説明

液体噴射装置

【課題】液体の飛散を低減することができる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部とを備え、前記キャップ部は、環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、前記第一壁部の内側に前記第一壁部の内面に平行に環状に設けられた第二壁部と、前記第一壁部と前記第二壁部との間に溝が形成されるように前記第一壁部及び前記第二壁部を接続し、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を保持する液体保持部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置として、インクジェット方式の印刷装置が知られている。このインクジェット方式の印刷装置は、インクを噴射する複数のノズルがノズル形成面に形成されたヘッドを備えている。ヘッドからのインクの吐出特性を維持するため、例えばノズルを囲うようにキャップ部をノズル形成面に当接させてノズル形成面を覆うキャッピング動作や、キャップ部とノズル形成面との間に空間を形成し、当該空間を負圧にしてノズルからインクを吸引する吸引動作などを行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−290723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような構成においては、ノズル形成面に当接されたキャップ部をノズル形成面から離すときに、キャップ部のうちノズル形成面に当接する部分やキャップ部の内壁部分に付着したインクが飛散し、ノズル形成面に付着してしまう場合がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、液体の飛散を低減することができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部とを備え、前記キャップ部は、環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、前記第一壁部の内側に前記第一壁部の内面に平行に環状に設けられた第二壁部と、前記第一壁部と前記第二壁部との間に溝が形成されるように前記第一壁部及び前記第二壁部を接続し、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を保持する液体保持部とを有する。
【0007】
本発明によれば、キャップ部が、環状に形成されノズル形成面に当接される当接部を有しノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、当該第一壁部の内側に第一壁部の内面に平行に環状に設けられた第二壁部と、第一壁部と第二壁部との間に溝が形成されるように第一壁部及び第二壁部を接続し、当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した液体を保持する液体保持部とを有することとしたので、当該当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した液体を回収することができる。このため、ノズル形成面に接触している当接部がノズル形成面から離れる場合において、第一壁部に付着した液体の飛散を低減することができる。
【0008】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部とを備え、前記キャップ部は、環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、前記第一壁部の内側に設けられ、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を吸収する刷毛部を有する液体吸収部とを有する。
【0009】
本発明によれば、キャップ部が、環状に形成されノズル形成面に当接される当接部を有しノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、当該第一壁部の内側に設けられ当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した液体を吸収する刷毛部を有する液体吸収部とを有することとしたので、刷毛部によって当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一方に付着した液体を吸収することができる。これにより、ノズル形成面に接触している当接部がノズル形成面から離れる場合において、第一壁部に付着した液体の飛散を低減することができる。
【0010】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部とを備え、前記キャップ部は、環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を吸収する刷毛部を有する液体吸収部と、前記第一壁部の内側に環状に設けられ、前記液体吸収部を支持する支持部とを有する。
【0011】
本発明によれば、キャップ部が、環状に形成されノズル形成面に当接される当接部を有しノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した液体を吸収する刷毛部を有する液体吸収部と、第一壁部の内側に環状に設けられ液体吸収部を支持する支持部とを有することとしたので、液体吸収部のズレを抑えつつ、刷毛部によって当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一方に付着した液体を吸収することができる。これにより、安定した液体の回収が可能になり、ノズル形成面に接触している当接部がノズル形成面から離れる場合において、第一壁部に付着した液体の飛散をより確実に低減することができる。
