説明

液体槽及び歯科用機器

【課題】気体通路が詰まるのを防止できる液体槽及び、この液体槽を備える歯科用機器を提供すること。
【解決手段】
外部に供給される液体Lが収容される収容空間200を有する液体槽20は、開口23を有する口部22が形成される槽本体21と、口部22に装着され開口23を閉じるキャップ25と、液体槽20内の液体Lが外部に向けて流れる液体通路と、口部22とキャップ25との間に生じる間隙24、及び間隙24と収容空間200とに連通する経路41、を有する気体通路48と、液体通路上に設けられ、外部への液体Lの流れを許容し又は阻止する液流通弁30と、気体通路48上に設けられ、収容空間200内で発生する負圧を補償する曝気用弁45と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容する液体槽と、この液体槽内の液体が供給される歯科用ハンドピースが接続される歯科用機器と、に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療に使用される薬品などの液体が収容された液体槽と、この液体槽が設置される設置部と、液体槽内部の液体を歯科用ハンドピースに供給する機構とを備えた歯科用機器が特許文献1、2に記載されている。液体槽は、歯科用機器に装着されると液体槽内の液体が通過するように液体通路を開き、歯科用機器から離脱されると液体通路を閉じる液流通弁を有している。また、液体槽は、液体槽の内部と外部とを連通する気体通路上に、液体槽から液流通弁を介して液体が流出することにより液体槽内に生じる負圧を補償する曝気用弁も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−320628号公報
【特許文献2】特開2005−137660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の液体槽において、気体通路の一端には、外部から気体(典型的には空気)を取り込む吸入口が設けられている。この吸入口は、比較的小径な開口を有し、外部に晒されている。
歯科用機器が使用される環境には、歯牙を切削することにより生じた微小な塵埃が少なからずとも含まれている。この塵埃は吸入口から空気とともに気体通路に不可避的に取り込まれることになる。液体槽が装着される歯科用機器を継続して使用していると、塵埃が気体通路、さらには曝気用弁を詰まらせるおそれがある。塵埃による詰まりを避けるために気体通路を清掃するなどのメンテナンスを行なえばよいが、メンテナンスは歯科医にとって煩わしく、メンテナンスを怠ってしまうこともあり得る。例えば、吸入口にフィルタを設けることにより気体通路へ塵埃が進入するのを阻止できるが、塵埃によりフィルタが目詰まりを起こすこともあるので、根本的な解決には至らない。
【0005】
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、気体通路が詰まるのを防止できる液体槽及び、この液体槽を備える歯科用機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明者らが気体通路を設ける箇所について鋭意検討したところ、液体槽の口部と、口部に装着されるキャップとの間には通気性を有する間隙が生じており、液体槽内に負圧が発生するとこの間隙を通じて負圧を補償するのに足りる空気を液体槽容器内に取り込むことができるという新たな知見を得た。
この知見に基づいて完成された本発明の液体槽は、液体を収容する収容空間を有する液体槽であって、液体の流入及び流出が行われる開口が形成される口部を備える槽本体と、口部に装着され開口を閉じるキャップと、を備えている。
この液体槽は、液体槽内の液体が外部に向けて流れる液体通路と、液体通路上に設けられ、外部への液体の流れを許容し又は阻止する液流通弁と、気体通路上に設けられ、収容空内で発生する負圧を補償する曝気用弁と、を備える。
この液体槽においては、気体通路が第1経路と第2経路と、を有する。第1経路は、口部とキャップとの間に生じ、外部に連通する。第2経路は、第1経路及び収容空間に連通する。
【0007】
