液体注出キャップ
【課題】 口径の異なる一対の口筒片を設け、両口筒片を個々に蓋板で開閉可能とし、もって内容液の注出程度の切替えを可能とすると共に、口筒片に対するホコリ等の付着物発生を防止することを目的とする。
【解決手段】 上端を頂壁6で塞いだ首筒壁5から、口径の異なる一対の口筒片8を左右に延出設し、頂壁6にヒンジ16を介して、口筒片8を開閉する一対の蓋板10を設け、頂壁6と蓋板10との間に係止機能部分を形成し、両口筒片8を切り替え使用して、内容液の注出程度を切替える。
【解決手段】 上端を頂壁6で塞いだ首筒壁5から、口径の異なる一対の口筒片8を左右に延出設し、頂壁6にヒンジ16を介して、口筒片8を開閉する一対の蓋板10を設け、頂壁6と蓋板10との間に係止機能部分を形成し、両口筒片8を切り替え使用して、内容液の注出程度を切替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル状容器体を開閉すると共に、収納されている内容液を、横方向にガイドして注出する液体注出キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シロップ、醤油、ソースなどの液体調味料を収納する、ボトル状容器体の口筒部に装着される注出キャップとして、上端部の左右両端に注出口部を突出させたものが知られている。
【特許文献1】特開2001−010650号公報
【0003】
また、粉粒体の振出し容器のキャップとして、容器体内の内容物を排出する大小二種類の振出し口が形成された、容器体の口部に装着される蓋本体と、この蓋本体の二種類の振出し口を別々に施蓋する一対の上蓋とから構成されたものが知られている。
【特許文献2】特開2002−145300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来技術にあっては、左右両方向に内容液を注出することができるので、注出操作が行い易いと云う利点があり、これにより一般的に使用されているが、内容液の注出能力が単一であるので、内容液の注出量調整が困難であり、また注出口にホコリが付着するとか、注出口付近に乾燥した内容液が付着して、不衛生となって不快感が生じることがある、と云う問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載された従来技術にあっては、大小二種類の振出し口の切替えにより、内容物の振出し程度を、大小の何れかに切替え設定することができ、これにより内容物の好適で効率の良い使用を得ることができると共に、振出し口が上蓋で覆われるので、ホコリの付着等による不快感の発生を生じることがないのであるが、蓋本体に開設された振出し口の構成からして、液体注出キャップとして使用することができない、と云う問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、口径の異なる一対の口筒片を設け、両口筒片を個々に蓋板で開閉可能とすることを技術的課題とし、もって内容液の注出程度の切替えを可能とすると共に、口筒片に対する付着物発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による液体注出キャップは、口径の異なる一対の口筒片を、左右に延出設し、この口筒片の開口部を個々に開閉する、左右一対の蓋板を設けて、構成されている。
【0008】
左右一対の口筒片は、容器体の口筒部に密装着する組付き筒壁の上端に起立連設された首筒壁から、左右に延出設されたものであり、一方が大きな口径に、他方が小さな口径に成形されている。
【0009】
左右一対の蓋板は、首筒壁の上端を塞いだ頂壁の左右端縁にヒンジを介して、上下方向に回動可能に連設されており、それゆえ各蓋板は、対向する口筒片の上方に位置することになる。
【0010】
そして、頂壁の上面と蓋板の外面とに、頂壁に対する蓋板の重なり姿勢を保持する係止機能部分を形成している。
【0011】
このように、一対の口筒片は、左右に延出して設けられているので、内容液の適正で良好な注出動作を得ることができ、またその口径が異なるので、この口筒片の使い分けにより、所望する注出程度に従った内容液の注出動作を得ることができる。
【0012】
両口筒片は、非使用状態では、その開口部が蓋板で覆われて、閉鎖されているので、開口部にホコリが付着するとか、開口部付近に残留した内容液が乾燥固化して付着することがなく、また一方が開放されている状態では、他方は蓋板で閉鎖されているので、この他方の口筒片から内容液が不正に注出される、と云う不都合の発生はない。
【0013】
