説明

液体噴射装置

【課題】液体を定着させた後の長尺状のターゲットの搬送時における弛みを解消することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンタ11は、上流側の巻き軸18から搬送される長尺状の連続紙12に印刷を行い、印刷後の連続紙12を乾燥させて下流側の巻き取り駆動軸74で巻き取るように構成されている。連続紙12の搬送経路の途中位置には、連続紙12に印刷を行う印刷領域Aと、該印刷領域Aよりも下流側に印刷後の連続紙12を乾燥させる乾燥領域とが設けられている。連続紙12の搬送経路における乾燥領域よりも下流側の位置には、連続紙12に張力を付与するように連続紙12を押圧するダンサーローラ93が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体をターゲットに対して噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が広く知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1のプリンタは、連続紙である印刷テープ(ターゲット)に、後に切り抜いてラベルとして用いる多数の単位画像を連続して印刷するものであり、例えば生鮮食品のラップフィルム上に貼着されるラベルを小ロットで印刷することが可能となっている。
【0003】
すなわち、特許文献1のプリンタは、テープ送り経路(搬送経路)に沿って印刷テープを送り、テープ送り経路の途中位置にある印刷エリアにて印刷テープにインク(液体)を噴射して印刷を行い、テープ送り経路の途中位置にある乾燥エリアにて印刷済みの印刷テープを自然乾燥した後、この自然乾燥した印刷テープを巻き取るように構成されている。
【特許文献1】特開2003−118136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした印刷テープ(ラベル)は、印刷した後に乾燥させると膨張したりしわができたりしやすいので、搬送時に弛むことがある。この点、特許文献1のプリンタでは、印刷済みの印刷テープの乾燥後に、該印刷テープの弛みを解消するための対策が講じられていない。このため、印刷済みの印刷テープの乾燥後に印刷テープが弛んだ場合には、該印刷テープが蛇行して送られてしまうおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、液体を定着させた後の長尺状のターゲットの搬送時における弛みを解消することが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、上流側から搬送される長尺状のターゲットに液体を噴射し、該ターゲットに着弾した前記液体を該ターゲットに定着させてから該ターゲットを下流側で巻き取るように構成された液体噴射装置において、前記ターゲットの搬送経路の途中位置には、前記ターゲットに前記液体が噴射される液体噴射領域と、該液体噴射領域よりも下流側に位置するとともに前記ターゲットに着弾した前記液体を前記ターゲットに定着させる定着領域とが設けられ、前記ターゲットの搬送経路における前記定着領域よりも下流側の位置には、前記ターゲットに張力を付与するように該ターゲットを押圧する押圧手段が設けられている。
【0007】
この発明によれば、ターゲットに着弾した液体を該ターゲットに定着させた際にターゲットが弛んだとしても、液体を定着させた後のターゲットに対して張力が付与される。このため、液体を定着させた後の長尺状のターゲットの搬送時における弛みを解消することが可能となる。
【0008】
本発明の液体噴射装置において、前記定着領域は、前記液体が噴射された後の前記ターゲットを乾燥させる乾燥領域であって、前記ターゲットに着弾した前記液体は、該液体が噴射された後の前記ターゲットを前記乾燥領域において乾燥させることで該ターゲットに定着される。
【0009】
この発明によれば、液体を噴射して乾燥させた際にターゲットが弛んだとしても、乾燥後のターゲットに対して張力が付与される。このため、液体を噴射して乾燥させた後の長尺状のターゲットの搬送時における弛みを解消することが可能となる。
【0010】
本発明の液体噴射装置において、前記押圧手段は、前記ターゲットにおける前記液体が噴射された面とは反対側の面を押圧するように配置されている。
この発明によれば、液体を噴射して乾燥させた後のターゲットに張力を付与する際に、ターゲットにおける液体が噴射された面に対して押圧手段による影響が及ばないようにすることが可能となる。
【0011】
本発明の液体噴射装置において、前記押圧手段は、前記ターゲットに当接する押圧部材と、該押圧部材を前記ターゲット側に向かって付勢する弾性部材とを備えている。
