液体噴射装置
【課題】固化した液体を掻き取り手段で掻き取り易くできる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド１２から噴射されたインクＩを受けるメンテナンス装置１３と、ベルト部材１６で受けたインクＩを掻き取るスクレイパ１７と、を有するインクジェット式記録装置（プリンター）１１において、メンテナンス装置１３は、記録ヘッド１２から噴射されたインクＩを受ける外周面１６ａを有するベルト部材１６と、ベルト部材１６を架け渡して搬送する第２ローラー１５とを備え、第２ローラー１５を多角柱状に形成することにより、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形とする突起部Ｋを設けた。
【解決手段】記録ヘッド１２から噴射されたインクＩを受けるメンテナンス装置１３と、ベルト部材１６で受けたインクＩを掻き取るスクレイパ１７と、を有するインクジェット式記録装置（プリンター）１１において、メンテナンス装置１３は、記録ヘッド１２から噴射されたインクＩを受ける外周面１６ａを有するベルト部材１６と、ベルト部材１６を架け渡して搬送する第２ローラー１５とを備え、第２ローラー１５を多角柱状に形成することにより、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形とする突起部Ｋを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、液体噴射装置の１つとして、インクジェット式記録装置が広く知られている。インクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録紙上にインク滴（液体）を噴射（吐出）して記録が行われる。このようなインクジェット式記録装置では、インクの蒸発に伴うインクの増粘や固化などによってノズルに目詰まりが生じ、印刷不良を引き起こす問題があった。このような問題に対し、非印字領域に設けたフラッシング領域においてノズル内のインクを強制的に噴射させるフラッシング動作を行って、ノズルの目詰まりを解消する技術が知られている（特許文献１）。
【０００３】
特許文献１では、フラッシング動作によって記録ヘッドから噴射されたインクを受ける回転ローラーと、この回転ローラー上のインクを掻き取るスクレイパ（掻き取り手段）を備えている。この回転ローラー上に噴射されたインクは、回転ローラーの回転に伴ってスクレイパが配設された位置へ移動するとともにスクレイパによって掻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００３−３２０６９０号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、特許文献１では、回転ローラー上にインクが堆積するように固化した場合、スクレイパによるインクの掻き取りが困難になったり、掻き取る際の負荷が高くなったりしてしまう虞があった。
【０００６】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、固化した液体を掻き取り手段で掻き取り易くできる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け手段と、前記液受け手段で受けた液体を掻き取る掻き取り手段と、を有する液体噴射装置において、前記液受け手段は、前記記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け面を有する帯状部材と、前記帯状部材を架け渡して搬送するローラー部材とを備え、前記ローラー部材まわりで回動する帯状部材の回動軌跡を非円形とする変形手段を設けた。
【０００８】
この構成によれば、変形手段によって、ローラー部材まわりで回動する帯状部材の回動軌跡を非円形にできる。このため、帯状部材の液受け面に噴射された液体（噴射物）が固化した場合であっても、帯状部材の回動軌跡が非円形とされることで固化した液体に割れ目（クラック）を生じさせ、掻き取り手段による液体の掻き取りを容易にすることができる。
【０００９】
本発明の液体噴射装置では、前記掻き取り手段は、前記帯状部材を介してローラー部材と対向するように設けられていることが好ましい。
この構成によれば、変形手段により固化した液体（噴射物）に割れ目を生じさせるとともに、割れ目を生じさせた状態のまま掻き取り手段で掻き取ることができる。このため、掻き取り手段による液体の掻き取りを容易に行うことができる。
【００１０】
本発明の液体噴射装置では、前記変形手段は、前記帯状部材を帯状部材の搬送方向と交差する方向に屈曲させることが好ましい。
この構成によれば、帯状部材の液受け面に噴射された液体が帯状部材の搬送方向に沿って延びるように付着している場合、液体（噴射物）が固化した際に当該固化した液体に割れ目を生じさせ易くできる。
【００１１】
本発明の液体噴射装置では、前記変形手段は、前記帯状部材を帯状部材の搬送方向に沿って屈曲させることが好ましい。
この構成によれば、帯状部材の液受け面に噴射された液体が帯状部材の搬送方向と交差する方向に沿って延びるように付着している場合、液体（噴射物）が固化した際に当該固化した液体に割れ目を生じさせ易くできる。
【００１２】
本発明の液体噴射装置では、前記変形手段を多角柱状のローラー部材の角部により構成したことが好ましい。
この構成によれば、多角柱状のローラー部材の角部によって、帯状部材の回動軌跡が非円形とされ、固化した液体（噴射物）に割れ目を生じさせ易くできる。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】記録ヘッド及びメンテナンス装置の側面図。
【図２】記録ヘッド及びメンテナンス装置の平面図。
【図３】メンテナンス装置の別の実施形態を示す模式図。
【図４】（ａ）〜（ｆ）は、第１ローラー及び第２ローラーの別の実施形態を示す模式図。
【図５】（ａ）及び（ｂ）は、第１ローラー及び第２ローラーの別の実施形態を示す模式図。
【図６】メンテナンス装置の別の実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
以下、本発明を記録装置の一種であるプリンターに具体化した実施形態を図１及び図２を用いて説明する。
図１及び図２に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置（以下、単に「プリンター」と示す）１１は、液体としてのインクＩを噴射（吐出）する記録ヘッド１２を備えている。記録媒体となる記録紙と対向配置される記録ヘッド１２の下面は、図示しないインクタンクから供給されるインクＩを噴射する複数のノズルが一定の間隔で開口形成され、ノズル列が形成されたノズル形成面１２ａとされている。なお、記録ヘッド１２内には、図示しない圧電素子が各ノズルと個別対応するように配設されている。プリンター１１では、各圧電素子が駆動制御されることで、各ノズルからインクＩが噴射される。そして、プリンター１１では、図示しない紙送り機構によって記録紙を搬送するとともに、この搬送された記録紙に対して記録ヘッド１２（ノズル）から噴射されたインクＩを付着させることで、記録紙に印刷が施される。
