説明

液体金属冷却原子炉

【課題】二重容器漏れ事故のような仮想事象の発生を仮定しても、原子炉冷却材の保持機能を維持し、原子炉冷却材の過度の温度上昇を安定に抑制する。
【解決手段】液体金属冷却原子炉1は、原子炉容器4と、原子炉容器4を密閉格納する格納容器6および格納ドーム7と、格納容器6を囲む収納空間を介して格納容器6を包囲する外周コンクリート構築物17と、外周コンクリート構築物17のコンクリート部の収納空間側に設けられたライナー16と、ライナー16と外周コンクリート構築物17の間に設けられた温度上昇緩和機構を備える。温度上昇緩和機構は、液体金属冷却原子炉1の出力運転時の原子炉冷却材の温度より低い融点をもつ蓄熱材を有する蓄熱部18と、原子炉容器4から格納容器6を通って漏えいした原子炉冷却材から熱を除去するための冷却部19と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体金属冷却原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の液体金属冷却原子炉の全体構成図である。同図に示すように、液体金属冷却原子炉は、原子炉冷却材のナトリウムまたはナトリウムカリウム合金等の液体金属3を満たした原子炉容器4内に核燃料炉心2を配置している。原子炉容器4は、格納容器6および格納ドーム7で構成される密閉構造内に格納されている。格納容器6は不活性ガスを満たした間隙部5をその内部に有する。格納容器6は、原子炉容器4から液体金属3が漏えいする事故を想定して、その場合でも漏えいした漏えい液体金属3aを格納容器6内に保持できるように設計されている。
【0003】
格納容器6は、地表下に掘り下げた収納空間12内に収容されている。収納空間12はその周囲をコンクリート構築物17で囲まれており、格納容器6の周囲の環状空間および格納容器6の下側の空間を有する空間である。
【0004】
また、コンクリート構築物17は収納空間12に面した部分にライナー16の内張りを有している。
【0005】
この液体金属冷却原子炉1では、原子炉運転中の緊急事態に対処するため、または保守点検を行うために、燃料の核分裂反応を停止する必要があるが、その際、停止操作を行った後にも残留崩壊熱が炉心から生じ続けるため、液体金属冷却原子炉1から発生する熱を除去する必要がある。
【0006】
残留崩壊熱を除去する補助冷却系は、その重要性から高い信頼性が要求される。液体金属冷却原子炉1において、この熱除去方式としては、図示しない2次冷却系に設置し2次冷却材を冷却する方式、原子炉容器4内の冷却材を冷却する方式、原子炉容器4の外側から原子炉容器4を冷却する方式等がある。
【0007】
図5は、これらの方式のうち、補助冷却系が、原子炉容器4の外側から原子炉容器4を冷却する原子炉容器補助冷却系(以下、「RVACS」という。)の場合を示している。
【0008】
原子炉からの熱は原子炉容器4から格納容器6に熱輻射により伝えられ、格納容器6の温度が上昇し、格納容器6からの熱は外側のライナー16とコンクリート構築物17で形成したサイロ内等に向かって放射される。この格納容器6の熱を除去するために、格納容器6とサイロの間の環状空間にRVACSが設けられている。
【0009】
自然対流で熱除去を行い、冷却用の流体として空気すなわち大気を用いており、格納容器6の外側に空気が上昇する空気上昇流路11と、空気上昇流路11の外側に空気が下降する空気下降流路10とを形成するように、格納容器6とサイロの間の環状空間に筒状のコレクタ9を設ける構成となっている。
【0010】
これにより、空気上昇流路11中の空気は、格納容器6の熱で加熱されることで空気上昇流路11を上昇し、ダクト14を経由して空気排出口15から外部に放出される。
【0011】
また、空気冷却流路の空気下降流路10へは空気取込口13から空気の取り込みが行われ、空気下降流路10に取り込まれた空気は、空気下降流路10を下方に流れてサイロの収納空間12に流れ込む。その後、流れ方向を変えてコレクタ9と格納容器6の間の空気上昇流路11に流れ込み、格納容器6の外壁に沿って上方に流れ、その間に加熱されて格納容器の熱を外部に放出する。
