説明

液体噴射装置

【課題】クリーニング動作による気泡の排出を安定して行うことができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】内部に液体を貯留した液体貯留部材3と、該液体貯留部材3からの液体を導入する液体導入ユニット14と、該液体導入ユニット14からの液体を、液体流路を通じて圧力室39に導入し、圧力発生手段32の作動によって圧力室39内の液体をノズル40から液滴として吐出可能な液体噴射ヘッド2と、を備え、液体導入ユニット14は、液体貯留部材3からの液体を導入する液体導入流路15と、該液体導入流路15の下流側に位置し、液体に混入した気泡を収容する気泡室17と、を有し、気泡室17と液体導入流路15とは、仕切部材23によって仕切られ、該仕切部材23の外縁に臨ませて、液体導入流路15側から気泡室17側に液体が流入可能な流入口22が開設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は液体噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
この種の液体噴射装置としては、流通に乗せ易く取り扱いが容易なカートリッジタイプの液体貯留部材を用いるものが開発されている。例えば、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンターという)では、液体状のインクを封入したインクカートリッジに、液体導入針の一種であるインク導入針を挿入する。これにより、インク導入針の先端側に開設された導入孔を通じて、インクカートリッジ内のインクを液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド内のインク流路に導入している。そして、プリンターは、インク流路を介して圧力室内に導入したインクに圧力変動を生じさせ、この圧力変動を利用してノズルからインク滴として吐出(噴射)する。
【0004】
ところで、上記構成のプリンターでは、インクカートリッジをインク導入針に接続する際に、インク導入針内に気泡が入りこむ虞があった。この気泡は、時間の経過と共に成長して大きくなっていき、過度に成長した気泡がインクの流れによってインク流路内に混入する虞がある。気泡がインク流路内に混入すると、記録動作(インク滴の吐出動作)時に生じる圧力変動を気泡が吸収することによる圧力損失や、気泡が流路を塞ぐことによるインクの供給不足等の不具合を招く虞がある。
【0005】
このような気泡による不具合を防止するための方法として、記録動作時よりインク流路内のインクの流量を多くしてノズルから大量のインクを排出することで、強制的に気泡を排出するクリーニング動作が行われている。このとき、成長した気泡を効率よく排出できるように、図5(a)に示すように、導入針部70の内部において、導入孔71に連通する導入針流路72と、該導入針流路72の下流側に形成され、導入針流路72の内径よりも拡径した円筒状の気泡室73と、該気泡室73の内周面に形成され、上流側から下流側に向けて延在する溝部74と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。このように構成すれば、気泡Bが気泡室73の内径に亘る大きさに成長した場合、インクが気泡Bを避けて溝部74を流下する。ここで、流路を流れる液体には、上流側と下流側との間に、その部分の流路抵抗とインクの流量に比例した圧力差が生じることが知られている。このため、記録動作に比べてインクの流量が多いクリーニング動作において、流路抵抗の高い溝部74をインクが流下すると、上流側(気泡室73内の上方)と下流側(気泡室73内の下方)との間に比較的大きな圧力差が生じる。この圧力差を利用することで、気泡Bを下流側(記録ヘッド側)に送り、ノズルから排出している。
【0006】
ところで、プリンターの中には、図6(a)に示すように、導入針部80の内部の導入針流路82と円筒状の気泡室83とを水平方向にずらして配置し、これらを水平方向に延在した水平流路81を介して連通させたものがある(例えば、特許文献2参照)。この場合も、気泡室83の内周面に上流側から下流側に向けて延在する溝部84を形成することで、上記した先行技術と同様に、気泡室83の内径に亘る大きさに成長した気泡Bをクリーニング動作によってノズルから排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−006730号公報
【特許文献2】特開2002−178541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなプリンターでは、インクの流量等のばらつきによって、クリーニング動作時に気泡が排出されない不具合があった。例えば、クリーニング動作時において、インクの粘度の変化やクリーニング動作のばらつきによりインクの流量が多すぎた場合、図5(b)に示すように、インクが気泡Bの中央を貫通して流れてしまい、インクの流れる部分の流路抵抗が低くなっていた。このため、上流側(気泡室73内の上方)と下流側(気泡室73内の下方)との間の圧力差が小さくなり、気泡Bを下流側に排出できない不具合が生じていた。また、記録動作時において、気泡Bが記録ヘッド内に混入する不具合があった。すなわち、記録動作時において、一部の気泡Bが導入針流路72から流れてきたインクに押し流されて、記録ヘッド側に流出する虞があった。
【0009】
