説明

液体試料の混合装置および方法

【課題】振動装置によって生じる動き、特に振動装置によって生じる回転運動が、例えばキュベットのような混合すべき内容物の入った容器にできるだけ最大限に且つ再現可能に伝達されることを保証する。
【解決手段】支持アーム11と、液体容器ホルダ12と、支持アーム11と液体容器ホルダ12との間に配置された可撓性中間要素13と、振動装置14と、液体容器ホルダ12に配置された結合装置15とを備え、結合装置15によって、振動装置14と液体容器ホルダ12との間の分離可能な結合が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物学、分析、法医学、または、臨床診断用の自動分析機器に用いられる液体試料を混合し、必要に応じて液体試料を輸送する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物学、分析、法医学、および、臨床診断に現在日常的に用いられている自動分析器は、一般に一連の連続して繰り返す作業ステップを実施する。これらの作業ステップの多くでは、正確な検査結果を提供するために、さまざまな材料をできるだけ均一に混合しなければならない。均一な混合の必要性は、とりわけ血液、血清、または、血漿試料のような液体試料に関連する。一例として、これらは、分析装置への供給前に分析試薬と均一に混合されなければならない。
【0003】
例として、このために、先行技術にはマグネチックスターラーを用いて混合する装置が存在する。しかしながら、これらの装置は、マグネチックスターラーに付着してマグネチックスターラーによって試料に到達する可能性のある粒子によって容器内容物を汚染するリスクを秘めている。
【0004】
もう1つの既知のアプローチは、Simens Healthcare Diagnostics社製の凝結分析器BCS(登録商標)およびBCS(登録商標) XPのキュベットロータによって提供される。これらの機器では、液体がキュベットロータの相互に独立した異なるチャンバ内にピペットで入れられる。ロータの高速回転およびその際に生じる遠心力によって、液体が外側チャンバに放り込まれ、そこで混合される。しかしながら、この構成には、複数のチャンバと比較的複雑な構造計が必要になる。一例として、先行技術文献の1つ(例えば特許文献1参照)には、こうしたキュベットロータの記載がある。
【0005】
さらに、先行技術文献の1つ(例えば特許文献2参照)には、バネによって引き合わせられる2つのグリッパアームから構成されたグリッパが開示されている。このグリッパは、移送アームに結合された保持要素に取り付けられている。移送アームと保持要素との組合せは、例えば、化学、臨床、および/または、生物試料を処理し、操作し、分析するためのロボットステーションの一部とすることが可能である。この場合、接続要素を用いて、保持要素が偏心器を介して振動装置の働きをするモータに接続される。このモータが回転すると、グリッパが振動させられる。グリッパが液体内容物の入った試料容器を把持している場合、モータからグリッパに振動が伝達されることによって、試料容器内の液体が混合される。
【0006】
しかしながら、この装置では、いかなる場合でもモータによって生じる振動がキュベットにも到達するという保証が得られない。発明者の観測したところによれば、特定のケースでは、振動は少なくとも部分的に移送アームに伝達され、従って、例えばロボットステーションを振動させ、そのため混合結果が損なわれ、場合によってはロボットステーションを危険にさらす可能性さえある。
【0007】
さらに、混合装置の一部がつかえたりあるいは動かなくなったりするとすぐに、キュベットへの振動伝達が損なわれる可能性がある。さらに、キュベットの振動が増大すると、関与する構成要素に変化または障害を生じる結果として、さまざまな影響をもたらす可能性がある。全てのキュベットは、機器が異なっても、できるだけ全く同じに混合すべきなので、これは望ましくない。
【0008】
さらに、移送アームを移動させる毎に、モータも動かされるが、これによって混合装置の機能性が損なわれる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1008844号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第742435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、前述の欠点を回避する液体試料の混合装置を提供することにある。
【0011】
