルプレート62は、上述したような複数のノズル開口列、図5の図示例では4列のノズル開口列54A〜54Dを有している。各ノズル開口列54A〜54Dは、図5に示すT方向とは直交するU方向に沿っており、T方向に沿って同じ間隔で平行に形成されている。
【0028】
次に、図1に示すインク払拭装置130の構造例について説明する。
図7と図8はインク払拭装置130の構造例を示す斜視図である。図7は、払拭手段151ないし154が待機位置に待機している状態を示している。図8は、最も前側に位置している払拭手段151が記録ヘッド30のノズルプレート面61を傾斜した状態で払拭を始める様子を示している。
【0029】
図7と図8を参照すると、インク払拭装置130は、概略的にはフレーム135、複数の払拭手段151ないし154、移動操作手段138を有している。
図7に示す払拭手段151ないし154は、ほぼ同様の構造のものである。払拭手段151は、ブレード161と保持部材171を有している。同様にして払拭手段152は、ブレード162と保持部材172を有している。払拭手段153はブレード163と保持部材173を有している。そして払拭手段154は、ブレード164と保持部材174を有している。
【0030】
ブレード161ないし164は、図9に示すように記録ヘッド30のノズルプレート面61の払拭領域WA1ないしWA4にそれぞれほぼ対応した形状を有している。ブレード161は、払拭領域WA1を傾斜して払拭し、ブレード162は払拭領域WA2を傾斜して払拭し、ブレード163は払拭領域WA3を傾斜して払拭し、そしてブレード164は払拭領域WA4を払拭するためのものである。
【0031】
払拭領域WA1はノズル開口列54Aを含む領域であり、払拭領域WA2はノズル開口列54Bを含む領域である。払拭領域WA3はノズル開口列54Cを含む領域であり、払拭領域WA4はノズル開口列54Dを含む領域である。
図7〜図9に示すブレード161ないし164は、弾性変形可能なたとえばゴムやエラストマーあるいはプラスチックなどにより作ることができる。ブレード161ないし164は、払拭領域WA1ないしWA4に対応して払拭できるようにするために、主走査方向Tに関してそれぞれ位相がずれた形状になっている。ブレード161ないし164は、図7と図8に示すようにそれぞれ保持部材171ないし174に対して着脱可能に固定されている。
【0032】
図8に示すように、各ブレード161ないし164は、記録ヘッド30の側面(前面とも言う)30Sに対して傾斜した状態でノズルプレート面61を払拭する際に、図9に示すブレード161ないし164は、それぞれ払拭領域WA1ないしWA4を確実に払拭できるようにするために、各ブレード161ないし164は払拭幅WRを有している。払拭幅WRは、払拭領域WA1ないしWA4の主走査方向Tに関する幅Hに比べてやや大きく設定されている。
【0033】
図10は、ブレード161ないし164が保持部材171ないし174に対して着脱可能に固定できる構造例を示している。カバー175Cと保持部材171ないし174は、それぞれピン176Pを用いて固定することができる。この場合にブレード161ないし164の基部190が、カバー175Cと保持部材171ないし174の間に挟まれることで固定できる。保持部材171ないし174およびカバー175Cは、たとえばプラスチックにより作ることができる。
【0034】
図7の保持部材171ないし174は、ブレード161ないし164をそれぞれ保持するために細長い形状を有している。そして図7と図8に示すように保持部材171ないし174は、主走査方向Tに平行になるように待機位置において移動方向Dに対して密接して並べられるようにして配置することができる。つまり、払拭手段151〜154がノズルプレート面61を払拭しない非払拭時には、各払拭手段151〜154は記録ヘッド30の側面30Sに平行になるように待機位置において待機させることができる。
これにより、払拭手段の数が1つの場合であっても、あるいは払拭手段の数が多くなっても、複数の払拭手段が占有するスペースを極力小さくできる。したがって、インク払拭装置130とインクジェット式記録装置10の小型化が図れる。移動方向Dは、記録ヘッド30およびキャリッジ14を主走査方向Tに対して交差する方向、すなわちこの例では直交する。
【0035】
図7に示すフレーム135は、ワイピングポジションWPに配置されていて、フレーム135の上には、キャリッジ14と記録ヘッド30が待機ポジション18からワイピングポジションWPまで移動される。記録ヘッド30はワイピングポジションWPにおいてフレーム135とインク吸引装置20の真上に位置している。
記録ヘッド30とキャリッジ14は、主走査方向TのT1方向に移動することで待機ポジション18からワイピングポジションWPに移動できる。その反対にキャリッジ14と記録ヘッド30は、ワイピングポジションWPから待機ポジション18に向かってT2方向に退避移動することも可能である。
【0036】
次に、図7に示すインク払拭装置130の移動操作手段138について説明する。
移動操作手段138は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182および駆動部140を有している。
複数の払拭手段151ないし154は、記録ヘッド30のノズルプレート面61に対して移動方向Dに沿ってそれぞれ独立して移動することで、ノズルプレート面61に付着しているインクを払拭するものである。
【0037】
移動操作手段138は、ノズルプレート面61の払拭を行う払拭時には、複数の払拭手段151ないし154の移動間隔を相互に持たせながら、複数の払拭手段151ないし154を記録ヘッド30の側面30Sに対して傾斜した状態で移動方向Dに沿って順次移動操作させる。
しかも、移動操作手段138は、ノズルプレート面61を払拭しない非払拭時には側面30Sに対して各払拭手段151〜154を平行な状態になるように移動方向Dに沿って移動操作させる。
第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182は、フレーム135の側壁135A,135Bの間において回転可能に水平かつ移動方向Dに沿って平行に支持されている。第1リードスクリュ181は第1送り部材に相当し、第2リードスクリュ182は第2送り部材に相当する。
【0038】
図7と図11を参照して、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の構造例について説明する。
第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182は似た構造のものである。第1リードスクリュ181は、第1送りねじ部分191,193および第2送りねじ部分192を有している。同様にして第2リードスクリュ182は、第1送りねじ部分201,203および第2送りねじ部分202を有している。
第1送りねじ部分191,193は、移動方向Dに関して第1リードスクリュ181の前側部分と後側部分に形成されたものである。第2リードスクリュ182の第1送りねじ部分201と203は、移動方向Dに関して第2リードスクリュ182の前側部分と後側部分に形成された部分である。
【0039】
第2送りねじ部分192は、第1送りねじ部分191,193の間に形成されていて、前側部分と後側部分の間の中央部分に形成されている。同様にして第2送りねじ部分202は、第1送りねじ部分201,203の間に形成されていて、前側部分と後側部分の間の中央部分に形成されている。
第1送りねじ部分191,193の第1送りピッチは、第2送りねじ部分192の第2送りピッチよりも小さく設定されている。同様にして第1送りねじ部分201,203の第1送りピッチは、第2送りねじ部分202の第2送りピッチよりも小さく設定されている。
【0040】
図12(A)と図12(B)は、図11の第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の距離に対する送りピッチの変化例を示している。図12(B)に示すように、第2リードスクリュ182の送りピッチは、第1リードスクリュ181の送りピッチに比べて、途中から早い時点で大きくなり、いったん一定値になって、その後、第1リードスクリュ181の送りピッチが第2リードスクリュ182の送りピッチに比べて遅い時点まで大きい。
【0041】
特徴的なのは、前側部分と後側部分に形成された第1送りねじ部分191,193,201,203の第1送りピッチが、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182とでは異なっていることである。そして、中央部分に形成された第2送りねじ部分192,202の第2送りピッチは、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182で同じである。
このような第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の構成にすることで、各払拭手段151〜154は、次のようにして移動操作される。各払拭手段151〜154が第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の前側部分の第1送りねじ部分191,201により移動方向Dに移動している間に平行状態から傾斜して記録ヘッド30のノズルプレート面61に当たる。つまり払拭手段は斜めになって記録ヘッド30に当たるので、払拭手段のブレード161〜164は一端側から徐々にノズルプレート面61に当たり始めるので、負荷変動が小さくなる。
そして、各払拭手段151〜154は、同じ送りピッチの第2送りねじ部分192,202により傾斜した状態のままノズルプレート面61を払拭していく。
【0042】
次に、払拭手段151〜154がノズルプレート面61を拭き終わる時には、払拭手段151〜154は後側部分の第1送りねじ部分193,203により、斜め状態で記録ヘッド30から離れていくため、一気には斜め状態が平行状態へ復元しない。このため、記録ヘッド30から払拭手段151〜154が離れる時には斜めのままであり、離れきってから主走査方向Tに平行な状態になる。
各払拭手段151〜154の傾斜角度は、図8においてθで示している。この傾斜角度θは、主走査方向Tと平行なE−E線と、そのE−E線に交わるF−E線とが形成する角度である。F−E線は、移動中の払拭手段151〜154の長手方向である。
【0043】
このようにして、払拭手段151ないし154は、図7に示す待機時および払拭終了後の状態において、主走査方向Tに平行に、すなわち記録ヘッド30の側面30Sに平行な状態にし、かつ払拭手段151ないし154がノズルプレート面を図8に示すように傾斜して払拭できるようにするために、図12(A)に示すような送りピッチの具体的な例を採用している。
すなわち、第1リードスクリュ181は、たとえば前側部分の第1送りねじ部分191の送りピッチはたとえば0.8mmである。第1リードスクリュ181の第2送りねじ部分192の送りピッチは、たとえば7.2mmと7.2mmである。第1リードスクリュ181の後側部分の第1送りねじ部分193の送りピッチは、たとえば3.36mmと0.8mmである。
これに対して、第2リードスクリュ182の前側部分の第1送りねじ部分201の送りピッチは、たとえば0.8mmと3.36mmである。第2リードスクリュ182の第2送りねじ部分202の送りピッチは、7.2mmと7.2mmである。第2リードスクリュ182の後側部分の第1送りねじ部分203の送りピッチは、たとえば0.8mmである。
【0044】
このように第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の送りピッチを少し異なるように設定することにより、払拭時には第2リードスクリュ182が、第1リードスクリュ181に比べて図8に示すように各払拭手段151ないし154を先行して移動方向Dに送ることができる。したがって、各払拭手段151ないし154は、傾斜角度θで傾斜した状態で各ブレード161ないし164はノズルプレート面61を移動方向Dに移動しながら払拭していくことができる。その後、払拭手段がノズルプレート面を払拭しないので、第1リードスクリュ181が第2リードスクリュ182に比べて各払拭手段151ないし154を先行して移動方向Dに送るので、各払拭手段151ないし154は記録ヘッド30の側面30Sに平行になる。
【0045】
各払拭手段151ないし154がノズルプレート面61を傾斜した状態で払拭する。すなわち、払拭手段151ないし154のブレード161ないし164が、ノズルプレート面61の図9に示すノズル開口列54Aないし54Dに対して傾斜した状態で払拭できるようにすると、次のようなメリットがある。
ブレード161ないし164が、対応するノズル開口列に対してそれぞれ予め設定した傾斜角度θにより斜めに払拭できることから、傾斜角度を設けない場合に比べて、各ブレードがノズルプレート面から受ける最大負荷の低減を図ることができる。
また、各ブレードにおける払拭時の負荷変動を少なくすることができるので、スムーズな払拭作業が行える。そして斜めに払拭手段が移動することにより、ノズルプレート面のワイピング時のインクは、インク収容部側へ方向性を持たせて飛び散らせることができるのである。
【0046】
次に、図7と図8に示す移動操作手段138の駆動部140について説明する。駆動部140は、図に示すように第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182を同期して回転駆動させるための装置である。駆動部140は、フレーム135の側壁135B側に設けられている。
【0047】
駆動部140は、歯付きベルト141、ギア142、ギア143、ガイドローラ144、ギア145、ギア146、ギア147、ギア147Aおよびピニオン148およびモータ149を有している。モータ149は制御装置7の指令により動作することができる。このモータ149は、たとえばステッピングモータを使用できる。
【0048】
歯付きベルト141は、ギア142、ギア143、ギア145,146にわたって掛けてある。歯付きベルト141はタイミングベルトとも呼んでいるが、歯付きベルト141に対しては、外側からガイドローラ144を押し付けることにより、歯付きベルト141のテンションを確保する。
ギア142は、第2リードスクリュ182の後端部側に固定されている。もう1つのギア146は第1リードスクリュ181の後端部側に固定されている。第2リードスクリュ182の後端部と第1リードスクリュ181の後端部は側壁135Bに対して回転可能に取り付けられている。第2リードスクリュ182の先端部と第1リードスクリュ181の先端部は、側壁135Aに対して回転可能に取り付けられている。ギア143はサポート150により回転可能に支持されている。ギア145は側壁135Bに対して回転可能に支持されている。ピニオン148は、モータ149の出力軸に固定されている。ピニオン148はギア147Aを介してギア147に対して駆動力を伝達できるようになっている。ギア146,147は一体形のものである。
【0049】
これにより、モータ149が作動すると、ピニオン148の回転によりギア147A,ギア147および歯付きベルト141を介して、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して同じ方向に回転できるようになっている。このように第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して同じ方向に回転駆動できることから、払拭手段151ないし154の保持部材171ないし174は、移動方向Dに沿って移動する時に、所謂こじり現象を生じることなくスムーズに送ることがでできる。
【0050】