また、図6(b)に示すように、気泡室83の上方に水平流路81が連通したプリンターでは、クリーニング動作時において、水平流路81から気泡室83に流入したインクが、慣性により流れの方向に偏って気泡室83内を流れてしまい、インクの流れる部分の流路抵抗が低くなっていた。このため、上流側(気泡室83内の上方)と下流側(気泡室83内の下方)との間の圧力差が小さくり、気泡Bを下流側に排出できない不具合が生じていた。また、記録動作時において、一部の気泡Bが水平流路81から流れてきたインクに押し流されて、記録ヘッド側に流出する虞があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーニング動作による気泡の排出を安定して行うことができる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液体噴射装置は、上記目的を達成するために提案されたものであり、内部に液体を貯留した液体貯留部材と、
該液体貯留部材からの液体を導入する液体導入ユニットと、
該液体導入ユニットからの液体を、液体流路を通じて圧力室に導入し、圧力発生手段の作動によって圧力室内の液体をノズルから液滴として吐出可能な液体噴射ヘッドと、を備え、
前記液体導入ユニットは、液体貯留部材からの液体を導入する液体導入流路と、
該液体導入流路の下流側に位置し、液体に混入した気泡を収容する気泡室と、を有し、
前記気泡室と前記液体導入流路とは、仕切部材によって仕切られ、
該仕切部材の外縁に臨ませて、前記液体導入流路側から前記気泡室側に液体が流入可能な流入口が開設されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の液体噴射装置によれば、液体導入流路を流れる液体は流入口のみから気泡室内に流入するため、気泡室内において液体が流下する部分の流路抵抗のばらつきを抑えることができる。これにより、クリーニング動作時において、安定して気泡を排出することができる。
【0013】
上記構成において、前記気泡室の内壁面には、当該気泡室の縦方向に延在する溝部が形成され、
該溝部の上端部が、前記仕切部材の外縁に前記流入口として開口された構成を採用することが望ましい。
【0014】
この構成によれば、流入口から流入した液体が溝部を流下するため、液体が流下する部分の流路抵抗のばらつきを一層抑えることができる。これにより、クリーニング動作時において、より安定して気泡を排出することができる。また、液体の流下する溝部に気泡が入り込むことを抑制でき、記録動作時において気泡が記録ヘッド側へ流入することを抑制できる。
【0015】
上記各構成において、前記液体貯留部材の内部と接続され、液体を導入する液体導入孔が開設された導入針部を有し、
該導入針部の内側において、前記液体導入孔と前記液体導入流路とが連通された構成を採用することが望ましい。
【0016】
また、前記仕切部材が仕切板により構成され、
前記液体導入流路は、前記仕切板の面方向に沿って液体を導入する通路を有することが望ましい。
【0017】
この構成によれば、仕切板の面方向に沿って流れてきた液体が気泡室に流入する場合であっても、気泡室内における流れの偏りを抑制でき、液体が流下する部分の流路抵抗のばらつきを抑えることができる。これにより、クリーニング動作時において、安定して気泡を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリンターの斜視図である。
【図2】液体導入ユニットの要部を表す模式図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図3】記録ヘッドの要部断面図である。
【図4】液体導入ユニットの液体の流れを説明する模式図である。
【図5】従来のプリンターの要部を拡大した断面図であり、(a)は非動作時、(b)はクリーニング動作時を説明する図である。
【図6】従来の水平流路を備えたプリンターの要部を拡大した断面図であり、(a)は非動作時、(b)はクリーニング動作時を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置1(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0020】
図1はプリンター1の構成を示す斜視図である。このプリンター1は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2が取り付けられると共に、液体貯留部材の一種であるインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4を備えている。このキャリッジ4の後部には、キャリッジ4を記録紙5(記録媒体および着弾対象の一種)の紙幅方向、即ち、主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動機構6を備えている。また、記録動作時における記録ヘッド2の下方には、間隔を空けてプラテン7を備えている。そして、このプラテン7上には、プリンター1の後方に備えた搬送機構8によって、記録紙5が主走査方向に直交する副走査方向に搬送される。
【0021】
