液塗布具
【課題】先端部の先細りに塗布液の溜まりを残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間にスムーズに入り込むことができ、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できる。
【解決手段】樹脂繊維により形成されたブラシ毛材3によって塗布対象毛に塗布液を塗布する液塗布具1であり、少なくとも一部のブラシ毛材3の先端部3aは、熱加工により溶融して延び先細り3bに形成された形状を有する。先端部3aの先細り3bは、先細り基部3b1の幅より、先細り基部3b1から先端までの長さが長い。また、先端部3aが、曲がった形状を有し、先端部3aの先細り3bが、割れた形状を有する。
【解決手段】樹脂繊維により形成されたブラシ毛材3によって塗布対象毛に塗布液を塗布する液塗布具1であり、少なくとも一部のブラシ毛材3の先端部3aは、熱加工により溶融して延び先細り3bに形成された形状を有する。先端部3aの先細り3bは、先細り基部3b1の幅より、先細り基部3b1から先端までの長さが長い。また、先端部3aが、曲がった形状を有し、先端部3aの先細り3bが、割れた形状を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液塗布具に関し、特にマスカラブラシや毛染め用ブラシのように塗布対象毛にマスカラや毛染め液などの塗布液を塗布する場合に適用して好適な液塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液塗布具として、例えばマスカラブラシは、ブラシの1本のブラシ毛材の先端を刃物で直角か斜めにカットしてあるか、あるいはブラシ毛材の先端を球状に加工してあるものなどがある(特許文献1)。
【特許文献1】実開平3−81018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、マスカラブラシの1本のブラシ毛材の先端が刃物でカットしたり、また球状に加工されているものでは、例えばまつ毛にマスカラ液を塗布するとき、ブラシ毛材の先端のカット部分や球状部分に、まつ毛が当たって乗り上げてしまいマスカラブラシの中にまつ毛が入りにくい。
【0004】
まして、近年マスカラブラシはマスカラ液を多量に塗布してボリウム感を満たすためにブラシ毛材が1巻き当たり平均的に30本以上求められているものがあるが、特にこのようなマスカラブラシでは、ブラシ毛材が密集している上をまつ毛が滑るように移動してしまうことから、マスカラブラシを横左右に揺らせながら使用せざるを得ないなど不便であった。
【0005】
この発明は、以上の点を考慮してなされたもので、先端部の先細りに塗布液の溜まりを残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間にスムーズに入り込むことができ、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できるようにした液塗布具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
請求項1に記載の発明は、樹脂繊維により形成されたブラシ毛材によって塗布対象毛に塗布液を塗布する液塗布具であり、
少なくとも一部の前記ブラシ毛材の先端部は、熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有することを特徴とする液塗布具である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記先端部の先細りは、先細り基部の幅より、先細り基部から先端までの長さが長いことを特徴とする請求項1に記載の液塗布具である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記先端部が、曲がった形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液塗布具である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記先端部の先細りが、割れた形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液塗布具である。
【発明の効果】
【0010】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0011】
