説明

液体芳香剤

【課題】
フレッシュな芳香を有し、使い始めから使い終わるまで、「におい」の質的および強度的変化が少ない液体芳香剤を提供すること。
【解決手段】
(A)香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液と、
(B)解乳化作用を有する成分、
をそれぞれ別々に配置しておき、(A)と(B)を接触または混合させることにより、フレッシュな「におい」を発香することを特徴とする液体芳香剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ、洗面所等の家屋内や自動車内等で使用する液体芳香剤に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香剤には液体、固体、エアゾールなど種々の形態が知られている。これらの中で液体タイプは、さらに、オイルベース、アルコールベースおよび水ベースに大別される。また、揮散方法としては芳香成分や消臭成分をセルロース繊維や合成繊維などの吸液性のある吸い上げ部材を使用し毛細管現象を利用して吸い上げ、開放された揮散体に導き、自然揮散させる方法や、液体に熱をかける方法、揮散体にファン等で風を送り強制的に揮散させる方法などが知られている。しかしながら、市場では水ベースで自然揮散させるタイプがコスト、簡便性などの理由から主流となっている。このタイプでは香料物質の多くは実質的に水に難溶であるため、界面活性剤等を用いて香料を水に可溶化または乳化し、吸い上げ部材を介して開放された揮散体に導き、香料の溶液または乳化液を揮散させることにより芳香剤としての機能を発揮している。界面活性剤等を用いて香料を水に可溶化する技術は食品、医薬品、化粧品など多くの産業分野で広く応用されている技術であり、界面活性剤としては低濃度からミセルを形成しやすい非イオン界面活性剤が好ましいこと(非特許文献1)、酸化プロピレンや酸化エチレン付加形の非イオン界面活性剤とグリセリン、1,3−ブチレングリコールなどのポリオールとの組み合わせが好適であること(非特許文献2)などが知られている。
【0003】
香料が感覚的に人によって「におい」として認識されるためには、個々の香料成分の分子が揮散して人の嗅覚器官に到達して、嗅覚器官を刺激してはじめて「におい」として認知される。この時点における個々の香料成分のバランスはきわめて重要で、このバランスが変わると異なる「におい」として認知されてしまう場合もある。一方、調合香料は、通常、数十種類の香料成分を混ぜ合わせ所望の香調を表現できるように配合されている。したがって、可溶化または乳化された個々の香料成分が、いつも同じように揮散することが同じ「におい」を保つ上で重要である。しかしながら、従来の香料を水に可溶化または乳化した溶液を吸い上げ部材を介して開放された揮散体に導き、香料の溶液または乳化液を揮散させる方法にて香気成分を揮散させる従来の液体芳香剤においては、界面活性剤等を用いて可溶化または乳化された香料の「におい」は香料そのものの「におい」とは強さや香調が異なってしまったり、使用過程で香調が変化して香気がだんだん弱くなってきたり、フレッシュ感がなくなってしまうという欠点があることが知られている。これは、香料成分の物理化学的性質の違いにより、可溶化される界面活性剤ミセルの部位が異なるため、個々の香料成分の揮散性が変化してしまうこと(非特許文献3)や、香料を可溶化した液が揮散体表面から香料および水を揮散させた後に残留する界面活性剤などの不揮発成分の蓄積が、香料の揮散に大きく影響を及ぼしているためと考えられている。したがって、芳香剤としての使用するに際して、調合香料本来の香気バランスを保ち、かつ、使用の始めから終わりまで、その香気バランスを保つことのできる液体芳香剤の開発が強く望まれている。
【0004】
一方、界面活性剤などにより可溶化または乳化された油性物質が解乳化剤と接触することにより油分が分離することは古くから知られており、解乳化作用を有する物質として、例えば、電解質が挙げられる(非特許文献4)。また、香料分野において解乳化作用を利用した例としては、解乳化作用を利用して、洗剤の粉末に乳化された香料と解乳化剤をあらかじめ含ませておき、使用時に水に溶解されると香料が解乳化されて香気を放出する提案がなされている(特許文献1)。また、無機質との接触による香気の放出方法を利用した技術として、過酸化物と粉末化した香料を混合しておき、過炭酸ナトリウムなどの過酸化物が水に溶解するときに発生する酸素ガスを利用し、香料の揮発性を高める方法(特許文献2)、香料をあらかじめデキストリンと高分子物質で粒子化し、粒子中にさらに界面活性剤、無機塩や酸を含有させておき、水に溶解するときに発香させる方法(特許文献3)等が提案されている。しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法はいずれも洗剤もしくは粉末状の芳香剤に関する技術であり、液体芳香剤において、調合したときの香料本来の香気バランスを保ち、かつ、使用の始めから終わりまで、その香気バランスを保つことのできる液体芳香剤を開示したものではない。
【0005】
【非特許文献1】日本油化学会誌,49(11,12),p.1383−1390,(2000)
【非特許文献2】最新・界面活性剤応用技術,刈米孝夫編集,シーエムシー出版,p.90−93,(1990)
【非特許文献3】日本化学会誌,12,p.1974−1980,(1984)
【非特許文献4】化学大事典2,p.269,昭和35年6月30日,化学大事典編集委員会編,共立出版株式会社
【特許文献1】特開2005−8879号公報
【特許文献2】特開2002−712号公報