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構6の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動する。キャリッジ4の主走査方向の位置は、位置情報検出手段の一種であるリニアエンコーダー10によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)をプリンター1の制御部に送信する。キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側の端部領域には、キャリッジ4の走査の基点となるホームポジションが設定されている。プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ4が移動する往動時と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ4が戻る復動時との双方向で記録紙5上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録を行う。
【0022】
また、ホームポジションには、記録ヘッド2のノズル形成面(ノズルプレート36:図3参照)を封止するキャッピング部材11と、ノズル形成面を払拭するためのワイパー部材12とが配置されている。キャッピング部材11は、長方形状の底部とこの底部の周縁から起立する側壁部とを有する上面が開放したトレイ状の部材であり、ゴム等の弾性部材により形成される。また、キャッピング部材11には、その内側を減圧するポンプ(図示せず)が接続されている。これにより、ノズル形成面をキャッピング部材11により封止した後でポンプを動作させることで、記録ヘッド2内の気泡や増粘したインクを吸引することができる(クリーニング動作)。なお、クリーニング動作では、記録動作によりノズル40から吐出されるインクよりも多くのインクが吸引される。
【0023】
そして、記録ヘッド2の上方であって、キャリッジ4の底部には、上面がインクカートリッジ3の装着部分の底面を構成する液体導入ユニット14が備えられている。この液体導入ユニット14は、図2に示すように、インクカートリッジ3からのインクを導入する液体導入流路15と、該液体導入流路15の下流側に位置し、液体に混入した気泡を収容する気泡室17と、該気泡室17の下端部に連通し、記録ヘッド2側に送る液体を濾過するフィルター18を備えたフィルター室19と、を有している。また、本実施形態の液体導入ユニット14の上面には、インクカートリッジ3に接続される導入針部20が設けられている。
【0024】
詳しく説明すると、導入針部20は液体導入ユニット14の上面に対して垂直方向に向けて突設され、その尖端部にインクカートリッジ3からの液体を導入する液体導入孔21が開設されている。また、導入針部20の内側には、液体導入ユニット14の上面に対して垂直方向に延在する導入針流路15aが形成されている。この導入針流路15aは、上端部が液体導入孔21と連通すると共に、下端部が水平流路15bの上流端部と連通している。
【0025】
水平流路15bは、液体導入ユニット14の上面(あるいは、後述する仕切板23)の面方向に沿って、気泡室17側に向けて延びた流路である。この水平流路15bの下流側は、図2(b)に示すように、気泡室17に対応して平面視において円形に形成された円形流路15cと連通している。そして、この円形流路15cの外周縁には、流入口22が位相を90度変えて4箇所開口している。
【0026】
流入口22は、円形流路15c(液体導入流路15)と気泡室17とを繋ぐ開口であり、後述する仕切板23の外縁に臨ませて、開設されている。本実施形態では、一の流入口22(図2(b)における右側の流入口22)を、円形流路15cの縁であって、円形流路15cと水平流路15bが連通する部分の水平流路15bの底部に開設している。残り三つの流入口22は、円形流路15cの外周縁の底部に開設している。具体的には、円形流路15cの外周縁は三つの流入口22に対応して90度位相を変えた三方に広げられており、この広げられた部分の底部に流入口22を開設している。これにより、液体導入孔21から導入されたインクを、導入針流路15a、水平流路15b、および円形流路15cからなる一連の液体導入流路15を介して流入口22に流入させることができる。
【0027】
そして、円形流路15cの流入口22以外の底部は、円形の平板状に形成された仕切板23で構成されている。この仕切板23は、円形流路15c(液体導入流路15)と気泡室17とを仕切る仕切部材の一種であり、流入口22以外から気泡室17内へインクが流入することを防いでいる。また、本実施形態の気泡室17は、円筒形状に形成され、その内壁面に気泡室17の縦方向に延在する溝部24が、流入口22に対応して四方に形成されている。この溝部24の上端部は、仕切板23の外縁に臨ませた位置に延在され、円形流路15cと連通している。すなわち、溝部24の上端部は、仕切板23の外縁に流入口22として開口している。そして、液体導入流路15側から流入口22を介して気泡室17側に流入したインクは、主として溝部24内を流下する。なお、インクの流下については、後述する。
【0028】
気泡室17の下端部には、気泡やゴミ等を濾過するフィルター18を備えたフィルター室19が連通している。フィルター室19のうちフィルター18を挟んだ上流側は、気泡室17側からフィルター18側に向けて内径が次第に大きくなる拡径状に形成されている。これにより、フィルター18により捕らえられた気泡は、このフィルター室19の上流側を浮上し、気泡室17内に収容される。また、フィルター室19のうちフィルター18を挟んだ下流側は、フィルター18側から記録ヘッド2側に向けて内径が次第に小さくなる漏斗状に形成されている。そして、このフィルター室19(フィルター18を挟んだ下流側)の下側は、後述するケース流路30と連通している。