【0012】
このようにRVACSは、ポンプ等の能動的な機器を用いない受動的な補助冷却系であることから能動的な機器を用いる場合に比べさらに高い信頼性を有する。
【0013】
特許文献1では、上記の流路を確保するための空気取込口についての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−174884号公報
【特許文献2】特公昭62−2277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した従来の液体金属冷却原子炉において、極端で起こりそうもない仮想事象、例えば原子炉容器が破損し原子炉容器内の高温の液体金属が格納容器に漏えいし、その上、格納容器も破損し格納容器からさらにサイロ内に高温の液体金属が漏出する事故(以下、「二重容器漏れ事故」という。)が仮に発生した場合を想定する。この場合は、漏えいした液体金属が格納容器とサイロの間の空気冷却流路に貯留する。
【0016】
この貯留した液体金属が空気冷却流路の空気の流通を妨げることにより、RVACSの機能が阻害される。また、サイロ内に漏出した液体金属が除熱されず滞留することから、周囲のコンクリート構築物が過熱により劣化し、また、膨張してひび割れを生ずる恐れがある。
【0017】
液体金属の沸点は、たとえばナトリウムの場合は998℃と大気圧においても十分高く、漏えい後も減圧沸騰することなく液状を保っている。したがって、二重容器漏れ事故のような仮想事象の発生の場合においても、原子炉内の核燃料炉心を浸漬するに必要な、原子炉内の液位は確保される。しかしながら、この状態が継続すれば、炉心燃料から発生される崩壊熱により、冷却材温度は次第に上昇することになる。この場合は、冷却材たる液体金属が貯留している空間の周囲のコンクリート構築物の温度も上昇することになる。コンクリート温度が上昇すれば、コンクリートが劣化する恐れがある。
【0018】
特許文献2で開示された技術は、二重容器漏れ事故の場合ではないが、原子炉容器の外側にコンクリート格納容器が設置される型式の液体金属冷却原子炉において、ナトリウムが漏えいした場合のコンクリート格納容器の温度上昇に対する対策に関するものである。すなわち、冷却装置とライニングを備えたコンクリート格納容器の内壁に2種類の熱絶縁材料を設け、通常運転中はコンクリート温度の上昇防止のために断熱効果に期待し、ナトリウムの漏えい時には断熱材の断熱効果を低下させ熱除去のために熱伝達率を向上させようするものである。
【0019】
しかしながら、特許文献2で開示されたような冷却機能だけでは、漏えいの初期における高温のナトリウムからの入熱により、あるいは冷却継続中の冷却機能の一時的な喪失により、コンクリート温度が急激に上昇する可能性がある。
【0020】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、二重容器漏れ事故のような仮想事象の発生を仮定しても、原子炉冷却材の保持機能を維持し、原子炉冷却材の過度の温度上昇を安定に抑制できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の目的を達成するため、本発明に係る液体金属冷却原子炉は、液体金属からなる原子炉冷却材が内部に満たされた原子炉容器と、前記原子炉容器の周囲および底部を包囲するように設けられた格納容器と、前記原子炉容器の上部を包囲し前記格納容器とともに原子炉容器を密閉格納する格納ドームと、前記格納容器を囲む収納空間を介して前記格納容器を包囲する外周コンクリート構築物と、前記収納空間に対向する位置で前記外周コンクリート構築物の内側を覆うように設けられたライナーと、を備える液体金属冷却原子炉において、前記ライナーと前記外周コンクリート構築物の間に設けられた温度上昇緩和機構を備え、前記温度上昇緩和機構は、当該液体金属冷却原子炉の通常運転時の前記ライナーの温度より高く、かつ当該液体金属冷却原子炉の通常運転時の前記原子炉冷却材の温度より低い融点をもつ蓄熱材を有する蓄熱部と、前記原子炉容器から前記格納容器を通って漏えいした前記原子炉冷却材から熱を除去するための冷却部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、二重容器漏れ事故のような仮想事象の発生を仮定しても、原子炉冷却材の保持機能を維持し、原子炉冷却材の過度の温度上昇を安定に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る液体金属冷却原子炉の第1の実施形態の全体構成を示す立断面図である。