両蓋板は、対向する口筒片の上方に位置するので、口筒片を開放するには、ヒンジを軸として、上昇回動変位することになるが、この際、頂壁上に重なるまで回動させ、その位置で係止機能部分により、頂壁に対する蓋板の姿勢を係止保持することにより、この蓋板が内容液の注出動作の邪魔となるのを、防止することができる。
【0014】
また、両蓋板は、上端部である頂壁の左右端にヒンジ結合されているので、注出キャップを、射出成形により合成樹脂で一体成形する際に、他の構成部分の邪魔とならない位置および姿勢に設定することが容易である。
【0015】
本発明の別の構成は、係止機能部分を、頂壁上面と蓋板外面の、一方に突設された突片と、他方に刻設された、前記突片が嵌入係止する係止溝とから構成した、ものである。
【0016】
係止機能部分を、突片と係止溝とから構成したものにあっては、開放回動した蓋板を、頂壁上に重ね、そのまま押付けることにより、突片と係止溝との係止が達成される。
【0017】
また、本発明の別の構成は、両蓋板の内面に、口筒片の開口部に密嵌入する栓片を突設した、ものである。
【0018】
蓋板の内面に栓片を突設したものにあっては、口筒片の開口部に対する栓片の密嵌入により、口筒片の確実な密閉を達成することができると共に、口筒片に対する栓片の嵌着力により、蓋板の閉姿勢を安定して維持することになる。
【0019】
また、本発明の別の構成は、組付き筒壁の一部を頂壁まで延長して側壁を形成し、閉状態で、口筒片の前後に位置して、側壁と組合さって筒壁構造を構成する、一対の側板を蓋板に一体設した、ものである。
【0020】
蓋板に一対の側板を一体設したものにあっては、閉状態では、口筒片を蓋板と側板が覆い隠すことになるので、非使用状態で、口筒片に対して他の物品が妄りに突き当たる、と云う不都合の発生を防止することができる。
【0021】
反対に、使用状態で、口筒片の前後を開放するので、注出動作時の口筒片を、直接観察することができ、これにより口筒片からの内容液の注出状態を知ることができる。
【0022】
また、本発明の別の構成は、閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにした、ものである。
【0023】
閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにしたものにあっては、口筒片が左右に延出した姿勢であるので、蓋板が垂下姿勢となった状態では、この蓋板に対して口筒片が垂直に位置することになる。
【0024】
また、本発明の別の構成は、閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにしたものにあって、蓋板に、頂壁との連結部分としてのヒンジ板を、ヒンジ結合した、ものである。
【0025】
蓋板にヒンジ板を設けたものにあっては、口筒片の延出長さに比べて頂壁が小さい場合であっても、蓋板を、閉状態で垂下姿勢となる位置に、ヒンジ板により位置させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、左右に延出した一対の口筒片を使い分けにより、良好で、所望する注出程度の注出動作を得ることができ、これにより内容液を、正確にかつ適正に注出することができる。
【0027】
また、両口筒片の開口部に対する異物の付着を防止することができるので、衛生的に不快感のない、快適な使用状態を得ることができ、また内容液の安全な注出動作を得ることができる。
【0028】
そして、口筒片を開放した蓋板は、上昇回動して、頂壁に重なった状態で係止保持されるので、内容液を注出するために容器体を傾けても、蓋板が妄りに回動変位して注出動作の邪魔となることなく、これにより安全で安定した注出動作を得ることができる。
【0029】
さらに、注出キャップを射出成形により一体成形するに際して、両蓋板を、他の構成部分に邪魔とならない位置および姿勢に設定するのが簡単であるので、注出キャップの一体成形を無理なく容易に行うことができる。
【0030】
蓋板の内面に栓片を突設したものにあっては、口筒片の確実な密閉を達成すると共に、蓋板の閉姿勢を安定して維持するので、容器体の確実で安定した密閉状態を得ることができる。
【0031】
蓋板に一対の側板を一体設したものにあっては、閉状態で、口筒片を蓋板が覆い隠すことになるので、口筒片に他の物品が妄りに突き当たるのを防止することができ、これにより安全に使用することができ、また使用状態で、内容液の注出状態を観察することができるので、正確で適正な注出動作を得ることができる。
【0032】
閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにしたものにあっては、蓋板が垂下姿勢となった状態では、この蓋板に対して口筒片が垂直となるので、下降回動してきた蓋板が口筒片先端に真正面から突き当たることになり、これにより蓋板による口筒片の開口部の密閉が、無理なく達成可能となる。
