説明

液体試料の総蛋白質を測定するための液状試薬

【課題】スクリーニング検査に相応しい色素結合法の原理で生体試料などの液体試料中の総蛋白質を測定する際に、アルブミンを含む幅広い蛋白質と反応し、極めて高い感度で総蛋白質を測定することのできる液状試薬を提供する。
【解決手段】液体試料中の総蛋白質を測定するための液状試薬において、化学式1で示される化学構造を有する蛋白質測定用指示薬と、pHを1.0〜3.5に調整したギ酸緩衝液と、非イオン性界面活性剤と、を含ませた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質含有試料液、特に尿中に存在する総蛋白質を測定するための液状試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査では総蛋白質の定量法として、様々な方法が用いられている。総蛋白質の定量方法としては屈折計法、280nmでの特異的な吸収に基づく方法、比濁法、ケルダール法、ビシンコニン酸法、ペプチド結合を強アルカリ条件下で銅と錯体を形成し、赤紫色(550nm付近)に発色するビウレット法などがある。特にビウレット法は、各種存在する蛋白質の種類に関係なく発色感度が一定であり簡単に比色定量できるので、多くの分野で利用されている。
【0003】
ところが、このビウレット法は感度が低いという最大の課題がある。また、強アルカリを用いるために、廃液処理も問題であった。ビウレット法はこれらの欠点を持っているが、血清中には、蛋白質が数グラムのオーダーで存在するので、血清中の総蛋白質を定量する場合にはむしろ好都合であった。しかし、尿中や髄液中の蛋白質はミリグラムのオーダーで存在するために、ビウレット法では測定できない課題があり、高感度に総蛋白を測定できる試薬の開発が要望されていた。
【0004】
例えば、尿中の蛋白質として、アルブミンだけでなく、α1−ミクログロブリン、β2−ミクログロブリン、ベンスジョーンズ蛋白、レチノール結合性蛋白など多くの低分子蛋白や変性蛋白質が存在する。これらの蛋白質は、それぞれに臨床的意義があるが、主に電気泳動法で測定されている。
【0005】
総蛋白質を高感度に測定する方法として免疫学的に測定する方法があり、尿中には上記のような代表的な蛋白質以外に数十種類の蛋白質が存在し、これらの各蛋白質の抗体を作って、免疫比濁法で全ての蛋白質をまとめて総蛋白を測定することができるが、抗体の試薬コストが非常に高価になるために現実的でない。
【0006】
総蛋白質の高感度測定方法として、ピロガロール−Moを用いた三元錯体法が開発され、生成した三元錯体結合物が光学測定セルへの沈着が少ないという利点もあることから、多くの臨床の現場で使用されるようになった(特許文献1)。しかし、最小検出感度が2〜5mg/dL付近であるために、微量な蛋白質は測定できない。また、アルブミン以外のタンパク質(主にベンス−ジョーンズ蛋白やグロブリン)との反応性が低く、総蛋白を測定できるとは言い難い。
【0007】
同様の三元錯体法であるブロモピロガロールレッド−In法は、アルブミン以外のタンパク質(主にベンス−ジョーンズ蛋白やグロブリン)との反応性が向上したために総蛋白を測定することはできるようになったが、最小検出感度的には1〜5mg/dL付近までしか測定できない。(特許文献2)
【0008】
【特許文献1】特開昭61−155757号公報
【特許文献2】国際公開WO2004/015423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
尿中の総蛋白を、まず、スクリーニング的に、網羅的に高感度に測定できる、簡便で安価な方法が要望されていた。スクリーニング検査で異常が見つかれば、各成分を免疫学的に精密定量し、又は電気泳動法や液体クロマトグラフィー法で分離分析し、病態を特定することができる。
【0010】
