説明

液化ガス燃料エンジンの吸入装置

【課題】 円筒形のみならず矩形・正方形等、種々の形状の吸入通路の適用可能で、吸入通路の長さを増大することなく、小型かつ低コストの装置で以って液体燃料の微粒化・気化を完全になし得るエンジンの吸入装置を提供する。
【解決手段】 液化ガス燃料の全部又は一部を気化して気化器4にて空気と混合し、吸入通路11を経てエンジンのシリンダ10内の供給するようにした液化ガスエンジンにおいて、前記吸入通路11の内壁部に前記液化ガス燃料中の液分を吸着する吸着部材13を設け、吸入通路11中の燃料の液分を毛細管現象により吸着部材13に吸着させ液化燃料の気化を促進する。また、金網、多孔板等の多数の透孔を有する支持部材でフェルト等の吸着部材を支持し吸入通路に取り付けるという、きわめて簡単な構造で加工・組立ができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はLPG(液化プロパンガス)等の液化ガスを燃料とするエンジン、特に小型汎用空冷エンジンの吸入装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図3〜図4はLPGを燃料とする汎用小型空冷エンジン(以下LPGエンジンという)の構成を示し、図3は要部正面図、図4は気化器及び吸入系統の構成図である。図3〜図4において、1はエンジンである。4は該エンジン1の気化器、8はエアクリーナ、10はシリンダ、9は該気化器4とシリンダ10とを接続するインシュレータである。
【0003】2はLPG22が収容されているカセットボンベ、3はエンジン1の正面に取付けられた熱交換器、21は該カセットボンベ2と前記熱交換器3とを接続する燃料管、24は該熱交換器3と気化器4とを接続する燃料管、23は前記燃料管21を開閉するコックである。
【0004】かかる小型汎用空冷LPGエンジンにおいては、燃料となるLPGをカセットボンベ2から気体の状態で取り出すと、燃料の気化熱によるカセットボンベ2の温度低下により該ボンベ2内の圧力が低下し燃料の供給が不可能となるため、カセットボンベ2内の燃料(LPG)22は液体の状態で収容され、該ボンベ2からの燃料22は液体の状態で取り出すようになっている。
【0005】かかるLPGエンジンの運転時において、コック23を開くと、カセットボンベ2内の液体LPG22は燃料管21を経て熱交換器3に導入される。該熱交換器3においては、エンジン1の排風、つまりシリンダ10の熱により加熱された冷却風の熱によってLPG22を加熱し、これをガス化する。ガス化された燃料(LPG)は燃料管24を経て気化器4に導入される。
【0006】該気化器4内の燃料は第1減圧室5及び第2減圧室6にて減圧される。そして減圧された燃料及びエアクリーナ8からの空気は、気化器4のベンチュリ部(不図示)に発生する負圧により、調量用のメインノズル7を経て吸入通路11(図1参照)に吸入され、エンジンのクランクケース(不図示)内部を経てシリンダ10内に供給され燃焼に供される。
【0007】かかるLPGエンジンにおいて、エンジン1の始動時にはエンジン回転数が低く吸入通路11内の空気流速が小さいため、燃料(LPG)の液膜をせん断力で微粒化して、その気化を促進させる手段が特開昭53−25719号、実用新案登録第2501310号等により提供されている。
【0008】特開昭53−25719号においては、吸入通路の内壁面にら螺旋状のひだを設け、液膜化した燃料を該ひだに沿って強制的に螺旋運動させて燃料の霧化を促進している。また、実用新案登録第2501310号においては、吸入通路の内壁面に長手方向に連続した微細な溝あるいはクラックを設け、液体燃料(LPG)をその表面張力により拡散させて気化を促進している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特開昭53−25719号の発明においては、ひだ部の長さを充分に長くとることにより液体燃料の微粒化・気化を促進できるが、吸入通路の内壁面に旋回用のひだ部を設けているので、円筒形状の吸入通路に適用されるに限られ、例えば矩形状断面の吸入通路には適用できない。また、かかる従来技術においては、ひだ部による液体燃料の旋回・衝突作用のみによる微粒化であるので、液体燃料を完全に気化するには、ひだ部の全長を増やさざるを得なくなり、吸入通路が長くなりエンジンが大型化する。
【0010】また実用新案登録第2501310号の考案においても、前記発明と同様、内壁面に設けられた連続した溝あるいはクラックにより液体燃料を霧微粒化、気化するため、円筒形状の吸入通路のみに限られるとともに、前記発明と同様、液体燃料の完全な気化をなすには長い吸入通路を必要とする。
【0011】さらに前記従来技術にあっては、吸入通路の内壁面に螺旋状ひだ部、連続した溝やクラック等を加工する必要があるため加工に工数を要し、エンジンの製造コストが高騰する。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、円筒形のみならず矩形、正方形等、種々の形状の吸入通路に適用可能で、吸入通路の長さを増大することなく、小形かつ低コストの装置で以って液体燃料の微粒化・気化を完全になし得るエンジンの吸入装置を提供することを目的とする。
【0013】かかる発明によれば、吸気流速が小さくかつエンジン排風の温度が低く燃料の気化が充分になされない始動時において、エンジン負圧によって吸入通路に吸入された燃料は支持部材の内壁面に沿って流れた後、該支持部材の透孔から吸着部材に入り、毛細管現象によって吸着部材の全周に亘って浸透し、これによって気相との接触面積が増大され、液体燃料の気化量が増大される。従って、始動時等の吸気流速が小さい運転条件下においても吸入通路における燃料の気化が促進され、始動性が向上する。
【0014】また、かかる発明によれば、吸入通路の壁部に設けた吸着部材の毛細管現象によって液体燃料を吸着する方式であるため、従来技術の様な吸気の流速と吸気通路内壁面の形状を利用して燃料の気化を促進する方式に較べ燃料を気化するに要する軸方向(吸気流方向)の長さが短くなり、インシュレータの長さが短縮されエンジンの小型化が実現できる。
【0015】さらに、金網、多孔板等の多数の透孔を有する支持部材でフェルト等の吸着部材を支持し吸入通路に取り付けるという、きわめて簡単な構造でかつ加工・組立が容易な装置であるので、螺旋状溝や連続溝を設ける従来技術に較べて低コストの装置となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】図1は本発明の実施形態に係る小型空冷LPGエンジンの吸入装置の要部縦断面図、図2は図1のA−A線断面図である。本発明は図3〜図4に示される小型空冷LPGエンジンの吸入装置の改良に係るものである。
【0018】図3〜図4において、1はエンジン、4は該エンジン1用の気化器、8はエアクリーナ、10はシリンダ、9は該気化器4とシリンダ10とを接続するインシュレータである。2はLPG22が収容されているカセットボンベ、3はエンジン1の正面に取付けられた熱交換器、21は該カセットボンベ2と前記熱交換器3とを接続する燃料管、24は該熱交換器3と気化器4とを接続する燃料管、23は前記燃料管21を開閉するコックである。
【0019】本発明に実施形態に示す図1〜図2において、上記インシュレータ9は矩形角状の外筒9aの内部に吸着部材13が収納されて構成される。即ち、13は前記外筒9a内に固着された吸着部材である。該吸着部材13はフェルト等の液膜燃料の吸着機能を有する材料からなる。14は矩形角状の支持部材であり、前記吸着部材13は該支持部材14の外周と前記外筒9aの内周との間に装填されている。
【0020】前記支持部材14は多数の透孔を有する薄肉の多孔板、金網等の液体流体燃料が通過可能な多数の小孔を有する部材によって構成される。そして前記支持部材14の内周には吸入通路11が設けられ、該吸入通路11の上流側は気化器4の燃料出口に、下流側はシリンダ10内の吸気ポート12に夫々接続されている。
【0021】かかる構成からなる小型空冷LPGエンジンの冷態始動時において、前記のように、エンジン排風の熱量が小さく熱交換器3における液体燃料のガス化促進ができないため、燃料(LPG)は液体の状態で気化器4に供給され、リコイルスタータ(不図示)によるクランキングで該気化器4内のベンチュリ部(不図示)に発生する負圧によって吸入通路11内に吸入される。
【0022】該吸入通路11内に供給された液体燃料は、大半が液膜化して該吸入通路11の壁面即ち前記支持部材14の内壁面に沿って流れる。そして、この燃料が、前記支持部材14の透孔を通って吸着部材13に至りこれに吸着されると、該燃料はその表面張力による毛細管現象により該吸着部材13の全周に亘って浸透し、これによって気相との接触面積が増大され、液体燃料の気化量が増大される。
【0023】従って、かかる構成によればエンジン始動時の吸気流速が小さい運転条件下においても吸入通路11における燃料の気化が促進され、始動性が向上する。また、かかる構成によれば、吸着部材の毛細管現象によって液体燃料を吸着する構成であるため、従来技術のように燃料に吸気の流速を利用し吸入通路の内壁面の螺旋状壁面や連続溝を通して燃料の気化を促進する方式に較べ燃料の気化するに要する軸方向(吸気流方向)の長さが短くて済み、インシュレータの長さが短縮できる。
【0024】
【発明の効果】以上記載のごとく本発明によれば、吸気流速が小さくかつエンジン排風の温度が低く燃料の気化が充分になされない始動時において、吸入通路から支持部材の表面を経て吸着部材に導かれた燃料の液分が毛細管現象によって吸着部材の全周に亘って浸透し、気相との接触面積が増大される。これによって、液体燃料の気化量を増大することができる。従って、始動時等の吸気流速が小さい運転条件下においても吸入通路のおける燃料の気化が促進され、始動性が向上する。
【0025】また、吸入通路の壁部に設けた吸着部材の毛細管現象によって液体燃料を吸着する方式であるため、従来技術のような吸気の流速と吸気通路内壁面の形状を利用して燃料の気化を促進する方式に較べ燃料を気化するに要する軸方向(吸気流方向)の長さが短くなり、インシュレータの長さが短縮され、エンジンの小型化を実現することができる。
【0026】さらに、金網、多孔板等の多数の透孔を有する支持部材でフェルト等の吸着部材を支持し、吸入通路に取り付けるという、きわめて簡単な構造で加工・組立が容易な装置であるので螺旋状溝や連続溝を設ける従来技術に較べて低コストの装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る小型空冷LPGエンジンの吸入装置の要部縦断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】小型空冷LPGエンジンの要部正面図である。
【図4】上記エンジンの気化器及び吸入系統の構成図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 カセットボンベ
3 熱交換器
4 気化器
8 エアクリーナ
9 インシュレータ
9a 外筒
10 シリンダ
11 吸入通路
13 吸着部材
14 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 LPG(液化プロパンガス)等の液化ガス燃料の全部又は一部を気化して気化器にて空気と混合し、吸入通路を経てエンジンのシリンダ内に供給するようにした液化ガスエンジンにおいて、前記吸入通路の内壁部に前記液化ガス燃料中の液分を吸着する吸着部材を設けたことを特徴とする液化ガス燃料エンジンの吸入装置。
【請求項2】 前記吸着部材の内周に多数の透孔を有する支持部材を設けて、該支持部材の内周を前記吸入通路に臨ませるとともに、該支持部材とインシュレータの外筒との間に前記吸着部材を介装、支持するように構成されてなる請求項1記載の液化ガス燃料エンジンの吸入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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