とりわけ、本発明の課題は、振動装置によって生じる動き、特に振動装置によって生じる回転運動が、例えばキュベットのような混合すべき内容物の入った容器にできるだけ最大限に且つ再現可能に伝達されることを保証する液体試料の混合装置および方法を提供することにある。
【0012】
さらに、この動きを監視できると好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの課題は、本請求項1の特徴を備えた装置によって実現される。従属請求項には望ましい実施態様が明記されている。
【0014】
本発明については、下記で示され、論じられる図を用いてさらに詳細に説明される。その際に留意すべきは、それらの図が単なる説明用であって、本発明の制限を意図したものでは全くないという点である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、振動装置14がモータを備え、結合装置15が偏心ピン17と相補的に形成されてぴったりと合う結合穴を備えている本発明による液体試料の混合装置10の実施形態を示す図である。
【図2】図2は、同様に、振動装置24がラウドスピーカを備え、結合装置25が接触要素27を備えている本発明による液体試料の混合装置20の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、
a)支持アームと、
b)液体容器ホルダと、
c)支持アームと液体容器ホルダとの間に配置された少なくとも1つの可撓性(flexible)中間要素と、
d)振動装置と、
e)液体容器ホルダに配置された結合装置とを備え、
f)結合装置によって、振動装置と液体容器ホルダとの間に分離可能な結合が構成される
ことを特徴とする液体試料の混合装置が提供される。
【0017】
本発明による液体試料の混合装置は、例えば実験用ロボットに組み込むことが可能であり、可撓性中間要素が設けられていることにより、液体容器ホルダの可動性(mobility)を上下動に限定することなく、振動装置の可能性のある動きの大部分を液体容器に確実に伝達することができるので有利である。可撓性中間要素によって、振動装置によって発生し結合装置を介して液体容器ホルダに伝達される平面円運動が、支持アームに伝達されないことが保証される。振動装置によって液体容器ホルダに伝達される平面円運動が支持アームにも伝わると、支持アームの動作に繰返しエラーが生じる。
【0018】
本発明の場合、振動装置は支持アームに分離可能に結合されるので、特許文献2による装置の場合のように、支持アームの移動毎に動かす必要もない。
【0019】
さらに、本発明による液体試料の混合装置の利点は、前記液体容器の混合させるべき内容物の混合時に、磁気混合装置の場合のように磁性粒子も磁気ピンも混合のために液体容器内に入れなくてもよいので、液体容器の内容物と他の補助手段とを接触させる必要がないという点である。
【0020】
以下において、用語「可撓性中間要素」は、液体容器内の液体の最適且つ効率の良い混合を確保するために、ホルダと支持アームとの間に取り付けられて、振動装置の動きを減衰させ、動きが支持アームに伝達されるのを阻止し、振動過程中にホルダに十分な可動性を与えるが、同時に、支持アームおよびホルダがキュベットを持ち上げ、移送し、下ろすことができるようにするのに十分な剛性を備えた装置を表すものとする。
【0021】
本発明による液体試料の混合装置において、可撓性中間要素が、エラストマ、ウレタンゴム、天然ゴム、発泡体、または、バネ鋼のような弾性および/または制振材料から構成されると好ましいが、これらの材料に限定されない。さらに、捻りに対する防護を保証するため、互いに隣接してまたは上下に複数の独立した可撓性中間要素を用いることが可能である。
【0022】
可撓性中間要素は、液体容器が振動させられ、そして、場合によっては別のシステム構成要素が配置されている支持アームが振動させられないことを保証し、さらに、液体容器内の液体試料の最適な混合を実現するために、液体容器ホルダが十分な可動性を有する(すなわち振動可能である)ことを保証する。しかしながら、同時に、液体容器ホルダは、その厚さによって容器の移送時におけるグリッパのたわみも限定する。
【0023】
以下において、用語「支持アーム」は、可撓性中間部品を介して液体容器ホルダが配置される装置を表すものとする。
【0024】
支持アームは、液体容器ホルダを移動させることができる移送アームであると望ましい。
【0025】
移送アームは、化学試料、臨床試料、および/または、生物試料を処理し、操作し、分析するためのロボットステーションの一部をなす場合、とりわけ実用にかなっている。プロセス中、移送アームは、例えばピペットステーションから測光器またはPCRサイクラにキュベットのような液体容器を移送する働きをする。
【0026】