【特許文献3】特開2002−121583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、フレッシュな「におい」を発香し、使い始めから使い終わるまで、「におい」の質的および強度的変化が少ない液体芳香剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、香料を可溶化または乳化した溶液を、解乳化作用を有する成分と接触または混合したときに、被可溶化物または被乳化物である香料が分離し、油滴が生成し、香料本来のフレッシュな「におい」を発香することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液と、
(B)解乳化作用を有する成分、
をそれぞれ別々に配置しておき、(A)と(B)を接触または混合させることにより、フレッシュな「におい」を発香することを特徴とする液体芳香剤を提供するものである。
また、本発明は、
(B)解乳化作用を有する成分、
を揮散体の表面または内部に配置することを特徴とする前記の液体芳香剤を提供するものである。
さらに、本発明では、
(B)解乳化作用を有する成分、
を揮散体の表面または内部に配置し、揮散体の下部に連結した吸い上げ部材により、
(A)香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液、
を吸い上げることにより(A)と(B)を接触または混合させることを特徴とする前記の液体芳香剤が提供される。
さらにまた、本発明では、
(B)解乳化作用を有する成分、
が電解質であることを特徴とする前記の液体芳香剤をも提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体芳香剤によれば、フレッシュな「におい」を発香し、使い始めから使い終わるまで、「におい」の質的および強度的変化が少ない、香料本来の「におい」が持続する、優れた液体芳香剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の液体芳香剤の香料を可溶化または乳化した溶液は特別なものである必要はなく、香料と香料を可溶化または乳化するための界面活性剤が必須成分としてあげられる。使用可能な香料は特に限定されるものではなく、天然および合成の広範囲の香料を利用することができる。具体的には、天然香料としては、例えば、アビエス、アンブレット・シード、アンジェリカ、アニス、アルモアゼ、ベージル、ベイ、ベルガモット、バーチ、ボア・ド・ローズ、カラムス、カンファー、カナンガ、キャラウェイ、カルダモン、カシア、シダーウッド、カモミル、シトロネラ、コスタス、クミン、ディル、エレミ、ユーカリ、ガルバナム、ゼラニウム、ジンジャー、グレープフルーツ、グアイアック、ガーデニア、ひのき、ホウショウ、ヒアシンス、ジャスミン、ジュニパー・ベリー、ラブダナム、ラバンジン、ラベンダー、レモン、レモングラス、ライム、リナロエ、ミモザ、ミント、オークモス、オレンジフラワー、イリス、パチョリ、パルマローザ、ペパーミント、ローズ、クラリー・セージ、サンダル、チュベローズ、ベチバー、スミレ、イラン・イランなどの精油などを挙げることができる。
【0011】
また、合成香料は、炭化水素類としては、例えば、オシメン、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、ミルセン、ジヒドロミルセン、リモネン、テルピノーレン、α−フェランドレン、p−サイメン、β−カリオフィレン、β−ファルネセン、ビサボレン、セドレン、バレンセン、ツヨプセン、ロンギホレンなどを挙げることができる。
【0012】
アルコール類としては、例えば、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、ムゴール、テトラヒドロリナロール、ヒドロキシシトロネロール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、3,6−ジメチル−3−オクタノール、エチルリナロール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、l−メントール、カルベオール、ペリラアルコール、4−ツヤノール、ミルテノール、α−フェンキルアルコール、ファルネソール、ネロリドール、セドレノール、シス−3−ヘキセノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、プレノール、10−ウンデセノール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、p−t−ブチルシクロヘキサノール、SANDALORE(登録商標)、バクダノール(IFF社商品名)、フェニルエチルアルコール、ヒドロトロパアルコール、アニスアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、シンナミックアルコール、アミルシンナミックアルコールなどを挙げることができる。
【0013】