【図2】本発明に係る液体金属冷却原子炉の第1の実施形態において仮想の二重容器漏れ事故が発生した後の液体金属冷却原子炉の全体の状況を示す立断面図である。
【図3】本発明に係る液体金属冷却原子炉の第2の実施形態の全体構成を示す立断面図である。
【図4】本発明に係る液体金属冷却原子炉の第2の実施形態において仮想の二重容器漏れ事故が発生した後の液体金属冷却原子炉の全体の状況を示す立断面図である。
【図5】従来の液体金属冷却原子炉の全体を示す立断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る液体金属冷却原子炉の実施形態について説明する。ここで、同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る液体金属冷却原子炉の第1の実施形態の全体構成を示す立断面図である。
【0026】
液体金属冷却原子炉1は、冷却材のナトリウムまたはナトリウムカリウム合金等の液体金属3を満たした原子炉容器4内に核燃料炉心2を配置している。原子炉容器4は、格納容器6および格納ドーム7で構成される密閉構造内に格納されている。格納ドーム7は路上部室8内に設けられている。
【0027】
格納容器6は窒素等の不活性ガスを満たした間隙部5をその内部に有する。格納容器6は、原子炉容器4から冷却材が漏えいする事故を想定して、その場合でも漏えいした冷却材を格納容器6内に保持できるように設計されている。
【0028】
格納容器6は、地表下に掘り下げた収納空間12内に収容されている。収納空間12はその周囲をコンクリート構築物17で囲まれており、コンクリート構築物17の収納空間12に面した部分にライナー16の内張りが設けられている。
【0029】
なお、ライナーとしては、鋼製のほかに、高温の液体金属を収納でき、必要な強度が確保されれば、たとえば、セラミックスなどでもよい。
【0030】
格納容器6の外側に、空気が上昇する環状の空気上昇流路11と、空気上昇流路11の外側に空気が下降する環状の空気下降流路10とを形成するように、格納容器6とライナー16の間に筒状のコレクタ9が設けられている。
【0031】
空気上昇流路11の下流側は、ダクト14に接続され、ダクト14の上端は空気排出口15において大気に開放されている。また、ダクト14には液体金属冷却原子炉1の通常運転時に開状態で、二重容器漏れ事故の発生時には閉止する空気排出閉止弁22が設けられている。
【0032】
空気下降流路10には、空気取込口13から流入した空気が流れる。空気取込口13には、空気取込閉止弁21が設けられている。
【0033】
ライナー16の外側でかつコンクリート構築物17の内側の、ライナー16とコンクリート構築物17に挟まれた領域には、まず、ライナー16の外側に蓄熱部18が、蓄熱部18の外側には断熱材からなる断熱部20が設けられている。また、断熱部20に囲まれ、かつ蓄熱部18に接する状態で冷却媒体流路19が設けられている。
【0034】
蓄熱部18にはコンクリートが劣化し始める温度である約100℃よりも低い融点を持つ蓄熱材が封入されている。このような蓄熱材としては、例えば、水和塩としては、NHAl(SO・12HO、KAl(SO・12HO、Sr(OH)・8HO、Ba(OH)・8HO、NaCHCOO・3HOなどが使用できる。また、有機物としては、n−Triacontane C3062、n−Octacosan C2858、Propionamide、ナフタレン、ステアリン酸、ビフェニルなどでよい。
【0035】
(作用)
以上のように構成された液体金属冷却原子炉1は、通常時は、原子炉容器4内に液体金属3が所定の通常時液面位置Lnになるように満たされ、核燃料炉心2での核分裂による発生熱は、冷却材である液体金属3を循環させることにより取り出され、この熱エネルギーは最終的に発電等に供される。