この場合、移送アームはロボット手段によって変位させるのが望ましい。移送アームは、さらに、例えば微生物学、分析、法医学、または、臨床診断用の実験機械または実験システムの一部であると望ましい。
【0027】
用語「振動装置」は、一般に、混合を実現するために液体容器内の液体を動かす装置を表わしている。
【0028】
1つの望ましい実施形態では、振動装置はモータで駆動される偏心器を備えている。
【0029】
機械学および工業技術において、偏心器は、シャフトに取り付けられ中心がシャフト軸からずれている制御円板であると理解されている。偏心器は、例えば回転運動を並進運動に変換するために、また、その逆を行うために用いることが可能である。例として、モータは、電気モータ、サーボモータ、または、ステップモータとすることが可能である。この場合、偏心器は、共軸駆動することができるが、同様にベルトドライブまたはピニオンドライブによって駆動することも可能である。
【0030】
しかしながら、振動装置は、振動を液体容器に伝達することができる超音波振動装置またはラウドスピーカであってもよい。
【0031】
以下において、用語「液体容器」は、混合されて輸送される液体を収容する装置を表わすものとする。
【0032】
さらに、液体容器は、
微小反応槽(例えば、いわゆる「エッペンドルフ管」)、
測光器キュベット、および/または、
遠心分離容器
を含むグループから選択された少なくとも1つの容器である。
【0033】
以下において、用語「液体試料」または「試料」は、微生物学、分析、法医学、または、臨床診断において通常用いられる量の液体を表わすものとする。試料は、例えば血液、血漿、または、血清試料の場合、通常は分析される液体の一部を構成している。しかしながら、試料は、例外的なケースでは利用可能な全ての液体であってよい。
【0034】
さらに、1つの望ましい実施形態では、混合装置は、グリッパの運動の持続時間、振動数、および、定性的に振幅を、従って、液体容器における混合過程を監視することができるセンサを備えている。前記センサはホールセンサであると望ましい。
【0035】
ホールセンサ(ホールプローブまたはホール変換器とも呼ばれ、エドウィン・ホールにちなんで名づけられた)は、ホール効果を利用して、磁界または磁束を測定するかまたは位置を検出する。本発明による液体試料の混合装置の場合、1つの望ましい実施形態では、液体容器ホルダに磁石が埋め込まれており、その磁界が固定のホールセンサによって測定される。ホールセンサの位置における磁石の磁界は、ホールセンサと磁石との間の距離が増加するにつれて弱まるので、ホールセンサの位置における磁界の値から、ホールセンサに対する磁石の相対位置、従って、ホールセンサに対する液体容器ホルダの相対距離を計算することが可能である。
【0036】
本発明の1つの特に望ましい実施形態では、モータと液体容器ホルダとは、混合過程中にのみに相互に結合される。
【0037】
以下において、用語「ホルダ」は、液体容器を保持することができる装置を表すものとする。ホルダは、液体容器を把持し、保持し、解放することが可能である。ここで、ホルダはこのホルダに一体形成された液体容器用グリッパを備えると有利である。
【0038】
原理上、把持は、取り上げて、保持するための基本動作であり、ロボットまたは分析機器と、ワークピース、このケースでは液体容器との間の結合を確立する。ここで、作用対のタイプおよび接触平面の数は確実な結合にとって決定的に重要である。作用対は、摩擦対(摩擦結合対)、嵌合対(嵌合結合対)、または、接着対(接着結合対)によって得ることが可能である。摩擦対を利用すると、ワークピース表面に働く圧力によって保持が生じる。これとは対照的に、嵌合対の場合、同じ形状物によってワークピースを包むことによって保持が生じる。この場合、確実なガイド時に、伝達される締付け力は極めて弱い。接着対の場合、ワークピースとの接触は接着剤を利用することによって生じる。
【0039】
さらに、把持システムは、その作用に基づいて機械式、空気圧式、磁気式、および、接着式システムに分類することが可能である。これらの作用は、把持システムのフレキシビリティを高めるため、組み合わせて利用することも可能である。
【0040】
本発明の範囲内では、機械的グリッパを用いるのが望ましいが、とりわけ、磁気グリッパを利用することも可能である。剛性構造、剛性ヒンジ付き構造、又は、弾性構造による機械的グリッパとして、1つのフィンガ、2つのフィンガ、または、多数のフィンガを持つグリッパが存在する。
【0041】
特許文献2には、バネによって引き合わせられる2つのトングから構成されたグリッパが開示されている。このグリッパの製造は、さまざまな部品を組み立てなければならないので、コストの上昇および複雑さの増大に結びつく。
