説明

液体改質器及び液体改質装置

【課題】簡便な液体改質装置を提供する。
【解決手段】板材15と、板材15に対面するように配置される板材16と、板材15の一方の端部と板材16の一方の端部とが固着される板材取り付け部材と、液体改質容器覆部10aと、液体改質容器覆部10aと液体改質容器底部10bと液体改質容器側部10cとを有してなる液体改質容器10と、板材15の他方の端部と板材16の他方の端部とに対して液体を噴出する開口部11b、11c、を有する給水管11と、液体改質容器10に保持された液体を排水する排水管12と、を備え、板材15の固有共振周波数と板材16の固有共振周波数の比が1.5から3の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体改質器及び液体改質装置に関し、特に放射性物質を含む水、一般細菌、過マンガン酸カリウムを含む水、ポリ塩化ビフェニルを含む液体の改質をするに好適なる液体改質器及び液体改質装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球上の水の汚染は益々進行する傾向にある。一方、都市化が進むにつれて、都市の近郊において飲料又は洗浄等のための質の良い水を十分に確保するのが困難になってきている。都市では、ダム等の設備に集められた水を多くの工程を経て浄化、殺菌処理することによって得られる水道水が飲料又は洗浄などに使うための水として利用されている。このような水道水の水質を改善する様々な浄水器、広くは、液体改質装置が開発されている。多くの液体改質装置は構造が複雑であり、装置の製造には面倒な製造工程を必要とした。また、液体改質装置のフィルターを屡々取り替え、あるいは比較的短期間ごとに定期的に液体改質装置の内部を掃除しなければならないという問題があった。このような問題点を改善するために一般細菌に対しては、簡単な構造を有する水改質装置が提供されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
2011年3月11日に発生した原子力発電所の災害により、自然界に放射性物質が放出され、これらの放射性物質が水道水、天然の飲料水、プールの水に混入する事態が生じている。水から放射性物質を取り除き飲料水に適した水、プールに用いるに適した水を得るための液体改質装置は極めて高価であり、一般家庭、プールの施設で採用するには経済的負担が大き過ぎるものである。
【0004】
また、プールにおいては、放射性物質以外についても、過マンガン酸カリウム、大腸菌、一般細菌が含まれる水を濾過器で濾過して循環することが求められるが、このような濾過器もまた大型であり高価であった。また、ケーブル(電線)の絶縁油、トランスの絶縁油としてポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl: PCB)が従来から広く用いられてきた。これらのケーブル、トランスのPCBの濃度が所定値以上である場合には、一般産業廃棄物として廃棄することが法によって規制されている。しかしながら、ケーブル、トランスに含まれる液体からポリ塩化ビフェニルを分離する作業は困難を極め、ケーブル、トランスおよびこれらに用いられる絶縁油の廃棄は容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−100205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、このような点に鑑み、放射性物質、一般細菌、過マンガン酸カリウムを取り除き飲料水に適した水、プールに用いるに適した水を得るための簡便な液体改質装置を提供するとともに、絶縁油に含まれるポリ塩化ビフェニルの濃度を下げる簡便な液体改質器及び液体改質装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体改質器は、第1の板材と、前記第1の板材に対面するように配置される第2の板材と、前記第1の板材の一方の端部と前記第2の板材の一方の端部とが固着される板材取り付け部材と、前記板材取り付け部材と液体改質容器底部と液体改質容器側部とを有してなる液体改質容器と、前記第1の板材の他方の端部と前記第2の板材の他方の端部とに対して液体を噴出する開口部を有し、前記液体