説明

液晶パネル用ガラス基板、及び該ガラス基板を備える液晶パネル

【課題】定量的な管理による表示品質を保証すると共に、管理コスト及び製造コストを削減することができるリアプロジェクションテレビ(RPTV)の液晶パネル用ガラス基板を提供する。
【解決手段】リアプロジェクションテレビ(RPTV)の液晶パネルは、フロート製法により板厚が0.2〜1.1mm(±0.1mm)に形成されたフロートガラス板(ガラス基板)1と、ガラス基板1の一方の表面1aに、スパッタ法により形成されたアルミニウム(Al)から成る増反射膜2とを備える。カットオフ値0.8〜8mmの測定条件において、ろ波うねり曲線のスペクトル解析による空間周波数2〜500本/mm間の、γ=A/Dで表される見易さ指標値γが0.0004(/m)以下、若しくは見易さ指標値γが5.0×10−9/D(/m)以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル用ガラス基板、及び該ガラス基板を備える液晶パネルに関し、特に、リアプロジェクションテレビ(RPTV)の液晶パネル用ガラス基板、及び該ガラス基板を備える液晶パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なリアプロジェクションテレビ(RPTV)の反射ミラーの基板として、板厚3〜5mmのフロートガラス板が用いられる。このフロートガラス板にはフロートの流れ方向に対して垂直な方向にうねりがあり、このうねりはフロートの流れ方向に連続している。即ち、フロートガラス板にはフロートの流れ方向に対して平行な方向に筋状の模様(微小な波状の凹凸)が形成されている。この微小な波状の凹凸は表面反射の光学的な均一性に影響を与えるため、これが多数形成されている場合、反射像に光の強弱による筋状のムラ(明暗模様)が形成されることがあった。反射像のゆがみを定量的に抜き取り評価することによってフロートガラス板の反射像に筋状の明暗模様が形成されているか否かを判別するMTF法や、実際に投射された反射像を目視判定することによって良品基準レベルに達しているか否かを全数判断する全数目視検査が実施されている。これらの評価の結果、フロートの流れ方向と投影系の広角散乱方向を一致させることが、目視検査において良い結果となることが判明した。
【0003】
よって、リアプロジェクションテレビ(RPTV)の反射ミラーに用いられるフロートガラス板について、投影系の広角拡散方向、即ち、フロートガラス板の長辺方向とフロートの流れ方向とを平行にするドローラインコントロールを実施した上で、実際に投射された反射像の全数目視検査を実施することにより、リアプロジェクションテレビ(RPTV)の表示性能を維持している。
【0004】
また、背面投射型ディスプレイなどに使用される反射ミラーにおいて、少なくともガラス基板の一方の表面を所定の表面粗さ(カットオフ値0.8mm〜8mmの測定条件で、0.05μm以下)になるように研磨することが既に開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
一方、液晶パネルに用いられるガラス基板として、通常、板厚0.2〜1.1mm(±0.1mm)のフロートガラス板が用いられる。該フロートガラス板をガラス基板として液晶パネルを製造した場合、上述のうねりに起因して、液晶パネルに色ムラが生じることがある。このため、液晶パネルが良品基準レベルに達するように、液晶パネルに用いるガラス基板の品質の検査が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−235798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の全数目視検査は、リアプロジェクションテレビ(RPTV)の投影系に反射ミラーを設置して白色表示を行い、スクリーン上の明暗模様を所定距離から検査員が観察して筋状の模様の有無判定を行うことが一般的であるので、検査員の視力や記憶力に頼った検査であるために、日々の状況変化によって良品基準レベルが変動する可能性があると共に、フロートガラス板の品質を定量化することができないので、良品基準レベルを高めに設定する必要があり、過剰品質に陥っていた。
【0008】
また、全数目視検査をするためには、リアプロジェクションテレビ(RPTV)の投影系の数量を検査数量の増加に従って増やさなければならない。そのため、設備投資及び人的コストが増加してマスプロダクトによるコストダウンを実施することができずにコスト高となってしまっていた。
【0009】
さらに、ドローラインコントロールは、フロートガラス板の流れ方向とフロートガラス板の長辺方向とを一致させる必要があるため、ガラス切断の自由度が減少する。その結果、ドローラインコントロールを実施しない場合と比較して歩留まりが低下してコスト高となってしまっていた。
【0010】
一方、液晶パネルにおいて、現在用いられているガラス基板の品質検査の指標(例えば、振幅)では、規格内と判別されたガラス基板を用いた液晶パネルであっても色ムラが生じたり、或いは、規格外と判定されたガラス基板を用いた液晶パネルであっても色ムラを生じない場合があり、品質検査の指標と液晶パネルの良品基準レベルとが対応していなかった。
【0011】
このため、確実に良品基準レベルの液晶パネルを製造するために、フロートガラス板に過剰の研磨を行う必要が生じ、その結果、タクトタイムが長くなり、コスト高となってしまっていた。
【0012】
この発明は、以上のような問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、定量的な管理による表示品質を保証すると共に、管理コスト及び製造コストを削減することができる液晶パネル用ガラス基板、及び該ガラス基板を備える液晶パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、板厚が0.2〜1.1mm(±0.1mm)であり、カットオフ値0.8〜8mmの測定条件において、ろ波うねり曲線のスペクトル解析による空間周波数2〜500本/mm間の下記式(1)で表される見易さ指標値γが0.0004(/m)以下、若しくは見易さ指標値γが5.0×10−9/D(/m)以下である液晶パネル用ガラス基板が提供される。