【００１５】
また、本実施形態のプリンター１１において、記録ヘッド１２は、記録紙に印刷を施す印刷位置と、記録ヘッド１２（ノズル）のメンテナンスを行うメンテナンス位置との間で、図示しないキャリッジにより移動可能に構成されている。記録ヘッド１２がメンテナンス位置に位置した状態において、記録ヘッド１２の下方であって記録ヘッド１２に対応する位置には、記録ヘッド１２（ノズル）のメンテナンスを行う液受け手段としてのメンテナンス装置１３が配設されている。
【００１６】
メンテナンス装置１３は、多角柱状（本実施形態では正八角柱状）をなす第１ローラー１４及び第２ローラー１５を備えている。本実施形態では、第２ローラー１５がローラー部材を構成する。各ローラー１４，１５は、何れも水平に延びるように支持されるとともに、相互に平行に並設されている。各ローラー１４，１５の外周面には、各ローラー１４，１５の両端に位置する各頂点同士を結ぶ側辺を含む角部としての突起部Ｋが形成されているとともに、各突起部Ｋは水平に且つ相互に平行に伸びるように形成されている。各突起部Ｋは、円柱体に対し各ローラー１４，１５の直径方向の外側へ突出する部位と把握できる。
【００１７】
そして、第１ローラー１４及び第２ローラー１５には、無端帯状に形成された帯状部材としてのベルト部材１６が架け渡されている。第１ローラー１４には、図示しないモーターが接続されており、当該モーターの回転駆動によって軸線回りの回転方向Ｙａ（矢印Ｙａで示す）に回転可能に構成されている。そして、メンテナンス装置１３では、第１ローラー１４が回転駆動されることに伴ってベルト部材１６が搬送方向Ｙｂ（矢印Ｙｂに示す）に搬送されるとともに、該ベルト部材１６の搬送に伴って第２ローラー１５が回転駆動されるようになっている。すなわち、各ローラー１４，１５の各突起部Ｋは、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと直交するように配置されている。
【００１８】
また、ベルト部材１６は、各ローラー１４，１５まわりで回動することから、ベルト部材１６が各ローラー１４，１５に接する（架かる）接触領域Ｒａにおいて、八角柱状に形成された各ローラー１４，１５の外周面に沿って屈曲される。より具体的に言えば、接触領域Ｒａにおいてベルト部材１６は、各ローラー１４，１５の突起部Ｋによってベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと交差する方向であって、ベルト部材１６の厚さ方向に屈曲される。このため、接触領域Ｒａにおいて、ベルト部材１６は、各ローラー１４，１５まわりで回動する際の回動軌跡が側面視で多角形状（非円形，非円弧面）をなすようになっている。本実施形態では、各ローラー１４，１５の突起部Ｋは、各ローラー１４，１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）とする変形手段となる。
【００１９】
一方、ベルト部材１６は、ベルト部材１６が各ローラー１４，１５に接しない（架からない）非接触領域Ｒｂにおいて、平面をなすようになっている。本実施形態では、非接触領域Ｒｂのうち、ベルト部材１６の上側が第１非接触領域Ｒｂ１となり、各ローラー１４，１５を挟んでベルト部材１６の下側が第２非接触領域Ｒｂ２となる。
【００２０】
そして、本実施形態のメンテナンス装置１３は、記録ヘッド１２がメンテナンス位置に位置した状態において、記録ヘッド１２のノズル形成面１２ａとベルト部材１６の外周面１６ａとが非接触領域Ｒｂ（第１非接触領域Ｒｂ１）にて対向配置されるようになっている。このとき、ノズル形成面１２ａと、第１非接触領域Ｒｂ１におけるベルト部材１６の外周面１６ａとは、平行に配設される。このため、本実施形態では、メンテナンス位置において記録ヘッド１２からインクＩを噴射した際に、噴射されたインクＩが第１非接触領域Ｒｂ１にあるベルト部材１６の外周面１６ａに付着するようになっている。本実施形態では、外周面１６ａがインクＩを受ける（受容する）液受け面を構成している。
【００２１】
また、第１非接触領域及び第２ローラー１５より搬送方向Ｙｂの下流側となる第２非接触領域Ｒｂ２には、ベルト部材１６の外周面１６ａに摺接する長方形平板状の掻き取り手段としてのスクレイパ１７が配設されている。スクレイパ１７は、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと直交するように支持されている。また、スクレイパ１７は、側面視でベルト部材１６の外周面１６ａとスクレイパ１７とがなす搬送方向Ｙｂの下流側の摺接角度が鋭角となるように支持されている。スクレイパ１７は、ベルト部材１６が搬送方向Ｙｂに搬送される際にベルト部材１６の外周面１６ａに摺接し、ベルト部材１６の外周面１６ａに付着したインクＩを掻き取るようになっている。すなわち、スクレイパ１７は、ベルト部材１６に対して相対的に摺動する。また、スクレイパ１７の下方には、該スクレイパ１７で掻き取ったインクＩを回収する廃棄容器１８が配設されている。スクレイパ１７で掻き取られたインクＩは、スクレイパ１７から落下し、廃棄容器１８に回収されるようになっている。
【００２２】
次に、上記のように構成したプリンター１１の作用について説明する。
まず、記録ヘッド１２をメンテナンス位置へ移動させる。次に、記録ヘッド１２（ノズル）のフラッシング動作（インクＩの噴射）を開始させるとともに、図示しないモーターを駆動してベルト部材１６の搬送を開始する。記録ヘッド１２（ノズル）からインクＩが吐出されると、ベルト部材１６の外周面１６ａにインクＩが付着される。このとき、インクＩが付着された箇所は、ベルト部材１６の第１非接触領域Ｒｂ１であることから、ベルト部材１６は平面状とされている。そして、ベルト部材１６の搬送に伴ってインクＩに含まれる溶媒が蒸発し、インクＩが固化する。なお、以下の説明では、固化したインクＩを特に固化インクＩｂと示す。そして、固化インクＩｂは、固化インクＩｂの付着箇所がベルト部材１６の搬送に伴ってベルト部材１６の接触領域Ｒａに到達すると、ベルト部材１６が第２ローラー１５の突起部Ｋによって屈曲されることで分断されるように割れ目（クラック）Ｃが形成される。そして、固化インクＩｂの付着箇所がベルト部材１６の搬送に伴って第２非接触領域Ｒｂ２に到達すると、ベルト部材１６は屈曲状態が解除されて再び平面状とされる一方で、一旦形成された割れ目Ｃはそのまま残存する。そして、固化インクＩｂは、割れ目Ｃによって分断された塊毎にスクレイパ１７によって掻き取られ、廃棄容器１８に落下して回収される。
【００２３】
