説明

液体柔軟剤組成物

(A)1種又は2種以上のシリコーン化合物及び(B)1種又は2種以上のカチオン性を有する水溶性高分子化合物を、(A):(B)(質量比)が99:1〜50:50の割合で含有することを特徴とする液体柔軟剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、衣料などの繊維製品に使用する液体柔軟剤に関する。特に、本発明は、綿などの天然繊維だけでなく、ポリエステルなどの化学繊維を素材とした各種繊維製品や衣料などに優れた柔軟性、滑らかさ、ドレープ性、速乾性を付与することが可能であり、かつ肌にマイルドな、シリコーンを主体とした液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
従来から、洗濯後のすすぎ時に添加し、繊維製品に柔軟性を付与することを目的として、様々な4級アンモニウム塩を主成分として含む柔軟剤が用いられている。4級アンモニウム塩としては、ジ長鎖型の4級アンモニウム塩が一般に使用されている。しかしながら、ジ長鎖型の4級アンモニウム塩を主成分とする柔軟剤は、綿製品に対しては良好な柔軟性付与効果が得られるものの、ぬめり感が生じたり、条件によってはポリエステルなどの化学繊維製品への柔軟効果が小さく、また、各種繊維製品への滑らかさやドレープ性を付与する効果も小さい。
また、ジ長鎖型カチオン性界面活性剤を用いた柔軟剤は一般に乳濁系であるが、商品価値を高めるために透明感の高い組成物を得る試みもなされている(特表平8−505906号公報など)。しかしながら、ジ長鎖型カチオン性界面活性剤は、水に難溶性であるので、透明な組成物を得るためには、多量の有機溶媒を共存させなければならない。このため、不快な有機溶媒臭があり、また、柔軟性付与効果のない有機溶媒を多量に配合することは不経済である。
一方、シリコーン系化合物は繊維製品、特に化学繊維に対し特有の柔軟性、しなやかさ、滑らかさを付与することが知られている。しかし、シリコーンは水浴中での仕上処理では繊維への吸着性に乏しく、充分な効果を得るためには、高濃度浴中から処理しなければならない。このような欠点を改善すべく、本発明者らは、先に特開2000−154476号公報に記載のように、シリコーンを水浴中から効率的に繊維へ吸着させる手段として、少量のカチオン界面活性剤との組合せを用いた、オシャレ着用の仕上げ剤組成物を提案した。しかしながら、この仕上げ剤組成物は、オシャレ着用のノニオン系洗剤の後に使用すると優れた性能を発揮するが、通常の洗濯に使用されるアニオン系の洗剤の後に用いると、すすぎ浴中に残留するアニオン活性剤の影響を受けやすく、性能が低下するという問題があった。
また、特開平10−183472号公報には、従来から衣類にハリを付与することを目的として使用されている水溶性高分子化合物を主体とした、水不溶性・非硬化シリコーンなどを含む衣料用仕上げ剤組成物が開示されている。さらに、特開2000−129577及び特開2000−129578号公報には、従来から衣類にハリを付与することを目的として使用されている水溶性高分子化合物を主体とし、シリコーン化合物及び非イオン性界面活性剤を含む繊維製品用処理剤組成物が開示されている。しかしながら、これらの組成物を用いて繊維製品を処理すると、剛性値を高めることになり、柔軟性を求める柔軟剤としては好ましくない。
さらに、特開2000−239970号公報では、従来から衣類にハリを付与することを目的として使用されている水溶性高分子化合物を主体とし、アミノ変性シリコーンを含む繊維製品処理剤が提案されている。しかし、この組成物を用いて繊維製品を処理すると、剛性値を高めるため柔軟剤として好ましくないだけでなく、保管条件などによっては、アミノ変性シリコーンにより繊維製品が黄変することがあった。
【発明の開示】
本発明は、優れた柔軟性、滑らかさ、ドレープ性、速乾性を付与することが可能な上、肌にマイルドであって、保存安定性が良好であり、さらに商品の見た目の付加価値を向上する手段として、透明感の高い液外観を有し、吸水性良好な水ベースの液体柔軟剤組成物を提供することを目的とする。また、この液体柔軟剤組成物がオシャレ着用などのノニオン系洗剤だけでなく、汎用のアニオン系洗剤で洗浄後のすすぎ浴中の仕上げ処理にも用いることができ、綿などの天然繊維だけでなくポリエステルなどの化学繊維を素材とした衣料などの各種繊維製品に用いることができることを目的とする。
本発明者は、シリコーン化合物とカチオン性を有する高分子化合物とを特定の割合で併用することにより、肌にマイルドでありながら、優れた柔軟性、滑らかさ、ドレープ性、速乾性を付与することができ、さらにノニオン性界面活性剤と水溶性溶剤を併用することにより、保存安定性が良好となり、さらにシリコーン化合物としてポリエーテル基を有するシリコーンを用いることにより、吸水性良好で透明感の高い液外観を有する液体柔軟剤が得られ、これらにより上記課題を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1](A)1種又は2種以上のシリコーン化合物及び(B)1種又は2種以上のカチオン性を有する水溶性高分子化合物を、(A):(B)(質量比)が99:1〜50:50となる割合で含有することを特徴とする液体柔軟剤組成物、
[2]さらに、(C)ノニオン性界面活性剤と(D)低級アルコール、グリコールエーテル系溶剤、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性溶剤とを含有することを特徴とする[1]記載の液体柔軟剤組成物、
[3](A)成分がポリエーテル基を有するシリコーン化合物であって、組成物が透明であることを特徴とする[1]又は[2]記載の液体柔軟剤組成物、
[4](B)成分がジメチルジアリルアンモニウム塩の重合体であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物、