【0033】
蓋板にヒンジ板を設けたものにあっては、口筒片の延出長さに比べて頂壁が小さい場合であっても、蓋板を、閉状態で垂下姿勢となるように位置させることができるので、頂壁の大きさに左右されることなく、蓋板による口筒片の開口部の無理のない密閉を、確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0035】
本発明による注出キャップ1は、壜体状の容器体17の口筒部18に、外装して密に螺合組付きする組付き筒壁2と、この組付き筒壁2の上端に肩壁4を介して起立連設されて、内容液の導出通路を形成する首筒壁5と、この首筒壁5から左右方向に延出設されて、内容液の注出通路を形成する一対の口筒片8と、この口筒片8を開閉する一対の蓋板10と、から構成されている。
【0036】
首筒壁5の上端は頂壁6で塞がれているが、蓋板10は、この頂壁6の左右端縁にヒンジ16により、上下方向に回動可能に一体連結されている。
【0037】
頂壁6の上面と、蓋板10の、口筒片8との対向面とは反対側の外面に形成された係止機能部分は、頂壁6の上面中央に突設された突片7と、蓋板10の外面に刻設され、突片7が嵌入係止する係止溝12とから構成されている。
【0038】
組付き筒壁2の口筒部18に対する密な組付きは、口筒部18の上端面に対して、肩壁4から垂下設したシール筒片3の下端縁を、螺合を利用して密接させることにより達成している。
【0039】
両蓋板10は、閉状態では垂下姿勢となるように設けられており、口筒片8に対向する内面には、この口筒片8の開口部に密嵌入する栓片11がそれぞれ設けられている。
【0040】
また、両蓋板10には、閉状態で、口筒片8の前後に位置する側板13が一体に連設されており、この側板13を設けることにより、閉状態時における注出キャップ1の外観形状を、筒状のシンプルなものとし、また閉状態時に口筒片8を覆い隠して、他の物品との不要な接触をなくすと共に、ホコリの付着が少なくなるようにしている。
【0041】
図1〜図5に示した第一の実施形態例にあっては、組付き筒壁2およびシール筒片3の高さが大きく、その分、首筒壁5の高さが小さくなって、口筒片8が上側寄りに位置し、これにより蓋板10の高さ幅が小さいものとなっている。
【0042】
また、注出キャップ1全体の外観形状は、閉状態姿勢で、蓋板10の位置する上側部分が、球弧状に縮径するものとなっており、左右に偏平となった(図1参照)頂壁6と組付き筒壁2との間には、組付き筒壁2の一部を延長した形態で、側壁9が設けられ、この側壁9により蓋板10の側板13が左右に分けられている。
【0043】
蓋板10は、左右に偏平となっている頂壁6に対し、頂壁6および蓋板10に対してヒンジ16で結合されたヒンジ板15を介して、一体にヒンジ結合されており、このヒンジ板15に、係止溝12および側板13が設けられている。
【0044】
このように、蓋板10は、側板13およびヒンジ板15とは別に、単独で開閉回動できる構成となっているが、これは口筒片8の直上に位置するヒンジ16で開閉回動動作を行うようにするためで、これにより、口筒片8の開口部に対する栓片11の着脱が、円滑で適正なものとなるようにしている。
【0045】
図3は、口径の大きい側の口筒片8を開放した状態を示すもので、口筒片8を開放した蓋板10ごとヒンジ板15を回動反転させて、頂壁6上に重ね、そのまま係止溝12に突片7を係止させ、これによりヒンジ板15を不動に保持して、注出動作の邪魔とならないようにする。
【0046】
図5は、第一の実施形態例の注出キャップ1を、ポリプロピレン等の合成樹脂材料で一体に成形する際の、射出金型内における各構成部分の配置関係の一例を示すもので、両蓋板10側部分は、頂壁6の左右端縁から直立した姿勢で配置されており、これにより他の構成部分の邪魔となることなく、無理なく離型できる状態で配置されることになる。
【0047】
図6〜図11に示した第二の実施形態例にあっては、首筒壁5が、大きな高さを有しており、この首筒壁5の中央部分に口筒片8を設けており、頂壁6は、組付き筒壁2の外径と等しい直径の円板状となっている。
【0048】
注出キャップ1全体の外観形状は、閉状態姿勢で、有頂円筒形状をしており、この有頂円筒筒体の左右側部分を、円弧面に沿って切り取って残存した部分を側壁9(図6参照)としており、円弧面に沿って切り取られた部分が、側板13となっている。なお、各側板13の外側面には、蓋板10を開放回動させるための指掛け片14が突設されている。
【0049】