請求項1に記載の発明では、少なくとも一部のブラシ毛材の先端部は、熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有しており、この先端部の先細りに塗布液の溜まりを残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間にスムーズに入り込むことができるために、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、先端部の先細りは、先細り基部の幅より、先細り基部から先端までの長さが長いことから、この先端部の長い先細りに塗布液の溜まりを十分に残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間によりスムーズに入り込むことができるために、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、先端部が、曲がった形状を有し、例えば弓状になっていたり、鋭角に曲がったりしていることで、塗布対象毛に絡ませて塗布効果を上げたり、曲げるカール効果をもたらすことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、先端部の先細りが、割れた形状を有し、この先端部の先細りの割れにより塗布液の過剰塗布多の除去と目元や目尻などの微細塗布の効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の液塗布具の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0016】
この実施の形態の液塗布具1を、図1に基づいて説明する。この実施の形態の液塗布具1は、キャップ4に芯材2が取り付けられ、この芯材2に植毛されたブラシ毛材3によって塗布対象毛に塗布液を塗布するものである。ブラシ毛材3の素材としてはポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル、ポリエチレンテレフタレートなどの熱で溶融する樹脂繊維が可能である。
【0017】
芯材2は、1本の線材を中央部で折曲げ、その間に多数のブラシ毛材3に配置し、捩ることで植毛しているが、芯材2は、一対の別々の線材でもよい。ブラシ毛材3は芯部2のブラシ軸線L1に対して、外側半径方向へ延在し、先端部3aは曲がった形状を有するが、先端部3aは曲がった形状でなくても良く、また曲がった形状と曲がらない形状を混在させても良い。
【0018】
図2乃至図8はブラシ毛材3の先端部3aの拡大であり、図2は拡大側面図、図3は拡大平面図、図4は拡大正面である。図5はブラシ毛材3の他の実施の形態の断面図、図6は他の実施の形態の拡大側面図、図7は他の実施の形態の拡大側面図、図8は他の実施の形態の拡大正面である。
【0019】
少なくとも一部のブラシ毛材3は断面円形の樹脂繊維糸であり、その先端部3aは、熱加工により溶融して延び先細り3bに形成された形状を有する。ブラシ毛材3は断面円形の樹脂繊維糸に限らず、図5に示すような種々の断面形状のものが用いられる。図5(a)はH形、図5(b)はY形、図5(c)は菱形、図5(d)は−形、図5(e)は十字形、図5(f)はI形、図5(g)は四角パイプ形、図5(h)は六角形、図5(i)はV形、図5(j)は楕円形、図5(k)は円形パイプ形、図5(l)は四角形、図5(m)はU形、図5(n)はT形、図5(o)はS形である。
【0020】
ブラシ毛材3の先端部3aの先細り3bは、図2に示すように、先細り基部3b1の幅D1より、先細り基部3b1から先端までの長さD2が長い。先端部3aの先細り3bは、側面から見て直角三角形になっているが、二等辺三角形になっているものでもよい。
【0021】
また、図6の実施の形態では、先端部3aが曲がった形状を有する。図6(a)では、側面から見てカラス口のように鋭角に曲がってヒッカケ形状をしているが、図6(b)では、弓状に曲がった形状である。
【0022】
また、ブラシ毛材3の先端部3aは、図6の実施の形態に限らず、図7に示すように種々の向きや形状に形成される。図7(a)はブラシ毛材3の先端部3aがV形キャップ側向きで、先細り3bの長さが異なっている。図7(b)はブラシ毛材3の先端部3aがV形キャップ側向きで、先細り3bの長さが異なっている。図7(c)はブラシ毛材3の先端部3aがブラシ先向きで、先細り3bの長さが異なっている。図7(d)はブラシ毛材3の先端部3aがキャップ側向きで、先細り3bの長さが異なっている。図7(e)はブラシ毛材3の先端部3aが平行で、先細り3bの長さが異なっている。
【0023】