なお、ベルト部材１６の搬送速度によっては、記録ヘッド１２から噴射されたインクＩが接触領域Ｒａやスクレイパ１７の配設位置に到達する迄の間に固化しない場合も発生し得る。しかしながら、インクＩが固化していない場合には、スクレイパ１７で容易に掻き取ることができる。また、例えば、記録ヘッド１２からインクＩを噴射した直後にプリンター１１の電源が遮断された場合には、ベルト部材１６上に付着されたインクＩがそのまま残存して固化してしまうことが考えられる。本実施形態によれば、固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせてスクレイパ１７による固化インクＩｂの掻き取りを容易にすることができる。
【００２４】
次に、以上のように構成されたプリンター１１の作用について説明する。
（１）第２ローラー１５を多角柱状として突起部Ｋを形成し、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）となるようにした。このため、ベルト部材１６の外周面１６ａに噴射されたインクＩが固化した場合であっても、ベルト部材１６が屈曲によって非円形（非円弧面）とされることで固化インクＩｂに割れ目（クラック）Ｃを生じさせ、スクレイパ１７による固化インクＩｂの掻き取りを容易にすることができる。
【００２５】
（２）第２ローラー１５の突起部Ｋがベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと直交するように構成し、ベルト部材１６を搬送方向Ｙｂと交差する方向（ベルト部材１６の厚み方向）に屈曲させるようにした。このため、ベルト部材１６の外周面１６ａに噴射されたインクＩがベルト部材１６の搬送方向に沿って延びるように付着した場合、インクＩが固化したとしても当該固化した固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせ易くできる。
【００２６】
（３）第２ローラー１５を多角柱状に形成し、突起部Ｋでベルト部材１６を屈曲させるようにした。このため、簡便な構造としつつも、ベルト部材１６を屈曲させて固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。
【００２７】
（４）スクレイパ１７をベルト部材１６に摺接可能に支持する一方で、ベルト部材１６を搬送方向Ｙｂに移動させることで固化インクＩｂを掻き取るようにした。このため、スクレイパ１７を摺動動作させる構成と比較して簡潔な構成とすることができる。
【００２８】
（５）ベルト部材１６の外周面１６ａが平面をなす非接触領域Ｒｂ（第１非接触領域Ｒｂ１）において、記録ヘッド１２のノズル形成面１２ａと、ベルト部材１６の外周面１６ａとを平行に配置した状態でインクＩを外周面１６ａに向けて噴射させるようにした。このため、ノズル形成面１２ａから外周面１６ａ迄の離間距離を略均一とし、ノズルから噴射されたインクＩがミスト状にならないよう離間距離を適切に設定し得る。これに対し、例えば、円筒状のローラー上にインクＩを吐出する場合、平面状のノズル形成面１２ａの各部から円弧状のローラー迄の離間距離が一定とならない。この場合、記録ヘッド１２（ノズル形成面１２ａ）の大型化に伴って、ノズル形成面１２ａの中心位置における離間距離と、ノズル形成面１２ａの周縁部における離間距離との差が大きくなり、離間距離の設定が困難となる。すなわち、ノズル形成面１２ａの中心部を基準に離間距離を設定した場合には、周縁部の離間距離が大きくなり、噴射したインクＩがミスト化してローラーに付着し難くなる虞がある。その一方で、ノズル形成面１２ａの周縁部を基準に離間距離を設定した場合には、中心部の離間距離が小さくなり、ローラーからの跳ね返りでノズル形成面１２ａを汚染してしまう虞がある。これに対して、本実施形態の構成によれば、このような問題を好適に解決することができる。
【００２９】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ ベルト部材１６を無端状に形成したが、異なる構成としてもよい。例えば、図３に示すように、帯状に形成したベルト部材１６を巻き取る第１巻取り手段２０及び第２巻取り手段２１を設ける。ベルト部材１６の一端を第１巻取り手段２０で巻き取る一方、他端を第２巻取り手段２１で巻き取り可能に構成し、ベルト部材１６を往復運動可能に構成する。この場合、ローラー部材としてのローラー２２に接する領域が接触領域Ｒａとなり、ローラー２２に接しない領域が非接触領域Ｒｂとなる。そして、第１巻取り手段２０でベルト部材１６を巻き取りつつ記録ヘッド１２からインクＩを噴射させるとともに、その間、スクレイパ１７をベルト部材１６に摺接（当接）させる。そして、固化インクＩｂの掻き取り終了後、スクレイパ１７をベルト部材１６から離間させるとともに、第２巻取り手段２１でベルト部材１６を巻き取り、次回のフラッシング動作に備えるようにすればよい。このように構成しても、ベルト部材１６のうち第２巻取り手段２１側の第１非接触領域Ｒｂ１で記録ヘッド１２からインクＩを受け、接触領域Ｒａで固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。このため、固化インクＩｂの掻き取りを容易にすることができる。また、このような構成を採用することで、プリンター１１のハウジング（外装体）内におけるレイアウトの自由度を高めることができる。また、この場合、ベルト部材１６のうち第１巻取り手段２０側の第２非接触領域Ｒｂ２にスクレイパ１７を摺接可能に配置してもよい。
【００３０】
・ 図１及び図２では、スクレイパ１７を非接触領域Ｒｂ（第２非接触領域Ｒｂ２）に設けたが、接触領域Ｒａで摺接するように配設してもよい（図３参照）。すなわち、スクレイパ１７は、ベルト部材１６を介して各ローラー１４，１５と対向するように設けてもよい。この場合、図示しない付勢手段によってスクレイパ１７をベルト部材１６の外周面１６ａに追従可能に摺接させてもよい。このように構成することで、第２ローラー１５の突起部Ｋによりベルト部材１６を屈曲させて固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせると同時に、割れ目Ｃを生じさせた状態（割れ目Ｃが開いた状態）のままスクレイパ１７で掻き取ることができる。さらに、スクレイパ１７によりインクＩ（固化インクＩｂ）を掻き取る際の力を各ローラー１４，１５で受けることができる。このため、スクレイパ１７による固化インクＩｂの掻き取りをより容易に行うことができる。
【００３１】
・ 各ローラー１４，１５を他の形状としてもよい。例えば、各ローラー１４，１５を他の多角柱状（例えば三角柱や六角柱）や、側面視形状が星型や十字型の柱状に形成してもよい。このように構成しても、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）とし、固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。
【００３２】
