説明

液体試料を毛細管クロマトグラフィカラムに直接注入する方法及び該方法を実施するための装置

本発明は液体試料を毛細管クロマトグラフィカラムへ直接注入する方法であって、該方法によって、バイアル(8)内に収容される分析用物質及び関連する溶媒で構成される前記液体試料は、針(24)を有する注射器(6)が備わった自動試料採取装置(2)から回収され、次にクロマトグラフ(12)の注入器(10)が備えられるインサート(14)へ導入されて、前記クロマトグラフィカラムの末端部分は前記針(24)に軸方向に挿入され、これにより前記試料の一部の毛管現象によって前記針から前記カラムへの移動が生じ、前記インサートに備えられた空洞部(20)は、前記カラム(12)の末端が空洞部に挿入された時、前記針から溢れ出た過剰な前記試料を収容し、及び前記針(24)内部の前記カラム(12)の滞留時間を制御する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料を毛細管クロマトグラフィカラムに直接注入する方法及び該方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ及び特にガスクロマトグラフは、様々な分野、例えば石油化学、環境、医薬、香料及び芳香等の分野における分析に幅広く利用される。
【0003】
従来、ガスクロマトグラフィシステムはガスクロマトグラフで構成される。ガスクロマトグラフは3つの基本部分、すなわち注入器、加熱室(オーブン)、及び検出器から成る機器で構成される。
【0004】
加熱室は内部にガスクロマトグラフィカラムを有する。ガスクロマトグラフィカラムはシステムの核を成し、その内部で所望の分析物が分離される。
【0005】
様々なタイプの注入器が存在することにより、様々なタイプの試料導入が達成される。「オンカラム」として知られる特定のタイプの注入器において、分析される試料は蒸気相を通過せずにカラム内に直接移動される。この注入方法は他の移動方法と比較して多くの利点を有し、特にいわゆる注射針の分別効果、及び熱不安定性構成部品の性質の変質又は変化を防止する。さらにこの注入方法によって完全な注入を繰り返し行うことが可能となる。
【0006】
特許文献1において説明される特定のタイプのオンカラム注入器は分析用の試料の注入を可能とし、その量はごく少量から、「大量」の技術を適用することによって大量まで可変的であって、内径250ミクロン未満の毛細管カラムへ注入される。実際、これは液相の分離を含み、これによりカラム管の毛細管現象を利用する試料が導入される。
【0007】
この周知の技術において、毛細管クロマトグラフィカラムの末端部は液体で充填された注射針に進入し、毛細管現象によってカラム内にほぼごく少量程度の試料の量が移動する。そして運搬ガス作用のもと、試料はカラムに従って進んで行き分離を達成する。
【0008】
この周知の技術は手動で行われるが、十分なものであると考えられていない。これは、挿入操作を手動で行うという点が、毛細管効果に起因しカラムに回収される試料の量の安定に要求される再現性への必要性と調和させることが難しいためである。
【0009】
この点において、注射針の毛細管カラムは数秒から数100分の1秒で変化可能であるので、これらの挿入を手動で行うことは明らかに実際不可能である。さらに、その他の操作も手動で行う必要性を考慮すると、この周知の技術は、一連の制御が連続して自動的に行われなければならない実験室において明らかにふさわしくない。
【0010】
毛細管カラムを注射針に挿入する周知の手動の技術が有するさらなる問題は、注射器の内径及びガスクロマトグロフィカラムの外径間の、実際は十分の数ミクロン程度のわずかな差異に関連する。
【特許文献1】WO2004/077046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、前述の特許文献1で説明されるオンカラム挿入が精度及び再現性が高く保証されて自動的に達成可能とされる方法及び装置を提案することによって、これらの欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的及びその他の目的は、以下の記載から明らかであり、また、請求項1に記載される液体試料を毛細管クロマトグラフィカラム内に直接注入する方法によって達成される。
【0013】
この方法を実行するため、本発明は請求項6に記載される装置を提案する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の装置において使用される自動試料採取装置の概略図である。
【図2】図1の丸で囲まれた領域内にある部分の拡大詳細図である。
【図3】注入器の拡大詳細図である。
【図4】インサートの概略図であって、ガスクロマトグラフィの注入器が備えられている。
【図5】図5A乃至図5Dは、液体試料を注射針からカラムへ移動させるプロセスにおける4つの連続的な操作手順を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態は、付随する図面を参照することにより、以下においてより明らかとなる。