先端部3aの先細り3bは、長さは短くてもブラシ毛材3の幅D1、すなわち直径の1/2以上の長さD2を有し、長いもので例えば5.0mmまでの長さを有する。また、先端部3aの先細り3bが、割れた形状を有し、割れ3b2は種々の形状になっている。さらに、図8に示すように、割れない形状、または割れた形状など種々の形状に形成され、図8(a), (f), (k), (l), (p), (s), (t)は割れない形状であり、図8(b), (c), (d), (e), (g), (h), (i)、(j), (m), (n), (o), (q), (r), (u),(v), (w), (x), (y), (z)は割れた形状であり、2本又は3本に割れているが、5本、6本と扇状に割れているものもある。
【0024】
次に、この実施の形態の液塗布具1の製造を、図9に基づいて説明する。この実施の形態の液塗布具1を製造するには、例えば液塗布具1を製造する最終段階において、ブラシ毛材3の先端を切断して所定の形状に揃えた後に、図9(a)に示すように、ブラシ毛材3を撓ませるようにして、その先端部3aを加熱冶具10に当て矢印方向に移動する。
【0025】
先端部3aの加熱冶具10に当たっている部分は、図9(b)に示すように、熱によって軟化して溶融し、この溶融している部分は加熱冶具10に付着し、溶け始めた先端部3aを移動させることで溶けた部分が延ばされる。このように先端部3aが軟化して溶けることと溶けた部分を引っ張りながら移動させる一連の動作で行うことで、ブラシ毛材3の先端部3aが熱加工により溶融して延び先細り3bに形成された形状になる。
【0026】
先端部3aの先細り3bを長くする場合には、加熱冶具10に当てる部分の長さを長くする。また、ブラシ毛材3の蟹足状を細目にしようとする場合は、加熱冶具10に当てるブラシ毛材3の長さを長くすればよいし、細目に長くする場合は、融点を高くして引っ張りながら移動させる。先端部3aは、先細り3bの必要な長さを確保した位置で、図9(c)に示すように、加熱冶具10から外す。ブラシ毛材3は、樹脂繊維が例えば直径が0.3mmから0.04mmという細い糸であるから加熱冶具10内の空冷や加熱冶具10外からの水冷などに精密な条件が要求される。例えば、成型条件として、加熱冶具10の形状や材質、加熱冶具10内の温度、冷却方法、またブラシ毛材3の種類、太さ、液塗布具1の形状、毛量、成形時の糸張りと移動速度などがあり、成型条件と形状製作は瞬間の諸条件が要求され、これによりブラシ毛材3の先端部3aは、熱加工により溶融して延び先細り3bに形成され、先端部3aを、例えば図8に示すような種々の形状に成形することができる。
【0027】
次に、この実施の形態の液塗布具1の使用を、図10に基づいて説明する。この実施の形態の液塗布具1を、マスカラ用ブラシとして使用する場合には、図10(a)に示すように、塗布液容器20から液塗布具1を引き出すときに、塗布液90を多量に保持できる。すなわち、液塗布具1のしごき落後は、ブラシ毛材3の先端部3aが熱加工により溶融して延び先細り3bに形成された形状を有しているために、図10(b)に示すように、塗布液90が芯材2の近傍まで入り込み、また先端部3aの先細り3bに塗布液90の溜まりを残すことができる。
【0028】
したがって、例えば、図10(b),(c)に示すように、マスカラ液の塗布液90がまつ毛80に塗布されるとき、1本1本の塗布対象毛のまつ毛80が先端部3aの先細り3bで先端が尖っていることで、また先端が薄くなっていることで、先細り3bの間にスムーズに入り込むことができる。このため、芯材2の近傍の塗布液90までも塗布でき、しかも先細り3bに溜まっている塗布液90も塗布でき、まつ毛80に対して十分に多量の塗布液90を塗布できる。
【0029】
この先端部3aの先細り3bは、先細り基部3b1の幅より、先細り基部3b1から先端までの長さが長いことから、この先端部3aの長い先細り3bに塗布液90の溜まりを十分に残すことができ、しかも1本1本のまつ毛80が先端部3aの先細り3bの間によりスムーズに入り込むことができる。
【0030】
また、先端部3aの先細り3bが、割れた形状を有しており、この先端部3aの先細り3bの割れ3b2により塗布液90の過剰塗布多の除去と目元や目尻の微細塗布の効果をもたらすことができる。
【0031】
また、液塗布具1は、先端部3aの先細り3bに加工された部分と加工されない部分が混在したり、先端部3aの長い先細り3bと、短い先細り3bが混在したり、さらに先細り3bが割れたものと、割れないものが混在することがある。このような液塗布具1では、それぞれの不規則な形状が混在することによる相剰効果によってまつ毛80の束のほぐしや液溜りの修正や矯正等々繊細な塗布感が得られる。
【0032】
さらに、先端部3aが曲がった形状を有することで、例えば蟹足にように弓なりになっていたり、カラス口のように鋭角に曲がったりし、この複合した先端がまつ毛80を上にあげるカール効果をもたらすことができる。
【0033】