改質容器に液体を供給する給水管と、前記液体改質容器に保持された液体を前記液体改質容器から排水する排水管と、を備え、前記第1の板材の固有共振周波数と前記第2の板材の固有共振周波数の比が1.5から3の範囲であることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体改質装置は、第1の板材と、前記第1の板材に対面するように配置される第2の板材と、前記第1の板材の一方の端部と前記第2の板材の一方の端部とが固着される板材取り付け部材と、前記板材取り付け部材と液体改質容器底部と液体改質容器側部とを有してなる液体改質容器と、前記第1の板材の他方の端部と前記第2の板材の他方の端部とに対して液体を噴出する開口部を有し、前記液体改質容器に液体を供給する給水管と、前記液体改質容器に保持された液体を前記液体改質容器から排水する排水管と、を具備し、前記第1の板材の固有共振周波数と前記第2の板材の固有共振周波数の比が1.5から3の範囲であることを特徴とする液体改質器と、前記給水管と前記排水管との間で液体を循環させるポンプと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体改質器、液体改質装置によれば、放射性物質、一般細菌、過マンガン酸カリウム、ポリ塩化ビフェニルを取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の液体改質装置の主要部である液体改質器を示す図である。
【図2】実施形態の液体改質器における給水管と板材と板材との三者の配置関係を模式的に示す斜視図である。
【図3】実施形態の液体改質装置を示す図である。
【図4】別の実施形態の液体改質装置を示す図である。
【図5】実施形態の液体改質器の変形例の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の液体改質器は、第1の板材と、第1の板材に対面するように配置される第2の板材と、を備える。また、第1の板材の一方の端部と第2の板材の一方の端部とが固着される板材取り付け部材を備える。また、板材取り付け部材と液体改質容器底部と液体改質容器側部とを有してなる液体改質容器を有する。また、第1の板材の他方の端部と第2の板材の他方の端部とに対して液体を噴出する開口部を有し、液体改質容器に液体を供給する給水管を備える。また、液体改質容器に保持された液体を液体改質容器から排水する排水管を備える。そして、第1の板材の固有共振周波数と第2の板材の固有共振周波数の比が1.5から3の範囲であることを特徴とする。
【0012】
実施形態の液体改質装置は、液体改質装置とポンプとを備える。液体改質装置は、第1の板材と、第1の板材に対面するように配置される第2の板材と、を備える。また、第1の板材の一方の端部と第2の板材の一方の端部とが固着される板材取り付け部材を備える。また、板材取り付け部材と液体改質容器底部と液体改質容器側部とを有してなる液体改質容器を有する。また、第1の板材の他方の端部と第2の板材の他方の端部とに対して液体を噴出する開口部を有し、液体改質容器に液体を供給する給水管を備える。また、液体改質容器に保持された液体を液体改質容器から排水する排水管を備える。そして、第1の板材の固有共振周波数と第2の板材の固有共振周波数の比が1.5から3の範囲であることを特徴とする。また、ポンプは、給水管と排水管との間で液体を循環させる。
【0013】
「液体改質器について」
図1、図2を参照して実施形態の液体改質装置について説明をする。図1は実施形態の液体改質装置の主要部である液体改質器1を示す図である。図1(A)は液体改質器1を上方から見た平面図である。図1(B)は液体改質器1を正面から見た正面図である。図1(C)は液体改質器1を右側面から見た右側面図である。
【0014】
図1(A)ないし図1(C)を参照して液体改質器1の各部の構造を説明する。液体改質器1は、液体改質容器10と第1の板材15と第2の板材16と給水管11と排水管12とを備えている。液体改質容器10は例えばプラスチック材で形成されている。液体改質容器10の材質としては液体によって腐食しない材料であれば良く陶磁器であっても良い。
【0015】
