液体混注具
【課題】 薬液等の逆流を防止することができるとともに、複数の管のうちの任意の管を連通させたり、遮断させたりするための操作が容易になる液体混注具を提供すること。
【解決手段】 チャンバー部11にそれぞれ接続された上流管13、下流管14および合流管とを備えた液体混注具Aにおける上流管13内にチューブ24を配置するとともに、押圧されることによりチューブ24を閉塞する押圧部23を上流管13に設けた。また、押圧部23を、チューブ24を挟んで2個設けた。さらに、押圧部23を、一端が液体混注具本体10の外部に支持された揺動片22の他端に設けた。そして、チューブ24の上流端を固定部材25を介して上流管13の内周面に固定した。
【解決手段】 チャンバー部11にそれぞれ接続された上流管13、下流管14および合流管とを備えた液体混注具Aにおける上流管13内にチューブ24を配置するとともに、押圧されることによりチューブ24を閉塞する押圧部23を上流管13に設けた。また、押圧部23を、チューブ24を挟んで2個設けた。さらに、押圧部23を、一端が液体混注具本体10の外部に支持された揺動片22の他端に設けた。そして、チューブ24の上流端を固定部材25を介して上流管13の内周面に固定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流管からチャンバー部を介して下流管に液体を送る流路と、合流管からチャンバー部を介して下流管に他の液体を送る流路とを備えた液体混注具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液チューブを用いて患者の体内に所定の生理食塩水や薬液等の液体を供給することが行われている。このような場合に、輸液チューブ内を流れる液体の流量を調節するための適量供給装置を用いることがある(例えば、特許文献1参照)。この適量供給装置は、下部がバルブ室に形成された内壁と、バルブ室の両側からそれぞれ外部に向かって延びる穿孔を備えた二つの管継ぎ手とからなる本体と、本体の内壁内に回転可能に配置された可動部分とで構成されている。そして、本体の二つの管継ぎ手は、互いの中心軸線を上下にずらして形成され、可動部分の下部は傾斜面に形成されている。このため、可動部分を回転させることにより、可動部分で二つの管継ぎ手の穿孔の開度を変更させながら穿孔を開閉することができる。これによって、一方の管継ぎ手からバルブ室を介して他方の管継ぎ手に送られる液体の流量を任意に調節することができる。
【特許文献1】特開昭62−172962号公報
【発明の開示】
【0003】
しかしながら、前述した適量供給装置は、1種類の液体を体内に供給するための輸液チューブに用いられるもので、複数の液体を体内に供給する輸液チューブに用いることはできない。このため、複数の輸液チューブ間を連通させたり遮断させたりすることにより、複数の液体を患者に供給することができる液体混注具も開発されている。このような複数の液体を供給できる液体混注具では、一方の液体を供給しているときに、他方の液体も一緒に供給しようとすると、他方の液体が逆流して一方の液体を供給するための管の上流側に浸入することがある。このような液体の逆流を防止するために、弁体を回転して流路を切り換えることにより任意の液体の供給ができるようにした液体混注具も開発されている。しかしながら、従来の液体混注具では、弁体を回転して複数の管のうちの任意の管を連通させたり遮断させたりするため、流路の切り換えの操作が面倒である。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的は、薬液等の液体の逆流を防止することができるとともに、複数の管のうちの任意の管を連通させたり、遮断させたりするための操作が容易になる液体混注具を提供することにある。
【0005】
前述した目的を達成するため、本発明に係る液体混注具の構成上の特徴は、チャンバー部に液体を送る上流管と、チャンバー部から液体が送られる下流管と、チャンバー部に他の液体を送る合流管とを備えた液体混注具本体と、上流管内に配置され、上流管からチャンバー部に送られる液体を内部に通過させる可撓性チューブと、上流管の外部側から内部側に延び、上流管内に押圧されることにより可撓性チューブを閉塞する押圧部とを備えたことにある。
【0006】
このように構成した本発明に係る液体混注具は、チャンバー部にそれぞれ連通する上流管、下流管および合流管を備えている。また、上流管内には、上流管からチャンバー部に送られる液体を通過させる可撓性チューブが配置され、押圧部を押圧操作することによりこの可撓性チューブを閉塞することができる。このため、上流管からチャンバー部を介して下流管に薬液等の液体を送ることができるとともに、合流管からチャンバー部を介して下流管に他の薬液等の液体を送ることができる。そして、押圧部を押圧したりその押圧を解除したりすることにより、2種類の液体のうちの上流管からチャンバー部を介して下流管に送られる液体の供給を停止させたり再開させたりすることができる。
【0007】
これによって、患者の体に1種類の液体を供給したり、2種類の液体を供給したりすることができる。また、押圧部を押圧操作して可撓性チューブを閉塞した状態で、合流管側からチャンバー部を介して下流管側に他方の液体を供給すると、その液体は上流管側に逆流することなく、下流管側に流れていく。このため、可撓性チューブを閉塞した状態で、必要量の他の液体を合流管側から下流管側に供給したのちに、押圧部の押圧を解除すると、可撓性チューブの両端開口が連通して上流管側から下流管側に一方の液体が流れ合流管側から供給される他方の液体と一緒に患者の体に向って流れるようになる。これによって、任意の液体が適正な状態で患者の体に供給されるようになる。
【0008】
また、合流管にゴム栓を取り付けて合流管とチャンバー部との間の流路を遮断し、ゴム栓に円筒状の針やシリンジ等を刺すことによって合流管とチャンバー部との間に流路を形成できるようにすることが好ましい。これによると、可撓性チューブによって上流管とチャンバー部との間の部分を連通させたり遮断させたりすることができる他、合流管からチャンバー部に通じる流路を遮断させたり連通させたりすることもできる。また、可撓性チューブは、円筒形の形状に復元する弾性を備えた材料で構成することが好ましいが、弾性復元力のない材料で構成することもできる。この場合、液体の流れによって、チューブは円筒形になり、押圧部の押圧により押圧された部分が互いに圧接して閉塞する。