・ また、各ローラー１４，１５は、図４（ａ）〜（ｆ）に示すように、他の形状としてもよい。図４（ａ），（ｃ），（ｅ）は、別の実施形態における各ローラー１４，１５の模式側面図を示しており、図４（ｂ）は図４（ａ）、図４（ｄ）は図４（ｃ）、図４（ｆ）は図４（ｅ）の各模式平面図を示している。図４（ａ），（ｂ）に示すように、円柱状（円筒状）に形成した各ローラー１４，１５の外周面において、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと直交する方向の全体に亘って、側面（断面）視方形の凸条Ｔを形成してもよい。また、図４（ｃ），（ｄ）に示すように、凸条Ｔの側面（断面）視形状を三角形に形成してもよい。また、図（ｅ），（ｆ）に示すように、凸条Ｔを分割して交互に千鳥配置となるように形成してもよい。また、各ローラー１４，１５のうち、何れか一方のみについて形状を変更してもよく、各ローラー１４，１５の両方について形状を変更してもよい。また、各凸条は、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂに対して斜めに交差するように配置してもよい。このように構成しても、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）とし、固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。この場合、凸条Ｔが変形手段を構成する。
【００３３】
・ また、図５（ａ），（ｂ）に示すように、各ローラー１４，１５に平面視でＶ字状の溝部２４を形成し、各溝部２４で挟まれるように、各ローラー１４，１５の側面視で直径方向の外側に向かって円形に突出する突起部Ｋを形成してもよい。この場合、突起部Ｋは、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂに沿って形成される。このように構成した場合には、各ローラー１４，１５まわりで回動するベルト部材１６を各突起部Ｋ（搬送方向Ｙｂ）に沿って波状に屈曲させることができる（図５に二点差線で示す）。なお、図５（ｂ）では、ベルト部材１６の断面を示している。このため、ベルト部材１６の外周面１６ａに噴射されたインクＩがベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと交差する方向に沿って延びるように付着した場合、インクＩが固化したとしても当該固化した固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせ易くできる。
【００３４】
・ また、変形手段をベルト部材１６の内周面１６ｂに形成してもよい。図６に示すように、各ローラー１４，１５を円柱状（円筒状）に形成するとともに、ベルト部材１６の内周面１６ｂの全周に搬送方向Ｙｂと直交する方向に延びる複数の突起部２５を形成する。各突起部２５は、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂに沿って等間隔で並ぶように設けるとともに、各突起部２５の高さを同一に設定する。このように構成することで、接触領域Ｒａにおいてベルト部材１６は、各突起部２５を介して各ローラー１４，１５に接触するとともに、各突起部２５によってベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと交差する方向であって、ベルト部材１６の厚さ方向に屈曲される。このため、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）とし、固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。すなわち、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材の回動軌跡が非円形（非円弧面）となるようにすればよい。この場合、突起部２５が変形手段を構成する。
【００３５】
・ ベルト部材１６の搬送経路中においてベルト部材１６（外周面１６ａ）の乾燥及びインクＩの固着を防止する保守液にベルト部材１６を浸漬する構成としてもよい。
・ スクレイパ１７は、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂに対し平面視で斜めに支持してもよい。すなわち、スクレイパ１７は、平面視で搬送方向Ｙｂと交差するように支持すればよい。
【００３６】
・ スクレイパ１７は、正方形や三角形に形成してもよい。この場合、直線状に形成された一辺をベルト部材１６（外周面１６ａ）に摺接させるようにすればよい。
・ ベルト部材１６を架け渡すローラーの数は適宜変更してもよい。例えば、ベルト部材１６にテンションを付与するテンションローラーを追加したり、各ローラー１４，１５と同等の作用を有するローラーを加えたりしてもよい。
【００３７】
・ ノズルをライン状に配設した記録ヘッド（ラインヘッド）とした場合、記録紙を搬送する経路上にメンテナンス装置１３を設けてもよい。この場合には、記録紙を搬送する際に用いる搬送ベルトとベルト部材１６とを兼用構成としてもよい。
【００３８】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式記録装置１１に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属（金属融液）のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、ＥＬ（エレクトロルミネッセンス）ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ（光学レンズ）などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【００３９】
１１…液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置（プリンター）、１２…記録ヘッド、１３…液受け手段を構成するメンテナンス装置、１５…ローラー部材を構成する第２ローラー、１６…帯状部材を構成するベルト部材、１６ａ…液受け面を構成する外周面、１７…掻き取り手段を構成するスクレイパ、２２…ローラー部材を構成するローラー、２５…変形手段を構成する突起部、Ｉ…液体としてのインク、Ｉｂ…固化インク、Ｋ…変形手段及び角部を構成する突起部、Ｔ…変形手段を構成する凸条、Ｙｂ…搬送方向。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、液体噴射装置の１つとして、インクジェット式記録装置が広く知られている。インクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録紙上にインク滴（液体）を噴射（吐出）して記録が行われる。このようなインクジェット式記録装置では、インクの蒸発に伴うインクの増粘や固化などによってノズルに目詰まりが生じ、印刷不良を引き起こす問題があった。このような問題に対し、非印字領域に設けたフラッシング領域においてノズル内のインクを強制的に噴射させるフラッシング動作を行って、ノズルの目詰まりを解消する技術が知られている（特許文献１）。
【０００３】
