説明

液体用紙容器

【課題】飲料、調味料、洗剤、医薬品、工業薬品等の液体を収納するのに用いられる液体用紙容器の持つ特性と外観を損なうことなく、容器の取り扱いが容易であり、特に容器底部の凹凸を吸収して容易に倒れないように容器の自立性の改善された液体用紙容器の提供
【解決手段】原紙を筒状に形成し、一端部を折り曲げ底部を形成してなる角型の液体用紙容器において、底部形成時に折り曲げ重なった原紙部分が容器底部を支える四点で作る平面から出ないように、容器の底の原紙が折り込まれる面の高さが稜線部分に比べて小さくなっていることを特徴とする液体用紙容器

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、調味料、洗剤、医薬品、工業薬品等の液体を収納するのに用いられる紙容器に関し、特に自立性を改善して取り扱いやすくした角型の液体用紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙容器は食品を中心に広く使われている容器である。なかでも液体を収納する紙容器はプラスチック容器に比べて、容器表面への直接印刷が容易であることやリサイクルシステムの整備が進んでいることなどから牛乳を初めとして飲料、調味料、洗剤、医薬品、工業薬品等を対象として広く用いられている。
【0003】
これらの液体用紙容器に要求される特性のなかでも基本は内容物の保護であり、内部からの液体の浸出や外部からの気体の透過を防止するために紙スリーブ表面には熱接着性の樹脂が積層されており、容器の底部はこの積層された紙を折り曲げて熱圧着することによって形成されるのが一般的である。
【0004】
液体用容器に要求される特性のひとつは取り扱い中に倒れないことすなわち容器の自立性であり、とくに開栓後も使用される注出口付き液体用紙容器においては必須の項目である。
【0005】
プラスチック容器では容器底面は基本的には任意の形状の成型が可能であるが、平面状の原紙から折り曲げて作る紙容器の場合は折り曲げによる原紙の重なりによって生じる厚みの差をどう処理するかによって底面の平面性が異なり、ひいては容器の自立性にも影響を及ぼす。
【0006】
従来は底部の余った原紙を内側に折り返すと底部表面が著しく凹凸になり、その結果平面上に立てて置いた場合に倒れやすく不安定になることから、容器の自立性を改善するために、例えば<図5>(a)のGに示すようにこれを側面に沿わせて外側に折り返すという処理がなされていた。しかし底部の余った原紙を外側に折り返すこの方法は折り返して外側になる面の印刷が困難であり、さらに側面の印刷絵柄と折り返した原紙の外面の印刷を一致させた美しい表現は著しく困難であった。
【0007】
<図3>(a)には従来の液体用紙容器の他の一例の底部近傍の斜視説明図を示した。Aで示した稜線部の高さとBで示した側面中央部の高さが同じになっていてAとBの差がないので容器下部には空間が生じない。従って、容器側面から折り込んだ原紙の重なりによる凹凸が容器を水平面に置いた場合にその面に触れてしまう。<図3>(b)にはその底側から見た平面説明図を示した。容器断面から、底面に折り込まれた原紙の重なりを端的に説明するために<図4>(a)には従来の液体用紙容器底部近傍の断面説明図を示した。 Fで示した原紙の重なりは下部にも出っ張っているので<図3>(a)に示したようにAとBの差で作られる空間がない。従って、水平面に置いた場合にその水平面に原紙の重ねの凹凸すなわちFの部分が接触する。
【0008】
このような液体用紙容器を作成する工程の例として<図4>(b)にはその底部近傍の展開図を示した。この展開図にHで示したのは従来の液体用紙容器の底部と側面境界の罫線である。ここでは側面中央部も稜線と同じ高さを持っているので容器の状態では<図3>(a)のようになる。
【0009】
以上、<図5>(a)に示したような、底部の原紙を側面に折り込んだ液体用紙容器に