本発明の液体槽では、外部に連通する第1経路が口部とキャップとの間に生じている。通常、口部とキャップとの間は全体的に密閉されているわけではなく、製造公差、その他の要因により間隙が口部とキャップとの間に不可避的に生じているものと認められる。この間隙が口部及びキャップの材軸方向において連続していれば、口部とキャップとの間に気体経路が確保される。しかも、この間隙は、口部、キャップの周方向において連続的に、または、断続的に、広い範囲に生じているものと解される。
口部とキャップとの間の間隙は従来の液体槽の吸入口に比べて微小であるから、そもそも塵埃は当該間隙に入り難い。仮に入ったとしても、当該間隙は口部、キャップの周方向の広い範囲に生じているので、塵埃で詰まるのは間隙の一部に過ぎない。したがって、本発明の液体槽によると、塵埃によって気体通路が詰まるおそれがない。加えて、キャップを口部から分離すると、第1経路を構成する口部、キャップの壁面が露出されるので、清浄が容易である。
さらに、本発明は、口部とキャップとの間に生じる間隙を第1経路として利用するので、少なくとも第1経路に対応する液体通路を形成するための部材を別に用意する必要がないから、部品点数の削減による低コスト化に寄与する。
【0008】
本発明において、第2経路の少なくとも一部を、口部とキャップとの間を封止する封止部材に形成することが好ましい。
液体槽においては一般的に、収容空間に収容される液体が液体槽の外部に漏れるのを防止するために、口部とキャップとの間に封止部材を介在させる。この封止部材は、収容空間に臨み、そこに収容される液体と接する。したがって、封止部材に第2経路を形成すれば、他の専用の部材を用意することなく、第1経路及び収容空間に連通する第2経路を確保できる。これにより、仮に、液体の付着によって第2経路が詰まった場合でも、パッキンのみを交換して槽本体、キャップの使用を継続することが可能となる。
例えば、封止部材がリング状のパッキンの場合、パッキンの外周面と内周面とを径方向に貫通する孔を第2経路とすることができるので、容易に第2経路を形成できる。
【0009】
本発明は適用される曝気用弁の形態を問わないが、曝気用弁としてダックビルチェックバルブを用いるのが好ましい。
ダックビルチェックバルブは、弾性素材を一体成形して作製されるものであるから、弁球及びコイルばねを用いるチェックバルブよりも部品点数を削減できるとともに、気体通路への組付け作業が容易である。特に、リング状のパッキンの外周面と内周面とを径方向に貫通する孔を第2経路とする場合、ダックビルチェックバルブをこの孔に挿入するだけで、曝気用弁の組付け作業を完了できる。ただし本発明は、弁球及びコイルばねを用いるチェックバルブやその他のチェックバルブを用いることを排除するものではない。
【0010】
本発明において、曝気用弁の少なくとも一部は、第2経路から収容空間に向けて突出していることが好ましい。
曝気用弁の全体が第2経路内に収容されていると、第2経路内に入った液体が第2経路内において曝気用弁の周囲に滞留し、時間の経過により固化することが想定される。そうすると、曝気用弁の動作が妨げられ、または、曝気用弁に詰まりが生じる。これに対して、曝気用弁の少なくとも一部を第2経路から収容空間に向けて突出させると、突出した曝気用弁の周囲の液体は第2経路内に比べて流動的であるから、液体が曝気用弁の周囲に滞留して固化するのを防止できる。
【0011】
本発明において、封止部材を、槽本体に保持し、かつ、曝気用弁を、その気体流出端部が、槽本体の底に向くように配置することが好ましい。そうすることで、キャップを口部から取り外す際に、作業者が不用意に(無意識に)曝気用弁に触れるのを避けることができる。なお、封止部材は、キャップ側に保持されてもよい。
【0012】
本発明において、第2経路及び曝気用弁は、槽本体の周方向において複数設けられることが好ましい。
