説明

液体調味料

【課題】 焙煎したごまを擂った直後の風味を維持した液体調味料を得ること。
【解決手段】 ごまを素材とする風味成分及びトレハロースを含有し、水相と油相を含む液体調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごまを素材とする風味成分を含有する液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
ごまを素材とする風味成分は大変嗜好性が高く、煎ったごまを新鮮なうちに擂った時の香りは、大変好ましいものである。しかし、焙煎した後の香ばしい風味は持続せず、時間の経過と共に消失してしまう。特に、液体調味料に配合した場合、その風味に著しい変化がみられることが知られている。
【0003】
そこで、液体調味料中でのごまの風味を維持、改質又は増強する目的で、様々な素材の添加や特殊な製造法が試みられている。例えば、ごまの加工品にウィスキー類を1〜9%添加して香気を改良する技術(特許文献1参照)、焙煎ごまの水蒸気蒸留品を酸性調味料に含有させる技術(特許文献2参照)、ごまペーストに加工デンプンを含有させ、長期にわたり分離させない技術(特許文献3参照)、ごま粉砕物を用いることにより大量に配合し、更に卵黄を含有し乳化安定性を向上させる技術(特許文献4参照)、ごま油とごまペーストを特定の割合で含有させる技術(特許文献5参照)、ごま等の焙煎食品材料から得られた水溶性の回収香を、ビタミンC及び/又はトレハロースで劣化防止する技術(特許文献6参照)等が挙げられる。
【0004】
これらの技術は、確かにごまのこく味、甘みを付与することは可能であるが、焙煎直後の風味を得ることはできない。また、ごまを素材とする風味成分は、液体調味料に配合すると、クリーミーな乳味、劣化した油性原料の重たい劣化風味等にマスキングされ易く、特にドレッシングでその風味を生かす技術は未だ不十分である。
【特許文献1】特開2001−204436号公報
【特許文献2】特開2001−95525号公報
【特許文献3】特開2003−55158号
【特許文献4】特開2003−304828号公報
【特許文献5】特開平9−197号公報
【特許文献6】特開2001−292721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、ごまを焙煎し、擂った直後の風味を維持した液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について、ごまを素材とする風味成分を含有し、水相と油相を含有する液体調味料に種々の素材、方法を組み合わせる検討を行ったところ、トレハロースを組み合わせることにより、ごまを焙煎し、擂った直後の風味が維持されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ごまを素材とする風味成分及びトレハロースを含有し、水相と油相を含む液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焙煎したごまを擂った直後の風味を維持した、水相と油相を有する液体調味料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に使用する風味成分は、ごまを素材としたものである。ごまの種類は、白ごま、金ごま、黒ごま、茶ごま等を用いることができるが、香りが良い点から白ごま、金ごまが好ましい。また、これらのごまを焙煎香を有する程度に焙煎した煎りごま、またはそれを常法で擂ったもの、粉砕したもの等が特に好ましい。また、洗いごまを皮を剥かずに焙煎することが好ましい。皮を剥かないことにより、焙煎した後の特有な風味が得られる。
【0010】
ごまの焙煎方法は、通常の方法で好ましい焙煎香が得られる程度に焙煎する。焙煎度合いは、焙煎した胡麻を摺った後に明度により判断する。焙煎度合いは特に限定されないが、白ごまの場合は、明度がL=40〜60程度であることが好ましい。明度の具体的な測定方法を次に記載する。
【0011】
〔擂りごまの明度の測定方法〕
焙煎ごま10g程度をごま摺り器(象印 CB−AA10)により、粗粉砕と細粉砕の中間で摺り、ガラス瓶(底が平らで直径5cm程度のもの)に入れる。直ちにガラス瓶の底部分5ヶ所について、場所を変えて、ハンディータイプの測色計(ミノルタ Color Reader CR-13 みそ用測色計)にて明度を測定する。その明度の平均値により焙煎度合いを判断する。
【0012】
また、本発明に使用するごまを素材とする風味成分としては、上述の焙煎ごまを擂った直後、様々な脱臭油に投入した擂りごま入り油も挙げられる。この場合、擂りごまは脱臭油100質量部に対して5〜25質量部、好ましくは10〜20質量部とすることが、焙煎ごまの擂った直後の風味を有する点から好ましい。