液体改質容器10はその内部に溜められた液体が漏れない構造とされている。液体改質容器10は、液体改質容器覆部10aと液体改質容器底部10bと液体改質容器側部10cとによって形成されている。液体改質容器底部10bと液体改質容器側部10cとは一体形成され、液体改質容器側部10cはテーパを有する円筒とされ、液体改質容器底部10bは円板形状とされている。液体改質容器覆部10aは別部材によって形成され、液体改質容器覆部10aの形状は円板形状とされている。液体改質容器覆部10aは、板材15の一方の端と板材16の一方の端とが固着される板材取り付け部材として機能する。
【0016】
着脱可能とされる液体改質容器覆部10aによって液体改質容器10の上面部分は覆われている。液体改質容器10は、要するに液体を内部に貯蔵可能として、後述する給水管11、後述する排水管12、後述する第1の板材15、後述する第2の板材16を保持可能とする構造であれば良い。
【0017】
液体改質容器10の大きさは、例えば、実施形態では以下のように設定されている。液体改質容器覆部10aと液体改質容器底部10bとの間の距離は35cm(センチ・メートル)、液体改質容器覆部10aの直径は25cm、液体改質容器底部10bの直径は15cmとされている。
【0018】
給水管11、排水管12と液体改質容器10との配置関係について説明をする。給水管11は液体改質容器10の液体改質容器側部10cを貫通し、この貫通部分には防水処理がされ、貫通部分からの液体の漏れがないようにされている。同様に、排水管12は液体改質容器10の液体改質容器側部10cを貫通し、この貫通部分には防水処理がされ、貫通部分からの液体の漏れがないようにされている。
【0019】
給水管11は液体を液体改質容器10の内部に導き、排水管12は液体を液体改質容器10の外部に導くものである。給水管11と排水管12とは液体によって浸食されない材料とされており、例えば、塩化ビニールまたはステンレスで形成されている。給水管11と排水管12とは直径22mm(ミリ・メートル)の円筒チューブとされている。
【0020】
上述したようにして給水管11の第1の開口部11a(以下、開口部11aと省略する)から液体が流入し、給水管11の第2の開口部11b(以下、開口部11bと省略する)、給水管11の第3の開口部11c(以下、開口部11cと省略する)から液体が噴出するようになされている。給水管11の他の端は閉部11dとされ液体が流出しないようにされている。
【0021】
上述したようにして液体改質容器10の排水管12の第1の開口部12a(以下、開口部12aと省略する)から液体が流入し、排水管12の第2の開口部12b(以下、開口部12bと省略する)から液体が流出するようになされている。図1(B)中の矢印は液体の移動方向を示す。ここで、排水管12の開口部12aと液体改質容器10に溜められる液体の液面位置との関係については、液体の液面位置が液体改質容器10の開口部12aのより上となるようにされ、液体が排水管12の開口部12aから流入して開口部12bから流出することができるようになされている。
【0022】
第1の板材15(以下、板材15と省略する)と第2の板材16(以下、板材16と省略する)とは、液体改質容器10内の液体によって腐食しない材料であるステンレスまたはチタンによって形成される。板材15の長手方向(紙面の上下方向)の長さと、板材16の長手方向の長さとは略同一の長さとされている。板材15の短手方向、板材16の短手方向は円弧の一部とされている。板材15の長手方向、板材16の長手方向は、給水管11の上下方向に延びる部分の方向と略同一方向に配置されている。板材15の一方の端面はL字状に曲げられて、曲げられた部分はビスで液体改質容器覆部10aに固着されている。また、板材16の一方の端面も同様にL字状に曲げられて、曲げられた部分はビスで液体改質容器覆部10aに固着されている。このようにして、液体改質容器覆部10aは、板材15の一方の端と板材16の一方の端とが固着される板材取り付け部材として機能する。
【0023】
図2は、液体改質器1における給水管11と板材15と板材16との三者の配置関係を模式的に示す斜視図である。板材15と板材16とは給水管11を取り囲むように配置されている。板材15と板材16との間隔は上部では広く、下部ではより狭くされて、テ―パ状に配置されている。板材15と板材16との上部における間隔L1は15cmとされ、板材15と板材16との下部における間隔L2は10cmとされている。板材15の長さL3と板材16の長さL6は各々30cmとされている。板材15の幅L4は1cmとされ、板材16の幅L5は2cmとされている。