上述したように、第1経路は意図的に形成されたものではない。したがって、口部、キャップの製造誤差、口部に対するキャップの装着の状態(ねじ込み式の場合は締め具合)によって、第1経路が生じる位置、領域は変動するおそれがある。また、曝気用弁の製造誤差や、口部に対するキャップの装着の状態により、曝気用弁の開閉に不具合が生じるおそれがある。そのため、第1経路に連なる第2経路が1つの場合には、第1経路と第2経路との連通、及び曝気用弁の気体通過が十分に確保されないおそれがある。このことは、液体槽の使用当初からだけでなく、使用の途中から生じることもある。そこで、第2経路及び曝気用弁を複数設けることにより、1つの第2経路及び曝気用弁が機能しなくても、残りの第2経路及び曝気用弁を機能させることで、曝気を確実に行って収容空間からの液体の流出を保障する。
【0013】
以上説明した本発明の液体槽は、歯科用ハンドピースに供給する液体を収容する液体槽と、液体槽から流出する液体を歯科用ハンドピースに供給する流路と、歯科用ハンドピースに向けて液体を前記流路に吐出するポンプと、を備える歯科用機器に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気体通路の詰まりを防止できる液体槽が提供されるので、詰まり防止のためのメンテナンスをしなくてよいか又はメンテナンスをする頻度を著しく軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る歯科用機器の全体概略構成図である。
【図2】液体槽設置部に設置される第1実施形態の液体槽を示す断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】キャップ及びパッキンを示す分解斜視図である。
【図5】曝気用弁及びパッキンの断面図であり、(A)は横断面図であり、(B)は縦断面図である。
【図6】第2実施形態に係る液体槽を示す断面図である。
【図7】第2実施形態のパッキン及び曝気用弁を示す平面図である。
【図8】第1実施形態の変形例を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示す歯科用機器10は、歯科治療に使用される薬液等の液体が収容される液体槽20と、液体通路、電気配線、光ファイバ等が内包されたチューブ等の接続部材(図示せず)により歯科用ハンドピース70が接続される歯科用機器本体部50とを有している。
【0017】
歯科用機器本体部50には、制御基板51、電源及びポンプ基板52、発振基板53、ポンプモータ54、水供給流路T1等の主要部が設けられている。
制御基板51には、操作ボタンからの信号をマイクロコンピュータ(以下、マイコン)回路に伝達するための操作回路と、フットスイッチから端子58を経由した信号や、操作回路からの信号を受けて他の回路のON/OFF制御を行うマイコン回路と、このマイコン回路の作動状況をLED等により表示するための表示回路とが設けられている。
【0018】
電源及びポンプ基板52には、モータ速度調整装置59とマイコン回路とから入力される信号を受けてポンプモータ54を制御するポンプ制御回路と、マイコン回路から入力される信号を受けて電磁弁55Bの開閉を行う電磁弁制御回路と、各回路に電気を供給する主電源回路とが設けられている。この主電源回路までの電気経路57は、ACインレット57Aから開閉スイッチ57Bを経由し、電源トランス57Cから主電源回路に電気を導くものであり、開閉スイッチ57Bはパワースイッチ57DによりON/OFFされ、入力された電気が電源トランス57Cで所定電圧まで降圧される。
【0019】
発振基板53は、歯科用ハンドピース70に内蔵されたランプをON/OFFさせるランプ電源回路と、歯科用ハンドピース70に内蔵された電歪発振子と先端チップ71との共振点を捜し出すためにスイープ発振を行い、2サイクル目に共振点が見つかると、その共振点でロックする超音波発振回路とが設けられており、これらランプ電源回路と超音波発振回路からの信号は出力端子56を介して出力される。
【0020】
水供給流路T1は、水道水などの水を歯科用ハンドピース70に供給するための経路であって、水を取り込むための端子55Aから始まり、電磁弁55Bや水量調整弁55Cを介して出力端子56まで連続するように設けられている。
水供給流路T1では、ここから水の取込みが選択されると、電源及びポンプ基板52の電磁弁制御回路がアクティブになり、フットスイッチのON/OFFに連動して電磁弁55Bを開閉させ、水量調整弁55Cにより適量な水量に調節される。この水は、出力端子56と中継コネクタ75を通過して歯科用ハンドピース70に導入されて、その先端の噴射ノズルから噴射される。