この発明によれば、ターゲットの弛み具合が変化しても、この弛み具合の変化分が弾性部材によって吸収されるので、乾燥後のターゲットに対して付与される張力の変動を抑えることが可能となる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記乾燥領域には、前記液体が噴射された後の前記ターゲットを強制的に乾燥させる強制乾燥手段が設けられている。
この発明によれば、液体が噴射された後のターゲットを短時間で十分に乾燥させることが可能となる。
【0013】
本発明の液体噴射装置において、前記ターゲットの搬送経路には、前記ターゲットを搬送方向に沿ってガイドするガイド手段が設けられている。
この発明によれば、ターゲットの搬送経路において、該ターゲットが蛇行して搬送されることを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンタに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1及び図2に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0015】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、長尺状のターゲットとしての連続紙12を繰り出す繰り出し部13と、該繰り出し部13から繰り出された連続紙12に順次印刷を行って乾燥する本体部14と、該本体部14で印刷が行われて乾燥された連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。すなわち、本体部14は直方体状の本体ケース16を備えており、連続紙12の搬送方向において上流側となる本体ケース16の左側に繰り出し部13が配設されるとともに下流側となる本体ケース16の右側に巻き取り部15が配設されている。
【0016】
繰り出し部13は本体ケース16の左面下端部から左方に延びる支持板17を備えており、該支持板17の前面は鉛直面になっている。支持板17の前面における先端部には前方(図1において紙面と直交する方向の手前側)に向かって延びる巻き軸18が支持板17に対して回転可能に支持されている。また、巻き軸18の基端には、円板状の回転板19が巻き軸18と一体回転するように設けられている。
【0017】
そして、巻き軸18には予めロール状に巻かれた連続紙12が該巻き軸18と一体回転可能に支持されており、このロール状に巻かれた連続紙12における両側縁のうち回転板19側の側縁は回転板19の前面に当接している。すなわち、巻き軸18に予めロール状に巻かれた連続紙12を支持させた際に、このロール状に巻かれた状態の連続紙12における一方の側縁が回転板19の前面に当接することで、連続紙12の搬送方向と直交する前後方向での位置決めがなされるようになっている。なお、本実施形態の連続紙12には光沢紙が用いられている。
【0018】
図1及び図2に示すように、繰り出し部13は本体ケース16の左面中央部から左方に向かって水平に延びる平板状の繰り出し台20を備えており、該繰り出し台20の先端部には巻き軸18から繰り出される連続紙12を巻き掛けて繰り出し台20の上面に導くための中継ローラ21が回転可能に設けられている。
【0019】
図2に示すように、繰り出し台20の上面における後端縁には、左右方向に沿って延びる細長いブロック状のガイド手段としてのガイド部24が、該後端縁のほぼ全体にわたって設けられている。さらに、繰り出し台20の上面には、ガイド部24の左端部と対向するように配置されたガイド手段としてのガイドブロック25が設けられている。繰り出し台20の上面におけるガイド部24とガイドブロック25との間の領域は連続紙12の搬送経路の一部になっており、ガイド部24とガイドブロック25とは連続紙12の前後方向の幅と同じ距離だけ離間している。
【0020】
そして、繰り出し台20の上面に沿って連続紙12が右側(本体部14側)に向かって搬送される際には、連続紙12の前後の側縁がガイド部24及びガイドブロック25に対して摺動することで、連続紙12が搬送方向(ここでは右方向)に沿ってガイドされるようになっている。なお、繰り出し台20の上面においてガイドブロック25は前後方向に移動可能になっており、連続紙12の前後方向の幅が変更された場合には、ガイドブロック25を移動させることで、ガイド部24とガイドブロック25との間の距離が連続紙12の前後方向の幅に合わせて変更される。
【0021】
図1に示すように、本体部14の本体ケース16内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース16内を上下に区画する平板状のベース部材としての基台30が設けられており、本体ケース16内における基台30よりも上側の領域は連続紙12に印刷を行うための印刷室31となっている。一方、本体ケース16内における基台30よりも下側の領域には、左右方向に並ぶように区画された3つの区画室33,34,35が形成されている。なお、これら3つの区画室は、左から順に第1区画室33、第2区画室34、第3区画室35とされている。
【0022】
本体ケース16の左壁には繰り出し台20の上面から第1区画室33内に連続紙12を搬入するための図示しない搬入口が設けられており、第1区画室33には上記搬入口と近接位置で対向するように引き込み駆動ローラ36が回転駆動可能に設けられている。すなわち、引き込み駆動ローラ36は、第1区画室33の左端部に配設されている。
【0023】
また、第1区画室33内における引き込み駆動ローラ36の右方には中継ローラ40が回転可能に設けられている。そして、引き込み駆動ローラ36の駆動によって第1区画室33内に引き込まれた連続紙12は、印刷室31の左端部寄りの位置に向かうように中継ローラ40に巻き掛けられている。
【0024】
第1区画室33内における引き込み駆動ローラ36と中継ローラ40との間には図示しない昇降機構の駆動に基づき昇降移動する昇降ローラ42が設けられている。そして、この昇降ローラ42に対しては連続紙12が下側から巻き掛けられている。
【0025】
ここで、引き込み駆動ローラ36と中継ローラ40との間に位置する連続紙12の長さは、昇降ローラ42が下降するほど長くなるとともに、昇降ローラ42が上昇するほど短くなるようになっている。すなわち、昇降ローラ42が下側に位置するほど引き込み駆動ローラ36と中継ローラ40との間の連続紙12の搬送距離が長くなるとともに、昇降ローラ42が上側に位置するほど引き込み駆動ローラ36と中継ローラ40との間の連続紙12の搬送距離が短くなるようになっている。
【0026】
図1に示すように、基台30における中継ローラ40と対向する位置には、該基台30を上下に貫通するように、連続紙12を搬送方向(ここでは上方向)に沿ってガイドするガイド手段としてのガイド装置43が設けられている。印刷室31内におけるガイド装置43の上側には中継ローラ46が設けられており、該中継ローラ46には連続紙12が左側下方から巻き掛けられて右方向に水平に搬送されるようになっている。
【0027】
印刷室31内における中継ローラ46の右側の領域には、基台30上に支持された矩形板状の支持部材としてのプラテン48が設けられている。プラテン48の右側には、該プラテン48を挟んで中継ローラ46と対向するように転換ローラ49が設けられている。この場合、中継ローラ46の上面、プラテン48の上面、及び転換ローラ49の上面は、互いに面一になっている。
【0028】
転換ローラ49には中継ローラ46からプラテン48の上面に沿って水平右方向に搬送される連続紙12が左側上方から巻き掛けられて連続紙12の搬送方向が水平右方向から鉛直下方向に転換されている。そして、転換ローラ49によって搬送方向が鉛直下方向に転換された連続紙12は、基台30に設けられた図示しない挿通孔を通って第3区画室35内に搬送されるようになっている。
【0029】
印刷室31内におけるプラテン48の前後両側には左右方向に延びるガイドレール50(図1では二点鎖線で示す)が対をなすように設けられており、該ガイドレール50の上面はプラテン48の上面よりも高くなっている。両ガイドレール50の上面には、矩形板状のキャリッジ51が該両ガイドレール50に沿って左右方向へ往復移動可能な状態で支持されている。そして、キャリッジ51は、図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール50上を左右方向に移動するようになっている。
【0030】
図1及び図2に示すように、キャリッジ51の下面には、矩形板状のスライド板53が該キャリッジ51に対して前後方向にスライド移動可能に支持されている。スライド板53の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド54が支持されている。また、印刷室31内における本体ケース16の後壁上部には、液体としてのインクを一時貯留する複数のバルブユニット55が設けられている。各バルブユニット55には、互いに色の異なるインクが一時貯留されている。
【0031】
そして、各バルブユニット55は、記録ヘッド54とそれぞれ図示しないインク供給チューブを介して接続されており、該各インク供給チューブを介して記録ヘッド54に各インクを供給するようになっている。記録ヘッド54の下面には図示しない複数のノズル開口が設けられており、各バルブユニット55から供給されたインクを該各ノズル開口からプラテン48上に搬送されて停止された状態の連続紙12に向かって噴射することで印刷が行われるようになっている。
【0032】
したがって、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の印刷が行われるプラテン48の左端から右端までの領域は液体噴射領域としての印刷領域Aとされており、連続紙12は該連続紙12の搬送経路を印刷領域A単位で間欠的に搬送されるようになっている。
【0033】
なお、本体ケース16内には、互いに色の異なるインクを収容した複数のインクカートリッジ(図示略)が着脱自在な状態で設けられている。これら各インクカートリッジ(図示略)は、図示しないインク供給チューブを介して各バルブユニット55とインク供給可能な状態でそれぞれ接続されている。また、本体ケース16内には、各インクカートリッジ(図示略)内を加圧するための加圧ポンプ(図示略)が設けられており、該加圧ポンプを駆動させることで各インクカートリッジ(図示略)内のインクがインク供給チューブ(図示略)を介して各バルブユニット55にそれぞれ加圧供給されるようになっている。
【0034】
基台30上におけるプラテン48の左右両側には、印刷途中に適宜フラッシングを行う際に、記録ヘッド54の各ノズル開口(図示略)から吐出されるインクを受容するためのフラッシングボックス58が設けられている。また、基台30上における左側のフラッシングボックス58の左側には、記録ヘッド54のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット59が設けられている。メンテナンスユニット59は、記録ヘッド54と対応するキャップ59aを備えており、該キャップ59aは昇降可能になっている。
【0035】
キャップ59a内は、図示しない排出チューブを介して図示しない廃液タンク内と連通している。また、排出チューブの途中位置には該排出チューブ内をキャップ59a側から廃液タンク(図示略)側に向かって吸引可能な図示しないチューブポンプが設けられている。そして、メンテナンスユニット59上にキャリッジ51を移動させた状態でキャップ59aを上昇させると、キャップ59aが、記録ヘッド54の各ノズル開口(図示略)を囲うように、記録ヘッド54に対して当接するようになっている。
【0036】
そして、キャップ59aを記録ヘッド54の各ノズル開口(図示略)を囲うように記録ヘッド54に対して当接させた状態でチューブポンプ(図示略)を駆動することで、記録ヘッド54の各ノズル開口から増粘したインクや気泡をキャップ59a内に強制的に排出させる、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。なお、クリーニングによってキャップ59a内に排出された排出インクは排出チューブ(図示略)を介して廃液タンク(図示略)内に回収されるようになっている。
【0037】
図1に示すように、第3区画室35内における左寄りの位置には印刷領域Aで印刷された後の連続紙12を強制的に乾燥させるための強制定着手段及び強制乾燥手段としての上下に長い強制乾燥装置60が設けられている。そして、転換ローラ49に巻き掛けられて鉛直下方に搬送された連続紙12は、強制乾燥装置60内を通って該強制乾燥装置60の下側に回転可能に設けられた反転ローラ61に左側上方から巻き掛けられてやや右斜め上方に向かって搬送されるようになっている。
【0038】
このように、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の強制乾燥が行われる強制乾燥装置60内の上端から下端までの領域は強制定着領域としての強制乾燥領域Bとされている。そして、連続紙12の搬送方向(ここでは上下方向)における強制乾燥領域Bの距離は、連続紙12の搬送方向(ここでは左右方向)における印刷領域Aの距離の正の整数倍(本実施形態では1倍)となるように設定されている。ちなみに、本実施形態では、連続紙12の搬送方向において、強制乾燥領域Bの距離と印刷領域Aの距離とは等しくなるように設定されている。
【0039】
また、連続紙12の搬送経路の途中位置であって印刷領域Aと強制乾燥領域Bとの間で連続紙12が転換ローラ49に巻き掛けられる領域は、印刷領域Aで印刷された後の連続紙12が強制乾燥領域Bで強制乾燥される前に自然乾燥される領域となるため、自然乾燥領域Cとされている。なお、本実施形態では、強制乾燥領域Bと自然乾燥領域Cとにより定着領域としての乾燥領域が構成されている。
【0040】
反転ローラ61から右斜め上方に向かって搬送された連続紙12は、第3区画室35内における右下端部に回転可能に設けられた中継ローラ62に左側下方から巻き掛けられ、第3区画室35内を本体ケース16の右壁に沿うように上方に向かって搬送されるようになっている。第3区画室35内における反転ローラ61と中継ローラ62との間の位置には、強制乾燥領域Bで強制乾燥された後の連続紙12に張力を付与するように該連続紙12を下側から押圧する押圧部材としてのダンサーローラ93が設けられている。
【0041】
また、本体ケース16の右壁における第3区画室35の上端部と対応する位置には連続紙12を巻き取り部15側へ搬出するための図示しない搬出口が設けられており、第3区画室35には上記搬出口と近接位置で対向するように送り出し駆動ローラ64が回転駆動可能に設けられている。そして、この送り出し駆動ローラ64を駆動することで、連続紙12が上記搬出口を介して巻き取り部15側へ送り出されるようになっている。
【0042】
図1に示すように、巻き取り部15は直方体状の巻き取りフレーム68を備えており、巻き取りフレーム68の高さは送り出し駆動ローラ64の高さとほぼ同じになっている。巻き取りフレーム68の前面における上端部には中継ローラ69が回転可能に設けられている。上記搬出口から送り出される連続紙12は、中継ローラ69に左側上方から巻き掛けられ、真下に向かって搬送されるようになっている。
【0043】
巻き取りフレーム68の前面における中継ローラ69の下側の位置には、中継ローラ69から真下に向けて搬送された連続紙12を搬送方向(ここでは下方向)に沿ってガイドするガイド手段としてのガイド装置72が設けられている。巻き取りフレーム68の前面におけるガイド装置72の下側の位置には中継ローラ73が回転可能に設けられており、ガイド装置72を介して下方に搬送ガイドされる連続紙12は中継ローラ73に左側から巻き掛けられて右斜め下方に向かって搬送されるようになっている。
【0044】
巻き取りフレーム68の前面における中継ローラ73の右斜め下方には前方に向かって延びる巻き取り駆動軸74が巻き取りフレーム68に対して回転駆動可能に支持されている。巻き取り駆動軸74には中継ローラ73から右斜め下方に向かって搬送された連続紙12が巻き付けられており、該巻き取り駆動軸74を回転駆動することで巻き取り駆動軸74に連続紙12が順次巻き取られるようになっている。
【0045】
巻き取り駆動軸74の基端には該巻き取り駆動軸74と一体に回転する円板状の回転板75が設けられており、該回転板75は巻き取り駆動軸74で連続紙12を巻き取る際に、連続紙12が正確に巻き取られるようにするためのガイドとして機能するようになっている。
【0046】
次に、強制乾燥装置60の構成について詳述する。
図3及び図4に示すように、強制乾燥装置60は断面視矩形状をなす乾燥ケース80を備えており、該乾燥ケース80内における左右方向のほぼ中央には該乾燥ケース80内を左右2つの区画室に区画する区画プレート81が設けられている。乾燥ケース80内において、区画プレート81の右側の区画室は温風が送入される温風送入室82とされ、区画プレート81の左側の区画室は印刷された後の連続紙12が乾燥される乾燥室83とされている。
【0047】
区画プレート81には温風送入室82と乾燥室83とを連通する多数の連通孔81aが形成されており、連通孔81aは区画プレート81全体にわたって前後方向及び左右方向に規則的に配列されている。すなわち、区画プレート81には、該区画プレート81全体にわたって多数の連通孔81aが均一に配列形成されている。
【0048】
乾燥ケース80の上下両壁における乾燥室83と対応する位置には、乾燥室83の内外を貫通するように平面視矩形状の貫通孔84がそれぞれ設けられている。したがって、転換ローラ49から搬送される連続紙12は、乾燥ケース80の上側の貫通孔84、乾燥室83、下側の貫通孔84を通って反転ローラ61側へ搬送されるようになっている。この場合、連続紙12は、乾燥室83内を搬送される際に、印刷された面である表面が区画プレート81の左面と対向するようになっている。
【0049】
乾燥ケース80の後側には送風ファン85が設けられており、該送風ファン85の上面には送風ファン85を駆動するためのファンモータ86が設けられている。送風ファン85の前面における右端側には図示しない送風口が設けられており、該送風口は乾燥ケース80の後壁における温風送入室82と対応する位置に温風送入室82の内外を貫通するように設けられた送入口87に臨んでいる。
【0050】
また、乾燥ケース80の後側であって送風ファン85の左斜め前側にはヒータ88が設けられており、該ヒータ88は送風ファン85の前面と左面との間の面に設けられた図示しない吸気口に臨んでいる。したがって、送風ファン85を駆動することで、ヒータ88によって暖められた空気が送風ファン85の吸気口(図示略)から吸入されて送風ファン85の送風口(図示略)から温風として温風送入室82内に送入されるようになっている。
【0051】
そして、温風送入室82内に送入された温風が区画プレート81に設けられた各連通孔81aから乾燥室83内を搬送される連続紙12の表面に均一に吹き付けられることで、該連続紙12が強制的に均一に乾燥されるようになっている。なお、図3及び図4における矢印は、連続紙12の表面に吹き付けられる温風を示している。
【0052】
次に、ダンサーローラ93を有する押圧ユニットの構成について詳述する。
図3に示すように、押圧手段としての押圧ユニット63は、第3区画室35(図1参照)の内底面に固定されるとともに上面が左側に傾斜した台座90を備えている。台座90の上面には弾性部材としてのコイルばね91が立設されており、該コイルばね91の先端(上端)には枠状のローラ支持部材92が支持されている。ローラ支持部材92にはダンサーローラ93が該ローラ支持部材92に対して回転可能に軸支されており、該ダンサーローラ93は連続紙12の印刷された面とは反対側の面である裏面に当接している。
【0053】
この場合、ダンサーローラ93はコイルばね91によりローラ支持部材92を介して常に連続紙12側である上側に向かって付勢されている。したがって、ダンサーローラ93は、連続紙12に張力を付与するように、該連続紙12の裏面を常に押圧するようになっている。
【0054】
次に、上記のように構成されたインクジェット式プリンタ11の作用について説明する。
さて、連続紙12は、プラテン48上にて最初に印刷する部分の印刷が完了すると、この最初に印刷が完了した部分が印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送されて一時停止し、プラテン48上には2番目に印刷する部分が搬送されて支持される。このとき、連続紙12において最初に印刷が完了した部分は、その大半が強制乾燥領域Bに位置するとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cに位置している。
【0055】
したがって、2番目に印刷する部分が印刷されている間、連続紙12は、最初に印刷が完了した部分の大半が強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられることで強制的に乾燥されるとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cにて自然乾燥される。引き続き、プラテン48上にて2番目に印刷する部分の印刷が完了すると、連続紙12は、この2番目に印刷した部分が印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送されて一時停止し、プラテン48上には3番目に印刷する部分が搬送されて支持される。
【0056】
すると、連続紙12において、最初に印刷が完了した部分のうち自然乾燥領域Cに位置していた部分は強制乾燥領域Bに位置するとともに、強制乾燥領域Bに位置していた部分は強制乾燥領域Bよりも下流側に搬送される。このとき、2番目に印刷が完了した部分は、その大半が強制乾燥領域Bに位置するとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cに位置している。
【0057】
したがって、連続紙12は、3番目に印刷する部分が印刷されている間、2番目に印刷が完了した部分の大半が強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられることで強制的に乾燥されるとともに、残りの部分は自然乾燥領域Cにて自然乾燥される。このようにして連続紙12には印刷領域Aの距離単位で順次印刷が行われる。
【0058】
そして、本実施形態では、連続紙12が一定時間毎に間欠的に搬送されるとともに、連続紙12の搬送方向における印刷領域Aの距離と強制乾燥領域Bの距離とが等しくなっているので、強制乾燥領域Bでの各印刷領域Aの距離単位における連続紙12の強制乾燥時間は一定となる。この場合、強制乾燥領域Bの距離が印刷領域Aの距離の正の整数倍(1倍、2倍、3倍、・・・)となるように設定されていれば、連続紙12の強制乾燥領域Bにおける強制乾燥時間は一定になる。
【0059】
そして、本実施形態のように、自然乾燥領域Cが存在し、印刷領域Aに相当する分の連続紙12を一括して強制乾燥領域Bに挿入できないときでも、連続紙12を間欠して搬送し続ける中で、連続紙12における1回分の印刷が完了した領域のうち、先に強制乾燥領域Bに挿入された部分における強制乾燥時間と、後に挿入された部分における強制乾燥時間とはトータルとして同じになる。
【0060】
したがって、各印刷領域Aの距離単位毎の連続紙12は全て均一に乾燥されるため、長尺状の連続紙12全体も均一に乾燥される。なお、本実施形態では、連続紙12として印刷後のインクが特に乾燥しにくい光沢紙を用いているが、印刷後の連続紙12は、強制乾燥領域Bにて温風が吹き付けられるため、限られた強制乾燥領域B内において短時間で十分に乾燥される。このように、連続紙12の搬送経路の途中位置であって連続紙12の強制乾燥が行われる強制乾燥装置60内の上端から下端までの領域は強制定着領域(強制乾燥領域B)とされ、光沢紙(連続紙12)等に印字された液体(インク)を定着するための手段を備えることで良好な印刷物が得られる。
【0061】
また、連続紙12に光沢紙を用いると、印刷した後に乾燥させると膨張したりしわができたりして搬送時に弛むことがある。この点、本実施形態では、連続紙12の搬送経路における強制乾燥領域Bのすぐ下流側に、連続紙12に対して張力を付与するように押圧するダンサーローラ93が設けられているため、連続紙12の弛みが効果的に抑制される。したがって、連続紙12が搬送時に前後方向に蛇行することが抑制される。このとき、ダンサーローラ93は、連続紙12の印刷面とは反対側の裏面から押圧しているため、連続紙12に印刷された印刷画像に悪影響を及ぼすことはない。
