説明

液体燃料溶断機用背負い式燃料タンクユニット

【課題】災害等非常時に人が背負い移動や作業を容易にする為に安全且つ小型軽量化を図る事を目的とした液体燃料溶断機用の燃料資材供給用のタンクユニットの提供。
【解決手段】燃料タンク内の燃料を不活性ガスカートリッジのガス圧で燃料を供給するもので安全であり且つ手押しポンプ作業が不要であると共にタンク内の燃料取り入れ口が重力移動に追随し、取り出し口が常に液体燃料内に位置する為溶断作業者の随意な姿勢でも燃料途切れが無く、必要に応じ飛び出し防止の蓋、又は本考案の液面指示機構を付帯する。通常は燃料タンクを作業者が背負い使用する為、必要に応じそれに対応して使用すべく複合材で形成された小型軽量の酸素ボンベと組み合わせ、より一層軽量化した燃料資材の供給機器を結束具にてユニット化し、作業者が背中に背負い溶断作業を可能と成した液体燃料溶断機用背負い式燃料タンクユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄材を溶断する液体燃料溶断機用の燃料資材の供給機器を小型、安全、且つ軽量化し主に災害救助や復旧作業時に、より対応し易く作業者が背中に背負い溶断作業を容易にすべくなした燃料資材の供給機器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近各地で、地震、津波等災害が頻発し災害救助或いは復旧作業等において作業者が激しく動き回り、事態対応を必要とする作業が多く、その作業の中には破壊鉄材の溶断除去等も多く含まれる。また、通常の工事に関しても煙突関連等の高所作業において、より作業性を良くする方法は従来から熱望されていた。
鉄材を溶断する方法として、アセチレン等の可燃性ガスと酸素を使用してバーナーで溶断する方法の他に、最近はガソリン等液体燃料と酸素を使用した溶断機が普及されつつある。
液体燃料を使用する利点としては、燃料費の削減や燃料タンクが軽量で作業性や液体燃料の入手性が良くなる等幾つかの利点はあるが現在普及されつつある液体燃料溶断機用燃料タンクにおいては、手押し式の空気ポンプによりタンク内を約0.1MPa程度に空気加圧して燃料を圧送するタイプであり幾つかの問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
つまり従来の液体燃料溶断機用燃料タンクの問題点は
1)空気圧による燃料圧送である為、万一逆止弁等の逆火防止機器が不備な場合タンク内の液が無くなる時点で燃料供給ホースから空気と気化した燃料がバーナーに流れバーナー火口より供給ホースを通じて火が逆流し、加圧空気と気化燃料で充満されたタンクに引火し爆発する危険性がある。
2)背負い式等小型のタンクの場合、加圧空気層部が小さくなる為、短時間の燃料消費でタンク内の圧力が下がり、バーナーの火力減衰が生じ易く、従って空気ポンプを手押しする作業も頻繁になる。
3)タンク内には使用開始前においても圧力減少時間をある程度維持する為の空気層が必要で、その空気層の容量分タンクが大きくなるか又は充填燃料が少なくなる。
4)背負い式燃料タンクはタンクが背中にある為、空気ポンプの手押し作業は背負ったままでは困難であり、頻繁に背負いケース又はバンド等を外し一度地面に下してから手押し作業をする等不便である。
5)また、従来のタンクは燃料取り出しパイプの先端部は固定されており、緊急時の災害復旧や救助活動時は腹這いに近い姿勢等、種々な姿勢での作業が要求されるが、タンク内の液が少なくなった時点では、姿勢の状態によっては燃料取り出し口が液面より上になり、まだ相当量の残存燃料がありながら燃料供給が不能になる場合があり作業姿勢が制限された。
【課題を解決する為の手段】
【0004】
本発明の背負い式の液体燃料溶断機用燃料タンクにおいて、前述の問題点を解決すべく考案されたもので、炭酸ガスや窒素ガス等の不燃性の小型のガスカートリッジを使用し、圧力調整器にてガスを減圧し、燃料の消費に関係なく燃料タンク内圧を常時所定圧に保持し、バーナートーチに燃料を圧送する様に成した為、液圧送を安定化出来る。また、圧送ガスが不燃性の為、万一の逆火、爆発事故は皆無であり安全である。さらに、燃料取り出しパイプの先端部に重しを付帯した柔軟なチューブを使用しており、作業者が腹這い等種々な姿勢に対し燃料とチューブ下端部共に重力にて低位置に移動する為、燃料が少なくなっても常にチューブ下端部が液体燃料内にあり、燃料はほぼ全量使用可能となり、小型タンクの燃料を最大限に使用可能としたもので、燃料タンクをより小型化出来る。また、手押しポンプ作業が不要となる為、作業活動も効率的となる。
