液体噴射装置
【課題】液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射する際に、切換装置内の液体に含まれる気泡が該液体噴射ヘッドから排出されることを抑制することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンタは、その切換装置25内に、フォトブラックインクを供給する第1連結路44と、マットブラックインクを供給する第2連結路45と、第1連結路44及び第2連結路45の下流端同士の合流点と記録ヘッド側とを連通する第1貫通孔と、第1連結路44を開閉する第1開閉弁と、第2連結路45を開閉する第2開閉弁とを備える。また、第1連結路44及び第2連結路45は、それぞれ第1連絡溝37及び第2連絡溝38を備える。第1連絡溝37及び第2連絡溝38の途中位置には、これらを流れるフォトブラックインク中及びマットブラックインク中に含まれる気泡の滞留を許容する気泡滞留部62がそれぞれ設けられている。
【解決手段】インクジェット式プリンタは、その切換装置25内に、フォトブラックインクを供給する第1連結路44と、マットブラックインクを供給する第2連結路45と、第1連結路44及び第2連結路45の下流端同士の合流点と記録ヘッド側とを連通する第1貫通孔と、第1連結路44を開閉する第1開閉弁と、第2連結路45を開閉する第2開閉弁とを備える。また、第1連結路44及び第2連結路45は、それぞれ第1連絡溝37及び第2連絡溝38を備える。第1連絡溝37及び第2連絡溝38の途中位置には、これらを流れるフォトブラックインク中及びマットブラックインク中に含まれる気泡の滞留を許容する気泡滞留部62がそれぞれ設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体をターゲットに対して噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が広く知られている。このプリンタは、インク(液体)を噴射する記録ヘッド(液体噴射ヘッド)にインクを収容するインクカートリッジからインクを供給し、そのインクを記録ヘッドのノズル形成面に形成されたノズルからターゲットとしての記録用紙に噴射することにより印刷を行うようになっている。そして、こうしたプリンタでは、記録ヘッドから離れた位置にインクカートリッジが配置されている場合、そのインクカートリッジからプリンタ内部に引き回されたチューブを介してインクが記録ヘッド側に供給されるようになっている。
【0003】
ところで、記録ヘッドのノズルから噴射しているインクを別の種類のインクに変更する場合には、まず、それまで使用していたインクカートリッジからのインクの供給が止められ、その状態からチューブ内の残存インクが記録ヘッドのノズルを介して排出される。そして、残存インクの排出によりチューブ内をきれいにした後に、別の種類のインクが収容されたインクカートリッジからこの別の種類のインクがチューブを介して記録ヘッド側に供給されるようになっている。
【0004】
そのため、このように記録ヘッドのノズルから噴射するインクの種類を変更する場合には、チューブ内に残った変更前のインクを吸引して排出しなければならないので、インクの無駄が多くなってしまうという問題があった。そこで、こうした問題に対処するため、従来から、記録ヘッドの近傍に各インクカートリッジとインクカートリッジ毎に対応したチューブを介して接続されるインクの切換装置を設けたプリンタが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
この特許文献1のプリンタでは、切換装置内において、記録ヘッドに供給するインクの種類が、第1種類のインク(第1液体)と第2種類のインク(第2液体)との間で切り換え可能になっている。すなわち、切換装置内では、第1種類のインクを供給する第1通路部(第1供給路)の下流端と第2種類のインクを供給する第2通路部(第2供給路)の下流端とが合流しており、該合流点と記録ヘッドとの間がインクを記録ヘッドに供給するヘッド側供給路により接続されている。さらに、この切換装置内には、第1通路部を開閉する第1ダイアフラム(第1開閉弁)と第2通路部を開閉する第2ダイアフラム(第2開閉弁)とが設けられており、一方のダイアフラムを開弁させると共に、他方のダイアフラムを閉弁させることにより、第1種類のインクと第2種類のインクとの供給状態を切り換えるようになっている。
【0006】
すなわち、この切換装置では、記録ヘッドに第1種類のインクを供給する場合には、第1通路部の第1ダイアフラムが開弁されるとともに第2通路部の第2ダイアフラムが閉弁される。一方、記録ヘッドに第2種類のインクを供給する場合には、第2通路部の第2ダイアフラムが開弁されるとともに第1通路部の第1ダイアフラムが閉弁される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−175626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1のプリンタでは、切換装置内における第1通路部及び第2通路部において第1種類のインク中及び第2種類のインク中に気泡が混入した場合には、印刷時に記録ヘッドのノズル開口列からインクとともに気泡が排出されるため、ドット抜けなどの印刷不良が発生するという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射する際に、切換装置内の液体中に含まれる気泡が該液体噴射ヘッドから排出されることを抑制することが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体をターゲットに対して噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドへ供給される液体の種類を第1液体と該第1液体とは異なる第2液体との間で選択的に切り換える切換装置とを備えた液体噴射装置であって、前記切換装置内には、前記第1液体を供給する第1供給路と、前記第2液体を供給する第2供給路と、前記第1供給路及び前記第2供給路の下流端同士の合流点と前記液体噴射ヘッドとの間を連通するヘッド側供給路と、前記第1供給路における前記第2供給路との合流点よりも上流側において前記第1供給路を開閉する第1開閉弁と、前記第2供給路における前記第1供給路との合流点よりも上流側において前記第2供給路を開閉する第2開閉弁とが備えられ、前記第1供給路及び第2供給路の途中位置には、前記第1液体中及び第2液体中に含まれる気泡の滞留を許容する気泡滞留部がそれぞれ設けられている。
【0011】
この発明によれば、切換装置内の第1液体中及び第2液体中に含まれる気泡が気泡滞留部で滞留するため、液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体をターゲットに対して噴射する際に、該液体噴射ヘッドから気泡混じりの液体が排出されることを抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記第1供給路及び前記第2供給路の途中位置には、流路形状が高低差を有して延びる気泡誘導流路部が設けられており、該気泡誘導流路部における高位置に前記気泡滞留部は設けられている。
【0013】
この発明によれば、気泡誘導流路部内の気泡を高位置にある気泡滞留部に集めることが可能となり、集めた気泡を気泡滞留部において流動させることなく滞留させることが可能となる。
【0014】
本発明の液体噴射装置は、前記気泡誘導流路部において、前記気泡滞留部の下流側直近部位は気泡滞留部よりも低くなる方向へ延びている。
気泡誘導流路部において気泡滞留部よりも液体噴射ヘッド側となる下流側の液体中に気泡が存在している場合、その気泡は液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体をターゲットに対して噴射した際に発生する負圧により液体噴射ヘッド側に流動するおそれがある。この点、この発明によれば、気泡誘導流路部において気泡滞留部の下流側直近部位は気泡滞留部よりも低くなる方向へ延びていることから、こうした下流側部位よりも直近で高い位置にある気泡滞留部に向けて自身の浮力により速やかに移動して気泡滞留部に滞留するため、液体噴射ヘッドから気泡混じりの液体が噴射されるおそれを無くすことができる。
【0015】
本発明の液体噴射装置において、前記気泡誘導流路部は、該気泡誘導流路部内の前記第1液体及び前記第2液体が流動していない場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力によって前記気泡滞留部側に移動可能となる程度に、該気泡滞留部に連なる部位が斜状または湾曲状に延びている。
【0016】
この発明によれば、気泡誘導流路部内に存在する気泡が自身の浮力によって気泡滞留部に向かって移動するため、気泡誘導流路部において気泡滞留部以外の部位に気泡が滞留することを抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の液体噴射装置において、前記気泡誘導流路部は、前記液体噴射ヘッドからの前記第1液体または前記第2液体の噴射にともなって該気泡誘導流路部内の前記第1液体または前記第2液体が流動する場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力によって該気泡誘導流路部内に留まる程度に、前記気泡滞留部よりも下流側の長さが設定されている。
【0018】
この発明によれば、液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体を噴射する際に、気泡誘導流路部内に存在する気泡は該気泡誘導流路部内に留まるため、該液体噴射ヘッドから気泡混じりの液体が噴射されることを抑制することが可能となる。
【0019】
本発明の液体噴射装置において、前記気泡誘導流路部は、前記液体噴射ヘッドからの吸引にともなって該気泡誘導流路部内の前記第1液体または前記第2液体が流動する場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力に抗して該気泡誘導流路部よりも下流側へ流れて前記液体噴射ヘッドから排出される程度に、前記気泡滞留部よりも下流側の長さが設定されている。
【0020】
この発明によれば、液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体を吸引する際に、気泡誘導流路部内に存在する気泡が自身の浮力に抗して該気泡誘導流路部よりも下流側へ流れて前記液体噴射ヘッドから排出される。このため、液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体を吸引することで、気泡誘導流路部内に存在する気泡を確実に除去することが可能となる。
【0021】
本発明の液体噴射装置において、前記気泡誘導流路部は、鉛直平面に沿って形成されている。
この発明によれば、気泡誘導流路部を狭いスペースで形成することができ、切換装置を大きくすることがなく、ひいては液体噴射装置の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンタの平面概略図。
【図2】同プリンタのキャリッジの正面簡略図。
【図3】同プリンタの切換装置の分解斜視図。
【図4】同プリンタの切換装置の要部斜視図。
【図5】切換装置の連結部の要部拡大断面図。
【図6】切換装置の平面図。
【図7】切換装置の要部断面図。
【図8】伝達部材の斜視図。
【図9】切換装置の側面図。