この実施の形態の液塗布具1は、図1乃至図10に示すような捩りブラシに限定されず、図11に示すように、芯材2を複数本の線材とし、この線材の間にブラシ毛材3を多数並べて配置し、線材を捩ることで形成した捩りブラシを成形し、このブラシ毛材3に適用できる。この捩りブラシでは、図12乃至図15に示すような実施の形態とすることができる。
【0034】
図12の実施の形態では、先端部3aがキャップ4の方向を向いている形態を示しており、塗布液容器から液塗布具1を引き出すときに、塗布液を多量に保持できる。図13の実施の形態では、先端部3aがブラシ先端方向を向いている形態を示し、使用に応じた種々のブラシ形状である。図12及び図13の実施の形態で、図14で示すようにブラシ軸方向に複数の溝3cを有する形態としてもよく、この溝3cに塗布液が溜まり易くなる。図15は先端部3aがブラシ軸線回りに向いている形態を示し、図15(a)は先端部3aの全て右方向を向いており、図15(b)は先端部3aの一部が右方向を向いているが、この実施の形態では左方向に向いていても良い。
【0035】
この実施の形態の液塗布具1は、図16に示すような埋め込みブラシにも適用でき、例えば髪の毛を染めるブラシに用いられる。図16(a)は芯材2を樹脂で成形し、多数のブラシ毛材3を複数列に埋め込み、図16(b)は多数のブラシ毛材3を1列に埋め込み、ブラシ毛材3の先端部は熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有するが、先端は任意の方向に向かせることができるが、向かせなくてもよい。
【0036】
また、この実施の形態の液塗布具1は、図17に示すような一体成形のブラシにも適用でき、例えば髪の毛を染めるブラシに用いられる。図17(a)は芯材2を棒状の樹脂で成形し、芯材2の周りに多数のブラシ毛材3を複数列に一体に形成し、図17(b)は芯材2を板状の樹脂で成形し、芯材2の一面に多数のブラシ毛材3を複数列に一体に形成し、この実施の形態ではブラシ毛材3の先端部は熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有するが、任意の方向に向かせることができが、向かせなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、特にマスカラブラシや毛染め用ブラシのように塗布対象毛にマスカラや毛染め液などの塗布液を塗布する場合に適用して好適な液塗布具に適用可能であり、先端部の先細りに塗布液の溜まりを残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間にスムーズに入り込むことができ、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態の液塗布具の斜視図である。
【図2】ブラシ毛材の先端部の拡大側面図である。
【図3】ブラシ毛材の先端部の拡大平面図である。
【図4】ブラシ毛材の先端部の拡大正面である。
【図5】先端部の他の実施の形態の断面図である。
【図6】先端部の他の実施の形態の拡大側面図である。
【図7】先端部の他の実施の形態の拡大側面図である。
【図8】先端部の他の実施の形態の拡大正面である。
【図9】実施の形態の液塗布具の製造を説明する図である。
【図10】実施の形態の液塗布具の使用を説明する図である。
【図11】他の実施の形態の液塗布具の製造を説明する図である。
【図12】他の実施の形態の液塗布具の概略側面図である。
【図13】他の実施の形態の液塗布具の概略側面図である。
【図14】他の実施の形態の液塗布具の概略平面図である。
【図15】他の実施の形態の液塗布具の概略平面図である。
【図16】埋め込みブラシに適用した実施の形態の液塗布具の斜視図である。
【図17】一体成形のブラシに適用した実施の形態の液塗布具の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 液塗布具
2 芯材
3 ブラシ毛材
3a 先端部
3b 先細り
3b1 先細り基部
3b2 割れ
【技術分野】
【0001】
この発明は、液塗布具に関し、特にマスカラブラシや毛染め用ブラシのように塗布対象毛にマスカラや毛染め液などの塗布液を塗布する場合に適用して好適な液塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液塗布具として、例えばマスカラブラシは、ブラシの1本のブラシ毛材の先端を刃物で直角か斜めにカットしてあるか、あるいはブラシ毛材の先端を球状に加工してあるものなどがある(特許文献1)。