おいては外観上の意匠性の低下が欠点であった。<図3>(a)及び<図4>(a)に示したような従来の液体用紙容器においては底部の原紙の折込み重なりによる凹凸が底部平面の下部まで飛び出しているために平面上に置いたときに傾いたり倒れたりしやすく取り扱いが非常に不安定であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような事情から、飲料、調味料、洗剤、医薬品、工業薬品等の液体を収納するのに用いられる液体用紙容器の持つ特性と外観を損なうことなく、容器の取り扱いが容易な、特に底部の凹凸を吸収して自立性の改善された液体用紙容器を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、請求項1に記載の発明は、原紙を筒状に形成し、一端部を折り曲げ底部を形成してなる角型の液体用紙容器において、底部形成時に折り曲げ重なった原紙部分が容器底部を支える四点で作る平面から出ないように、容器の底の原紙が折り込まれる面の高さが稜線部分に比べて小さくなっていることを特徴とする液体用紙容器である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、容器底部を支える四点の間の原紙の折り曲げ線のうちで対向する2つが直線であり他の2つが上部に凸の形状の線であることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液体用紙容器では、従来の液体用紙容器で課題となっていた、底部の折り曲げ部分の原紙の重なりによる凹凸が稜線の底部頂点でつくられる平面の外側(下部)に出っ張り、これによって平面状に容器を置いた場合に倒れやすいという欠点が、底部の凹凸が平面に接触しない状態にすることによって改善された。
【0014】
容器の自立性が改善された、即ち容器が倒れにくくなったことによって、開栓前の容器の取り扱いが安定しただけではなく、開栓後も容器が倒れて内容物がこぼれる心配をすることなく安心して取り扱える自立性の改善された液体用紙容器を提供することが出来る。従来、外観上の不満がありながらも自立性保持の点から余儀なくされていた、底部の原紙の側面への折込みによる意匠性の低下等の欠点も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の液体用紙容器の一実施形態を<図1>及び<図2>に基づいて以下に詳細に説明する。必要に応じて従来の例を<図3>から<図5>により参照する。
【0016】
本発明の液体用紙容器に使用する基材は通常両面にポリエチレン(PE)加工をした原紙であり内容物保護に必要な特性によって他の被膜層を積層する場合もある。液体用紙容器の製造工程は、通常、基材作成、印刷、打ち抜き、貼り、内容物充填、封止の順序が代表的であるが、ここでは本発明の理解に必要な打ち抜きと最終製品の形状を主に説明する。
【0017】
本発明の液体用紙容器の製造工程では、原紙として、例えば、両面がポリエチレン(PE)被膜ではさまれたクラフト紙(400g/m2)の基材を用いて表面に印刷を行い、その後、印刷物を打ち抜き、貼り工程でスリーブを作成し、内容物を充填する。
【0018】
<図2>(b)には本発明の液体用紙容器の底面近傍部の展開図を示した。比較のため
<図4>(b)には従来の液体用紙容器の底面近傍部の展開図を示した。
【0019】
本発明では<図2>(b)及び<図4>(b)においてHで示した、容器側面部と底面部の境界を形成する折り曲げ罫線に対して<図2>(b)においては、Iで示したような容器稜線と底面の交点を通り矢印で示した分だけ側面壁部の高さが小さくなるような折り曲げ罫線を付けてスリーブ形成後折り曲げる。この罫線の差が液体用紙容器ではどのような差になるのかを<図1>から<図4>で示した。
【0020】
<図1>(a)は本発明の液体用紙容器の一例の底部近傍の斜視説明図である。Aで示した稜線部の高さよりもBで示した側面中央部の高さのほうが小さくなっている。このAとBの差の高さだけ容器下部に空間が生じる。その空間に、容器側面から折り込んだ原紙の重なりによる凹凸を収納して、容器を水平面に置いた場合にその面に触れないようになる。<図1>(b)にはその底側から見た平面説明図を示した。
【0021】
容器断面から、底面に折り込まれた原紙の重なりを端的に説明するために<図2>(a)には本発明の液体用紙容器底部近傍の断面説明図を示した。Dで示した原紙の重なりは上部に出っ張っているが<図1>(a)に示したAとBの差で作られる空間の内部に収納されて水平面に置いた場合にその面に接触しない。このような液体用紙容器を作成する工程の例として<図2>(b)にはその底部近傍の展開図を示した。
【0022】
この展開図にHで示したのは従来の液体用紙容器の底部と側面境界の罫線であり、それに対してIで示したのは本発明の液体用紙容器の底部と側面境界の罫線の一部である。図の矢印の分だけ側面中央部が稜線より短くなっているので容器の状態では<図1>(a)のようになる。
【0023】
<図2>(b)においては折り曲げ罫線Iは上に凸の曲線形状となっており、折り曲げた結果は<図1>(a)に示したように、手前から見た底部の折り曲げ線の形状であり、この結果高さAが高さBよりも大きくなることで平面に置いた場合の自立性が確保される。