[5]肌マイルド用であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の(A)成分は、シリコーン化合物である。このシリコーン化合物は、繊維製品に吸着した時に、柔軟性、滑らかさ、ドレープ性を付与することが可能であれば特に限定されない。一般的に繊維処理に使用されているシリコーン化合物としては、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
このシリコーン化合物の分子構造は、直鎖状であっても分岐や架橋していてもよい。また、変性シリコーン化合物は1種類の有機官能基により変性されていても構わないし、2種以上の有機官能基により変性されていてもよい。
シリコーン化合物はオイルとして使用でき、また任意の乳化剤によって分散された乳化物としても使用できる。特に、柔軟処理した繊維製品の黄変を防止するという点では、アミノ基を含有しないシリコーン化合物であることが好ましい。さらに、後述する(B)成分による(A)成分のシリコーン化合物を繊維へ吸着させる効果を高め、柔軟性、滑らかさ、ドレープ性を高める点から、(A)成分のシリコーン化合物は、非イオン性であることが好ましく、より好ましい例としては、ジメチルシリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。
このなかでも特に好ましいシリコーン化合物として、柔軟性、吸水性付与及び液体柔軟剤組成物を透明にし、商品価値を高めることができるなどの観点から、ポリエーテル変性シリコーンを挙げることができる。本シリコーンは、ポリエーテル基を有しないジメチルシリコーンに比べ、キシミ感が少なく良好な柔軟性を有するとともに、綿などの天然繊維に対してもポリエステルなどの化繊に対しても良好な吸水性を有し、さらに透明な液体柔軟剤組成物を得るのに好適である。好ましいポリエーテル変性シリコーンとしては、アルキル(炭素数1〜3)シロキサンとポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜5が好ましい)の共重合体が挙げられる。このうち、ジメチルシロキサンとポリオキシアルキレンの共重合体が好ましい。なお、ポリオキシアルキレンとは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのランダム又はブロック重合体を示す。このようなものとして、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。

(式中、M、N、a及びbは平均重合度であり、Rは水素又はアルキル基を表す。)
ここで、Mは10〜10000、Nは1〜1000、かつM>Nであることが好ましく、Mは10〜1000、Nは1〜50、かつM>Nであることがさらに好ましい。aは2〜100、bは0〜50が好ましい。Rとしては水素又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
また、マイルド性の観点からは、M+Nは上記範囲内で大きいほうが好ましい。また、製造時にやむを得ず混入する未反応物などの低分子量化合物は可能な限りストリッピングなどの精製工程などにより除去されることが好ましい。
上記一般式(I)で表される化合物は、一般に、Si−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンと、例えばポリオキシアルキレンアリルエーテルなどの、炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを付加反応させることにより製造することができる。
メチルハイドロジェンポリシロキサンは、次のような常法により製造することができる。具体的な製造方法としては、まず、金属ケイ素と塩化メチルとを銅触媒存在下で加熱する直接法により、メチルクロロシラン類を得る。次に、このメチルクロロシラン類から分留したジメチルジクロロシラン(沸点70.2℃)、トリメチルクロロシラン(沸点57.3℃)、メチルハイドロジェンジクロロシラン(沸点40.4℃)を、所定の比率で混合し、多量の水を加えて加水分解させることにより、環状及び直鎖状のジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサン共重合体の混合物を得る。さらに、得られた環状及び直鎖状のジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサン共重合体の混合物は、蒸留で低重合度の環状体(四量体、五量体)を分離して、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重合に用いる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、低重合度の環状体を、アルカリ又は強酸を触媒として加熱し、シロキサン結合の開裂と再結合を含む重合反応により得ることができる。アルカリ触媒による環状体の重合は、アルカリ金属水酸化物を触媒とし、150℃程度の高温でおこなわれるが、水酸化リチウムと水酸化ナトリウムはこの温度でも低重合度の環状体に溶解せず、環状体を重合させることができないため、好ましくない。また、酸触媒による環状体の重合は、硫酸、塩酸、リン酸、活性白土、塩化鉄、ホウ酸、トリフルオロ酢酸などを触媒とし、常温又は加温しておこなうことができる。但し、ジメチルポリシロキサンの場合には酸・塩基のどちらでも重合できるが、Si−H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの場合に塩基性触媒を使用すると、重合中にSi−H基が分解してゲル化するため、好ましくない。このようなメチルハイドロジェンポリシロキサンの重合は、触媒を中和することによって停止させ、その後副生した環状体はストリッピングにて除去し、目的のメチルハイドロジェンポリシロキサンの製造は完了する。