図から理解される通り、本発明の装置は自動試料採取装置(全体的に符号(2)で示される)を備え、この自動試料採取装置(2)には注射器(6)への機械的支持(4)がもたらされている。注射器(6)は分析用の試料をコンテナ又はバイアルから回収する位置と、コンテナ又はバイアルから回収した試料を毛細管クロマトグラフィカラム(12)の注入器(10)に挿入する位置の間で移動可能である。「クロマトグラフィカラム」(12)という用語は、分析を行うために好適に用いられる任意の材料の毛細管、すなわち、固定相で充填された毛細管或いは固定相で充填されない毛細管(プレカラム)を意味する。
【0016】
注入器(10)には図4に示されるインサート(14)(ライナ)が備えられ、ホウケイ酸ガラス管で構成される。ホウケイ酸ガラス管は二つの直線部分(16)及び(18)を有し、その間に拡大部分(20)を有する。
【0017】
上部の直線部分(16)はより大きな直径の軸方向の空洞部(22)を有し、これは注射器(6)の針(24)を案内するためのものである。下部の直線部分(18)はより小さな直径の軸方向の空洞部(26)を有し、これはクロマトグラフィカラム(12)の末端部を案内するためのものである。
【0018】
クロマトグラフィカラム(12)の末端部はライナ(14)に対して軸方向に固定されると共に、その末端部は拡大部(20)内で開口している。針(24)はライナ(14)に対し軸方向に移動可能であって、これにより針が注入位置へもたらされることが可能である。この注入位置において、カラム(12)の末端部は前記針(24)内に挿入される。
【0019】
運搬ガス注入口(28)及び二つの排出口(30)及び(31)は、従来の方法で注入器(10)と接続されている。このため、運搬ガス流はライナ(14)の軸方向の空洞部(22)と通じ、クロマトグラフィカラムに供給される。運搬ガスの2つのパージ流により、注入器が洗浄されることが確実となる。
【0020】
本発明の装置もまた制御ユニットを有し、以下に記載される通り、様々な操作手順のプログラムされた順序を制御する。
【0021】
最初に、試料採取装置(2)によって注射器(6)の針(24)は予め選択されたバイアル(8)上に降下するようにされ、所定の試料の量を回収する。
【0022】
試料を回収すると、試料採取装置(2)は、針(24)内部の試料のメニスカスの高さを所定の高さに自動的に調整する。そして、針(24)はライナ(14)の上部部分(16)の軸方向の空洞部(22)内に、その先端部が拡大部(20)内部に位置するまで挿入される。
【0023】
この拡大部(20)内部に、カラム(12)の末端部は既に収容されているが、これはガイド空洞部(22)及び(26)が同軸にあることによって、二つの部分が中央に配されることが確実になるためである。前記末端部は針(24)内部に進入し(図5A)、その部分の端部が針に存在する液体に到達するまで進入する(図5B)。操作条件は、例えばこの操作を可能とすること等のように、より詳細には、メニスカスの高さを針が進入する末端部の長さに基づいて制御するように確実に決定される。これは、前記末端部の端部が針に収容される液体内に浸されることを確実にするためである。カラム末端部が針に進入することにより試料がそこから流出する可能性があるので、拡大部(20)は結果として生じた記憶効果で、この余剰の試料の量を収容し、試料への分別効果及び注入器の汚染を防ぐことを目的とする。
【0024】
カラム(12)の端部が針に存在する液体内に浸される時間中ずっと、液体はカラムへ毛細管によって移動する。この移動する液体の量は、注射針に収容された液体試料内部のクロマトグラフィカラムの端部の滞留時間に関連する。
【0025】
通常ほんの数秒程度のこの滞留時間が高い精度で制御可能であるように、カラムに移動される液体量は同様の精度で決定可能である。これにより、手動では成しえなかった高い測定再現性が確実なものとなる。
【0026】
決定された時間後、試料採取装置(2)は自動的に注射器(6)を上昇させ、試料のメニスカスがカラム(12)の端部から分離するのに必要な量だけ針(24)を上昇させる(図5C)と共に、試料がカラム内に移動することを防止し、或いは針(24)をカラム(12)から完全に分離させる(図5D)。
【0027】
針からカラムへ試料を移動させることにより、マニスカスの高さは上昇し、これは特に大量の分析用の試料が注入された場合、針(24)内に収容される試料からカラム端部を早期に分離させることが可能となる。したがって、関連するメニスカスの高さは針にカラムが存在する間、例えばカラム端部が常に針に収容される試料内に浸されることを確実にする等のために、変化可能である。この変化はカラムを上昇させる、又は針を下降させる、或いは同時にカラムを上昇させ針を下降させる、或いは注射器プランジャを操作することによって達成可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を毛細管クロマトグラフィカラムへ直接注入する方法であって、