【0012】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部とを備え、前記キャップ部は、環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、前記第一壁部の内側に前記第一壁部の内面に平行に環状に設けられ、前記第一壁部が前記ノズル形成面に当接した状態で前記ノズル形成面に接触しないように設けられた第二壁部と、前記第一壁部と前記第二壁部との間に溝が形成されるように前記第一壁部及び前記第二壁部を接続し、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を保持する液体保持部とを有し、前記キャップ部が前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆った状態で前記第一壁部によって囲われる前記所定部分を吸引する第一吸引部と、前記液体保持部に保持された前記液体を吸引する第二吸引部とを更に備える。
【0013】
本発明によれば、キャップ部が、環状に形成されノズル形成面に当接される当接部を有しノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、第一壁部の内側に第一壁部の内面に平行に環状に設けられ第一壁部がノズル形成面に当接した状態でノズル形成面に接触しないように設けられた第二壁部と、第一壁部と第二壁部との間に溝が形成されるように第一壁部及び第二壁部を接続し当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した液体を保持する液体保持部とを有し、キャップ部がノズル形成面の少なくとも一部を覆った状態で第一壁部によって囲われる所定部分を吸引する第一吸引部と、液体保持部に保持された液体を吸引する第二吸引部とを更に備えることとしたので、第一吸引部による所定部分の吸引と、第二吸引部による液体保持部の吸引とを個別に行うことができる。これにより、当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一方に付着した液体を効率良く回収することができるので、ノズル形成面に接触している当接部がノズル形成面から離れる場合において第一壁部に付着した液体の飛散をより確実に低減することができる。
【0014】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部とを備え、前記キャップ部は、環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、前記第一壁部の内側に前記第一壁部の内面に平行に環状に設けられた第二壁部と、前記第一壁部と前記第二壁部との間に溝が形成されるように前記第一壁部及び前記第二壁部を接続し、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を保持する液体保持部とを有し、前記キャップ部が前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆った状態で前記第一壁部によって囲われる前記所定部分を吸引する第一吸引部と、前記液体保持部に保持された前記液体を吸引する第二吸引部と、前記第一吸引部及び前記第二吸引部の動作を切り替える切り替え部とを更に備える。
【0015】
本発明によれば、キャップ部が、環状に形成されノズル形成面に当接される当接部を有しノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、第一壁部の内側に第一壁部の内面に平行に環状に設けられた第二壁部と、第一壁部と第二壁部との間に溝が形成されるように第一壁部及び第二壁部を接続し当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した液体を保持する液体保持部とを有し、キャップ部がノズル形成面の少なくとも一部を覆った状態で第一壁部によって囲われる所定部分を吸引する第一吸引部と、液体保持部に保持された液体を吸引する第二吸引部と、第一吸引部及び第二吸引部の動作を切り替える切り替え部とを更に備えるので、第一吸引部による吸引動作と、第二吸引部による吸引動作とを個別に制御することができる。これにより、ノズル形成面に接触している当接部がノズル形成面から離れる場合において、第一壁部に付着した液体の飛散を低減することができる。加えて、当接部及び第一壁部の内面のうち少なくとも一方に付着した液体の回収効率を向上させることができると共に、液体の付着状況に応じて最適な液体の回収動作を行うことができる。
【0016】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部とを備え、前記キャップ部は、環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、前記第一壁部の内面に設けられた溝部と、を有し、前記溝部は、前記第一壁部の内面側から外面側へ向けて徐々に先細りとなるように形成されている。
【0017】
本発明によれば、キャップ部が、環状に形成されノズル形成面に当接される当接部を有しノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、第一壁部の内面に設けられた溝部とを有し、溝部が、第一壁部の内面側から外面側へ向けて徐々に先細りとなるように形成されているので、当該溝部において液体を保持することができる。これにより、ノズル形成面に接触している当接部がノズル形成面から離れる場合において、第一壁部に付着した液体の飛散を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る印刷装置の一部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る印刷装置の制御部の構成を示すブロック図。