【0021】
一方、液体槽20に収容された薬液などの液体Lの取込みが選択されると、電源及びポンプ基板52のポンプ制御回路がアクティブになり、フットスイッチのON/OFFに連動して、ポンプモータ54を回転させ、又は停止させる。ポンプモータ54はチューブポンプを押し潰すローラ(ともに図示せず)を作動させることで、チューブ内に生ずる圧力の変化により液体Lの吸引、吐出を行う。吸引(または吐出)される水量は、モータ速度調整装置59を操作することにより、ポンプ制御回路がポンプモータ54の回転数を上下させることで調節される。チューブポンプから吐出された液体Lは、液供給流路T2(流路)内を中継コネクタ75に向けて導かれて歯科用ハンドピース70に供給される。このように、液体槽20に収容された液体Lが歯科用ハンドピース70に供給されると、よく知られているように、液体槽20の内部には負圧が生じる。
なお、中継コネクタ75における水道水などの水の入力側IN1と、液体槽20からの液体入力側IN2とには、それぞれ逆止弁が内蔵されており、各液体(水及び液体L)が逆流することを防止する構成になっている。
【0022】
歯科用機器本体部50には、液体槽設置部61が設けられ、この液体槽設置部61に液体槽20を設置するための受入部62が形成されている。
受入部62は、図2に示すように、アダプタ63及び開放部材69を主要な構成として有している。
アダプタ63は、図2に示すように、第1固定部材67及び第2固定部材68を介して液体槽設置部61に保持されている。
円筒状のアダプタ63には、後述する弁収容体31を受け入れる受容キャビティ63Bが形成されている。受容キャビティ63Bは、アダプタ63の上面に開口し、この上面から所定距離にある底壁63Aに達する間に形成される断面が円形の穴である。この受容キャビティ63Bの上下方向の中間部には、それよりも上方に比べて内径が若干小さい段部63Cが形成され、さらに段部63Cよりも下方の内径はより縮径されている。アダプタ63には、受容キャビティ63Bの下端部と外部とに連通する横孔63Eが、受容キャビティ63Bの径方向に穿設されている。この横孔63Eには、接続管65が連結されており、この接続管65の端部の開口65Aにはチューブポンプ(図示せず)が連結されている。
【0023】
開放部材69は、液体槽20が液体槽設置部61に装着されたとき、後述する液流通弁30の弁球32を押し上げることで液流通弁30を開き、液体Lが外部へ流れるのを許容する。
開放部材69は、大径の固定部69Aと、固定部69Aから軸方向に突出する小径の作用部69Bと、を備えている。固定部69Aには、平面視円弧状の切欠き部69Cがその外周面に均等間隔で三箇所に形成されている。
開放部材69は、固定部69Aが例えば圧入されることで受容キャビティ63B内に保持されている。固定部69Aは、受容キャビティ63Bの段部63Cにより上下(軸)方向の位置決めがなされている。受容キャビティ63Bにおける固定部69Aの上方と下方は、固定部69Aの外周面に形成された切欠き部69Cによって液体Lが流れる液体通路を構成する。
【0024】
液体槽20は、図2に示すように、液体Lを収容するための収容空間200を有する槽本体21と、キャップ25と、収容空間200内の液体Lの歯科用ハンドピース70に向けた流れを制御する液流通弁30と、キャップ25と槽本体21(具体的にはその口部22)との間に設けられる封止部材としてのパッキン40と、パッキン40に設けられる曝気用弁45と、を備えている。
【0025】
円筒状の槽本体21は、口部22を備えている。口部22は開口23を有しており、この開口23を通って、液体収容時には液体Lが流入し、又は、液体槽設置部61への設置時には液体Lが歯科用ハンドピース70に向けて流出する。口部22の外周面には、キャップ25に係合される(ねじ込まれる)ねじ山22Aが形成されている。この槽本体21は、口部22を下側に向けた状態で液体槽設置部61に設置されている。なお、通常、槽本体21は、樹脂材料で作製される。以下のキャップ25も同様である。
【0026】