【図10】第1開閉弁が開くとともに第2開閉弁が閉じた状態の切換装置の要部拡大断面図。
【図11】第1開閉弁が閉じるとともに第2開閉弁が開いた状態の切換装置の要部拡大断面図。
【図12】(a)〜(e)は、第1連絡溝及び第2連絡溝の変更例を示す簡略図。
【図13】第1連絡溝及び第2連絡溝の他の変更例を示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を、インクジェット式プリンタ及びこのプリンタに装着されるインクカートリッジに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0024】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、平面視矩形状をなす本体フレーム12を備えるとともに、該本体フレーム12内にはプラテン13が主走査方向となる左右方向に沿って延びるように設けられている。このプラテン13上には、図示しない紙送り機構によりターゲットとしての記録用紙Pが副走査方向となる前後方向に沿って給送されるようになっている。また、本体フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向(左右方向)と平行に延びる棒状のガイド軸14が架設されている。
【0025】
このガイド軸14には、キャリッジ15が、該ガイド軸14の軸線方向(左右方向)への往復移動可能な状態で支持されている。キャリッジ15は、本体フレーム12の後壁内面に設けられた一対のプーリ16a間に張設された無端状のタイミングベルト16を介して本体フレーム12の背面に設けられたキャリッジモータ17に連結されている。したがって、キャリッジ15は、キャリッジモータ17の駆動により、ガイド軸14に沿って往復移動されるようになっている。
【0026】
図1及び図2に示すように、キャリッジ15におけるプラテン13と対向する面側には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド18が搭載されている。また、キャリッジ15上には、一時貯留した液体としてのインクを記録ヘッド18に供給する複数(本実施形態では4つ)のバルブユニット19a〜19dが設けられている。記録ヘッド18の下面には、複数(本実施形態では3つ)のノズル20a〜20cが形成されており、これら各ノズル20a〜20cからプラテン13上に給送された記録用紙Pにインク滴が噴射されることにより、印刷が行われるようになっている。
【0027】
本体フレーム12内の右端部には、カートリッジホルダ21が設けられるとともに、該カートリッジホルダ21には、互いに種類の異なるインクを収容した複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ22a〜22dがそれぞれ着脱自在に装着されている。カートリッジホルダ21は、キャリッジ15上の各バルブユニット19a〜19dとそれぞれインク供給チューブ24a〜24dを介して接続されている。そして、カートリッジホルダ21に各インクカートリッジ22a〜22dを装着した場合には、各インクカートリッジ22a〜22dがインク供給チューブ24a〜24dを介して各バルブユニット19a〜19dとそれぞれ連通するようになっている。
【0028】
インクカートリッジ22a及びインクカートリッジ22bには、それぞれ第1液体としてのフォトブラックインク及び第2液体としてのマットブラックインクが収容されている。したがって、バルブユニット19aにはフォトブラックインクが一時貯留されるとともに、バルブユニット19bにはマットブラックインクが一時貯留されるようになっている。
【0029】
この場合、フォトブラックインクは記録用紙Pが光沢系用紙である場合の印刷に適しており、マットブラックインクは記録用紙Pがマット系用紙である場合の印刷に適している。そこで、キャリッジ15上における両バルブユニット19a,19bと記録ヘッド18との間には、該両バルブユニット19a,19bから記録ヘッド18に供給されるインクがフォトブラックインク及びマットブラックインクのうちのいずれか一方となるように切り換えるための切換装置25が設けられている。すなわち、切換装置25は、記録ヘッド18のノズル20aから噴射されるインクを、例えば記録用紙Pが光沢系用紙であるかマット系用紙であるかによって、フォトブラックインクとマットブラックインクとの間で切り換え可能になっている。
【0030】
また、本体フレーム12内の右端部寄り位置であって、キャリッジ15のホームポジションには、記録ヘッド18のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット26が配設されている。このメンテナンスユニット26は、記録ヘッド18の各ノズル20a〜20cが開口しているノズル形成面18aを封止したり該各ノズル20a〜20cからフラッシングによって吐出されるインクを受容したりするためのキャップ27と、該キャップ27内を吸引可能な図示しない吸引ポンプとを備えている。
【0031】
そして、記録ヘッド18のノズル形成面18aをキャップ27によって封止した状態でキャップ27内を吸引ポンプによって吸引することで、記録ヘッド18内の増粘したインクが各ノズル20a〜20cからキャップ27内に強制的に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。
【0032】
次に、切換装置25の構成について詳述する。
図3〜図5に示すように、切換装置25は、左右対称の略ブロック形状をなす本体30を備えているとともに、該本体30の上面には左右方向に所定間隔を置いて対をなすように第1接続管31及び第2接続管32が立設されている。第1接続管31はバルブユニット19aに接続されるとともに、第2接続管32はバルブユニット19bに接続されるようになっている。第1接続管31の前側には左側に開口した有底円筒状の第1弁体収容部33が設けられるとともに、第2接続管32の前側には右側に開口した有底円筒状の第2弁体収容部34が設けられている。
【0033】
第1弁体収容部33と第2弁体収容部34とは、連結部35を介して連結されている。連結部35内には左右方向(水平方向)に直線状に延びる連結路36が形成されており、該連結路36を介して第1弁体収容部33と第2弁体収容部34とがこれらの中心部において互いに連通している。すなわち、第1弁体収容部33及び第2弁体収容部34の中心部には、それぞれ連結路36が開口している。
【0034】
また、本体30には、第1接続管31と第1弁体収容部33内とを連通する気泡誘導流路部としての第1連絡溝37が形成されている。すなわち、第1連絡溝37は、その基端が第1接続管31に接続され、本体30の左面上、第1弁体収容部33の内周面33a上、第1弁体収容部33の内底面33b上を通って該内底面33b上における連結路36を上側から前方側に回り込むように延びており、その先端が内底面33bにおける連結路36の前斜め下側まで達している。なお、第1弁体収容部33の内底面33b上には、連結路36を囲むように円環状の第1突起33cが突出形成されている。
【0035】
また、第1連絡溝37と同様に、本体30には、第2接続管32と第2弁体収容部34内とを連通する第2連絡溝38が形成されている。すなわち、第2連絡溝38は、その基端が第2接続管32に接続され、本体30の右面上、第2弁体収容部34の内周面34a上、第2弁体収容部34の内底面34b上を通って該内底面34b上における連結路36を上側から前方側に回り込むように延びており、その先端が内底面34bにおける連結路36の前斜め下側まで達している。なお、第2弁体収容部34の内底面34b上には、連結路36を囲むように円環状の第2突起34cが突出形成されている。
【0036】
図5及び図6に示すように、連結路36の左右方向の中央における前側の位置には、該連結路36内と連結部35の上面に形成された前後方向に延びる凹溝40内における前端部とを連通する第1貫通孔39が形成されている。一方、凹溝40内における後端部には、記録ヘッド18(図2参照)と連通する第2貫通孔41が形成されている。そして、連結部35の上面には、凹溝40の上端開口を封止する図示しない封止部材が配設されている。なお、本実施形態では、第1貫通孔39、凹溝40、及び第2貫通孔41によりヘッド側供給路が構成されている。
【0037】
図5に示すように、連結路36において、左右方向の中央部から左側部分は第1連結路44とされるとともに、左右方向の中央部から右側部分は第2連結路45とされている。したがって、連結路36における中央部は、第1連結路44と第2連結路45との合流点Gとなっており、該合流点Gにおいて第1連結路44、第2連結路45、及び第1貫通孔39が互いに連通している。なお、本実施形態では、第1連絡溝37(図4参照)、第1弁体収容部33内、及び第1連結路44により第1供給路が構成されるとともに、第2連絡溝38、第2弁体収容部34内、及び第2連結路45により第2供給路が構成されている。なお、連結路36の両端部(第1連結路44の左端部及び第2連結路45の右端部)には中央部よりも径の広い拡径部36aが設けられている。
【0038】
図7に示すように、第1連結路44内及び第2連結路45内には、略円柱状の伝達部材46が左右方向に摺動可能にそれぞれ収容されている。ここで、図8に示すように、伝達部材46は、円柱状の小径部46aと、該小径部46aの一端部を該小径部46aよりも径を大きくしてなる大径部46bとを備えている。大径部46bには、伝達部材46の軸線方向を中心に90度程度回転させた分だけ小径部46aと同じ径となる切欠部46cが形成されている。
【0039】
そして、図3及び図7に示すように、2つの伝達部材46のうちの一方の伝達部材46を小径部46a側から第1連結路44内に挿入するとともに、他方の伝達部材46を小径部46a側から第2連結路45内に挿入することで、第1連結路44内及び第2連結路45内にそれぞれ伝達部材46が収容されている。この場合、両伝達部材46の切欠部46cは下側を向いており、両伝達部材46の大径部46bは連結路36の拡径部36a内にそれぞれ収容されている。また、両伝達部材46の小径部46a側の端面同士は、連結路36における左右方向の中央部において互いに当接している。そして、2つの伝達部材46の長手方向の長さの和は、連結路36の左右方向の長さよりも若干長くなっている。
【0040】
第1弁体収容部33内及び第2弁体収容部34内には、円板状の可撓性を有する第1開閉弁47及び該第1開閉弁47と同一構成の第2開閉弁48がそれぞれ収容されている。第1開閉弁47及び第2開閉弁48の外側中央部には、それぞれ円形の第1凹部47a及び第2凹部48aが設けられている。第1凹部47a内及び第2凹部48a内には、剛性を有する円板状の第1中継部材49及び第2中継部材50がそれぞれ収容されている。
【0041】
この場合、第1凹部47aと第2凹部48aとは同一構成になっているとともに、第1中継部材49と第2中継部材50とは同一構成になっている。なお、本体30の左面には第1弁体収容部33の開口及び第1連絡溝37の開口を封止するように図示しない可撓性フィルムが取着されるとともに、本体30の右面には第2弁体収容部34の開口及び第2連絡溝38の開口を封止するように図示しない可撓性フィルムが取着されている。
【0042】
次に、前述した気泡誘導流路部としての第1連絡溝37の構成について詳述する。