【特許文献1】実開平3−81018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、マスカラブラシの1本のブラシ毛材の先端が刃物でカットしたり、また球状に加工されているものでは、例えばまつ毛にマスカラ液を塗布するとき、ブラシ毛材の先端のカット部分や球状部分に、まつ毛が当たって乗り上げてしまいマスカラブラシの中にまつ毛が入りにくい。
【0004】
まして、近年マスカラブラシはマスカラ液を多量に塗布してボリウム感を満たすためにブラシ毛材が1巻き当たり平均的に30本以上求められているものがあるが、特にこのようなマスカラブラシでは、ブラシ毛材が密集している上をまつ毛が滑るように移動してしまうことから、マスカラブラシを横左右に揺らせながら使用せざるを得ないなど不便であった。
【0005】
この発明は、以上の点を考慮してなされたもので、先端部の先細りに塗布液の溜まりを残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間にスムーズに入り込むことができ、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できるようにした液塗布具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
請求項1に記載の発明は、樹脂繊維により形成されたブラシ毛材によって塗布対象毛に塗布液を塗布する液塗布具であり、
少なくとも一部の前記ブラシ毛材の先端部は、熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有することを特徴とする液塗布具である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記先端部の先細りは、先細り基部の幅より、先細り基部から先端までの長さが長いことを特徴とする請求項1に記載の液塗布具である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記先端部が、曲がった形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液塗布具である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記先端部の先細りが、割れた形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液塗布具である。
【発明の効果】
【0010】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0011】
請求項1に記載の発明では、少なくとも一部のブラシ毛材の先端部は、熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有しており、この先端部の先細りに塗布液の溜まりを残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間にスムーズに入り込むことができるために、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、先端部の先細りは、先細り基部の幅より、先細り基部から先端までの長さが長いことから、この先端部の長い先細りに塗布液の溜まりを十分に残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間によりスムーズに入り込むことができるために、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、先端部が、曲がった形状を有し、例えば弓状になっていたり、鋭角に曲がったりしていることで、塗布対象毛に絡ませて塗布効果を上げたり、曲げるカール効果をもたらすことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、先端部の先細りが、割れた形状を有し、この先端部の先細りの割れにより塗布液の過剰塗布多の除去と目元や目尻などの微細塗布の効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の液塗布具の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0016】
この実施の形態の液塗布具1を、図1に基づいて説明する。この実施の形態の液塗布具1は、キャップ4に芯材2が取り付けられ、この芯材2に植毛されたブラシ毛材3によって塗布対象毛に塗布液を塗布するものである。ブラシ毛材3の素材としてはポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル、ポリエチレンテレフタレートなどの熱で溶融する樹脂繊維が可能である。