図13は、図7におけるA1から見たインク払拭装置130の構造を示し、図14は図7のA2から見たインク払拭装置130の構造を示している。
図7に示す払拭手段151ないし154の保持部材171ないし174は、ほぼ同様な形状であり、図15に示すようなガイド部175A,175と中央部176を有している。ガイド部175A,175は、中央部176の両端位置にそれぞれ設けられている。中央部176は、ブレードを保持するものである。ガイド部175Aは、第1リードスクリュ181を通す部分であり、ガイド部175は第2リードスクリュ182を通す部分である。図15のガイド部175は断面円形状を有していて、ガイド部175の中には第2リードスクリュ182が通っている。第2リードスクリュ182の溝192Aには、ピン220が嵌り込んでいる。このピン220はガイド部175の穴175Hに嵌り込んでいる。
【0051】
これに対してガイド部175Aは、図15に示すように断面で見て楕円形状を有している。ピン220はガイド部175Aの穴175Iに嵌り込んでいて、このピン220は第1リードスクリュ181の溝192Aに嵌り込んでいる。第1リードスクリュ181は、ガイド部175Aの空間175P内に入っている。
【0052】
ガイド部175Aの下部には、ガイドピン885が突出して設けられている。このガイドピン885は、ガイドレール880の溝891に嵌り込んでいる。このガイドレール880は、図7に示すように、第1リードスクリュ181と平行にしかも第1リードスクリュ181の下部において移動方向Dに沿って設けられている。このため各保持部材171ないし174は、ガイドピン885を中心として図16と図17に示す揺動可能方向RRに回転できる。
これにより、ガイド部175が第2リードスクリュ182によりガイド部175Aに比べて図15の紙面垂直下方向に先行して移動した場合に、保持部材171ないし174は、ガイドピン885を中心として図8に示すように傾斜角度θ傾斜した状態でガイドレール880にガイドされながら移動方向Dに沿ってスムーズに移動することができる。
【0053】
図17は、ピン220の先端部220Aが、第1リードスクリュ181の溝192Aに嵌っている様子を示している。このピン220が溝192Aに嵌り込む構造は、第2リードスクリュ182においても同様である。
これによって、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して回転することにより、保持部材171ないし174を移動方向Dおよびその反対方向に直線移動させることができる。
【0054】
図14において、キャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPに位置決めされると、ノズルプレート面61は第2送りねじ部分192,202の間の領域の上方に位置される。ノズルプレート面61に対応するようにしてインク吸引装置20のキャップ本体80が配置されている。図7に示すようにインク吸引装置20のキャップ本体80と昇降手段250は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の下側であって、かつこれらの間の位置に配置されている。
キャップ本体80は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の間で昇降操作できるメリットがある。そしてキャップ本体80と昇降手段250がインク払拭装置130内に配置できるので、インクジェット式記録装置の小型化が図れる。
【0055】
次に、図18を参照しながら、図7に示すインク払拭装置130の動作例について説明する。
図18は、図7に示すブレード161ないし164によるノズルプレート面61のワイピング動作の手順の例を示している。
このワイピング動作を行う前に、ノズルプレート面61は、図3と図4に示すようにインク吸引動作を行う必要がある。図3と図4に示すインク吸引装置20は、ノズル開口列54Aないし54Dに対応して選択的に吸引動作することができる。すなわち、吸引ポンプ19が作動することにより、ノズル開口列54Aないし54Dに対応するキャップ本体80内を吸引することで選択的にノズル開口列54Aないし54Dの1つまたは複数を吸引することができる。
吸引したノズル開口列に対応するノズルプレート面61の領域は、ワイピング動作を行う必要があるが、吸引する必要の無かったノズル開口列に対応するノズルプレート面61の領域はワイピング動作をする必要が無い。
【0056】
たとえば図4に示すキャップ本体80がすべてのノズル開口列54A〜54Dを吸引動作した場合には、図9においてノズルプレート面61の払拭領域WA1ないしWA4全てを払拭する必要があり、図18のワイピング動作図に従って次のように行う。
まず図7に示すようにキャリッジ14と記録ヘッド30が待機ポジション18側からワイピングポジションWPへT1方向に移動する。これによって図13と図14に示すようにノズルプレート面61は移動操作手段138の上部に位置される。制御装置7がモータ149に指令を与えるとモータ149が駆動する。これによって、駆動部140は第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182を同期して回転させる。
【0057】
すでに払拭手段151ないし154は、第1送りねじ部分191,201において並列してかつ密接して待機して配列されている。したがって払拭手段151〜154が移動方向Dに移動を開始する。そして払拭手段151の保持手段171は第1送りねじ部分191,201から第2送りねじ部分192,202に移っていくと、最も前の払拭手段151が、あとの払拭手段152〜154よりも先に早く移動方向Dに移動してゆく。そして払拭手段151は第2送りねじ部分192,202から第1送りねじ部分193,203側に送られていく。
【0058】
このようにして、図18のステップST1では、第1のブレード161によるワイピングが必要である場合には、キャリッジ14と記録ヘッド30がステップST2においてワイピングポジションWPへ移動した状態で、ステップST3においてモータ149が所定のステップ数回転されて、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して回転される。これによって、図9に示すようにブレード161は対応するノズル開口列54Aを含む払拭領域WA1のみを、図19(A)に示すようにして側面30Sに平行な状態から傾斜して払拭して、払拭した後に再び平行な状態に戻る。
【0059】
次に、図18のステップST5では、第2のブレード162にワイピングが必要であるので、ステップST6において、キャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPに位置される。そしてモータ149が、ステップST7において所定ステップ数回転することにより、2番目の払拭手段152が、3番目と4番目の払拭手段153,154よりも先に早く移動方向Dに移動して、図9に示すブレード162は払拭領域WA2のみを、図19(B)に示すようにして側面30Sに平行な状態から傾斜して払拭して、払拭した後に再び平行な状態に戻る。
【0060】
図18のステップST9では、第3のブレード163によるワイピングが必要であるので、ステップST10においてキャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPへ移動する。そしてステップST11においてモータ149が所定ステップ数回転することにより、3番目の払拭手段153が4番目の払拭手段154よりも早く移動方向Dに移動して、図9のブレード163が払拭領域WA3のみを、図19(C)に示すようにして側面30Sに平行な状態から傾斜して払拭して、払拭した後に再び平行な状態に戻る。
【0061】
図18のステップST13において、第4のブレード164によるワイピングが必要であるので、ステップST14においてキャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPへ移動する。そしてステップST15ではモータ149が所定ステップ数回転することにより、4番目の払拭手段154が移動方向Dに移動して図9のブレード164が払拭領域WA4のみを、図19(D)に示すようにして側面30Sに平行な状態から傾斜して払拭して、払拭した後に再び平行状態に戻る。
このようにして、図9に示す全ての払拭領域WA1ないしWA4が、別々の形状のブレード161ないし164の移動方向Dに沿った移動により、ブレードが傾斜した状態で順次確実に払拭することができる。
【0062】
また、別の払拭動作例として、たとえば図9に示す払拭領域WA1と払拭領域WA3のみを払拭する必要があり、払拭領域WA2とWA4は払拭する必要が無い場合には、次のように行う。
図18のステップST1において第1のブレード161によるワイピングが必要であるので、ステップST2においてキャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPへ移動する。そしてステップST3ではモータ149が作動することで、図19(A)に示すようにブレード161が払拭領域WA1のみを傾斜した状態で払拭する。
【0063】
次に、ステップST5において、第2のブレード162によるワイピングは不要であるので、ステップST8に移り、キャリッジ14と記録ヘッド30は図7のワイピングポジションWPから待機ポジション18に戻る。これにより記録ヘッド30は払拭手段のブレードの払拭動作領域側へ退避させることができる。
そしてステップST7においてモータ149を作動させることによりブレード162は傾斜した状態で単に移動方向Dに沿って通過していく。
【0064】
図18のステップST9では、第3のブレード163によるワイピングが必要であるので、ステップST10においてキャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPへ移動する。その後ステップST11においてモータ149が作動することにより、図19(C)に示すように図9のブレード163が払拭領域WA3のみを傾斜した状態で払拭する。
その後、図18のステップST13において、第4のブレード164によるワイピングが不要であるので、ステップST16に移りキャリッジ14と記録ヘッド30は待機ポジション18へ移動する。ステップST15では、モータ149が作動することによりブレード164は傾斜した状態で単に移動方向Dに移動するだけである。
このようにして、ブレードは傾斜した状態で払拭領域WA1,WA3のみを選択して払拭することができる。
【0065】
そうではなく、たとえば払拭領域WA2とWA4を払拭して、払拭領域WA1,WA3は払拭する必要が無ければ、上述した動作手順とは逆にステップST4とステップST12において、キャリッジ14と記録ヘッド30は待機ポジション18に待機させればよい。これに限らず、払拭領域WA1ないしWA4は、選択的に1つまたは複数組み合わせて傾斜したブレードにより払拭することができる。
本発明の実施形態では、4つのブレードおよび4つの保持部材による4種類の払拭手段151ないし154が設けられている。しかしこの払拭手段の数は4つに限らず1つ〜3つあるいは5つ以上であっても勿論構わない。
【0066】
本発明の実施形態では、図9に示すようにブレードの形状をそれぞれ変えることにより、ノズルプレート面の払拭領域を選択的に払拭することができる。払拭させたくない場合には、図7に示すキャリッジ14と記録ヘッド30はワイピングポジションWPから待機ポジション18に移してワイピング動作の領域側に退避させることができる。
図9において、払拭領域WA1ないしWA4を連続して払拭する場合には、ブレード161ないし164は、連続して移動方向Dに送ればよい。この場合には、モータは一旦停止させず連続的に動作させることで、ブレード161ないし164は順次移動方向Dに関して相互に間隔をおきながら傾斜した状態で送り出すことができる。
【0067】
またキャリッジ14および記録ヘッド30が、主走査方向Tに関する位置をワイピングポジションWPにおいて所定量微小移動させることにより、別のブレードを用いて払拭領域を払拭させることもできる。たとえば図9に示すブレード162を用いて払拭領域WA1を払拭させることができる。
【0068】
ブレード161ないし164の材質は同じものであっても良いし、異なる材質のものを採用しても勿論構わない。また各ブレードの形状は必要に応じて種々の形状のものを採用することができる。各ブレードは、当たりの強いものや当たりの弱いものや、あるいはラビング(濡れた布で拭くような効果)を発揮することができるものなど各種の材質を採用することができる。
【0069】
本発明の実施形態では、図3と図4に示すインク吸引装置20は各ノズル開口列54Aないし54Dに対応して1つまたは複数独立して吸引することができる構造のものを採用している。このことから、ノズルプレート面61の全体を払拭する必要がある場合と、部分的にあるノズル開口列に対応して払拭する場合がある。いずれの場合においても、本発明の実施形態におけるインク払拭装置130は、図9に示す複数の払拭領域の1つまたは複数を選択して、あるいは全部を払拭することができる。
図8に示す払拭手段151ないし154は、薄肉厚の保持部材を使用することができ、しかも移動方向Dに沿って並べて密接して配置することができる。そして複数の払拭手段は、2本のリードスクリュにより送る構造になっている。しかも、各払拭手段は、待機時および払拭終了時には記録ヘッドの側面と平行に並べて配置できる。インク吸引装置20は、2本のリードスクリュの間に配置して収容することができる。
このことから、インク払拭装置130の小型化および構造の単純化を図ることができる。したがってインク払拭装置130を有するインクジェット式記録装置の小型化および装置の単純化を図れるのである。
【0070】
本発明の実施形態では、図3に示すノズル開口列54Aないし54Dごとに吸引して、しかも任意のノズル開口列に対応するノズルプレート面61の払拭領域を払拭できるので、所謂反応系インクを使用することが容易になる。
【0071】
本発明の実施形態では、複数の払拭手段の数が増えても、移動操作手段は、この複数の払拭手段を順次移動間隔を相互に持たせながら移動方向に沿って順次移動操作させることにより、複数の払拭手段は液体噴射ヘッドのノズル面の液体を払拭できる。したがって、1つの移動操作手段があれば、払拭手段の数が増えても複数の払拭手段を移動操作させることができ、液体を払拭する装置の構造の単純化および小型化が図れる。そして、複数の払拭手段は、互いに移動間隔を持たせながら傾斜した状態で移動方向へ順次移動操作できるので、複数の払拭手段は互いに当たらず払拭操作の障害になることが無い。
【0072】
本発明の実施形態では、1つの払拭手段であっても払拭手段の数が増えても、各払拭手段は移動方向に沿って並べて待機させるだけで、払拭手段の占有スペースを小さくして液体払拭装置とインクジェット式記録装置の大型化を避けることができる。
本発明の実施形態では、駆動部の第1送り部材と第2送り部材を同期して回転させることにより、各払拭手段は移動方向にスムーズに送れる。
【0073】
本発明の実施形態では、各払拭手段の保持部材は、第2送りねじ部分においては速く移動でき、第1送りねじ部分では第2送りねじ部分に比べてゆっくりと移動することができる。言い換えれば、第2送りねじ部分の第2送りピッチが、第1送りねじ部分の第1送りピッチよりも大きく設定されていることから、各払拭手段の保持部材およびブレードは、1個ずつ移動方向に各払拭手段の移動間隔を相互に持たせながら順次移動操作することができる。このため、各払拭手段は互いに当たらず傾斜させての払拭操作の障害にならない。
【0074】
本発明の実施形態では、移動操作手段は、払拭手段を移動方向に沿って液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で移動操作させるだけで、ノズル面を払拭手段により確実に払拭することができる。払拭手段が傾斜した状態で移動させることにより、払拭手段がノズル面から受ける払拭時の最大負荷の低減および負荷の変動を小さくすることができる。また払拭時のインクの飛び散りの方向性を予め持たせることができる。
ノズル面を払拭しない非払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対して平行な状態となるようにすることができるので、払拭しない待機時には、払拭手段は傾斜しておらず側面に平行であるので、その分占有スペースを小さくすることができる。
したがって、払拭手段は液体噴射ヘッドに対し傾斜した状態で移動しながら確実にノズル面を払拭でき、しかもインク払拭装置の占有スペースを小さくすることができる。
第1送り部材の第2送りねじ部分と第2送り部材の第2送りねじ部分が、各払拭手段を傾斜した状態で移動方向に沿って順次移動させるので、払拭手段がノズル面を払拭する払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対し傾斜した状態で払拭動作を行うことができる。
【0075】
本発明の別の実施形態
図20ないし図23は本発明の別の実施形態を示している。図24は図20ないし図23に示す実施形態に対する比較例を示している。
図20は、本発明のインク払拭装置の別の実施形態を示す斜視図である。図21は、図20に示すインク払拭装置130の平面図であり、1つの払拭手段751が待機している状態を示している。図22は、払拭手段751が移動して払拭し、そして動作が終了した状態を示している。図23は第1送り部材901と第2送り部材902のそれぞれの時間に対する払拭手段の移動スピードの例を示している。
【0076】
図20と図21を参照して、インク払拭装置130の構造について説明する。インク払拭装置130は、たとえば1つの払拭手段751と、移動操作手段738およびフレーム735を有している。
払拭手段751は、ブレード861と保持部材871を有している。保持部材871は、ブレード861を着脱可能に保持することができる。ブレード861は、ノズルプレート面61の全面にわたって1度で払拭できるような払拭幅を有しているブレードである。この払拭手段751はノズルプレート面61に対して移動方向Dに沿って傾斜して移動することで、ノズルプレート面のインクを払拭するものである。
【0077】
移動操作手段738は、フレーム735により保持されている。移動操作手段738は、第1送り部材901と第2送り部材902および駆動部740を有している。
第1送り部材901は、第1リードスクリュ781と欠歯ギア816を有している。同様にして第2送り部材902は、第2リードスクリュ782と欠歯ギア802を有している。第1送り部材901の第1リードスクリュ781の一端部と第2送り部材902の第2リードスクリュ782の一端部は、それぞれフレーム735の側面735Aに対して回転可能に保持されている。第1リードスクリュ781の他端部には欠歯ギア816が固定されている。第2リードスクリュ782の他端部には欠歯ギア802が固定されている。
【0078】
図21に示すように、第1リードスクリュ781と第2リードスクリュ782にはそれぞれ溝の形成範囲LR1の間の分だけ送りねじ部分781A,782Aが形成されている。これらの送りねじ部分781A,782Aは、同じ送りピッチである。
図20に示す駆動部740は、第2送り部材902の第2リードスクリュ782の回転動作に対して、第1送り部材901の第1リードスクリュ781の回転動作を遅らせることで、ノズルプレート面61の払拭をする払拭時には、払拭手段751を記録ヘッド30の側面30Sに対して傾斜した状態で移動方向Dに沿って移動させるためのものである。
駆動部740は、モータ749、モータギア748、全歯ギア801、欠歯ギア802、ギア811ないし814、全歯ギア815、欠歯ギア816を有している。フレーム735と駆動部740はワイピングポジションWPに位置決めされている。駆動部740は、フレーム735の側部735Bに設けられている。
【0079】
全歯ギア801,815は、その全周にわたってギアが形成されている。これに対して欠歯ギア802,816は、その一部分に欠歯部分を有している。
モータギア748はモータ749の出力軸に固定されている。モータギア748は、1つのギア811を介して全歯ギア801、欠歯ギア802に力を伝達できるようになっている。モータギア748は、全歯ギア815と欠歯ギア816に対して、複数のギア812ないし814を介して力を伝達できるようになっている。
【0080】
全歯ギア801と欠歯ギア802は、第2送り部材902を回転動作させるための最終段ギアである。全歯ギア815と欠歯ギア816は、第1送り操作部901を回転動作させるための最終段ギアである。
全歯ギア801と欠歯ギア802は、1つのギア811を介してモータギア748から力を伝達できるようになっている。これに対して全歯ギア815と欠歯ギア816は、3つのギア812ないし814を介して力を伝達できる。このように、ギアの数が異なることから、モータギア748が回転した時に、全歯ギア801と欠歯ギア802の組に対して力が加わるタイミングに対して、全歯ギア815と欠歯ギア816に対して力が加わるタイミングがやや遅れるようになっている。つまりギア812ないし814は、動力伝達遅延部770を構成している。
【0081】
全歯ギア801は、第2リードスクリュ782とは非連結状態になっている。つまり第2リードスクリュ782は全歯ギア801に対しては空転できるものである。側壁735Bと全歯ギア801の間には、摩擦クラッチ用のバネ(図示せず)が設けられている。これにより、全歯ギア801は、欠歯ギア802に対してバネにより押し付けられることで、摩擦クラッチを構成する。欠歯ギア802は、すでに述べたように、第1リードスクリュ781に対して直結されている。欠歯ギア802には、払拭手段751を移動するのに必要な距離分だけ第1リードスクリュ781を回すだけの歯数が形成されている。
【0082】
同様にして全歯ギア815は、第1リードスクリュ781とは非連結状態である。側壁735Bと全歯ギア815の間にはバネ(図示せず)が設けられている。これにより、全歯ギア815はバネにより欠歯ギア816に押し付けられることで、摩擦クラッチを構成する。欠歯ギア816はすでに述べたように第1リードスクリュ781に直結されている。欠歯ギア816も、払拭手段751を所定量移動するだけの回転を行うための歯数が形成されている。
全歯ギア801,815は、モータ749からの駆動力を直接伝達することができる。欠歯ギア802と第2リードスクリュ782は、欠歯ギア802の欠歯部がギア811に対向しているとき全歯ギア801との間の摩擦により回転し始め、欠歯ギア802の歯部がギア811と噛み合うとモータからの駆動力がギアにより伝わる。欠歯ギア816と第1リードスクリュ781は、欠歯ギア816の欠歯部がギア814に対向しているとき全歯ギア815との摩擦により回転し始め、欠歯ギア816の歯部がギア814と噛み合うとモータからの駆動力がギアにより伝わる。
【0083】
次に、図22と図23および図20を参照しながら、1つの払拭手段751の移動操作例について説明する。
図22は、払拭手段751が移動方向Dに沿って移動操作されることで、ノズルプレート面61を払拭する状態を示している。図23では第1送り部材および第2送り部材におけるスピードの変化例を示している。1つの払拭手段751は、図21に示すように待機位置P1に待機している。この場合払拭手段751は移動方向Dと直交する方向であって、記録ヘッド30の側面30Sと平行になるように待機している。
【0084】
その後、モータ749が駆動されると、モータギア748が、ギア811を介して全歯ギア801と欠歯ギア802に力を伝達する。同時にモータギア848は、3つのギア812ないし814を介して全歯ギア815と欠歯ギア816に力を伝達する。ただし、全歯ギア801と欠歯ギア802に対しては1つのギア811を介して力を伝達するのに対して、全歯ギア815と欠歯ギア816には3つのギア812ないし814を介して伝達するので、力を伝達するタイミングがずれることになる。つまり、全歯ギア815と欠歯ギア816への力の伝達が、全歯ギア801と欠歯ギア802への力の伝達に比べてやや遅れることになる。
【0085】
図23では、この力の伝達の遅延時間DLを示している。モータ749が駆動した直後は全歯ギア801と欠歯ギア802の間の摩擦クラッチおよび全歯ギア815と欠歯ギア816の間の摩擦クラッチがそれぞれ駆動をする。第2送り部材902側の摩擦クラッチが早く駆動を始めるが、第1送り部材901側では遅延時間DLだけ遅れて摩擦クラッチの駆動が始まる。このとき、払拭手段751は記録ヘッドに当接しておらず、摩擦クラッチの摩擦力により移動し始める。
その後、全歯ギア801と欠歯ギア802によるギア駆動が開始し、その後遅れて全歯ギア815と欠歯ギア816のギア駆動が開始して、それぞれ第1送り部材901と第2送り部材902のスピードが一定になる。第1送り部材901と第2送り部材902の期間t10では、記録ヘッドのノズルプレート面に対して図20のブレード861が当接して払拭(ワイピング)を行う。ここで、摩擦クラッチの摩擦力では払拭時の負荷より小さいため、払拭手段751が記録ヘッドに当接する前にギア駆動を開始している。
【0086】
遅延時間DLだけ第1送り部材901が第2送り部材902に対して遅延して摩擦クラッチ駆動が始まるので、図22に示すように、待機位置P1にある払拭手段751は第2リードスクリュ782側がやや払拭手段751を先に移動方向Dに進ませることになる。これによって、払拭手段751は傾斜角度θだけ傾斜した状態で、ノズルプレート面61を払拭して移動方向Dに沿って通過していく。
【0087】
払拭動作が終了した後には、欠歯ギア802の欠歯部がギア811に対向し、第2送り部材902は摩擦クラッチ駆動となる。そして、払拭終了位置P2に達するが、払拭手段751は傾斜した状態のままである。
しかし、第2リードスクリュ782の溝が最終端でなくなり、その時には欠歯ギア802の欠歯部分がギア811に対面すると、全歯ギア801と欠歯ギア802の間の摩擦力だけでは第2送り部材902の第2リードスクリュ782を回転する力が足りなくなる。したがって、全歯ギア801は第2リードスクリュ782と欠歯ギア802のユニットに対して空転することになり、第2リードスクリュ782の回転が切れる。第2送り部材902側の摩擦クラッチによる駆動が停止した後であっても、第1送り部材901のギア駆動による駆動は続き、欠歯ギア816の欠歯部分がギア814に対面すると、第2送り部材902と同様に摩擦クラッチによる駆動となり、第1リードスクリュ781は回転を続けるので、払拭手段751の第1リードスクリュ781側のみが進むことになり、傾斜した状態が徐々に解消されていく。そして、第1リードスクリュ781の溝が最終端で無くなると、第2リードスクリュ782と同様にして第1リードスクリュ781の回転が切れる。このようにして、図23に示すように第1送り部材901は、第2送り部材902に比べて遅れて摩擦クラッチ動作が停止することになる。
これによって、払拭手段751は、停止位置P3において停止した状態になる。この位置では払拭手段751は、側面30Sに平行であり、移動方向Dに対して直交する方向になる。図22では、本発明の実施形態におけるリードスクリュの溝の形成範囲LR1および移動により払拭手段751が占めるスペースMS1を示している。溝の形成範囲LR1は、払拭手段751が占めるスペースMS1に比べて小さい。
【0088】
図24は、図21と図22に対する本発明の実施形態とは異なる比較例を示している。比較例の払拭手段1000は、当初から傾斜した状態で待機位置P1に位置決めされており、停止位置P4においても、傾斜したままである。図24では、本発明の実施形態における払拭手段751が占めるスペースMS1と、比較例の払拭手段が占めるスペースMS2を示している。スペースMS1とMS2を比較して明らかなように、スペースMS1はスペースMS2に比べて大幅に小さくなっている。
これに対して本発明の実施形態における払拭手段751は、待機位置P1では、側面30Sに平行であり、停止位置P3においても平行である。このために、払拭手段751が占めるスペースMS1は、比較例の払拭手段1000が占めるスペースMS2に比べてかなり小さくすることができる。
【0089】
図24に示す本発明の実施形態における第1および第2リードスクリュの溝の形成範囲LR1は、比較例における溝の形成範囲LR2に比べてかなり小さくすることができる。
このように、本発明の実施形態の払拭手段751は、待機位置P1および停止位置P3において、図22に示すように側面30Sに平行になるように位置される。そして払拭手段751がノズルプレート面61を払拭する時には傾斜した状態で払拭していくことができる。
なお、図20に示す動力伝達遅延部770は複数のギアを使っているが、別構造のタイムラグ機能部を設けても良い。
【0090】
図示した本発明の実施形態においては、例えばブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの各インクを使用する4つのインクカートリッジが、キャリッジに装着できるようになっている。このインクカートリッジはこれに限らず、ブラックインク用のインクカートリッジだけを備えているものや、上述したように2つのインクカートリッジを備えていたり、ブラックインクを除いた3色のカラーインク用の3つのインクカートリッジを備えているものや、5つ以上のインクカートリッジがキャリッジに装着できるようなものであってもよい。
【0091】
本発明は、インクジェット式記録装置としての上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。さらに、上述の各実施形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。また、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用できる。
【0092】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す斜視図。
【図2】図1のインクジェット式記録装置の電気的接続例を示す図。
【図3】記録ヘッドとインク吸引装置の構造例を示していて、インク吸引装置が待機している状態を示す図。
【図4】インク吸引装置がノズルプレート面を吸引している状態を示す図。
【図5】ノズルプレート面の形状例を示す図。
【図6】記録ヘッドの圧電振動子の付近の構造を示す図。
【図7】インク払拭装置の構造例を示す斜視図であり、払拭手段が待機位置に位置決めされている様子を示す図。
【図8】最初の払拭手段が傾斜して移動している様子を示す斜視図。
【図9】ノズルプレート面の払拭領域と各ブレードの対応例を示す図。
【図10】ブレードが保持部材に固定される構造例を示す断面図。
【図11】第1リードスクリュと第2リードスクリュの構造例を示す斜視図。
【図12】第1リードスクリュと第2リードスクリュの送りピッチの例を示す図。
【図13】図7のA1方向から見たインク払拭装置の図。
【図14】図7のA2方向から見たインク払拭装置の図。
【図15】保持部材のガイド部の構造例を示す図。
【図16】ガイド部の構造例を示す斜視図。
【図17】保持部材とリードスクリュがピンにより連結されている様子を示す図。
【図18】ワイピング動作を示すフロー図。
【図19】ワイピング動作を示す図。
【図20】本発明のインク払拭装置の別の実施形態を示す斜視図。
【図21】図20のインク払拭装置の平面図であり、払拭手段が待機位置に位置決めされている状態を示す平面図。
【図22】図20のインク払拭装置における払拭手段の移動の様子を示す図。