【0009】
また、本発明に係る液体混注具の他の構成上の特徴は、押圧部を、可撓性チューブを挟んで2個設けたことにある。これによると、押圧操作が、両押圧部を親指と人差し指とで挟んで押し付けるだけで済むため簡単になる。
【0010】
また、本発明に係る液体混注具のさらに他の構成上の特徴は、押圧部を、一端が液体混注具本体の外部に支持された揺動片の他端に設けたことにある。これによると、押圧部を押圧操作する際に、押圧部でなく揺動片に指を当てることができ、指に接触する揺動片の面積を大きくすることができるため押圧操作がし易くなる。また、揺動片は、通常は液体混注具本体の外面から所定間隔を保った位置にあり、押圧操作されたときだけ液体混注具本体側に撓む弾性体で構成することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る液体混注具のさらに他の構成上の特徴は、可撓性チューブの上流端を円筒状の固定部材を介して上流管の内周面に固定したことにある。これによると、可撓性チューブを強固に上流管の内周面に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る液体混注具を図面を用いて詳しく説明する。図1ないし図5は、同実施形態に係る液体混注具Aを示しており、この液体混注具Aは、液体混注具本体10と、開閉操作部20とで構成されている。液体混注具本体10は、軸方向の長さが短い略円筒状に形成されその軸方向を上下に向けて配置されたチャンバー部11(図6ないし図8参照)と、チャンバー部11の上方に設けられた合流管12と、チャンバー部11の左右両側に180度の角度を保って同軸に沿って延びる上流管13および下流管14とで構成されている。
【0013】
チャンバー部11は、下面が閉塞され、上端が開口した有底円筒状に形成されている。そして、チャンバー部11の外周に、平面視が略四角形に形成され、正面と後面とに開口部が設けられた枠状の取付部21が形成されている。また、図6および図7に示したように、チャンバー部11の軸方向の中央よりもやや下部側における左右の対向する部分に、それぞれ連通穴15a,15bが形成されている。チャンバー部11における連通穴15aに対応する部分には、上流管13が設けられており、連通穴15aを介して上流管13の内部に形成された流路13aとチャンバー部11の内部とが連通している。チャンバー部11における連通穴15bに対応する部分には、下流管14が設けられており、連通穴15bを介してチャンバー部11の内部と下流管14の内部に形成された流路14aとが連通している。
【0014】
これらのチャンバー部11、上流管13、下流管14および取付部21は一体的に形成されている。また、上流管13の内部に形成された流路13aの開口側部分は、チャンバー部11側の直径が小さく、開口に近づくにしたがって直径が徐々に大きくなったテーパ状に形成されている。すなわち、上流管13は雌ルアー形状に形成されている。そして、上流管13の開口部の外周には、連結用のねじ部13bが形成されている。下流管14は、チャンバー部11側に位置する基端部14bと、先端側に位置し基端部14bよりも細く形成された雄ルアー部14cとで構成されている。また、雄ルアー部14cは基端部14b側よりも先端側の方が徐々に細くなった先細り状に形成されている。
【0015】
チャンバー部11の上部に位置する円筒状開口部の周囲には、円筒状の被係合部11aが、チャンバー部11の上部の円筒状開口部と間隔を保って形成されている。そして、チャンバー部11内には、チャンバー部11の内部底面における左右方向(図6および図7の左右方向)の略中央から上方に向って延びる縦壁16が設けられている。この縦壁16は、チャンバー部11内における流路13a側部分と流路14a側部分とを結ぶ方向に直交する幅方向の中央側部分を遮るようにして設けられ、上端部はチャンバー部11の上端近傍まで延びている。
【0016】
合流管12は、チャンバー部11の円筒状開口部の上端部に取り付けられた天然ゴムまたは合成ゴムからなるゴム栓17と、ゴム栓17の外周部に取り付けられてゴム栓17をチャンバー部11の円筒状開口部の上端部に固定するキャップ部材18とで構成されている。ゴム栓17は、肉厚円板状の栓本体17aと、栓本体17aの下端両側から延びる略帯状の一対の固定片17bとで構成されている。このゴム栓17は、両固定片17bをチャンバー部11の円筒状開口部の上端部外周に位置させ、さらにその外周にキャップ部材18を取り付けることにより固定されている。
【0017】
キャップ部材18は、下部のチャンバー部11に係合する部分の直径が大きく、上部の直径が小さくなった二段状の円筒体で構成されている。そして、大径部分の上部で固定片17bをチャンバー部11の円筒状開口部に押圧した状態で、大径部分の下部を、チャンバー部11の円筒状開口部と被係合部11aとの間に差し込むことにより、キャップ部材18は、チャンバー部11に固定されている。また、キャップ部材18の上部の細径部分上端は開口しており、キャップ部材18は、上端からゴム栓17の上部を突出させゴム栓17がキャップ部材18内に入り込むことを防止した状態でゴム栓17を内部に固定している。また、このゴム栓17には、外部側とチャンバー部11内とを連通させるためのスリット17cが設けられている。
【0018】
このスリット17cは、通常は、ゴム栓17の弾性によって閉塞された状態になる。そして、外部側とチャンバー部11内とを連通させる時には、ゴム栓17のスリット17cに、コネクター等(図示せず)を差し込むことによりコネクター等を介して流路を形成することができる。このコネクターは、例えば、内部に流路が形成された雄ルアー部を備えたもので構成し、雄ルアー部をゴム栓17のスリット17c内に差し込むことによりコネクターとチャンバー部11の内部とを連通させることができる。また、その際、雄ルアー部とスリット17cの周面との間は、ゴム栓17の弾性によって密着状態になる。
【0019】