【0017】
芯材2は、1本の線材を中央部で折曲げ、その間に多数のブラシ毛材3に配置し、捩ることで植毛しているが、芯材2は、一対の別々の線材でもよい。ブラシ毛材3は芯部2のブラシ軸線L1に対して、外側半径方向へ延在し、先端部3aは曲がった形状を有するが、先端部3aは曲がった形状でなくても良く、また曲がった形状と曲がらない形状を混在させても良い。
【0018】
図2乃至図8はブラシ毛材3の先端部3aの拡大であり、図2は拡大側面図、図3は拡大平面図、図4は拡大正面である。図5はブラシ毛材3の他の実施の形態の断面図、図6は他の実施の形態の拡大側面図、図7は他の実施の形態の拡大側面図、図8は他の実施の形態の拡大正面である。
【0019】
少なくとも一部のブラシ毛材3は断面円形の樹脂繊維糸であり、その先端部3aは、熱加工により溶融して延び先細り3bに形成された形状を有する。ブラシ毛材3は断面円形の樹脂繊維糸に限らず、図5に示すような種々の断面形状のものが用いられる。図5(a)はH形、図5(b)はY形、図5(c)は菱形、図5(d)は−形、図5(e)は十字形、図5(f)はI形、図5(g)は四角パイプ形、図5(h)は六角形、図5(i)はV形、図5(j)は楕円形、図5(k)は円形パイプ形、図5(l)は四角形、図5(m)はU形、図5(n)はT形、図5(o)はS形である。
【0020】
ブラシ毛材3の先端部3aの先細り3bは、図2に示すように、先細り基部3b1の幅D1より、先細り基部3b1から先端までの長さD2が長い。先端部3aの先細り3bは、側面から見て直角三角形になっているが、二等辺三角形になっているものでもよい。
【0021】
また、図6の実施の形態では、先端部3aが曲がった形状を有する。図6(a)では、側面から見てカラス口のように鋭角に曲がってヒッカケ形状をしているが、図6(b)では、弓状に曲がった形状である。
【0022】
また、ブラシ毛材3の先端部3aは、図6の実施の形態に限らず、図7に示すように種々の向きや形状に形成される。図7(a)はブラシ毛材3の先端部3aがV形キャップ側向きで、先細り3bの長さが異なっている。図7(b)はブラシ毛材3の先端部3aがV形キャップ側向きで、先細り3bの長さが異なっている。図7(c)はブラシ毛材3の先端部3aがブラシ先向きで、先細り3bの長さが異なっている。図7(d)はブラシ毛材3の先端部3aがキャップ側向きで、先細り3bの長さが異なっている。図7(e)はブラシ毛材3の先端部3aが平行で、先細り3bの長さが異なっている。
【0023】
先端部3aの先細り3bは、長さは短くてもブラシ毛材3の幅D1、すなわち直径の1/2以上の長さD2を有し、長いもので例えば5.0mmまでの長さを有する。また、先端部3aの先細り3bが、割れた形状を有し、割れ3b2は種々の形状になっている。さらに、図8に示すように、割れない形状、または割れた形状など種々の形状に形成され、図8(a), (f), (k), (l), (p), (s), (t)は割れない形状であり、図8(b), (c), (d), (e), (g), (h), (i)、(j), (m), (n), (o), (q), (r), (u),(v), (w), (x), (y), (z)は割れた形状であり、2本又は3本に割れているが、5本、6本と扇状に割れているものもある。
【0024】
次に、この実施の形態の液塗布具1の製造を、図9に基づいて説明する。この実施の形態の液塗布具1を製造するには、例えば液塗布具1を製造する最終段階において、ブラシ毛材3の先端を切断して所定の形状に揃えた後に、図9(a)に示すように、ブラシ毛材3を撓ませるようにして、その先端部3aを加熱冶具10に当て矢印方向に移動する。
【0025】
先端部3aの加熱冶具10に当たっている部分は、図9(b)に示すように、熱によって軟化して溶融し、この溶融している部分は加熱冶具10に付着し、溶け始めた先端部3aを移動させることで溶けた部分が延ばされる。このように先端部3aが軟化して溶けることと溶けた部分を引っ張りながら移動させる一連の動作で行うことで、ブラシ毛材3の先端部3aが熱加工により溶融して延び先細り3bに形成された形状になる。
【0026】
先端部3aの先細り3bを長くする場合には、加熱冶具10に当てる部分の長さを長くする。また、ブラシ毛材3の蟹足状を細目にしようとする場合は、加熱冶具10に当てるブラシ毛材3の長さを長くすればよいし、細目に長くする場合は、融点を高くして引っ張りながら移動させる。先端部3aは、先細り3bの必要な長さを確保した位置で、図9(c)に示すように、加熱冶具10から外す。ブラシ毛材3は、樹脂繊維が例えば直径が0.3mmから0.04mmという細い糸であるから加熱冶具10内の空冷や加熱冶具10外からの水冷などに精密な条件が要求される。例えば、成型条件として、加熱冶具10の形状や材質、加熱冶具10内の温度、冷却方法、またブラシ毛材3の種類、太さ、液塗布具1の形状、毛量、成形時の糸張りと移動速度などがあり、成型条件と形状製作は瞬間の諸条件が要求され、これによりブラシ毛材3の先端部3aは、熱加工により溶融して延び先細り3bに形成され、先端部3aを、例えば図8に示すような種々の形状に成形することができる。