そこで本発明は、スクリーニング検査に相応しい色素結合法の原理で生体試料などの液体試料中の総蛋白質を測定する際に、アルブミンを含む幅広い蛋白質と反応し、極めて高い感度で総蛋白質を測定することのできる液状試薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、液体試料中の総蛋白質を測定するための液状試薬であって、下記化学式1または下記化学式2で示される化学構造を有する蛋白質測定用指示薬と、pHを1.0〜3.5に調整したギ酸緩衝液と、非イオン性界面活性剤と、を含むことを特徴とする、液体試料中の総蛋白質を測定するための液状試薬である。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【発明の効果】
【0014】
本発明者らは鋭意研究の末、三元錯体法とは異なる総蛋白高感度測定方法である色素結合法を改良し、さらに高感度に総蛋白質を測定でき、さらに総蛋白に特異的である処方を見出し、本発明を完成させた。これにより、より低濃度から高濃度までの総蛋白質を広範囲に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の液状試薬は、蛋白質測定用指示薬として、色素結合法で用いられるハロゲン化キサンテン系色素のうち、下記化学式3で示される化学構造を有するアシッドレッド92(一般名:フロキシンB(Phloxine B))または下記化学式4で示されるアシッドレッド94(一般名:ローズベンガル(Rose Bengal))を使用するものである。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
本発明の液状試薬におけるアシッドレッド92(上記化学式3)およびアシッドレッド94(上記化学式4)の濃度は、たとえば0.005〜0.2mmol/Lである。好ましくは、液状試薬に含有される指示薬の濃度は、0.01〜0.1mmol/Lとされる。
【0019】
本発明の液状試薬はさらに、反応系のpHを1.0〜3.5の条件に調整することのできるギ酸緩衝液と、非イオン性界面活性剤と、を含んでいる。
【0020】
ギ酸緩衝液としては、指示薬としてアシッドレッド92(上記化学式3)を用いる場合には、反応系のpHを2.3〜3.5とすることができるものを使用するのが好ましく、指示薬としてアシッドレッド94(上記化学式4)を用いる場合には、反応系のpHを2.3〜2.8とすることができるものを使用するのが好ましい。
【0021】
液状試薬に含有される緩衝液の濃度は、たとえば0.01〜0.5mol/Lとされ、好ましくは0.05mol/Lとされる。
【0022】
液状試薬に含有される非イオン性界面活性剤は、指示薬であるアシッドレッド92およびアシッドレッド94の溶解性を向上させるためのものである。非イオン性界面活性剤としては、指示薬と総蛋白質との反応性を阻害させないものを使用するのが好ましく、ソルビタン系界面活性剤が好ましく使用され、一般名Brij35として市販されているポリオキシエチレンラウリルエーテルを使用することで、より総蛋白質に対する特異性を上げることができる。液状試薬における非イオン性界面活性剤の濃度は、たとえば0.1〜1.0%とされ、最適濃度は0.1%〜0.5%である。
【0023】
本発明による液状試薬は、基本的に、一液系の形態でも、二液系の形態でも、好ましく使用できる。二液系の形態の場合、指示薬(アシッドレッド92又はアシッドレッド94)と非イオン性界面活性剤が、別個の溶液(R1試薬およびR2試薬)として独立して存在させられる。たとえば、二液系のメリットは、液体試料にR1試薬を加えて混合した後に、吸光度(A)を測定する。さらに、R2試薬を添加して混合して、吸光度(B)を測定して、(B)−[(A)×容量係数]より検体盲検を差し引いた測定値を得ることができる。この事によって、試料の着色や濁りを消去することができる。
【0024】
一液系の形態で使用する場合は、R1試薬とR2試薬を予め混同して発色試薬として用いることができる。この場合には検体盲検は測定できないが、試薬盲検で代用することができる。検体の着色や濁りが無い場合は試薬盲検で十分である。
【0025】
二液系の場合、R1試薬には、非イオン界面活性剤でギ酸緩衝液を含んだものとされる。一方、R2試薬中は、指示薬(アシッドレッド92又はアシッドレッド94)とギ酸緩衝液とを含んだものとされる。