アルデヒド類としては、例えば、シトラール、ゲラニアール、ネラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、α−メチレンシトロネラール、ミルテナール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、3,7−ジメチルオクタナール、アセトアルデヒド、n−ヘキサナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、2−メチルオクタナール、n−デカナール、ウンデカナール、2−メチルデカナール、ドデカナール、テトラデカナール、シス−3−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセナール、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、シス−4−デセナール、トランス−2−デセナール、10−ウンデセナール、トランス−2−ウンデセナール、トランス−2−ドデセナール、3−ドデセナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ドデカジエナール、シクロシトラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタール、シトロネラールシクロモノグリコールアセタール、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、オクタナールジメチルアセタール、ノナナールジエチルアセタール、デカナールジメチルアセタール、デカナールジエチルアセタール、2−メチルウンデカナールジメチルアセタール、ベンズアルデヒド、p−イソプロピルフェニルアセトアルデヒド、p−イソプロピルヒドラトロパルアルデヒド、シクラメンアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、p−メチルフェノキシアセトアルデヒド、ベンズアルデヒドジエチルアセタール、アミルシンナミックアルデヒドジエチルアセタール、ヘリオトロピンジメチルアセタール、アセトアルデヒドエチルフェニルエチルアセタール、アセトアルデヒド2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタールなどを挙げることができる。
【0014】
ケトン類としては、例えば、カンファー、メントン、ピペリテノン、ゲラニルアセトン、アセチルセドレン、ヌートカトン、ヨノン、メチルヨノン、アリルヨノン、イロン、ダマスコン、ダマセノン、イソダマスコン、2−ペンタノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、2−ウンデカノン、2−トリデカノン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、メチレンテトラメチルヘプタノン、2,3−ヘキサジオン、2−シクロペンチルシクロペンタノン、エチルマルトール、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフラノン、p−メチルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、ベンジリデンアセトン、ラズベリーケトン、メチルナフチルケトン、ベンゾフェノン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノン、ホモフロナール(Givaudan社商品名)、マルトール、エチルマルトール、4,7−ジヒドロ−2−イソペンチル−2−メチル−1,3−ジオキセピン、アセト酢酸エチルエチレングリコールケタールなどを挙げることができる。
【0015】
エステル類としては、例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸オクチル、ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、ギ酸ゲラニル、ギ酸ネリル、ギ酸テルピニル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸オクチル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、酢酸ジメチルウンデカジエニル、酢酸オシメニル、酢酸ミルセニル、酢酸ジヒドロミルセニル、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸テトラヒドロムゴール、酢酸ラバンジュリル、酢酸ネロリドール、酢酸ジヒドロクミニル、酢酸テルピニル、酢酸シトリル、酢酸ノピル、酢酸ジヒドロテルピニル、酢酸3−ペンテニルテトラヒドロピラニル、酢酸ミラルディル、酢酸2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニルメチル、プロピオン酸デセニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸ネリル、プロピオン酸テルピニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸スチラリル、酪酸オクチル、酪酸ネリル、酪酸シンナミル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸シス−3−ヘキセニル、イソ吉草酸フェニルエチル、3−ヒドロキシヘキサン酸メチル、安息香酸メチル、安息香酸ゲラニル、安息香酸リナリル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、桂皮酸リナリル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニル酢酸オイゲニル、フェニル酢酸ゲラニル、フェニル酢酸シトロネリル、フェニル酢酸メンチルサリチル酸アミル、ヘキサン酸リナリル、ヘキサン酸シトロネリル、オクタン酸リナリル、アンゲリカ酸イソプレニル、ゲラン酸メチル、ゲラン酸エチル、シクロゲラン酸メチル、アセト酢酸エチル、2−ヘキシルアセト酢酸エチル、ベンジルアセト酢酸エチル、2−エチル酪酸アリル、3−ヒドロキシ酪酸エチルなどを挙げることができる。
【0016】