【0005】
また、請求項2においては、蓋を開ける際、事前に減圧弁のつまみ調整でタンク内圧を0にした後開栓する作業を怠った時、蓋に設けられた連通孔により開栓途中でタンク内圧を外部に逃がし、開栓時の蓋の飛び出し事故を未然に防止した構造の蓋を使用する事により安全性を配慮したものである。
【0006】
請求項3においては加圧された小型タンク内の液面を外部で確認する方法として側胴部に細長のサイトグラスを設ける方法が一般的であり、その他の方法は経済性やスペース上の問題で一般的ではない。ただ、液体燃料のタンクにおいては、側胴部に設けたサイトグラスの損傷事故等の危険性がある。本発明の液面指示機構は捻り板を2つの突起腕で挟んだフロートが燃料取り出しパイプに沿って上下する際、それに伴い捻り板が捻り角度の範囲内で回転し、その回転角度により、捻り板に直結した軸の頂部円盤上でタンク内の液量を指示すべく成したものである。またタンク天板面の指示部のカバーに使用する透明カバーはオイルゲージ等安全性の高いものを使用する事と、タンク上面に指示部がある為、万一損傷しても燃料の継続的漏れには繋がらない。
【0007】
請求項4においては、酸素が高圧充填される軽量材のアルミ製ボンベの外側をガラス繊維又は炭素繊維等で補強巻きし、金属ボンベを薄くし軽量化した酸素ボンベを請求項1、請求項2又は請求項3の燃料タンク等の構成機器とセットにしたもので全体の使用機器を軽量化し、機器を結束具でコンパクトに纏め取り扱い容易に成す事により、より一層作業性を良くし背中に背負い使用すべく成したものである。
【発明の効果】
【0008】
前述の手段により、空気ポンプの手押し作業が不要になると共に、安全で且つ小型軽量の背負い式燃料タンクとなり、且つ複合材使用による軽量の酸素ボンベを組み合わせる事により災害時等、頻繁に移動性が要求される状況の中でより一層溶断作業性を改善する事が出来る。
【発明を実施する為の最良の形態】
【0009】
容器(1)と天板(2)を任意方法で一体化させたタンクの天板(2)のねじ穴(3)にパッキン(4)を介して蓋(5)を取り付け軽質油等の液体燃料の注入口とし、並びに下端部に重し(6)を付帯した柔軟な軟質樹脂チューブ(7)の口元(8)に差込結合した金属又は硬質樹脂パイプ(9)を天板(2)に貫通させ溶接等任意方法にて一体化し、パイプ(9)の上端部にバルブ(10)を取り付けると共に炭酸ガス等不燃性ガスを圧封した交換用のガスカートリッジ(11)を脱着可能とした圧力調整器(12)を容器(1)の側胴部に設けたブラケット(13)にビスにて取り付け固定させ、圧力調整器(12)のガス出口ねじ穴(19)と天板(2)のねじ穴(14)を配管(15)を介して接続し、圧力計(16)を系内の任意個所に取り付け、バンド等の任意結束具(17)を使用して人が背負いながら溶断作業を可能と成したものである。
【0010】
また必要に応じ、蓋(5)において、締め付けられたパッキン(4)の厚さ直下位置に容器(1)の内側に通じる小径の連通孔(18)を設ける事により、蓋(5)をねじ開け完了する前にパッキン(4)のガスシール性が開放された時点で容器内の加圧ガスを大気放出し蓋(5)の飛び出し防止を可能と成したものである。
【0011】
また、必要に応じ燃料液量を把握する目的の為に付帯して取り付けるべく、上端に円板(20)を有する軸(21)を天板(2)の穴(22)および天板下面に取り付けられた振れ止め用スリーブ(23)を貫通させ、スリーブ(23)の下で長手方向に180度等螺旋状に捻られた長方形の板(24)をビス止め又は溶接等で一体化させ、軸(21)の上端の円板(20)とスリーブ(21)又は天板(2)の軸受け面(25)との間にスラストベアリング又はテフロンリング等の滑り具(26)を設け軸の回転を容易にすべく成し、また板(24)の捻られた長手方向の一端部を両側から挟みガイドとなした2本の腕(27)を持つフロート(28)をパイプ(9)にスライド可能に取り付け、容器(1)内の軽質油の液面に合わせてフロート(28)が上下し、それに応じて腕(27)に挟まれた板(24)が捻られている事により回転し、板(24)及び軸(21)と直結されている円板(20)が回転し、天板(2)の上面に円板(20)の円周に沿って表示された液量目盛と円板(20)の上面に表示された指示針マークの位置により液面が指示されるべく成し、且つ円板(20)を覆い容器内部と外気をシールすべく透明カバー(29)を天板(2)に密閉固定させて構成させ、液面指示が出来る。