【0026】
R1試薬とR2試薬を混合した場合、R1試薬に含まれる非イオン性界面活性剤やR2試薬に含まれる指示薬(アシッドレッド92又はアシッドレッド94)の濃度が相対的に希釈されることになるが、混合したときの最終濃度が先に説明した濃度範囲となるように設定される。たとえば、非イオン性界面活性剤の最終濃度は0.01〜1.0%とされ、指示薬(アシッドレッド92又はアシッドレッド94)の最終濃度は0.005〜0.2mmol/Lとなる。また、ギ酸緩衝液の最終濃度は0.01〜0.5mol/Lとされる。
【0027】
二液系として調製した液状試薬は、非イオン界面活性剤及び緩衝液を含むR1試薬と指示薬及び緩衝液を含むR2試薬とを、予め、混合して一液系として使用することができる。この場合には検体盲検は測定できないが、試薬盲検で代用することができる。
【0028】
二液系として調製した液状試薬を二液系として使用する場合および一液系として使用する場合における測定方法の一例を示すと、表1の通りとなる。ここで、表1において、たとえば吸光度AはR1試薬200μLに尿試料30μLを添加して吸光度を測定する場合を示しており、吸光度測定Bは吸光度測定Aに使用した尿試料とR1試薬の混合液にR2試薬100μL添加して吸光度を測定する場合を示している。表1は、吸光度測定C〜Iについても吸光度測定A,Bと同様な見方をするものとする。ここで、表1の吸光度測定AがR1試薬を検体盲検として使用する場合に相当している。なお、本測定方法は一例であって、自動分析装置の種類や測定対象の試料の種類によって、試料量やR1試薬、R2試薬の量は適宜変更して使用することができる。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明の液状試薬は、尿、血液、髄液、唾液、涙液、胃液、およびアルブミン含有液(例えば、輸液、組織抽出液、蛋白精製液、食品等)などの液体試料中の総蛋白質を測定するために使用することができ、液体試料が尿検体である場合に特に有用である。
【0031】
次に、本発明を、以下の実施例により説明する。なお、本発明は、下記の実施例に制限されない。また、以下の実施例における指示薬(アシッドレッド92又はアシッドレッド94)の濃度は、100mg/dLの総蛋白質を測定できる濃度である0.05mmol/Lに設定した。
【実施例1】
【0032】
本実施例では、指示薬としてアシッドレッド92およびアシッドレッド94を用いる場合において、緩衝液の種類の最適化を行なう前に、液状試薬における緩衝液のpHが総蛋白質との反応性に与える影響について検討した。
【0033】
液状試薬に含有させる緩衝液としては、アシッドレッド92については酒石酸緩衝液(0.1mol/L)、アシッドレッド94についてはギ酸緩衝液(0.1mol/L)を用い、pHは2.3〜3.5とし、総蛋白質に対する反応性を確認した。また、アシッドレッド94については、液状試薬にTritonX100(0.5%)を含ませた。
【0034】
総蛋白質に対する反応性は、液体試料として、人血清アルブミン、α,β−グロブリン、およびγ−グロブリンの3種について、それぞれ20mg/dL水溶液を用い、吸光度を測定することにより確認した。吸光度の測定結果については、アルブミンの吸光度を100%としたときの各グロブリンの吸光度の相対値(%)として反応性を評価し、アシッドレッド92については表2に、アシッドレッド94については表3にそれぞれ示した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示すように、指示薬としてアシッドレッド92を用いた場合には、pHが2.3〜3.5の範囲で総蛋白質への特異性が良好であることが判った。その一方で、pH2.3では、20mg/dLのアルブミン測定時の吸光度が減少し、感度低下した。また、pH3.5では試薬がピンク色に着色し試薬ブランクが上昇した。そのため、緩衝液のpHとしては、感度が高く、試薬ブランクの低いpH2.8が好ましい。
【0037】
【表3】