【0042】
それとは対照的に、本発明における望ましいグリッパは一部品から製造される。これによって、個別部品を組み立てる必要がなくなり、組み立てられたグリッパの適正な動作はただランダムに検査すればよく、各個別ユニット毎に検査する必要はないので、再現可能な大量生産が可能になる。
【0043】
一体化グリッパは、弾性変形させることができ、張力のかかった状態にあるように構成されている。障害物に逆らって十分な力でグリッパを動かすと、これによってスナップ効果が生じ、グリッパが開く。障害物の方向にさらに動かすと、グリッパは障害物を包み込み、障害物を完全に包み込むや否や、張力のかかった状態にあるため、前記グリップは素早く閉じる。さらに、グリッパをもう一度開くのに必要な解放力に打ち勝つと、グリッパは包み込んだ障害物を再び解放する。
【0044】
従って、混合装置の動作中、ホルダは、例えば、移送アームの横移動または前後移動によってまず液体容器の方向に移動する。キュベットであると望ましい液体容器は例えばスタンドに立っている。ホルダは、キュベットに到達すると、キュベットのフランジによって押し開かれ、プラスチック材料のバネ作用または張力のかかった状態のためにさらに移動すると、キュベットを包み込む。キュベットの包囲後、前記キュベットはホルダまた移送アームの上昇移動によって持ち上げることが可能である。キュベットは、今や保持されており、移送アームの移動によって移動させることが可能である。
【0045】
ホルダ内のキュベットを下ろすために、移送アームの移動によって前記キュベットをスタンドに送り込み、ホルダを引っ込めると、キュベットがスタンド内に残される、すなわち、ホルダが再び押し開かれて、キュベットを解放し、さらに、弾性によって再び閉じる。
【0046】
以下において、用語「結合装置」は、例えば偏心ピンおよび結合穴によって、振動装置を液体容器ホルダに分離可能に結合する装置を表すものとする。
【0047】
さらに、結合装置が、振動装置の相補的部分に係合可能に構成された結合穴または結合ピンを備えると望ましい。結合穴の開口部に面取り部分が形成されることによって、前記結合穴には常に結合ピンを直接に押し込むことが可能になり、結合ピンをある特定の位置に予め移動させておくことは必要がない。
【0048】
この場合、振動装置が、結合装置の相補形結合穴に係合可能である偏心ピンとして形成されている結合ピンを備えると望ましい。こうした改良は、振動装置が偏心器を備えたモータである場合にとりわけ適している。
【0049】
本発明による液体試料の混合装置の代替実施形態において、結合装置は、例えば摩擦継手、磁気継手、または、フランジ継手の形態で存在する。こうした改良は、振動装置が超音波装置またはラウドスピーカである場合にとりわけ適している。
【0050】
さらに、振動装置は移動可能に構成されていると望ましい。
【0051】
こうした構成によって、混合プロセスの開始前に、振動装置を液体容器ホルダに接触させることが可能になる。これは、支持アームが可動移送アームとして構成されておらず、従って、可動性が低い場合にはとりわけ好都合である。
【0052】
さらに、本発明によれば、本発明による液体試料の混合装置を備え、化学試料および/または生物試料を処理し、操作し、分析するためのロボットステーションまたは自動分析機器も提供される。
【0053】
さらに、
a)液体試料を収容した液体容器をホルダによって保持するステップと、
b)ホルダを結合装置によって振動装置に結合するステップと、
c)液体試料を混合するステップと、
d)ホルダを振動装置から分離するステップと
が含まれている液体試料の混合方法も提供される。
【0054】
ステップc)と同時に、例えば、液体容器ホルダにおける磁石の移動を記録するホールセンサによって混合プロセスを監視すると望ましい。
【0055】
この方法には、さらに、
e)混合開始前に、液体容器を把持するステップと、
f)分離後、液体容器を移送するステップと、
g)容器を解放するステップと
のうちの1つのステップを含むのが望ましい。
【0056】
例えば、ステップe)において液体容器をピペットステーションで把持する前に、ピペットで反応液または試料液を容器に加えてもよい。
【0057】
ステップf)において、混合の終了後に、例えば測光器、PCRサイクラ等のようなロボット/分析機器における別のステーションに容器を送り込むことも同様に可能である。
【0058】
例として、ステップg)において、測光器、PCRサイクラ等内に容器を置くようにすることも可能である。
【0059】
前記方法では、振動装置とホルダとは混合中にのみ相互に結合されると望ましい。
【0060】