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンオイルの具体的な例としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3772M、SH3775M、SH3748、SH3749、SF8410、SH8700、BY22−008、SF8421、信越化学工業(株)製のKF352A、KF6008、KF615A、KF6016、KF6017、GE東芝シリコーン(株)製のTSF4450、TSF4452、日本ユニカー(株)製のSILWET L−7001、SILWET L−7002、SILWET L−7602、SILWETL−7604、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2120、SILWET FZ−2161、SILWET FZ−2162、SILWET FZ−2164、SILWETFZ−2171、ABN SILWET FZ−F1−009−01、ABN SILWET FZ−F1−009−02、ABN SILWET FZ−F1−009−03、ABN SILWET FZ−F1−009−05、ABN SILWET FZ−F1−009−09、ABN SILWET FZ−F1−009−11、ABN SILWET FZ−F1−009−13、ABN SILWET FZ−F1−009−54、ABN SILWET FZ−2222等が挙げられる。これらの中で、柔軟性、滑らかさ、ドレープ性、マイルド性、速乾性の点から、SH3775M、BY22−008、KF6017、SILWET FZ−2171、ABN SILWET FZ−F1−009−54、ABN SILWET FZ−2222等のシリコーンが好ましい。これらを1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明で用いる(A)成分のシリコーン化合物の配合量は特に限定されないが、柔軟性、滑らかさ、ドレープ性、マイルド性、速乾性、吸水性及び組成物の粘度の点から、配合量は、組成物中に3〜70質量%、好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは6〜40質量%である。配合量が3質量%未満では、柔軟性、滑らかさ、ドレープ性、マイルド性、速乾性、吸水性等の効果が不充分になる場合があり、70質量%を超えると組成物の粘度が高くなり、使用性が低下する場合がある。
本発明の(B)成分は、(A)成分のシリコーン化合物を繊維へ吸着させる効果を有するものである。カチオン性を有する水溶性高分子化合物としては、水に溶解した時にカチオン性を有するものが使用し得る。カチオン性を有する水溶性高分子化合物としては、アミノ基、アミン基、第4級アンモニウム基から選ばれる1種以上のカチオン性基を有する水溶性高分子化合物が好ましい。なお、本発明において、水溶性高分子化合物とは、25℃の水100gに対し、水溶性高分子化合物1gを加えたときに、その液が濁らず透明であるものをいう。
(B)成分のカチオン性を有する水溶性高分子化合物は、カチオン化度が0.1%以上のものが好ましく、特に2.5%以上が好ましい。カチオン化度が0.1%未満のものでは、共存するシリコーン化合物を繊維へ吸着させる効果が小さくなり、多量の配合が必要となって経済的でない場合がある。また、高分子化合物自身が繊維製品に対し剛性を付与する性質を持っている場合は、多量に配合されると柔軟効果の低下がともなう場合がある。
ここで、カチオン化度とは、高分子化合物がカチオン性モノマーの重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーの共重合体、及びノニオン性重合体の一部をカチオン性基で変性又は置換したもの(カチオン化セルロース等)の場合には下記式(1)により、また、高分子化合物がカチオン性モノマーとアニオン性モノマーの共重合体、及びカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとノニオン性モノマーの共重合体の場合には、下記式(2)により算出される値と定義する。
カチオン化度(%)=X×Y×100 …式(1)
(X:高分子化合物のカチオン性基中のカチオン化された原子(窒素等)の原子量
Y:高分子化合物1g中に含まれるカチオン性基のモル数)
カチオン化度(%)=X×(Y−Z)×100 …式(2)
[X:高分子化合物のカチオン性基中のカチオン化された原子(窒素等)の原子量
Y:高分子化合物1g中に含まれるカチオン性基のモル数
Z:高分子化合物1g中に含まれるアニオン性基のモル数
(Zのアニオン性基とは、高分子化合物鎖中のモノマー単位に含まれるカルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。具体的には、アクリル酸中のカルボン酸等である。ただし、カチオン性基の対イオンは含まない。)]
カチオン化度の算出例として、下記式で表されるMERQUAT280(calgon社製)の場合を示す。
X:14(窒素原子の原子量)
Y:4.95×10−3(カチオン性基の1g中の重量:0.8gとカチオン性基の分子量より算出)
Z:2.78×10−3(アニオン性基の1g中の重量:0.2gとアニオン性基の分子量より算出)
式(2)より、
カチオン化度(%)=
14×(4.95×10−3−2.78×10−3)×100=3.0
である。

塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリル酸との質量比=80:20
よって、上記記載のカチオン化度の算出法によれば、ノニオン性モノマーの重合体やアニオン性モノマーの重合体のカチオン化度は0となる。
