説明

液化天然ガス気化器及び液化天然ガス気化システム

【課題】通常運転時においてもSMVを有効に使用可能とした液化天然ガス気化器を提供することを目的とする。
【解決手段】熱媒体を貯留する水槽2と、上記熱媒体を加熱する水中ガスバーナ10と、LNGを上記熱媒体との間で熱交換させるチューブバンドル3とを備える液化天然ガス気化器1であって、上記熱媒体として海水Sを水槽2に流通させる流通装置20を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスを気化させる液化天然ガス気化器及びそれを備えた液化天然ガス気化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、火力発電所等の燃料として、天然ガス(以下、NGと称する)等の化石燃料を用いることが知られている。NGは、冷却することで低温(約−160℃)の液化天然ガス(以下、LNGと称する)となり、専用のLNGタンカーによってLNG基地に海上輸送され貯蔵タンクに貯蔵される。LNGは、使用の際に気化させるものであるが、その液化天然ガス気化器として、例えば、槽内にポンプによって熱源となる海水を大量に供給し、当該海水とLNGとを熱交換させてLNGを気化させるいわゆるオープンラック式LNG気化器(以下、ORVと称する)や、槽内に貯留した工水を水中ガスバーナで加熱して熱媒体とし、その熱媒体とLNGとを熱交換させてLNGを気化させるいわゆるサブマージドコンビューション式LNG気化器(以下、SMVと称する)等を用いることが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−4799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、SMVは、水中ガスバーナの燃料としてNGを使用していることから、ランニングコストが他の気化器に比べて高い。そのため、通常のLNG基地では、海水を熱媒体とするORV等がベースロードとして使用され、SMVは、ORV等のメンテナンス時の代替器や、他の気化器より起動時間が短いことからNGの送ガス負荷が急増したときの対応器として、非常運転時に使用される場合が多い。したがって、SMVは、LNG基地において通常運転時にほとんど活用されていないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、通常運転時においてもSMVを有効に使用可能とした液化天然ガス気化器及び液化天然ガス気化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、熱媒体を貯留する気化容器と、上記熱媒体を加熱する加熱装置と、液化天然ガスを上記熱媒体との間で熱交換させる伝熱管とを備える液化天然ガス気化器であって、上記熱媒体として海水を上記気化容器に流通させる流通装置を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、熱媒体として気化容器に海水を流通させ、当該海水とLNGとの間で熱交換させることで、通常運転時においてもLNGの気化に寄与させることができる。
【0006】
また、本発明では、上記液化天然ガスの気化の需要量に応じて、上記加熱装置の駆動と上記流通装置の駆動とを制御する制御装置を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、変動するLNGの気化の需要量に応じて加熱装置及び流通装置の駆動を制御することで、NGの送ガス負荷に対応することができる。
【0007】
また、本発明では、上記制御装置は、上記加熱装置及び上記流通装置のいずれか一方を駆動させ、他方の駆動を停止させるように制御するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、上記加熱装置及び上記流通装置の駆動を切り替えてLNGの気化効率を変化させることでNGの送ガス負荷に対応することができる。
【0008】
また、本発明では、上記記載の液化天然ガス気化器と、上記液化天然ガス気化器とは異なる第2液化天然ガス気化器とを備える液化天然ガス気化システムを採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、通常運転時においてもLNGの気化に寄与する液化天然ガス気化器を有する液化ガス気化システムが得られる。
【0009】