本発明によれば、さらに、本発明による装置によって実施される前述の説明による方法が提供される。
【0061】
さらに、本発明によれば、前述の方法を実施するためのこのような装置の用途も与えられる。
【0062】
図1には、本発明による液体試料の混合装置の1つの優れた実施形態が示されている。この例では、分析機器の一部をなす液体試料の混合装置10は、移送アーム11と、キュベットホルダ12と、移送アーム11とキュベットホルダ12との間に配置された可撓性中間要素(このケースではゴム円板)13と、モータ14から成る振動装置と、モータ14に配置された偏心ピン17に対して相補的に形成されキュベットホルダ12に配置された結合装置(この場合は結合穴)15と、キュベット16とを含んでいる。
【0063】
このような液体試料の混合装置の場合、キュベットホルダ12、従ってキュベット16も、移送アーム11を移動させることによって分析機器内で移動させることが可能になる。キュベット16内の試料を混合するために、結合穴15は偏心ピン17の上に下ろされ、それにより、両者間に分離可能な結合が生じる。従って、円運動(矢印参照)を行う偏心ピン17によって、モータ14の動きをキュベットホルダ12、従ってキュベット16に伝達することが可能になる。このようにして、回転運動によってキュベット内容物の混合が生じる。混合に必要なキュベットホルダ12の可動性は、キュベットホルダ12が動くことによって互いに繰返し押し付けられる可撓性ゴム円板13によって確保される。結合穴15は、その開口に面取り部分を有し、この面取り部分は、偏心ピン17をある特定の位置に予め移動させておくことを必要とせずに、結合穴15を偏心ピン17上に常に直接に移動させることができるようにするのに役立つ。
【0064】
さらに、混合装置は、移送アームに配置された象徴的に例示されたホールセンサ18を備えている。このホールセンサ18は、キュベットホルダ12に配置された磁石19から放射された磁界を検出し、とりわけ、前記磁石の動きを測定して、監視装置(図示されていない)に伝達することが可能である。
【0065】
図2には、本発明による液体試料の混合装置の他の実施形態が示されている。この例の場合、やはり分析機器の一部をなす液体試料の混合装置20は、移送アーム21と、キュベットホルダ22と、移送アーム21とキュベットホルダ22との間に配置された可撓性中間要素(このケースではゴム円板)23と、ラウドスピーカから成る振動装置24と、キュベットホルダ22に配置された接触要素27を備える結合装置25と、キュベット26とを含んでいる。
【0066】
図1において説明したように、このような液体試料の混合装置の場合、キュベットホルダ22、従ってキュベット26も、移送アーム21を移動させることによって分析機器内で移動させることが可能である。
【0067】
キュベット26内の試料を混合するために、結合装置25は接触要素27を介してラウドスピーカ24に結合することが可能である。このため、結合装置25は、移送アーム21を移動させることによってラウドスピーカ24に押し当てられる。ラウドスピーカ24自体は、増幅器(図示されていない)によってラウドスピーカを振動させる周波数発生器28に接続されている。従って、ラウドスピーカ24の振動は、接触要素27を介してキュベットホルダ22、従ってキュベット26に伝達することが可能である。このようにして、ラウドスピーカの放射する音波の振幅および位相によって決まる振動運動によって、キュベット26の内容物が混合される。混合に必要なキュベットホルダ22の可動性は、可撓性ゴム円板23によって確保される。
【0068】
上記で例示の図から逸脱して、さらに、分離可能な結合を実現するために移動させられる振動装置を設けることも可能である。さらに、それとは異なる様式で設計された振動装置も実現可能であり、本特許出願の内容に包含される。
【符号の説明】
【0069】
10 液体試料の混合装置
11 移送アーム
12 キュベット用ホルダ
13 可撓性中間要素
14 モータ
15 結合穴
16 キュベット
17 偏心ピン
18 ホールセンサ
19 磁石
20 液体試料の混合装置
21 移送アーム
22 キュベット用ホルダ
23 可撓性中間要素
24 ラウドスピーカ
25 結合装置
26 キュベット
27 接触要素
28 周波数発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)支持アーム(11、21)と、
b)液体容器ホルダ(12、22)と、
c)前記支持アーム(11、21)と前記液体容器ホルダ(12、22)との間に配置された少なくとも1つの可撓性中間要素(13、23)と、
d)振動装置(14、24)と、