(B)成分の水溶性高分子化合物は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーメーションクロマトグラフィ法で測定される重量平均分子量が、1,000〜5,000,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜500,000である。1,000未満だと臭気の点で好ましくない場合があり、5,000,000を超えると組成物の粘性が高くなり、使用性が低下する場合がある。
また、マイルド性の観点からは重量平均分子量は上記範囲内で大きいほうが好ましく、製造時にやむを得ず混入する未反応物等の低分子量化合物はできる限り少ないほうが好ましい。
(B)成分の例としては、MERQUAT100(Calgon社製)、アデカカチオエースPD−50(旭電化工業(株)製)、ダイドールEC−004、ダイドールHEC、ダイドールEC(大同化成工業(株)製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体、MERQUAT550 JL5(Calgon社製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、MERQUAT280(Calgon社製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、レオガードKGP(ライオン(株)製)等のカチオン化セルロース、LUVIQUAT−FC905(BASF社製)等の塩化イミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、LUGALVAN−G15000(BASF社製)等のポリエチレンイミン、ポバールCM318((株)クラレ製)等のカチオン化ポリビニルアルコール、キトサン等のアミノ基を有する天然系の高分子誘導体、ジエチルアミノメタクリレート・エチレンオキシド等が付加された親水基を有するビニルモノマーとの共重合体等が挙げられるが、水に溶解時にカチオン性を有する高分子化合物であればよく、本例に限定されるものではない。
この中で、シリコーンの付与する柔軟性等の風合いを妨げない観点から、(B)成分単独で吸着した時に繊維に付与する剛性の小さいものが好ましい。
特に好ましい高分子化合物としては、下記一般式(II)に示すジメチルジアリルアンモニウム塩を重合して得られるカチオン性高分子化合物が挙げられる。この高分子化合物の構造は、通常、下記一般式(III−1)又は下記一般式(III−2)で表わされる。また、一般式(III−1)の構造単位と一般式(III−2)の構造単位が共に含まれていてもよい。

(式中X−は、塩化物イオン、臭化物イオン等の任意のマイナスイオンを示す。)

(式中、c、dは、各々平均重合度であり、各々6〜30000の範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜6000、さらに好ましくは30〜3000の範囲である。)
このような高分子化合物の例としては、MERQUAT100(Calgon社製)、アデカカチオエースPD−50(旭電化工業(株)製)、ダイドールEC−004、ダイドールHEC、ダイドールEC(大同化成工業(株)製)等が挙げられる。
本発明の(B)成分としては、上記のカチオン性を有する水溶性高分子化合物を1種単独で用いてもよいし、混合物として用いることもできる。
(B)成分の配合量は特に限定されないが、繊維製品に剛性を付与しない範囲で、液体製品の場合は、組成物中に0.1〜30質量%配合され、好ましくは0.5〜10質量%配合される。0.1質量%未満ではシリコーンの吸着促進効果が小さくなるため柔軟性、滑らかさ、ドレープ性等の効果が不充分であり、30質量%を超えると組成物の粘度が高くなり使用性の面で好ましくない。
本発明の液体柔軟剤組成物中において、(A)成分:(B)成分の質量比は、99:1〜50:50の範囲内である。好ましくは95:5〜60:40、さらに好ましくは90:10〜70:30の範囲であり、この範囲内で、ポリエステル、綿等の衣類に対し柔軟性、滑らかさ、ドレープ性等の優れた機能が得られる。(B)成分の割合がこの範囲を超えて多くなる場合は、シリコーン化合物の付与する柔軟性、滑らかさ等の風合いが損なわれ、好ましくない。特に、(B)成分単独で繊維に対し剛性を付与する高分子化合物の場合は、シリコーン化合物の付与する柔軟性、滑らかさを損なわせないため、この範囲内で(B)成分の割合はできる限り少ないほうが好ましい。一方、(B)成分の割合がこの範囲より少ない場合は、シリコーンの繊維への吸着性が低下し、好ましくない。
また、本発明の液体柔軟剤組成物は、実際に繊維製品の柔軟仕上げを行う際の全使用水量に対し、(A)成分の濃度が5ppm〜0.5質量%となるような量で使用するのが好ましく、さらに好ましくは10ppm〜300ppmとなるような量で使用され、(B)成分の濃度は0.5ppm〜100ppmとなるような量で使用するのが好ましく、さらに好ましくは3ppm〜30ppmとなるような量で使用される。
さらに、本発明には、液体柔軟剤組成物の保存安定性を確保するため、上記成分に加えて、(C)成分のノニオン性界面活性剤と(D)成分の低級アルコール、グリコールエーテル系溶剤、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性溶剤を含有することが好ましい。
(C)成分のノニオン性界面活性剤としては、例えば炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を1つ以上有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、特にオキシアルキレン基が平均2〜50モル付加されたものが好ましい。さらに下記一般式(IV)で表されるノニオン性界面活性剤が好ましい。
−T−[(RO)−H] (IV)