【0027】
次に、この実施の形態の液塗布具1の使用を、図10に基づいて説明する。この実施の形態の液塗布具1を、マスカラ用ブラシとして使用する場合には、図10(a)に示すように、塗布液容器20から液塗布具1を引き出すときに、塗布液90を多量に保持できる。すなわち、液塗布具1のしごき落後は、ブラシ毛材3の先端部3aが熱加工により溶融して延び先細り3bに形成された形状を有しているために、図10(b)に示すように、塗布液90が芯材2の近傍まで入り込み、また先端部3aの先細り3bに塗布液90の溜まりを残すことができる。
【0028】
したがって、例えば、図10(b),(c)に示すように、マスカラ液の塗布液90がまつ毛80に塗布されるとき、1本1本の塗布対象毛のまつ毛80が先端部3aの先細り3bで先端が尖っていることで、また先端が薄くなっていることで、先細り3bの間にスムーズに入り込むことができる。このため、芯材2の近傍の塗布液90までも塗布でき、しかも先細り3bに溜まっている塗布液90も塗布でき、まつ毛80に対して十分に多量の塗布液90を塗布できる。
【0029】
この先端部3aの先細り3bは、先細り基部3b1の幅より、先細り基部3b1から先端までの長さが長いことから、この先端部3aの長い先細り3bに塗布液90の溜まりを十分に残すことができ、しかも1本1本のまつ毛80が先端部3aの先細り3bの間によりスムーズに入り込むことができる。
【0030】
また、先端部3aの先細り3bが、割れた形状を有しており、この先端部3aの先細り3bの割れ3b2により塗布液90の過剰塗布多の除去と目元や目尻の微細塗布の効果をもたらすことができる。
【0031】
また、液塗布具1は、先端部3aの先細り3bに加工された部分と加工されない部分が混在したり、先端部3aの長い先細り3bと、短い先細り3bが混在したり、さらに先細り3bが割れたものと、割れないものが混在することがある。このような液塗布具1では、それぞれの不規則な形状が混在することによる相剰効果によってまつ毛80の束のほぐしや液溜りの修正や矯正等々繊細な塗布感が得られる。
【0032】
さらに、先端部3aが曲がった形状を有することで、例えば蟹足にように弓なりになっていたり、カラス口のように鋭角に曲がったりし、この複合した先端がまつ毛80を上にあげるカール効果をもたらすことができる。
【0033】
この実施の形態の液塗布具1は、図1乃至図10に示すような捩りブラシに限定されず、図11に示すように、芯材2を複数本の線材とし、この線材の間にブラシ毛材3を多数並べて配置し、線材を捩ることで形成した捩りブラシを成形し、このブラシ毛材3に適用できる。この捩りブラシでは、図12乃至図15に示すような実施の形態とすることができる。
【0034】
図12の実施の形態では、先端部3aがキャップ4の方向を向いている形態を示しており、塗布液容器から液塗布具1を引き出すときに、塗布液を多量に保持できる。図13の実施の形態では、先端部3aがブラシ先端方向を向いている形態を示し、使用に応じた種々のブラシ形状である。図12及び図13の実施の形態で、図14で示すようにブラシ軸方向に複数の溝3cを有する形態としてもよく、この溝3cに塗布液が溜まり易くなる。図15は先端部3aがブラシ軸線回りに向いている形態を示し、図15(a)は先端部3aの全て右方向を向いており、図15(b)は先端部3aの一部が右方向を向いているが、この実施の形態では左方向に向いていても良い。
【0035】
この実施の形態の液塗布具1は、図16に示すような埋め込みブラシにも適用でき、例えば髪の毛を染めるブラシに用いられる。図16(a)は芯材2を樹脂で成形し、多数のブラシ毛材3を複数列に埋め込み、図16(b)は多数のブラシ毛材3を1列に埋め込み、ブラシ毛材3の先端部は熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有するが、先端は任意の方向に向かせることができるが、向かせなくてもよい。
【0036】
また、この実施の形態の液塗布具1は、図17に示すような一体成形のブラシにも適用でき、例えば髪の毛を染めるブラシに用いられる。図17(a)は芯材2を棒状の樹脂で成形し、芯材2の周りに多数のブラシ毛材3を複数列に一体に形成し、図17(b)は芯材2を板状の樹脂で成形し、芯材2の一面に多数のブラシ毛材3を複数列に一体に形成し、この実施の形態ではブラシ毛材3の先端部は熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有するが、任意の方向に向かせることができが、向かせなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、特にマスカラブラシや毛染め用ブラシのように塗布対象毛にマスカラや毛染め液などの塗布液を塗布する場合に適用して好適な液塗布具に適用可能であり、先端部の先細りに塗布液の溜まりを残すことができ、しかも1本1本の塗布対象毛が先端部の先細りの間にスムーズに入り込むことができ、塗布対象毛に対して十分に多量の塗布液を塗布できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態の液塗布具の斜視図である。
【図2】ブラシ毛材の先端部の拡大側面図である。
【図3】ブラシ毛材の先端部の拡大平面図である。
【図4】ブラシ毛材の先端部の拡大正面である。
【図5】先端部の他の実施の形態の断面図である。
【図6】先端部の他の実施の形態の拡大側面図である。
【図7】先端部の他の実施の形態の拡大側面図である。
【図8】先端部の他の実施の形態の拡大正面である。
【図9】実施の形態の液塗布具の製造を説明する図である。
【図10】実施の形態の液塗布具の使用を説明する図である。
【図11】他の実施の形態の液塗布具の製造を説明する図である。
【図12】他の実施の形態の液塗布具の概略側面図である。
【図13】他の実施の形態の液塗布具の概略側面図である。
【図14】他の実施の形態の液塗布具の概略平面図である。
【図15】他の実施の形態の液塗布具の概略平面図である。
【図16】埋め込みブラシに適用した実施の形態の液塗布具の斜視図である。
【図17】一体成形のブラシに適用した実施の形態の液塗布具の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 液塗布具
2 芯材
3 ブラシ毛材
3a 先端部
3b 先細り
3b1 先細り基部
3b2 割れ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱により溶融する樹脂繊維により形成されたブラシ毛材によって塗布対象毛に塗布液を塗布する液塗布具であり、
少なくとも一部の前記ブラシ毛材の先端部は、熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有することを特徴とする液塗布具。
【請求項2】
前記先端部の先細りは、先細り基部の幅より、先細り基部から先端までの長さが長いことを特徴とする請求項1に記載の液塗布具。
【請求項3】
前記先端部が、曲がった形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液塗布具。
【請求項4】
前記先端部の先細りが、割れた形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液塗布具。
【請求項1】
熱により溶融する樹脂繊維により形成されたブラシ毛材によって塗布対象毛に塗布液を塗布する液塗布具であり、
少なくとも一部の前記ブラシ毛材の先端部は、熱加工により溶融して延び先細りに形成された形状を有することを特徴とする液塗布具。
【請求項2】
前記先端部の先細りは、先細り基部の幅より、先細り基部から先端までの長さが長いことを特徴とする請求項1に記載の液塗布具。
【請求項3】
前記先端部が、曲がった形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液塗布具。
【請求項4】
前記先端部の先細りが、割れた形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液塗布具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−307304(P2008−307304A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159666(P2007−159666)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(594190884)東京パーツ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(594190884)東京パーツ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
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