【0029】
記録ヘッド2は、図3に示すように、ヘッドケース26、振動子ユニット27、及び流路ユニット28から構成されている。ヘッドケース26は、例えば、エポキシ系樹脂により作製された中空箱体状部材であり、その先端面(下面)には流路ユニット28を固定し、ケース内部に形成された収容空部29内には振動子ユニット27を収容している。また、ヘッドケース26の内部には、その高さ方向を貫通してケース流路30が形成されている。このケース流路30は、液体導入ユニット14側からのインクを後述するリザーバー31に供給するための流路である。
【0030】
振動子ユニット27は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子32と、この圧電振動子32に駆動基板からの駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル33(配線部材)と、圧電振動子32の一側端部を固定する固定板34と、から構成される。圧電振動子32の固定板34に固定されない自由端部の先端面は、後述する島部46(振動板37)に接合されている。そして、この圧電振動子32は、駆動信号の印加により伸縮して圧力室39の容積を膨張又は収縮することで、圧力室39内のインクに圧力変動を生じさせ、この圧力変動の制御によりノズル40からインクを噴射させることができる。
【0031】
流路ユニット28は、流路形成基板35の一方の面にノズルプレート36を、流路形成基板35の他方の面に振動板37をそれぞれ接合して構成されている。この流路ユニット28には、リザーバー31(共通液室)、インク供給口38、および圧力室39からなる一連の流路が設けられている。リザーバー31は、ノズル列方向に沿って長尺な空部であり、その上部にケース流路30が連通している。インク供給口38は、各圧力室39とリザーバー31を連通させる流路幅の狭い狭窄部である。圧力室39は、ノズル列に直交する方向に沿って長尺な空部であり、ノズル40が連通(開口)している。
【0032】
上記ノズルプレート36は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズル40が列状に穿設されたステンレスやシリコン結晶等の薄いプレートである。本実施形態のノズル列は、例えば180個のノズル40によって構成されている。
【0033】
上記振動板37は、支持板42の表面に弾性体膜43を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板を支持板42とし、この支持板42の表面に樹脂フィルムを弾性体膜43としてラミネートした複合板材を用いて振動板37を作製している。この振動板37には、圧力室39の容積を変化させるダイヤフラム部44が設けられている。また、この振動板37には、リザーバー31の一部を封止するコンプライアンス部45が設けられている。
【0034】
上記のダイヤフラム部44は、エッチング加工等によって圧力室39に対向する領域の支持板42を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部44は、圧電振動子32の自由端部(固定板34に固定される側とは反対側の端部)の先端面が接合される島部46と、この島部46を囲む薄肉弾性部とからなる。上記のコンプライアンス部45は、リザーバー31の開口面に対向する領域の支持板42を、ダイヤフラム部44と同様にエッチング加工等によって除去することにより作製され、リザーバー31に貯留されたインクの圧力変動を吸収するダンパーとして機能する。
【0035】
そして、上記の島部46には圧電振動子32の先端面が接合されているので、この圧電振動子32の自由端部を伸縮させることで圧力室39の容積を変動させることができる。この容積変動に伴って圧力室39内のインクに圧力変動が生じる。そして、記録ヘッド2は、この圧力変動を利用してノズル40からインク滴を吐出する。
【0036】
次に、液体導入ユニット14内のインクの流れおよび気泡の排出について、図4を用いて説明する。例えば、クリーニング動作により、記録ヘッド2(リザーバー31)内の圧力が低下すると、インクカートリッジ3から導入針部20の液体導入孔21を介して導入針流路15a内にインクが導入される。導入針流路15aに導入されたインクは、水平流路15bおよび円形流路15cを流れ、仕切板23の上面に当たって分散された状態で各流入口22に流入する。すなわち、特定の流入口22に集中することを防止できる。そして、流入口22に流入したインクは、溝部24を流下し、フィルター室19を介して記録ヘッド2側に送られる(図4の黒矢印参照)。
【0037】
ここで、流路を流れる液体には、上流側と下流側との間に、その部分の流路抵抗と液体の流量に比例した圧力差が生じることが知られている。このため、流路の径が比較的小さく、流路抵抗が大きい溝部24には、インクの流れによって上流側と下流側との間に圧力差が生じる。すなわち、気泡室17内の下方が上方に比べて低圧になる。これにより、気泡室17内の気泡Bはフィルター室19側に移動し(図4の白矢印参照)、インクの流れに乗ってノズル40から排出される。なお、記録動作時は、クリーニング動作時に比べてノズル40から排出するインクの量が少なく、溝部24を流れるインクの量も少ないため、クリーニング動作時に比べて生じる圧力差は小さい。これにより、記録動作時においては、気泡の記録ヘッド2側への排出が抑制される。
【0038】