【0012】
さらに、より軽量化し作業性を向上させる為に、溶断作業に使用される酸素ボンベにおいて、アルミ又はチタン等の軽量材を使用したボンベの外側をガラス繊維、炭素繊維等の補強材で包み巻きボンベ板厚を薄くし、軽量化を図ると共に耐圧強度並びに耐衝撃性を増した小型軽量の酸素ボンベを燃料タンクの構成品と1セットにし、バンド等の任意結束具で固定し、人が背負い溶断作業を可能と成したもので酸素ボンベ、タンク並びに付帯機器で構成される液体燃料溶断機用背負い式燃料タンクユニットである。
【実施例】
【0013】
実施例として、胴板厚1mm厚さ、外径9cm、容量1.5リットルのステンレス製燃料タンクでガソリン使用の場合で付帯機器を合わせた重量は約4kgであり、連続約1.5時間溶断作業が可能であり、且つ炭酸ガス7MPa圧、容量97cm3のカートリッジを使用した場合、1本のカートリッジで燃料タンク約4回分使用出来る。また、容量1.8L容量のアルミ製容器をガラス繊維巻きした充填圧19.6MPaの酸素ボンベを2本セットで燃料タンクとユニット化した場合の溶断作業に要するバーナーやホース等を含めた全ての機器の重量は約12kgと軽く、酸素の供給能力は約40分連続使用出来る。
なお、ガスカートリッジはポケットにも入る大きさで運搬や取り扱いも容易である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
液体燃料による溶断機が現在普及されつつはあるが、未だ大半はアセチレン等のガスを使用しており同ボンベ並びに酸素ボンベ共に相当重量があり、頻繁に移動しながらの溶断作業は不可能であった。また、重量のみならずアセチレンや酸素ボンベの入手は地域によっては困難な場合が多く、昨年のスマトラ周辺の津波災害の人命救助時、ヤスリで倒壊鉄材を切断する等を眼のあたりにして来た。液体燃料使用の溶断機においても、重い一時設置式タンクの普及がされつつある程度で、災害時の移動を伴う緊急対応が必要な溶断作業性に対しては充分ではなかった。本発明品と併せて使用されるバーナーは液体燃料用の専用のバーナーを使用するがガス溶断機用と重量的には大差が無く、またホース類の長さは機器を背負っている作業者の背中から腕に持ったバーナーまでの長さで良く、バーナー並びにホース類を機器の結束具等に適宜固定する事により、作業者は両手使用可能の状態で自由に移動や他の作業が出来る。
燃料タンクに耐食材を使用して薄く軽量にし、且つ複合材を使用した軽量の酸素ボンベと組み合わせコンパクトにユニット化し取り扱いを容易にする事により、災害救助者等の作業性は格段に改善されると共に、本発明の燃料タンクの燃料取り出し口が重力移動に追随する構造の為、常に液体燃料内に位置し作業者は腹這い等の随意な姿勢でも燃料が途切れる事が無く作業が制限されない構造であり且つ空気ポンプの手押し作業も不要であり不活性ガス圧による燃料圧送の為安全である。さらに燃料のガソリンは広い範囲の地域で入手し易く、本考案に使用される酸素ボンベのみ地域在庫を持つ等し、タイムリーな災害救助活動が可能となる。なお、本発明のその他の用途として当然高所作業、暗渠作業等の現地工事並びに工場作業等に使用出来る訳で、必要に応じて設置式酸素ボンベの使用は選択されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は請求項3の液面指示付の背負い式燃料タンクと付帯機器の側面図でタンクは断面で示した実施例図である。
【図2】は請求項3の燃料タンクと付帯機器の平面上の位置関係を示す平面図の実施例図である。
【図3】は請求項2の蓋が天板の注入口にねじ込みされている状態の連通孔部での断面実施例図である。
【図4】はフロートに付帯している2本の腕が液面指示用の捻り板の端部を挟んでいる状態の平面の実施例図である。
【図5】は背負い式燃料タンク、同機器と酸素ボンベを組み合わせたユニットを背負った作業者の溶断作業中の実施例図である。
【符号の説明】
【0016】
1 容器
2 天板
3 ねじ穴
4 パッキン
5 蓋
6 重し
7 軟質樹脂チューブ
8 口元
9 パイプ
10 バルブ