キャップ25は、槽本体21の口部22に装着されることで、口部22の開口23を閉じている。
キャップ25は、図2及び図4に示すように、口部22に装着されると開口23を覆う円板状の蓋部26と、蓋部26の外周寄りの所定位置から立ち上がる円筒状の装着部27と、装着部27よりも外側で蓋部26から立ち上がる把持部28とを有している。装着部27の内周面には、口部22のねじ山22Aと係合されるねじ山27Aが形成されている。
キャップ25は、ねじ山27A,22Aを係合することで、口部22(槽本体21)への装着、離脱が行われるねじ込み式のキャップであり、口部22と装着部27とがそれらの径方向において重なった状態で、キャップ25が槽本体21に装着されている。
【0027】
液流通弁30は、蓋部26の中央に形成された貫通孔25Aの周縁部から受入部62側に向けて立ち上がる筒状の弁収容体31と、弁収容体31の内部に配置される弁球32と、弁球32を弁収容体31の基端側(蓋部26側)から保持する保持部33と、保持部33を弁収容体31の先端側に向けて押し付けるコイルバネ34と、コイルバネ34の弁球32側とは反対側の端部を貫通孔25Aの内壁に係止する係止部材35とを有している。弁収容体31の先端内壁には、コイルバネ34に加圧された弁球32を受け止めるテーパ面(弁座)31Aが形成されている。
液体槽20が液体槽設置部61から離脱された単独の状態では(図6参照)、弁球32がテーパ面31Aに押し付けられて液流通弁30が閉じており、収容空間200内の液体Lの外部への流出が阻止される。
【0028】
図2のように液体槽20が液体槽設置部61に設置された状態では、開放部材69の作用部69Bがコイルバネ34の押し付け力に対抗して弁球32をテーパ面31Aから離す。これにより液流通弁30は、外部への液体Lの流出を許容するように開放される。
そうすると、液体Lが、貫通孔25A、弁収容体31内部、アダプタ63の受容キャビティ63B、及び接続管65を介してチューブポンプ(図示せず)に供給される。
【0029】
また、液体槽20が液体槽設置部61に設置されると、弁収容体31がアダプタ63の接続キャビティ63Dに挿入される。弁収容体31の外周にはOリング36,37が配置されており、アダプタ63の受容キャビティ63B内の液体Lが外部に漏れるのを防ぐ。
【0030】
この弁収容体31は、液体槽20と液体槽設置部61との連結部を兼ねているが、弁収容体31とは別体として、液体槽20と液体槽設置部61との連結部が設けられていてもよい。
また、弁収容体31はキャップ25に一体に設けられているが、弁収容体31をキャップ25とは別体で構成し、液流通弁30をキャップ25に対して着脱自在なカートリッジにすることができる。このようなカートリッジタイプの弁収容体31は、その内部が蓋部26の貫通孔25Aと連通するようにキャップ25に取り付けられる。
【0031】
図3に示すように、装着部27のねじ山27Aが口部22のねじ山22Aに係合されることにより、キャップ25が槽本体21に装着されている。ねじ山22Aとねじ山27Aとはそれらの長手方向、つまり口部22、装着部27の周方向にほぼ沿って(螺旋方向に沿って)接している。しかるに、口部22と装着部27との間を空気(気体)が通過することから、前記周方向の一部又は全周において両者の間に微小な間隙24が生じているものと解される。本実施形態は、この間隙24を曝気のための気体通路(第1経路)として用いる。
【0032】
なお、本実施形態のキャップ25の槽本体21への装着方式はねじ込み式であるが、ねじ込み式はキャップ25の装着方式の一例に過ぎず、キャップ25と槽本体21との間に間隙24が生じる適宜なキャップ装着方式を採用することができる。
【0033】
パッキン40は、図4及び図5に示すように、円環状の部材である。このパッキン40には、パッキン40を径方向に沿って貫通する経路41が形成されている。本実施形態ではパッキン40の径方向に沿って経路41が貫通する例を示しているが、経路41は、パッキン40の外周と内周とを結ぶ方向に沿って貫通していれば径方向に沿うものに限定されず、径方向に対して傾斜する方向に沿った経路41を形成することができる。また、本実施形態ではパッキン40の周方向において等間隔に合計4つの経路41が形成されているが、経路41の数に制約はなく、例えば、1つの経路41のみが形成されていてもよい。この経路41は本発明の第2経路に相当する。なお、樹脂材料を射出成形してパッキン40を作製すれば、経路41をパッキン40と一体的に形成することができる。