【図4】本実施形態に係る印刷装置の動作の一態様を示す図。
【図5】本実施形態に係る印刷装置の動作の一態様を示す図。
【図6】本発明の実施の形態に係る印刷装置の他の構成を示す図。
【図7】本発明の実施の形態に係る印刷装置の他の構成を示す図。
【図8】本発明の実施の形態に係る印刷装置の他の構成を示す図。
【図9】本発明の実施の形態に係る印刷装置の他の構成を示す図。
【図10】本発明の実施の形態に係る印刷装置の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとしてインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0020】
図1に示す印刷装置PRTは、例えば、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット部IJと、当該インクジェット部IJにインクを供給するインク供給部ISと、媒体Mを搬送する搬送部CVと、インクジェット部IJの保全動作を行うメンテナンス部MNと、これら各部を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0021】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、媒体Mの搬送方向をX方向とし、当該媒体Mの搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0022】
筐体PBは、Y方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット部IJ、インク供給部IS、搬送部CV、メンテナンス部MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、プラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、筐体PBのうちX方向の中央部に配置されている。プラテン13は、+Z方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0023】
搬送部CVは、搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送部CVは、筐体PBの−X側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送部CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送部CVは、制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0024】
インクジェット部IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動部ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射するノズル形成面Haを有している。ノズル形成面Haは、−Z方向に向けられており、プラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。
【0025】
ヘッド移動部ACは、ヘッドHを筐体PBの長手方向に移動させる。ヘッド移動部ACは、ヘッドHを固定させるキャリッジ4を有している。キャリッジ4は、筐体PBの長手方向に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッド移動部ACは、当該キャリッジ4をガイド軸8に沿って移動させる、例えばパルスモーター9、駆動プーリー10、遊転プーリー11及びタイミングベルト12などを有している。
【0026】
メンテナンス部MNは、媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域(ホームポジション)に設けられている。メンテナンス部MNは、ヘッドHのノズル形成面Haを覆うキャッピング部CPや、当該ノズル形成面Haを払拭するワイピング部WPなどを有している。キャッピング部CPには、吸引ポンプSCが接続されている。ヘッドHからメンテナンス部MN側に排出された廃インクは、廃液回収部(不図示)において回収される。
【0027】
インク供給部ISは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給部ISには、複数のインクカートリッジICが収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジICがヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。
【0028】
インク供給部ISは、各インクカートリッジICの内部の圧力を個別に調整可能な圧力調整部6を有している。インク供給部ISは、ヘッドHとインクカートリッジICとを接続する供給チューブTBを有している。供給チューブTBは、インクカートリッジIC毎に設けられている。
【0029】
図2は、キャッピング部CPの構成を示す図である。
図2に示すように、キャッピング部CPは、キャップ部材50、吸引部51及び吸収材52を有している。
【0030】