また、本発明では、上記液化天然ガス気化器と上記第2液化天然ガス気化器とが協働して上記液化天然ガスを気化する第1モードと、上記液化天然ガス気化器と上記第2液化天然ガス気化器とがそれぞれ別に上記液化天然ガスを気化する第2モードとを切り替える切替装置を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第1モードに切り替えて液化天然ガス気化器と第2液化天然ガス気化器とが協働してLNGを気化し、第2モードに切り替えて液化天然ガス気化器と第2液化天然ガス気化器とがそれぞれ駆動してLNGを気化することで、液化天然ガス気化システムの気化する能力を調整してNGの送ガス負荷に対応することができる。
【0010】
また、本発明では、上記第1モードにおいて、上記第2液化天然ガス気化器には、上記液化天然ガス気化器で熱交換された上記液化天然ガスが供給されるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第2液化天然ガス気化器のLNGを気化する負荷を低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱媒体を貯留する気化容器と、上記熱媒体を加熱する加熱装置と、液化天然ガスを上記熱媒体との間で熱交換させる伝熱管とを備える液化天然ガス気化器であって、上記熱媒体として海水を上記気化容器に流通させる流通装置を有するという構成を採用することによって、熱媒体として気化容器に海水を流通させ、当該海水とLNGとの間で熱交換させることで、通常運転時においてもLNGの気化に寄与させることができる。つまり、例えば、加熱装置の駆動が停止している時であっても、海水とLNGとを熱交換させてLNGを気化させることができる。
したがって、通常運転時においてもSMVを有効に使用可能とした液化天然ガス気化器を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態における液化天然ガス気化器1を示す構成図である。
液化天然ガス気化器1は、SMVタイプの気化器であり、図1に示すように、熱媒体を貯留する水槽(気化容器)2と、水槽2に貯留された熱媒体を加熱する水中ガスバーナ(加熱装置)10と、LNGを流通させるチューブバンドル(伝熱管)3と、熱媒体として海水Sを水槽2に流入させる流入部21及び水槽2から海水を流出させる流出部22を備える流出装置20とを有する構成となっている。また、液化天然ガス気化器1は、LNGの気化の需要量に応じて、水中ガスバーナ10の駆動と流通装置20の駆動とを制御する不図示の制御装置を有する構成となっている。
【0013】
水槽2は、海水Sを貯留するための中空部を有する略方形状のタンクであり、対向する側面の一方に流入部21が、他方に流出部22が設けられる。また、水槽2の上部には、水中ガスバーナ10が水槽2内に噴出する燃焼ガスを排ガスCとして水槽2外に排出するスタック4が設けられる。さらに、水槽2には、水槽2内で海水Sを循環させる不図示の循環ポンプが接続される構成となっている。
【0014】
チューブバンドル3は、水槽2内に貯留された海水Sに沈水するように配置され、内部を流通するLNGと海水Sとの間で熱交換する領域・流路を大きくするように、多重に屈曲して形成される構成となっている。なお、チューブバンドル3は、熱伝導性の高い材料、例えば、ステンレスやアルミ合金等で形成されているものを用いるのが好ましい。
【0015】
水中ガスバーナ10は、水槽2内の海水Sを加温するために設けられるものであり、上部10aから供給される燃料ガスA及び燃焼用空気Bの混合気体を燃焼することで発生する燃焼熱により水槽2内の水温を上昇させるとともに、スパージ管11を介して高温の燃焼ガスを水中に放出することで燃焼ガスに含まれる水蒸気の潜熱も有効に利用して水槽2内の水温を上昇させる構成となっている。なお、水中ガスバーナ10に供給される燃料ガスは、不図示の燃料供給装置から、燃焼用空気は、不図示の燃焼用空気ブロワーから供給されることとなる。
スパージ管11は、水中ガスバーナ10の底側部からチューブバンドル3の下部まで延在し、その長手方向に燃焼ガスを噴出する噴出孔11aが所定の距離で離間して複数設けられる構成となっている。
【0016】
流通装置20は、近隣の海から汲上ポンプ等を用いて海水Sを汲み上げ、流入部21を介して水槽2内に供給するとともに、一定量の海水Sを水槽2内から流出部22を介して近隣の海に排出することで、海水Sを水槽2内に流通させる構成となっている。また、流入部21及び流出部22には、供給または排出する海水Sの流量を調節する不図示の流量調節バルブがそれぞれ接続される構成となっている。