【0034】
各経路41上には、曝気用弁45が設けられている。曝気用弁45は、パッキン40の内周側に位置しており、曝気用弁45の一部はパッキン40の内周側の開口41Aからパッキン40の中心に向けて突出するように設けられている。より具体的には以下の通りである。
曝気用弁45は、図3に示すように、いわゆるダックビルチェックバルブと称される一方向弁であり、中空の胴部46と、胴部46の一端に連続した弁体47とからなる。弁体47は、先端が互いに向けて押圧された一対のくちばし状部47A,47Aを含み、ゴム製の一体成形品から構成されている。
曝気用弁45の胴部46は経路41内においてパッキン40に保持され、一方、弁体47は、その全体がパッキン40の内周側からの開口41Aから突出する。
この曝気用弁45は、空気(気体)を液体槽20の外部から内部に向けた方向に流出させるが、収容空間200内の液体Lが経路41を通じて外部に向けて流れることを規制する。すなわち、曝気用弁45においては、弁体47の先端部(気体流出端部)から気体が流出する。
【0035】
上述したパッキン40は、図3及び図4に示すように、キャップ25の蓋部26と装着部27とによって形成された凹部29に配置されている。パッキン40の外周側の側面と装着部27との間には、図3に示すように僅かな隙間S(経路41と共に第2経路を構成する)が形成されている。
【0036】
キャップ25が口部22に装着されると、パッキン40は、図3のように口部22の端面22Bとキャップ25の蓋部26との間に位置し、端面22Bと蓋部26とに密接される。これによってキャップ25と口部22との間が封止されるので、液体Lが液体槽20の外部に漏れるのが防止される。
【0037】
ここで、パッキン40がキャップ25と口部22との間に介装された状態において、キャップ25と口部22との間の間隙24と、経路41とが隙間Sを介して連通する。つまり、パッキン40は、口部22の端面22Bと蓋部26との間を封止しつつ、経路41の存在により、外部から取り込まれ間隙24を通過した気体を収容空間200へと流入させる。このように、液体槽20は、間隙24(第1経路)と、間隙24及び収容空間200にそれぞれ連通する経路41(第2経路)とを含む気体通路48(図2に図示)を備えている。
【0038】
さて、液体槽20が液体槽設置部61に装着されると、開放部材69の作用部69Bが弁球32を押し上げることで、液流通弁30が開く。この状態で、フットスイッチがONされるとポンプモータ54が作動し液体槽20内の液体Lは液流通弁30を通って、歯科用ハンドピース70に供給される。そうすると、収容空間200には負圧が生じる。しかし、外部の空気が気体通路48を通って収容空間200に取り込まれるので、収容空間200内の負圧が補償される。こうして、液体Lの歯科用機器本体部50への供給が止まることなく継続的に行われる。
【0039】
以上説明した本実施形態の歯科用機器10においては、キャップ25と口部22との間に不可避的に形成される間隙24を気体通路48に利用している。口部22とキャップ25(その装着部27)との間の間隙24は微小であるから、塵埃はこの間隙24に入り難い。仮に入ったとしても、間隙24は口部22、装着部27の周方向の広い範囲に生じているので、塵埃で詰まる可能性があるのは間隙24の一部に過ぎない。したがって、塵埃によって気体通路48が詰まるおそれがない。
【0040】
加えて、キャップ25を槽本体21の口部22から取り外せば、装着部27の内周面と口部22の外周面とを清掃することができる。すなわち、装着部27と口部22との間に形成される気体通路48(間隙24)に詰まった塵埃を容易に除去できる。
【0041】