キャップ部材50は、トレイ状に形成されており、底部55及び壁部56を有している。底部55は、Z方向視で例えば矩形に形成されている。底部55には、インク吸収材52が収容されている。壁部56は、第一壁部61、第二壁部62及び保持部63を有している。
【0031】
第一壁部61は、底部55に対してZ方向に立った状態で設けられており、底部55の周縁部に沿って環状に形成されている。第一壁部61の+Z側端面は、ノズル形成面Haに当接される当接部61aとなっている。第一壁部61aの+Z側端面に、例えばリップ部などを設けられた構成であっても構わない。当接部61aは、ノズル形成面HaのうちノズルNZが設けられる領域を囲うように形成されている。
【0032】
第二壁部62は、第一壁部61の内側に配置されている。第二壁部62は、第一壁部61の内面61bにほぼ平行に形成されており、第一壁部61の内面61bに沿って環状に形成されている。
【0033】
液体保持部63は、第一壁部61と第二壁部62との間に接続されている。より具体的には、液体保持部63は、第一壁部61の底面と第二壁部62の底面との間を塞ぐように設けられている。当該液体保持部63が設けられているため、第一壁部61と第二壁部62との間は、底部を有する溝が形成された状態になっている。液体保持部63は、第一壁部61の当接部61a及び第一壁部61の内面61bのうち少なくとも一部に付着したインクを保持可能である。
【0034】
吸引部51は、接続管51a及び吸引ポンプSCを有している。接続管51aは、底部55に設けられた開口部53に接続されている。吸引ポンプSCは、接続管51aに設けられている。吸引ポンプSCが作動することにより、キャップ部材50の底部55と壁部56とで囲まれた空間やインク吸収材52に吸収されたインクが接続管51aを介して吸引される。 また、キャップ部材50には、キャップ部材50の底部55と壁部56とで囲まれた空間を大気開放する不図示の大気開放部が設けられている。
【0035】
図3は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IP、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRなどが接続されており、上述した搬送部CVや、ヘッド移動部AC、メンテナンス部MN等が接続されている。制御装置CONTは、メンテナンス部MNのうち例えばキャッピング部CP、吸引ポンプSC及び開閉弁55などを制御可能である。
【0036】
ヘッドHは、ノズルNZごとに設けられた圧電振動子を有している。制御装置CONTは、当該圧電振動子に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器に接続されている。駆動信号発生器には、ヘッドHの圧電振動子に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器は、各圧電振動子に対して、個別に駆動信号を供給可能に設けられている。
【0037】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。制御装置CONTは、印刷装置PRTの動作として、ヘッドHによる印刷動作や、メンテナンス部MNによるヘッドHのクリーニング動作などを行わせる。
【0038】
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送部CVによって媒体MをヘッドHの−Z側に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データに基づいてノズルNZに係る駆動信号発生器から圧電振動子に駆動信号を入力する。圧電振動子に駆動信号が入力されると、圧電振動子が伸縮し、ノズルNZからインクが噴射される。ノズルNZから噴射されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。
【0039】
次に、クリーニング動作を行わせる場合を説明する。クリーニング動作は、ヘッドHの吐出特性を確保するために行われる。制御装置CONTは、上記クリーニング動作として、キャッピング部CPを用いた吸引動作を行わせる。
【0040】
当該吸引動作では、制御装置CONTは、ヘッドHをホームポジションに配置させ、キャップ部材50によってヘッドHのノズル形成面Haを封止させた後、吸引ポンプSCを作動させてノズルNZを吸引する。この動作により、図4に示すように、キャップ部材50とノズル形成面Haとで封止された空間Kが負圧になる。
【0041】
空間Kが負圧になると、空間KとヘッドHの内部との圧力差により、ノズルNZからキャップ部材50の内部へとインクDが排出される。排出されたインクDは、底部55上に収容されているインク吸収材52に吸収される。その後、インク吸収材52に吸収されたインクDは、吸引ポンプSCの吸引力により、開口部53から接続管51aを介して不図示の廃液回収部へ排出される。
【0042】
吸引動作の後、制御装置CONTは、不図示の大気開放部を用いて空間Kを大気開放させる。この動作により、空間Kの圧力が大気圧に戻る。大気開放動作の後、制御装置CONTは、図5に示すように、キャップ部材50を−Z方向へ移動させ、ヘッドHのノズル形成面Haから離す。
【0043】