【0017】
不図示の制御装置は、水中ガスバーナ10及び流通装置20と電気的に接続することによって、それらの駆動を制御する構成となっている。具体的に本実施形態では、制御装置は、水槽2内の海水Sの流通を制御するため、流入部21及び流出部22に設けられた流量調節バルブと接続され、また、水中ガスバーナ10の駆動を制御するため、燃料ガス供給装置や燃焼用空気ブロワー等と接続される構成となっている。
【0018】
続いて、上記構成の液化天然ガス気化器1の動作について、通常運転時と非常運転時の動作に分けて図2及び図3を参照して説明する。
図2は、通常運転時の液化天然ガス気化器1の動作を説明する図である。
図3は、非常運転時の液化天然ガス気化器1の動作を説明する図である。
【0019】
(通常運転時)
図2に示す通常運転時において、制御装置は、ランニングコストが高い水中ガスバーナ10の駆動を停止させておくため、水中ガスバーナ10に駆動停止信号を出力する。駆動停止信号が入力され停止している状態では、燃料ガス供給装置や燃焼用空気ブロワー等はその駆動を停止しており、図2に示すように燃料ガスの燃焼は行われていない。
【0020】
制御装置は、上記の様に水中ガスバーナ10の駆動停止時においても、液化天然ガス気化器1にLNGを気化させるために、流通装置20を動作させる。具体的には、制御装置は、流入部21及び流出部22に設けられた流量調節バルブに対してバルブ開放信号を出力する。次いで、バルブ開放信号を入力された流量調節バルブはそれぞれ、流入部21及び流出部22を開放して水槽2内に繋がる流路を形成する動作を行う。そして、汲上ポンプの動作によって、開放された流入部21及び流出部22を介して海水Sが水槽2内を流通することとなる。
【0021】
ここで、水槽2内を流通する海水Sは、チューブバンドル3内を流通するLNGとの間で熱交換する。そして、海水Sとの間で熱交換したLNGは、熱を奪って海水Sを冷却するとともにLNG自体は当該熱を得て温度が上昇するので、気化して状態変化しNGとなる。
対して、低温のLNGと熱交換して温度が低下した海水Sは、流出部22を介して近隣の海に排出される。このようにして、水槽2内において、一定量の海水Sが排出されるとともに、流入部21から一定量の海水Sが流入されることによって、水槽2内の海水Sの温度は一定に保たれ、LNGを気化する熱を常に確保することができるため、本実施形態における液化天然ガス気化器1は、通常運転時においても、LNGを気化させることができる。
【0022】
(非常運転時)
一方、非常運転時においては、液化天然ガス気化器1が他の気化器の代替器や送ガス負荷変動の対応器として動作するため、制御装置は、通常運転時よりもLNGの気化効率を上昇させるため、図3に示すように水中ガスバーナ10を駆動させる。このとき、制御装置は、水槽2内の海水Sの流通を停止させるために、流入部21及び流出部22に設けられた流量調節バルブに対してバルブ閉塞信号を出力する。バルブ閉塞信号を入力された流量調節バルブはそれぞれ、流入部21及び流出部22を閉塞して水槽2内に繋がる流路を閉ざす動作を行う。そして、閉塞された流入部21及び流出部22によって、水槽2内に一定量の海水Sが貯留されることとなる。
【0023】
制御装置は、水槽2内の海水Sの流通を停止させた後、水中ガスバーナ10を駆動させる。具体的に、制御装置は、燃料ガス供給装置や燃焼用空気ブロワー等に供給信号を出力し、水中ガスバーナ10を起動させる。水中ガスバーナ10は、燃料ガスA及び燃焼用空気Bの混合気体を燃焼することで発生する燃焼熱により水槽2内に貯溜された海水Sの水温を上昇させるとともに、スパージ管11を介して高温の燃焼ガスを水中に放出することで燃焼ガスに含まれる水蒸気の潜熱も有効に利用して水槽2内の海水Sの水温を上昇させることとなる。なお、水中に放出された燃焼ガスは、排ガスCとしてスタック4によって外部に排気される。
【0024】
ここで、水中ガスバーナ10によって加温された海水Sは、チューブバンドル3内を流通するLNGとの間で熱交換する。加温された海水Sとの間で熱交換するLNGは、熱を奪って海水Sを冷却するとともにLNG自体は当該熱を得て温度が上昇するので、気化して状態変化しNGとなる。ここで、海水Sは加温されているため、通常運転時において流通する海水Sと熱交換する場合と比べてLNG気化効率は、上昇することとなる。
【0025】