蓋板10を開放回動させるに際して、指先を両指掛け片14に引っ掛けて、引き寄せるようにして蓋板10を開放回動させる他に、図8の(a)に示すように、両指掛け片14を押し込んで、側板13の突っ張りにより、栓片11を口筒片8から抜き出し、しかる後、蓋板10を開放回動させると、栓片11の口筒片8からの抜き出しが容易となる。
【0050】
図9は、口径の小さい口筒片8を開放した状態を示すもので、口筒片8を開放した蓋板10を回動反転させて、頂壁6上に重ね、そのまま係止溝12に突片7を係止させ、これにより蓋板10を不動に保持して、注出動作の邪魔とならないようにする。
【0051】
図11は、第二の実施形態例の注出キャップ1を、合成樹脂材料で一体に成形する際の、射出金型内における各構成部分の配置関係の一例を示すもので、両蓋板10は、頂壁6の左右端縁から直立した姿勢で配置されており、これにより他の構成部分の邪魔となることなく、無理なく離型できる状態で配置されることになる。
【0052】
図12〜図16に示した第三の実施形態例にあっては、全体が、第二の実施形態例と略同じ構成となっているが、両口筒片8がやや上位に位置しているのと、蓋板10と側板13の組合わせ物の高さ幅が小さくなっていて、閉状態で、蓋板10の下側に空間が形成される点が違っている。
【0053】
図14に示す注出動作時の姿勢から明らかなように、蓋板10は、頂壁6に重ねられた際に、外面に設けた係止溝12を、頂壁6の突片7に対向させることができる高さ幅で成形されている。
【0054】
図16は、第三の実施形態例の注出キャップ1を、合成樹脂材料で一体に成形する際の、射出金型内における各構成部分の配置関係の一例を示すもので、第二の実施形態例と同様に、両蓋板10は、頂壁6の左右端縁から直立した姿勢で配置されており、これにより他の構成部分の邪魔となることなく、無理なく離型できる状態で配置されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第一の実施形態例の、全体外観斜視図である。
【図2】図1に示した実施形態例の、閉状態での全体縦断面図である。
【図3】図1に示した実施形態例の、開状態での全体縦断面図である。
【図4】図2に示した状態での、全体平面図である。
【図5】図1の実施形態例の、射出成形時の配置例の全体縦断面図である。
【図6】第二の実施形態例の、全体外観斜視図である。
【図7】図6に示した実施形態例の、閉状態での全体縦断面図である。
【図8】図6に示した実施形態例の、開放手順の一例を示す説明図である。
【図9】図6に示した実施形態例の、開状態での全体縦断面図である。
【図10】図7に示した状態での、全体平面図である。
【図11】図6の実施形態例の、射出成形時の配置例の全体縦断面図である。
【図12】第三の実施形態例の、全体外観斜視図である。
【図13】図12に示した実施形態例の、閉状態での全体縦断面図である。
【図14】図12に示した実施形態例の、開状態での全体縦断面図である。
【図15】図13に示した状態での、全体平面図である。
【図16】図12の実施形態例の、射出成形時の配置例の全体縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ;注出キャップ
2 ;組付き筒壁
3 ;シール筒片
4 ;肩壁
5 ;首筒壁
6 ;頂壁
7 ;突片
8 ;口筒片
9 ;側壁
10;蓋板
11;栓片
12;係止溝
13;側板
14;指掛け片
15;ヒンジ板
16;ヒンジ
17;容器体
18;口筒部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル状容器体を開閉すると共に、収納されている内容液を、横方向にガイドして注出する液体注出キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シロップ、醤油、ソースなどの液体調味料を収納する、ボトル状容器体の口筒部に装着される注出キャップとして、上端部の左右両端に注出口部を突出させたものが知られている。
【特許文献1】特開2001−010650号公報
【0003】
また、粉粒体の振出し容器のキャップとして、容器体内の内容物を排出する大小二種類の振出し口が形成された、容器体の口部に装着される蓋本体と、この蓋本体の二種類の振出し口を別々に施蓋する一対の上蓋とから構成されたものが知られている。