開閉操作部20は、チャンバー部11の外周に形成された取付部21と、取付部21に連結された揺動片22と押圧部23とからなる一対の操作部、上流管13内に設置された可撓性を備えたチューブ24と、チューブ24を上流管13内に固定する固定部材25とで構成されている。取付部21は、左右に長く、高さよりも前後の幅がやや大きくなった略四角箱状体で構成されている。そして、その略四角箱状体の正面と後面とに左右に長い四角形の開口が形成されている。また、取付部21の底面は、左右方向の中央側が上方に湾曲した曲面に形成され、その所定部分に空間部が形成されている。
【0020】
この空間部は、取付部21の底面部分だけでなく、チャンバー部11の下部にも連続して形成されており、その一部は縦壁16の下面から内部側にかけて延びている。この空間部を設けることによって、取付部21を成形する際に、ひけの発生を防止できるとともに、使用する成形材料を少量にすることができる。また、取付部21の前後の両開口における下流管14側の縁部に揺動片22の基端部がそれぞれ連結されている。両揺動片22は、基端部を開口縁部に接続させた状態で、基端部を中心として、取付部21の開口周縁部と取付部21の内部側との間で回転可能に取り付けられている。
【0021】
押圧部23は、それぞれ揺動片22の先端部に揺動片22と一体的に形成されており、揺動片22と直交して取付部21の内部側に延びている。また、上流管13における両押圧部23の先端に対向する部分には、上流管13の外周面から内周面に貫通する挿通穴13cが形成されており、両押圧部23の先端部は、挿通穴13c内に位置している。揺動片22を押圧しないときには、押圧部23の先端部は、上流管13の内周面上に位置しているが、揺動片22を押圧すると、押圧部23の先端部は、上流管13の内部側に進入していく。
【0022】
また、揺動片22の内面における上下の幅方向の両側には、揺動片22の基端側から押圧部23に延びる補強用の板状リブ22aがそれぞれ形成されている。板状リブ22aは、揺動片22の基端側に位置する部分の板面の幅(前後方向の幅)が、押圧部23側に位置する部分の板面の幅よりも大きくなっておりその境界部に段部が形成されている。また、板状リブ22aの幅広部分とチャンバー部11の外周面との間には小さな間隔が設けられ、板状リブ22aの幅狭部分と上流管13の外周面との間には、幅広部分とチャンバー部11との間隔よりも大きな間隔が設けられている。
【0023】
そして、板状リブ22aの幅広部分の先端には、フック状の係合部22bが形成され、チャンバー部11の外周面には、係合部22bと係合して揺動片22が、取付部21の外部に突出することを防止する被係合部11bが形成されている。このため、揺動片22は、取付部21の内部側に撓むことはできるが、取付部21の外部に突出することはできない。また、チャンバー部11の被係合部11bにおける板状リブ22aの段部に対向する部分は、その段部と摺動可能に係合するガイド部に形成されている。
【0024】
チューブ24は、可撓性を備えた軟質プラスチックからなる円筒体で構成されている。そして、このチューブ24は、流路13a内における上流管13の左右方向の略中央からチャンバー部11にかけての部分に、上流管13の内周面に密着した状態で設置されており、上流端が固定部材25によって上流管13の内周面に固定されている。固定部材25は、基端側が先端側よりも大径になった二段状の円筒体で構成されており、大径の基端側を上流側に位置させ、細径の先端側を下流側に位置させた状態で上流管13内に設置されている。すなわち、固定部材25は先端側部分をチューブ24の上流端側部分の内部に挿入し、先端側部分の外周面と上流管13の内周面とでチューブの上流端側部分を挟むことにより、チューブ24を固定している。そして、固定部材25は基端側部分を上流管13の内周面に圧接させることにより上流管13内に固定されている。
【0025】
このため、図9に示したように、揺動片22の先端側をそれぞれ取付部21の内部側に押圧すると、両揺動片22の先端側部分と押圧部23は、互いに接近して図10ないし図12に示した状態になる。これによって、チューブ24における両押圧部23で挟まれた部分24aは互いに圧接して、上流管13の流路13aとチャンバー部11の内部との間の流路を閉塞する。この両揺動片22を押圧操作するとき、板状リブ22aの段部は、チャンバー部11の被係合部11bにおけるガイド部にガイドされるため、揺動片22および押圧部23はスムーズに移動する。
【0026】
また、両揺動片22を取付部21の内部側に押圧する力を解除すると、チューブ24は元の円筒状の形状に復元しようとし、このチューブ24の復元力によって両揺動片22の先端側部分と両押圧部23とは互いに離れて図6ないし図8に示した状態になる。そして、チューブ24が元の円筒状の形状に復元すると、上流管13の流路13aとチャンバー部11の内部との間が連通する。この場合、上流管13側からチャンバー部11側に薬液等を供給すると、その薬液等は、流路13aからチャンバー部11内に流れ縦壁16を乗り越えたのちにチャンバー部11内から下流管14の流路14a内に流れていく。この際、縦壁16が薬液等の逆流を防止するとともに、薬液等をチャンバー部11内の上部側を通過させることにより、チャンバー部11内に空気が滞留することを防止する。
【0027】
この構成において、所定の薬液を患者(図示せず)の体内に供給する場合には、下流管14に、患者に穿刺して留置するための留置針が接続された輸液チューブ(図示せず)の後端部である雌ルアー部を接続する。また、上流管13には、患者に供給する薬液を収容する容器等から延びる輸液チューブの先端部に設けられた雄ルアー部を接続する。そして、留置針を患者の体に穿刺して留置した状態で、容器等の薬液を患者に向けて送り出すことにより患者への薬液の供給が行われる。また、容器等から供給される薬液に加えて、他の薬液を患者に供給する場合には、コネクターに接続された輸液チューブを介して、他の薬液を合流管12からチャンバー部11内に注入する。
【0028】