また、気体通路48の一部をなす経路41が、キャップ25と槽本体21との間を封止するために一般的に用いられるパッキン40に形成されているので、経路41に相当する部分の気体通路48を形成するために別部材を用意する必要がない。そして、このパッキン40はキャップ25と口部22との間の封止に用いられるものであるから、間隙24とパッキン40の経路41との気体の流れ方向の距離が微小な隙間Sだけで足りる。この隙間Sもまた別部材を用意することなく形成できる。上述のように間隙24を気体通路48に利用したことに加え、これらの点でも本実施形態は部品点数の削減に有利である。ただしこの隙間Sは本発明にとって必須の要素ではない。
【0042】
また、パッキン40に経路41及び曝気用弁45が設けられているので、経路41及び曝気用弁45が詰まった場合には、パッキン40のみを交換して液体槽20の使用を継続することができる。
【0043】
さらに、曝気用弁45の弁体47、つまり気体流出端部がパッキン40内周側の開口41Aから収容空間200に向けて突出しているため、弁体47の周囲に液体Lが滞留しにくい。つまり、図8に示すように、胴部46に加えて弁体47までもが経路41の内部に配置されていると、弁体47と経路41を形成するパッキン40の壁面との間に間隙Rが形成される。この間隙Rに液体Lが入り込んだ後に滞留して弁体47の周囲で固化することで弁体47からの気体の吐出が妨げられるおそれがある。これに対して本実施形態のように弁体47をパッキン40内周側の開口41Aから突出させれば、液体Lが滞留する間隙Rが形成されないので、弁体47の周囲で液体Lが固化することを防止できる。
【0044】
さらにまた、曝気用弁45に用いられるダックビルチェックバルブは、弁球及びコイルバネを用いるチェックバルブに比べて、部品点数が少なく、また、構造も単純である。そして、曝気用弁45は一体的な部材であるから、パッキン40の経路41のように狭隘な所に装着するのも容易である。したがって、部品点数及び製造工数の削減による液体槽20の低コスト化に有利である。ダックビルチェックバルブである曝気用弁45は、僅かな圧力差に対しても敏感に感応するため、槽本体21内の負圧を確実に補償することで、液体Lを間断なく歯科用ハンドピース70に供給することができる。これにより、歯科用機器10の信頼性を向上させることができる。
【0045】
そして、本実施形態は、口部22の周方向の4箇所に経路41及び曝気用弁45が設けられることにより、負圧の補償をより確実にできる。つまり、キャップ25と口部22との締め付け具合や、曝気用弁45の製造誤差等に起因して、間隙24が生じる位置や領域が変動したり、曝気用弁45の開閉に不具合が生じるおそれがあるが、周方向の4箇所に経路41及び曝気用弁45を設けておけば、間隙24、経路41、及び曝気用弁45を介して外部空気を収容空間200内に確実に取り込むことができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、パッキン80の構成を除いて第1実施形態と同様の構成を備えているので、以下では第1実施形態との相違点であるパッキン80を中心に説明する。
図6及び図7に示すように、本発明の第2実施形態によるパッキン80は、円筒状の形態をなし、高さ方向の中間部に周方向に連続する保持溝801を有している。保持溝801に口部22の端面22B部分が挿入されることで、パッキン80は口部22に保持さていれる。
【0047】
パッキン80には、間隙24と収容空間200とに連通する2つの経路81が周方向に均等間隔で形成されている。第1実施形態と同様に経路81の数の制約はない。本実施形態は、間隙24と、経路81とを含む気体通路88を備えている。
【0048】
経路81は、径方向路81Aと軸方向路81Bとからなり、両者の境界で屈曲している。
径方向路81Aは、一端がパッキン80の外周面に形成される切欠80C(図7)に開口し、パッキン80の内周面よりも径方向外側に位置する他端まで径方向に形成されている。切欠80Cが形成されていることにより、間隙24と経路81との通気性が確実となる。
軸方向路81Bは、一端が径方向路81Aの前記他端に連なり、他端がパッキン80の上面80Bに開口する。
【0049】
軸方向路81Bには曝気用弁45が設けられている。曝気用弁45は、第1実施形態と同様に、胴部46が軸方向路81B内においてパッキン80により保持される。曝気用弁45の弁体47は、パッキン80の上面80Bから槽本体21の底(槽本体21において開口23に対向する部分)に向けて突出されている。