【特許文献2】特開2002−145300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来技術にあっては、左右両方向に内容液を注出することができるので、注出操作が行い易いと云う利点があり、これにより一般的に使用されているが、内容液の注出能力が単一であるので、内容液の注出量調整が困難であり、また注出口にホコリが付着するとか、注出口付近に乾燥した内容液が付着して、不衛生となって不快感が生じることがある、と云う問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載された従来技術にあっては、大小二種類の振出し口の切替えにより、内容物の振出し程度を、大小の何れかに切替え設定することができ、これにより内容物の好適で効率の良い使用を得ることができると共に、振出し口が上蓋で覆われるので、ホコリの付着等による不快感の発生を生じることがないのであるが、蓋本体に開設された振出し口の構成からして、液体注出キャップとして使用することができない、と云う問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、口径の異なる一対の口筒片を設け、両口筒片を個々に蓋板で開閉可能とすることを技術的課題とし、もって内容液の注出程度の切替えを可能とすると共に、口筒片に対する付着物発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による液体注出キャップは、口径の異なる一対の口筒片を、左右に延出設し、この口筒片の開口部を個々に開閉する、左右一対の蓋板を設けて、構成されている。
【0008】
左右一対の口筒片は、容器体の口筒部に密装着する組付き筒壁の上端に起立連設された首筒壁から、左右に延出設されたものであり、一方が大きな口径に、他方が小さな口径に成形されている。
【0009】
左右一対の蓋板は、首筒壁の上端を塞いだ頂壁の左右端縁にヒンジを介して、上下方向に回動可能に連設されており、それゆえ各蓋板は、対向する口筒片の上方に位置することになる。
【0010】
そして、頂壁の上面と蓋板の外面とに、頂壁に対する蓋板の重なり姿勢を保持する係止機能部分を形成している。
【0011】
このように、一対の口筒片は、左右に延出して設けられているので、内容液の適正で良好な注出動作を得ることができ、またその口径が異なるので、この口筒片の使い分けにより、所望する注出程度に従った内容液の注出動作を得ることができる。
【0012】
両口筒片は、非使用状態では、その開口部が蓋板で覆われて、閉鎖されているので、開口部にホコリが付着するとか、開口部付近に残留した内容液が乾燥固化して付着することがなく、また一方が開放されている状態では、他方は蓋板で閉鎖されているので、この他方の口筒片から内容液が不正に注出される、と云う不都合の発生はない。
【0013】
両蓋板は、対向する口筒片の上方に位置するので、口筒片を開放するには、ヒンジを軸として、上昇回動変位することになるが、この際、頂壁上に重なるまで回動させ、その位置で係止機能部分により、頂壁に対する蓋板の姿勢を係止保持することにより、この蓋板が内容液の注出動作の邪魔となるのを、防止することができる。
【0014】
また、両蓋板は、上端部である頂壁の左右端にヒンジ結合されているので、注出キャップを、射出成形により合成樹脂で一体成形する際に、他の構成部分の邪魔とならない位置および姿勢に設定することが容易である。
【0015】
本発明の別の構成は、係止機能部分を、頂壁上面と蓋板外面の、一方に突設された突片と、他方に刻設された、前記突片が嵌入係止する係止溝とから構成した、ものである。
【0016】
係止機能部分を、突片と係止溝とから構成したものにあっては、開放回動した蓋板を、頂壁上に重ね、そのまま押付けることにより、突片と係止溝との係止が達成される。
【0017】
また、本発明の別の構成は、両蓋板の内面に、口筒片の開口部に密嵌入する栓片を突設した、ものである。
【0018】
蓋板の内面に栓片を突設したものにあっては、口筒片の開口部に対する栓片の密嵌入により、口筒片の確実な密閉を達成することができると共に、口筒片に対する栓片の嵌着力により、蓋板の閉姿勢を安定して維持することになる。
【0019】
また、本発明の別の構成は、組付き筒壁の一部を頂壁まで延長して側壁を形成し、閉状態で、口筒片の前後に位置して、側壁と組合さって筒壁構造を構成する、一対の側板を蓋板に一体設した、ものである。
【0020】
蓋板に一対の側板を一体設したものにあっては、閉状態では、口筒片を蓋板と側板が覆い隠すことになるので、非使用状態で、口筒片に対して他の物品が妄りに突き当たる、と云う不都合の発生を防止することができる。
【0021】
反対に、使用状態で、口筒片の前後を開放するので、注出動作時の口筒片を、直接観察することができ、これにより口筒片からの内容液の注出状態を知ることができる。
【0022】