図9に示すように、第1連絡溝37は、第1弁体収容部33内の鉛直平面である内底面33b上において、後斜め上部から上部に向かって前上がりとなるように真っ直ぐ斜めに延びるストレート部60と、上部から前方に膨らむ円弧を描くように略渦巻き状に湾曲しながら下方に延びる湾曲部61とを備えている。ストレート部60と湾曲部61とは、内底面33b上における上部で連結されており、この湾曲部61とストレート部60との連結部分が気泡滞留部62とされている。この場合、気泡滞留部62は、第1弁体収容部33内の第1連絡溝37における最も高い位置に位置する部位となっている。すなわち、第1連絡溝37において、気泡滞留部62は、該気泡滞留部62の下流側直近部位よりも高い位置に位置している。
【0043】
また、第1連絡溝37における湾曲部61の下端(先端)は、連結路36の前斜め下側まで達しているとともに、第1突起33cに隣接している。湾曲部61は、第1連絡溝37内のフォトブラックインクが流動していない場合に、該湾曲部61内のフォトブラックインク中に存在する気泡が自身の浮力によって気泡滞留部62に移動可能となる程度に湾曲している。
【0044】
したがって、第1連絡溝37内のフォトブラックインクの非流動時には、特に湾曲部61の下端部に存在する気泡を含む第1連絡溝37内の全ての気泡が自身の浮力により円滑に気泡滞留部62に移動するようになっている。また、同様に、ストレート部60内のインク中に存在する気泡もストレート部60が真っ直ぐ斜めに気泡滞留部62に向けて延びていることから、その気泡自身の浮力により円滑に気泡滞留部62に移動する。
【0045】
なお、同じく気泡誘導流路部として機能する第2連絡溝38は、上記のように詳述した第1連絡溝37と左右対称で全く同一の構成となっているため、その構成の詳述は省略する。
【0046】
次に、切換装置25の作用について説明する。
図10及び図11は、本体30の連結部35及び該連結部35付近における下側から見たときの断面図である。
【0047】
さて、図10に示すように、記録ヘッド18に供給するインクをマットブラックインクからフォトブラックインクに切り換える場合には、まず、第2中継部材50を介して第2開閉弁48を左方向(水平方向)に向かって押圧する。すると、第2開閉弁48が第2突起34cに密着するとともに、第1開閉弁47が両伝達部材46を介して左方向に向かって押圧されて該第1開閉弁47と第1突起33cとが離間された状態になる。この状態では、第1連絡溝37と第1連結路44とが第1弁体収容部33内を介して連通状態になるとともに第2連絡溝38と第2連結路45とが非連通状態、すなわち、第1開閉弁47が開くとともに第2開閉弁48が閉じた状態(図10に示す状態)になる。
【0048】
この状態で記録ヘッド18のノズル20aから前回使用していたインクであるマットブラックインクをフラッシングによってキャップ27内に吐出すると、フォトブラックインクが第1連絡溝37から第1弁体収容部33内を介して第1連結路44内に流れ込む。この場合のフラッシングでは、選択的にノズル20aからのみインクが吐出される。そして、図10中の矢印で示すように、第1連結路44内に流れ込んだフォトブラックインクは、第1貫通孔39に流れ込むようになり、記録ヘッド18に供給されるインクがマットブラックインクからフォトブラックインクに切り換えられる。
【0049】
一方、図11に示すように、記録ヘッド18に供給するインクをフォトブラックインクからマットブラックインクに切り換える場合には、まず、第1中継部材49を介して第1開閉弁47を右方向(水平方向)に向かって押圧する。すると、第1開閉弁47が第1突起33cに密着するとともに、第2開閉弁48が両伝達部材46を介して右方向に向かって押圧されて該第2開閉弁48と第2突起34cとが離間された状態になる。この状態では、第2連絡溝38と第2連結路45とが第2弁体収容部34内を介して連通状態になるとともに第1連絡溝37と第1連結路44とが非連通状態、すなわち、第1開閉弁47が閉じるとともに第2開閉弁48が開いた状態(図11に示す状態)になる。
【0050】
この状態で記録ヘッド18のノズル20aから前回使用していたインクであるフォトブラックインクをフラッシングによってキャップ27内に吐出すると、マットブラックインクが第2連絡溝38から第2弁体収容部34内を介して第2連結路45内に流れ込む。この場合のフラッシングでは、選択的にノズル20aからのみインクが吐出される。そして、図11中の矢印で示すように、第2連結路45内に流れ込んだマットブラックインクは、第1貫通孔39に流れ込むようになり、記録ヘッド18に供給されるインクがフォトブラックインクからマットブラックインクに切り換えられる。
【0051】
次に、第1連絡溝37の作用について説明する。
(クリーニング時)
さて、記録ヘッド18のクリーニングを行うと、ノズル20aからフォトブラックインクがキャップ27内に強制的に吸引されて排出される。このときのノズル20aからの吸引力により、第1連絡溝37内のフォトブラックインクも連結路36から順次に記録ヘッド18側に流動し、ノズル20aからキャップ27内に排出される。
【0052】
この場合、気泡滞留部62に滞留している気泡は、自身の浮力により気泡滞留部62に滞留し続けようとするが、該気泡の浮力よりもノズル20aからの吸引力(ノズル20aからの吸引によって発生する第1連絡溝37内のフォトブラックインクの流速)の方が大きくなる。このため、気泡滞留部62に滞留している気泡は、フォトブラックインクとともに気泡滞留部62から下流側へ低くなるように滑らかに湾曲した流路形状をなす湾曲部61から連結路36側に速やかに流動し、ノズル20aからキャップ27内に排出される。
【0053】
なお、第1連絡溝37は、クリーニング時の記録ヘッド18からの吸引にともなって該第1連絡溝37内のフォトブラックインクが流動する場合には、該第1連絡溝37内に存在する気泡が自身の浮力に抗して該第1連絡溝37よりも下流側へ流れて記録ヘッド18から排出される程度に、気泡滞留部62よりも下流側(湾曲部61)の長さが設定されている。このことは、第2連絡溝38についても同様になっている。
【0054】
(印刷時)
印刷時には、記録ヘッド18のノズル20aから記録用紙Pに対してフォトブラックインクが噴射され、この噴射にともなって第1連絡溝37内のフォトブラックインクも連結路36から順次に記録ヘッド18側に流動し、ノズル20aから噴射される。この場合、気泡滞留部62に滞留している気泡の浮力は、ノズル20aからのフォトブラックインクの噴射に伴い発生する負圧力(ノズル20aからのフォトブラックインクの噴射によって発生する第1連絡溝37内のフォトブラックインクの流速)よりも大きいままである。
【0055】
このため、気泡滞留部62に滞留している気泡は、第1連絡溝37内のフォトブラックインクが連結路36から記録ヘッド18側へ流動しても、気泡滞留部62に滞留し続ける。したがって、印刷時には、記録ヘッド18のノズル20aから気泡混じりのインクが噴射されにくくなるので、ドット抜けなどの印刷不良の発生が抑制される。
【0056】
また、印刷中には定期的にフラッシングが行われるが、このノズル20aからのフラッシングに伴い発生する負圧力(フォトブラックインクの噴射によって発生する第1連絡溝37内のフォトブラックインクの流速)も、印刷時の場合とほとんど変わらないため、印刷時と同様に、フラッシング時には、記録ヘッド18のノズル20aから気泡混じりのインクが噴射されることが抑制される。
【0057】
なお、第1連絡溝37は、印刷時の記録ヘッド18からのフォトブラックインクの噴射にともなって該第1連絡溝37内のフォトブラックインクが流動する場合には、該第1連絡溝37内に存在する気泡が自身の浮力によって該第1連絡溝37内に留まる程度に、気泡滞留部62よりも下流側(湾曲部61)の長さが設定されている。このことは、第2連絡溝38についても同様になっている。
【0058】
(印刷休止時)
印刷休止時には第1連絡溝37内のフォトブラックインクが流動しないので、気泡滞留部62に滞留している気泡は、自身の浮力により該気泡滞留部62に滞留し続ける。この場合、特に湾曲部61の下端部には、微小気泡が残留することもあるが、湾曲部61の流路形状により、微小気泡が自身の浮力によって気泡滞留部62に移動する。このため、次回の印刷時には、このような微小気泡の混ざったインクがノズル20aから噴射されることが抑制される。
【0059】
なお、第2連絡溝38における作用は、上記した第1連絡溝37の作用と同一であるため、その作用の説明は省略する。
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0060】
(1)記録ヘッド18のノズル20aからフォトブラックインクまたはマットブラックインクを記録用紙Pに対して噴射して印刷を行う際には、切換装置25内のフォトブラックインク中及びマットブラックインク中に含まれる気泡が気泡滞留部62で滞留する。このため、印刷時にノズル20aから気泡混じりのインクが噴射されることを抑制することができるため、ドット抜けなどの印刷不良の発生を抑制することができる。
【0061】
(2)気泡滞留部62よりも低い位置から浮力により気泡滞留部62に集まってきて滞留している気泡については、記録ヘッド18のクリーニングを行うことで、第1連絡溝37及び第2連絡溝38をそれぞれ流れるフォトブラックインク及びマットブラックインクとともにノズル20aから吸引排出することができる。
【0062】
(3)第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、各弁体収容部33,34において鉛直平面である内底面33b,34bに沿って延びるように設けられており、該第1連絡溝37及び第2連絡溝38の一部により気泡滞留部62が構成されている。このため、気泡滞留部62を含む第1連絡溝37及び第2連絡溝38を水平方向で狭いスペースに形成することができ、切換装置25及びインクジェット式プリンタ11の大型化抑制に貢献することができる。
【0063】
(4)第1連絡溝37及び第2連絡溝38において、気泡滞留部62は該気泡滞留部62の下流側直近部位よりも高い位置に位置している。このため、印刷時には、気泡滞留部62よりも下流側に存在している気泡を自身の浮力により気泡滞留部62に移動させて滞留させておくことにより、記録ヘッド18のノズル20aから気泡混じりのインクを排出され難くすることができる。
【0064】
(5)第1連絡溝37及び第2連絡溝38において特に湾曲部61は、第1連絡溝37及び第2連絡溝38内のフォトブラックインク及びマットブラックインクが流動していない印刷休止時に、該湾曲部61内に存在する気泡が自身の浮力によって気泡滞留部62に移動可能となる程度に湾曲状に延びている。このため、湾曲部61内に存在する気泡が自身の浮力によって気泡滞留部62に移動するため、湾曲部61において気泡滞留部62以外の部位に気泡が滞留することを抑制することができる。この場合、特に湾曲部61の下端部(下流端部)に微小気泡が残留することが抑制されることで、次回の印刷時に微小気泡が混じったインクが記録ヘッド18側に流れてノズル20aから噴射されることを抑制することができる。
【0065】
(6)第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、印刷時に、該第1連絡溝37及び第2連絡溝38内に存在する気泡が自身の浮力によって該第1連絡溝37及び第2連絡溝38内に留まる程度に、気泡滞留部62よりも下流側(湾曲部61)長さがそれぞれ設定されている。このため、印刷時に、記録ヘッド18からフォトブラックインクまたはマットブラックインクを噴射する際に、第1連絡溝37または第2連絡溝38内に存在する気泡を該第1連絡溝37または第2連絡溝38内に留めることができる。したがって、記録ヘッド18から気泡混じりのフォトブラックインクまたはマットブラックインクが噴射されることを抑制することができる。