【0024】
給水管11の開口部11bは板材16に対向して配置され、給水管11の開口部11cは板材15に対向して配置されている(図2には図示せず、図1を参照)。給水管11の開口部11bから噴出した液体は板材16に衝突するようにされ、給水管11の開口部11cから噴出した液体は板材15に衝突するようにされている。ここで、板材15と板材16とをテ―パ状に配置したのは、開口部11cと板材15との距離、開口部11bと板材16との距離を狭くして開口部11cと開口部11bとから流出する液体の高い水圧が板材15と板材16とに加わるようにするためである。水圧が高い場合には、板材15と板材16とを必ずしもテ―パ状に配置しなくても良い。
【0025】
開口部11cから噴出した高い水圧の液体は、板材15に衝突して板材15を振動させ、開口部11bから噴出した高い水圧の液体は、板材16に衝突して板材16を振動させる。ここで、高い水圧とは、板材15と板材16とを振動させることができるに十分な水圧をいうものである。板材16の幅L5と板材15の幅L4とは異なるので、板材15の振動の固有共振周波数と板材16の振動の固有共振周波数とは異なるものとなる。例えば、幅が1cmの板材15の固有共振周波数は、幅が2cmの板材16の固有共振周波数よりも高くなる。
【0026】
板材16の幅L5と板材15の幅L4とを異ならせる以外に、板材15の振動の固有共振周波数と板材16の振動の固有共振周波数とを異ならせるためには、以下のようにしても良い。板材16の長さL3と板材15の長さL6を異なるようにしても良い。板材16の厚みと板材15の厚みとを異なるようにしても良い。
【0027】
液体改質器1は、後述する実験例1ないし実験例4に示すように、良好なる改質効果を生ずるものの、その動作原理については、発明者は明確な理論を確立している訳ではない。しかしながら発明者は、長年の実験と経験に基づき、板材15の振動の周波数と板材16の振動の周波数とを異なるようにし、板材15の固有共振周波数と板材16の固有共振周波数の比が1.5から3の範囲である場合に良好なる改質効果を生じることを見出した。また、板材15の固有共振周波数と板材16の固有共振周波数の比が略2程度の場合に最も良好な改質効果を生じることを見出した。
【0028】
実施形態の液体改質器1の各部の寸法および形状は、これに限定されるものではなくても同様の作用効果を生じる。例えば、板材15、板材16の形状が平板であっても良く、給水管11と排水管12とは角形状であっても良い。発明者は、このような、寸法、形状の液体改質器1が、実験データを得る上で適切であることから、この液体改質器1によって、後述する実験例1ないし実験例4に示す実験データを収集した。
【0029】
「液体改質装置について」
図3は、実施形態の液体改質装置を示す図である。図3を参照して実施形態の液体改質器1を用いた実施形態の液体改質装置2について説明する。実施形態の液体改質装置2は配管継手21および延長給水管23と配管継手22および延長排水管24とポンプ25を介して液体貯蔵容器30に保持された液体を液体改質器1に導くようになされている。
【0030】
配管継手21は給水管11と延長給水管23とを接続する。配管継手22は排水管12と延長排水管24とを接続する。ポンプ25は液体の吸入口25aと排出口25bとを有している。排出口25bは延長給水管23の開口部23aに連結されている。延長排水管24の開口部24aとポンプ25の吸入口25aは、液体貯蔵容器30の液体の液面より下部の液体内部に配置されている。ポンプ25を動作させることによって、図中の矢印で示すように液体貯蔵容器30の内部の液体は液体改質器1の給水管11を通り、液体改質器1の液体改質容器10の内部を通り、排水管12を通り、再び液体貯蔵容器30に戻るように循環する。
【0031】
液体貯蔵容器30は、人が水泳するためのプールであっても良く、液体を所定量貯蔵するバケッであっても良い。液体改質装置2は、液体を液体改質容器10と液体貯蔵容器30との間で循環させることによって、液体改質容器10の容量を越え、液体貯蔵容器30の容量の液体の改質をすることができる。