【0013】
更に、上述の焙煎ごまから直接搾油したごま油、ごま油を基として製造されたごまフレーバー等が挙げられる。これらの中でも、焙煎香を有する点から、作業中の品質、温度、湿度等に気を配って製造されたものであることが好ましい。例えば、ごま油については、特に搾油時の煎りごまの品温度が160℃以上にならないようにすることが好ましく、また、搾油後は油中水分量が700ppm以下となるよう、ごま油中に水分がなるべく入らないように留意することが好ましい。
【0014】
焙煎ごまを擂った直後の風味成分は油相に溶解するが、水と接触することにより保存性が低下する。そのため、本発明の液体調味料においては、油相を含むことが必要である。また、本発明においては、焙煎ごまを擂った直後の風味を保存後も維持するために、トレハロースを組み合わせることが必要である。ここで、トレハロースは水溶性成分であるため、水相を含むことも必要である。
【0015】
また、本発明の液体調味料においては、水相と油相を有する乳化型の形態のものも含まれるが、水相が存在しても、焙煎ごまを擂った直後の風味を維持する点から、水相部の上に油相部が積載されてなる水相部と油相部が分離した分離型ドレッシングであることが好ましい。更に、トレハロースは水相中に溶解させておくことにより、調味料としての甘さを有する点からも好ましい。特に、トレハロースは、液体調味料の原料である砂糖の一部、又は全部に置き換え、液体調味料中2〜10質量%、更に、3〜7質量%添加することが好ましい。
【0016】
また、焙煎ごまを擂った直後の風味を発現させる点から、その他の素材由来の風味のうち、ごま風味をマスキングする作用を有する風味を抑えることが好ましい。例えば、ポリグリセリンエステル、乳タンパク等の乳化剤の配合量は、乳味を抑えるため、液体調味料の物性、全体の風味を調整可能な最小限に留め、液体調味料中0.5質量%未満、更に0.3質量%未満、特に0.1質量%未満とすることが好ましく、殊更含まないことが好ましい。
【0017】
その他、保存後に風味の変化が激しい材料も、焙煎ごまを擂った直後の風味をマスキングする作用を有する素材として挙げられ、その配合量は、調味料全体の風味を調整するための最小限に留め、少量であればある程好ましい。例えば、みそを配合する場合には、液体調味料中6質量%未満、更に3質量%未満、特に1質量%未満とすることが好ましく、殊更含まないことが好ましい。マヨネーズを配合する場合には、液体調味料中10質量%未満、更に5質量%未満、特に1質量%未満とすることが好ましく、殊更含まないことが好ましい。
【0018】
また、もろみ、醤油、各種発酵性原料についても最小限に留めることが、同様の点から好ましい。更に、油性原料を配合する場合には、可能な限り酸化されていない新鮮なものを使用することが好ましい。
【0019】
焙煎ごまを擂った直後の風味成分は油脂に溶解するため、本発明における液体調味料においては、ごまの素材由来の油脂が存在する場合でも、その他に油脂を配合することが好ましい。即ち、本発明における液体調味料は、油相と水相が分離した分離型液体調味料、油相と水相が均一に乳化した乳化型液体調味料のいずれもを含むものである。液体調味料中の油相の比率は特に限定されないが、5〜70重量%程度が好ましく、更には10〜50重量%、特に20〜40重量%であることが美味しさの点から好ましい。
【0020】
本発明における液体調味料に使用可能な油脂は、その種類に特に制限はなく、従来の液体調味料の油相成分と同様のものを使用することができる。一般的には、食用油である大豆油、なたね油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、綿実油、米油、ヤシ油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、パーム油等が挙げられる。また、上記油相部中には、必要に応じて、呈味料、香味料、着色料、酸化防止剤の添加剤を加えることもできる。
【0021】
本発明に使用するごまを素材とする風味成分は、上記の理由から油相に溶解させることが好ましいが、焙煎したごまそのもの、又は擂りごま、切りごま、粉砕ごま等を使用する場合には、油相に局在させることが好ましい。その配合比は特に限定されないが、焙煎風味を十分に付与することが可能であり、かつ液体調味料としての食感と流動性が満たされる程度であれば良い。例えば、油相100質量部に対するごまの含有量は1〜50質量部、更に2〜20質量部であることが、焙煎した食材特有の風味が発揮され、かつ維持される点から好ましい。また、焙煎ごま等は水相部に配合してごまの呈味を付与し、これとは別に焙煎ごまを擂った直後の風味成分を溶解させた油相部を配合することも好ましい。
【0022】