この場合、合流管12におけるゴム栓17のスリット17c内にコネクターを挿し込むと、コネクターと下流管14とがチャンバー部11内の流路を介して連通するため、コネクター側から薬液を注入することによりこの薬液の患者への供給が行える。このとき、揺動片22の先端側を取付部21の内部側に押し込んで、図10および図11に示したようにチューブ24を閉塞することができる。これによって、容器等から上流管13を介してチャンバー部11内に供給される薬液の流れが停止するとともに、合流管12からチャンバー部11内に注入される薬液は、上流管13側に逆流することを防止されて確実に下流管14側に流れていく。
【0029】
また、コネクター側からの薬液の注入が終了したのちに、揺動片22の押圧を解除すると、チューブ24の閉塞していた部分24aが開いて再度容器等から患者側に薬液が供給される。なお、留置針を患者の体に穿刺して留置する前に、予め少量の薬液等を留置針の先端から排出しておく。これによって、薬液とともに流路内の空気を外部に排出することができる。また、上流管13側からチャンバー部11内を通過して下流管14側に流れる薬液は、チャンバー部11内を通過する際に、縦壁16を越えてチャンバー部11内の上部側を通過するため、チャンバー部11内に空気が滞留することが防止される。
【0030】
このように、本実施形態に係る液体混注具Aは、液体混注具本体10と、開閉操作部20とで構成されており、液体混注具本体10は、チャンバー部11と、チャンバー部11にそれぞれ連通する上流管13、下流管14および合流管12を備えている。また、開閉操作部20は、上流管13内に配置されたチューブ24や、チューブ24を閉塞させるための押圧部23および揺動片22等で構成されている。このため、上流管13からチャンバー部11を介して下流管14に薬液等を送ることができるとともに、合流管12からチャンバー部11を介して下流管14に他の薬液等の液体を送ることができる。
【0031】
そして、揺動片22を押圧したりその押圧を解除したりすることにより、2種類の薬液等のうちの上流管13からチャンバー部11を介して下流管14に送られる薬液等の供給を停止させたり再開させたりすることができる。また、合流管12を、スリット17cを備えたゴム栓17とキャップ部材18とで構成し、通常は、合流管12とチャンバー部11との間を遮断し、ゴム栓17のスリット17cに針やシリンジ等を刺すことによって合流管12とチャンバー部11との間に流路を形成するようにしている。
【0032】
このため、チューブ24の開閉によって上流管13とチャンバー部11との間を連通させたり遮断させたりするだけでなく、合流管12からチャンバー部11に通じる流路を遮断させたり連通させたりすることもできる。また、揺動片22を押圧操作してチューブ24を閉塞した状態で、合流管12側からチャンバー部11を介して下流管14側に他方の薬液等を供給すると、その薬液等は上流管13側に逆流することなく、確実に下流管14側に流れていく。このように、本実施形態に係る液体混注具Aによると、任意の薬液等を適正な状態で患者の体に供給することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る液体混注具Aによると、チューブ24を閉塞するための操作が、一対の揺動片22を、親指と人差し指とで挟んで押し付けるだけで済むため簡単である。さらに、閉塞したチューブ24の両端を連通させるための操作が、一対の揺動片22の押圧操作を解除するだけで済むため極めて簡単である。また、チューブ24を閉塞するための操作が、押圧部23を直接押圧するのではなく、指を当てるに十分な面積を備えた揺動片22を操作することにより行えるため、押圧操作がさらにし易くなる。さらに、チューブ24を固定部材25によって上流管13の内部に固定しているため、押圧部23の押圧によってチューブ24が伸縮しても上流管13の内周面に固定した状態を維持できる。
【0034】
また、本発明に係る液体混注具は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、ゴム栓17にスリット17cを設けて、スリット17cに雄ルアー部を差し込むことにより、コネクターを合流管12に接続するようにしているが、コネクターに代えてシリンジの雄ルアー部や注射針をゴム栓に差し込むこともできる。注射針を差し込む場合には、ゴム栓17に、スリット17cを設ける必要はなくなる。また、前述した実施形態では、押圧部23を揺動片22の先端に設けて揺動片22を押圧操作するようにしているが、揺動片22を省略して押圧部23を直接押圧操作するようにしてもよい。これによると、取付部21を小型化することができる。さらに、液体混注具を構成するそれ以外の部分の形状や材料等についても適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体混注具を示した斜視図である。
【図2】液体混注具の平面図である。
【図3】液体混注具の正面図である。
【図4】液体混注具の左側面図である。
【図5】液体混注具の右側面図である。
【図6】図2の6−6断面図である。
【図7】図3の7−7断面図である。
【図8】図3の8−8断面図である。
【図9】揺動片を押圧操作した状態の液体混注具を示した斜視図である。
【図10】図9の液体混注具を正面側から見た状態を示した断面図である。
【図11】図9の液体混注具を上方から見た状態を示した断面図である。
【図12】図9の液体混注具を側面側から見た状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10…液体混注具本体、11…チャンバー部、12…合流管、13…上流管、14…下流管、22…揺動片、23…押圧部、24…チューブ、25…固定部材、A…液体混注具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流管からチャンバー部を介して下流管に液体を送る流路と、合流管からチャンバー部を介して下流管に他の液体を送る流路とを備えた液体混注具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液チューブを用いて患者の体内に所定の生理食塩水や薬液等の液体を供給することが行われている。このような場合に、輸液チューブ内を流れる液体の流量を調節するための適量供給装置を用いることがある(例えば、特許文献1参照)。この適量供給装置は、下部がバルブ室に形成された内壁と、バルブ室の両側からそれぞれ外部に向かって延びる穿孔を備えた二つの管継ぎ手とからなる本体と、本体の内壁内に回転可能に配置された可動部分とで構成されている。そして、本体の二つの管継ぎ手は、互いの中心軸線を上下にずらして形成され、可動部分の下部は傾斜面に形成されている。このため、可動部分を回転させることにより、可動部分で二つの管継ぎ手の穿孔の開度を変更させながら穿孔を開閉することができる。これによって、一方の管継ぎ手からバルブ室を介して他方の管継ぎ手に送られる液体の流量を任意に調節することができる。