また、本発明の別の構成は、閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにした、ものである。
【0023】
閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにしたものにあっては、口筒片が左右に延出した姿勢であるので、蓋板が垂下姿勢となった状態では、この蓋板に対して口筒片が垂直に位置することになる。
【0024】
また、本発明の別の構成は、閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにしたものにあって、蓋板に、頂壁との連結部分としてのヒンジ板を、ヒンジ結合した、ものである。
【0025】
蓋板にヒンジ板を設けたものにあっては、口筒片の延出長さに比べて頂壁が小さい場合であっても、蓋板を、閉状態で垂下姿勢となる位置に、ヒンジ板により位置させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、左右に延出した一対の口筒片を使い分けにより、良好で、所望する注出程度の注出動作を得ることができ、これにより内容液を、正確にかつ適正に注出することができる。
【0027】
また、両口筒片の開口部に対する異物の付着を防止することができるので、衛生的に不快感のない、快適な使用状態を得ることができ、また内容液の安全な注出動作を得ることができる。
【0028】
そして、口筒片を開放した蓋板は、上昇回動して、頂壁に重なった状態で係止保持されるので、内容液を注出するために容器体を傾けても、蓋板が妄りに回動変位して注出動作の邪魔となることなく、これにより安全で安定した注出動作を得ることができる。
【0029】
さらに、注出キャップを射出成形により一体成形するに際して、両蓋板を、他の構成部分に邪魔とならない位置および姿勢に設定するのが簡単であるので、注出キャップの一体成形を無理なく容易に行うことができる。
【0030】
蓋板の内面に栓片を突設したものにあっては、口筒片の確実な密閉を達成すると共に、蓋板の閉姿勢を安定して維持するので、容器体の確実で安定した密閉状態を得ることができる。
【0031】
蓋板に一対の側板を一体設したものにあっては、閉状態で、口筒片を蓋板が覆い隠すことになるので、口筒片に他の物品が妄りに突き当たるのを防止することができ、これにより安全に使用することができ、また使用状態で、内容液の注出状態を観察することができるので、正確で適正な注出動作を得ることができる。
【0032】
閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにしたものにあっては、蓋板が垂下姿勢となった状態では、この蓋板に対して口筒片が垂直となるので、下降回動してきた蓋板が口筒片先端に真正面から突き当たることになり、これにより蓋板による口筒片の開口部の密閉が、無理なく達成可能となる。
【0033】
蓋板にヒンジ板を設けたものにあっては、口筒片の延出長さに比べて頂壁が小さい場合であっても、蓋板を、閉状態で垂下姿勢となるように位置させることができるので、頂壁の大きさに左右されることなく、蓋板による口筒片の開口部の無理のない密閉を、確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0035】
本発明による注出キャップ1は、壜体状の容器体17の口筒部18に、外装して密に螺合組付きする組付き筒壁2と、この組付き筒壁2の上端に肩壁4を介して起立連設されて、内容液の導出通路を形成する首筒壁5と、この首筒壁5から左右方向に延出設されて、内容液の注出通路を形成する一対の口筒片8と、この口筒片8を開閉する一対の蓋板10と、から構成されている。
【0036】
首筒壁5の上端は頂壁6で塞がれているが、蓋板10は、この頂壁6の左右端縁にヒンジ16により、上下方向に回動可能に一体連結されている。
【0037】
頂壁6の上面と、蓋板10の、口筒片8との対向面とは反対側の外面に形成された係止機能部分は、頂壁6の上面中央に突設された突片7と、蓋板10の外面に刻設され、突片7が嵌入係止する係止溝12とから構成されている。
【0038】
組付き筒壁2の口筒部18に対する密な組付きは、口筒部18の上端面に対して、肩壁4から垂下設したシール筒片3の下端縁を、螺合を利用して密接させることにより達成している。
【0039】
両蓋板10は、閉状態では垂下姿勢となるように設けられており、口筒片8に対向する内面には、この口筒片8の開口部に密嵌入する栓片11がそれぞれ設けられている。
【0040】