該方法によって、バイアル(8)内に収容される分析用物質及び関連する溶媒で構成される前記液体試料は、針(24)を有する注射器(6)が備わった自動試料採取装置(2)から回収され、次にクロマトグラフ(12)の注入器(10)が備えられるインサート(14)へ導入されて、前記クロマトグラフィカラムの末端部分は前記針(24)に軸方向に挿入され、これにより前記試料の一部の毛細管現象によって前記針から前記カラムへの移動が生じ、
前記インサートに備えられた空洞部(20)は、前記カラム(12)の末端が空洞部に挿入された時、前記針から溢れ出た過剰な前記試料を収容し、及び前記針(24)内部の前記カラム(12)の滞留時間を制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記注射器(6)の前記針(24)を分析用の前記試料で充填した後、前記注射器を少し吸引することにより前記試料のメニスカスを前記針の先端部から所定の長さにまで引き出し、その後前記針は、前記カラム(12)の前記末端部が前記針に収容される前記試料内へ所定の深さ分貫通するまで前記注入器(10)の前記インサート(14)へ導入されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
分析用の前記試料が前記針(24)から前記クロマトグラフィカラム(12)へ移動するのと同時に、前記試料のメニスカスは、移動の影響による前記先端部からの前記メニスカスの引き出しを補正する長さ分前記針の先端の方向へ動かされることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記カラム(12)の端部に対し前記針(24)を軸方向に動かすことによって、前記メニスカスが動かされることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記注射器(6)のプランジャを操作することによって前記メニスカスが動かされることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の1つ以上に記載の方法を実行するための装置であって、該装置は、
バイアル(8)からクロマトグラフィ分析用の試料を回収するための、針(24)を有する注射器(6)が備わった自動試料採取装置(2)と、
前記試料が案内される毛細管クロマトグラフィカラム(12)に関連する注入器(10)と、
前記注入器(10)に関連するインサート(14)を備え、該インサート(14)は前記針(24)を案内するための第1の円筒形の空洞部(22)と、前記カラム(12)の末端部を案内するための前記第1の円筒形の空洞部(22)と一列に並ぶ第2の円筒形の空洞部(26)を備え、
また前記装置は、前記カラム(12)の前記末端部を前記針(24)内部に同軸上で位置させる手段を備え、
前記カラムの前記端部は前記針(24)を貫通する位置において、前記インサート(14)は、前記カラム(12)の前記末端部が前記針(24)に挿入された時、前記針(24)から溢れ出た過剰な前記試料を収容するのに十分な大きさの空洞部(20)を有し、
前記注入器(10)は、該注入器を洗浄するための、一定の又は調整可能なガス流の少なくとも1つの排出口(30、31)を有し、
前記試料採取装置(2)は前記針(24)の内部に同軸上にある前記端部の滞留時間を制御するための手段が備わっており、前記制御は毛細管減少によって前記針から該針へ挿入されたカラム(12)へ移動する前記試料の量に基づいて行われることを特徴とする装置。
【請求項7】
前記インサート(14)が拡大部(20)を備え、該拡大部(20)は前記針(24)を案内するための前記第1の円筒形の空洞部(22)と前記カラム(12)を案内するための前記第2の円筒形の空洞部(26)の間に位置することを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記試料採取装置(2)が、前記試料が前記針から前記カラム(12)へ移動すると、前記針(24)内部の前記試料のメニスカスの高さを徐々に制御する手段を備えることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段が、前記注射針及び/又は前記カラム(12)の前記末端部を前記インサート(14)の夫々の案内空洞部(23,26)に沿って相対的に動かすための部材で構成されることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記制御手段が、前記注射器(6)の前記プランジャを動かすための部材で構成されることを特徴とする請求項8記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公表番号】特表2010−540917(P2010−540917A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526236(P2010−526236)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061609
【国際公開番号】WO2009/040224
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(504315934)