フェノール類としては、例えば、チモール、カルバクロール、β−ナフトールイソブチルエーテル、アネトール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、グアヤコール、クレオゾール、ベラトロール、ハイドロキノンジメチルエーテル、2,6−ジメトキシフェノール、4−エチルグアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、エチルイソオイゲノール、tert−ブチルハイドロキノンジメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0017】
エーテル類としては、例えば、デシルビニルエーテル、α−テルピニルメチルエーテル、イソプロキセン(IFF社商品名)、2,2−ジメチル−5−(1−メチル−1−プロペニル)−テトラヒドロフラン、ローズフラン、1,4−シネオール、ネロールオキサイド、2,2,6−トリメチル−6−ビニルテトラヒドロピラン、メチルヘキシルエーテル、オシメンエポキシド、リモネンオキサイド、ルボフィクス(Firmenich社商品名)、カリオフィレンオキサイド、リナロールオキサイド、5−イソプロペニル−2−メチル−2−ビニルテトラヒドロフラン、テアスピラン、ローズオキサイドなどを挙げることができる。
【0018】
ラクトン類としては、例えば、γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、ジャスミンラクトン、メチルγ−デカラクトン、ジャスモラクトン、プロピリデンフタリド、δ−ヘキサラクトン、δ−2−デセノラクトン、ε−ドデカラクトン、ジヒドロクマリン、クマリンなどを挙げることができる。
【0019】
酸類としては、例えば、安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、桂皮酸、フタール酸、アビエチン酸、バニリン酸、ピロガロールなどを挙げることができる。
【0020】
合成ムスクとしては、例えば、ムスコン、シクロペンタデカノン、5−シクロヘキサデセン−1−オン、シクロペンタデカノリド、アンブレットリド、シクロヘキサデカノリド、ムスクアンブレット、6−アセチルヘキサメチルインダン、6−アセチルヘキサテトラリン、ガラクソリド(IFF社商品名)などを挙げることができる。その他、香料化学総覧,1,2,3[奥田治著 廣川書店出版]、Perfume and flavor Chemicals,1,2[Steffen Arctander著]、合成香料[印藤元一著 化学工業日報社出版]、特許公報 周知・慣用技術集 第1,2,3部などに記載の香料を挙げることができる。香料の使用量は、一概には言えないが、例えば、香料を可溶化または乳化した溶液全体の重量を基準として0.1〜20重量%の範囲、好ましくは0.5〜10重量%の範囲を例示することができる。
【0021】
香料の可溶化または乳化のために用いられる界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびこれらの界面活性剤を任意の比率で組み合わせて幅広く使用することができる。これらの組み合わせのうち、解乳化の作用を好適に発揮させるためには、非イオン性界面活性剤もしくは非イオン界面活性剤とアニオン性界面活性剤の組み合わせが特に好適である。
【0022】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、HLBが9〜18、好ましくは10〜16の界面活性剤、もしくは異なるHLBの界面活性剤を組み合わせてHLBが10〜16になるような組み合わせを例示できる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数が5〜20のもの)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜30のもの)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜10のもの)、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油(エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜60のもの)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数が6〜20のもの)、蔗糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられ、これらの非イオン性界面活性剤のアルキル基は、炭素数12〜18のものが好適であり、直鎖、分岐鎖の適当な鎖長のものが、可溶化能、可溶化安定性の観点から選ばれ適宜使用される。
【0023】
また、アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基の鎖長が炭素数6〜12の、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(エチレンオキシドの平均付加モル数が1〜8のもの)、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩(エチレンオキシドの平均付加モル数が1〜8のもの)、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩(エチレンオキシドの平均付加モル数が1〜10のもの)、アルキロイルサルコシン塩、アルキロイルメチルタウリン塩、アルキルイセチオン酸エステル塩、アルキロイルグルタミン酸塩などを挙げることができる。これらのアニオン性界面活性剤の対イオンとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類などが例示される。