また、両蓋板10には、閉状態で、口筒片8の前後に位置する側板13が一体に連設されており、この側板13を設けることにより、閉状態時における注出キャップ1の外観形状を、筒状のシンプルなものとし、また閉状態時に口筒片8を覆い隠して、他の物品との不要な接触をなくすと共に、ホコリの付着が少なくなるようにしている。
【0041】
図1〜図5に示した第一の実施形態例にあっては、組付き筒壁2およびシール筒片3の高さが大きく、その分、首筒壁5の高さが小さくなって、口筒片8が上側寄りに位置し、これにより蓋板10の高さ幅が小さいものとなっている。
【0042】
また、注出キャップ1全体の外観形状は、閉状態姿勢で、蓋板10の位置する上側部分が、球弧状に縮径するものとなっており、左右に偏平となった(図1参照)頂壁6と組付き筒壁2との間には、組付き筒壁2の一部を延長した形態で、側壁9が設けられ、この側壁9により蓋板10の側板13が左右に分けられている。
【0043】
蓋板10は、左右に偏平となっている頂壁6に対し、頂壁6および蓋板10に対してヒンジ16で結合されたヒンジ板15を介して、一体にヒンジ結合されており、このヒンジ板15に、係止溝12および側板13が設けられている。
【0044】
このように、蓋板10は、側板13およびヒンジ板15とは別に、単独で開閉回動できる構成となっているが、これは口筒片8の直上に位置するヒンジ16で開閉回動動作を行うようにするためで、これにより、口筒片8の開口部に対する栓片11の着脱が、円滑で適正なものとなるようにしている。
【0045】
図3は、口径の大きい側の口筒片8を開放した状態を示すもので、口筒片8を開放した蓋板10ごとヒンジ板15を回動反転させて、頂壁6上に重ね、そのまま係止溝12に突片7を係止させ、これによりヒンジ板15を不動に保持して、注出動作の邪魔とならないようにする。
【0046】
図5は、第一の実施形態例の注出キャップ1を、ポリプロピレン等の合成樹脂材料で一体に成形する際の、射出金型内における各構成部分の配置関係の一例を示すもので、両蓋板10側部分は、頂壁6の左右端縁から直立した姿勢で配置されており、これにより他の構成部分の邪魔となることなく、無理なく離型できる状態で配置されることになる。
【0047】
図6〜図11に示した第二の実施形態例にあっては、首筒壁5が、大きな高さを有しており、この首筒壁5の中央部分に口筒片8を設けており、頂壁6は、組付き筒壁2の外径と等しい直径の円板状となっている。
【0048】
注出キャップ1全体の外観形状は、閉状態姿勢で、有頂円筒形状をしており、この有頂円筒筒体の左右側部分を、円弧面に沿って切り取って残存した部分を側壁9(図6参照)としており、円弧面に沿って切り取られた部分が、側板13となっている。なお、各側板13の外側面には、蓋板10を開放回動させるための指掛け片14が突設されている。
【0049】
蓋板10を開放回動させるに際して、指先を両指掛け片14に引っ掛けて、引き寄せるようにして蓋板10を開放回動させる他に、図8の(a)に示すように、両指掛け片14を押し込んで、側板13の突っ張りにより、栓片11を口筒片8から抜き出し、しかる後、蓋板10を開放回動させると、栓片11の口筒片8からの抜き出しが容易となる。
【0050】
図9は、口径の小さい口筒片8を開放した状態を示すもので、口筒片8を開放した蓋板10を回動反転させて、頂壁6上に重ね、そのまま係止溝12に突片7を係止させ、これにより蓋板10を不動に保持して、注出動作の邪魔とならないようにする。
【0051】
図11は、第二の実施形態例の注出キャップ1を、合成樹脂材料で一体に成形する際の、射出金型内における各構成部分の配置関係の一例を示すもので、両蓋板10は、頂壁6の左右端縁から直立した姿勢で配置されており、これにより他の構成部分の邪魔となることなく、無理なく離型できる状態で配置されることになる。
【0052】
図12〜図16に示した第三の実施形態例にあっては、全体が、第二の実施形態例と略同じ構成となっているが、両口筒片8がやや上位に位置しているのと、蓋板10と側板13の組合わせ物の高さ幅が小さくなっていて、閉状態で、蓋板10の下側に空間が形成される点が違っている。
【0053】
図14に示す注出動作時の姿勢から明らかなように、蓋板10は、頂壁6に重ねられた際に、外面に設けた係止溝12を、頂壁6の突片7に対向させることができる高さ幅で成形されている。
【0054】
図16は、第三の実施形態例の注出キャップ1を、合成樹脂材料で一体に成形する際の、射出金型内における各構成部分の配置関係の一例を示すもので、第二の実施形態例と同様に、両蓋板10は、頂壁6の左右端縁から直立した姿勢で配置されており、これにより他の構成部分の邪魔となることなく、無理なく離型できる状態で配置されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第一の実施形態例の、全体外観斜視図である。