【0032】
図4は、別の実施形態の液体改質装置を示す図である。図4を参照して実施形態の液体改質器1を用いた実施形態の液体改質装置3について説明する。図4に示す液体改質装置3と図3に示す液体改質装置2とが異なる点は、液体改質装置3においては液体貯蔵容器30を備えないことである。液体改質装置3は、液体を液体改質容器10の内部で循環することによって、液体改質容器10の容量に等しい量の液体の改質をすることができる。
【0033】
「実験例1」
表1は液体改質装置3を用いて放射性物質を含む水の改質を行った結果を示す表である。対象試料は福島県飯館村の沼の水である。採取日時は2011年4月28日である。測定方法はγ線スペクトロメトリーである。検査会社は日立協和エンジニアリング株式会社 分析・試験技術部 化学管理課である。検査結果は、日立協和エンジニアリング株式会社が発行した、2011年5月10日付の放射能測定結果報告書(報告No.R86D15012)と、2011年5月11日付の放射能測定結果報告書(報告No.R86D15042)とに報告されている。放射能測定結果報告書(報告No.R86D15012)は液体改質装置3によって改質する前のデータを記載し、放射能測定結果報告書(報告No.R86D15042)は液体改質装置3によって改質した後のデータを記載する。
【0034】
表1は報告No.R86D15012、報告No.R86D15042からの引用を示す。表中の放射能濃度は、試料採取日時に半減期補正をした値を示すものである。検出下限値:≦10Bq/Kg(ベクレル/キログラム)である。表中の処理前の欄は、報告No.R86D15012の記載に基づくものであり、表中の処理1日後の欄は、報告No.R86D15042の記載に基づくものである。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示す対象試料としては福島県飯館村の沼の水(以下、沼の水と省略する)を用いた。検査した核種は、I131(放射性ヨウ素131)とCs-134(放射性セシウム134)とCs-136(放射性セシウム136)とCs-137(放射性セシウム137)である。
【0037】
処理前のI131の放射線濃度は検出可能限界以下で検出されなかった。液体改質装置2を用いて、沼の水を1日循環させた後のI131の放射線濃度は、処理前と同様に検出可能限界以下で検出されなかった。
【0038】
処理前のCs-134の放射線濃度は23 Bq/Kgであった。液体改質装置2を用いて、沼の水を1日循環させた後のCs-134の放射線濃度は、検出可能限界以下で検出されなかった。改質率は100%である。ここで、改質率は、{1−(処理後放射線濃度/処理前放射線濃度)}×100(%)で表わされる。検出可能限界以下の場合は、0 Bq/Kgとして改質率の計算をおこなった。
【0039】
処理前のCs-136の放射線濃度は検出可能限界以下で検出されなかった。液体改質装置3を用いて、沼の水を1日循環させた後のCs-136の放射線濃度は、処理前と同様に検出可能限界以下で検出されなかった。
【0040】
処理前のCs-137の放射線濃度は25 Bq/Kgであった。液体改質装置3を用いて、沼の水を1日循環させた後のCs-137の放射線濃度は、検出可能限界以下で検出されなかった。改質率は100%である。
【0041】
「実験例2」
表2は液体改質装置を用いて放射性物質を含む土壌の改質を行った結果を示す表である。対象試料は福島第一原子力発電所から約20Km(キロメートル)離れた距離の田の土である。試料の採取日時は2011年4月6日である。測定方法はγ線スペクトロメトリーである。検査会社は日立協和エンジニアリング株式会社 分析・試験技術部 化学管理課である。処理前の土壌の放射線濃度は、2011年4月9日付けの核種放射性元素測定結果報告書(報告No.R86D14096)に記載されている。土壌の改質をおこなった後の結果は、2011年5月11日付の放射能測定結果報告書(報告No.R86D15042)に報告されている。
【0042】
表2の処理前の放射線濃度は、報告No.R86D14096からの引用を示す。表中の放射能濃度は、試料測定時点の値を示すものである。検出下限値:≦10Bq/Kg(ベクレル/キログラム)である。処理1ケ月後の放射線濃度は報告No.R86D15042からの引用を示す。検査した核種は、I131とCs-134とCs-136とCs-137である。