(式中、Rは、炭素数10〜18、好ましくは12〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。pは平均付加モル数であり、2〜50、好ましくは5〜30、特に好ましくは5〜20の数を示す。Tは−O−、−N−、−NH−、−N(COH)−、−CON−、−CONH−又はCON(COH)−であり、Tが−O−、−NH−、−N(COH)−、−CONH−、又は−CON(COH)−の場合は、qは1であり、Tが−N−又は−CON−の場合は、qは2である。)
上記一般式(IV)の化合物の具体例として、下記一般式(V)、(VI)で表される化合物を挙げることができる。
−O−(CO)−H (V)
(式中、Rは前記と同じ意味であり、rは平均付加モル数であり、2〜50、好ましくは5〜30の数である。)
−O−(CO)(CO)−H (VI)
(式中、Rは前記と同じ意味であり、s及びtは平均付加モル数であり、sは2〜40、好ましくは5〜30の数であり、tは1〜20、好ましくは1〜10の数である。(CO)と(CO)はランダム又はブロック付加体であってもよい。)
(C)成分の配合量は、組成物中に0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。0.1質量%未満だと保存安定性の向上効果が小さくなる場合があり、20質量%を超えて配合しても、保存安定性の向上効果が一定となるため、20質量%より多く配合することは不経済であり、さらに柔軟処理時の泡立ちの点からも好ましくない場合がある。
(D)成分は低級(炭素数1〜4)アルコール、グリコールエーテル系溶剤、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性溶剤である。具体的には、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、及び下記一般式(VII)で表わされる水溶性溶剤から選ばれる溶媒成分を配合することが好ましい。
−O−(CO)−(CO)−H (VII)
(式中、Rは、炭素数1〜8、好ましくは2〜6のアルキル基又はアルケニル基である。y及びzは平均付加モル数であり、yは2〜50、好ましくは2〜30、zは0〜50、好ましくは0〜20の数を示す。)
中でも好ましい例としては、エタノール、エチレングリコール、ブチルカルビトール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノプロピレングリコールモノブチルエーテル[CO(CO)(CO)H]等が挙げられる。
これらの(D)成分は、組成物中に2〜30質量%、好ましくは5〜20質量%配合される。
本発明の液体柔軟剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の家庭用仕上げ剤に使用されている添加剤等を配合することができる。そのような添加剤として、具体的には、カチオン性界面活性剤、ヘキサン酸とグリセリン又はペンタエリスリトールとの部分エステル化物や、食塩、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等の水溶性塩、流動パラフィン、高級アルコール等の油剤、尿素、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤、染料、顔料、炭化水素、非イオン性セルロース誘導体、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、香料組成物、後述するpH調整剤、消泡剤、コロイダルシリカ等が挙げられる。
本発明の液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、3〜10の範囲であることが好ましく、4〜7の範囲であることがより好ましい。必要に応じて、塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩等のpH調整剤を用いることができる。
本発明の液体柔軟剤組成物は、上記(A)〜(D)成分及び任意成分を含有し、通常、残部は水である。また、本発明の液体柔軟剤組成物は、適度な濃度に希釈して使用される。使用方法は特に限定されないが、衣料を通常の洗濯を行い、すすぎの段階ですすぎ水に本発明の組成物を溶解させて処理を行ったり、また、たらいのような容器を用い本発明の組成物を水に溶解させ、さらに衣料を入れて浸漬処理する方法などが挙げられる。繊維製品の処理はいずれの方法で行ってもよいが、浴比(繊維製品に対する処理液の比率)は3〜100倍、特に5〜50倍であることが好ましい。
本発明の液体柔軟剤組成物は、組成物そのものが肌への刺激性が少ないだけでなく、液体柔軟剤組成物で処理した繊維製品が肌とこすれ合う時の物理的な刺激(摩擦)を低くすることができる。よって、繊維製品による肌への刺激低減方法としても用いることができる。このため、肌マイルド用として用いることが好ましい。特に、敏感肌用、アトピー用、乾燥肌用、赤ちゃん用など、肌の弱い人用として好適に用いることができる。
本発明によれば、シリコーン化合物とカチオン性を有する高分子化合物とを特定の比率で併用したことにより、ポリエステルなどの化学繊維や綿、シルクなどの天然繊維を素材とした各種繊維製品に優れた柔軟性、滑らかさ、ドレープ性、速乾性及び吸収性を付与することができ、かつ肌にマイルドな液体洗浄剤組成物を得ることができる。さらに、ノニオン性界面活性剤及び水溶性溶剤を併用することにより、保存安定性が良好となり、シリコーン化合物としてポリエーテル基を有するシリコーンを用いることで、透明感の高い液外観を有する液体柔軟剤が得られる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記例で特に明記のない組成の%は質量%を示す。
[実施例1〜8、11〜24、27〜42、比較例2〜6]
〔柔軟剤組成物の調製〕