【0062】
また、ダンサーローラ93はコイルばね91に支持されたローラ支持部材92によって支持されているため、ダンサーローラ93が押圧する連続紙12の弛み具合が変化しても、その変化分がコイルばね91の弾力性によって吸収される。このため、ダンサーローラ93により連続紙12に対して常に適度な張力が与えられる。
【0063】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)印刷後の連続紙12が強制乾燥領域Bで温風を吹き付けられて強制的に乾燥されるので、印刷後の連続紙12を限られた強制乾燥領域B内において短時間で十分に乾燥させることができる。このため、印刷後の連続紙12が乾燥不足の状態で巻き取り駆動軸74に巻き取られることを抑制することができる。
【0064】
(2)連続紙12は印刷領域Aの距離単位で一定時間毎に間欠的に搬送され、連続紙12の搬送方向において、強制乾燥領域Bの距離は印刷領域Aの距離の1倍となるように設定されている。このため、連続紙12が印刷領域Aの距離単位毎に強制乾燥領域Bで乾燥される時間が一定となるので、印刷後の連続紙12を均一に乾燥することができる。
【0065】
(3)連続紙12の搬送経路において、印刷領域Aと強制乾燥領域Bとの間には自然乾燥領域Cが設けられているため、印刷領域Aと強制乾燥領域Bとは自然乾燥領域Cの距離分だけ離間される。加えて、連続紙12の搬送方向は、自然乾燥領域Cにおいて転換ローラ49により水平右方向から鉛直下方向に、すなわち記録ヘッド54から遠ざかる方向に転換されている。このため、強制乾燥領域Bにおいて印刷後の連続紙12を強制乾燥させる際に該連続紙12に吹き付ける温風が、印刷領域Aでの連続紙12の印刷に対して悪影響を及ぼすことを効果的に抑制することができる。
【0066】
(4)連続紙12の搬送経路において、ガイド部24及びガイドブロック25は巻き軸18の直ぐ下流側に配設され、ガイド装置43はプラテン48の直ぐ上流側に配設され、ガイド装置72は巻き取り駆動軸74の直ぐ上流側に配設されている。このため、連続紙12の搬送経路において、特に、ガイド部24及びガイドブロック25、ガイド装置43、及びガイド装置72の直ぐ下流側で連続紙12が蛇行して搬送されることを抑制することができる。したがって、ガイド部24及びガイドブロック25により本体部14側へ正確に連続紙12を搬送することができること、ガイド装置43によりプラテン48の上面に正確に連続紙12を搬送することができること、及びガイド装置72により連続紙12が正確に巻き取られるようにすることができることの3つの効果を同時に得ることができる。
【0067】
(5)連続紙12の搬送経路における強制乾燥領域Bの直ぐ下流側の位置には、強制乾燥後の連続紙12に張力を付与するダンサーローラ93が設けられているため、印刷して強制乾燥させた際に連続紙12が弛んだとしても、該強制乾燥後の連続紙12に対して好適に張力を付与することができる。このため、印刷して強制乾燥させた後の連続紙12の搬送時における弛みを解消することができるので、該連続紙12が搬送時に蛇行することを抑制することができる。
【0068】
(6)ダンサーローラ93は連続紙12の印刷面とは反対側の裏面から押圧することで該連続紙12に対して張力を付与しているため、連続紙12の表面に印刷された印刷画像に対してダンサーローラ93が悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0069】
(7)連続紙12に対して張力を付与するダンサーローラ93はコイルばね91に支持されたローラ支持部材92によって回転可能に支持されている。このため、ダンサーローラ93が押圧する連続紙12の弛み具合が変化しても、その変化分をコイルばね91の弾力性によって吸収することができるので、ダンサーローラ93によって連続紙12に付与される張力の変動を抑えることができる。すなわち、ダンサーローラ93によって連続紙12に付与される張力を安定させることができる。
【0070】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ガイド部24、ガイドブロック25、ガイド装置43、ガイド装置72のうち少なくとも1つを省略してもよい。
【0071】
・強制乾燥領域Bから強制乾燥装置60を省略してもよい。
・押圧ユニット63において、コイルばね91の代わりに、弾性部材として板ばねやゴムなどを用いてもよい。
【0072】
・押圧ユニット63において、ダンサーローラ93の代わりに、弾性部材として板ばねやゴムなどを用いてもよい。
・押圧ユニット63は、ダンサーローラ93が連続紙12の印刷面(表面)を押圧するように配置してもよい。
【0073】