【0036】
空気取込口13から取り込まれた冷却用の空気は、空気下降流路10を下方向に流れ、収納空間12に開放され方向を反転させた後、空気上昇流路11に入り上方向に流れる。空気上昇流路11で格納容器6とコレクタ9の間を上昇する空気は、この間に格納容器6の表面から熱を奪うことにより温度が上昇し、空気をダクト14を通じて空気排出口15から外部に排出する。ここで、冷却用の空気の流れは、空気が格納容器6の外壁面で熱せられて空気上昇流路11を上方向に流れる自然対流によっている。
【0037】
図2は、本実施形態において仮想の二重容器漏れ事故が発生した後の液体金属冷却原子炉の全体の状況を示す立断面図である。
【0038】
この場合、原子炉容器4内に通常時液面位置Lnまで満たされていた液体金属3は、原子炉容器4および格納容器6から収納空間12に漏れ出て、原子炉容器4、格納容器6および収納空間12内に溜まる。この結果、液体金属3の液位は、通常時より低い漏出時液面位置Lcまで下がる。
【0039】
一方、収納空間12内に溜まった漏えい液体金属3aの液位がコレクタ9の下端よりも上に来ると、空気下降流路10から空気上昇流路11への冷却用の空気の流路が遮断されてしまい、格納容器6を外部から冷却する能力が喪失する。
【0040】
この結果、漏えいした漏えい液体金属3aからの熱によってライナー16は高温になり、さらに、その熱は蓄熱部18に伝導する。このため蓄熱部18の蓄熱材の温度が上昇し、融点に達すると固体から液体への相転移(融解)が起る。相転移の間は、伝導した熱は融解熱として蓄熱材に吸収されるため蓄熱材の温度は融点の温度に維持される。
【0041】
蓄熱部18の蓄熱材がすべて液体になった後にさらに入熱があると、伝導した熱によって蓄熱部18の温度が上昇し始めるが、蓄熱部18に密着して設けられた冷却媒体流路19を通って流れる冷却媒体によって除熱される。
【0042】
冷却媒体流路19を流れる冷却媒体により除熱され蓄熱部18の蓄熱材から融解熱が放出され蓄熱材は液体から固体に変化すなわち凝固する。この融解と凝固を繰り返すことにより、蓄熱部18の温度は蓄熱材の融点近傍の温度を維持することができる。
【0043】
このように、蓄熱部18の温度は封入された蓄熱材の融点近傍に維持されるとともに、蓄熱部18と冷却媒体流路19を覆った断熱材20とによってコンクリート構築物17に伝わる熱を遮断し、コンクリート構築物17が劣化し始める温度まで加熱されることを防ぐことができる。
【0044】
また、このとき、空気取込閉止弁21及び空気排出閉止弁22を閉じることにより、空気下降流路10と空気上昇流路11への酸素の流入が絶たれる。これによって、ナトリウム火災が継続することを阻止するとともに、原子炉容器4から漏れ出た放射性の核分裂生成物等が大気中に直接漏れ出ることを防止する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、二重容器漏れ事故のような仮想事象が発生したとしても、新たに構成された冷却媒体流路を流れる冷却媒体により、液体金属冷却原子炉1から確実に熱を除去することができ、かつ蓄熱部18の温度が蓄熱材の融点近傍に維持されるとともに断熱部20の断熱材によってコンクリート構築物17に伝わる熱を遮断することによってコンクリート構築物17の温度上昇を抑制することができる。
【0046】
この結果、収納空間12内の漏えい液体金属3aの保持機能を維持することができ、また漏えい液体金属3aおよび原子炉容器4内の液体金属3の温度上昇を抑制することができる。
【0047】
[第2の実施形態]
図3は、本発明に係る液体金属冷却原子炉の第2の実施形態の全体構成を示す立断面図である。
【0048】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、第1の実施形態においては蓄熱部18に冷却媒体流路19が密着して設けられているのに対し、本実施形態においては、蓄熱部18の外周上に密着してヒートパイプ30が配列されている。
【0049】
