説明

液冷式電子ユニットを収納するラック

【課題】本明細書は、液冷式電子ユニットを収納するのに好適なラックを提供する。
【解決手段】ラック2は、電子ユニット50に電気を供給する電気コネクタ12と、電子ユニット50に冷却液を供給する流体コネクタ14を備えている。流体コネクタ14と電気コネクタ12は、ラック2の水平断面(平面)において異なる位置に配置されている。より好ましくは、電気コネクタ12はラック2のバックパネル6に取り付けられており、流体コネクタ14はラック2の前面に取り付けられている。そのような構成により、流体コネクタ14から漏れた冷却液が電気コネクタ12に付着し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、液冷式電子ユニットを収納するとともに、その電子ユニットに電気と冷却液を供給するラックに関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路を内蔵した電子ユニットを収納するラックが知られている。ラックには、電子ユニットに電力を供給するための電気コネクタが取り付けられている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−110273号公報
【特許文献2】特開平9−298378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子ユニット内部の回路を効果的に冷却することができる液冷式の電子ユニットが登場している。液冷式の電子ユニットには、ユニットの外部から冷却液を供給する必要がある。電気とともに冷却液を供給することのできるラックが必要とされる。液冷式電子ユニットを収納するためのラックは、電気コネクタと流体コネクタを備える必要がある。電子ユニットの着脱時に流体コネクタから冷却液が漏れる虞がある。他方、電子ユニットの着脱時に、電気コネクタの電極が露出する。電子ユニットの着脱時に流体コネクタから漏れた冷却液が電気コネクタに付着することを防止しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、液冷式電子ユニットを収納するのに好適なラックを開示する。本明細書に開示されるラックは、電子ユニットに電気を供給する電気コネクタと、電子ユニットに冷却液を供給する流体コネクタを備えている。電気コネクタと流体コネクタは、ラックの水平断面において異なる位置に配置されている。即ち、電気コネクタは、流体コネクタの鉛直下方に位置しない。そのような配置によって、電子ユニットの着脱時に流体コネクタから漏れた冷却液が電気コネクタに付着する可能性を抑制することができる。「流体コネクタ」は「流体カプラ」と呼ばれることがある。
【0006】
ラックの前面と電気コネクタの間の水平距離が、ラックの前面と流体コネクタの間の水平距離とは異なることが好ましい。さらに具体的には、電気コネクタがラックのバックパネルに取り付けられており、流体コネクタがラックの前面に取り付けられてよい。電子ユニットをラックに挿入し、これを固定すると、電子ユニットの背面に設けられたユニット側電気コネクタが、ラックのバックパネルに取り付けられている電気コネクタと結合する。同時に、電子ユニットの側面に設けられたユニット側流体コネクタが、ラックの前面に取り付けられている流体コネクタと結合する。コネクタが結合するとき、電気コネクタと流体コネクタの間に電子ユニットが位置する。電子ユニットが、流体コネクタから漏れた冷却液が電気コネクタに付着することを防止する。
【0007】
流体コネクタから漏れた冷却液が電気コネクタに付着しないように、流体コネクタに冷却液を供給する配管と電気コネクタを空間的に分離する板が取り付けられているとよい。
【0008】
板が、流体コネクタに冷却液を供給する配管を囲んでいることが好ましい。即ち、板は、その内部に流体コネクタに冷却液を供給する配管を通す通路を構成していることが好ましい。通路は、ラックの天板から底板に伸びていることが好ましい。仮に、配管又は流体コネクタから冷却液が漏れたとしても、漏れた冷却液は通路を通ってラックの下に排出される。
【0009】
ラックの天板の上面に集水溝が形成されており、水を集水溝から通路に導く排水孔が集水溝の底に設けられているとさらによい。ラックが設置された部屋の天井からラックの上に落下した水が、ラック内の電子ユニットに付着することなく、排水孔と通路を通じてラックの下に排出される。