【0024】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基の鎖長が炭素数6〜12のアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などが例示される。これらのカチオンの対イオンとしては、塩化物や臭素化物などのハロゲン化物や、水酸化物、過塩素酸塩などが挙げられるが、好ましくは塩化物である。
【0025】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられ、例えば、アルキルカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドアミン型ベタイン、アルキルイミダゾリン型ベタインが挙げられる。
【0026】
本発明に用いる界面活性剤の配合量は、可溶化または乳化される香料の量により適宜選択することができるが、通常、香料1重量部に対し0.5〜5重量部の範囲、好ましくは1〜3重量部の範囲で配合することが好ましい。界面活性剤がこの範囲より著しく多くなると解乳化作用を有する成分と接触または混合したときに、解乳化が起こりにくくなり、香料成分の油滴が生成しにくくなる可能性がある。また、界面活性剤がこの範囲より著しく少ない場合、香料の可溶化または乳化が不十分で、解乳化作用を有する成分と接触または混合される前でも、保存中に可溶化または乳化が壊れ、香料が分離してしまう可能性がある。
【0027】
本発明では、上記のように香料を可溶化または乳化した溶液を、解乳化作用のある成分と接触または混合することにより、香料成分の油滴を生成させ、フレッシュな「におい」を発香させる。界面活性剤で可溶化または乳化した香料に解乳化剤を作用させることにより、可溶化または乳化を破壊する最も一般的な原理は、界面活性剤の親水部の水和を妨げることにある。これには電解質が好適に用いられるということは広く知られている。本発明において用いることのできる電解質は特別なものである必要はなく、一般的なものを使用することができ、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウムなどを用いることができる。これらのうち、特に硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムが好適に用いられる。また、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を特に高濃度に用いている場合は、カルシウム塩やマグネシウム塩を用いても良い。
【0028】
本発明において香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液と解乳化作用を有する成分は、芳香剤としての使用開始前においては両者の接触や混合を避けるため、それぞれ別々に配置しておく必要がある。また、使用開始後は香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液が少量ずつ徐々に解乳化作用を有する成分と接触または混合される必要がある。徐々に接触または混合されることにより、長期にわたり、使い始めから使い終わるまでフレッシュな「におい」を発香し続けることが可能となる。したがって、香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液が少量ずつ徐々に解乳化作用を有する成分と接触または混合される方法であれば、いかなる方法または構造でも採用することができるが、このような接触または混合を行うことができる構造として以下のものを例示することができる。すなわち、揮散体の表面または内部に解乳化作用を有する成分を配置しておき、揮散体の下部には揮散体と連結した吸い上げ部材を有する構造とし、香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液を吸い上げ部材により吸い上げることにより両者の接触または混合を行う構造である。この構造および方法では香料を可溶化または乳化した溶液が、吸い上げ芯の毛細管現象により吸い上げられ、外部に開放された揮散体内部または表面にあらかじめ添加されている解乳化作用を有する成分と接触または混合することにより解乳化が起こり、揮散体において香料の油滴が分離し、この油滴からフレッシュな「におい」が発香される。しかも、この構造および方法においては何ら特別な吸い上げ芯や揮散体を必要とはせず、従来から液体芳香剤に用いられているセルロース繊維や合成繊維で構成されている吸い上げ芯や揮散体をそのまま用いることができる。
【0029】
本発明における解乳化作用を有する成分の濃度は、香料を可溶化または乳化した溶液を解乳化できる濃度であれば良く、解乳化剤の種類、使用される界面活性剤の種類や濃度および香料の種類や濃度により異なる。さらに、解乳化作用により分離した香料および水は揮散体から順次揮散してゆき、解乳化剤は揮散体にとどまり、界面活性剤は次第に蓄積してゆくため、理論的に決定することは困難である。しかしながら、解乳化作用を有する成分の配合量を変えた試料を数点作成し、「におい」の質の変化をみながら、配合量を決定することができる。解乳化作用を有する成分の配合量は、通常、香料を可溶化または乳化した溶液に含まれる界面活性剤100重量部に対し、約1〜100重量部の範囲内、好ましくは2〜50重量部の範囲内であれば本発明の目的を達成することができる。
【0030】