特許文献１では、フラッシング動作によって記録ヘッドから噴射されたインクを受ける回転ローラーと、この回転ローラー上のインクを掻き取るスクレイパ（掻き取り手段）を備えている。この回転ローラー上に噴射されたインクは、回転ローラーの回転に伴ってスクレイパが配設された位置へ移動するとともにスクレイパによって掻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００３−３２０６９０号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、特許文献１では、回転ローラー上にインクが堆積するように固化した場合、スクレイパによるインクの掻き取りが困難になったり、掻き取る際の負荷が高くなったりしてしまう虞があった。
【０００６】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、固化した液体を掻き取り手段で掻き取り易くできる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け手段と、前記液受け手段で受けた液体を掻き取る掻き取り手段と、を有する液体噴射装置において、前記液受け手段は、前記記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け面を有する帯状部材と、前記帯状部材を架け渡して搬送するローラー部材とを備え、前記ローラー部材まわりで回動する帯状部材の回動軌跡を非円形とする変形手段を設けた。
【０００８】
この構成によれば、変形手段によって、ローラー部材まわりで回動する帯状部材の回動軌跡を非円形にできる。このため、帯状部材の液受け面に噴射された液体（噴射物）が固化した場合であっても、帯状部材の回動軌跡が非円形とされることで固化した液体に割れ目（クラック）を生じさせ、掻き取り手段による液体の掻き取りを容易にすることができる。
【０００９】
本発明の液体噴射装置では、前記掻き取り手段は、前記帯状部材を介してローラー部材と対向するように設けられていることが好ましい。
この構成によれば、変形手段により固化した液体（噴射物）に割れ目を生じさせるとともに、割れ目を生じさせた状態のまま掻き取り手段で掻き取ることができる。このため、掻き取り手段による液体の掻き取りを容易に行うことができる。
【００１０】
本発明の液体噴射装置では、前記変形手段は、前記帯状部材を帯状部材の搬送方向と交差する方向に屈曲させることが好ましい。
この構成によれば、帯状部材の液受け面に噴射された液体が帯状部材の搬送方向に沿って延びるように付着している場合、液体（噴射物）が固化した際に当該固化した液体に割れ目を生じさせ易くできる。
【００１１】
本発明の液体噴射装置では、前記変形手段は、前記帯状部材を帯状部材の搬送方向に沿って屈曲させることが好ましい。
この構成によれば、帯状部材の液受け面に噴射された液体が帯状部材の搬送方向と交差する方向に沿って延びるように付着している場合、液体（噴射物）が固化した際に当該固化した液体に割れ目を生じさせ易くできる。
【００１２】
本発明の液体噴射装置では、前記変形手段を多角柱状のローラー部材の角部により構成したことが好ましい。
この構成によれば、多角柱状のローラー部材の角部によって、帯状部材の回動軌跡が非円形とされ、固化した液体（噴射物）に割れ目を生じさせ易くできる。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】記録ヘッド及びメンテナンス装置の側面図。
【図２】記録ヘッド及びメンテナンス装置の平面図。
【図３】メンテナンス装置の別の実施形態を示す模式図。
【図４】（ａ）〜（ｆ）は、第１ローラー及び第２ローラーの別の実施形態を示す模式図。
【図５】（ａ）及び（ｂ）は、第１ローラー及び第２ローラーの別の実施形態を示す模式図。
【図６】メンテナンス装置の別の実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
以下、本発明を記録装置の一種であるプリンターに具体化した実施形態を図１及び図２を用いて説明する。
図１及び図２に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置（以下、単に「プリンター」と示す）１１は、液体としてのインクＩを噴射（吐出）する記録ヘッド１２を備えている。記録媒体となる記録紙と対向配置される記録ヘッド１２の下面は、図示しないインクタンクから供給されるインクＩを噴射する複数のノズルが一定の間隔で開口形成され、ノズル列が形成されたノズル形成面１２ａとされている。なお、記録ヘッド１２内には、図示しない圧電素子が各ノズルと個別対応するように配設されている。プリンター１１では、各圧電素子が駆動制御されることで、各ノズルからインクＩが噴射される。そして、プリンター１１では、図示しない紙送り機構によって記録紙を搬送するとともに、この搬送された記録紙に対して記録ヘッド１２（ノズル）から噴射されたインクＩを付着させることで、記録紙に印刷が施される。
【００１５】
また、本実施形態のプリンター１１において、記録ヘッド１２は、記録紙に印刷を施す印刷位置と、記録ヘッド１２（ノズル）のメンテナンスを行うメンテナンス位置との間で、図示しないキャリッジにより移動可能に構成されている。記録ヘッド１２がメンテナンス位置に位置した状態において、記録ヘッド１２の下方であって記録ヘッド１２に対応する位置には、記録ヘッド１２（ノズル）のメンテナンスを行う液受け手段としてのメンテナンス装置１３が配設されている。
【００１６】
メンテナンス装置１３は、多角柱状（本実施形態では正八角柱状）をなす第１ローラー１４及び第２ローラー１５を備えている。本実施形態では、第２ローラー１５がローラー部材を構成する。各ローラー１４，１５は、何れも水平に延びるように支持されるとともに、相互に平行に並設されている。各ローラー１４，１５の外周面には、各ローラー１４，１５の両端に位置する各頂点同士を結ぶ側辺を含む角部としての突起部Ｋが形成されているとともに、各突起部Ｋは水平に且つ相互に平行に伸びるように形成されている。各突起部Ｋは、円柱体に対し各ローラー１４，１５の直径方向の外側へ突出する部位と把握できる。
【００１７】
そして、第１ローラー１４及び第２ローラー１５には、無端帯状に形成された帯状部材としてのベルト部材１６が架け渡されている。第１ローラー１４には、図示しないモーターが接続されており、当該モーターの回転駆動によって軸線回りの回転方向Ｙａ（矢印Ｙａで示す）に回転可能に構成されている。そして、メンテナンス装置１３では、第１ローラー１４が回転駆動されることに伴ってベルト部材１６が搬送方向Ｙｂ（矢印Ｙｂに示す）に搬送されるとともに、該ベルト部材１６の搬送に伴って第２ローラー１５が回転駆動されるようになっている。すなわち、各ローラー１４，１５の各突起部Ｋは、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと直交するように配置されている。
【００１８】