【特許文献1】特開昭62−172962号公報
【発明の開示】
【0003】
しかしながら、前述した適量供給装置は、1種類の液体を体内に供給するための輸液チューブに用いられるもので、複数の液体を体内に供給する輸液チューブに用いることはできない。このため、複数の輸液チューブ間を連通させたり遮断させたりすることにより、複数の液体を患者に供給することができる液体混注具も開発されている。このような複数の液体を供給できる液体混注具では、一方の液体を供給しているときに、他方の液体も一緒に供給しようとすると、他方の液体が逆流して一方の液体を供給するための管の上流側に浸入することがある。このような液体の逆流を防止するために、弁体を回転して流路を切り換えることにより任意の液体の供給ができるようにした液体混注具も開発されている。しかしながら、従来の液体混注具では、弁体を回転して複数の管のうちの任意の管を連通させたり遮断させたりするため、流路の切り換えの操作が面倒である。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的は、薬液等の液体の逆流を防止することができるとともに、複数の管のうちの任意の管を連通させたり、遮断させたりするための操作が容易になる液体混注具を提供することにある。
【0005】
前述した目的を達成するため、本発明に係る液体混注具の構成上の特徴は、チャンバー部に液体を送る上流管と、チャンバー部から液体が送られる下流管と、チャンバー部に他の液体を送る合流管とを備えた液体混注具本体と、上流管内に配置され、上流管からチャンバー部に送られる液体を内部に通過させる可撓性チューブと、上流管の外部側から内部側に延び、上流管内に押圧されることにより可撓性チューブを閉塞する押圧部とを備えたことにある。
【0006】
このように構成した本発明に係る液体混注具は、チャンバー部にそれぞれ連通する上流管、下流管および合流管を備えている。また、上流管内には、上流管からチャンバー部に送られる液体を通過させる可撓性チューブが配置され、押圧部を押圧操作することによりこの可撓性チューブを閉塞することができる。このため、上流管からチャンバー部を介して下流管に薬液等の液体を送ることができるとともに、合流管からチャンバー部を介して下流管に他の薬液等の液体を送ることができる。そして、押圧部を押圧したりその押圧を解除したりすることにより、2種類の液体のうちの上流管からチャンバー部を介して下流管に送られる液体の供給を停止させたり再開させたりすることができる。
【0007】
これによって、患者の体に1種類の液体を供給したり、2種類の液体を供給したりすることができる。また、押圧部を押圧操作して可撓性チューブを閉塞した状態で、合流管側からチャンバー部を介して下流管側に他方の液体を供給すると、その液体は上流管側に逆流することなく、下流管側に流れていく。このため、可撓性チューブを閉塞した状態で、必要量の他の液体を合流管側から下流管側に供給したのちに、押圧部の押圧を解除すると、可撓性チューブの両端開口が連通して上流管側から下流管側に一方の液体が流れ合流管側から供給される他方の液体と一緒に患者の体に向って流れるようになる。これによって、任意の液体が適正な状態で患者の体に供給されるようになる。
【0008】
また、合流管にゴム栓を取り付けて合流管とチャンバー部との間の流路を遮断し、ゴム栓に円筒状の針やシリンジ等を刺すことによって合流管とチャンバー部との間に流路を形成できるようにすることが好ましい。これによると、可撓性チューブによって上流管とチャンバー部との間の部分を連通させたり遮断させたりすることができる他、合流管からチャンバー部に通じる流路を遮断させたり連通させたりすることもできる。また、可撓性チューブは、円筒形の形状に復元する弾性を備えた材料で構成することが好ましいが、弾性復元力のない材料で構成することもできる。この場合、液体の流れによって、チューブは円筒形になり、押圧部の押圧により押圧された部分が互いに圧接して閉塞する。
【0009】
また、本発明に係る液体混注具の他の構成上の特徴は、押圧部を、可撓性チューブを挟んで2個設けたことにある。これによると、押圧操作が、両押圧部を親指と人差し指とで挟んで押し付けるだけで済むため簡単になる。
【0010】
また、本発明に係る液体混注具のさらに他の構成上の特徴は、押圧部を、一端が液体混注具本体の外部に支持された揺動片の他端に設けたことにある。これによると、押圧部を押圧操作する際に、押圧部でなく揺動片に指を当てることができ、指に接触する揺動片の面積を大きくすることができるため押圧操作がし易くなる。また、揺動片は、通常は液体混注具本体の外面から所定間隔を保った位置にあり、押圧操作されたときだけ液体混注具本体側に撓む弾性体で構成することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る液体混注具のさらに他の構成上の特徴は、可撓性チューブの上流端を円筒状の固定部材を介して上流管の内周面に固定したことにある。これによると、可撓性チューブを強固に上流管の内周面に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る液体混注具を図面を用いて詳しく説明する。図1ないし図5は、同実施形態に係る液体混注具Aを示しており、この液体混注具Aは、液体混注具本体10と、開閉操作部20とで構成されている。液体混注具本体10は、軸方向の長さが短い略円筒状に形成されその軸方向を上下に向けて配置されたチャンバー部11(図6ないし図8参照)と、チャンバー部11の上方に設けられた合流管12と、チャンバー部11の左右両側に180度の角度を保って同軸に沿って延びる上流管13および下流管14とで構成されている。