【図23】図22における払拭手段が移動する場合の第1送り部材および第2送り部材のスピードの変化の例を示す図。
【図24】本発明の実施形態の払拭手段の移動占有スペースと、比較例における払拭手段の移動占有スペースとの比較を示す図。
【符号の説明】
【0094】
10・・・インクジェット式記録装置(液体噴射装置の一例)、18・・・待機ポジション、19・・・吸引ポンプ、20・・・インク吸引装置(液体吸引装置の一例)、30・・・記録ヘッド(液体噴射ヘッドの一例)、30S・・・記録ヘッドの側面、54A,54B,54C,54D・・・ノズル開口列、55A,55B,55C,55D・・・ノズル開口、61・・・ノズルプレート面(ノズル面の一例)、130・・・インク払拭装置(液体払拭装置の一例)、135・・・フレーム、138・・・移動操作手段、140・・・駆動部、151ないし154・・・払拭手段、161ないし164・・・ブレード、171ないし174・・・保持部材、181・・・第1リードスクリュ(第1送り部材)、182・・・第2リードスクリュ(第2送り部材)、191,193,201,203・・・第1送りねじ部分、192,202・・・第2送りねじ部分、D・・・移動方向、T・・・主走査方向、WP・・・ワイピングポジション
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドのノズル面から液体を噴射するようになっている液体噴射装置および液体噴射装置の液体払拭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインク滴を吐出させて、所望の文字や図形等の画像を記録する。
このインクジェット式記録装置は、記録動作時において、記録ヘッドが記録媒体と近接するために、インク滴が記録媒体と衝突した際に発生するインクの飛び散りが記録ヘッドのノズル面に跳ね返りノズル面を汚染することがある。
【0003】
特にオンデマンド型のインクジェット式記録装置の記録ヘッドにおいては、インク滴の吐出がノズル近傍のインクへの微弱な加圧力によるために、インク滴の吐出エネルギーが小さく、記録媒体と数mm程度の間隔でしか配置されておらず、インクの飛び散りの跳ね返りがノズル面に付着し易い。しかしながら加圧力が小さいため一旦ノズル内の目詰まりが発生すると、この目詰まりを容易に自己復帰させることはできない。
【0004】
このため、記録ヘッドのノズルの目詰まりを予防あるいは回復するために、非印字動作中にノズル開口よりインクを吸引して目詰まりをしたインクを排出させるために、吸引作業が行われる。
この吸引を行った後にノズル面にインクが残留することがあり、ノズル面を汚染することがある。このような記録ヘッドのノズル面の汚染は、記録媒体の繊維や塵埃の付着を招き、記録ヘッドの長時間の使用においてノズルの目詰まりの原因となったり、インクの吐出不良や吐出時のインク滴の飛行曲がり等の悪影響を及ぼすことがあった。
このような問題を解決するために、ノズル面のインクを拭き取って除去して、インクの吐出不良を防ぐために、ワイピング用のブレードを有するクリーニング装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特許第3327318号公報(第3頁、図5,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のクリーニング装置では、各ブレードが駆動手段の軸に対して取り付けられている。ブレードは、駆動手段の軸が回転することにより角度を持たせることができる。そして記録ヘッドがキャリッジと共にブレードに対して移動することにより、ブレードはノズル開口列に対して斜めになるようにしてノズルプレート面を払拭できる。
ところが、このような構造のクリーニング装置を用いると、払拭作業開始前には、ブレードは必ず軸を中心として回転することで、ノズルプレートのノズル開口列に対して角度を形成する動作が必要である。このブレードは軸だけで回転可能に支えられているので、ブレードがノズル面を払拭する時には安定してノズル面に押し付けられながら支持することができない可能性がある。
また、各ブレードごとに駆動手段が設けられているので、ブレードの数が多くなるとクリーニング装置の構造が大型化しかつ複雑になる。
【0006】
各ブレードが記録ヘッドから離れた位置でブレードの角度を予めそれぞれ設定する必要があり、そのブレードの角度を設定するために予めインクジェット式記録装置の内部に大きなスペースが必要になる。このようなブレードの角度の設定用のスペースと各ブレードに駆動手段が設けられていることから、クリーニング装置が占めるスペースは大きく、クリーニング装置の小型化とインクジェット式記録装置の小型化が難しくなる。
そこで本発明は上記課題を解消し、払拭手段を移動方向へ移動させるだけで、払拭手段を液体噴射ヘッドに対して傾斜した状態で移動しながら確実に払拭作業が行え、しかも占有スペースを小さくすることができ、小型化が図れる液体噴射装置および液体噴射装置の液体払拭装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明にあっては、液体噴射ヘッドのノズル面から液体を噴射するようになっている液体噴射装置において、前記ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで前記ノズル面の前記液体を払拭するための払拭手段と、前記ノズル面の払拭をする払拭時には、前記払拭手段を前記液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動操作させ、前記ノズル面の払拭をしない非払拭時には前記側面に対して平行な状態となるように前記移動方向に沿って移動操作させるための移動操作手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置により、達成される。
払拭手段は、ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで、ノズル面の液体を払拭する。
移動操作手段は、ノズル面の払拭をする払拭時には、払拭手段を液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で移動方向に沿って移動操作させる。そして移動操作手段は、ノズル面を払拭しない非払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対して平行な状態となるように移動方向に沿って移動操作させる。
これにより、移動操作手段は、払拭手段を移動方向に沿って液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で移動操作させるだけで、ノズル面を払拭手段により確実に払拭することができる。払拭手段が傾斜した状態で移動させることにより、払拭手段がノズル面から受ける払拭時の最大負荷の低減および負荷の変動を小さくすることができる。また払拭時のインクの飛び散りの方向性を予め持たせることができる。
ノズル面を払拭しない非払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対して平行な状態となるようにすることができるので、払拭しない待機時には、払拭手段は傾斜しておらず側面に平行であるので、その分払拭手段の占有スペースを小さくすることができる。
したがって、払拭手段は液体噴射ヘッドに対し傾斜した状態で移動しながら確実にノズル面を払拭でき、しかも占有スペースを小さくして液体の噴射装置の小型化が図れる。
【0008】
前記移動操作手段は、回転することで各前記払拭手段の前記保持部材を前記移動方向に沿って移動させる第1送り部材と第2送り部材と、前記第1送り部材と前記第2送り部材を同期して回転させる駆動部と、を有して、前記第1送り部材と前記第2送り部材では、前記移動方向に関して前側部分と後側部分に形成された第1送りねじ部分の第1送りピッチが、前記第1送り部材と前記第2送り部材とで異なり、前記前側部分と前記後側部分の間の中央部分に形成された第2送りねじ部分の第2送りピッチは、前記第1送り部材と前記第2送り部材で同じになるように設定されており、前記第1送り部材の前記第2送りねじ部分と前記第2送り部材の前記第2送りねじ部分が、各前記払拭手段を傾斜した状態で前記移動方向に沿って順次移動させることが望ましい。
このように構成されているので、移動操作手段の第1送り部材と第2送り部材は、回転することで各払拭手段の保持部材を移動方向に沿って移動させるものである。駆動部は、第1送り部材と第2送り部材を同期して回転させる。
これにより、駆動部の第1送り部材と第2送り部材を同期して回転させることにより、各払拭手段の保持部材は、スムーズに送ることができる。しかも、第1送り部材と第2送り部材では、移動方向に関して前側部分と後側部分に形成された第1送りねじ部分の第1送りピッチが、第1送り部材と第2送り部材とで異なっていて、中央部分に形成された第2送りねじ部分の第2送りピッチは、第1送り部材と第2送り部材で同じである。そして、第1送り部材の第2送りねじ部分と第2送り部材の第2送りねじ部分が払拭手段を傾斜した状態で移動方向に沿って順次移動させるようになっている。
これにより、払拭手段は、第1送り部材の前側部分の第1送りねじ部分と第2送り部材の前側部分の第1送りねじ部分により移動している間に平行状態から傾斜して液体噴射ヘッドに当たる。つまり払拭手段は斜めになって液体噴射ヘッドに当たり、払拭手段は一端側から徐々にノズル面に当たり始めるので負荷変動が小さくなる。また、拭き終わりの時には、払拭手段は第1送り部材の後側部分の第1送りねじ部分と第2送り部材の後側部分の第1送りねじ部分により斜め状態で液体噴射ヘッドから離れていくため、一気に斜め状態が復元しないので、液体の飛散り量自体も減る効果がある。つまり払拭手段は、液体噴射ヘッドから離れる時は斜めのままであり、離れきってから平行になる。
【0009】
前記払拭手段は、前記ノズル面を払拭するブレードと前記ブレードを保持する保持部材とを有しており、複数の前記払拭手段が前記移動方向に沿って並べられていることが望ましい。
このように構成されているので、各払拭手段のブレードはノズル面を払拭する。各払拭手段の保持部材はブレードを保持する。各払拭手段は移動方向に沿って並べられている。
これにより、払拭手段の数が増えても、各払拭手段は移動方向に沿って並べて配列するだけで、払拭手段の占有スペースを小さくして装置の大型化を避けることができる。
【0010】
各前記払拭手段の前記ブレードは、前記ノズル面のノズル開口列にそれぞれ対応して形成されていることが望ましい。
このように構成されているので、各払拭手段のブレードは、ノズル面のノズル開口列にそれぞれ対応して形成されている。
これにより、各払拭手段を選択して使用することにより、ノズル面の任意のノズル開口列のみを選択的に払拭することができる。
【0011】
各前記払拭手段の前記移動方向は、前記液体噴射ヘッドの主走査方向と交差していることが望ましい。
このように構成されているので、払拭手段の移動方向は、液体噴射ヘッドの主走査方向と交差している。
これにより、液体噴射ヘッドのノズル開口列の払拭を不要とする場合には、液体噴射ヘッドは主走査方向に移動して払拭領域外に出せば、各払拭手段は単に移動方向へ移動するだけでありノズル面を払拭することはない。
【0012】
前記移動操作手段は、回転することで前記払拭手段を前記移動方向に沿って移動させる第1送り部材と第2送り部材と、前記第2送り部材の回転動作に対して前記第1送り部材の回転動作を遅らせることで、前記ノズル面の払拭をする払拭時には前記払拭手段を前記傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動させる駆動部と、を有していることが望ましい。
このように構成されているので、移動操作手段の第1送り部材と第2送り部材は、回転することで払拭手段を移動方向に沿って移動させる。駆動部は、第2送り部材の回転動作に対して第1送り部材の回転動作を遅らせることで、ノズル面の払拭をする払拭時には払拭手段を傾斜した状態で移動方向に沿って移動させる。
これにより、払拭手段はノズル面を払拭する払拭時には、傾斜した状態で移動方向に沿って移動することで、ノズル面を傾斜した状態で払拭することができる。
【0013】
上記目的は、本発明にあっては、液体を噴射するための液体噴射ヘッドのノズル面に付着した前記液体を払拭するために液体噴射装置に設けられる液体払拭装置において、前記ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで前記ノズル面の前記液体を払拭するための払拭手段と、前記ノズル面の払拭をする払拭時には、前記払拭手段を前記液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動操作させ、前記ノズル面の払拭をしない非払拭時には前記側面に対して平行な状態となるように前記移動方向に沿って移動操作させるための移動操作手段と、を備えることを特徴とする液体払拭装置により、達成される。
これにより、移動操作手段は、払拭手段を移動方向に沿って液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で移動操作させるだけで、ノズル面を払拭手段により確実に払拭することができる。払拭手段が傾斜した状態で移動させることにより、払拭手段がノズル面から受ける払拭時の最大負荷の低減および負荷の変動を小さくすることができる。また払拭時のインクの飛び散りの方向性を予め持たせることができる。
ノズル面を払拭しない非払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対して平行な状態となるようにすることができるので、払拭しない待機時には、払拭手段は傾斜しておらず側面に平行であるので、その分払拭手段の占有スペースを小さくすることができる。
したがって、払拭手段は液体噴射ヘッドに対し傾斜した状態で移動しながら確実にノズル面を払拭でき、しかも占有スペースを小さくして液体噴射装置の小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の液体噴射装置の実施形態であるインクジェット式記録装置10を示している。
図1に示すインクジェット式記録装置10は、インクジェットプリンタとも呼んでいる。インクジェット式記録装置10は、本体部1を有している。この本体部1は、ガイドレール17、プラテン12、キャリッジ14、インク吸引装置20、記録ヘッド30、インク払拭装置130を備えている。記録ヘッド30は、印刷ヘッドとも言う。このインク吸引装置20は廃液システムの一部である。
【0015】
このインクジェット式記録装置10は、いわゆるオンキャリッジ形の記録装置であり、キャリッジ14の上部には、複数のインクカートリッジ2,3,4,5が着脱可能に装着できる。キャリッジ14の下部には、記録ヘッド30が設けられている。キャリッジ14は、ベルト15を介してモータ16に接続されている。ベルト15はプーリ16A,16Bに掛けてある。モータ16が作動することによって、キャリッジ14はガイドレール17に沿ってプラテン12の軸方向である主走査方向T(T1,T2)に往復走行して位置決め可能である。
【0016】
図1の本体部1の右側には、ワイピングポジションWPと待機ポジション18が設けられている。ワイピングポジションWPは払拭作業ポジションとも言い、あるいはホームポジションとも呼ぶことができる。
ワイピングポジションWPでは、記録ヘッド30のノズルプレート面61が、インク吸引装置20により吸引されたり、あるいはインク払拭装置130によりノズルプレート面61に付着しているインクの払拭を行うためのポジションである。
待機ポジション18は、記録ヘッド30からのインク払拭あるいはインクの吸引を行わない場合の待機位置である。