【0010】
さらに、流体コネクタの開口部の周囲にシール部材が配置されているとよい。液冷式電子ユニットがラックに挿入されると、シール部材が、収納された電子ユニットと流体コネクタの間の空間を密封することが好ましい。電子ユニット側の流体コネクタとラック側の流体コネクタが結合した後の冷却液漏れを防ぐことができる。
【0011】
本明細書に開示されたラックは、航空機の機体内部に用いられるラックとして好適である。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に開示された技術は、液冷式電子ユニットを収納するラックであり、流体コネクタから漏れた冷却液が電気コネクタに付着し難いラックを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ラックの模式的斜視図を示す。
【図2】図2は、ラックの水平断面図を示す。
【図3】図3は、流体コネクタの拡大図を示す。
【実施例】
【0014】
図面を参照して、本発明の好ましい実施例を説明する。図1は、本実施例のラック2の模式的斜視図である。ラック2は、航空機の機体に設置される。例えば、ラック2は、航空機のキャビンの下側であり貨物室の隣の機械室に設置される。ラック2は、航空機の液冷式電子ユニット(制御ユニットやパワーユニット)を収納する。図1のラック2は、電子ユニットを収納するための6個のスロットを有している。例えば、図1は、電子ユニット50が、左下のスロットに収納されることを示している。ラック2は、収納された電子ユニットに、電力と冷却液を供給する。そのため、ラック2は、電気コネクタと、冷却液用の流体コネクタを備えている。電子ユニットが挿入されると、ラックの電気コネクタと電子ユニットの電気コネクタが結合する。同時に、ラックの流体コネクタと電子ユニットの流体コネクタが結合する。
【0015】
ラック2は、天板4、バックパネル6、底板9、側方支柱8a、8b、中央支柱10で構成されている。側方支柱8a、8bは、ラック2の前面の両側に配置されている。中央支柱10は、ラック2の前面の中央に配置されている。
【0016】
電気コネクタ12が、バックパネル6に取り付けられている。電気コネクタ12は、ラック2の前方を向いている。電気コネクタ12は、各スロットに設けられているが、図1ではラック左側のスロットの電気コネクタのみを示しており、ラック右側のスロットの電気コネクタの図示を省略している。
【0017】
バックパネル6は、ラック2の左側方に張り出しており、その張り出した部分に、端子台7が取り付けられている。端子台7は、ラック2に入力/出力される電力を中継する。端子台7から電気コネクタ12へ電力を伝達する母線(bus bar)が、バックパネル6の背面に配置されている(母線は、図2に図示されている)。
【0018】
流体コネクタ14が、中央支柱10の前面に取り付けられている。流体コネクタ14も、ラック2の前方を向いている。中央支柱10には6個の流体コネクタ14が配置されているが、図1では上方の2つの流体コネクタの図示を省略している。ラック2の夫々の段に、2つの流体コネクタ14が取り付けられており、それらの流体コネクタから、左右の電子ユニットへ冷却液が供給される。例えば、流体コネクタ14aは中段左側のスロットに収納される電子ユニットへ冷却液を供給し、流体コネクタ14bは、中段右側のスロットに収納される電子ユニットへ冷却液を供給する。電子ユニット50がラック2の前面から挿入され、固定されると、電子ユニット50の背面に配置されているユニット側電気コネクタ(不図示)と電気コネクタ12が結合する。同時に、電子ユニット50のフランジ52に配置されているユニット側流体コネクタ(不図示)と流体コネクタ14が結合する。
【0019】
中央支柱10は、天板4から底板9へ垂直に伸びている。中央支柱10は空洞であり、その内部に、冷却液を流体コネクタ14へ供給するためのチューブ16が配置されている。すなわち中央支柱10は、チューブ16の通路を兼ねている。チューブ16を介して、外部から流体コネクタ14へ冷却液が供給される。
【0020】
天板4の上面に、集水溝(water collecting trough)4aが形成されている。集水溝4aは、ラック2の上方から落ちてくる水を受け止める。集水溝4aの底には、中央支柱10の内側に通じている排水孔4bが設けられている。集水溝4aに溜まった水は、排水孔4bを通って中央支柱10の内側に導かれる。そして、水は中央支柱10の底部からラック2の外部に排出される。