ここで、上記吸引動作を行う場合、一部のインクが、ノズル形成面Haを伝わってキャップ部材50の当接部61に到達する場合がる。この状態でキャップ部50をノズル形成面Haから離すと、当接部61に到達したインクが飛散する場合がある。一方、本実施形態では、第一壁部61の内側に第二壁部62及び液体保持部63が設けられているため、図4に示すように到達部61に到達したインクEは、第一壁部61及び第二壁部62を伝わって液体保持部63に保持される。このため、キャップ部材50を−Z方向に移動させて当接部61aをノズル形成面Haから引き離す場合であっても、インクEの飛散が低減されることとなる。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、キャップ部材50が、環状に形成されノズル形成面Haに当接される当接部61aを有しノズル形成面HaのノズルNZの形成部分を囲う第一壁部61と、当該第一壁部61の内側に第一壁部61の内面61bに平行に環状に設けられた第二壁部62と、第一壁部61と第二壁部62との間に溝が形成されるように第一壁部61及び第二壁部62を接続し、当接部61及び第一壁部61の内面61bのうち少なくとも一部に付着したインクEを保持する液体保持部63とを有することとしたので、当該当接部61a及び第一壁部61の内面61bのうち少なくとも一部に付着したインクEを回収することができる。このため、ノズル形成面Haに接触している当接部61aがノズル形成面Haから離れる場合において、第一壁部61に付着した液体の飛散を低減することができる。
【0045】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、当接部61及び第一壁部61の内面61bのうち少なくとも一部に付着したインクEを保持する構成として、第二壁部62及び液体保持部63が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
【0046】
例えば、図6に示すように、第二壁部62及び液体保持部63に代えて、液体吸収部64が設けられた構成であっても構わない。液体吸収部64は、第一壁部61の内側、例えば第一壁部61の内面61bに接する位置に設けられている。液体吸収部64は、複数の線状部材が束ねられた状態で配置された刷毛部64aと、当該刷毛部64aを保持する刷毛保持部64bとを有する。
【0047】
この構成によれば、当接部61a及び第一壁部61の内面61bのうち少なくとも一部に付着したインクEを刷毛部64aによって吸収することができる。これにより、ノズル形成面Haに接触している当接部61aがノズル形成面Haから離れる場合において、第一壁部61に付着したインクの飛散を低減することができる。
【0048】
また、例えば図7に示すように、上記液体吸収部64が設けられるとともに、当該液体吸収部64の刷毛保持部64bを支持する支持部65が設けられた構成であっても構わない。この構成によれば、液体吸収部64のズレを抑えつつ、刷毛部64aによって当接部61a及び第一壁部61の内面61bのうち少なくとも一方に付着したインクを吸収することができる。これにより、安定したインクの回収が可能になり、ノズル形成面Haに接触している当接部61aがノズル形成面Haから離れる場合において、第一壁部61に付着したインクの飛散をより確実に低減することができる。
【0049】
なお、液体吸収部64を支持する構成として、例えば上記実施形態に記載の第二壁部62及び液体保持部63の構成を用いることができる。この場合、液体吸収部64を第一壁部61と第二壁部62との間に収容可能な寸法に形成し、刷毛保持部64bを液体保持部63上に配置させるようにすれば良い。この構成において、液体吸収部64は、例えば第一壁部61と第二壁部62との間をすべて埋めるように形成されていても構わないし、所定のピッチで複数設けられていても構わない。
【0050】
また、例えば図8に示すように、上記実施形態の構成に加えて、液体保持部63上に保持されたインクを吸引する第二吸引部SC2が設けられた構成であっても構わない。第二吸引部SC2は、接続管54を介して液体保持部63に接続されている。ここで、図8に示す構成においては、第二壁部62の+Z側端面が、第一壁部61の+Z側端面(当接部61a)よりも−Z側に配置されている(間隔tが形成されている)。
【0051】
この構成により、吸引部(第一吸引部)SCによる吸引と、第二吸引部SC2による液体保持部63の吸引とを個別に行うことができる。これにより、当接部61a及び第一壁部61の内面61bのうち少なくとも一方に付着したインクを効率良く回収することができるので、ノズル形成面Haに接触している当接部61aがノズル形成面Haから離れる場合において第一壁部61に付着したインクの飛散をより確実に低減することができる。
【0052】
また、例えば図9に示すように、底部55及び壁部56によって囲まれる空間を吸引する接続管51aの接続先と、液体保持部63に保持されたインクを吸引する接続管54の接続先とが共に吸引部SCである構成としても構わない。この場合、接続管51aには開閉弁66が設けられており、接続管54には開閉弁67が設けられている。なお、液体保持部63に保持されたインクを吸引する接続管を複数(例、接続管57)設ける構成としても構わない。この場合、接続管57には開閉弁68が設けられる。開閉弁66、開閉弁67及び開閉弁68は、制御部CONTによって開閉が切り替え可能となっている。
【0053】
この構成により、接続管51aによる吸引動作と、接続管54(及び接続管57)による吸引動作とを個別に制御することができる。これにより、当接部61a及び第一壁部61の内面61bのうち少なくとも一方に付着したインクの回収効率を向上させることができると共に、インクの付着状況に応じて最適なインクの回収動作を行うことができる。
【0054】
また、例えば図10に示すように、キャップ部50の第一壁部61において、当該第一壁部61の内面61bに溝部69が設けられた構成としても構わない。溝部69は、例えば第一壁部61の4つの角部に1つずつ設けられている。溝部69は、第一壁部61の内面61b側から外面側へ向けて徐々に先細りとなるように形成されている。図10に示す構成においては、溝部69が4つ設けられた構成であるが、3つ以下、あるいは5つ以上設けられた構成であっても構わない。また、溝部69の位置は角部に限られず、第一壁部61の内面61bであれば、他のどの位置に設けられていても構わない。