また、蓄熱部18とヒートパイプ30を覆うように断熱部20が設けられており、蓄熱部18とヒートパイプ30がコンクリート構築物17に直接接触しないようにしている。ヒートパイプ30の上端の冷却部は、屋外に露出して設けられている。
【0050】
ヒートパイプ30に封入された作動流体は、蓄熱部18内の蓄熱材の融点以下で、かつ屋外に露出して冷却される温度より高い沸点を有する。このような作動流体としては、例えば、作動温度が0℃〜200℃の水、作動温度が−10℃〜130℃のエタノール、作動温度が−20℃〜130℃のメタノールなどがある。
【0051】
(作用)
図4は、本実施形態において仮想の二重容器漏れ事故が発生した後の液体金属冷却原子炉の全体の状況を示す立断面図である。
【0052】
二重容器漏れ事故が発生した場合に、原子炉容器4内の液体金属3の液位が通常時より低い漏出時液面位置Lcまで下がり、また、コレクタ9の下端より高い液位が収納空間12内に形成され格納容器6外部の空気流路が遮断されて冷却機能が喪失する。
【0053】
この結果、漏えいした漏えい液体金属3aからの熱によってライナー16は高温になり、さらに、その熱は蓄熱部18に伝導する。このため蓄熱部18の蓄熱材の温度が上昇し、融点に達すると固体から液体に相転移(融解)が起る。相転移の間は、伝導した熱は融解熱として蓄熱材に吸収されるため蓄熱材の温度は融点の温度に維持される。
【0054】
蓄熱部18の蓄熱材がすべて液体になった後にさらに入熱があると、伝導した熱によって蓄熱部18の温度が上昇し始めるが、蓄熱部18に密着して設けられたヒートパイプ30内の作動流体が蒸発し、蒸発した作動媒体はヒートパイプ30が屋外に露出された部分で熱を放出し冷却され液体となって戻ってくるというサイクルの発生により、蓄熱部18は除熱される。
【0055】
除熱されることにより蓄熱部18の蓄熱材から融解熱が放出され蓄熱材は凝固する。この融解と凝固のサイクルにより蓄熱部18の温度は封入された蓄熱材の融点近傍に維持される。このように、蓄熱部18とヒートパイプ30とによって断熱部20の内側の温度上昇が抑制される。さらにヒートパイプ30の外側に設置された断熱部20によってコンクリート構築物17に伝わる熱を低減させることにより、コンクリート構築物17が劣化し始める温度まで加熱されることを防ぐことができる。
【0056】
また、空気取込閉止弁21及び空気排出閉止弁22を閉じる結果、原子炉容器4から漏れ出た放射性の核分裂生成物等が大気中に直接漏れ出ることを防止する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、二重容器漏れ事故のような仮想事象が発生したとしても、新たに構成された冷却媒体流路を流れる冷却媒体により、液体金属冷却原子炉から確実に熱を除去することができ、かつ蓄熱部の温度が蓄熱材の融点近傍に維持されるとともに断熱部20の断熱材によってコンクリート構築物17に伝わる熱を遮断することによってコンクリート構築物17の過熱による劣化を防ぐことができる。
【0058】
この結果、収納空間12内の漏えい液体金属3aの保持機能を維持することができ、また漏えい液体金属3aおよび原子炉容器4内の液体金属3の温度上昇を抑制することができる。
【0059】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0060】
例えば、コレクタ9により仕切られる空気下降流路10および空気上昇流路11に接続する空気の流路の方式が異なっていたり、空気でなく別の気体を使用する原子炉に適用してもよい。また、収納空間自体は環状空間ではなく平面的形状が矩形等でもよい。
【0061】
ヒートパイプ30の冷却場所は、屋外に限らないし、また、冷却方法は空冷でなくともたとえば外部の貯水池などでもよい。
【0062】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。例えば、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせて、冷却媒体流路とヒートパイプの両冷却手段を備えてもよい。