【0066】
(7)第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、記録ヘッド18のクリーニング時(記録ヘッド18からの吸引時)に、該第1連絡溝37及び第2連絡溝38内に存在する気泡が自身の浮力に抗して該第1連絡溝37及び第2連絡溝38よりも下流側へ流れて記録ヘッド18から排出される程度に、気泡滞留部62よりも下流側(湾曲部61)の長さが設定されている。このため、クリーニング時に、記録ヘッド18からフォトブラックインクまたはマットブラックインクを吸引する際に、第1連絡溝37または第2連絡溝38内に存在する気泡をフォトブラックインクまたはマットブラックインクとともに該第1連絡溝37または第2連絡溝38よりも下流側へ流して記録ヘッド18から排出することができる。この結果、第1連絡溝37及び第2連絡溝38内に存在する気泡を確実に除去することができる。
【0067】
(8)切換装置25によって記録ヘッド18に供給されるインクをフォトブラックインクとマットブラックインクとの間で切り換える場合には、連結路36の開口から第1弁体収容部33内または第2弁体収容部34内に、切り換え前に使用していたマットブラックインクまたはフォトブラックインクが混入することがある。この点、本実施形態においては、第1連絡溝37及び第2連絡溝38の湾曲部61は、第1弁体収容部33内の内底面33b上及び第2弁体収容部34の内底面34b上において、それぞれ略渦巻き状に湾曲しながら中心部に位置する連結路36の開口に近づくように延びている。このため、第1弁体収容部33内に混入した切り換え前の古いマットブラックインクは、湾曲部61を流れる切り換え後の新しいフォトブラックインクの流れによって渦を巻くように連結路36の開口に集められて該開口から排出される。一方、第2弁体収容部34内に混入した切り換え前の古いフォトブラックインクは、湾曲部61を流れる切り換え後の新しいマットブラックインクの流れによって渦を巻くように連結路36の開口に集められて該開口から排出される。したがって、第1弁体収容部33内に混入した古いマットブラックインク及び第2弁体収容部34内に混入した古いフォトブラックインクを、略渦巻き状の湾曲部61の作用により、それぞれ連結路36の開口から円滑に排出することができる。
【0068】
(9)マットブラックインクとフォトブラックインクとの間でのインクの切り換えは、選択的にノズル20aからのみインクが吐出されるフラッシングによって行われるため、インクの切り換え時に、マットブラックインク及びフォトブラックインク以外のインクを消費しないようにすることができる。因みに、全ノズル20a〜20cをまとめて覆う一体型のキャップ27を用いて、クリーニングによってマットブラックインクとフォトブラックインクとの間でのインクの切り換えを行った場合には、マットブラックインク及びフォトブラックインク以外のインクを無駄に消費してしまう。
【0069】
(10)第1開閉弁47及び第2開閉弁は、水平方向である左右方向に並ぶように配置されるとともに、左右方向に開閉されるように構成されている。このため、切換装置25のインク切り換え時に瞬間的に第1開閉弁47及び第2開閉弁の双方が開弁された状態になったとしても、マットブラックインク及びフォトブラックインク間に水頭差が生じることがないので、両インクが混じり合うことを抑制することができる。因みに、第1開閉弁47及び第2開閉弁が、鉛直方向である上下方向に並ぶように配置されるとともに、上下方向に開閉されるように構成された場合には、マットブラックインク及びフォトブラックインク間に水頭差が生じる。このため、インク切り換え時に瞬間的に第1開閉弁47及び第2開閉弁の双方が開弁された状態になった場合には、上側のインクが自重によって下側のインク側に流れ込んで、両インクが混ざり合ってしまう。
【0070】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(a)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部が上側に膨らむように湾曲した構成としてもよい。この場合、湾曲した部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。
【0071】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(b)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部が下側に開口するコ字状をなすように屈曲して構成してもよい。この場合、屈曲した部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。
【0072】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(c)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部が下側に開口する逆V字状をなすように屈曲して構成してもよい。この場合、屈曲した部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。
【0073】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(d)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部が2箇所において上側に膨らむように湾曲して構成してもよい。この場合、湾曲した部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。すなわち、気泡滞留部62が2箇所に形成される。さらにこの場合、第1連絡溝37及び第2連絡溝38の一部が3箇所以上において上側が膨らむように湾曲して構成してもよい。
【0074】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(e)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部を鉛直下側に屈曲した後、さらに水平方向に屈曲するように構成してもよい。この場合、2つの屈曲した部分のうち高い方の部分が気泡滞留部62となる。
【0075】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、上記した図12(a)〜(e)の変更例を適宜組み合わせて構成してもよい。
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、チューブなどの管によって構成された流路に変更してもよい。そして、例えば、この流路をチューブによって構成する場合には、図13に示すように、チューブをループ状に引き回すようにしてもよい。この場合、チューブのループ状部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。
【0076】
・本実施形態では、切換装置25により、マットブラックインクとフォトブラックインクとの間でインクの切り換えを行うようにしているが、同色インクにおける濃色インクと淡色インクとの間でインクの切り換えを行うようにしてもよい。例えば、シアンインクとライトシアンインクとの間、あるいはマゼンタインクとライトマゼンタインクとの間でインクの切り換えを行うようにしてもよい。
【0077】
・切換装置25は、第1連結路44と第2連結路45とがV字状またはU字状をなすように接続されるように構成してもよい。すなわち、切換装置25は、連結路36をV字状またはU字状をなすように構成してもよい。この場合、伝達部材46の形状は、連結路36の形状に合わせて適宜変更する必要がある。
【0078】
・上記実施形態においては、液体噴射装置として、インクを噴射するインクジェット式プリンタ(ファクス、コピア等を含む印刷装置)について説明したが、他の液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、18…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、25…切換装置、33…第1供給路を構成する第1弁体収容部、34…第2供給路を構成する第2弁体収容部、37…第1供給路を構成する気泡誘導流路部としての第1連絡溝、38…第2供給路を構成する気泡誘導流路部としての第2連絡溝、39…ヘッド側供給路を構成する第1貫通孔、40…ヘッド側供給路を構成する凹溝、41…ヘッド側供給路を構成する第2貫通孔、44…第1供給路を構成する第1連結路、45…第2供給路を構成する第2連結路、47…第1開閉弁、48…第2開閉弁、61…湾曲部、62…気泡滞留部、G…合流点、P…ターゲットとしての記録用紙。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体をターゲットに対して噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が広く知られている。このプリンタは、インク(液体)を噴射する記録ヘッド(液体噴射ヘッド)にインクを収容するインクカートリッジからインクを供給し、そのインクを記録ヘッドのノズル形成面に形成されたノズルからターゲットとしての記録用紙に噴射することにより印刷を行うようになっている。そして、こうしたプリンタでは、記録ヘッドから離れた位置にインクカートリッジが配置されている場合、そのインクカートリッジからプリンタ内部に引き回されたチューブを介してインクが記録ヘッド側に供給されるようになっている。
【0003】
ところで、記録ヘッドのノズルから噴射しているインクを別の種類のインクに変更する場合には、まず、それまで使用していたインクカートリッジからのインクの供給が止められ、その状態からチューブ内の残存インクが記録ヘッドのノズルを介して排出される。そして、残存インクの排出によりチューブ内をきれいにした後に、別の種類のインクが収容されたインクカートリッジからこの別の種類のインクがチューブを介して記録ヘッド側に供給されるようになっている。
【0004】
そのため、このように記録ヘッドのノズルから噴射するインクの種類を変更する場合には、チューブ内に残った変更前のインクを吸引して排出しなければならないので、インクの無駄が多くなってしまうという問題があった。そこで、こうした問題に対処するため、従来から、記録ヘッドの近傍に各インクカートリッジとインクカートリッジ毎に対応したチューブを介して接続されるインクの切換装置を設けたプリンタが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
この特許文献1のプリンタでは、切換装置内において、記録ヘッドに供給するインクの種類が、第1種類のインク(第1液体)と第2種類のインク(第2液体)との間で切り換え可能になっている。すなわち、切換装置内では、第1種類のインクを供給する第1通路部(第1供給路)の下流端と第2種類のインクを供給する第2通路部(第2供給路)の下流端とが合流しており、該合流点と記録ヘッドとの間がインクを記録ヘッドに供給するヘッド側供給路により接続されている。さらに、この切換装置内には、第1通路部を開閉する第1ダイアフラム(第1開閉弁)と第2通路部を開閉する第2ダイアフラム(第2開閉弁)とが設けられており、一方のダイアフラムを開弁させると共に、他方のダイアフラムを閉弁させることにより、第1種類のインクと第2種類のインクとの供給状態を切り換えるようになっている。
【0006】
すなわち、この切換装置では、記録ヘッドに第1種類のインクを供給する場合には、第1通路部の第1ダイアフラムが開弁されるとともに第2通路部の第2ダイアフラムが閉弁される。一方、記録ヘッドに第2種類のインクを供給する場合には、第2通路部の第2ダイアフラムが開弁されるとともに第1通路部の第1ダイアフラムが閉弁される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−175626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1のプリンタでは、切換装置内における第1通路部及び第2通路部において第1種類のインク中及び第2種類のインク中に気泡が混入した場合には、印刷時に記録ヘッドのノズル開口列からインクとともに気泡が排出されるため、ドット抜けなどの印刷不良が発生するという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射する際に、切換装置内の液体中に含まれる気泡が該液体噴射ヘッドから排出されることを抑制することが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体をターゲットに対して噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドへ供給される液体の種類を第1液体と該第1液体とは異なる第2液体との間で選択的に切り換える切換装置とを備えた液体噴射装置であって、前記切換装置内には、前記第1液体を供給する第1供給路と、前記第2液体を供給する第2供給路と、前記第1供給路及び前記第2供給路の下流端同士の合流点と前記液体噴射ヘッドとの間を連通するヘッド側供給路と、前記第1供給路における前記第2供給路との合流点よりも上流側において前記第1供給路を開閉する第1開閉弁と、前記第2供給路における前記第1供給路との合流点よりも上流側において前記第2供給路を開閉する第2開閉弁とが備えられ、前記第1供給路及び第2供給路の途中位置には、前記第1液体中及び第2液体中に含まれる気泡の滞留を許容する気泡滞留部がそれぞれ設けられている。
【0011】
この発明によれば、切換装置内の第1液体中及び第2液体中に含まれる気泡が気泡滞留部で滞留するため、液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体をターゲットに対して噴射する際に、該液体噴射ヘッドから気泡混じりの液体が排出されることを抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記第1供給路及び前記第2供給路の途中位置には、流路形状が高低差を有して延びる気泡誘導流路部が設けられており、該気泡誘導流路部における高位置に前記気泡滞留部は設けられている。
【0013】
この発明によれば、気泡誘導流路部内の気泡を高位置にある気泡滞留部に集めることが可能となり、集めた気泡を気泡滞留部において流動させることなく滞留させることが可能となる。
【0014】
本発明の液体噴射装置は、前記気泡誘導流路部において、前記気泡滞留部の下流側直近部位は気泡滞留部よりも低くなる方向へ延びている。
気泡誘導流路部において気泡滞留部よりも液体噴射ヘッド側となる下流側の液体中に気泡が存在している場合、その気泡は液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体をターゲットに対して噴射した際に発生する負圧により液体噴射ヘッド側に流動するおそれがある。この点、この発明によれば、気泡誘導流路部において気泡滞留部の下流側直近部位は気泡滞留部よりも低くなる方向へ延びていることから、こうした下流側部位よりも直近で高い位置にある気泡滞留部に向けて自身の浮力により速やかに移動して気泡滞留部に滞留するため、液体噴射ヘッドから気泡混じりの液体が噴射されるおそれを無くすことができる。
【0015】
本発明の液体噴射装置において、前記気泡誘導流路部は、該気泡誘導流路部内の前記第1液体及び前記第2液体が流動していない場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力によって前記気泡滞留部側に移動可能となる程度に、該気泡滞留部に連なる部位が斜状または湾曲状に延びている。
【0016】
この発明によれば、気泡誘導流路部内に存在する気泡が自身の浮力によって気泡滞留部に向かって移動するため、気泡誘導流路部において気泡滞留部以外の部位に気泡が滞留することを抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の液体噴射装置において、前記気泡誘導流路部は、前記液体噴射ヘッドからの前記第1液体または前記第2液体の噴射にともなって該気泡誘導流路部内の前記第1液体または前記第2液体が流動する場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力によって該気泡誘導流路部内に留まる程度に、前記気泡滞留部よりも下流側の長さが設定されている。
【0018】
この発明によれば、液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体を噴射する際に、気泡誘導流路部内に存在する気泡は該気泡誘導流路部内に留まるため、該液体噴射ヘッドから気泡混じりの液体が噴射されることを抑制することが可能となる。
【0019】
本発明の液体噴射装置において、前記気泡誘導流路部は、前記液体噴射ヘッドからの吸引にともなって該気泡誘導流路部内の前記第1液体または前記第2液体が流動する場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力に抗して該気泡誘導流路部よりも下流側へ流れて前記液体噴射ヘッドから排出される程度に、前記気泡滞留部よりも下流側の長さが設定されている。
【0020】
この発明によれば、液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体を吸引する際に、気泡誘導流路部内に存在する気泡が自身の浮力に抗して該気泡誘導流路部よりも下流側へ流れて前記液体噴射ヘッドから排出される。このため、液体噴射ヘッドから第1液体または第2液体を吸引することで、気泡誘導流路部内に存在する気泡を確実に除去することが可能となる。
【0021】
本発明の液体噴射装置において、前記気泡誘導流路部は、鉛直平面に沿って形成されている。
この発明によれば、気泡誘導流路部を狭いスペースで形成することができ、切換装置を大きくすることがなく、ひいては液体噴射装置の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンタの平面概略図。
【図2】同プリンタのキャリッジの正面簡略図。
【図3】同プリンタの切換装置の分解斜視図。
【図4】同プリンタの切換装置の要部斜視図。
【図5】切換装置の連結部の要部拡大断面図。
【図6】切換装置の平面図。
【図7】切換装置の要部断面図。
【図8】伝達部材の斜視図。
【図9】切換装置の側面図。
【図10】第1開閉弁が開くとともに第2開閉弁が閉じた状態の切換装置の要部拡大断面図。
【図11】第1開閉弁が閉じるとともに第2開閉弁が開いた状態の切換装置の要部拡大断面図。
【図12】(a)〜(e)は、第1連絡溝及び第2連絡溝の変更例を示す簡略図。
【図13】第1連絡溝及び第2連絡溝の他の変更例を示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を、インクジェット式プリンタ及びこのプリンタに装着されるインクカートリッジに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0024】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、平面視矩形状をなす本体フレーム12を備えるとともに、該本体フレーム12内にはプラテン13が主走査方向となる左右方向に沿って延びるように設けられている。このプラテン13上には、図示しない紙送り機構によりターゲットとしての記録用紙Pが副走査方向となる前後方向に沿って給送されるようになっている。また、本体フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向(左右方向)と平行に延びる棒状のガイド軸14が架設されている。
【0025】
このガイド軸14には、キャリッジ15が、該ガイド軸14の軸線方向(左右方向)への往復移動可能な状態で支持されている。キャリッジ15は、本体フレーム12の後壁内面に設けられた一対のプーリ16a間に張設された無端状のタイミングベルト16を介して本体フレーム12の背面に設けられたキャリッジモータ17に連結されている。したがって、キャリッジ15は、キャリッジモータ17の駆動により、ガイド軸14に沿って往復移動されるようになっている。
【0026】
図1及び図2に示すように、キャリッジ15におけるプラテン13と対向する面側には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド18が搭載されている。また、キャリッジ15上には、一時貯留した液体としてのインクを記録ヘッド18に供給する複数(本実施形態では4つ)のバルブユニット19a〜19dが設けられている。記録ヘッド18の下面には、複数(本実施形態では3つ)のノズル20a〜20cが形成されており、これら各ノズル20a〜20cからプラテン13上に給送された記録用紙Pにインク滴が噴射されることにより、印刷が行われるようになっている。
【0027】
本体フレーム12内の右端部には、カートリッジホルダ21が設けられるとともに、該カートリッジホルダ21には、互いに種類の異なるインクを収容した複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ22a〜22dがそれぞれ着脱自在に装着されている。カートリッジホルダ21は、キャリッジ15上の各バルブユニット19a〜19dとそれぞれインク供給チューブ24a〜24dを介して接続されている。そして、カートリッジホルダ21に各インクカートリッジ22a〜22dを装着した場合には、各インクカートリッジ22a〜22dがインク供給チューブ24a〜24dを介して各バルブユニット19a〜19dとそれぞれ連通するようになっている。
【0028】
インクカートリッジ22a及びインクカートリッジ22bには、それぞれ第1液体としてのフォトブラックインク及び第2液体としてのマットブラックインクが収容されている。したがって、バルブユニット19aにはフォトブラックインクが一時貯留されるとともに、バルブユニット19bにはマットブラックインクが一時貯留されるようになっている。
【0029】
この場合、フォトブラックインクは記録用紙Pが光沢系用紙である場合の印刷に適しており、マットブラックインクは記録用紙Pがマット系用紙である場合の印刷に適している。そこで、キャリッジ15上における両バルブユニット19a,19bと記録ヘッド18との間には、該両バルブユニット19a,19bから記録ヘッド18に供給されるインクがフォトブラックインク及びマットブラックインクのうちのいずれか一方となるように切り換えるための切換装置25が設けられている。すなわち、切換装置25は、記録ヘッド18のノズル20aから噴射されるインクを、例えば記録用紙Pが光沢系用紙であるかマット系用紙であるかによって、フォトブラックインクとマットブラックインクとの間で切り換え可能になっている。
【0030】
また、本体フレーム12内の右端部寄り位置であって、キャリッジ15のホームポジションには、記録ヘッド18のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット26が配設されている。このメンテナンスユニット26は、記録ヘッド18の各ノズル20a〜20cが開口しているノズル形成面18aを封止したり該各ノズル20a〜20cからフラッシングによって吐出されるインクを受容したりするためのキャップ27と、該キャップ27内を吸引可能な図示しない吸引ポンプとを備えている。
【0031】
そして、記録ヘッド18のノズル形成面18aをキャップ27によって封止した状態でキャップ27内を吸引ポンプによって吸引することで、記録ヘッド18内の増粘したインクが各ノズル20a〜20cからキャップ27内に強制的に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。
【0032】
次に、切換装置25の構成について詳述する。
図3〜図5に示すように、切換装置25は、左右対称の略ブロック形状をなす本体30を備えているとともに、該本体30の上面には左右方向に所定間隔を置いて対をなすように第1接続管31及び第2接続管32が立設されている。第1接続管31はバルブユニット19aに接続されるとともに、第2接続管32はバルブユニット19bに接続されるようになっている。第1接続管31の前側には左側に開口した有底円筒状の第1弁体収容部33が設けられるとともに、第2接続管32の前側には右側に開口した有底円筒状の第2弁体収容部34が設けられている。
【0033】
第1弁体収容部33と第2弁体収容部34とは、連結部35を介して連結されている。連結部35内には左右方向(水平方向)に直線状に延びる連結路36が形成されており、該連結路36を介して第1弁体収容部33と第2弁体収容部34とがこれらの中心部において互いに連通している。すなわち、第1弁体収容部33及び第2弁体収容部34の中心部には、それぞれ連結路36が開口している。
【0034】
また、本体30には、第1接続管31と第1弁体収容部33内とを連通する気泡誘導流路部としての第1連絡溝37が形成されている。すなわち、第1連絡溝37は、その基端が第1接続管31に接続され、本体30の左面上、第1弁体収容部33の内周面33a上、第1弁体収容部33の内底面33b上を通って該内底面33b上における連結路36を上側から前方側に回り込むように延びており、その先端が内底面33bにおける連結路36の前斜め下側まで達している。なお、第1弁体収容部33の内底面33b上には、連結路36を囲むように円環状の第1突起33cが突出形成されている。
【0035】
また、第1連絡溝37と同様に、本体30には、第2接続管32と第2弁体収容部34内とを連通する第2連絡溝38が形成されている。すなわち、第2連絡溝38は、その基端が第2接続管32に接続され、本体30の右面上、第2弁体収容部34の内周面34a上、第2弁体収容部34の内底面34b上を通って該内底面34b上における連結路36を上側から前方側に回り込むように延びており、その先端が内底面34bにおける連結路36の前斜め下側まで達している。なお、第2弁体収容部34の内底面34b上には、連結路36を囲むように円環状の第2突起34cが突出形成されている。
【0036】
図5及び図6に示すように、連結路36の左右方向の中央における前側の位置には、該連結路36内と連結部35の上面に形成された前後方向に延びる凹溝40内における前端部とを連通する第1貫通孔39が形成されている。一方、凹溝40内における後端部には、記録ヘッド18(図2参照)と連通する第2貫通孔41が形成されている。そして、連結部35の上面には、凹溝40の上端開口を封止する図示しない封止部材が配設されている。なお、本実施形態では、第1貫通孔39、凹溝40、及び第2貫通孔41によりヘッド側供給路が構成されている。
【0037】
図5に示すように、連結路36において、左右方向の中央部から左側部分は第1連結路44とされるとともに、左右方向の中央部から右側部分は第2連結路45とされている。したがって、連結路36における中央部は、第1連結路44と第2連結路45との合流点Gとなっており、該合流点Gにおいて第1連結路44、第2連結路45、及び第1貫通孔39が互いに連通している。なお、本実施形態では、第1連絡溝37(図4参照)、第1弁体収容部33内、及び第1連結路44により第1供給路が構成されるとともに、第2連絡溝38、第2弁体収容部34内、及び第2連結路45により第2供給路が構成されている。なお、連結路36の両端部(第1連結路44の左端部及び第2連結路45の右端部)には中央部よりも径の広い拡径部36aが設けられている。
【0038】
図7に示すように、第1連結路44内及び第2連結路45内には、略円柱状の伝達部材46が左右方向に摺動可能にそれぞれ収容されている。ここで、図8に示すように、伝達部材46は、円柱状の小径部46aと、該小径部46aの一端部を該小径部46aよりも径を大きくしてなる大径部46bとを備えている。大径部46bには、伝達部材46の軸線方向を中心に90度程度回転させた分だけ小径部46aと同じ径となる切欠部46cが形成されている。
【0039】
そして、図3及び図7に示すように、2つの伝達部材46のうちの一方の伝達部材46を小径部46a側から第1連結路44内に挿入するとともに、他方の伝達部材46を小径部46a側から第2連結路45内に挿入することで、第1連結路44内及び第2連結路45内にそれぞれ伝達部材46が収容されている。この場合、両伝達部材46の切欠部46cは下側を向いており、両伝達部材46の大径部46bは連結路36の拡径部36a内にそれぞれ収容されている。また、両伝達部材46の小径部46a側の端面同士は、連結路36における左右方向の中央部において互いに当接している。そして、2つの伝達部材46の長手方向の長さの和は、連結路36の左右方向の長さよりも若干長くなっている。
【0040】
第1弁体収容部33内及び第2弁体収容部34内には、円板状の可撓性を有する第1開閉弁47及び該第1開閉弁47と同一構成の第2開閉弁48がそれぞれ収容されている。第1開閉弁47及び第2開閉弁48の外側中央部には、それぞれ円形の第1凹部47a及び第2凹部48aが設けられている。第1凹部47a内及び第2凹部48a内には、剛性を有する円板状の第1中継部材49及び第2中継部材50がそれぞれ収容されている。
【0041】
この場合、第1凹部47aと第2凹部48aとは同一構成になっているとともに、第1中継部材49と第2中継部材50とは同一構成になっている。なお、本体30の左面には第1弁体収容部33の開口及び第1連絡溝37の開口を封止するように図示しない可撓性フィルムが取着されるとともに、本体30の右面には第2弁体収容部34の開口及び第2連絡溝38の開口を封止するように図示しない可撓性フィルムが取着されている。
【0042】
次に、前述した気泡誘導流路部としての第1連絡溝37の構成について詳述する。
図9に示すように、第1連絡溝37は、第1弁体収容部33内の鉛直平面である内底面33b上において、後斜め上部から上部に向かって前上がりとなるように真っ直ぐ斜めに延びるストレート部60と、上部から前方に膨らむ円弧を描くように略渦巻き状に湾曲しながら下方に延びる湾曲部61とを備えている。ストレート部60と湾曲部61とは、内底面33b上における上部で連結されており、この湾曲部61とストレート部60との連結部分が気泡滞留部62とされている。この場合、気泡滞留部62は、第1弁体収容部33内の第1連絡溝37における最も高い位置に位置する部位となっている。すなわち、第1連絡溝37において、気泡滞留部62は、該気泡滞留部62の下流側直近部位よりも高い位置に位置している。
【0043】
また、第1連絡溝37における湾曲部61の下端(先端)は、連結路36の前斜め下側まで達しているとともに、第1突起33cに隣接している。湾曲部61は、第1連絡溝37内のフォトブラックインクが流動していない場合に、該湾曲部61内のフォトブラックインク中に存在する気泡が自身の浮力によって気泡滞留部62に移動可能となる程度に湾曲している。
【0044】
したがって、第1連絡溝37内のフォトブラックインクの非流動時には、特に湾曲部61の下端部に存在する気泡を含む第1連絡溝37内の全ての気泡が自身の浮力により円滑に気泡滞留部62に移動するようになっている。また、同様に、ストレート部60内のインク中に存在する気泡もストレート部60が真っ直ぐ斜めに気泡滞留部62に向けて延びていることから、その気泡自身の浮力により円滑に気泡滞留部62に移動する。
【0045】
なお、同じく気泡誘導流路部として機能する第2連絡溝38は、上記のように詳述した第1連絡溝37と左右対称で全く同一の構成となっているため、その構成の詳述は省略する。
【0046】
次に、切換装置25の作用について説明する。
図10及び図11は、本体30の連結部35及び該連結部35付近における下側から見たときの断面図である。
【0047】
さて、図10に示すように、記録ヘッド18に供給するインクをマットブラックインクからフォトブラックインクに切り換える場合には、まず、第2中継部材50を介して第2開閉弁48を左方向(水平方向)に向かって押圧する。すると、第2開閉弁48が第2突起34cに密着するとともに、第1開閉弁47が両伝達部材46を介して左方向に向かって押圧されて該第1開閉弁47と第1突起33cとが離間された状態になる。この状態では、第1連絡溝37と第1連結路44とが第1弁体収容部33内を介して連通状態になるとともに第2連絡溝38と第2連結路45とが非連通状態、すなわち、第1開閉弁47が開くとともに第2開閉弁48が閉じた状態(図10に示す状態)になる。
【0048】
この状態で記録ヘッド18のノズル20aから前回使用していたインクであるマットブラックインクをフラッシングによってキャップ27内に吐出すると、フォトブラックインクが第1連絡溝37から第1弁体収容部33内を介して第1連結路44内に流れ込む。この場合のフラッシングでは、選択的にノズル20aからのみインクが吐出される。そして、図10中の矢印で示すように、第1連結路44内に流れ込んだフォトブラックインクは、第1貫通孔39に流れ込むようになり、記録ヘッド18に供給されるインクがマットブラックインクからフォトブラックインクに切り換えられる。
【0049】
一方、図11に示すように、記録ヘッド18に供給するインクをフォトブラックインクからマットブラックインクに切り換える場合には、まず、第1中継部材49を介して第1開閉弁47を右方向(水平方向)に向かって押圧する。すると、第1開閉弁47が第1突起33cに密着するとともに、第2開閉弁48が両伝達部材46を介して右方向に向かって押圧されて該第2開閉弁48と第2突起34cとが離間された状態になる。この状態では、第2連絡溝38と第2連結路45とが第2弁体収容部34内を介して連通状態になるとともに第1連絡溝37と第1連結路44とが非連通状態、すなわち、第1開閉弁47が閉じるとともに第2開閉弁48が開いた状態(図11に示す状態)になる。
【0050】
この状態で記録ヘッド18のノズル20aから前回使用していたインクであるフォトブラックインクをフラッシングによってキャップ27内に吐出すると、マットブラックインクが第2連絡溝38から第2弁体収容部34内を介して第2連結路45内に流れ込む。この場合のフラッシングでは、選択的にノズル20aからのみインクが吐出される。そして、図11中の矢印で示すように、第2連結路45内に流れ込んだマットブラックインクは、第1貫通孔39に流れ込むようになり、記録ヘッド18に供給されるインクがフォトブラックインクからマットブラックインクに切り換えられる。
【0051】
次に、第1連絡溝37の作用について説明する。
(クリーニング時)
さて、記録ヘッド18のクリーニングを行うと、ノズル20aからフォトブラックインクがキャップ27内に強制的に吸引されて排出される。このときのノズル20aからの吸引力により、第1連絡溝37内のフォトブラックインクも連結路36から順次に記録ヘッド18側に流動し、ノズル20aからキャップ27内に排出される。
【0052】
この場合、気泡滞留部62に滞留している気泡は、自身の浮力により気泡滞留部62に滞留し続けようとするが、該気泡の浮力よりもノズル20aからの吸引力(ノズル20aからの吸引によって発生する第1連絡溝37内のフォトブラックインクの流速)の方が大きくなる。このため、気泡滞留部62に滞留している気泡は、フォトブラックインクとともに気泡滞留部62から下流側へ低くなるように滑らかに湾曲した流路形状をなす湾曲部61から連結路36側に速やかに流動し、ノズル20aからキャップ27内に排出される。
【0053】
なお、第1連絡溝37は、クリーニング時の記録ヘッド18からの吸引にともなって該第1連絡溝37内のフォトブラックインクが流動する場合には、該第1連絡溝37内に存在する気泡が自身の浮力に抗して該第1連絡溝37よりも下流側へ流れて記録ヘッド18から排出される程度に、気泡滞留部62よりも下流側(湾曲部61)の長さが設定されている。このことは、第2連絡溝38についても同様になっている。
【0054】
(印刷時)
印刷時には、記録ヘッド18のノズル20aから記録用紙Pに対してフォトブラックインクが噴射され、この噴射にともなって第1連絡溝37内のフォトブラックインクも連結路36から順次に記録ヘッド18側に流動し、ノズル20aから噴射される。この場合、気泡滞留部62に滞留している気泡の浮力は、ノズル20aからのフォトブラックインクの噴射に伴い発生する負圧力(ノズル20aからのフォトブラックインクの噴射によって発生する第1連絡溝37内のフォトブラックインクの流速)よりも大きいままである。
【0055】
このため、気泡滞留部62に滞留している気泡は、第1連絡溝37内のフォトブラックインクが連結路36から記録ヘッド18側へ流動しても、気泡滞留部62に滞留し続ける。したがって、印刷時には、記録ヘッド18のノズル20aから気泡混じりのインクが噴射されにくくなるので、ドット抜けなどの印刷不良の発生が抑制される。
【0056】
また、印刷中には定期的にフラッシングが行われるが、このノズル20aからのフラッシングに伴い発生する負圧力(フォトブラックインクの噴射によって発生する第1連絡溝37内のフォトブラックインクの流速)も、印刷時の場合とほとんど変わらないため、印刷時と同様に、フラッシング時には、記録ヘッド18のノズル20aから気泡混じりのインクが噴射されることが抑制される。
【0057】
なお、第1連絡溝37は、印刷時の記録ヘッド18からのフォトブラックインクの噴射にともなって該第1連絡溝37内のフォトブラックインクが流動する場合には、該第1連絡溝37内に存在する気泡が自身の浮力によって該第1連絡溝37内に留まる程度に、気泡滞留部62よりも下流側(湾曲部61)の長さが設定されている。このことは、第2連絡溝38についても同様になっている。
【0058】
(印刷休止時)
印刷休止時には第1連絡溝37内のフォトブラックインクが流動しないので、気泡滞留部62に滞留している気泡は、自身の浮力により該気泡滞留部62に滞留し続ける。この場合、特に湾曲部61の下端部には、微小気泡が残留することもあるが、湾曲部61の流路形状により、微小気泡が自身の浮力によって気泡滞留部62に移動する。このため、次回の印刷時には、このような微小気泡の混ざったインクがノズル20aから噴射されることが抑制される。
【0059】
なお、第2連絡溝38における作用は、上記した第1連絡溝37の作用と同一であるため、その作用の説明は省略する。
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0060】
(1)記録ヘッド18のノズル20aからフォトブラックインクまたはマットブラックインクを記録用紙Pに対して噴射して印刷を行う際には、切換装置25内のフォトブラックインク中及びマットブラックインク中に含まれる気泡が気泡滞留部62で滞留する。このため、印刷時にノズル20aから気泡混じりのインクが噴射されることを抑制することができるため、ドット抜けなどの印刷不良の発生を抑制することができる。
【0061】
(2)気泡滞留部62よりも低い位置から浮力により気泡滞留部62に集まってきて滞留している気泡については、記録ヘッド18のクリーニングを行うことで、第1連絡溝37及び第2連絡溝38をそれぞれ流れるフォトブラックインク及びマットブラックインクとともにノズル20aから吸引排出することができる。
【0062】
(3)第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、各弁体収容部33,34において鉛直平面である内底面33b,34bに沿って延びるように設けられており、該第1連絡溝37及び第2連絡溝38の一部により気泡滞留部62が構成されている。このため、気泡滞留部62を含む第1連絡溝37及び第2連絡溝38を水平方向で狭いスペースに形成することができ、切換装置25及びインクジェット式プリンタ11の大型化抑制に貢献することができる。
【0063】
(4)第1連絡溝37及び第2連絡溝38において、気泡滞留部62は該気泡滞留部62の下流側直近部位よりも高い位置に位置している。このため、印刷時には、気泡滞留部62よりも下流側に存在している気泡を自身の浮力により気泡滞留部62に移動させて滞留させておくことにより、記録ヘッド18のノズル20aから気泡混じりのインクを排出され難くすることができる。
【0064】
(5)第1連絡溝37及び第2連絡溝38において特に湾曲部61は、第1連絡溝37及び第2連絡溝38内のフォトブラックインク及びマットブラックインクが流動していない印刷休止時に、該湾曲部61内に存在する気泡が自身の浮力によって気泡滞留部62に移動可能となる程度に湾曲状に延びている。このため、湾曲部61内に存在する気泡が自身の浮力によって気泡滞留部62に移動するため、湾曲部61において気泡滞留部62以外の部位に気泡が滞留することを抑制することができる。この場合、特に湾曲部61の下端部(下流端部)に微小気泡が残留することが抑制されることで、次回の印刷時に微小気泡が混じったインクが記録ヘッド18側に流れてノズル20aから噴射されることを抑制することができる。
【0065】
(6)第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、印刷時に、該第1連絡溝37及び第2連絡溝38内に存在する気泡が自身の浮力によって該第1連絡溝37及び第2連絡溝38内に留まる程度に、気泡滞留部62よりも下流側(湾曲部61)長さがそれぞれ設定されている。このため、印刷時に、記録ヘッド18からフォトブラックインクまたはマットブラックインクを噴射する際に、第1連絡溝37または第2連絡溝38内に存在する気泡を該第1連絡溝37または第2連絡溝38内に留めることができる。したがって、記録ヘッド18から気泡混じりのフォトブラックインクまたはマットブラックインクが噴射されることを抑制することができる。
【0066】
(7)第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、記録ヘッド18のクリーニング時(記録ヘッド18からの吸引時)に、該第1連絡溝37及び第2連絡溝38内に存在する気泡が自身の浮力に抗して該第1連絡溝37及び第2連絡溝38よりも下流側へ流れて記録ヘッド18から排出される程度に、気泡滞留部62よりも下流側(湾曲部61)の長さが設定されている。このため、クリーニング時に、記録ヘッド18からフォトブラックインクまたはマットブラックインクを吸引する際に、第1連絡溝37または第2連絡溝38内に存在する気泡をフォトブラックインクまたはマットブラックインクとともに該第1連絡溝37または第2連絡溝38よりも下流側へ流して記録ヘッド18から排出することができる。この結果、第1連絡溝37及び第2連絡溝38内に存在する気泡を確実に除去することができる。
【0067】
(8)切換装置25によって記録ヘッド18に供給されるインクをフォトブラックインクとマットブラックインクとの間で切り換える場合には、連結路36の開口から第1弁体収容部33内または第2弁体収容部34内に、切り換え前に使用していたマットブラックインクまたはフォトブラックインクが混入することがある。この点、本実施形態においては、第1連絡溝37及び第2連絡溝38の湾曲部61は、第1弁体収容部33内の内底面33b上及び第2弁体収容部34の内底面34b上において、それぞれ略渦巻き状に湾曲しながら中心部に位置する連結路36の開口に近づくように延びている。このため、第1弁体収容部33内に混入した切り換え前の古いマットブラックインクは、湾曲部61を流れる切り換え後の新しいフォトブラックインクの流れによって渦を巻くように連結路36の開口に集められて該開口から排出される。一方、第2弁体収容部34内に混入した切り換え前の古いフォトブラックインクは、湾曲部61を流れる切り換え後の新しいマットブラックインクの流れによって渦を巻くように連結路36の開口に集められて該開口から排出される。したがって、第1弁体収容部33内に混入した古いマットブラックインク及び第2弁体収容部34内に混入した古いフォトブラックインクを、略渦巻き状の湾曲部61の作用により、それぞれ連結路36の開口から円滑に排出することができる。
【0068】
(9)マットブラックインクとフォトブラックインクとの間でのインクの切り換えは、選択的にノズル20aからのみインクが吐出されるフラッシングによって行われるため、インクの切り換え時に、マットブラックインク及びフォトブラックインク以外のインクを消費しないようにすることができる。因みに、全ノズル20a〜20cをまとめて覆う一体型のキャップ27を用いて、クリーニングによってマットブラックインクとフォトブラックインクとの間でのインクの切り換えを行った場合には、マットブラックインク及びフォトブラックインク以外のインクを無駄に消費してしまう。
【0069】
(10)第1開閉弁47及び第2開閉弁は、水平方向である左右方向に並ぶように配置されるとともに、左右方向に開閉されるように構成されている。このため、切換装置25のインク切り換え時に瞬間的に第1開閉弁47及び第2開閉弁の双方が開弁された状態になったとしても、マットブラックインク及びフォトブラックインク間に水頭差が生じることがないので、両インクが混じり合うことを抑制することができる。因みに、第1開閉弁47及び第2開閉弁が、鉛直方向である上下方向に並ぶように配置されるとともに、上下方向に開閉されるように構成された場合には、マットブラックインク及びフォトブラックインク間に水頭差が生じる。このため、インク切り換え時に瞬間的に第1開閉弁47及び第2開閉弁の双方が開弁された状態になった場合には、上側のインクが自重によって下側のインク側に流れ込んで、両インクが混ざり合ってしまう。
【0070】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(a)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部が上側に膨らむように湾曲した構成としてもよい。この場合、湾曲した部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。
【0071】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(b)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部が下側に開口するコ字状をなすように屈曲して構成してもよい。この場合、屈曲した部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。
【0072】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(c)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部が下側に開口する逆V字状をなすように屈曲して構成してもよい。この場合、屈曲した部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。
【0073】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(d)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部が2箇所において上側に膨らむように湾曲して構成してもよい。この場合、湾曲した部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。すなわち、気泡滞留部62が2箇所に形成される。さらにこの場合、第1連絡溝37及び第2連絡溝38の一部が3箇所以上において上側が膨らむように湾曲して構成してもよい。
【0074】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、図12(e)に示すように、その上流側及び下流側が水平方向に延びるとともに、その途中の一部を鉛直下側に屈曲した後、さらに水平方向に屈曲するように構成してもよい。この場合、2つの屈曲した部分のうち高い方の部分が気泡滞留部62となる。
【0075】
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、上記した図12(a)〜(e)の変更例を適宜組み合わせて構成してもよい。
・気泡誘導流路部としての第1連絡溝37及び第2連絡溝38は、チューブなどの管によって構成された流路に変更してもよい。そして、例えば、この流路をチューブによって構成する場合には、図13に示すように、チューブをループ状に引き回すようにしてもよい。この場合、チューブのループ状部分における最も高い部位が気泡滞留部62となる。
【0076】
・本実施形態では、切換装置25により、マットブラックインクとフォトブラックインクとの間でインクの切り換えを行うようにしているが、同色インクにおける濃色インクと淡色インクとの間でインクの切り換えを行うようにしてもよい。例えば、シアンインクとライトシアンインクとの間、あるいはマゼンタインクとライトマゼンタインクとの間でインクの切り換えを行うようにしてもよい。
【0077】
・切換装置25は、第1連結路44と第2連結路45とがV字状またはU字状をなすように接続されるように構成してもよい。すなわち、切換装置25は、連結路36をV字状またはU字状をなすように構成してもよい。この場合、伝達部材46の形状は、連結路36の形状に合わせて適宜変更する必要がある。
【0078】
・上記実施形態においては、液体噴射装置として、インクを噴射するインクジェット式プリンタ(ファクス、コピア等を含む印刷装置)について説明したが、他の液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、18…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、25…切換装置、33…第1供給路を構成する第1弁体収容部、34…第2供給路を構成する第2弁体収容部、37…第1供給路を構成する気泡誘導流路部としての第1連絡溝、38…第2供給路を構成する気泡誘導流路部としての第2連絡溝、39…ヘッド側供給路を構成する第1貫通孔、40…ヘッド側供給路を構成する凹溝、41…ヘッド側供給路を構成する第2貫通孔、44…第1供給路を構成する第1連結路、45…第2供給路を構成する第2連結路、47…第1開閉弁、48…第2開閉弁、61…湾曲部、62…気泡滞留部、G…合流点、P…ターゲットとしての記録用紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体をターゲットに対して噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドへ供給される液体の種類を第1液体と該第1液体とは異なる第2液体との間で選択的に切り換える切換装置とを備えた液体噴射装置であって、
前記切換装置内には、
前記第1液体を供給する第1供給路と、
前記第2液体を供給する第2供給路と、
前記第1供給路及び前記第2供給路の下流端同士の合流点と前記液体噴射ヘッドとの間を連通するヘッド側供給路と、
前記第1供給路における前記第2供給路との合流点よりも上流側において前記第1供給路を開閉する第1開閉弁と、
前記第2供給路における前記第1供給路との合流点よりも上流側において前記第2供給路を開閉する第2開閉弁とが備えられ、
前記第1供給路及び第2供給路の途中位置には、前記第1液体中及び第2液体中に含まれる気泡の滞留を許容する気泡滞留部がそれぞれ設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記第1供給路及び前記第2供給路の途中位置には、流路形状が高低差を有して延びる気泡誘導流路部が設けられており、該気泡誘導流路部における高位置に前記気泡滞留部は設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記気泡誘導流路部において、前記気泡滞留部の下流側直近部位は気泡滞留部よりも低くなる方向へ延びていることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記気泡誘導流路部は、該気泡誘導流路部内の前記第1液体及び前記第2液体が流動していない場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力によって前記気泡滞留部側に移動可能となる程度に、該気泡滞留部に連なる部位が斜状または湾曲状に延びていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記気泡誘導流路部は、前記液体噴射ヘッドからの前記第1液体または前記第2液体の噴射にともなって該気泡誘導流路部内の前記第1液体または前記第2液体が流動する場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力によって該気泡誘導流路部内に留まる程度に、前記気泡滞留部よりも下流側の長さが設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記気泡誘導流路部は、前記液体噴射ヘッドからの吸引にともなって該気泡誘導流路部内の前記第1液体または前記第2液体が流動する場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力に抗して該気泡誘導流路部よりも下流側へ流れて前記液体噴射ヘッドから排出される程度に、前記気泡滞留部よりも下流側の長さが設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記気泡誘導流路部は、鉛直平面に沿って形成されていることを特徴とする請求項2〜請求項6のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項1】
液体をターゲットに対して噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドへ供給される液体の種類を第1液体と該第1液体とは異なる第2液体との間で選択的に切り換える切換装置とを備えた液体噴射装置であって、
前記切換装置内には、
前記第1液体を供給する第1供給路と、
前記第2液体を供給する第2供給路と、
前記第1供給路及び前記第2供給路の下流端同士の合流点と前記液体噴射ヘッドとの間を連通するヘッド側供給路と、
前記第1供給路における前記第2供給路との合流点よりも上流側において前記第1供給路を開閉する第1開閉弁と、
前記第2供給路における前記第1供給路との合流点よりも上流側において前記第2供給路を開閉する第2開閉弁とが備えられ、
前記第1供給路及び第2供給路の途中位置には、前記第1液体中及び第2液体中に含まれる気泡の滞留を許容する気泡滞留部がそれぞれ設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記第1供給路及び前記第2供給路の途中位置には、流路形状が高低差を有して延びる気泡誘導流路部が設けられており、該気泡誘導流路部における高位置に前記気泡滞留部は設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記気泡誘導流路部において、前記気泡滞留部の下流側直近部位は気泡滞留部よりも低くなる方向へ延びていることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記気泡誘導流路部は、該気泡誘導流路部内の前記第1液体及び前記第2液体が流動していない場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力によって前記気泡滞留部側に移動可能となる程度に、該気泡滞留部に連なる部位が斜状または湾曲状に延びていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記気泡誘導流路部は、前記液体噴射ヘッドからの前記第1液体または前記第2液体の噴射にともなって該気泡誘導流路部内の前記第1液体または前記第2液体が流動する場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力によって該気泡誘導流路部内に留まる程度に、前記気泡滞留部よりも下流側の長さが設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記気泡誘導流路部は、前記液体噴射ヘッドからの吸引にともなって該気泡誘導流路部内の前記第1液体または前記第2液体が流動する場合には、該気泡誘導流路部内に存在する前記気泡が自身の浮力に抗して該気泡誘導流路部よりも下流側へ流れて前記液体噴射ヘッドから排出される程度に、前記気泡滞留部よりも下流側の長さが設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記気泡誘導流路部は、鉛直平面に沿って形成されていることを特徴とする請求項2〜請求項6のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−176626(P2012−176626A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113124(P2012−113124)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2007−200781(P2007−200781)の分割
【原出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2007−200781(P2007−200781)の分割
【原出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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