対して、低温のLNGと熱交換して温度が低下した海水Sは、循環ポンプの駆動によって水槽2内を循環するとともに、水中ガスバーナ10によって加温され、再び、LNGとの間で熱交換をすることとなる。このようにして、流通装置20の代わりに水中ガスバーナ10を駆動させて、燃焼熱によりLNGを気化させることでLNGの気化効率を上昇させることで、非常運転時におけるLNGの気化の需要量に応じる動作をすることができる。
【0026】
したがって、上述の第1実施形態によれば、熱媒体を貯留する水槽2と、上記熱媒体を加熱する水中ガスバーナ10と、LNGを上記熱媒体との間で熱交換させるチューブバンドル3とを備える液化天然ガス気化器1であって、上記熱媒体として海水Sを水槽2に流通させる流通装置20を有するという構成を採用することによって、水槽2に海水Sを流通させ、当該海水SとLNGとの間で熱交換させることで、通常運転時においてもLNGの気化に寄与させることができる。つまり、水中ガスバーナ10の駆動が停止している時であっても、海水SとLNGとを熱交換させてLNGを気化させることができる。
したがって、通常運転時においてもSMVを有効に使用可能とした液化天然ガス気化器1を提供することができる効果がある。
【0027】
また、第1実施形態では、LNGの気化の需要量に応じて、水中ガスバーナ10の駆動と流通装置20の駆動とを制御する制御装置を有するという構成を採用することによって、通常運転時または非常運転時にて変動するLNGの気化の需要量に応じて水中ガスバーナ10及び流通装置20の駆動を制御することで、NGの送ガス負荷に対応することができる。
【0028】
また、第1実施形態では、上記制御装置は、水中ガスバーナ10及び流通装置20のいずれか一方を駆動させ、他方の駆動を停止させるように制御するという構成を採用することによって、通常運転時と非常運転時とで加熱装置及び上記流通装置の駆動を切り替えることでNGの送ガス負荷に対応することができる。
【0029】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について図4を参照して説明する。
図4は、第1実施形態の液化天然ガス気化器1を備えたLNG気化システム100を示すブロック構成図である。
なお、以下の説明で、第1実施形態と構成を同じくする部分の記載は割愛することとする。
【0030】
LNG気化システム100は、例えば、火力発電所にNGを供給するために構成されるものであり、季節による消費電力の変化による送ガス負荷の変動に対応できる気化システムである。
LNG気化システム100は、図4に示すように、液化天然ガス気化器1と、液化天然ガスとは異なる第2液化天然ガス気化器101と、それらを接続または非接続とする切替装置110とを有する構成となっている。本実施形態では、第2液化天然ガス気化器101としては、ORVを採用している。
【0031】
切替装置110は、液体天然ガス気化器1を通過する第1流路120A及び液体天然ガス気化器1を通過しない第2流路120Bから構成される上流部と、第2液体天然ガス気化器101を通過する第3流路120C及び第2液体天然ガス気化器101を通過しない第4流路120Dから構成される下流部との間に設けられる。
また、切替装置110は、第1流路120Aと第4流路120Dとを接続・非接続とする流量調節バルブ130aと、第1流路120Aと第3流路120Cとを接続・非接続とする流量調節バルブ130bと、第2流路120Bと第3流路120Cとを接続・非接続とする流量調節バルブ130cとを有する構成となっている。
【0032】
上記構成のLNG気化システム100は、季節によって以下に説明する第1モードと第2モードとに切り替えて動作することとなる。
【0033】
(第1モード)
消費電力が小さい冬季においては、LNG気化システム100は、液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とが協働してLNGを気化させるように、切替装置110を次のように動作させる。
【0034】
切替装置110は、流量調節バルブ130bに対してバルブ開放信号を出力する。バルブ開放信号を入力された流量調節バルブ130bは、第1流路120Aと第3流路120Cとを繋げる流路を開放して両者を接続させる。
それと同時に、切替装置110は、流量調節バルブ130a及び流量調節バルブ130cに対してバルブ閉塞信号を出力する。バルブ閉塞信号を入力された流量調節バルブ130aは、第1流路120Aと第4流路120Dとを繋げる流路を閉塞してその両者を非接続とさせ、さらに、流量調節バルブ130cは、第2流路120Bと第3流路120Cとを繋げる流路を閉塞してその両者を非接続とさせる。