【0013】
チャンバー部11は、下面が閉塞され、上端が開口した有底円筒状に形成されている。そして、チャンバー部11の外周に、平面視が略四角形に形成され、正面と後面とに開口部が設けられた枠状の取付部21が形成されている。また、図6および図7に示したように、チャンバー部11の軸方向の中央よりもやや下部側における左右の対向する部分に、それぞれ連通穴15a,15bが形成されている。チャンバー部11における連通穴15aに対応する部分には、上流管13が設けられており、連通穴15aを介して上流管13の内部に形成された流路13aとチャンバー部11の内部とが連通している。チャンバー部11における連通穴15bに対応する部分には、下流管14が設けられており、連通穴15bを介してチャンバー部11の内部と下流管14の内部に形成された流路14aとが連通している。
【0014】
これらのチャンバー部11、上流管13、下流管14および取付部21は一体的に形成されている。また、上流管13の内部に形成された流路13aの開口側部分は、チャンバー部11側の直径が小さく、開口に近づくにしたがって直径が徐々に大きくなったテーパ状に形成されている。すなわち、上流管13は雌ルアー形状に形成されている。そして、上流管13の開口部の外周には、連結用のねじ部13bが形成されている。下流管14は、チャンバー部11側に位置する基端部14bと、先端側に位置し基端部14bよりも細く形成された雄ルアー部14cとで構成されている。また、雄ルアー部14cは基端部14b側よりも先端側の方が徐々に細くなった先細り状に形成されている。
【0015】
チャンバー部11の上部に位置する円筒状開口部の周囲には、円筒状の被係合部11aが、チャンバー部11の上部の円筒状開口部と間隔を保って形成されている。そして、チャンバー部11内には、チャンバー部11の内部底面における左右方向(図6および図7の左右方向)の略中央から上方に向って延びる縦壁16が設けられている。この縦壁16は、チャンバー部11内における流路13a側部分と流路14a側部分とを結ぶ方向に直交する幅方向の中央側部分を遮るようにして設けられ、上端部はチャンバー部11の上端近傍まで延びている。
【0016】
合流管12は、チャンバー部11の円筒状開口部の上端部に取り付けられた天然ゴムまたは合成ゴムからなるゴム栓17と、ゴム栓17の外周部に取り付けられてゴム栓17をチャンバー部11の円筒状開口部の上端部に固定するキャップ部材18とで構成されている。ゴム栓17は、肉厚円板状の栓本体17aと、栓本体17aの下端両側から延びる略帯状の一対の固定片17bとで構成されている。このゴム栓17は、両固定片17bをチャンバー部11の円筒状開口部の上端部外周に位置させ、さらにその外周にキャップ部材18を取り付けることにより固定されている。
【0017】
キャップ部材18は、下部のチャンバー部11に係合する部分の直径が大きく、上部の直径が小さくなった二段状の円筒体で構成されている。そして、大径部分の上部で固定片17bをチャンバー部11の円筒状開口部に押圧した状態で、大径部分の下部を、チャンバー部11の円筒状開口部と被係合部11aとの間に差し込むことにより、キャップ部材18は、チャンバー部11に固定されている。また、キャップ部材18の上部の細径部分上端は開口しており、キャップ部材18は、上端からゴム栓17の上部を突出させゴム栓17がキャップ部材18内に入り込むことを防止した状態でゴム栓17を内部に固定している。また、このゴム栓17には、外部側とチャンバー部11内とを連通させるためのスリット17cが設けられている。
【0018】
このスリット17cは、通常は、ゴム栓17の弾性によって閉塞された状態になる。そして、外部側とチャンバー部11内とを連通させる時には、ゴム栓17のスリット17cに、コネクター等(図示せず)を差し込むことによりコネクター等を介して流路を形成することができる。このコネクターは、例えば、内部に流路が形成された雄ルアー部を備えたもので構成し、雄ルアー部をゴム栓17のスリット17c内に差し込むことによりコネクターとチャンバー部11の内部とを連通させることができる。また、その際、雄ルアー部とスリット17cの周面との間は、ゴム栓17の弾性によって密着状態になる。
【0019】
開閉操作部20は、チャンバー部11の外周に形成された取付部21と、取付部21に連結された揺動片22と押圧部23とからなる一対の操作部、上流管13内に設置された可撓性を備えたチューブ24と、チューブ24を上流管13内に固定する固定部材25とで構成されている。取付部21は、左右に長く、高さよりも前後の幅がやや大きくなった略四角箱状体で構成されている。そして、その略四角箱状体の正面と後面とに左右に長い四角形の開口が形成されている。また、取付部21の底面は、左右方向の中央側が上方に湾曲した曲面に形成され、その所定部分に空間部が形成されている。
【0020】
この空間部は、取付部21の底面部分だけでなく、チャンバー部11の下部にも連続して形成されており、その一部は縦壁16の下面から内部側にかけて延びている。この空間部を設けることによって、取付部21を成形する際に、ひけの発生を防止できるとともに、使用する成形材料を少量にすることができる。また、取付部21の前後の両開口における下流管14側の縁部に揺動片22の基端部がそれぞれ連結されている。両揺動片22は、基端部を開口縁部に接続させた状態で、基端部を中心として、取付部21の開口周縁部と取付部21の内部側との間で回転可能に取り付けられている。
【0021】
押圧部23は、それぞれ揺動片22の先端部に揺動片22と一体的に形成されており、揺動片22と直交して取付部21の内部側に延びている。また、上流管13における両押圧部23の先端に対向する部分には、上流管13の外周面から内周面に貫通する挿通穴13cが形成されており、両押圧部23の先端部は、挿通穴13c内に位置している。揺動片22を押圧しないときには、押圧部23の先端部は、上流管13の内周面上に位置しているが、揺動片22を押圧すると、押圧部23の先端部は、上流管13の内部側に進入していく。
【0022】