そして、上記構成によれば、液体導入流路15を流れるインクは、分散された状態で流入口22のみから気泡室17内に流入するため、気泡室17内においてインクが流下する部分の流路抵抗のばらつきを抑えることができる。これにより、クリーニング動作時において、安定して気泡を排出することができる。特に本実施形態では、気泡室17に溝部24を設け、その上端部を流入口22としたので、流入口22から流入したインクを溝部24内で流下させることができる。これにより、インクが流下する部分の流路抵抗のばらつきを一層抑えることができる。その結果、クリーニング動作時において、より安定して気泡を排出することができる。また、インクの流下する溝部24に気泡が入り込むことを抑制でき、記録動作時において気泡が記録ヘッド2側へ流入することを抑制できる。さらに本実施形態では、仕切板23の面方向に沿った水平流路15bを備えているが、この水平流路15bに沿って流れてきたインクが気泡室17に流入する場合であっても、仕切板23による分散機能とその外縁に臨ませて開設された流入口22のは位置により、気泡室17内における流れの偏りを抑制でき、インクが流下する部分の流路抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0039】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、気泡室に溝部を設け、その上端部を流入口としたが、これには限らず、溝部を設けずに流入口を設ける構成でも良い。溝部を設けない場合は、例えば、仕切板の外縁部の一部を内側に切り欠いて流入口を設けることができる。これにより、気泡室内へのインクの流入が流入口からの流入に限られ、インクが流下する領域を安定させることができ、インクが流下する部分の流路抵抗のばらつきを抑えることができる。また、上記実施形態では、気泡室と導入針流路の間に仕切板の面方向に沿った水平流路を設けてインクの流れの方向をほぼ直角に屈曲させたが、これには限らず、水平流路を設けずに気泡室の上方に導入針流路を設けて直線状にインクを流下させても良い。
【0040】
そして、本発明は、圧力発生手段を用いて液体の噴射制御が可能な液体噴射装置であれば、プリンターに限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体噴射装置、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。そして、ディスプレイ製造装置では、色材噴射ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を噴射する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を噴射する。
【符号の説明】
【0041】
1…プリンター,2…記録ヘッド,3…インクカートリッジ,4…キャリッジ,5…記録紙,6…キャリッジ移動機構,7…プラテン,8…搬送機構,9…ガイドロッド,10…リニアエンコーダー,11…キャッピング部材,12…ワイパー部材,14…液体導入ユニット,15…液体導入流路,15a…導入針流路,15b…水平流路,15c…円形流路,17…気泡室,18…フィルター,19…フィルター室,20…導入針部,21…液体導入孔,22…流入口,23…仕切板,24…溝部,26…ヘッドケース,27…振動子ユニット,28…流路ユニット,29…収容空部,30…ケース流路,31…リザーバー,32…圧電振動子,33…フレキシブルケーブル,34…固定板,35…流路形成基板,36…ノズルプレート,37…振動板,38…インク供給口,39…圧力室,40…ノズル,42…支持板,43…弾性体膜,44…ダイヤフラム部,45…コンプライアンス部,46…島部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留した液体貯留部材と、
該液体貯留部材からの液体を導入する液体導入ユニットと、
該液体導入ユニットからの液体を、液体流路を通じて圧力室に導入し、圧力発生手段の作動によって圧力室内の液体をノズルから液滴として吐出可能な液体噴射ヘッドと、を備え、
前記液体導入ユニットは、液体貯留部材からの液体を導入する液体導入流路と、
該液体導入流路の下流側に位置し、液体に混入した気泡を収容する気泡室と、を有し、
前記気泡室と前記液体導入流路とは、仕切部材によって仕切られ、
該仕切部材の外縁に臨ませて、前記液体導入流路側から前記気泡室側に液体が流入可能な流入口が開設されたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記気泡室の内壁面には、当該気泡室の縦方向に延在する溝部が形成され、
該溝部の上端部が、前記仕切部材の外縁に前記流入口として開口されたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体貯留部材の内部と接続され、液体を導入する液体導入孔が開設された導入針部を有し、
該導入針部の内側において、前記液体導入孔と前記液体導入流路とが連通されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記仕切部材が仕切板により構成され、
前記液体導入流路は、前記仕切板の面方向に沿って液体を導入する通路を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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