また、ベルト部材１６は、各ローラー１４，１５まわりで回動することから、ベルト部材１６が各ローラー１４，１５に接する（架かる）接触領域Ｒａにおいて、八角柱状に形成された各ローラー１４，１５の外周面に沿って屈曲される。より具体的に言えば、接触領域Ｒａにおいてベルト部材１６は、各ローラー１４，１５の突起部Ｋによってベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと交差する方向であって、ベルト部材１６の厚さ方向に屈曲される。このため、接触領域Ｒａにおいて、ベルト部材１６は、各ローラー１４，１５まわりで回動する際の回動軌跡が側面視で多角形状（非円形，非円弧面）をなすようになっている。本実施形態では、各ローラー１４，１５の突起部Ｋは、各ローラー１４，１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）とする変形手段となる。
【００１９】
一方、ベルト部材１６は、ベルト部材１６が各ローラー１４，１５に接しない（架からない）非接触領域Ｒｂにおいて、平面をなすようになっている。本実施形態では、非接触領域Ｒｂのうち、ベルト部材１６の上側が第１非接触領域Ｒｂ１となり、各ローラー１４，１５を挟んでベルト部材１６の下側が第２非接触領域Ｒｂ２となる。
【００２０】
そして、本実施形態のメンテナンス装置１３は、記録ヘッド１２がメンテナンス位置に位置した状態において、記録ヘッド１２のノズル形成面１２ａとベルト部材１６の外周面１６ａとが非接触領域Ｒｂ（第１非接触領域Ｒｂ１）にて対向配置されるようになっている。このとき、ノズル形成面１２ａと、第１非接触領域Ｒｂ１におけるベルト部材１６の外周面１６ａとは、平行に配設される。このため、本実施形態では、メンテナンス位置において記録ヘッド１２からインクＩを噴射した際に、噴射されたインクＩが第１非接触領域Ｒｂ１にあるベルト部材１６の外周面１６ａに付着するようになっている。本実施形態では、外周面１６ａがインクＩを受ける（受容する）液受け面を構成している。
【００２１】
また、第１非接触領域及び第２ローラー１５より搬送方向Ｙｂの下流側となる第２非接触領域Ｒｂ２には、ベルト部材１６の外周面１６ａに摺接する長方形平板状の掻き取り手段としてのスクレイパ１７が配設されている。スクレイパ１７は、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと直交するように支持されている。また、スクレイパ１７は、側面視でベルト部材１６の外周面１６ａとスクレイパ１７とがなす搬送方向Ｙｂの下流側の摺接角度が鋭角となるように支持されている。スクレイパ１７は、ベルト部材１６が搬送方向Ｙｂに搬送される際にベルト部材１６の外周面１６ａに摺接し、ベルト部材１６の外周面１６ａに付着したインクＩを掻き取るようになっている。すなわち、スクレイパ１７は、ベルト部材１６に対して相対的に摺動する。また、スクレイパ１７の下方には、該スクレイパ１７で掻き取ったインクＩを回収する廃棄容器１８が配設されている。スクレイパ１７で掻き取られたインクＩは、スクレイパ１７から落下し、廃棄容器１８に回収されるようになっている。
【００２２】
次に、上記のように構成したプリンター１１の作用について説明する。
まず、記録ヘッド１２をメンテナンス位置へ移動させる。次に、記録ヘッド１２（ノズル）のフラッシング動作（インクＩの噴射）を開始させるとともに、図示しないモーターを駆動してベルト部材１６の搬送を開始する。記録ヘッド１２（ノズル）からインクＩが吐出されると、ベルト部材１６の外周面１６ａにインクＩが付着される。このとき、インクＩが付着された箇所は、ベルト部材１６の第１非接触領域Ｒｂ１であることから、ベルト部材１６は平面状とされている。そして、ベルト部材１６の搬送に伴ってインクＩに含まれる溶媒が蒸発し、インクＩが固化する。なお、以下の説明では、固化したインクＩを特に固化インクＩｂと示す。そして、固化インクＩｂは、固化インクＩｂの付着箇所がベルト部材１６の搬送に伴ってベルト部材１６の接触領域Ｒａに到達すると、ベルト部材１６が第２ローラー１５の突起部Ｋによって屈曲されることで分断されるように割れ目（クラック）Ｃが形成される。そして、固化インクＩｂの付着箇所がベルト部材１６の搬送に伴って第２非接触領域Ｒｂ２に到達すると、ベルト部材１６は屈曲状態が解除されて再び平面状とされる一方で、一旦形成された割れ目Ｃはそのまま残存する。そして、固化インクＩｂは、割れ目Ｃによって分断された塊毎にスクレイパ１７によって掻き取られ、廃棄容器１８に落下して回収される。
【００２３】
なお、ベルト部材１６の搬送速度によっては、記録ヘッド１２から噴射されたインクＩが接触領域Ｒａやスクレイパ１７の配設位置に到達する迄の間に固化しない場合も発生し得る。しかしながら、インクＩが固化していない場合には、スクレイパ１７で容易に掻き取ることができる。また、例えば、記録ヘッド１２からインクＩを噴射した直後にプリンター１１の電源が遮断された場合には、ベルト部材１６上に付着されたインクＩがそのまま残存して固化してしまうことが考えられる。本実施形態によれば、固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせてスクレイパ１７による固化インクＩｂの掻き取りを容易にすることができる。
【００２４】
次に、以上のように構成されたプリンター１１の作用について説明する。
（１）第２ローラー１５を多角柱状として突起部Ｋを形成し、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）となるようにした。このため、ベルト部材１６の外周面１６ａに噴射されたインクＩが固化した場合であっても、ベルト部材１６が屈曲によって非円形（非円弧面）とされることで固化インクＩｂに割れ目（クラック）Ｃを生じさせ、スクレイパ１７による固化インクＩｂの掻き取りを容易にすることができる。
【００２５】
（２）第２ローラー１５の突起部Ｋがベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと直交するように構成し、ベルト部材１６を搬送方向Ｙｂと交差する方向（ベルト部材１６の厚み方向）に屈曲させるようにした。このため、ベルト部材１６の外周面１６ａに噴射されたインクＩがベルト部材１６の搬送方向に沿って延びるように付着した場合、インクＩが固化したとしても当該固化した固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせ易くできる。
【００２６】
（３）第２ローラー１５を多角柱状に形成し、突起部Ｋでベルト部材１６を屈曲させるようにした。このため、簡便な構造としつつも、ベルト部材１６を屈曲させて固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。
【００２７】
（４）スクレイパ１７をベルト部材１６に摺接可能に支持する一方で、ベルト部材１６を搬送方向Ｙｂに移動させることで固化インクＩｂを掻き取るようにした。このため、スクレイパ１７を摺動動作させる構成と比較して簡潔な構成とすることができる。