【0024】
この効果は折り曲げ罫線Iの形状によるものではあるが、図1または図2に例示した曲線には限られない。すなわち、<図2>(b)の折り曲げ罫線Iは曲線に限られず、容器稜線と底面の交点よりも上部にふくらんだ形状であればよい。
【0025】
また、容器底部を支える四点の間の原紙の折り曲げ線のうちでが対向する2つが上部にふくらんだ形状の線であれば、他の2つは直線であってもよく、工程及び強度からみてこのほうが望ましい。
【0026】
このように本発明の液体用紙容器では底部の原紙の折込み重なりによる凹凸が底部平面の上部にとどまっているため平面上に置いたときに安定しており、取り扱いがしやすい、意匠性を損なうことなしに自立性の改善された液体用紙容器となる。
【実施例】
【0027】
以下に本発明の具体的実施例について説明する。
<実施例>
液体用紙容器の原紙として、層構成がポリエチレン(PE)(20μm)/紙(400g/m2)/PE(40μm)/酸化ケイ素蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)(12μm)/PE(60μm)の基材を用いて表面(PE20μmの側)に印刷を行い、その後、<図4>(b)の展開図に示すように折り曲げ罫線をいれて、印刷物を打ち抜き、貼り工程でスリーブを作成し、内容物を充填して液体用紙容器として使用できることを確認した。
<比較例>
液体用紙容器の原紙として、層構成が(PE)(20μm)/紙(400g/m2)/PE(40μm)/酸化ケイ素蒸着(PET)(12μm)/PE(60μm)の基材を用いて表面(PE20μmの側)に印刷を行い、その後、<図4>(a)の展開図に示すように折り曲げ罫線をいれて、印刷物を打ち抜き、貼り工程でスリーブを作成し、内容物を充填して液体用紙容器として使用できることを確認した。
【0028】
以下に実施例と比較例の比較結果について説明する。
【0029】
<比較結果>
上記比較例の液体用紙容器は底部の原紙の折込み重なりによる凹凸が底部平面の下部まで飛び出しているために平面上に置いたときに傾いたり倒れたりしやすく取り扱いが非常に不安定であった。これに対して上記実施例の本発明の方法による液体用紙容器は底部の原紙の折込み重なりによる凹凸が底部平面の上部にとどまっているため平面上に置いたときに安定しており液体容器として極めて取り扱いがしやすかった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の液体用紙容器の一例の底部近傍の斜視説明図(a)及び底側から見た平面説明図(b)である。
【図2】本発明の液体用紙容器の一例の底部近傍の断面説明図(a)及び底部近傍の展開図(b)である。
【図3】従来の液体用紙容器の一例の底部近傍の斜視説明図(a)及び底側から見た平面説明図(b)である。
【図4】従来の液体用紙容器の一例の底部近傍の断面説明図(a)及び底部近傍の展開図(b)である。
【図5】従来の液体用紙容器の他の一例の底部近傍の斜視説明図(a)及び底側から見た平面説明図(b)である。
【符号の説明】
【0031】
A…稜線部分の高さ
B…側面中心部分の高さ
C…底部から見た折り返し部分
D…底部重なり断面
E…底部から見た折り返し部分(従来)
F…底部重なり断面(従来)
G…底部の紙の外側への折り返し(従来)
H…底部折り曲げ罫線(従来)
I…底部折り曲げ罫線
J…底部から見た折り返し部分(従来)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙を筒状に形成し、一端部を折り曲げ底部を形成してなる角型の液体用紙容器において、底部形成時に折り曲げ重なった原紙部分が容器底部を支える四点で作る平面から出ないように、容器の底の原紙が折り込まれる面の高さが稜線部分に比べて小さくなっていることを特徴とする液体用紙容器
【請求項2】
容器底部を支える四点の間の原紙の折り曲げ線のうちで対向する2つが直線であり他の2つが上部に凸の形状の線であることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−166858(P2009−166858A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5554(P2008−5554)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】