【図2】図1に示した実施形態例の、閉状態での全体縦断面図である。
【図3】図1に示した実施形態例の、開状態での全体縦断面図である。
【図4】図2に示した状態での、全体平面図である。
【図5】図1の実施形態例の、射出成形時の配置例の全体縦断面図である。
【図6】第二の実施形態例の、全体外観斜視図である。
【図7】図6に示した実施形態例の、閉状態での全体縦断面図である。
【図8】図6に示した実施形態例の、開放手順の一例を示す説明図である。
【図9】図6に示した実施形態例の、開状態での全体縦断面図である。
【図10】図7に示した状態での、全体平面図である。
【図11】図6の実施形態例の、射出成形時の配置例の全体縦断面図である。
【図12】第三の実施形態例の、全体外観斜視図である。
【図13】図12に示した実施形態例の、閉状態での全体縦断面図である。
【図14】図12に示した実施形態例の、開状態での全体縦断面図である。
【図15】図13に示した状態での、全体平面図である。
【図16】図12の実施形態例の、射出成形時の配置例の全体縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ;注出キャップ
2 ;組付き筒壁
3 ;シール筒片
4 ;肩壁
5 ;首筒壁
6 ;頂壁
7 ;突片
8 ;口筒片
9 ;側壁
10;蓋板
11;栓片
12;係止溝
13;側板
14;指掛け片
15;ヒンジ板
16;ヒンジ
17;容器体
18;口筒部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体の口筒部に密装着する組付き筒壁と、該組付き筒壁の上端に起立連設され、上端を頂壁で塞いだ首筒壁と、該首筒壁から左右に延出設された、口径の異なる一対の口筒片と、前記頂壁にヒンジを介して、上下方向に回動可能に連設され、前記口筒片を開閉する左右一対の蓋板と、から構成され、前記頂壁上面と蓋板外面とに係止機能部分を形成した液体注出キャップ。
【請求項2】
係止機能部分を、頂壁上面と蓋板外面の、一方に突設された突片と、他方に刻設された、前記突片が嵌入係止する係止溝とから構成した請求項1記載の液体注出キャップ。
【請求項3】
両蓋板の内面に、口筒片の開口部に密嵌入する栓片を突設した請求項1または2記載の液体注出キャップ。
【請求項4】
組付き筒壁の一部を頂壁まで延長して側壁を形成し、閉状態で、口筒片の前後に位置して、前記側壁と組合さって筒壁構造を構成する、一対の側板を蓋板に一体設した請求項1から3のいずれかに記載の液体注出キャップ。
【請求項5】
閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにした請求項1から4のいずれかに記載の液体注出キャップ。
【請求項6】
蓋板に、頂壁との連結部分としてのヒンジ板を、ヒンジ結合した請求項5記載の液体注出キャップ。
【請求項1】
容器体の口筒部に密装着する組付き筒壁と、該組付き筒壁の上端に起立連設され、上端を頂壁で塞いだ首筒壁と、該首筒壁から左右に延出設された、口径の異なる一対の口筒片と、前記頂壁にヒンジを介して、上下方向に回動可能に連設され、前記口筒片を開閉する左右一対の蓋板と、から構成され、前記頂壁上面と蓋板外面とに係止機能部分を形成した液体注出キャップ。
【請求項2】
係止機能部分を、頂壁上面と蓋板外面の、一方に突設された突片と、他方に刻設された、前記突片が嵌入係止する係止溝とから構成した請求項1記載の液体注出キャップ。
【請求項3】
両蓋板の内面に、口筒片の開口部に密嵌入する栓片を突設した請求項1または2記載の液体注出キャップ。
【請求項4】
組付き筒壁の一部を頂壁まで延長して側壁を形成し、閉状態で、口筒片の前後に位置して、前記側壁と組合さって筒壁構造を構成する、一対の側板を蓋板に一体設した請求項1から3のいずれかに記載の液体注出キャップ。
【請求項5】
閉状態では、蓋板が垂下姿勢となるようにした請求項1から4のいずれかに記載の液体注出キャップ。
【請求項6】
蓋板に、頂壁との連結部分としてのヒンジ板を、ヒンジ結合した請求項5記載の液体注出キャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−207863(P2008−207863A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48495(P2007−48495)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】
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