【0043】
【表2】

【0044】
ここで、土壌の改質をどのようにしておこなったかを以下に記載する。水道水を液体改質器1によって改質する。具体的には、給水管11を介して水道水を引き込み排水管12からの改質後の水道水10L(リットル)を容器(バケッ)で受けた。次に、平たい容器に平らに積んだ試料の土壌2Lに、このバケッの中の改質された10Lの水道水を散布した。そして1月後に試料の土壌の放射濃度を測定し、改質された10Lの水道水を散布する前(処理前)の試料の土壌の放射濃度と比較をした。
【0045】
処理前のI131の放射線濃度は17000 Bq/Kgであった。処理1ケ月後のI131の放射線濃度は51 Bq/Kgであった。改質率は99.7%である。
【0046】
処理前のCs-134の放射線濃度は2260 Bq/Kgであった。処理1ケ月後のCs-134の放射線濃度は86 Bq/Kgであった。改質率は96.19%である。
【0047】
処理前のCs-136の放射線濃度は159 Bq/Kgであった。処理1ケ月後のCs-136の放射線濃度は検出可能限界以下で検出されなかった。改質率は100%である。
【0048】
処理前のCs-137の放射線濃度は1420 Bq/Kgであった。処理1ケ月後のCs-137の放射線濃度は85 Bq/Kgであった。改質率は94.01%である。
【0049】
この実験結果に対して、発明者はどのような理論的な背景があるのか考察をしたが、明確なる理論を得ることができてはいない。現在のところ、液体改質器1によって改質された液体そのものが放射線を除去する作用があるとの認識をしている。
【0050】
「実験例3」
表3は液体改質装置2を用いてプールの水の改質を行った結果を示す表である。液体改質装置3の稼働期間は2010年7月23日から2010年8月5日である。プールは標準の25m(メートル)プールであり、プールは液体貯蔵容器30(図3を参照)に対応する。
【0051】
【表3】

【0052】
検査した項目は、水素イオン指数(単位はPH(ペーハー))、結合残留塩素(単位はmg/L(ミリグラム/リットル))、過マンガン酸カリウム消費量(単位はmg/L(ミリグラム/リットル))、濁度、一般細菌(単位はCFU/mL(Colony Forming Unit(集落形成単位/ミリリットル)))である。
【0053】
処理前の水素イオン指数は7.5(PH)であり、液体改質装置2を用いて1週間後の水素イオン指数は7.5(PH)であり、液体改質装置2を用いて2週間後の水素イオン指数は7.5(PH)である。処理前、1週間後、2週間後の水素イオン指数に変化はほとんどない。
【0054】
処理前の結合残留塩素は1.4(mg/L)であり、液体改質装置2を用いて1週間後の結合残留塩素は2.2(mg/L)であり、液体改質装置2を用いて2週間後の結合残留塩素は1.8(mg/L)である。結合残留塩素が1週間後、2週間後に増加した理由は配管設備内部やプール壁面に膜状に付着した塩素が剥がれおちたことによると推認される。
【0055】
処理前の過マンガン酸カリウム消費量は6.8(mg/L)であり、液体改質装置2を用いて1週間後の過マンガン酸カリウム消費量は6.7(mg/L)であり、液体改質装置2を用いて2週間後の過マンガン酸カリウム消費量は5.9(mg/L)である。
【0056】
処理前の濁度は0.5未満であり、液体改質装置2を用いて1週間後の濁度は0.5未満であり、液体改質装置2を用いて2週間後の濁度は0.5未満である。
【0057】
処理前の大腸菌、液体改質装置2を用いて1週間後の大腸菌、液体改質装置2を用いて2週間後の大腸菌はいずれも検出されなかった。
【0058】
処理前の一般細菌は26(CFU/mL)であり、液体改質装置2を用いて1週間後の一般細菌は1(CFU/mL)であり、液体改質装置2を用いて2週間後の一般細菌は0(CFU/mL)である。
【0059】
「実験例4」
表4は液体改質装置3を用いてトランスの絶縁油の改質を行った結果を示す表である。検査会社は東京テクニカルサービス株式会社である。東京テクニカルサービス株式会社の計量番号はW-20110546である。
【0060】
【表4】

【0061】
処理前(平成23年1月12日)のトランスの絶縁油中のPCB量は1.0(mg/kg)(ミリグラム/キログラム)であり、液体改質装置3を用いて処理後(平成23年1月20日)のトランスの絶縁油中のPCB量は0.3(mg/kg)である。
【0062】
表4に示すように、液体改質装置3を用いて処理後のトランスの絶縁油中のPCB量は0.3(mg/kg)にまで低減させることができ、基準値である0.5(mg/kg)を下回るので廃棄が可能となる。
【0063】
図5は、実施形態の液体改質器の変形例の一例を示す図である。図2に示す液体改質器の部分の図において、板材15と板材16との間に2V〜10Vの交流電圧を印加すれば、板材15と板材16に不純物が付着することを低減し、より改質効果が上昇する。
【0064】
上述した実施形態の液体改質器を用いる実施形態の液質改質装置によれば、放射性物質、一般細菌、過マンガン酸カリウムを取り除くことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 液体改質器、 2、3 液体改質装置、 10 液体改質容器、 10a 液体改質容器覆部、 10b 液体改質容器底部、 10c 液体改質容器側部、 11 給水管、 11a、11b、11c、12a、12b、23a、24a 開口部、 12 排水管、 15、16 板材、 21、22 配管継手、 23 延長給水管、 24 延長排水管、 25 ポンプ、 25a 吸入口、 25b 排出口、 30 液体貯蔵容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板材と、
前記第1の板材に対面するように配置される第2の板材と、
前記第1の板材の一方の端部と前記第2の板材の一方の端部とが固着される板材取り付け部材と、
前記板材取り付け部材と液体改質容器底部と液体改質容器側部とを有してなる液体改質容器と、
前記第1の板材の他方の端部と前記第2の板材の他方の端部とに対して液体を噴出する開口部を有し、前記液体改質容器に液体を供給する給水管と、
前記液体改質容器に保持された液体を前記液体改質容器から排水する排水管と、を備え、
前記第1の板材の固有共振周波数と前記第2の板材の固有共振周波数の比が1.5から3の範囲であることを特徴とする、
液体改質器。
【請求項2】
前記板材取り付け部材に固着される前記第1の板材の一方の端部と前記第2の板材の一方の端部との離間距離が、
前記第1の板材の他方の端部と前記第2の板材の他方の端部との離間距離よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の液体改質器。
【請求項3】
前記第1の板材と前記第2の板材との間に交流の電圧を印加するための交流電圧原を有する、請求項1に記載の液体改質器。
【請求項4】
第1の板材と、
前記第1の板材に対面するように配置される第2の板材と、
前記第1の板材の一方の端部と前記第2の板材の一方の端部とが固着される板材取り付け部材と、
前記板材取り付け部材と液体改質容器底部と液体改質容器側部とを有してなる液体改質容器と、
前記第1の板材の他方の端部と前記第2の板材の他方の端部とに対して液体を噴出する開口部を有し、前記液体改質容器に液体を供給する給水管と、
前記液体改質容器に保持された液体を前記液体改質容器から排水する排水管と、を具備し、
前記第1の板材の固有共振周波数と前記第2の板材の固有共振周波数の比が1.5から3の範囲であることを特徴とする液体改質器と、
前記給水管と前記排水管との間で液体を循環させるポンプと、を備える、
液体改質装置。
【請求項5】
前記ポンプの吸入口に前記排水管が接続され、前記ポンプの排出口に前記給水管が接続される、請求項2に記載の液体改質装置。
【請求項6】
さらに、
前記ポンプが液面化に配置される液体貯蔵容器を備え、
前記排水管からの液体が前記液体貯蔵容器に流入し、
前記液体貯蔵容器の液体が、前記ポンプの吸入口から吸入され、前記ポンプの排出口から前記給水管に排出される、請求項2に記載の液体改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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