【0038】
表3に示すように、指示薬としてアシッドレッド94を用いた場合には、pH2.3〜2.8の範囲で総蛋白質への特異性が認められ、pH2.8で総蛋白への特異性が最も良好であることが分かった。
【実施例2】
【0039】
本実施例では、指示薬としてアシッドレッド92およびアシッドレッド94を用いる場合において、緩衝液の種類が総蛋白質との反応性に与える影響について検討した。
【0040】
指示薬としてアシッドレッド92を用いる場合には、緩衝液として、クエン酸、酒石酸、フタル酸、グリシンおよびギ酸の各緩衝液を0.05mol/L、pH2.8に調整したものを用いた。各緩衝液を用いた場合の反応性は、人血清アルブミン、α,β−グロブリン、およびγ−グロブリンの3種について、それぞれ20mg/dL水溶液を用い、実施例1と同様にして吸光度を測定することにより確認した。吸光度の測定結果については、アルブミンの吸光度を100%としたときの各グロブリンの吸光度の相対値(%)として反応性を評価し、アシッドレッド92については表4に、アシッドレッド94については表5にそれぞれ示した。
【0041】
【表4】

【0042】
表4に示すように、指示薬としてアシッドレッド92を用いた場合には、緩衝液としてギ酸緩衝液を用いると、アルブミンに対する吸光度が高く、かつアルブミンの発色を100%としたときのグロブリンの発色について、75.3%という高い数値を示した。また、ギ酸緩衝液を用いた場合には、アルブミンとの反応性も緩衝液として酒石酸緩衝液を用いた場合のより約26.6%高かった。そのため、アシッドレッド92を用いて液体試料における総蛋白質を測定する場合には、緩衝液としてギ酸緩衝液を用いるのが好ましい。
【0043】
【表5】

【0044】
表5に示すように、指示薬としてアシッドレッド94を用いた場合には、緩衝液としてギ酸緩衝液を用いると、アルブミンの発色(吸光度)を100%としたときのグロブリンの発色(吸光度)について、94%という高い数値を示した。そのため、アシッドレッド94を用いて液体試料における総蛋白質を測定する場合には、緩衝液としてギ酸緩衝液を用いるのが好ましい。
【実施例3】
【0045】
本実施例では、指示薬としてアシッドレッド92を用いる場合において、界面活性剤の種類が、総蛋白質との反応性に与える影響について検討した。
【0046】
本実施例においては、液状試薬として、アシッドレッド92(0.05mmol/L)、ギ酸緩衝液(pH2.8、0.05mol/L)、および界面活性剤(0.1%)を含むものを使用した。界面活性剤としては、アルブミンとグロブリンの反応性が近くなる非イオン性界面活性剤である、一般名Triton X-100(Union Carbide Chemicals and Plastic Co.の登録商標)および一般名Brij35として市販されているポリオキシエチレンラウリルエーテルを使用した。
【0047】
総蛋白質との反応性は、人血清アルブミン、α,β−グロブリン、およびγ−グロブリンの3種について、それぞれ20mg/dL水溶液を用い、実施例1と同様にして吸光度を測定することにより確認した。吸光度の測定結果については、アルブミンの吸光度を100%としたときの各グロブリンの吸光度の相対値(%)として反応性を評価し、表6に示した。
【0048】
【表6】

【0049】
表6に示すように、非イオン界面活性剤として、一般名Triton X-100(Union Carbide Chemicals and Plastic Co.の登録商標)として市販されているポリオキシ(10)オクチルフェニルエーテルを用いた場合には、一般名Brij35として市販されているポリオキシエチレンラウリルエーテルとを用いた場合と比較すると、Brij35の方が、アルブミン以外のグロブリンに対して反応性が向上することが分かった。
【実施例4】
【0050】
本実施例では、アシッドレッド92またはアシッドレッド94を用いた液状試薬の処方における自動分析装置での定量特性を、同時再現性として評価した。この評価においては、自動分析装置として、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の自動分析装置7170を用いた。同時再現性は、蛋白質の代表である各種濃度のアルブミン溶液を調整し、蛋白溶液とした。その溶液の濃度として、10mg/dL、30mg/dL、60mg/dLおよび100mg/dLのものを調整し、それぞれの濃度の溶液について、20回の同時測定を行い、変動係数として評価した。
【0051】
(アシッドレッド92を用いた二液系の測定条件)
指示薬としてアシッドレッド92を用いる定量法の場合、まず試料溶液(総蛋白質溶液)30μLと、0.1%Brij35を含むギ酸緩衝液(0.05mol/L、pH2.8)200μLとを混合し、この混合液を37度にて5分間インキュベートした。先の自動分析装置を用いて、主波長546nm、副波長660nmで試薬盲検を対照に吸光度を測定し、検体盲検とした。続いて、先の混合液と、アシッドレッド92(0.05mmol/L)を含むギ酸緩衝液(0.05mol/L、pH2.8)100μLとを混合し、37度にて5分間インキュベートし、試料発色液を調製した。この試料発色液について、同様に自動分析装置を用いて、主波長546nm、副波長660nmで試薬盲検を対照に吸光度を測定した。別途検定された100mg/dLアルブミン標準液の吸光度で試料発色液の吸光度を除し、100mg/dLを乗じて総蛋白質濃度を求めた。各濃度の試料溶液における蛋白質濃度の測定結果は、表7に示した。表7には、20回測定における平均値、標準偏差および変動係数を同時に示した。
【0052】
【表7】