【0021】
図2にラック2の水平断面図(horizontal cross-sectional view)を示す。図2の2点鎖線は、ラック2に収納された電子ユニット50を示している。電気コネクタ12が、バックパネル6の前面に取り付けられている。バックパネル6の背面に、端子台7から電気コネクタ12へ電力を伝達する母線(bus bar)20が配置されている。中央支柱10の前面に、流体コネクタ14が取り付けられている。即ち、流体コネクタ14は、ラック2の前面に取り付けられている。図2から明らかなとおり、電気コネクタ12と流体コネクタ14は、ラック2の水平断面において異なる位置に配置されている。ラック2の前面から電気コネクタ12までの水平距離は、ラック2の前面から流体コネクタ14までの水平距離と異なっている。
【0022】
中央支柱10の内部にはチューブ16が通っている。すなわち、中央支柱10の外板は、電気コネクタ12と、流体コネクタ14に冷却液を供給するチューブ16を空間的に分離する。チューブ16と流体コネクタ14の間が枝管で連結されている。冷却液は、チューブ16を通って流体コネクタ14に達する。図2に示されているように、中央支柱10の内部には2本のチューブ16が通っている。一方のチューブ16aは、電子ユニットへ冷却液を供給するためのチューブである。他方のチューブ16bは、冷却液を電子ユニットから排出するためのチューブである。
【0023】
電子ユニット50の背面に、ユニット側電気コネクタ54が取り付けられている。電子ユニット50の右側にはフランジ52が張り出している。そのフランジ52の背面にユニット側流体コネクタ56が取り付けられている。別言すれば、ユニット側流体コネクタ56は、電子ユニット50の側面に配置されている。電子ユニット50が、左側支柱8aと中央支柱10の間のスロットに差し込まれると、電気コネクタ12とユニット側電気コネクタ54が結合する。同時に、流体コネクタ14とユニット側流体コネクタ56が結合する。
【0024】
図3に、流体コネクタ14の拡大図を示す。ひとつの流体コネクタ14aは、2つの開口22a、22bを備えている。冷却液は、一方の開口22aから電子ユニットへ供給される。電子ユニットを冷却した冷却液は、他方の開口22bを通って回収される。流体コネクタ14aは、シール部材24を備えている。シール部材24は、2つの開口22a、22bを囲んでいる。流体コネクタ14aがユニット側流体コネクタ56(図2参照)と結合すると、シール部材24が電子ユニットのフランジ52の背面に密着する。すなわち、電子ユニットがラック2に挿入されると、シール部材24がユニットに密着して開口22a、22bの周囲の空間を密封する。
【0025】
上記したラック2の特徴と利点を以下に列記する。
(1)ラック2は、収納された液冷式電子ユニット50に電力を伝達する電気コネクタ12と、電子ユニット50に冷却液を供給する流体コネクタ14を備えている。
(2)流体コネクタ14と電気コネクタ12は、ラック2の水平断面において異なる位置に配置されている。流体コネクタ14から冷却液が漏れた場合でも、漏れた冷却液は電気コネクタ12に付着し難い。
(3)電気コネクタ12は、バックパネル6に取り付けられており、流体コネクタ14はラック2の前面に取り付けられている。電子ユニット50がラック2に挿入されると、電気コネクタ12とユニット側の電気コネクタ54が結合する。同時に、流体コネクタ14とユニット側の流体コネクタ56が結合する。このとき、電気コネクタ12と流体コネクタ14の間に、電子ユニット50の筐体が位置する。流体コネクタ14から冷却液が漏れたとしても、電子ユニット50の筐体が、漏れた冷却液が電気コネクタ12に到達することを防止する。
(4)ラック2は、天板4から垂直下方に伸びている中央支柱10(チューブの通路)を備えている。中央支柱10の内部を、流体コネクタ14に冷却液を供給するチューブ16が通っている。中央支柱10の外板は、電気コネクタ12とチューブ16を空的に分離している。さらに中央支柱10の外板は、チューブ16を囲っている。中央支柱10(通路)は、チューブ16から漏れた冷却液が電気コネクタ12に付着することを防止する。
(5)ラック2の天板4の上面に、集水溝4aが形成されている。集水溝4aの底に、水を中央支柱10の内部へ導くための排水孔4bが形成されている。ラック2の上方から落下した水は、集水溝4aに溜まり、排水孔4bと中央支柱10を通ってラック2の下へ排水される。集水溝4aと排水孔4bは、ラック2の上方から落下した水がラック2に収納された電子ユニットに付着することを防止する。