【0063】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1・・・液体金属冷却原子炉
2・・・核燃料炉心
3・・・液体金属
3a・・・漏えい液体金属
4・・・原子炉容器
5・・・間隙部
6・・・格納容器
7・・・格納ドーム
8・・・炉上部室
9・・・コレクタ
10・・・空気下降流路
11・・・空気上昇流路
12・・・収納空間
13・・・空気取込口
14・・・ダクト
15・・・空気排出口
16・・・ライナー
17・・・コンクリート構築物
18・・・蓄熱部
19・・・冷却媒体流路(冷却部)
20・・・断熱部
21・・・空気取込閉止弁
22・・・空気排出閉止弁
30・・・ヒートパイプ(冷却部)
Ln・・・通常時液面位置
Lc・・・漏出時液面位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体金属からなる原子炉冷却材が内部に満たされた原子炉容器と、
前記原子炉容器の周囲および底部を包囲するように設けられた格納容器と、
前記原子炉容器の上部を包囲し前記格納容器とともに原子炉容器を密閉格納する格納ドームと、
前記格納容器を囲む収納空間を介して前記格納容器を包囲する外周コンクリート構築物と、
前記収納空間に対向する位置で前記外周コンクリート構築物の内側を覆うように設けられたライナーと、
を備える液体金属冷却原子炉において、
前記ライナーと前記外周コンクリート構築物の間に設けられた温度上昇緩和機構を備え、
前記温度上昇緩和機構は、
当該液体金属冷却原子炉の通常運転時の前記ライナーの温度より高く、かつ当該液体金属冷却原子炉の通常運転時の前記原子炉冷却材の温度より低い融点をもつ蓄熱材を有する蓄熱部と、
前記原子炉容器から前記格納容器を通って漏えいした前記原子炉冷却材から熱を除去するための冷却部と、
を有することを特徴とする液体金属冷却原子炉。
【請求項2】
前記温度上昇緩和機構は、前記蓄熱部および前記冷却部と前記外周コンクリート構築物との間に断熱部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体金属冷却原子炉。
【請求項3】
前記冷却部は、外部から供給され前記原子炉冷却材からの熱を吸収後に、外部に戻る冷却媒体を内包する冷却媒体流路を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体金属冷却原子炉。
【請求項4】
前記冷却部は、前記原子炉冷却材からの熱吸収と外気雰囲気での熱放出により作動するように配設されたヒートパイプを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液体金属冷却原子炉。
【請求項5】
前記ヒートパイプは、その一部が前記蓄熱部に密着して設置され、その密着した部分から上方に延びて、上端が屋外に露出していることを特徴とする請求項4に記載の液体金属冷却原子炉。
【請求項6】
前記ヒートパイプには、沸点が前記蓄熱材の融点以下ある作動流体が封入されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の液体金属冷却原子炉。
【請求項7】
前記蓄熱材は、前記外周コンクリート構築物を形成するコンクリートの劣化温度より低い融点をもつことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の液体金属冷却原子炉。
【請求項8】
前記収納空間と外部とを連通する流路にあって、前記原子炉冷却材の漏えい時を除き開状態にあり前記原子炉冷却材の漏えい時には閉止し前記収納空間を密閉状態とする空気取込閉止弁および空気排出閉止弁を備えることを特徴とする請求項1から請求項7に記載の液体金属冷却原子炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104711(P2013−104711A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247229(P2011−247229)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】