・液体として紫外線硬化タイプのインクを用いてもよく、この場合には、強制乾燥装置60の代わりにもしくは加えて紫外線照射装置を強制定着手段として配置する必要がある。
【0074】
・押圧ユニット63は、複数配置するようにしてもよい。
・連続紙12の代わりに、長尺状のプラスチックフィルムなどをターゲットとして用いてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射する液体噴射装置に具体化してもよい。そして、本明細書における「液体」には、例えば、無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含むほか、液状体、流状体などが含まれる。
【0076】
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)上流側から搬送される長尺状のターゲットに液体を噴射し、該液体が噴射された後の前記ターゲットを乾燥させて下流側で巻き取るように構成された液体噴射装置において、前記ターゲットの搬送経路の途中位置には、前記ターゲットに前記液体が噴射される液体噴射領域と、該液体噴射領域よりも下流側に位置するとともに前記液体が噴射された後の前記ターゲットを乾燥させる乾燥領域とが設けられ、前記ターゲットの搬送経路における前記乾燥領域よりも下流側の位置には、前記ターゲットに張力を付与するように該ターゲットを押圧する押圧手段が設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンタの概略正面図。
【図2】同プリンタの概略平面図。
【図3】同プリンタの強制乾燥装置の正面拡大断面図。
【図4】同プリンタの強制乾燥装置の平面拡大図。
【符号の説明】
【0078】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、12…ターゲットとしての連続紙、24…ガイド手段としてのガイド部、25…ガイド手段としてのガイドブロック、43…ガイド手段としてのガイド装置、54…液体噴射ヘッドとしての単位記録ヘッド、60…強制定着手段及び強制乾燥手段としての強制乾燥装置、63…押圧手段としての押圧ユニット、72…ガイド手段としてのガイド装置、91…弾性部材としてのコイルばね、93…押圧部材としてのダンサーローラ、A…液体噴射領域としての印刷領域、B…定着領域としての乾燥領域を構成する強制定着領域としての強制乾燥領域、C…定着領域としての乾燥領域を構成する自然乾燥領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から搬送される長尺状のターゲットに液体を噴射し、該ターゲットに着弾した前記液体を該ターゲットに定着させてから該ターゲットを下流側で巻き取るように構成された液体噴射装置において、
前記ターゲットの搬送経路の途中位置には、前記ターゲットに前記液体が噴射される液体噴射領域と、該液体噴射領域よりも下流側に位置するとともに前記ターゲットに着弾した前記液体を前記ターゲットに定着させる定着領域とが設けられ、
前記ターゲットの搬送経路における前記定着領域よりも下流側の位置には、前記ターゲットに張力を付与するように該ターゲットを押圧する押圧手段が設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記定着領域は、前記液体が噴射された後の前記ターゲットを乾燥させる乾燥領域であって、
前記ターゲットに着弾した前記液体は、該液体が噴射された後の前記ターゲットを前記乾燥領域において乾燥させることで該ターゲットに定着されることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記ターゲットにおける前記液体が噴射された面とは反対側の面を押圧するように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記押圧手段は、前記ターゲットに当接する押圧部材と、該押圧部材を前記ターゲット側に向かって付勢する弾性部材とを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記乾燥領域には、前記液体が噴射された後の前記ターゲットを強制的に乾燥させる強制乾燥手段が設けられていることを特徴とする請求項2〜請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記ターゲットの搬送経路には、前記ターゲットを搬送方向に沿ってガイドするガイド手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−73013(P2009−73013A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243773(P2007−243773)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】