本発明における液体調味料を配合する方法は、定法で構わないが、空気、酸素との過度の接触を避け、風味を劣化又は変化させない点から、減圧下、又は窒素シール等を行う方法を取ることが好ましい。また、加熱作業についても目的を達する条件の中では熱履歴の最も少ない方法を取ることが好ましい。
【0023】
また、焙煎ごまを擂った直後の風味成分を水と接触させない点から、ボトル充填する際に、まず水相を充填し、その後に焙煎ごまを擂った直後の風味成分を含む油相、又は焙煎ごま等が含まれた油相を添加する方法を採ることも好ましい。その他、油相を充填した後、最後に焙煎ごま等を入れる方法でも良い。
【0024】
本発明における液体調味料の水相を構成する原料は、特に制限はなく、トレハロースの他に、従来の液体調味料の水相成分と同様のものが使用できる。一般的には、水、食酢、塩、醤油、香辛料、糖、蛋白質素材、有機酸、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、動植物エキス、発酵調味料、酒類、安定剤、着色料等の各種添加剤などが挙げられる。特に、食酢を用いることがpHを低下させ、保存性を良くする点、焙煎ごまを擂った直後の風味成分を維持する点から好ましい。食酢は穀物酢、りんご酢、ビネガー類など様々な種類を用いることができ、その配合量は、液体調味料中に、3〜20質量%、更に5〜15質量%、特に6〜10質量%が好ましい。pHとしては、4.7〜3、更に4.5〜3.5、特に4.2〜3.7の範囲が好ましい。
【0025】
油相中に添加するごまを素材とする風味成分についてはフレーバーの場合、その力価によって添加量はさまざまであるが、油相中、一般的に0.01〜2質量%、更に0.025〜1質量%程度が好ましい。また、風味成分がごま油の場合油相中、1〜50質量%、更には5〜20質量%程度が好ましい。更に、擂りごま、又は切りごまを油相に接触させた後に固形分を取り除いた風味油の場合には、油相中5〜100質量%、更には10〜50質量%が好ましい。いくつかの風味成分を好ましい範囲で組み合わせることもできる。
【実施例】
【0026】
実施例1
白ごまの洗いごまをフライパンでガス流量5L/minの火力上、2分加熱焙煎し、焙煎粒ごまとした。前記焙煎粒ごまを、卓上ごま摺り器(象印 CB-AA10)で粉砕し、焙煎摺りごまとした。水相は、表1に示す配合に従い混合し、ホモディスパー(特殊機化工業製)で均一に分散した。油相中の油脂は、菜種油:大豆油=7:3(質量比)の配合油を使用した。油相には、更に160℃以下にて搾油した焙煎香を有するごま油、ごまフレーバー(長谷川香料(株))を配合した。水相と油相の配合比は、65:35(質量比)とした。240mLのペットボトルに計220mLとなるよう、先ず水相を充填し、次いで油相を積層充填し、分離型液体調味料を得た。
【0027】
実施例2
みそ、マヨネーズ、及び乳化剤(ポリグリセリンエステル)を配合せず、替わりに水を増量した以外は、実施例1と同様の方法で分離型液体調味料を得た。
【0028】
実施例3
水相部にすりごまを添加した以外は、実施例2と同様の方法で分離型液体調味料を得た。
【0029】
比較例1
実施例1におけるトレハロースを、同じ糖度となる量の砂糖に替え、量の差を水で調整した以外は、実施例1と同様の方法で分離型液体調味料を得た。
【0030】
【表1】

【0031】
〔官能評価試験〕
実施例1〜3及び比較例1にて得たドレッシングについて、専門パネラー5名により官能評価を行った。評価法は、製造直後、及び温度40℃、相対湿度75%の条件下にて20日間遮光保存後のものを用い、それぞれレタス80gに各ドレッシングを10gかけて食し、下記評価基準により評価した。
【0032】
〔評価基準〕
◎:大変香ばしく好ましい
○:やや香ばしく好ましい
△:あまり香ばしさを感じない
×:香ばしさが全く感じられない
【0033】
表1の結果より、液体調味料にトレハロースを組み合わせた実施例1〜3は、トレハロースを配合していない比較例1に比べ、初期のごま風味、保存後のごま風味とも好ましいものであった。また、ごま風味をマスキングする素材であるみそ、マヨネーズ、乳化剤を配合しないことにより、その傾向が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごまを素材とする風味成分及びトレハロースを含有し、水相と油相を含む液体調味料。
【請求項2】
更に、乳化剤、みそ、及びマヨネーズから選択される1種又は2種以上を、それぞれ乳化剤0.5質量%未満、みそ6質量%未満、マヨネーズ10質量%未満の範囲で含むか、又はいずれをも含まないものである請求項1記載の液体調味料。
【請求項3】
更に、食酢を含むものである請求項1又は2記載の液体調味料。
【請求項4】
水相部と油相部が分離した分離型ドレッシングである請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体調味料。