また、揺動片22の内面における上下の幅方向の両側には、揺動片22の基端側から押圧部23に延びる補強用の板状リブ22aがそれぞれ形成されている。板状リブ22aは、揺動片22の基端側に位置する部分の板面の幅(前後方向の幅)が、押圧部23側に位置する部分の板面の幅よりも大きくなっておりその境界部に段部が形成されている。また、板状リブ22aの幅広部分とチャンバー部11の外周面との間には小さな間隔が設けられ、板状リブ22aの幅狭部分と上流管13の外周面との間には、幅広部分とチャンバー部11との間隔よりも大きな間隔が設けられている。
【0023】
そして、板状リブ22aの幅広部分の先端には、フック状の係合部22bが形成され、チャンバー部11の外周面には、係合部22bと係合して揺動片22が、取付部21の外部に突出することを防止する被係合部11bが形成されている。このため、揺動片22は、取付部21の内部側に撓むことはできるが、取付部21の外部に突出することはできない。また、チャンバー部11の被係合部11bにおける板状リブ22aの段部に対向する部分は、その段部と摺動可能に係合するガイド部に形成されている。
【0024】
チューブ24は、可撓性を備えた軟質プラスチックからなる円筒体で構成されている。そして、このチューブ24は、流路13a内における上流管13の左右方向の略中央からチャンバー部11にかけての部分に、上流管13の内周面に密着した状態で設置されており、上流端が固定部材25によって上流管13の内周面に固定されている。固定部材25は、基端側が先端側よりも大径になった二段状の円筒体で構成されており、大径の基端側を上流側に位置させ、細径の先端側を下流側に位置させた状態で上流管13内に設置されている。すなわち、固定部材25は先端側部分をチューブ24の上流端側部分の内部に挿入し、先端側部分の外周面と上流管13の内周面とでチューブの上流端側部分を挟むことにより、チューブ24を固定している。そして、固定部材25は基端側部分を上流管13の内周面に圧接させることにより上流管13内に固定されている。
【0025】
このため、図9に示したように、揺動片22の先端側をそれぞれ取付部21の内部側に押圧すると、両揺動片22の先端側部分と押圧部23は、互いに接近して図10ないし図12に示した状態になる。これによって、チューブ24における両押圧部23で挟まれた部分24aは互いに圧接して、上流管13の流路13aとチャンバー部11の内部との間の流路を閉塞する。この両揺動片22を押圧操作するとき、板状リブ22aの段部は、チャンバー部11の被係合部11bにおけるガイド部にガイドされるため、揺動片22および押圧部23はスムーズに移動する。
【0026】
また、両揺動片22を取付部21の内部側に押圧する力を解除すると、チューブ24は元の円筒状の形状に復元しようとし、このチューブ24の復元力によって両揺動片22の先端側部分と両押圧部23とは互いに離れて図6ないし図8に示した状態になる。そして、チューブ24が元の円筒状の形状に復元すると、上流管13の流路13aとチャンバー部11の内部との間が連通する。この場合、上流管13側からチャンバー部11側に薬液等を供給すると、その薬液等は、流路13aからチャンバー部11内に流れ縦壁16を乗り越えたのちにチャンバー部11内から下流管14の流路14a内に流れていく。この際、縦壁16が薬液等の逆流を防止するとともに、薬液等をチャンバー部11内の上部側を通過させることにより、チャンバー部11内に空気が滞留することを防止する。
【0027】
この構成において、所定の薬液を患者(図示せず)の体内に供給する場合には、下流管14に、患者に穿刺して留置するための留置針が接続された輸液チューブ(図示せず)の後端部である雌ルアー部を接続する。また、上流管13には、患者に供給する薬液を収容する容器等から延びる輸液チューブの先端部に設けられた雄ルアー部を接続する。そして、留置針を患者の体に穿刺して留置した状態で、容器等の薬液を患者に向けて送り出すことにより患者への薬液の供給が行われる。また、容器等から供給される薬液に加えて、他の薬液を患者に供給する場合には、コネクターに接続された輸液チューブを介して、他の薬液を合流管12からチャンバー部11内に注入する。
【0028】
この場合、合流管12におけるゴム栓17のスリット17c内にコネクターを挿し込むと、コネクターと下流管14とがチャンバー部11内の流路を介して連通するため、コネクター側から薬液を注入することによりこの薬液の患者への供給が行える。このとき、揺動片22の先端側を取付部21の内部側に押し込んで、図10および図11に示したようにチューブ24を閉塞することができる。これによって、容器等から上流管13を介してチャンバー部11内に供給される薬液の流れが停止するとともに、合流管12からチャンバー部11内に注入される薬液は、上流管13側に逆流することを防止されて確実に下流管14側に流れていく。
【0029】
また、コネクター側からの薬液の注入が終了したのちに、揺動片22の押圧を解除すると、チューブ24の閉塞していた部分24aが開いて再度容器等から患者側に薬液が供給される。なお、留置針を患者の体に穿刺して留置する前に、予め少量の薬液等を留置針の先端から排出しておく。これによって、薬液とともに流路内の空気を外部に排出することができる。また、上流管13側からチャンバー部11内を通過して下流管14側に流れる薬液は、チャンバー部11内を通過する際に、縦壁16を越えてチャンバー部11内の上部側を通過するため、チャンバー部11内に空気が滞留することが防止される。
【0030】
このように、本実施形態に係る液体混注具Aは、液体混注具本体10と、開閉操作部20とで構成されており、液体混注具本体10は、チャンバー部11と、チャンバー部11にそれぞれ連通する上流管13、下流管14および合流管12を備えている。また、開閉操作部20は、上流管13内に配置されたチューブ24や、チューブ24を閉塞させるための押圧部23および揺動片22等で構成されている。このため、上流管13からチャンバー部11を介して下流管14に薬液等を送ることができるとともに、合流管12からチャンバー部11を介して下流管14に他の薬液等の液体を送ることができる。
【0031】