したがって、第1モードでは、液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とがLNG気化システム100において直列に接続されることとなる。なお、このとき、液化天然ガス気化器1は、制御装置によって設定を通常運転時に変更してある。
【0035】
ところで、通常運転時において液化天然ガス気化器1は、流通装置20によりLNGを気化することとなるが、非常運転時と比べてその気化効率は低くなることは上述した通りである。したがって、このように、気化効率の低い通常運転時の液化天然ガス気化器1を上流に、第2液化天然ガス気化器101を下流にして互いを接続することで液化天然ガス気化器1を第2液化天然ガス気化器101の気化を補助する気化器として活用することができる。
つまり、上流の液化天然ガス気化器1にてLNGの一部を気化させ、液化天然ガス気化器1によってもなお気化しないLNGの残部を下流の第2液化天然ガス気化器101に供給して完全気化させる。そうすることによって、第2液化天然ガス気化器101のみでLNGを完全気化させる場合に比べて、第2液化天然ガス気化器101の負荷を低減させることができる。
つまり、消費電力が小さい冬季において第1モードに切り替えることで、LNG気化システム100は、第2液化天然ガス気化器101の負荷を低減させつつランニングコストを抑えてLNGを気化することができる。
【0036】
(第2モード)
一方、消費電力の大きい夏季においては、LNG気化システム100は、液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とがそれぞれ別にLNGを気化させるように、切替装置110を次のように動作させる。
【0037】
切替装置110は、流量調節バルブ130bに対してバルブ閉塞信号を出力する。バルブ閉塞信号を入力された流量調節バルブ130bは、第1流路120Aと第3流路120Cとを繋げる流路を閉塞して両者を非接続とさせる。
それと同時に、切替装置110は、流量調節バルブ130a及び流量調節バルブ130cに対してバルブ開放信号を出力する。バルブ開放信号を入力された流量調節バルブ130aは、第1流路120Aと第4流路120Dとを繋げる流路を開放してその両者を接続させ、さらに、流量調節バルブ130cは、第2流路120Bと第3流路120Cとを繋げる流路を開放してその両者を接続させる。
したがって、第2モードでは、液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とが非接続とされてLNG気化システム100において並列となり、それぞれが別にLNGを気化することとなる。なお、このとき、液化天然ガス気化器1は、制御装置によって設定を非常運転時に変更しており、単器でLNGを完全気化することとなる。
【0038】
したがって、液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とがそれぞれLNGを完全気化させて、NGの気化量を増大させることができるため、消費電力の大きい夏季において第2モードに切り替えることで、LNG気化システム100は、急増するNGの需要量に対応することができる。
【0039】
したがって、上述した第2実施形態では、上記記載の液化天然ガス気化器1と、液化天然ガス気化器1とは異なる第2液化天然ガス気化器101とを備えるLNG気化システム100を採用することによって、通常運転時においてもLNGの気化に寄与する液化天然ガス気化器1を有するLNG気化システム100が得られる。
【0040】
また、第2実施形態では、液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とが協働してLNGを気化する第1モードと、液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とがそれぞれ別にLNGを気化する第2モードとを切り替える切替装置110を有するという構成を採用することによって、冬季のような消費電力の小さい季節は第1モードに切り替えて液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とが協働してLNGを気化し、夏季のような消費電力の大きい季節は第2モードに切り替えて液化天然ガス気化器1と第2液化天然ガス気化器101とがそれぞれ駆動してLNGを気化することで、季節によって変動するNGの送ガス負荷に対応することができ、また、それらを切り替えることでLNGの気化する能力を調整することができる。