(6)流体コネクタ14の開口22a、22bの周囲にシール部材24が取り付けられている。流体コネクタ14がユニット側流体コネクタと結合すると、シール部材24が電子ユニットに密着し、開口22a、22bの周囲の空間を密封する。シール部材24は、開口22a、22bから漏れた冷却液が飛散することを防止する。
(7)中央支柱10は、ラック2の前面の中央に配置されている。中央支柱10の両側に、電子ユニットを収納するスロットが設けられている。中央支柱10の内部を通過するチューブ16から、中央支柱10の両側に収納された電子ユニットへ冷却液を供給する。
(8)ラック2は、航空機の機内に設置されて、航空機の制御ユニット(電気ユニット)を収納することが好適である。
【0026】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、ラック2が備える電気コネクタは、電子ユニットに電気信号を伝達するためのコネクタであってもよい。
【0027】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0028】
2:ラック
4:天板
4a:集水溝
4b:排水孔
6:バックパネル
7:端子台
8a、8b:側方支柱
9:底板
10:中央支柱(通路)
12:電気コネクタ
14:流体コネクタ
16a:冷却液供給用チューブ
16b:冷却液排出用チューブ
22a:冷却液供給用開口
22b:冷却液回収用開口
24:シール部材
50:液冷式電子ユニット
52:フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式の電子ユニットを収納するラックであり、
電子ユニットに電気を供給する電気コネクタと、
電子ユニットに冷却液を供給する流体コネクタと、
ラックの天板から底板に伸びている中央支柱と、を備えており、
電気コネクタと流体コネクタが、ラックの水平断面において異なる位置に配置されており、
中央支柱の内部に、流体コネクタに冷却液を供給あるいは排出するチューブが配置されており、中央支柱の外板がチューブを囲っていることを特徴とするラック。
【請求項2】
ラックの前面と電気コネクタの間の水平距離が、ラックの前面と流体コネクタの間の水平距離とは異なることを特徴とする請求項1に記載のラック。
【請求項3】
電気コネクタがラックのバックパネルに取り付けられており、流体コネクタがラックの前面に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のラック。
【請求項4】
電気コネクタと、流体コネクタに冷却液を供給する配管を空間的に分離する板を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のラック。
【請求項5】
ラックの天板の上面に集水溝が形成されており、水を集水溝から前記通路に導く排水孔が集水溝の底に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のラック。
【請求項6】
流体コネクタの開口の周囲にシール部材が配置されており、液冷式電子ユニットがラックに挿入され固定されると、シール部材がユニットに密着して開口の周囲の空間を密封することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のラック。
【請求項7】
航空機の機体内部に取り付けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のラック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−38448(P2013−38448A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229645(P2012−229645)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2010−501887(P2010−501887)の分割
【原出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【出願人】(510214263)
【Fターム(参考)】