本発明の液体芳香剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、通常芳香剤に使用されている各種添加物を配合することができる。かかる添加物としては、例えば、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防臭剤、抗菌剤、溶剤、ハイドロトープ剤、紫外線吸収剤、色素、防虫剤、殺虫剤、忌避剤などを例示することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0031】
実施例1
(液体芳香剤の調製)
表1に示す配合処方で液体芳香剤を調製し、図1に示す揮散容器に充填した。なお、容器等のサイズは以下のものを使用した。
1 液体用容器
底部長径:87mm
底部短径:63mm
高さ :120mm
2 吸上げ芯
長さ:150mm
直径:3mm
3 揮散体
縦:55mm
横:50mm
高さ:10mm
重量:4.95g
【0032】
【表1】

【0033】
配合方法:
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよび香料を所定量のエタノールに加えて攪拌溶解させる。この溶液を所定量のイオン交換水に攪拌しながら徐々に加えてゆき、透明な香料可溶化液を得た。
この香料の可溶化液400gを図−1に示した揮散容器に充填し、吸い上げ芯、硫酸ナトリウム1.4gを添加した揮散体を装着して本発明の液体芳香剤(本発明品1)を得た。
揮散体への硫酸ナトリウムの添加は、硫酸ナトリウムを溶解した水溶液を揮散体に含浸させ、その後、乾燥させることにより均一に添加した。硫酸ナトリウムの添加量は、硫酸ナトリウム水溶液の濃度と揮散体への含浸液の重量から計算した。
【0034】
実施例2
揮散体への硫酸ナトリウムの添加量を0.7gとした以外は実施例1と全く同様の操作を行い、本発明品2を得た。
【0035】
比較例1
揮散体に硫酸ナトリウムを全く添加しない以外は実施例1と全く同様の操作を行い、比較品1を得た。
【0036】
実施例3
(揮散試験および官能評価)
25℃に温度調節され、一定の換気が行われている揮散室に本発明品1、2および比較品1を設置し、揮散を開始した。揮散開始後7日目、29日目、41日目および59日目に揮散重量の測定、においの強さ、香調について評価した。においの強さ、香調については専門パネラー3名により評価を行った。
においの強さの評価は以下の基準で行い、3名の採点を平均した。
比較品1に比べて強い +1
比較品1に比べてやや強い +0.5
比較品1と同じ 0
比較品1に比べてやや弱い −0.5
比較品1に比べて弱い −1
香調については専門パネラー3名の総合判断で評価した。
結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
重量の測定結果より、本発明品1および本発明品2の液体芳香剤の揮散重量はいずれも同様の重量変化を示し、7日目、29日目、41日目、59日目においてほとんど差が見られなかった。また、重量減少率から見て、7日目はほぼ開始直後、59日目はほぼ終了直前と見なすことができる。
においの強さについては、本発明品1および本発明品2の液体芳香剤は、いずれも比較品1と比べて、7日目以降、59日目まで、いずれの時点においても、においが強いという結果であった。
また、香調についても7日目以降、59日目まで、本発明品1および本発明品2は比較品1と比べていずれの時点にいても瑞々しく、トップの強さが感じられたという結果であった。
【0039】
実施例4
(解乳化の確認)
表1に示した処方の液体芳香剤溶液10gに種々の電解質各2gを加えて良く振り混ぜ、25℃で1夜放置し、油滴の分離を肉眼にて観察した。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
表3に示したとおり、表1に示した消泡の液体芳香剤溶液は電解質との混合により、解乳化が起こり、香料成分の油滴が生成していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の液体芳香剤容器の本体、揮散体と吸上げ芯の例を示す断面図(概念図)である。
【符号の説明】
【0043】
1 液体用容器
2 吸上げ芯
3 揮散体
4 液体芳香剤溶液
5 中栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液と、
(B)解乳化作用を有する成分、
をそれぞれ別々に配置しておき、(A)と(B)を接触または混合させることにより、フレッシュな「におい」を発香することを特徴とする液体芳香剤。
【請求項2】
(B)解乳化作用を有する成分、
を揮散体の表面または内部に配置することを特徴とする請求項1に記載の液体芳香剤。
【請求項3】
(B)解乳化作用を有する成分、
を揮散体の表面または内部に配置し、揮散体の下部に連結した吸い上げ部材により、
(A)香料成分を可溶化または乳化した液体芳香剤溶液、
を吸い上げることにより(A)と(B)を接触または混合させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体芳香剤。
【請求項4】
(B)解乳化作用を有する成分、
が電解質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体芳香剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−302079(P2008−302079A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152974(P2007−152974)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】