【0041】
また、第2実施形態では、上記第1モードにおいて、第2液化天然ガス気化器101には、液化天然ガス気化器1で熱交換されたLNGが供給されるという構成を採用することによって、第2液化天然ガス気化器101のLNGを気化する負荷を低減させることができる。
【0042】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0043】
例えば、第1実施形態では、流通装置20は、流量調節バルブを有すると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、流量調節バルブの代わりに流入部21及び流出部22において開閉自在の水門を設けて、当該水門の開閉によって海水Sの流量を調節する構成であっても良い。
【0044】
また、例えば、第2実施形態では、第2液化天然ガス気化器101にORVを用いたが、本発明は、上記構成に限定されるものでは無く、例えば。中間熱媒体気化器(IFV)や、空温式気化器(AFV)、温水式気化器(HWV)等を用いても良い。
【0045】
また、例えば、第2実施形態では、切替装置110は、季節によって第1モードと第2モードとを切り替えると説明したが、急激な送ガス負荷の変動に対応するため、第1モードから第2モードに臨時的に切り替える構成であっても良い。
この場合、LNG気化システム100は、送ガス先への送ガス負荷変動を検出する検出装置と、当該検出装置の検出結果に基づいて切替装置110を駆動させる制御装置とを有する構成であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態における液化天然ガス気化器を示す構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態における通常運転時の液化天然ガス気化器の動作を説明する図である。
【図3】本発明の第1実施形態における非常運転時の液化天然ガス気化器の動作を説明する図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるLNG気化システムを示すブロック構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1…液化天然ガス気化器、2…水槽(気化容器)、3…チューブバンドル(伝熱管)、10…水中ガスバーナ(加熱装置)、20…流通装置、100…LNG気化システム(液化天然ガス気化システム)、110…切替装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を貯留する気化容器と、前記熱媒体を加熱する加熱装置と、液化天然ガスを前記熱媒体との間で熱交換させる伝熱管とを備える液化天然ガス気化器であって、
前記熱媒体として海水を前記気化容器に流通させる流通装置を有することを特徴とする液化天然ガス気化器。
【請求項2】
前記液化天然ガスの気化の需要量に応じて、前記加熱装置の駆動と前記流通装置の駆動とを制御する制御装置を有することを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス気化器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記加熱装置及び前記流通装置のいずれか一方を駆動させ、他方の駆動を停止させるように制御することを特徴とする請求項2に記載の液化天然ガス気化器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液化天然ガス気化器と、前記液化天然ガス気化器とは異なる第2液化天然ガス気化器とを備えることを特徴とする液化天然ガス気化システム。
【請求項5】
前記液化天然ガス気化器と前記第2液化天然ガス気化器とが協働して前記液化天然ガスを気化する第1モードと、
前記液化天然ガス気化器と前記第2液化天然ガス気化器とがそれぞれ別に前記液化天然ガスを気化する第2モードとを切り替える切替装置を有することを特徴とする請求項4に記載の液化天然ガス気化システム。
【請求項6】
前記第1モードにおいて、前記第2液化天然ガス気化器には、前記液化天然ガス気化器で熱交換された前記液化天然ガスが供給されることを特徴とする請求項5に記載の液化天然ガス気化システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate