説明

液体噴射装置

【課題】装置内を効率的に排気すること。
【解決手段】被噴射媒体を支持する支持面を有する媒体支持部と、前記支持面に支持された被噴射媒体に対して、気化状態における比重が空気よりも大きい溶媒成分を含む液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドによる前記液体の噴射領域から外れた位置に設けられ、当該液体噴射ヘッドの噴射状態を調整するメンテナンス部と、前記媒体支持部、前記液体噴射ヘッド及び前記メンテナンス部を収容する収容部と、前記収容部内のうち前記支持面よりも鉛直方向の下側であって前記メンテナンス部との間で前記噴射領域を挟む位置に設けられ、前記収容部内で気化した前記溶媒成分を含む雰囲気を排気する排気口とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置として、例えばヘッドからインクを噴射する印刷装置などが知られている。このような印刷装置においては、色素成分及び溶媒成分を含むインクが用いられる場合がある。インク中の溶媒成分は装置のハウジング内で蒸発して蒸気になりやすい。これに対して、蒸気となった溶媒成分を排気する排気口が印刷装置内に設けられている構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−181672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成においては、排気口の位置が装置の側面に配置されているため、例えばインクに空気より重い溶剤が含まれる場合、気化した溶剤を効率良く排気できないという問題があった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、装置内を効率的に排気することが可能な液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、被噴射媒体を支持する支持面を有する媒体支持部と、前記支持面に支持された被噴射媒体に対して、気化状態における比重が空気よりも大きい溶媒成分を含む液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドによる前記液体の噴射領域から外れた位置に設けられ、当該液体噴射ヘッドの噴射状態を調整するメンテナンス部と、前記媒体支持部、前記液体噴射ヘッド及び前記メンテナンス部を収容する収容部と、前記収容部内のうち前記支持面よりも鉛直方向の下側であって前記メンテナンス部との間で前記噴射領域を挟む位置に設けられ、前記収容部内で気化した前記溶媒成分を含む雰囲気を排気する排気口とを備える。
【0007】
本発明によれば、収容部内で気化した液体の溶媒成分を含む雰囲気を排気する排気口が、収容部内の鉛直方向の下側に設けられるので、収容部内で気化した溶媒成分は鉛直方向の下方に移動し、排気口から排気される。このため、排気ファン等の強制排気手段を設けなくても排気口から排出することができる。これにより、装置内を効率的に排気することができる。また、本発明によれば、排気口が支持面よりも鉛直方向の下側に設けられているため、支持面に対して鉛直方向の上方に気化した溶媒成分は鉛直方向の下方に移動し、液体噴射ヘッドにより被噴射媒体に噴射された液体の気化を抑制することがない。加えて、本発明によれば、排気口がメンテナンス部との間で媒体支持部を挟む位置に設けられているため、メンテナンス部から離れた位置で排気されることになる。このため、メンテナンス部においては、気化した溶媒成分の拡散を抑制することができる。これにより、メンテナンス性を高めることができる。
【0008】
上記の液体噴射装置は、一端が前記排気口に接続され、排気された前記雰囲気を放出する放出口が他端に設けられた気体流路を更に備え、前記放出口は、前記排気口よりも鉛直方向の下側に配置されていることが好ましい。
本発明によれば、一端が排気口に接続され、排気された雰囲気を放出する放出口が他端に設けられた気体流路を更に備え、放出口が排気口よりも鉛直方向の下側に配置されているので、排気された雰囲気に含まれる溶媒成分が収容部内に逆流するのを防ぐことができる。
【0009】
上記の液体噴射装置は、前記収容部に対して鉛直方向の下側に接続され、前記収容部を支持する支持部を更に備え、前記気体流路は、前記支持部の内部に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、収容部に対して鉛直方向の下側に接続され収容部を支持する支持部を更に備え、気体流路が支持部の内部に設けられているため、別途気体流路を配置するスペースを節約することができる。
【0010】
上記の液体噴射装置において、前記放出口は、前記支持部に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、放出口が支持部に設けられているため、放出口が移動するのを抑制することができる。これにより、溶媒成分の逆流を防ぐことができ、安定して排気することができる。
【0011】
上記の液体噴射装置は、前記排気口の鉛直方向の位置を調整する調整部を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、排気口の鉛直方向の位置を調整する調整部を更に備えるので、排気量を調整することができる。排気量を調整することにより、収容部内に滞留させる雰囲気の量を調整することができる。これにより、例えば収容部内で気化した溶媒成分を含む雰囲気をメンテナンス部に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る印刷装置の一部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る印刷装置の動作を示す図。
【図4】本実施形態に係る印刷装置の動作を示す図。
【図5】本実施形態に係る収容部の雰囲気の状態を示す図。
【図6】本実施形態に係る収容部の雰囲気の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面をもとにして本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置1の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、印刷装置(液体噴射装置)1は、例えばJIS規格のA1判やJIS規格のB1判といった比較的大型のサイズの記録用紙に記録するインクジェット方式のラージフォーマットプリンター(LFP)であり、プリンター本体2と、脚部3とを備えた構成になっている。印刷装置1は、床面FLに載置された状態となっている。
【0014】
以下、本実施形態では、XYZ直交座標系を用いて各構成要素を説明する場合がある。このXYZ直交座標系を用いる場合、床面FLに平行な平面をXY平面とし、床面FLに垂直な方向(鉛直方向)をZ方向とする。XY平面のうち、記録用紙の搬送方向をY方向とし、Y方向に直交する方向をX方向とする。
【0015】
プリンター本体2は、給紙部10、記録部20及び排紙部30を備えている。
給紙部10は、記録部20の上部に設けられており、背面側に突出するように設けられている。給紙部10には、ロール紙ホルダー11と、ロール紙カバー12とが設けられている。
【0016】
ロール紙ホルダー11は、1本のロール状の記録用紙(以下、ロール紙という)を設置する部分であり、給紙部10の内部に設けられている。このロール紙ホルダー11は、スピンドル部13と、スピンドル受部14及び15とを備えている。スピンドル部13は、ロール紙を保持する軸部材であり、図中左右方向に延在している。スピンドル部13にはロール紙押さえ部が設けられており、スピンドル部13に保持されたロール紙を両側から押さえることでロール紙の位置がずれないように固定できるようになっている。スピンドル受部14及び15は、スピンドル部13を回転可能に支持する軸受部である。
【0017】
ロール紙カバー12は、跳ね上げ式の開閉可能なカバー部材であり、給紙部10の外側に取り付けられている。このロール紙カバー12は、全体が回動可能に支持されている。ユーザーがロール紙カバー12の下部を持って持ち上げることで開状態とすることが可能であり、押し下げることにより閉状態とすることが可能になっている。図1においてはロール紙カバー12が開かれた状態になっている。ロール紙カバー12は、閉じた状態でロール紙ホルダー11を覆うようになっている。
【0018】
記録部20は、キャリッジ21と、キャリッジ移動機構22と、フレキシブルフラットケーブル(FFC)23と、インクタンク(流体供給タンク)24と、インクチューブ25と、蓋部材26と、操作パネル27と、メンテナンス部29とを有しており、この他にも例えば制御部100(図2参照)や不図示の紙送りローラー、廃液回収部などを有している。
【0019】
キャリッジ21は、記録ヘッド(噴射ヘッド)28を保持する保持部材であり、キャリッジ移動機構22によって主走査方向に移動可能になっている。記録ヘッド28は、ブラック(B)インクを吐出するブラックインク用の記録ヘッドと、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)の各色のインクを吐出する複数のカラーインク用の記録ヘッドとを有している。この記録ヘッド28は、圧力発生室と当該圧力発生室に繋がるノズル開口とを有している。圧力発生室にはインクが貯留されるようになっており、インクが貯留された状態で当該圧力発生室内を所定圧で加圧することによりノズル開口からロール紙に向けてインク滴が噴射されるようになっている。記録ヘッド28によるインクの噴射の動作は、例えば制御部100によって制御されるようになっている。
【0020】
キャリッジ移動機構22は、レール22aとキャリッジベルト22bとを有している。レール22aには不図示のコロを介してキャリッジ21が吊り下げられており、当該コロを介してキャリッジ21が主走査方向に移動可能になっている。キャリッジベルト22bにはキャリッジ21が連結されており、自身が主走査方向に移動するようになっている。キャリッジベルト22bが主走査方向に移動することでキャリッジ21がレール22aに案内されて主走査方向に往復移動するようになっている。キャリッジベルト22bの移動は、例えば制御部100によって制御されるようになっている。
【0021】
FFC23は、記録ヘッド28と制御部100とを電気的に接続するケーブルであり、一方の端部が記録ヘッド28のコネクターに接続されると共に他方の端部が制御部100のコネクターに接続された構成になっている。このFFC23を介して、制御部100からの記録信号が記録ヘッド28に伝達されるようになっている。
【0022】
インクタンク24は記録部20のうち図中右端に設けられたインクタンクホルダー24a内に収容されており、それぞれ上記記録ヘッド28から噴射される各色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)に対応するインクを保持するインクタンク24B、24Y、24C、24Mを有している。
【0023】
インクチューブ25は、記録ヘッド28と上記のインクタンク24とをつなぐチューブ部材であり、上記色毎に別個に設けられている。インクチューブ25には図示しないインク加圧供給機構が接続されており、当該インク加圧供給機構によって加圧された各色のインクが各色のインクタンク24から記録ヘッド28へと送出されるようになっている。インク加圧供給機構の動作は、例えば制御部100によって制御されるようになっている。
【0024】
蓋部材26は、前蓋26aと、上蓋26bとを有している。前蓋26aは記録部20の正面に設けられており、キャリッジ21、キャリッジ移動機構22、インクチューブ25などを覆うようになっている。この前蓋26aは、ユーザーが押し下げることで開状態に、押し上げることで閉状態になるように構成されている。図1では、前蓋26aは開状態になっている。上蓋26bは記録部20の上部に設けられており、不図示の給紙ローラーなどを覆うようになっている。この上蓋26bは、ユーザーが押し上げることで開状態に、押し下げることで閉状態になるように構成されている。図1では、上蓋26bは閉状態になっている。
【0025】
操作パネル27は、ユーザーが印刷装置1を操作するための操作部であり、記録部20の上蓋26bの図中右側に設けられている。この操作パネル27は、例えば液晶装置などからなる表示画面27aと、不図示の各種ボタンとが設置されており、ユーザーが表示画面を見て確認しながらボタン操作できるようになっている。操作パネル27の表示画面27aがタッチパネルによって構成されていても良い。操作パネル27の駆動制御は、例えば制御部100によって行われるようになっている。
【0026】
メンテナンス部29は、記録ヘッド28のノズル開口近傍のインク粘度が上昇するのを防止する。メンテナンス部29として、例えばキャッピング機構が設けられている。当該キャッピング機構には、吸引機構が取り付けられており、ノズル開口に付着したインクを吸引できるようになっている。メンテナンス部29による吸引動作は、例えば制御部100によって制御されるようになっている。
【0027】
排紙部30は、記録部20の下側に設けられており、排紙ローラー31aと、排紙ガイド31bとを有している。排紙ローラー31aはロール紙に当接可能に設けられており、当該排紙ローラー31aを介してロール紙が副走査方向(主走査方向の直交方向)へ送出されるようになっている。排紙ガイド31bは記録部20の正面側に突出するように設けられており、当該排紙ガイド31bを介してロール紙が副走査方向へ導かれるようになっている。
【0028】
脚部3は、移動用のコロ41を有する2本の支持柱42と、これらの支持柱42の間に掛け渡されている補強棒43とを備えている。支持柱42の上部には記録部20がネジ止め固定されている。支持柱42の間には、排紙部30から排出されてくるロール紙を受ける紙受け装置が配置されるように所定のスペースが設けられている。
【0029】
図2は、印刷装置1の断面構成を示す図である。
図2に示すように、収容部Cには、用紙支持部54と、記録ヘッド28と、メンテナンス部29と、が収容されている。用紙支持部54は、記録部20に搬送されたロール紙Rを支持する支持面54aを有している。支持面54aは、例えば床面FLに平行になるように形成されている。ロール紙Rは、支持面54aを図中+Y方向へ搬送されるようになっている。
【0030】
記録ヘッド28は、用紙支持部54の+Z側と、メンテナンス部29の+Z側とを跨ぐようにX方向に移動可能に設けられている。記録ヘッド28は、用紙支持部54の支持面54aに支持されるロール紙Rに対してインクを噴射する。このように、収容部Cの内部のうち、用紙支持部54の支持面54a上のうちロール紙Rの配置される領域が記録ヘッド28による噴射領域54bとなる。
【0031】
メンテナンス部29は、用紙支持部54の−X側に配置されている。このため、メンテナンス部29は、噴射領域から外れた位置に設けられている。メンテナンス部29は、Z方向に昇降移動可能に設けられている。
【0032】
収容部Cの底部には、開口部C1が形成されている。開口部C1は、収容部Cの底部を貫通して形成されている。開口部C1は、X方向において用紙支持部54の+X側に配置されている。したがって、開口部C1は、メンテナンス部29との間で用紙支持部54を挟む位置に設けられている。また、当該開口部C1は、用紙支持部54の支持面54aよりも鉛直方向の下側(−Z側)に配置されている。
【0033】
本実施形態では、色素成分及び溶媒成分を含むインクが用いられている。収容部C内の雰囲気には、インクに含まれる溶媒成分のうち収容部内で気化したものが含まれている。なお、溶媒成分として、気化状態における比重が空気よりも大きい物質、例えば以下のような有機溶剤が用いられている。このような物質としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートなどが挙げられる。
【0034】
エチレングリコールモノブチルエーテルとしては、例えば、2‐ブトキシエタノール(C6H14O2)、2‐(2‐ブトキシエトキシ)エタノール(C8H18O3)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(C10H20O4)、酢酸2‐ブトキシエチル(C8H16O3)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(C10H22O4)、3,6,9,12‐テトラオキサヘキサデカン‐1‐オール(C12H26O5)、エチレングリコールモノブチルエーテルp‐ジメチルアミノベンゾアート(C15H23NO3)などが挙げられる。
【0035】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートとしては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(C6H12O3)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(C9H18O4)などのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートなどが挙げられる。
【0036】
また、その他の物質としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(ethylene glycol monomethyl ether)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート(ethylene glycol monomethyl ether acetate)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(diethylene glycol monomethyl ether)、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセタート(diethylene glycol monomethyl ether acetate)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(diethylene glycol monoethyl ether)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート(propylene glycol monoethyl ether acetate)、プロピレングリコール(propylene glycol)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)などが挙げられる。
【0037】
更には、ジエチレングリコールジエチルエーテル(C8H18O3)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(C10H22O5)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
開口部C1の周囲には、排気位置調整部C2が設けられている。排気位置調整部C2は、管状に形成されており、開口部C1を囲んで設けられている。排気位置調整部C2は、Z方向に移動可能に設けられている。排気位置調整部C2は、収容部Cの底部から収容部Cの内部に出没するようになっている。
【0039】
排気位置調整部C2が収容部Cの底部に没している状態においては、上記の開口部C1が排気口C3となる。また、排気位置調整部C2が収容部Cの内部に出現している状態においては、排気位置調整部C2の+Z側の端部が排気口C3となる。このように、排気口C3の位置が変化するようになっている。
【0040】
脚部3の二本の支持柱42のうち+X側の支持柱42には、放出口42a及び気体流路42bが形成されている。放出口42aは、支持柱42の−Z側の端部近傍に−X側に向けて形成されている。気体流路42bは、支持柱42の+Z側の端面から−Z方向に形成されており、放出口42aに接続されている。+X側の支持柱42は、気体流路42bが開口部C1に接続されるように配置されている。この構成により、排気口C3から排気された収容部C内の雰囲気は、鉛直方向の下方(−Z側)の気体流路42b及び放出口42aを介して大気に放出されるようになっている。
【0041】
次に、上記のように構成された印刷装置1の動作を説明する。
まず、ロール紙Rが挿入されたスピンドル部13をスピンドル受部14及び15に取り付け、ロール紙Rの先端を下方に引き出して記録部20の搬送経路を通し、図3に示すように、排紙部30の搬送経路まで通す。
【0042】
次に、図4に示すように、ロール紙Rを巻き取り方向に回転させてロール紙Rの先端を例えば排紙ガイド46に形成されている不図示のマーカーに位置決めする。その後、印刷装置1を起動して、ロール紙Rを副走査方向に給紙しつつ記録ヘッド28を主走査方向に移動させながらインク滴を吐出させ、ロール紙Rに所定の情報を記録して排紙する。
【0043】
上記の印刷装置1においては、例えば記録ヘッド28やメンテナンス部29などにおいて、インクに含まれる溶媒成分が気化する場合がある。また、記録ヘッド28が用紙支持部54の支持面54aに支持されるロール紙Rに対して噴射したインクに含まれる溶媒成分も気化する。本実施形態では、溶媒成分として気化した状態で空気よりも比重が大きい有機溶剤が用いられているため、記録部20の内部で支持面54aに対して鉛直方向の上方に気化した溶媒成分Gは鉛直方向の下方、例えば収容部Cの底部へ移動する。収容部Cの底部には排気口C3が設けられているため、気化した溶媒成分Gは、図5に示すように、収容部C内の雰囲気と共に排気口C3から排気される。排気口C3の位置がZ方向において収容部Cの底部に近いほど、排気口C3において溶媒成分Gを回収しやすい構成となる。
【0044】
収容部C内の雰囲気を排気する場合、排気位置調整部C2により排気口C3の位置を調整することもできる。例えば、排気口C3の位置を収容部Cの底部よりも+Z側へ移動させることにより、空気よりも比重が大きい溶媒成分Gは排気口C3を避けて収容部Cの底部に流れやすくなる。この場合、図6に示すように、排気された雰囲気に含まれる溶媒成分Gの量は図5の場合に比べて少なくなる。一方、溶媒成分Gの一部は、収容部Cの底部を介してメンテナンス部29へと到達する。メンテナンス部29においては、雰囲気中にインクの溶媒成分Gが含まれていると記録ヘッド28からのインクの蒸発を防ぐことができるため、メンテナンス性に優れることになる。
【0045】
このように、排気位置調整部C2をZ方向に移動させることにより、収容部C内部の排気性を高めたり、メンテナンス性を高めたりすることができる。なお、本実施形態では、排気口C3の位置がメンテナンス部29との間で用紙支持部54を挟む位置に設けられているため、メンテナンス部29側の溶媒成分Gの拡散速度を、排気口C3側の溶媒成分Gの拡散速度よりも遅くすることができる。このため、メンテナンス性が高められることになる。
【0046】
また、排気口C3の位置はZ方向において支持面54aよりも鉛直方向の下側に設けられているため、支持面54aに対して鉛直方向の上方に気化した溶媒成分は鉛直方向の下方に移動し、記録ヘッド28によりロール紙Rに噴射されたインクの気化(蒸発)を抑制することがない。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、収容部C内で気化したインクの溶媒成分Gを含む雰囲気を排気する排気口C3が、収容部C内のうち支持面54aよりも鉛直方向の下側であってメンテナンス部29との間で噴射領域54bを挟む位置に設けられるので、支持面54aに対して鉛直方向の上方に気化した溶媒成分Gは鉛直方向の下方に移動し、排気口C3から排気される。このため、排気ファン等の強制排気手段を設けなくても排気口C3から排出することができる。これにより、収容部C内を効率的に排気することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、一端が排気口C3に接続され、排気された雰囲気を放出する放出口42aが他端に設けられた気体流路42bを更に備え、放出口42aが排気口C3よりも鉛直方向の下側に配置されているので、排気された雰囲気に含まれる溶媒成分Gが収容部C内に逆流するのを防ぐことができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、収容部Cに対して鉛直方向の下側に接続され収容部Cを支持する支持柱42を更に備え、気体流路42bが支持柱42の内部に設けられているため、別途気体流路42bを配置するスペースを節約することができる。また、放出口42aが支持柱42に設けられているため、放出口42aが移動するのを抑制することができる。これにより、溶媒成分Gの逆流を防ぐことができ、安定して排気することができる。
【0050】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、排気口C3が一箇所設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、二箇所以上に排気口を設ける構成であっても構わない。
【0051】
また、上記実施形態においては、気体流路42bが支持柱42の内部に設けられる構成としたが、これに限られることは無く、別途チューブなどを設ける構成であっても構わない。放出口42aについても同様に、支持柱42に設けられている構成に限られず、チューブの端部から排気した雰囲気を放出する構成であっても構わない。また、放出口42aをチューブなどが接続可能な構造とし、気体流路を延長して別途設置された排気装置に接続する構成であっても構わない。
【0052】
上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。
【0053】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【0054】
ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
FL…床面 C…収容部 R…ロール紙 C1…開口部 C2…排気位置調整部 C3…排気口 G…溶媒成分 1…印刷装置 2…プリンター本体 3…脚部 20…記録部 28…記録ヘッド 29…メンテナンス部 42…支持柱 42a…放出口 42b…気体流路 54…用紙支持部 54a…支持面 54b…噴射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被噴射媒体を支持する支持面を有する媒体支持部と、
前記支持面に支持された被噴射媒体に対して、気化状態における比重が空気よりも大きい溶媒成分を含む液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドによる前記液体の噴射領域から外れた位置に設けられ、当該液体噴射ヘッドの噴射状態を調整するメンテナンス部と、
前記媒体支持部、前記液体噴射ヘッド及び前記メンテナンス部を収容する収容部と、
前記収容部内のうち前記支持面よりも鉛直方向の下側であって前記メンテナンス部との間で前記噴射領域を挟む位置に設けられ、前記収容部内で気化した前記溶媒成分を含む雰囲気を排気する排気口と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
一端が前記排気口に接続され、排気された前記雰囲気を放出する放出口が他端に設けられた気体流路
を更に備え、
前記放出口は、前記排気口よりも鉛直方向の下側に配置されている
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記収容部に対して鉛直方向の下側に接続され、前記収容部を支持する支持部
を更に備え、
前記気体流路は、前記支持部の内部に設けられている
請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記放出口は、前記支持部に設けられている
請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記排気口の鉛直方向の位置を調整する調整部
を更に備える請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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