図1に示すインク吸引装置20は、液体吸引装置の一例であり、キャッピングシステムもしくはキャッピング手段とも呼ぶことができる。
【0017】
インク吸引装置20は、以下の2つの機能を有する。すなわち、インク吸引装置20は、長時間放置された時に記録ヘッド30のノズル開口のインクの乾燥を防止する保湿機能と、吸引ポンプ19からの負圧をノズル開口に作用させてノズル開口からインクを強制的に吸引して排出させる吸引機能を備える。
各インクカートリッジ2,3,4,5の各インクは液体の一例である。図1に示すインク払拭装置130は、液体払拭装置の一例であり、インク吸引装置20とほぼ同じ位置にある。
【0018】
図2は、図1に示すインクジェット式記録装置10の電気的な接続例を示している。インクジェット式記録装置10の制御装置7は、ローカルプリンタケーブルまたは通信ネットワークを介してホストコンピュータ40のプリンタドライバ41に接続されている。プリンタドライバ41は、インクジェット式記録装置10の各構成要素に対して印刷やノズルプレート面61のインク払拭動作あるいはインク吸引動作を実行させるためのコマンドを送るソフトウェアを搭載している。
【0019】
図2に示すインクジェット式記録装置10は、制御装置7の他に、センサー8、インク吸引装置20、インクカートリッジ2,3,4,5、記録ヘッド30、キャリッジ14、用紙搬送機構15A、インク払拭装置130を含んでいる。
図1の実施形態では、複数のインクカートリッジ2ないし5が、キャリッジ14の上に直接搭載されているが、本発明の実施形態は、これに限らずインクカートリッジ2ないし5をキャリッジとは別の位置に搭載している、いわゆるオフキャリッジ形のインクジェット式記録装置を採用しても勿論構わない。
図2の用紙搬送機構15Aは、図1の用紙29をプラテン12上を搬送するようになっている。用紙29は記録媒体の一種である。
【0020】
図3と図4は、図1に示す記録ヘッド30とインク吸引装置20の構造例を示す断面図である。
インクジェット式記録装置10は、特にカラープリンタとして用いられる場合には、この記録ヘッド30は、互いに種類の異なる複数種類のインクを吐出するために、インクの種類ごとに独立したインク経路50を有している。
各インクカートリッジ2ないし5からのインクは、インク供給針50Aを介してインク経路50に流入する。インクの種類ごとに独立したインク経路50は、それぞれ複数の圧力室51に接続されている。各圧力室51には、各ノズル開口列54A,54B,54C,54Dが接続されている。
ノズルプレート62はノズルプレート面61を有していて、このノズルプレート面61には複数のノズル開口列54A〜54Dが設けられている。圧力室51から押し出されたインク滴が、ノズル開口列54A〜54Dのノズル開口55A〜55Dから吐出される。
【0021】
図3と図4に示すインク吸引装置20は、ノズルプレート面61に密接もしくは圧着してノズル開口を吸引するためのものである。インク吸引装置20は、キャップ本体80と複数の吸収材90を有している。キャップ本体80は箱状であり、上部開口91を有している。キャップ本体80の底部92からは、隔壁81が突出して設けられている。キャップ本体80の4辺の側面部80Aと隔壁81の間には、吸収材90が収容されている。各吸収材90は、各ノズル開口列54A〜54Dを含むノズルプレート面61の領域に対応している。
【0022】
吸収材90は、インクを吸収可能な材料により作られていて、例えばポリビニルアルコール(PVA)のスポンジにより作ることができる。吸収材90は、好ましくは親水性に優れて、微細な連続した気孔構造を有しており、インクの吸収能力を有している。
この吸収材90は、図示しない押さえ部材により吸収材90を押さえて保持する構造を採用できる。
キャップ本体80の底部92は、吸引ポンプ19に接続されている。吸引ポンプ19は廃インクタンク100に接続されている。この廃インクタンク100は吸引ポンプ19によりキャップ本体80側から吸引されてくるインクを廃棄するためのタンクである。
【0023】
図3は、インク吸引装置20がノズルプレート面61から離れた待機状態を示している。図4では、インク吸引装置20はノズルプレート面61に密着もしくは圧着されて、ノズルプレート面61を封止している状態(吸引状態もしくは保湿状態)を示している。
記録ヘッド30内のインク中に気泡が混入したり、インク経路50や圧力室51内に増粘したインクが存在すると、インクの正常な流れが阻害されて、正常なインクの吐出が行えないことがある。この場合には、図2に示すインク吸引装置20が用いられ、このインク吸引装置20によるインクの強制排出が必要となる。
【0024】
また、インクジェット式記録装置10を最初に使用する際の開始時や、インクカートリッジを別の種類のインクカートリッジに交換した場合では、図3の記録ヘッド30内のインク経路50の中にインクを充填する必要がある。このような初期のインクの充填に際しても、インク吸引装置20が使用され、このインク吸引装置20を用いることで、図3の記録ヘッド30のノズル開口55A〜55Dから空気およびインクが、強制的に吸引されてノズル開口55A〜55Dから排出される。
【0025】
図5は、ノズルプレート面61におけるノズル開口列54A〜54Dの配列例を示している。異なるインクの種類とは、見かけ上の色の違いにとどまらず、インクの構成成分の種類や比率が異なることを意味する。各ノズル開口列54A〜54Dは、例えば数10から数1000のノズル開口55A〜55Dから構成されている。
【0026】
図6は、本発明のインクジェット式記録装置の記録ヘッド30の内部構造例を示している。上述したインクカートリッジから供給されるインクは、インク経路50を通って圧力室51へ供給される。印刷の際には、圧力発生素子としての圧電振動子39が伸縮動作することによって、圧力室51の容積を変化させて、圧力室51内のインクに圧力変動を生じさせる。これによって、ノズル開口55A〜55Dからインク滴が吐出できる。圧電振動子39は各ノズル開口55A〜55Dに対応して設けられている。
【0027】
図1に示すキャリッジ14は、記録ヘッド30とともに、ガイドレール17に沿って主走査方向Tに沿って往復移動可能である。キャリッジ14とともに記録ヘッド30は、ヘッド移動方向T1に移動することにより、図1に示すワイピングポジションWPと待機ポジション18に位置決めすることができる。
図1の記録ヘッド30は、液体噴射ヘッドの一種であるが、この記録ヘッド30はキャリッジ14の下面側に設けられている。記録ヘッド30の下面は、ノズルプレート面61である。このノズルプレート面61は、ノズル面の一例であり、図5にはノズルプレート面61の形状例を示している。ノズルプレート面61は、ノズルプレート62の下面である。
ノズルプレート62は、上述したような複数のノズル開口列、図5の図示例では4列のノズル開口列54A〜54Dを有している。各ノズル開口列54A〜54Dは、図5に示すT方向とは直交するU方向に沿っており、T方向に沿って同じ間隔で平行に形成されている。
【0028】
次に、図1に示すインク払拭装置130の構造例について説明する。
図7と図8はインク払拭装置130の構造例を示す斜視図である。図7は、払拭手段151ないし154が待機位置に待機している状態を示している。図8は、最も前側に位置している払拭手段151が記録ヘッド30のノズルプレート面61を傾斜した状態で払拭を始める様子を示している。
【0029】
図7と図8を参照すると、インク払拭装置130は、概略的にはフレーム135、複数の払拭手段151ないし154、移動操作手段138を有している。
図7に示す払拭手段151ないし154は、ほぼ同様の構造のものである。払拭手段151は、ブレード161と保持部材171を有している。同様にして払拭手段152は、ブレード162と保持部材172を有している。払拭手段153はブレード163と保持部材173を有している。そして払拭手段154は、ブレード164と保持部材174を有している。
【0030】
ブレード161ないし164は、図9に示すように記録ヘッド30のノズルプレート面61の払拭領域WA1ないしWA4にそれぞれほぼ対応した形状を有している。ブレード161は、払拭領域WA1を傾斜して払拭し、ブレード162は払拭領域WA2を傾斜して払拭し、ブレード163は払拭領域WA3を傾斜して払拭し、そしてブレード164は払拭領域WA4を払拭するためのものである。
【0031】
払拭領域WA1はノズル開口列54Aを含む領域であり、払拭領域WA2はノズル開口列54Bを含む領域である。払拭領域WA3はノズル開口列54Cを含む領域であり、払拭領域WA4はノズル開口列54Dを含む領域である。
図7〜図9に示すブレード161ないし164は、弾性変形可能なたとえばゴムやエラストマーあるいはプラスチックなどにより作ることができる。ブレード161ないし164は、払拭領域WA1ないしWA4に対応して払拭できるようにするために、主走査方向Tに関してそれぞれ位相がずれた形状になっている。ブレード161ないし164は、図7と図8に示すようにそれぞれ保持部材171ないし174に対して着脱可能に固定されている。
【0032】
図8に示すように、各ブレード161ないし164は、記録ヘッド30の側面(前面とも言う)30Sに対して傾斜した状態でノズルプレート面61を払拭する際に、図9に示すブレード161ないし164は、それぞれ払拭領域WA1ないしWA4を確実に払拭できるようにするために、各ブレード161ないし164は払拭幅WRを有している。払拭幅WRは、払拭領域WA1ないしWA4の主走査方向Tに関する幅Hに比べてやや大きく設定されている。
【0033】
図10は、ブレード161ないし164が保持部材171ないし174に対して着脱可能に固定できる構造例を示している。カバー175Cと保持部材171ないし174は、それぞれピン176Pを用いて固定することができる。この場合にブレード161ないし164の基部190が、カバー175Cと保持部材171ないし174の間に挟まれることで固定できる。保持部材171ないし174およびカバー175Cは、たとえばプラスチックにより作ることができる。
【0034】
図7の保持部材171ないし174は、ブレード161ないし164をそれぞれ保持するために細長い形状を有している。そして図7と図8に示すように保持部材171ないし174は、主走査方向Tに平行になるように待機位置において移動方向Dに対して密接して並べられるようにして配置することができる。つまり、払拭手段151〜154がノズルプレート面61を払拭しない非払拭時には、各払拭手段151〜154は記録ヘッド30の側面30Sに平行になるように待機位置において待機させることができる。
これにより、払拭手段の数が1つの場合であっても、あるいは払拭手段の数が多くなっても、複数の払拭手段が占有するスペースを極力小さくできる。したがって、インク払拭装置130とインクジェット式記録装置10の小型化が図れる。移動方向Dは、記録ヘッド30およびキャリッジ14を主走査方向Tに対して交差する方向、すなわちこの例では直交する。
【0035】
図7に示すフレーム135は、ワイピングポジションWPに配置されていて、フレーム135の上には、キャリッジ14と記録ヘッド30が待機ポジション18からワイピングポジションWPまで移動される。記録ヘッド30はワイピングポジションWPにおいてフレーム135とインク吸引装置20の真上に位置している。
記録ヘッド30とキャリッジ14は、主走査方向TのT1方向に移動することで待機ポジション18からワイピングポジションWPに移動できる。その反対にキャリッジ14と記録ヘッド30は、ワイピングポジションWPから待機ポジション18に向かってT2方向に退避移動することも可能である。
【0036】
次に、図7に示すインク払拭装置130の移動操作手段138について説明する。
移動操作手段138は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182および駆動部140を有している。
複数の払拭手段151ないし154は、記録ヘッド30のノズルプレート面61に対して移動方向Dに沿ってそれぞれ独立して移動することで、ノズルプレート面61に付着しているインクを払拭するものである。
【0037】
移動操作手段138は、ノズルプレート面61の払拭を行う払拭時には、複数の払拭手段151ないし154の移動間隔を相互に持たせながら、複数の払拭手段151ないし154を記録ヘッド30の側面30Sに対して傾斜した状態で移動方向Dに沿って順次移動操作させる。
しかも、移動操作手段138は、ノズルプレート面61を払拭しない非払拭時には側面30Sに対して各払拭手段151〜154を平行な状態になるように移動方向Dに沿って移動操作させる。
第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182は、フレーム135の側壁135A,135Bの間において回転可能に水平かつ移動方向Dに沿って平行に支持されている。第1リードスクリュ181は第1送り部材に相当し、第2リードスクリュ182は第2送り部材に相当する。
【0038】
図7と図11を参照して、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の構造例について説明する。
第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182は似た構造のものである。第1リードスクリュ181は、第1送りねじ部分191,193および第2送りねじ部分192を有している。同様にして第2リードスクリュ182は、第1送りねじ部分201,203および第2送りねじ部分202を有している。
第1送りねじ部分191,193は、移動方向Dに関して第1リードスクリュ181の前側部分と後側部分に形成されたものである。第2リードスクリュ182の第1送りねじ部分201と203は、移動方向Dに関して第2リードスクリュ182の前側部分と後側部分に形成された部分である。
【0039】
第2送りねじ部分192は、第1送りねじ部分191,193の間に形成されていて、前側部分と後側部分の間の中央部分に形成されている。同様にして第2送りねじ部分202は、第1送りねじ部分201,203の間に形成されていて、前側部分と後側部分の間の中央部分に形成されている。
第1送りねじ部分191,193の第1送りピッチは、第2送りねじ部分192の第2送りピッチよりも小さく設定されている。同様にして第1送りねじ部分201,203の第1送りピッチは、第2送りねじ部分202の第2送りピッチよりも小さく設定されている。
【0040】
図12(A)と図12(B)は、図11の第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の距離に対する送りピッチの変化例を示している。図12(B)に示すように、第2リードスクリュ182の送りピッチは、第1リードスクリュ181の送りピッチに比べて、途中から早い時点で大きくなり、いったん一定値になって、その後、第1リードスクリュ181の送りピッチが第2リードスクリュ182の送りピッチに比べて遅い時点まで大きい。
【0041】
特徴的なのは、前側部分と後側部分に形成された第1送りねじ部分191,193,201,203の第1送りピッチが、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182とでは異なっていることである。そして、中央部分に形成された第2送りねじ部分192,202の第2送りピッチは、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182で同じである。