表1〜4に示す成分(A)〜(D)成分を、以下の表5〜8に示す組成に基づき(純分換算、%)、(A)、(C)、(D)成分及び下記記載の共通成分を500mLビーカーにとり、撹拌羽根を用いて充分に撹拌した。次に、撹拌しながらイオン交換水を添加し、さらに撹拌しながら(B)成分を添加し、均一になるまで充分に撹拌して、300gの液体柔軟剤組成物を調製した。得られた液体柔軟剤組成物の柔軟性及び滑らかさ、ドレープ性、マイルド性、速乾性、吸収性、液の外観、保存安定性について評価した。結果を表5〜8に併記する。
[実施例9、10、25、26]
以下の表5,7に示す組成に基づき(純分換算、質量%)、(C)成分、(D)成分及び下記記載の共通成分を500mLビーカーにとり、撹拌羽根を用いて充分に撹拌した。次に、撹拌しながらイオン交換水を添加し、さらに撹拌しながら(A)、(B)成分を添加し、均一になるまで充分に撹拌して、300gの液体柔軟剤組成物を調製した。得られた液体柔軟剤組成物の柔軟性及び滑らかさ、ドレープ性、マイルド性、速乾性、吸収性、液の外観、保存安定性について評価した。結果を表5,7に併記する。
[比較例1]
以下の表6に示す組成に基づき、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド及び(D)成分を500mLビーカーにとり、撹拌羽根を用いて充分に撹拌後、撹拌しながらイオン交換水を添加して、300gの液体柔軟剤組成物を調製した。得られた液体柔軟剤組成物の柔軟性及び滑らかさ、ドレープ性、マイルド性、速乾性、吸収性について評価した。結果を表6に併記する。
下記に実施例及び比較例で使用した成分、共通成分及び評価方法を示す。
〔シリコーン化合物〕
表1に示す構造を有するシリコーン(A−1〜8)を使用した。

〔カチオン性を有する水溶性高分子化合物〕
表2に記載のカチオン性を有する水溶性高分子化合物(化合物B−1〜6)を使用した。なお、比較品−1,2を併記する。

〔ノニオン性界面活性剤〕
表3に記載のノニオン性界面活性剤化合物(C−1〜4)を使用した。

〔水溶性溶剤〕
表4に記載の水溶性溶剤(D−1〜3)を使用した。

(共通成分1)
下記の成分は、〔 〕内に示した量(有姿での配合量)を添加した。
1−1:C.I.Direct Red 225(日本化薬(株)製、カヤフェクトレッドB)〔3ppm〕
1−2:ケーソンCG−ICP(ローム&ハース社製)〔100ppm〕
1−3:香料組成物A(特開2003−89979号公報の表2〜11記載の香料組成物Aを示す)〔0.3%〕
(共通成分2)
下記の成分は、〔 〕内に示した量(有姿での配合量)を添加した。
2−1:C.I.Acid Blue 112(日本化薬(株)製、カヤノールミーリングウルトラスカイSE)〔2ppm〕
2−2:ケーソンCG−ICP(ローム&ハース社製)〔100ppm〕
2−3:香料組成物B(特開2003−89979号公報の表2〜11記載の香料組成物Bを示す)〔0.3%〕
(共通成分3)
下記の成分は、〔 〕内に示した量(有姿での配合量)を添加した。
3−1:C.I.Acid Blue 9((株)洛東化学工業製、ラクトーブリリアントブルーFCF)〔3ppm〕
3−2:ケーソンCG−ICP(ローム&ハース社製)〔100ppm〕
3−3:香料組成物C(特開2003−89979号公報の表2〜11記載の香料組成物Cを示す)〔0.3%〕
(共通成分4)
下記の成分は、〔 〕内に示した量(有姿での配合量)を添加した。
4−1:C.I.Acid Yellow 3(BASF社製、キノリンイエローWS)〔3ppm〕
4−2:ケーソンCG−ICP(ローム&ハース社製)〔100ppm〕
4−3:香料組成物D(特開2003−89979号公報の表2〜11記載の香料組成物Dを示す)〔0.3%〕
(共通成分5)
下記の成分は、〔 〕内に示した量(有姿での配合量)を添加した。
5−1:ケーソンCG−ICP(ローム&ハース社製)〔100ppm〕
5−2:香料組成物A(特開2003−89979号公報の表2〜11記載の香料組成物Aを示す)〔0.3%〕
柔軟性、滑らかさ評価方法
(試験布の調製)
市販の綿ニット(綿100%)とポリエステルジャージ(ポリエステル100%)を、市販衣料用洗剤「トップ」[ライオン(株)製、成分:界面活性剤(アルファオレフィンスルホ脂肪酸エステルナトリウム、脂肪酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼン系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、水軟化剤、アルカリ剤、酵素、蛍光増白剤、以下同じ]により、家庭用二槽式洗濯機を用いて洗浄15分(洗剤は標準使用量、浴比30倍、45℃水道水)→脱水5分の工程を2サイクル繰り返して処理した。その後、流水すすぎ15分→脱水5分の工程を5回繰り返し自然乾燥したものを試験布とした。
(柔軟剤組成物による処理)
上記試験布の調製で得られた綿ニット700gとポリエステルジャージ300gを、市販衣料用洗剤「トップ」で15分洗浄した(洗剤は標準使用量、浴比30倍、25℃の水道水使用)。その後、ためすすぎ2回目に、柔軟剤組成物を水量30リットルに対して10g(ただし、実施例36は20g、実施例37は6.6g、実施例38は5g、実施例39〜42は20g)加えた液で、衣料の柔軟処理(浴比30倍、25℃の水道水使用、3分)を行った。その後、20℃、45%RHの条件で自然乾燥し以下の評価を行った。
(柔軟性及び滑らかさの評価)
柔軟剤を使用せずに処理した綿ニット、ポリエステルジャージを対照として専門パネラー10人による官能一対比較を行い、以下に示す評価基準で評価を行った。
〈評価基準〉
+2:対照よりはっきり良好
+1:対照よりやや良好
0:対照とほぼ同じ
−1:対照の方がやや良好
−2:対照の方がはっきり良好
その評点の平均をとり、1.5〜2.0点を◎、1.0〜1.4点を○、0.5〜0.9点を△、0.4点以下を×とした。
ドレープ性評価方法