【0055】
このような構成により、ノズル形成面Haを伝わって当接部61aに到達したインクEを当該溝部69において保持することができるので、ノズル形成面Haに接触している当接部61aがノズル形成面Haから離れる場合において、第一壁部61に付着したインクの飛散を低減することができる。
【0056】
なお、上記説明した各構成については、単独で用いても構わないし、複数の構成を適宜組み合わせて用いても構わない。
【符号の説明】
【0057】
PRT…印刷装置 CONT…制御装置 H…ヘッド Ha…ノズル形成面 CP…キャッピング部 SC…吸引ポンプ NZ…ノズル SC2…第二吸引ポンプ 50…キャップ部材 51…吸引部 52…インク吸収材 53…開口部 54…接続管 55…底部 56…壁部 57…接続管 61…第一壁部 61a…当接部 61b…内面 62…第二壁部 63…インク保持部 64…液体吸収部 64a…刷毛部 64b…刷毛保持部 65…支持部 66…開閉弁 67…開閉弁 68…開閉弁 69…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部と
を備え、
前記キャップ部は、
環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、
前記第一壁部の内側に前記第一壁部の内面に平行に環状に設けられた第二壁部と、
前記第一壁部と前記第二壁部との間に溝が形成されるように前記第一壁部及び前記第二壁部を接続し、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を保持する液体保持部と
を有する
液体噴射装置。
【請求項2】
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部と
を備え、
前記キャップ部は、
環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、
前記第一壁部の内側に設けられ、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を吸収する刷毛部を有する液体吸収部と
を有する
液体噴射装置。
【請求項3】
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部と
を備え、
前記キャップ部は、
環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、
前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を吸収する刷毛部を有する液体吸収部と、
前記第一壁部の内側に環状に設けられ、前記液体吸収部を支持する支持部と
を有する
液体噴射装置。
【請求項4】
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部と
を備え、
前記キャップ部は、
環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、
前記第一壁部の内側に前記第一壁部の内面に平行に環状に設けられ、前記第一壁部が前記ノズル形成面に当接した状態で前記ノズル形成面に接触しないように設けられた第二壁部と、
前記第一壁部と前記第二壁部との間に溝が形成されるように前記第一壁部及び前記第二壁部を接続し、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を保持する液体保持部と
を有し、
前記キャップ部が前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆った状態で前記第一壁部によって囲われる前記所定部分を吸引する第一吸引部と、
前記液体保持部に保持された前記液体を吸引する第二吸引部と
を更に備える
液体噴射装置。
【請求項5】
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部と
を備え、
前記キャップ部は、
環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、
前記第一壁部の内側に前記第一壁部の内面に平行に環状に設けられた第二壁部と、
前記第一壁部と前記第二壁部との間に溝が形成されるように前記第一壁部及び前記第二壁部を接続し、前記当接部及び前記第一壁部の内面のうち少なくとも一部に付着した前記液体を保持する液体保持部と
を有し、
前記キャップ部が前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆った状態で前記第一壁部によって囲われる前記所定部分を吸引する第一吸引部と、
前記液体保持部に保持された前記液体を吸引する第二吸引部と、
前記第一吸引部及び前記第二吸引部の動作を切り替える切り替え部と
を更に備える
液体噴射装置。
【請求項6】
液体を噴射するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記ノズル形成面の少なくとも一部を覆うキャップ部と
を備え、
前記キャップ部は、
環状に形成され、前記ノズル形成面に当接される当接部を有し、前記ノズル形成面の所定部分を囲う第一壁部と、
前記第一壁部の内面に設けられた溝部と、
を有し、
前記溝部は、前記第一壁部の内面側から外面側へ向けて徐々に先細りとなるように形成されている
液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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