このような第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の構成にすることで、各払拭手段151〜154は、次のようにして移動操作される。各払拭手段151〜154が第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の前側部分の第1送りねじ部分191,201により移動方向Dに移動している間に平行状態から傾斜して記録ヘッド30のノズルプレート面61に当たる。つまり払拭手段は斜めになって記録ヘッド30に当たるので、払拭手段のブレード161〜164は一端側から徐々にノズルプレート面61に当たり始めるので、負荷変動が小さくなる。
そして、各払拭手段151〜154は、同じ送りピッチの第2送りねじ部分192,202により傾斜した状態のままノズルプレート面61を払拭していく。
【0042】
次に、払拭手段151〜154がノズルプレート面61を拭き終わる時には、払拭手段151〜154は後側部分の第1送りねじ部分193,203により、斜め状態で記録ヘッド30から離れていくため、一気には斜め状態が平行状態へ復元しない。このため、記録ヘッド30から払拭手段151〜154が離れる時には斜めのままであり、離れきってから主走査方向Tに平行な状態になる。
各払拭手段151〜154の傾斜角度は、図8においてθで示している。この傾斜角度θは、主走査方向Tと平行なE−E線と、そのE−E線に交わるF−E線とが形成する角度である。F−E線は、移動中の払拭手段151〜154の長手方向である。
【0043】
このようにして、払拭手段151ないし154は、図7に示す待機時および払拭終了後の状態において、主走査方向Tに平行に、すなわち記録ヘッド30の側面30Sに平行な状態にし、かつ払拭手段151ないし154がノズルプレート面を図8に示すように傾斜して払拭できるようにするために、図12(A)に示すような送りピッチの具体的な例を採用している。
すなわち、第1リードスクリュ181は、たとえば前側部分の第1送りねじ部分191の送りピッチはたとえば0.8mmである。第1リードスクリュ181の第2送りねじ部分192の送りピッチは、たとえば7.2mmと7.2mmである。第1リードスクリュ181の後側部分の第1送りねじ部分193の送りピッチは、たとえば3.36mmと0.8mmである。
これに対して、第2リードスクリュ182の前側部分の第1送りねじ部分201の送りピッチは、たとえば0.8mmと3.36mmである。第2リードスクリュ182の第2送りねじ部分202の送りピッチは、7.2mmと7.2mmである。第2リードスクリュ182の後側部分の第1送りねじ部分203の送りピッチは、たとえば0.8mmである。
【0044】
このように第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の送りピッチを少し異なるように設定することにより、払拭時には第2リードスクリュ182が、第1リードスクリュ181に比べて図8に示すように各払拭手段151ないし154を先行して移動方向Dに送ることができる。したがって、各払拭手段151ないし154は、傾斜角度θで傾斜した状態で各ブレード161ないし164はノズルプレート面61を移動方向Dに移動しながら払拭していくことができる。その後、払拭手段がノズルプレート面を払拭しないので、第1リードスクリュ181が第2リードスクリュ182に比べて各払拭手段151ないし154を先行して移動方向Dに送るので、各払拭手段151ないし154は記録ヘッド30の側面30Sに平行になる。
【0045】
各払拭手段151ないし154がノズルプレート面61を傾斜した状態で払拭する。すなわち、払拭手段151ないし154のブレード161ないし164が、ノズルプレート面61の図9に示すノズル開口列54Aないし54Dに対して傾斜した状態で払拭できるようにすると、次のようなメリットがある。
ブレード161ないし164が、対応するノズル開口列に対してそれぞれ予め設定した傾斜角度θにより斜めに払拭できることから、傾斜角度を設けない場合に比べて、各ブレードがノズルプレート面から受ける最大負荷の低減を図ることができる。
また、各ブレードにおける払拭時の負荷変動を少なくすることができるので、スムーズな払拭作業が行える。そして斜めに払拭手段が移動することにより、ノズルプレート面のワイピング時のインクは、インク収容部側へ方向性を持たせて飛び散らせることができるのである。
【0046】
次に、図7と図8に示す移動操作手段138の駆動部140について説明する。駆動部140は、図に示すように第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182を同期して回転駆動させるための装置である。駆動部140は、フレーム135の側壁135B側に設けられている。
【0047】
駆動部140は、歯付きベルト141、ギア142、ギア143、ガイドローラ144、ギア145、ギア146、ギア147、ギア147Aおよびピニオン148およびモータ149を有している。モータ149は制御装置7の指令により動作することができる。このモータ149は、たとえばステッピングモータを使用できる。
【0048】
歯付きベルト141は、ギア142、ギア143、ギア145,146にわたって掛けてある。歯付きベルト141はタイミングベルトとも呼んでいるが、歯付きベルト141に対しては、外側からガイドローラ144を押し付けることにより、歯付きベルト141のテンションを確保する。
ギア142は、第2リードスクリュ182の後端部側に固定されている。もう1つのギア146は第1リードスクリュ181の後端部側に固定されている。第2リードスクリュ182の後端部と第1リードスクリュ181の後端部は側壁135Bに対して回転可能に取り付けられている。第2リードスクリュ182の先端部と第1リードスクリュ181の先端部は、側壁135Aに対して回転可能に取り付けられている。ギア143はサポート150により回転可能に支持されている。ギア145は側壁135Bに対して回転可能に支持されている。ピニオン148は、モータ149の出力軸に固定されている。ピニオン148はギア147Aを介してギア147に対して駆動力を伝達できるようになっている。ギア146,147は一体形のものである。
【0049】
これにより、モータ149が作動すると、ピニオン148の回転によりギア147A,ギア147および歯付きベルト141を介して、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して同じ方向に回転できるようになっている。このように第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して同じ方向に回転駆動できることから、払拭手段151ないし154の保持部材171ないし174は、移動方向Dに沿って移動する時に、所謂こじり現象を生じることなくスムーズに送ることがでできる。
【0050】
図13は、図7におけるA1から見たインク払拭装置130の構造を示し、図14は図7のA2から見たインク払拭装置130の構造を示している。
図7に示す払拭手段151ないし154の保持部材171ないし174は、ほぼ同様な形状であり、図15に示すようなガイド部175A,175と中央部176を有している。ガイド部175A,175は、中央部176の両端位置にそれぞれ設けられている。中央部176は、ブレードを保持するものである。ガイド部175Aは、第1リードスクリュ181を通す部分であり、ガイド部175は第2リードスクリュ182を通す部分である。図15のガイド部175は断面円形状を有していて、ガイド部175の中には第2リードスクリュ182が通っている。第2リードスクリュ182の溝192Aには、ピン220が嵌り込んでいる。このピン220はガイド部175の穴175Hに嵌り込んでいる。
【0051】
これに対してガイド部175Aは、図15に示すように断面で見て楕円形状を有している。ピン220はガイド部175Aの穴175Iに嵌り込んでいて、このピン220は第1リードスクリュ181の溝192Aに嵌り込んでいる。第1リードスクリュ181は、ガイド部175Aの空間175P内に入っている。
【0052】
ガイド部175Aの下部には、ガイドピン885が突出して設けられている。このガイドピン885は、ガイドレール880の溝891に嵌り込んでいる。このガイドレール880は、図7に示すように、第1リードスクリュ181と平行にしかも第1リードスクリュ181の下部において移動方向Dに沿って設けられている。このため各保持部材171ないし174は、ガイドピン885を中心として図16と図17に示す揺動可能方向RRに回転できる。
これにより、ガイド部175が第2リードスクリュ182によりガイド部175Aに比べて図15の紙面垂直下方向に先行して移動した場合に、保持部材171ないし174は、ガイドピン885を中心として図8に示すように傾斜角度θ傾斜した状態でガイドレール880にガイドされながら移動方向Dに沿ってスムーズに移動することができる。
【0053】
図17は、ピン220の先端部220Aが、第1リードスクリュ181の溝192Aに嵌っている様子を示している。このピン220が溝192Aに嵌り込む構造は、第2リードスクリュ182においても同様である。
これによって、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して回転することにより、保持部材171ないし174を移動方向Dおよびその反対方向に直線移動させることができる。
【0054】
図14において、キャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPに位置決めされると、ノズルプレート面61は第2送りねじ部分192,202の間の領域の上方に位置される。ノズルプレート面61に対応するようにしてインク吸引装置20のキャップ本体80が配置されている。図7に示すようにインク吸引装置20のキャップ本体80と昇降手段250は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の下側であって、かつこれらの間の位置に配置されている。
キャップ本体80は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の間で昇降操作できるメリットがある。そしてキャップ本体80と昇降手段250がインク払拭装置130内に配置できるので、インクジェット式記録装置の小型化が図れる。
【0055】
次に、図18を参照しながら、図7に示すインク払拭装置130の動作例について説明する。
図18は、図7に示すブレード161ないし164によるノズルプレート面61のワイピング動作の手順の例を示している。
このワイピング動作を行う前に、ノズルプレート面61は、図3と図4に示すようにインク吸引動作を行う必要がある。図3と図4に示すインク吸引装置20は、ノズル開口列54Aないし54Dに対応して選択的に吸引動作することができる。すなわち、吸引ポンプ19が作動することにより、ノズル開口列54Aないし54Dに対応するキャップ本体80内を吸引することで選択的にノズル開口列54Aないし54Dの1つまたは複数を吸引することができる。
吸引したノズル開口列に対応するノズルプレート面61の領域は、ワイピング動作を行う必要があるが、吸引する必要の無かったノズル開口列に対応するノズルプレート面61の領域はワイピング動作をする必要が無い。
【0056】
たとえば図4に示すキャップ本体80がすべてのノズル開口列54A〜54Dを吸引動作した場合には、図9においてノズルプレート面61の払拭領域WA1ないしWA4全てを払拭する必要があり、図18のワイピング動作図に従って次のように行う。
まず図7に示すようにキャリッジ14と記録ヘッド30が待機ポジション18側からワイピングポジションWPへT1方向に移動する。これによって図13と図14に示すようにノズルプレート面61は移動操作手段138の上部に位置される。制御装置7がモータ149に指令を与えるとモータ149が駆動する。これによって、駆動部140は第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182を同期して回転させる。
【0057】
すでに払拭手段151ないし154は、第1送りねじ部分191,201において並列してかつ密接して待機して配列されている。したがって払拭手段151〜154が移動方向Dに移動を開始する。そして払拭手段151の保持手段171は第1送りねじ部分191,201から第2送りねじ部分192,202に移っていくと、最も前の払拭手段151が、あとの払拭手段152〜154よりも先に早く移動方向Dに移動してゆく。そして払拭手段151は第2送りねじ部分192,202から第1送りねじ部分193,203側に送られていく。
【0058】
このようにして、図18のステップST1では、第1のブレード161によるワイピングが必要である場合には、キャリッジ14と記録ヘッド30がステップST2においてワイピングポジションWPへ移動した状態で、ステップST3においてモータ149が所定のステップ数回転されて、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して回転される。これによって、図9に示すようにブレード161は対応するノズル開口列54Aを含む払拭領域WA1のみを、図19(A)に示すようにして側面30Sに平行な状態から傾斜して払拭して、払拭した後に再び平行な状態に戻る。
【0059】
次に、図18のステップST5では、第2のブレード162にワイピングが必要であるので、ステップST6において、キャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPに位置される。そしてモータ149が、ステップST7において所定ステップ数回転することにより、2番目の払拭手段152が、3番目と4番目の払拭手段153,154よりも先に早く移動方向Dに移動して、図9に示すブレード162は払拭領域WA2のみを、図19(B)に示すようにして側面30Sに平行な状態から傾斜して払拭して、払拭した後に再び平行な状態に戻る。
【0060】
図18のステップST9では、第3のブレード163によるワイピングが必要であるので、ステップST10においてキャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPへ移動する。そしてステップST11においてモータ149が所定ステップ数回転することにより、3番目の払拭手段153が4番目の払拭手段154よりも早く移動方向Dに移動して、図9のブレード163が払拭領域WA3のみを、図19(C)に示すようにして側面30Sに平行な状態から傾斜して払拭して、払拭した後に再び平行な状態に戻る。
【0061】
図18のステップST13において、第4のブレード164によるワイピングが必要であるので、ステップST14においてキャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPへ移動する。そしてステップST15ではモータ149が所定ステップ数回転することにより、4番目の払拭手段154が移動方向Dに移動して図9のブレード164が払拭領域WA4のみを、図19(D)に示すようにして側面30Sに平行な状態から傾斜して払拭して、払拭した後に再び平行状態に戻る。
このようにして、図9に示す全ての払拭領域WA1ないしWA4が、別々の形状のブレード161ないし164の移動方向Dに沿った移動により、ブレードが傾斜した状態で順次確実に払拭することができる。
【0062】
また、別の払拭動作例として、たとえば図9に示す払拭領域WA1と払拭領域WA3のみを払拭する必要があり、払拭領域WA2とWA4は払拭する必要が無い場合には、次のように行う。
図18のステップST1において第1のブレード161によるワイピングが必要であるので、ステップST2においてキャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPへ移動する。そしてステップST3ではモータ149が作動することで、図19(A)に示すようにブレード161が払拭領域WA1のみを傾斜した状態で払拭する。
【0063】