11 ガスカートリッジ
12 圧力調整器
13 ブラケット
14 ねじ穴
15 配管
16 圧力計
17 結束具
18 連通孔
19 ガス出口ねじ穴
20 円板
21 軸
22 穴
23 スリーブ
24 板
25 軸受け面
26 滑り具
27 腕
28 フロート
29 透明カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(1)と天板(2)を任意方法で一体化させたタンクの天板(2)のねじ穴(3)にパッキン(4)を介して蓋(5)を取り付け軽質油等の液体燃料の注入口とし、並びに下端部に重し(6)を付帯した柔軟な軟質樹脂チューブ(7)の口元(8)に差込結合した金属又は硬質樹脂パイプ(9)を天板(2)に貫通させ溶接等任意方法にて一体化し、パイプ(9)の上端部にバルブ(10)を取り付けると共に炭酸ガス等不燃性ガスを圧封した交換用のガスカートリッジ(11)を脱着可能とした圧力調整器(12)を容器(1)の側胴部に設けたブラケット(13)にビスにて取り付け固定させ、圧力調整器(12)のガス出口ねじ穴(19)と天板(2)のねじ穴(14)を配管(15)を介して接続し、圧力計(16)を系内の任意個所に取り付け、バンド等の任意結束具(17)を使用して人が背負いながら溶断作業を可能と成したものでタンク、付帯機器並びに結束具で構成される液体燃料溶断機用背負い式燃料タンクユニット。
【請求項2】
請求項1の蓋(5)において、締め付けられたパッキン(4)の厚さ直下位置に容器(1)の内側に通じる小径の連通孔(18)を設け、蓋(5)をねじ開け完了する前にパッキン(4)のガスシール性が開放された時点で容器内の加圧ガスを大気放出し蓋(5)の飛び出しを防止すべく成したものでタンク、付帯機器並びに結束具で構成される液体燃料溶断機用背負い式燃料タンクユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の構成品に付帯して取り付けるべく、上端に円板(20)を有する軸(21)を天板(2)の穴(22)および天板下面に取り付けられた振れ止め用スリープ(23)を貫通させ、スリーブ(23)の下で長手方向に180度等螺旋状に捻られた長方形の板(24)をビス止め又は溶接等で一体化させ、軸(21)の上端の円板(20)とスリーブ(21)又は天板(2)の軸受け面(25)との間にスラストベアリング又はテフロンリング等の滑り具(26)を設け軸の回転を容易にすべく成し、また板(24)の捻られた長手方向の一端部を両側から挟みガイドとなした2本の腕(27)を持つフロート(28)をパイプ(9)にスライド可能に取り付け、容器(1)内の軽質油の液面に合わせてフロート(28)が上下し、それに応じて腕(27)に挟まれた板(24)が捻られている事により回転し、板(24)及び軸(21)と直結されている円板(20)が回転し、天板(2)の上面に円板(20)の円周に沿って表示された液量目盛と円板(20)の上面に表示された指示針マークの位置により液面が指示されるべく成し、且つ円板(20)を覆い容器内部と外気をシールすべく透明カバー(29)を天板(2)に密閉固定させて構成された液面指示付きのタンク、付帯機器並びに結束具で構成される液体燃料溶断機用背負い式燃料タンクユニット。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3の構成品と同時に溶断作業に使用される酸素ボンベにおいて、アルミ又はチタン等の軽量材を使用したボンベの外側をガラス繊維、炭素繊維等の補強材で包み巻きボンベ板厚を薄くし、軽量化を図ると共に耐圧強度並びに耐衝撃性を増した小型軽量の酸素ボンベを請求項1、請求項2又は請求項3の構成品とバンド等の任意結束具で組み合わせ固定し1セットと成し、人が背負い溶断作業を可能と成したもので酸素ボンベ、タンク並びに付帯機器で構成される液体燃料溶断機用背負い式燃料タンクユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−57214(P2007−57214A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270956(P2005−270956)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(596035053)
【Fターム(参考)】