市販フリース(UNIQLO製 SP No.6A018 ポリエステル100%)を以下の方法で処理したものを用いて行なった。このフリース1枚を市販の長袖シャツ(UNIQLO製、綿100%)3枚とともに家庭用全自動洗濯機を用いて、市販衣料用洗剤「トップ」(ライオン(株)製)で15分洗浄した(洗剤は標準使用量、浴比30倍、25℃の水道水使用)。その後、ためすすぎ2回目に、柔軟剤組成物を水量45リットルに対して15g(ただし、実施例36は30g、実施例37は10g、実施例38は7.5g、実施例39〜42は30g)加えた液で、衣料の柔軟処理(浴比30倍、25℃の水道水使用、3分)を行った。この洗浄〜柔軟処理の工程を7回繰り返して行なった後、20℃、45%RHの条件で自然乾燥した。実際にフリースを着用して、その際のドレープ性を以下に示す評価基準により目視で判定した。
ドレープ性とは、第2版繊維便覧(社団法人繊維学会編、平成6年3月25日発行、丸善(株))、繊維の百科事典(本宮達也ら編、平成14年3月25日発行、丸善(株))などの文献で一般的に述べられているように、自重などによる布の変形状態(ドレープ)を形成する性能であるが、評価法は多岐にわたる。ここでは、着用時における衣料のシルエットの美しさとして、下記評価基準で評価を行なった。
〈評価基準〉
○:新品と同等もしくはそれ以上の美しいシルエットを有する
△:新品の方が、やや美しいシルエットを有する(比較例1とほぼ同等)
×:新品の方が、はっきりと美しいシルエットを有する(柔軟剤を使用せずに処理したものとほぼ同等)
液の外観及び保存安定性評価方法
液体柔軟剤組成物をガラス容器に入れて密栓し、液の外観(透明感)及び保存安定性を評価した。なお、保存安定性は、ガラス容器に密栓したまま25℃、40℃、5℃の各条件下で1ヵ月放置し、その外観変化を観察し、下記評価基準で評価した。
〈液の外観評価基準〉
◎:透明である
○:透明感はないが、均一に分散
△:わずかにオリを生じる
×:沈澱もしくは分離を生じる
〈保存安定性評価基準〉
○:透明で均一又は均一に分散
△:わずかにオリもしくは分離を生じる
×:沈澱もしくは分離を生じる
マイルド性評価方法
柔軟剤組成物の肌に対するマイルド性を高めるためには、柔軟剤組成物そのものの肌への刺激性を低くすること、及び処理した衣類と肌がこすれ合う時の物理的な刺激(摩擦など)を低くすること、いずれも重要である。そこで、マイルド性評価は、これら2種類の刺激を下記評価基準にて総合的に判定した。
(1)組成物の刺激性評価法
ハートレー系モルモットを検体とし(n=3)、柔軟剤組成物を100%(ただし、実施例37は70%、実施例38は50%、実施例41は50%、実施例42は30%)の濃度(水希釈)で、背面に2×2cm範囲で30μL、1日に1回ずつ3日間塗布した。最終塗布から24時間後の刺激レベルを紅斑・痂皮及び浮腫についてDraize法に準ずる下記評価基準で目視判定した。両スコアを足したものの平均値を皮膚刺激スコアとした。
〈紅斑及び痂皮の評価基準〉
スコア
0:紅斑なし
1:非常に軽度な紅斑(かろうじて識別できる)
2:はっきりとした紅斑
3:中程度ないし高度紅斑
4:高度紅斑からわずかな痂皮の形成(深部損傷)まで
〈浮腫の評価基準〉
スコア
0:浮腫なし
1:非常に軽度な浮腫(かろうじて識別できる)
2:軽度浮腫(はっきりした膨隆により明確に縁が識別できる)
3:中程度浮腫(約1mmの膨隆)
4:高度浮腫(1mm以上の膨隆と暴露範囲を超えた広がり)
(2)柔軟剤組成物で処理した衣類の物理的刺激性評価
(試験布の調製)
市販のポリエステルサテン(ポリエステル100%)を、市販衣料用洗剤「トップ」により、家庭用二槽式洗濯機を用いて洗浄15分(洗剤は標準使用量、浴比30倍、45℃水道水)→脱水5分の工程を2サイクル繰り返して処理した。その後、流水すすぎ15分→脱水5分の工程を5回繰り返し、自然乾燥後、アイロン掛けをして表面を平にしたものを試験布とした。
(柔軟剤組成物による処理)
上記試験布の調製で得られたポリエステルサテン20gを、市販衣料用洗剤「トップ」で、6分洗浄した(洗剤は標準使用量、浴比30倍、25℃の水道水使用)。その後、ためすすぎ2回目に、柔軟剤組成物を水量3リットルに対して1g(ただし、実施例36は2g、実施例37は0.7g、実施例38は0.5g、実施例39〜42は2g)加えた液で、試験布の柔軟処理(浴比30倍、25℃の水道水使用、3分)を行った。この洗浄〜柔軟処理の工程を3回繰り返して行った後、20℃、45%RHの条件で自然乾燥し以下の評価を行った。
(布の物理的刺激性評価法)
上記のとおり柔軟処理したポリエステルサテンと人工モデル皮膚(バイオプレート、(株)ビューラックス製)との平均摩擦係数(MIU)を、25℃、30%RHの条件下で摩擦感テスター(KES−SE、カトーテック(株)製)を用いて、ピアノ線の摩擦子に人工モデル皮膚を貼りつけ試料台に処理布を両面テープで固定して測定した(荷重50g、試料台の移動速度10mm/秒)。
上記で得られた皮膚刺激スコアと、平均摩擦係数(MIU)とを総合評価して、下記評価基準に基づいてマイルド性を評価した。
〈皮膚刺激性評価基準〉
○:組成物の皮膚刺激スコア2点未満
△:組成物の皮膚刺激スコア2点以上5点未満
×:組成物の皮膚刺激スコア5点以上
〈MIU評価基準〉
○:MIUが0.6未満
△:MIUが0.6以上1.2未満
×:MIUが1.2以上
〈マイルド性評価基準〉
◎:皮膚刺激性評価、MIU評価のいずれも○
○:皮膚刺激性評価、MIU評価のいずれか一方が○で残り一方が△
Δ:皮膚刺激性評価、MIU評価のいずれも△、またはいずれか一方が○か△
で残り一方が×
×:皮膚刺激性評価、MIU評価のいずれも×
吸水性評価方法
(試験布の調製)
市販の綿タオル(綿100%)とポリエステルサテン(ポリエステル100%)を、市販衣料用洗剤「トップ」により、家庭用二槽式洗濯機を用いて洗浄15分(洗剤は標準使用量、浴比30倍、45℃水道水)→脱水5分の工程を2サイクル繰り返して処理した。その後、流水すすぎ15分→脱水5分の工程を5回繰り返し自然乾燥したものを試験布とした。
(柔軟剤による処理)
上記試験布の調製で得られた綿タオル80gとポリエステルサテン20gを、柔軟剤組成物を水量3リットルに対して1g(ただし、実施例36は2g、実施例37は0.7g、実施例38は0.5g、実施例39〜42は2g)加えた液で、試験布の柔軟処理(浴比30倍、25℃の水道水使用、3分)した。その後、20℃、45%RHの条件で自然乾燥し以下の評価を行った。
(吸水性評価方法)
綿タオル及びポリエステルサテンの吸水性を下記方法でそれぞれ測定し、下記評価基準で評価した。
(1)綿タオルの吸水性
上記のとおり処理した綿タオルから、2.5cm×20cmの大きさに切り出した布片を20℃、45%RHの条件下で垂直に吊るし、下端から水道水を毛管現象を利用して上昇させた。下端を水道水に接触させた瞬間から10分後の吸水高さを測定した。吸水高さが大きいほど、吸水性が良好なことを意味する(JIS、バイレッグ法に相当)。
(2)ポリエステルサテン(化繊)の吸水性
上記のとおり処理したポリエステルサテン布上にイオン交換水を1滴滴下し、目視で完全にしみ込むまでの時間を測定した。
〈吸水性評価基準〉
◎:綿の吸水長が80mm以上であり、かつ化繊の吸水時間が10秒未満
○:綿の吸水長が80mm以上であり、かつ化繊の吸水時間が10秒以上
△:綿の吸水長が50mm以上80mm未満
×:綿の吸水長が50mm未満
速乾性評価方法
(試験布の調製)
速乾性を高めるためには、水の蒸発速度を高めること及び脱水後の水分を低下させることの2点が考えられる。水の蒸発速度を高めるためには、エタノール等の水と共沸し易い有機溶剤と共沸させることが考えられるが、洗濯工程における柔軟剤処理により達成するためには、柔軟処理浴中にエタノール等の有機溶媒を大量に用いなければならないため、家庭で行うには非現実的である。そこで、脱水後の水分率を低下させることに主眼を置き、速乾性を評価することとした。
市販の綿タオル(綿100%)を、市販衣料用洗剤「トップ」により、家庭用二槽式洗濯機を用いて洗浄15分(洗剤は標準使用量、浴比30倍、45℃水道水)→脱水5分の工程を2サイクル繰り返して処理した。その後、流水すすぎ15分→脱水5分の工程を5回繰り返し、20℃、60%RHで充分に乾燥したものを試験布とした。なお、乾燥後のタオルの質量(Wd)を測定し、下記の水分率算出に用いた。
(柔軟剤組成物による処理)
上記試験布の調製で得られた綿タオル2枚を、柔軟剤組成物を水量4.8リットルに対して2.4g(ただし、実施例36は4.8g、実施例37は1.6g、実施例38は1.2g、実施例39〜42は4.8g)加えた液で、試験布の柔軟処理(浴比30倍、25℃の水道水使用、3分)した。その後、三菱電気(株)製洗濯機(CW−C30A1−H)で1分間脱水を行なった。
(速乾性評価方法)
柔軟剤処理における脱水直後の綿タオルの質量(Ww)を測定し、この値と柔軟剤処理前の乾燥後タオルの質量(Wd)から、下記式(3)により水分率を算出した。また、柔軟剤を使わずに上記処理を行なった綿タオルの水分率(Bl)も下記式(3)により算出し、下記式(4)により、相対水分率を算出し、下記評価基準により、速乾性を評価した。

〈速乾性評価基準〉
◎:相対水分率が88%未満
○:相対水分率が88%以上94%未満
△:相対水分率が94%以上100%未満
×:相対水分率が100%以上


なお、本発明品により処理された綿ニット・ポリエステル布は、従来から柔軟剤に使用されているジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(比較例1)によって処理されたものに比べ、ぬめり感がなく、柔軟性、滑らかさ、ドレープ性、マイルド性に優れた仕上がりになった。


適切なノニオン性界面活性剤及び水溶性溶剤を組み合わせることで、低温から高温まで保存安定性が良好になり、シリコーン化合物としてポリエーテル基を有するシリコーンを用いることにより、天然繊維にも化学繊維にも良好な吸水性を有し、さらに透明な液外観を有し、かつ低温から高温まで透明な液外観を維持する柔軟剤組成物を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1種又は2種以上のシリコーン化合物及び(B)1種又は2種以上のカチオン性を有する水溶性高分子化合物を、(A):(B)(質量比)が99:1〜50:50の割合で含有することを特徴とする液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
さらに、(C)ノニオン性界面活性剤と(D)低級アルコール、グリコールエーテル系溶剤、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性溶剤とを含有することを特徴とする請求の範囲第1項記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
(A)成分がポリエーテル基を有するシリコーン化合物であって、組成物が透明であることを特徴とする請求の範囲第1又は2項記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(B)成分がジメチルジアリルアンモニウム塩の重合体であることを特徴とする請求の範囲第1〜3のいずれか1項記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
肌マイルド用であることを特徴とする請求の範囲第1〜4のいずれか1項記載の液体柔軟剤組成物。

【国際公開番号】WO2004/025017
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535930(P2004−535930)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011567
【国際出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】