次に、ステップST5において、第2のブレード162によるワイピングは不要であるので、ステップST8に移り、キャリッジ14と記録ヘッド30は図7のワイピングポジションWPから待機ポジション18に戻る。これにより記録ヘッド30は払拭手段のブレードの払拭動作領域側へ退避させることができる。
そしてステップST7においてモータ149を作動させることによりブレード162は傾斜した状態で単に移動方向Dに沿って通過していく。
【0064】
図18のステップST9では、第3のブレード163によるワイピングが必要であるので、ステップST10においてキャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPへ移動する。その後ステップST11においてモータ149が作動することにより、図19(C)に示すように図9のブレード163が払拭領域WA3のみを傾斜した状態で払拭する。
その後、図18のステップST13において、第4のブレード164によるワイピングが不要であるので、ステップST16に移りキャリッジ14と記録ヘッド30は待機ポジション18へ移動する。ステップST15では、モータ149が作動することによりブレード164は傾斜した状態で単に移動方向Dに移動するだけである。
このようにして、ブレードは傾斜した状態で払拭領域WA1,WA3のみを選択して払拭することができる。
【0065】
そうではなく、たとえば払拭領域WA2とWA4を払拭して、払拭領域WA1,WA3は払拭する必要が無ければ、上述した動作手順とは逆にステップST4とステップST12において、キャリッジ14と記録ヘッド30は待機ポジション18に待機させればよい。これに限らず、払拭領域WA1ないしWA4は、選択的に1つまたは複数組み合わせて傾斜したブレードにより払拭することができる。
本発明の実施形態では、4つのブレードおよび4つの保持部材による4種類の払拭手段151ないし154が設けられている。しかしこの払拭手段の数は4つに限らず1つ〜3つあるいは5つ以上であっても勿論構わない。
【0066】
本発明の実施形態では、図9に示すようにブレードの形状をそれぞれ変えることにより、ノズルプレート面の払拭領域を選択的に払拭することができる。払拭させたくない場合には、図7に示すキャリッジ14と記録ヘッド30はワイピングポジションWPから待機ポジション18に移してワイピング動作の領域側に退避させることができる。
図9において、払拭領域WA1ないしWA4を連続して払拭する場合には、ブレード161ないし164は、連続して移動方向Dに送ればよい。この場合には、モータは一旦停止させず連続的に動作させることで、ブレード161ないし164は順次移動方向Dに関して相互に間隔をおきながら傾斜した状態で送り出すことができる。
【0067】
またキャリッジ14および記録ヘッド30が、主走査方向Tに関する位置をワイピングポジションWPにおいて所定量微小移動させることにより、別のブレードを用いて払拭領域を払拭させることもできる。たとえば図9に示すブレード162を用いて払拭領域WA1を払拭させることができる。
【0068】
ブレード161ないし164の材質は同じものであっても良いし、異なる材質のものを採用しても勿論構わない。また各ブレードの形状は必要に応じて種々の形状のものを採用することができる。各ブレードは、当たりの強いものや当たりの弱いものや、あるいはラビング(濡れた布で拭くような効果)を発揮することができるものなど各種の材質を採用することができる。
【0069】
本発明の実施形態では、図3と図4に示すインク吸引装置20は各ノズル開口列54Aないし54Dに対応して1つまたは複数独立して吸引することができる構造のものを採用している。このことから、ノズルプレート面61の全体を払拭する必要がある場合と、部分的にあるノズル開口列に対応して払拭する場合がある。いずれの場合においても、本発明の実施形態におけるインク払拭装置130は、図9に示す複数の払拭領域の1つまたは複数を選択して、あるいは全部を払拭することができる。
図8に示す払拭手段151ないし154は、薄肉厚の保持部材を使用することができ、しかも移動方向Dに沿って並べて密接して配置することができる。そして複数の払拭手段は、2本のリードスクリュにより送る構造になっている。しかも、各払拭手段は、待機時および払拭終了時には記録ヘッドの側面と平行に並べて配置できる。インク吸引装置20は、2本のリードスクリュの間に配置して収容することができる。
このことから、インク払拭装置130の小型化および構造の単純化を図ることができる。したがってインク払拭装置130を有するインクジェット式記録装置の小型化および装置の単純化を図れるのである。
【0070】
本発明の実施形態では、図3に示すノズル開口列54Aないし54Dごとに吸引して、しかも任意のノズル開口列に対応するノズルプレート面61の払拭領域を払拭できるので、所謂反応系インクを使用することが容易になる。
【0071】
本発明の実施形態では、複数の払拭手段の数が増えても、移動操作手段は、この複数の払拭手段を順次移動間隔を相互に持たせながら移動方向に沿って順次移動操作させることにより、複数の払拭手段は液体噴射ヘッドのノズル面の液体を払拭できる。したがって、1つの移動操作手段があれば、払拭手段の数が増えても複数の払拭手段を移動操作させることができ、液体を払拭する装置の構造の単純化および小型化が図れる。そして、複数の払拭手段は、互いに移動間隔を持たせながら傾斜した状態で移動方向へ順次移動操作できるので、複数の払拭手段は互いに当たらず払拭操作の障害になることが無い。
【0072】
本発明の実施形態では、1つの払拭手段であっても払拭手段の数が増えても、各払拭手段は移動方向に沿って並べて待機させるだけで、払拭手段の占有スペースを小さくして液体払拭装置とインクジェット式記録装置の大型化を避けることができる。
本発明の実施形態では、駆動部の第1送り部材と第2送り部材を同期して回転させることにより、各払拭手段は移動方向にスムーズに送れる。
【0073】
本発明の実施形態では、各払拭手段の保持部材は、第2送りねじ部分においては速く移動でき、第1送りねじ部分では第2送りねじ部分に比べてゆっくりと移動することができる。言い換えれば、第2送りねじ部分の第2送りピッチが、第1送りねじ部分の第1送りピッチよりも大きく設定されていることから、各払拭手段の保持部材およびブレードは、1個ずつ移動方向に各払拭手段の移動間隔を相互に持たせながら順次移動操作することができる。このため、各払拭手段は互いに当たらず傾斜させての払拭操作の障害にならない。
【0074】
本発明の実施形態では、移動操作手段は、払拭手段を移動方向に沿って液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で移動操作させるだけで、ノズル面を払拭手段により確実に払拭することができる。払拭手段が傾斜した状態で移動させることにより、払拭手段がノズル面から受ける払拭時の最大負荷の低減および負荷の変動を小さくすることができる。また払拭時のインクの飛び散りの方向性を予め持たせることができる。
ノズル面を払拭しない非払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対して平行な状態となるようにすることができるので、払拭しない待機時には、払拭手段は傾斜しておらず側面に平行であるので、その分占有スペースを小さくすることができる。
したがって、払拭手段は液体噴射ヘッドに対し傾斜した状態で移動しながら確実にノズル面を払拭でき、しかもインク払拭装置の占有スペースを小さくすることができる。
第1送り部材の第2送りねじ部分と第2送り部材の第2送りねじ部分が、各払拭手段を傾斜した状態で移動方向に沿って順次移動させるので、払拭手段がノズル面を払拭する払拭時には、液体噴射ヘッドの側面に対し傾斜した状態で払拭動作を行うことができる。
【0075】
本発明の別の実施形態
図20ないし図23は本発明の別の実施形態を示している。図24は図20ないし図23に示す実施形態に対する比較例を示している。
図20は、本発明のインク払拭装置の別の実施形態を示す斜視図である。図21は、図20に示すインク払拭装置130の平面図であり、1つの払拭手段751が待機している状態を示している。図22は、払拭手段751が移動して払拭し、そして動作が終了した状態を示している。図23は第1送り部材901と第2送り部材902のそれぞれの時間に対する払拭手段の移動スピードの例を示している。
【0076】
図20と図21を参照して、インク払拭装置130の構造について説明する。インク払拭装置130は、たとえば1つの払拭手段751と、移動操作手段738およびフレーム735を有している。
払拭手段751は、ブレード861と保持部材871を有している。保持部材871は、ブレード861を着脱可能に保持することができる。ブレード861は、ノズルプレート面61の全面にわたって1度で払拭できるような払拭幅を有しているブレードである。この払拭手段751はノズルプレート面61に対して移動方向Dに沿って傾斜して移動することで、ノズルプレート面のインクを払拭するものである。
【0077】
移動操作手段738は、フレーム735により保持されている。移動操作手段738は、第1送り部材901と第2送り部材902および駆動部740を有している。
第1送り部材901は、第1リードスクリュ781と欠歯ギア816を有している。同様にして第2送り部材902は、第2リードスクリュ782と欠歯ギア802を有している。第1送り部材901の第1リードスクリュ781の一端部と第2送り部材902の第2リードスクリュ782の一端部は、それぞれフレーム735の側面735Aに対して回転可能に保持されている。第1リードスクリュ781の他端部には欠歯ギア816が固定されている。第2リードスクリュ782の他端部には欠歯ギア802が固定されている。
【0078】
図21に示すように、第1リードスクリュ781と第2リードスクリュ782にはそれぞれ溝の形成範囲LR1の間の分だけ送りねじ部分781A,782Aが形成されている。これらの送りねじ部分781A,782Aは、同じ送りピッチである。
図20に示す駆動部740は、第2送り部材902の第2リードスクリュ782の回転動作に対して、第1送り部材901の第1リードスクリュ781の回転動作を遅らせることで、ノズルプレート面61の払拭をする払拭時には、払拭手段751を記録ヘッド30の側面30Sに対して傾斜した状態で移動方向Dに沿って移動させるためのものである。
駆動部740は、モータ749、モータギア748、全歯ギア801、欠歯ギア802、ギア811ないし814、全歯ギア815、欠歯ギア816を有している。フレーム735と駆動部740はワイピングポジションWPに位置決めされている。駆動部740は、フレーム735の側部735Bに設けられている。
【0079】
全歯ギア801,815は、その全周にわたってギアが形成されている。これに対して欠歯ギア802,816は、その一部分に欠歯部分を有している。
モータギア748はモータ749の出力軸に固定されている。モータギア748は、1つのギア811を介して全歯ギア801、欠歯ギア802に力を伝達できるようになっている。モータギア748は、全歯ギア815と欠歯ギア816に対して、複数のギア812ないし814を介して力を伝達できるようになっている。
【0080】
全歯ギア801と欠歯ギア802は、第2送り部材902を回転動作させるための最終段ギアである。全歯ギア815と欠歯ギア816は、第1送り操作部901を回転動作させるための最終段ギアである。
全歯ギア801と欠歯ギア802は、1つのギア811を介してモータギア748から力を伝達できるようになっている。これに対して全歯ギア815と欠歯ギア816は、3つのギア812ないし814を介して力を伝達できる。このように、ギアの数が異なることから、モータギア748が回転した時に、全歯ギア801と欠歯ギア802の組に対して力が加わるタイミングに対して、全歯ギア815と欠歯ギア816に対して力が加わるタイミングがやや遅れるようになっている。つまりギア812ないし814は、動力伝達遅延部770を構成している。
【0081】
全歯ギア801は、第2リードスクリュ782とは非連結状態になっている。つまり第2リードスクリュ782は全歯ギア801に対しては空転できるものである。側壁735Bと全歯ギア801の間には、摩擦クラッチ用のバネ(図示せず)が設けられている。これにより、全歯ギア801は、欠歯ギア802に対してバネにより押し付けられることで、摩擦クラッチを構成する。欠歯ギア802は、すでに述べたように、第1リードスクリュ781に対して直結されている。欠歯ギア802には、払拭手段751を移動するのに必要な距離分だけ第1リードスクリュ781を回すだけの歯数が形成されている。
【0082】
同様にして全歯ギア815は、第1リードスクリュ781とは非連結状態である。側壁735Bと全歯ギア815の間にはバネ(図示せず)が設けられている。これにより、全歯ギア815はバネにより欠歯ギア816に押し付けられることで、摩擦クラッチを構成する。欠歯ギア816はすでに述べたように第1リードスクリュ781に直結されている。欠歯ギア816も、払拭手段751を所定量移動するだけの回転を行うための歯数が形成されている。
全歯ギア801,815は、モータ749からの駆動力を直接伝達することができる。欠歯ギア802と第2リードスクリュ782は、欠歯ギア802の欠歯部がギア811に対向しているとき全歯ギア801との間の摩擦により回転し始め、欠歯ギア802の歯部がギア811と噛み合うとモータからの駆動力がギアにより伝わる。欠歯ギア816と第1リードスクリュ781は、欠歯ギア816の欠歯部がギア814に対向しているとき全歯ギア815との摩擦により回転し始め、欠歯ギア816の歯部がギア814と噛み合うとモータからの駆動力がギアにより伝わる。
【0083】
次に、図22と図23および図20を参照しながら、1つの払拭手段751の移動操作例について説明する。
図22は、払拭手段751が移動方向Dに沿って移動操作されることで、ノズルプレート面61を払拭する状態を示している。図23では第1送り部材および第2送り部材におけるスピードの変化例を示している。1つの払拭手段751は、図21に示すように待機位置P1に待機している。この場合払拭手段751は移動方向Dと直交する方向であって、記録ヘッド30の側面30Sと平行になるように待機している。
【0084】
その後、モータ749が駆動されると、モータギア748が、ギア811を介して全歯ギア801と欠歯ギア802に力を伝達する。同時にモータギア848は、3つのギア812ないし814を介して全歯ギア815と欠歯ギア816に力を伝達する。ただし、全歯ギア801と欠歯ギア802に対しては1つのギア811を介して力を伝達するのに対して、全歯ギア815と欠歯ギア816には3つのギア812ないし814を介して伝達するので、力を伝達するタイミングがずれることになる。つまり、全歯ギア815と欠歯ギア816への力の伝達が、全歯ギア801と欠歯ギア802への力の伝達に比べてやや遅れることになる。
【0085】
図23では、この力の伝達の遅延時間DLを示している。モータ749が駆動した直後は全歯ギア801と欠歯ギア802の間の摩擦クラッチおよび全歯ギア815と欠歯ギア816の間の摩擦クラッチがそれぞれ駆動をする。第2送り部材902側の摩擦クラッチが早く駆動を始めるが、第1送り部材901側では遅延時間DLだけ遅れて摩擦クラッチの駆動が始まる。このとき、払拭手段751は記録ヘッドに当接しておらず、摩擦クラッチの摩擦力により移動し始める。
その後、全歯ギア801と欠歯ギア802によるギア駆動が開始し、その後遅れて全歯ギア815と欠歯ギア816のギア駆動が開始して、それぞれ第1送り部材901と第2送り部材902のスピードが一定になる。第1送り部材901と第2送り部材902の期間t10では、記録ヘッドのノズルプレート面に対して図20のブレード861が当接して払拭(ワイピング)を行う。ここで、摩擦クラッチの摩擦力では払拭時の負荷より小さいため、払拭手段751が記録ヘッドに当接する前にギア駆動を開始している。