そして、揺動片22を押圧したりその押圧を解除したりすることにより、2種類の薬液等のうちの上流管13からチャンバー部11を介して下流管14に送られる薬液等の供給を停止させたり再開させたりすることができる。また、合流管12を、スリット17cを備えたゴム栓17とキャップ部材18とで構成し、通常は、合流管12とチャンバー部11との間を遮断し、ゴム栓17のスリット17cに針やシリンジ等を刺すことによって合流管12とチャンバー部11との間に流路を形成するようにしている。
【0032】
このため、チューブ24の開閉によって上流管13とチャンバー部11との間を連通させたり遮断させたりするだけでなく、合流管12からチャンバー部11に通じる流路を遮断させたり連通させたりすることもできる。また、揺動片22を押圧操作してチューブ24を閉塞した状態で、合流管12側からチャンバー部11を介して下流管14側に他方の薬液等を供給すると、その薬液等は上流管13側に逆流することなく、確実に下流管14側に流れていく。このように、本実施形態に係る液体混注具Aによると、任意の薬液等を適正な状態で患者の体に供給することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る液体混注具Aによると、チューブ24を閉塞するための操作が、一対の揺動片22を、親指と人差し指とで挟んで押し付けるだけで済むため簡単である。さらに、閉塞したチューブ24の両端を連通させるための操作が、一対の揺動片22の押圧操作を解除するだけで済むため極めて簡単である。また、チューブ24を閉塞するための操作が、押圧部23を直接押圧するのではなく、指を当てるに十分な面積を備えた揺動片22を操作することにより行えるため、押圧操作がさらにし易くなる。さらに、チューブ24を固定部材25によって上流管13の内部に固定しているため、押圧部23の押圧によってチューブ24が伸縮しても上流管13の内周面に固定した状態を維持できる。
【0034】
また、本発明に係る液体混注具は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、ゴム栓17にスリット17cを設けて、スリット17cに雄ルアー部を差し込むことにより、コネクターを合流管12に接続するようにしているが、コネクターに代えてシリンジの雄ルアー部や注射針をゴム栓に差し込むこともできる。注射針を差し込む場合には、ゴム栓17に、スリット17cを設ける必要はなくなる。また、前述した実施形態では、押圧部23を揺動片22の先端に設けて揺動片22を押圧操作するようにしているが、揺動片22を省略して押圧部23を直接押圧操作するようにしてもよい。これによると、取付部21を小型化することができる。さらに、液体混注具を構成するそれ以外の部分の形状や材料等についても適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体混注具を示した斜視図である。
【図2】液体混注具の平面図である。
【図3】液体混注具の正面図である。
【図4】液体混注具の左側面図である。
【図5】液体混注具の右側面図である。
【図6】図2の6−6断面図である。
【図7】図3の7−7断面図である。
【図8】図3の8−8断面図である。
【図9】揺動片を押圧操作した状態の液体混注具を示した斜視図である。
【図10】図9の液体混注具を正面側から見た状態を示した断面図である。
【図11】図9の液体混注具を上方から見た状態を示した断面図である。
【図12】図9の液体混注具を側面側から見た状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10…液体混注具本体、11…チャンバー部、12…合流管、13…上流管、14…下流管、22…揺動片、23…押圧部、24…チューブ、25…固定部材、A…液体混注具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー部に液体を送る上流管と、前記チャンバー部から前記液体が送られる下流管と、前記チャンバー部に他の液体を送る合流管とを備えた液体混注具本体と、
前記上流管内に配置され、前記上流管から前記チャンバー部に送られる前記液体を内部に通過させる可撓性チューブと、
前記上流管の外部側から内部側に延び、前記上流管内に押圧されることにより前記可撓性チューブを閉塞する押圧部とを備えたことを特徴とする液体混注具。
【請求項2】
前記押圧部を、前記可撓性チューブを挟んで2個設けた請求項1に記載の液体混注具。
【請求項3】
前記押圧部を、一端が前記液体混注具本体の外部に支持された揺動片の他端に設けた請求項1または2に記載の液体混注具。
【請求項4】
前記可撓性チューブの上流端を円筒状の固定部材を介して前記上流管の内周面に固定した請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載の液体混注具。
【請求項1】
チャンバー部に液体を送る上流管と、前記チャンバー部から前記液体が送られる下流管と、前記チャンバー部に他の液体を送る合流管とを備えた液体混注具本体と、
前記上流管内に配置され、前記上流管から前記チャンバー部に送られる前記液体を内部に通過させる可撓性チューブと、
前記上流管の外部側から内部側に延び、前記上流管内に押圧されることにより前記可撓性チューブを閉塞する押圧部とを備えたことを特徴とする液体混注具。
【請求項2】
前記押圧部を、前記可撓性チューブを挟んで2個設けた請求項1に記載の液体混注具。
【請求項3】
前記押圧部を、一端が前記液体混注具本体の外部に支持された揺動片の他端に設けた請求項1または2に記載の液体混注具。
【請求項4】
前記可撓性チューブの上流端を円筒状の固定部材を介して前記上流管の内周面に固定した請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載の液体混注具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−34154(P2009−34154A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198739(P2007−198739)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】
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