【0053】
表7に示したように、上記処方の液状試薬を用いた場合、各濃度の蛋白質溶液において変動係数が0.2〜0.8%と極めて良好であり、同時再現性に優れていることが分かった。また、表7に示した結果より、指示薬としてアシッドレッド92を用いる場合の測定値は、10〜100mg/dLの範囲で原点を通る直線性を示すことが分かる。
【0054】
本発明者らはさらに、データは示さないが、アシッドレッド92での最小検出感度について、100mg/dLのアルブミン標準液を精製水で段階希釈し、精製水の再現性の+2標準偏差と最低の総蛋白質濃度の再現性の−2標準偏差が交差しない濃度として求めた。その結果、総蛋白質の最小検出感度は0.5mg/dL(5mg/L)であった。故に、アシッドレッド92を用いた本発明の液状試薬は、0.5〜100mg/dLの範囲まで総蛋白質を測定可能で、低濃度から高濃度まで広範囲に、精度良く総蛋白質を測定できることか分かった。
【0055】
一方、指示薬としてアシッドレッド94を用いる場合には、アシッドレッド92に代えてアシッドレッド94を用いた以外は、アシッドレッド92の場合と同様にして測定用試料を調製し、総蛋白質濃度を測定した。この条件での総蛋白質の最小検出感度をアシッドレッド92の場合と同様にして求めたところ、総蛋白質の最小検出感度が1.0mg/dL(10.0mg/L)であった。また、アシッドレッド94を用いた本発明の液状試薬は、総蛋白質濃度の測定結果における直線性がアシッドレッド92の場合と同様に良好なものであった。故に、アシッドレッド94を用いた本発明の液状試薬は、1.0〜100mg/dLの範囲まで総蛋白質が測定可能で、低濃度から高濃度まで広範囲に、精度良く総蛋白質を測定できることか分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、生体試料などの液体試料中の総蛋白質を色素結合法の原理を用いて、アルブミン(100%)だけでなくグロブリンに対しても高い反応性を示し、簡便で、極めて低コストな液状試薬を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の総蛋白質を測定するための液状試薬であって、
下記化学式1または下記化学式2で示される化学構造を有する蛋白質測定用指示薬と、
pHを1.0〜3.5に調整したギ酸緩衝液と、
非イオン性界面活性剤と、
を含むことを特徴とする、液体試料中の総蛋白質を測定するための液状試薬。
【化1】

【化2】

【請求項2】
液状試薬に含有される指示薬の濃度が、0.005〜0.2mmol/Lである、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。
【請求項3】
液状試薬に含有される指示薬の濃度が、0.01〜0.1mmol/Lである、特許請求の範囲第2項に記載の液状試薬。
【請求項4】
液状試薬に含有される指示薬が、上記化学式1に記載したものであり、
液状試薬のpH条件が、2.3〜3.5である、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。
【請求項5】
液状試薬に含有される指示薬が、上記化学式2に記載したものであり、
液状試薬のpH条件が、2.3〜2.8である、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。
【請求項6】
液状試薬内におけるギ酸緩衝液の濃度が、0.01〜0.5mol/Lである、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。
【請求項7】
液状試薬に含有される非イオン性界面活性剤が、ソルビタン系界面活性剤から選ばれる、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。
【請求項8】
液状試薬に含有される非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(一般名:Brij35)である、特許請求の範囲第7項に記載の液状試薬。
【請求項9】
液状試薬に含有される非イオン性界面活性剤の濃度が0.01〜1.0%である、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。
【請求項10】
指示薬と非イオン性界面活性剤が別個の溶液(R1試薬およびR2試薬)として独立して存在し、検体盲検を測定することができることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。
【請求項11】
指示薬と非イオン性界面活性剤が同一の試薬として測定できることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。
【請求項12】
液体試料が、尿、血液、髄液、唾液、涙液、胃液、及びアルブミン含有液(例えば、輸液、組織抽出液、蛋白精製液、食品等)である、特許請求の範囲第1項に記載の液状試薬。


【公開番号】特開2008−46053(P2008−46053A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223689(P2006−223689)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】