【0086】
遅延時間DLだけ第1送り部材901が第2送り部材902に対して遅延して摩擦クラッチ駆動が始まるので、図22に示すように、待機位置P1にある払拭手段751は第2リードスクリュ782側がやや払拭手段751を先に移動方向Dに進ませることになる。これによって、払拭手段751は傾斜角度θだけ傾斜した状態で、ノズルプレート面61を払拭して移動方向Dに沿って通過していく。
【0087】
払拭動作が終了した後には、欠歯ギア802の欠歯部がギア811に対向し、第2送り部材902は摩擦クラッチ駆動となる。そして、払拭終了位置P2に達するが、払拭手段751は傾斜した状態のままである。
しかし、第2リードスクリュ782の溝が最終端でなくなり、その時には欠歯ギア802の欠歯部分がギア811に対面すると、全歯ギア801と欠歯ギア802の間の摩擦力だけでは第2送り部材902の第2リードスクリュ782を回転する力が足りなくなる。したがって、全歯ギア801は第2リードスクリュ782と欠歯ギア802のユニットに対して空転することになり、第2リードスクリュ782の回転が切れる。第2送り部材902側の摩擦クラッチによる駆動が停止した後であっても、第1送り部材901のギア駆動による駆動は続き、欠歯ギア816の欠歯部分がギア814に対面すると、第2送り部材902と同様に摩擦クラッチによる駆動となり、第1リードスクリュ781は回転を続けるので、払拭手段751の第1リードスクリュ781側のみが進むことになり、傾斜した状態が徐々に解消されていく。そして、第1リードスクリュ781の溝が最終端で無くなると、第2リードスクリュ782と同様にして第1リードスクリュ781の回転が切れる。このようにして、図23に示すように第1送り部材901は、第2送り部材902に比べて遅れて摩擦クラッチ動作が停止することになる。
これによって、払拭手段751は、停止位置P3において停止した状態になる。この位置では払拭手段751は、側面30Sに平行であり、移動方向Dに対して直交する方向になる。図22では、本発明の実施形態におけるリードスクリュの溝の形成範囲LR1および移動により払拭手段751が占めるスペースMS1を示している。溝の形成範囲LR1は、払拭手段751が占めるスペースMS1に比べて小さい。
【0088】
図24は、図21と図22に対する本発明の実施形態とは異なる比較例を示している。比較例の払拭手段1000は、当初から傾斜した状態で待機位置P1に位置決めされており、停止位置P4においても、傾斜したままである。図24では、本発明の実施形態における払拭手段751が占めるスペースMS1と、比較例の払拭手段が占めるスペースMS2を示している。スペースMS1とMS2を比較して明らかなように、スペースMS1はスペースMS2に比べて大幅に小さくなっている。
これに対して本発明の実施形態における払拭手段751は、待機位置P1では、側面30Sに平行であり、停止位置P3においても平行である。このために、払拭手段751が占めるスペースMS1は、比較例の払拭手段1000が占めるスペースMS2に比べてかなり小さくすることができる。
【0089】
図24に示す本発明の実施形態における第1および第2リードスクリュの溝の形成範囲LR1は、比較例における溝の形成範囲LR2に比べてかなり小さくすることができる。
このように、本発明の実施形態の払拭手段751は、待機位置P1および停止位置P3において、図22に示すように側面30Sに平行になるように位置される。そして払拭手段751がノズルプレート面61を払拭する時には傾斜した状態で払拭していくことができる。
なお、図20に示す動力伝達遅延部770は複数のギアを使っているが、別構造のタイムラグ機能部を設けても良い。
【0090】
図示した本発明の実施形態においては、例えばブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの各インクを使用する4つのインクカートリッジが、キャリッジに装着できるようになっている。このインクカートリッジはこれに限らず、ブラックインク用のインクカートリッジだけを備えているものや、上述したように2つのインクカートリッジを備えていたり、ブラックインクを除いた3色のカラーインク用の3つのインクカートリッジを備えているものや、5つ以上のインクカートリッジがキャリッジに装着できるようなものであってもよい。
【0091】
本発明は、インクジェット式記録装置としての上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。さらに、上述の各実施形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。また、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用できる。
【0092】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す斜視図。
【図2】図1のインクジェット式記録装置の電気的接続例を示す図。
【図3】記録ヘッドとインク吸引装置の構造例を示していて、インク吸引装置が待機している状態を示す図。
【図4】インク吸引装置がノズルプレート面を吸引している状態を示す図。
【図5】ノズルプレート面の形状例を示す図。
【図6】記録ヘッドの圧電振動子の付近の構造を示す図。
【図7】インク払拭装置の構造例を示す斜視図であり、払拭手段が待機位置に位置決めされている様子を示す図。
【図8】最初の払拭手段が傾斜して移動している様子を示す斜視図。
【図9】ノズルプレート面の払拭領域と各ブレードの対応例を示す図。
【図10】ブレードが保持部材に固定される構造例を示す断面図。
【図11】第1リードスクリュと第2リードスクリュの構造例を示す斜視図。
【図12】第1リードスクリュと第2リードスクリュの送りピッチの例を示す図。
【図13】図7のA1方向から見たインク払拭装置の図。
【図14】図7のA2方向から見たインク払拭装置の図。
【図15】保持部材のガイド部の構造例を示す図。
【図16】ガイド部の構造例を示す斜視図。
【図17】保持部材とリードスクリュがピンにより連結されている様子を示す図。
【図18】ワイピング動作を示すフロー図。
【図19】ワイピング動作を示す図。
【図20】本発明のインク払拭装置の別の実施形態を示す斜視図。
【図21】図20のインク払拭装置の平面図であり、払拭手段が待機位置に位置決めされている状態を示す平面図。
【図22】図20のインク払拭装置における払拭手段の移動の様子を示す図。
【図23】図22における払拭手段が移動する場合の第1送り部材および第2送り部材のスピードの変化の例を示す図。
【図24】本発明の実施形態の払拭手段の移動占有スペースと、比較例における払拭手段の移動占有スペースとの比較を示す図。
【符号の説明】
【0094】
10・・・インクジェット式記録装置(液体噴射装置の一例)、18・・・待機ポジション、19・・・吸引ポンプ、20・・・インク吸引装置(液体吸引装置の一例)、30・・・記録ヘッド(液体噴射ヘッドの一例)、30S・・・記録ヘッドの側面、54A,54B,54C,54D・・・ノズル開口列、55A,55B,55C,55D・・・ノズル開口、61・・・ノズルプレート面(ノズル面の一例)、130・・・インク払拭装置(液体払拭装置の一例)、135・・・フレーム、138・・・移動操作手段、140・・・駆動部、151ないし154・・・払拭手段、161ないし164・・・ブレード、171ないし174・・・保持部材、181・・・第1リードスクリュ(第1送り部材)、182・・・第2リードスクリュ(第2送り部材)、191,193,201,203・・・第1送りねじ部分、192,202・・・第2送りねじ部分、D・・・移動方向、T・・・主走査方向、WP・・・ワイピングポジション
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドのノズル面から液体を噴射するようになっている液体噴射装置において、
前記ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで前記ノズル面の前記液体を払拭するための払拭手段と、
前記ノズル面の払拭をする払拭時には、前記払拭手段を前記液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動操作させ、前記ノズル面の払拭をしない非払拭時には前記側面に対して平行な状態となるように前記移動方向に沿って移動操作させるための移動操作手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記移動操作手段は、
回転することで各前記払拭手段の前記保持部材を前記移動方向に沿って移動させる第1送り部材と第2送り部材と、
前記第1送り部材と前記第2送り部材を同期して回転させる駆動部と、を有して、
前記第1送り部材と前記第2送り部材では、前記移動方向に関して前側部分と後側部分に形成された第1送りねじ部分の第1送りピッチが、前記第1送り部材と前記第2送り部材とで異なり、前記前側部分と前記後側部分の間の中央部分に形成された第2送りねじ部分の第2送りピッチは、前記第1送り部材と前記第2送り部材で同じになるように設定されており、
前記第1送り部材の前記第2送りねじ部分と前記第2送り部材の前記第2送りねじ部分が、各前記払拭手段を傾斜した状態で前記移動方向に沿って順次移動させることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記払拭手段は、前記ノズル面を払拭するブレードと前記ブレードを保持する保持部材とを有しており、複数の前記払拭手段が前記移動方向に沿って並べられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
各前記払拭手段の前記ブレードは、前記ノズル面のノズル開口列にそれぞれ対応して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
各前記払拭手段の前記移動方向は、前記液体噴射ヘッドの主走査方向と交差していることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記移動操作手段は、
回転することで前記払拭手段を前記移動方向に沿って移動させる第1送り部材と第2送り部材と、
前記第2送り部材の回転動作に対して前記第1送り部材の回転動作を遅らせることで、前記ノズル面の払拭をする払拭時には前記払拭手段を前記傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動させる駆動部と、を有していることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
液体を噴射するための液体噴射ヘッドのノズル面に付着した前記液体を払拭するために液体噴射装置に設けられる液体払拭装置において、
前記ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで前記ノズル面の前記液体を払拭するための払拭手段と、
前記ノズル面の払拭をする払拭時には、前記払拭手段を前記液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動操作させ、前記ノズル面の払拭をしない非払拭時には前記側面に対して平行な状態となるように前記移動方向に沿って移動操作させるための移動操作手段と、を備えることを特徴とする液体払拭装置。
【請求項1】
液体噴射ヘッドのノズル面から液体を噴射するようになっている液体噴射装置において、
前記ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで前記ノズル面の前記液体を払拭するための払拭手段と、
前記ノズル面の払拭をする払拭時には、前記払拭手段を前記液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動操作させ、前記ノズル面の払拭をしない非払拭時には前記側面に対して平行な状態となるように前記移動方向に沿って移動操作させるための移動操作手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記移動操作手段は、
回転することで各前記払拭手段の前記保持部材を前記移動方向に沿って移動させる第1送り部材と第2送り部材と、
前記第1送り部材と前記第2送り部材を同期して回転させる駆動部と、を有して、
前記第1送り部材と前記第2送り部材では、前記移動方向に関して前側部分と後側部分に形成された第1送りねじ部分の第1送りピッチが、前記第1送り部材と前記第2送り部材とで異なり、前記前側部分と前記後側部分の間の中央部分に形成された第2送りねじ部分の第2送りピッチは、前記第1送り部材と前記第2送り部材で同じになるように設定されており、
前記第1送り部材の前記第2送りねじ部分と前記第2送り部材の前記第2送りねじ部分が、各前記払拭手段を傾斜した状態で前記移動方向に沿って順次移動させることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記払拭手段は、前記ノズル面を払拭するブレードと前記ブレードを保持する保持部材とを有しており、複数の前記払拭手段が前記移動方向に沿って並べられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
各前記払拭手段の前記ブレードは、前記ノズル面のノズル開口列にそれぞれ対応して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
各前記払拭手段の前記移動方向は、前記液体噴射ヘッドの主走査方向と交差していることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記移動操作手段は、
回転することで前記払拭手段を前記移動方向に沿って移動させる第1送り部材と第2送り部材と、
前記第2送り部材の回転動作に対して前記第1送り部材の回転動作を遅らせることで、前記ノズル面の払拭をする払拭時には前記払拭手段を前記傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動させる駆動部と、を有していることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
液体を噴射するための液体噴射ヘッドのノズル面に付着した前記液体を払拭するために液体噴射装置に設けられる液体払拭装置において、
前記ノズル面に対して移動方向に沿って移動することで前記ノズル面の前記液体を払拭するための払拭手段と、
前記ノズル面の払拭をする払拭時には、前記払拭手段を前記液体噴射ヘッドの側面に対して傾斜した状態で前記移動方向に沿って移動操作させ、前記ノズル面の払拭をしない非払拭時には前記側面に対して平行な状態となるように前記移動方向に沿って移動操作させるための移動操作手段と、を備えることを特徴とする液体払拭装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
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【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−27001(P2006−27001A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207186(P2004−207186)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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