【００２８】
（５）ベルト部材１６の外周面１６ａが平面をなす非接触領域Ｒｂ（第１非接触領域Ｒｂ１）において、記録ヘッド１２のノズル形成面１２ａと、ベルト部材１６の外周面１６ａとを平行に配置した状態でインクＩを外周面１６ａに向けて噴射させるようにした。このため、ノズル形成面１２ａから外周面１６ａ迄の離間距離を略均一とし、ノズルから噴射されたインクＩがミスト状にならないよう離間距離を適切に設定し得る。これに対し、例えば、円筒状のローラー上にインクＩを吐出する場合、平面状のノズル形成面１２ａの各部から円弧状のローラー迄の離間距離が一定とならない。この場合、記録ヘッド１２（ノズル形成面１２ａ）の大型化に伴って、ノズル形成面１２ａの中心位置における離間距離と、ノズル形成面１２ａの周縁部における離間距離との差が大きくなり、離間距離の設定が困難となる。すなわち、ノズル形成面１２ａの中心部を基準に離間距離を設定した場合には、周縁部の離間距離が大きくなり、噴射したインクＩがミスト化してローラーに付着し難くなる虞がある。その一方で、ノズル形成面１２ａの周縁部を基準に離間距離を設定した場合には、中心部の離間距離が小さくなり、ローラーからの跳ね返りでノズル形成面１２ａを汚染してしまう虞がある。これに対して、本実施形態の構成によれば、このような問題を好適に解決することができる。
【００２９】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ ベルト部材１６を無端状に形成したが、異なる構成としてもよい。例えば、図３に示すように、帯状に形成したベルト部材１６を巻き取る第１巻取り手段２０及び第２巻取り手段２１を設ける。ベルト部材１６の一端を第１巻取り手段２０で巻き取る一方、他端を第２巻取り手段２１で巻き取り可能に構成し、ベルト部材１６を往復運動可能に構成する。この場合、ローラー部材としてのローラー２２に接する領域が接触領域Ｒａとなり、ローラー２２に接しない領域が非接触領域Ｒｂとなる。そして、第１巻取り手段２０でベルト部材１６を巻き取りつつ記録ヘッド１２からインクＩを噴射させるとともに、その間、スクレイパ１７をベルト部材１６に摺接（当接）させる。そして、固化インクＩｂの掻き取り終了後、スクレイパ１７をベルト部材１６から離間させるとともに、第２巻取り手段２１でベルト部材１６を巻き取り、次回のフラッシング動作に備えるようにすればよい。このように構成しても、ベルト部材１６のうち第２巻取り手段２１側の第１非接触領域Ｒｂ１で記録ヘッド１２からインクＩを受け、接触領域Ｒａで固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。このため、固化インクＩｂの掻き取りを容易にすることができる。また、このような構成を採用することで、プリンター１１のハウジング（外装体）内におけるレイアウトの自由度を高めることができる。また、この場合、ベルト部材１６のうち第１巻取り手段２０側の第２非接触領域Ｒｂ２にスクレイパ１７を摺接可能に配置してもよい。
【００３０】
・ 図１及び図２では、スクレイパ１７を非接触領域Ｒｂ（第２非接触領域Ｒｂ２）に設けたが、接触領域Ｒａで摺接するように配設してもよい（図３参照）。すなわち、スクレイパ１７は、ベルト部材１６を介して各ローラー１４，１５と対向するように設けてもよい。この場合、図示しない付勢手段によってスクレイパ１７をベルト部材１６の外周面１６ａに追従可能に摺接させてもよい。このように構成することで、第２ローラー１５の突起部Ｋによりベルト部材１６を屈曲させて固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせると同時に、割れ目Ｃを生じさせた状態（割れ目Ｃが開いた状態）のままスクレイパ１７で掻き取ることができる。さらに、スクレイパ１７によりインクＩ（固化インクＩｂ）を掻き取る際の力を各ローラー１４，１５で受けることができる。このため、スクレイパ１７による固化インクＩｂの掻き取りをより容易に行うことができる。
【００３１】
・ 各ローラー１４，１５を他の形状としてもよい。例えば、各ローラー１４，１５を他の多角柱状（例えば三角柱や六角柱）や、側面視形状が星型や十字型の柱状に形成してもよい。このように構成しても、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）とし、固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。
【００３２】
・ また、各ローラー１４，１５は、図４（ａ）〜（ｆ）に示すように、他の形状としてもよい。図４（ａ），（ｃ），（ｅ）は、別の実施形態における各ローラー１４，１５の模式側面図を示しており、図４（ｂ）は図４（ａ）、図４（ｄ）は図４（ｃ）、図４（ｆ）は図４（ｅ）の各模式平面図を示している。図４（ａ），（ｂ）に示すように、円柱状（円筒状）に形成した各ローラー１４，１５の外周面において、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと直交する方向の全体に亘って、側面（断面）視方形の凸条Ｔを形成してもよい。また、図４（ｃ），（ｄ）に示すように、凸条Ｔの側面（断面）視形状を三角形に形成してもよい。また、図（ｅ），（ｆ）に示すように、凸条Ｔを分割して交互に千鳥配置となるように形成してもよい。また、各ローラー１４，１５のうち、何れか一方のみについて形状を変更してもよく、各ローラー１４，１５の両方について形状を変更してもよい。また、各凸条は、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂに対して斜めに交差するように配置してもよい。このように構成しても、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）とし、固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。この場合、凸条Ｔが変形手段を構成する。
【００３３】
・ また、図５（ａ），（ｂ）に示すように、各ローラー１４，１５に平面視でＶ字状の溝部２４を形成し、各溝部２４で挟まれるように、各ローラー１４，１５の側面視で直径方向の外側に向かって円形に突出する突起部Ｋを形成してもよい。この場合、突起部Ｋは、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂに沿って形成される。このように構成した場合には、各ローラー１４，１５まわりで回動するベルト部材１６を各突起部Ｋ（搬送方向Ｙｂ）に沿って波状に屈曲させることができる（図５に二点差線で示す）。なお、図５（ｂ）では、ベルト部材１６の断面を示している。このため、ベルト部材１６の外周面１６ａに噴射されたインクＩがベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと交差する方向に沿って延びるように付着した場合、インクＩが固化したとしても当該固化した固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせ易くできる。