e)前記液体容器ホルダ(12、22)に配置された結合装置(15、25)とを備え、
前記結合装置(15、25)によって、前記振動装置(14、24)と前記液体容器ホルダ(12、22)との間に分離可能な結合が構成される
ことを特徴とする液体試料の混合装置。
【請求項2】
前記可撓性中間要素(13、23)が弾性および/または制振材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可撓性中間要素(13、23)がゴム円板から構成されることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記支持アーム(11、21)が移送アームであり、この移送アームによって前記液体容器ホルダ(12、22)が移動されることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の装置。
【請求項5】
前記液体容器(16、26)が、
微小反応槽、
測光器キュベット、および、
遠心分離容器
を含むグループから選択された少なくとも1つの容器であることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の装置。
【請求項6】
前記混合装置が、さらに、前記液体容器(16、26)内での混合プロセスを監視するセンサを備えることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の装置。
【請求項7】
前記振動装置(14、24)と前記液体容器ホルダ(12、22)とは混合プロセス中にのみ相互に結合されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の装置。
【請求項8】
前記液体容器ホルダ(12、22)が、この液体容器ホルダ(12、22)と一体形成された液体容器用グリッパ(16、26)を備えることを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の装置。
【請求項9】
前記振動装置(14、24)が移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の装置。
【請求項10】
前記結合装置(15)が、前記振動装置(14)の相補的部分と係合可能に構成された結合穴または結合ピンを備えることを特徴とする請求項1乃至9の1つに記載の装置。
【請求項11】
前記振動装置(14)が、モータにより駆動される偏心器を備えることを特徴とする請求項1乃至10の1つに記載の装置。
【請求項12】
前記振動装置(24)がラウドスピーカを備えることを特徴とする請求項1乃至9の1つに記載の装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の1つに記載の装置を備え、化学試料および/または生物試料を処理し、操作し、分析するための自動分析機器。
【請求項14】
a)液体試料を収容した液体容器(16、26)をホルダ(12、22)によって保持するステップと、
b)前記ホルダ(12、22)を結合装置(15、25)によって振動装置(14、24)に結合するステップと、
c)前記液体試料を混合するステップと、
d)前記ホルダ(12、22)を前記振動装置(14、24)から分離するステップと
が含まれていることを特徴とする液体試料の混合方法。
【請求項15】
さらに、
e)混合の開始前に、前記液体容器(16、26)を把持するステップ、
f)分離後、前記液体容器(16、26)を移送するステップ、および、
g)前記容器(16、26)を解放するステップ
のうち少なくとも1つのステップが含まれることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記振動装置(14)と前記ホルダ(12)とは混合中にのみ相互に結合されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が請求項1乃至12の1つに記載の装置によって実施されることを特徴とする請求項14乃至16の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−78969(P2011−78969A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227444(P2010−227444)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510259921)シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (11)
【Fターム(参考)】