【0050】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するのに加え、パッキン80を口部22に保持させるとともに、曝気用弁45を槽本体21の底に向けて配置したので、キャップ25を取り外す際に、作業者が不用意に曝気用弁45に触れるのを防止することができる。これにより、曝気用弁45が破損したり、曝気用弁45に汚れが付着するのを防止できる。
【0051】
以上本発明の実施形態を説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、経路41(第2経路)は、パッキン40,80に形成するのに限られるものではなく、槽本体21やキャップ25、あるいは槽本体21とキャップ25との境界部分にも形成することができる。
また、曝気用弁としてダックビルチェックバルブの例を示したが、例えば気体を通過させるが液体の通過を規制する多孔質膜を曝気用弁に用いることができる。この多孔質膜は、1平方センチメートルに億単位の微細な孔を含む素材であり、防水透湿膜と称されることもある。
【符号の説明】
【0052】
10 歯科用機器
20 液体槽
21 槽本体
22 口部
22B 端面
23 開口
24 間隙
25 キャップ
27 装着部
30 液流通弁
40 パッキン
41 経路
45 曝気用弁
48 気体通路
50 歯科用機器本体部
54 ポンプモータ
61 液体槽設置部
62 受入部
65 接続管
69 開放部材
70 歯科用ハンドピース
80 パッキン
81 経路
88 気体通路
200 収容空間
L 液体
T2 液供給流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する収容空間を有する液体槽であって、
前記液体の流入及び流出が行われる開口を有する口部が形成される槽本体と、
前記口部に装着され前記開口を閉じるキャップと、
前記液体槽内の前記液体が外部に向けて流れる液体通路と、
前記口部と前記キャップとの間に生じ、外部に連通する第1経路と、前記第1経路及び前記収容空間に連通する第2経路と、を有する気体通路と、
前記液体通路上に設けられ、外部への前記液体の流れを許容し又は阻止する液流通弁と、
前記気体通路上に設けられ、前記収容空間内で発生する負圧を補償する曝気用弁と、を備えたことを特徴とする液体槽。
【請求項2】
前記口部と前記キャップとの間を封止する封止部材を備え、
前記第2経路の少なくとも一部は、前記封止部材に形成される、
請求項1に記載の液体槽。
【請求項3】
前記曝気用弁は、ダックビルチェックバルブである、
請求項1または2に記載の液体槽。
【請求項4】
前記曝気用弁の少なくとも一部は、前記第2経路から前記収容空間に向けて突出している、請求項3に記載の液体槽。
【請求項5】
前記封止部材は、前記槽本体に保持され、
前記曝気用弁は、その気体流出端部が、前記槽本体の底に向いて配置されている、
請求項4に記載の液体槽。
【請求項6】
前記第2経路及び前記曝気用弁が、前記槽本体の周方向において複数設けられる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の液体槽。
【請求項7】
歯科用ハンドピースに供給する液体を収容する液体槽と、
前記液体槽から流出する前記液体を前記歯科用ハンドピースに供給する流路と、
前記歯科用ハンドピースに向けて前記液体を前記流路に吐出するポンプと、を備え、
前記液体槽が、請求項1から6のいずれか1項に記載される液体槽である、
ことを特徴とする歯科用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−249794(P2012−249794A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124114(P2011−124114)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000150327)株式会社ナカニシ (43)
【Fターム(参考)】