【００３４】
・ また、変形手段をベルト部材１６の内周面１６ｂに形成してもよい。図６に示すように、各ローラー１４，１５を円柱状（円筒状）に形成するとともに、ベルト部材１６の内周面１６ｂの全周に搬送方向Ｙｂと直交する方向に延びる複数の突起部２５を形成する。各突起部２５は、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂに沿って等間隔で並ぶように設けるとともに、各突起部２５の高さを同一に設定する。このように構成することで、接触領域Ｒａにおいてベルト部材１６は、各突起部２５を介して各ローラー１４，１５に接触するとともに、各突起部２５によってベルト部材１６の搬送方向Ｙｂと交差する方向であって、ベルト部材１６の厚さ方向に屈曲される。このため、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材１６の回動軌跡を非円形（非円弧面）とし、固化インクＩｂに割れ目Ｃを生じさせることができる。すなわち、第２ローラー１５まわりで回動するベルト部材の回動軌跡が非円形（非円弧面）となるようにすればよい。この場合、突起部２５が変形手段を構成する。
【００３５】
・ ベルト部材１６の搬送経路中においてベルト部材１６（外周面１６ａ）の乾燥及びインクＩの固着を防止する保守液にベルト部材１６を浸漬する構成としてもよい。
・ スクレイパ１７は、ベルト部材１６の搬送方向Ｙｂに対し平面視で斜めに支持してもよい。すなわち、スクレイパ１７は、平面視で搬送方向Ｙｂと交差するように支持すればよい。
【００３６】
・ スクレイパ１７は、正方形や三角形に形成してもよい。この場合、直線状に形成された一辺をベルト部材１６（外周面１６ａ）に摺接させるようにすればよい。
・ ベルト部材１６を架け渡すローラーの数は適宜変更してもよい。例えば、ベルト部材１６にテンションを付与するテンションローラーを追加したり、各ローラー１４，１５と同等の作用を有するローラーを加えたりしてもよい。
【００３７】
・ ノズルをライン状に配設した記録ヘッド（ラインヘッド）とした場合、記録紙を搬送する経路上にメンテナンス装置１３を設けてもよい。この場合には、記録紙を搬送する際に用いる搬送ベルトとベルト部材１６とを兼用構成としてもよい。
【００３８】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式記録装置１１に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属（金属融液）のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、ＥＬ（エレクトロルミネッセンス）ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ（光学レンズ）などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【００３９】
１１…液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置（プリンター）、１２…記録ヘッド、１３…液受け手段を構成するメンテナンス装置、１５…ローラー部材を構成する第２ローラー、１６…帯状部材を構成するベルト部材、１６ａ…液受け面を構成する外周面、１７…掻き取り手段を構成するスクレイパ、２２…ローラー部材を構成するローラー、２５…変形手段を構成する突起部、Ｉ…液体としてのインク、Ｉｂ…固化インク、Ｋ…変形手段及び角部を構成する突起部、Ｔ…変形手段を構成する凸条、Ｙｂ…搬送方向。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け手段と、前記液受け手段で受けた液体を掻き取る掻き取り手段と、を有する液体噴射装置において、
前記液受け手段は、前記記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け面を有する帯状部材と、前記帯状部材を架け渡して搬送するローラー部材とを備え、
前記ローラー部材まわりで回動する帯状部材の回動軌跡を非円形とする変形手段を設けた液体噴射装置。
【請求項２】
前記掻き取り手段は、前記帯状部材を介してローラー部材と対向するように設けられている請求項１に記載の液体噴射装置。
【請求項３】
前記変形手段は、前記帯状部材を帯状部材の搬送方向と交差する方向に屈曲させる請求項１又は請求項２に記載の液体噴射装置。
【請求項４】
前記変形手段は、前記帯状部材を帯状部材の搬送方向に沿って屈曲させる請求項１又は請求項２に記載の液体噴射装置。
【請求項５】
前記変形手段を多角柱状のローラー部材の角部により構成した請求項１〜請求項４のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項１】
記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け手段と、前記液受け手段で受けた液体を掻き取る掻き取り手段と、を有する液体噴射装置において、
前記液受け手段は、前記記録ヘッドから噴射された液体を受ける液受け面を有する帯状部材と、前記帯状部材を架け渡して搬送するローラー部材とを備え、
前記ローラー部材まわりで回動する帯状部材の回動軌跡を非円形とする変形手段を設けた液体噴射装置。
【請求項２】
前記掻き取り手段は、前記帯状部材を介してローラー部材と対向するように設けられている請求項１に記載の液体噴射装置。
【請求項３】
前記変形手段は、前記帯状部材を帯状部材の搬送方向と交差する方向に屈曲させる請求項１又は請求項２に記載の液体噴射装置。
【請求項４】
前記変形手段は、前記帯状部材を帯状部材の搬送方向に沿って屈曲させる請求項１又は請求項２に記載の液体噴射装置。
【請求項５】
前記変形手段を多角柱状のローラー部材の角部により構成した請求項１〜請求項４のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１１−１６１６９０（Ｐ２０１１−１６１６９０Ａ）
【公開日】平成２３年８月２５日（２０１１．８．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２４８２０（Ｐ２０１０−２４８２０）
【出願日】平成２２年２月５日（２０１０．２．５）
【出願人】（０００００２３６９）セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年８月２５日（２０１１．８．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年２月５日（２０１０．２．５）
【出願人】（０００００２３６９）セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Ｆターム（参考）】
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