γ=A/D ・・・・・・(1)
(但し、Aは前記ガラス基板のろ波うねり曲線の振幅(m)であり、Dは前記ガラス基板の前記ろ波うねり曲線の周期(m)である)
本発明の第1の態様において、上記液晶パネル用ガラス基板はフロート法によって製造されることが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様において、上記液晶パネル用ガラス基板は、ろ波うねり曲線の周期が2mm以上且つ8mm未満では、下記式(2)で表される他の指標値εが3.5×10−7以下であることが好ましい。
ε=A/D ・・・・・・(2)
上記目的を達成するために、本発明の第2の態様によれば、互いに対向する2枚のガラス基板と、2枚のガラス基板の間に介装された液晶層と、2枚のガラス基板の対向する面のそれぞれに当接するように配置されたスペーサとを備える液晶パネルであって、ガラス基板は上記液晶パネル用ガラス基板である液晶パネルが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、液晶パネル用ガラス基板は、カットオフ値0.8〜8mmの測定条件において、見易さ指標値γが0.0004(/m)以下、若しくは見易さ指標値γが5.0×10−9/D(/m)以下であるので、色ムラに対する表示品位を向上することができる。
【0016】
本発明の第1の態様によれば、液晶パネル用ガラス基板はフロート法によって製造されるので、製造工数及び品質管理工数を削減することでき、もって、コストを低減することができる。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、液晶パネル用ガラス基板のろ波うねり曲線の周期が2mm以上且つ8mm未満では他の指標値εが3.5×10−7以下であるので、確実に色ムラに対する表示品位を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る反射ミラーの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1におけるガラス基板の表面における凹凸を近似した図である。
【図3】図1におけるガラス基板についての光線追跡シュミレーションの解析モデルを示す図である。
【図4】図1におけるガラス基板の凹凸の振幅が0.24μm、周期が10mmである場合についての照度の評価結果を示すグラフであり、図4(A)は、照度波形データを示すグラフであり、図4(B)は、図4(A)に示された照度波形データからトレンド(右下がりの傾き)を取り除いたグラフである。
【図5】図1におけるガラス基板の凹凸の周期が5〜15mmである場合についての、コントラストとガラス基板の凹凸の振幅との関係を示すグラフである。
【図6】図1におけるガラス基板の凹凸の振幅が0.08μmである場合についての、照度の周期とガラス基板の凹凸の周期との関係を示すグラフである。
【図7】コントラストとコントラスト指標との関係を示すグラフである。
【図8】見易さとガラス基板の凹凸の振幅との関係を示すグラフである。
【図9】見易さと見易さ指標値との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例1〜3を含む評価結果を示す図である。
【図11】本発明の他の実施例の評価結果を示す図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る液晶パネルの構成を概略的に示す断面図である。
【図13】隣接するスペーサ間のガラス基板が梁と仮定されたときの力学モデルを概略的に示す図である。
【図14】人間の明暗認識の相対感度を示すグラフである。
【図15】液晶パネルにおける色ムラの観測限界を示すグラフである。
【図16】各サンプルにおける他の指標値とガラス基板における周期との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る反射ミラー用ガラス基板及びそれを備える反射ミラーを図面を参照しながら詳述する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る反射ミラーの構成を概略的に示す断面図である。
【0021】
図1において、リアプロジェクションテレビ(RPTV)の反射ミラー3は、フロート製法により板厚が3mmに形成されたフロートガラス板(ガラス基板)1と、ガラス基板1の一方の表面1aに、スパッタ法により形成されたアルミニウム(Al)から成る増反射膜2とを備える。ここで、ガラス基板1がフロート製法により製造される際に、フロートガラス板の流れ方向とフロートガラス板の長辺方向とを一致させるドローラインコントロールが実施されている。
【0022】
また、ガラス基板1の表面に存在する微小な凹凸は、図2に示すようなsinカーブで近似され、山と谷の高さの差(振幅A)及び1周期の長さ(周期D)で表される。上記反射ミラー3を用いたリアプロジェクションテレビ(RPTV)の表示(画像品質)は、上記ガラス基板1の表面における凹凸の振幅A及び周期Dの影響を受ける。また、周期Dによる反射の光軸はsin関数で近似され、その積分値はcos関数となる。
【0023】
また、要求されるリアプロジェクションテレビ(RPTV)の画像品質を考慮すると、カットオフ値0.8〜8mmの測定条件でろ波うねり曲線の最大振幅が0.1μm以下(カットオフ値0.8〜25mmの測定条件でろ波うねり曲線の最大振幅が0.5μm以下)であることが望ましい。なお、カットオフ値はJIS B 0601で規定されており、ろ波うねり曲線はJIS B 0651で規定されているものである。
【0024】
図3は、図1におけるガラス基板についての光線追跡シュミレーションの解析モデルを示す図である。
【0025】
図3において、解析モデル20は、反射ミラー3と、光源21と、スクリーン22a,22bから成り、光源21から発せられた光線(光束)は、反射ミラー3の上部3aにより反射されてスクリーン22aに達すると共に、反射ミラー3の下部3bにより反射されてスクリーン22bに達する。ここで、スクリーン22a,22bに達した光線(光束)の照度が、夫々評価される。
【0026】
図4(A)及び(B)は、図1におけるガラス基板の凹凸の振幅が0.24μm、周期が10mmである場合についての照度の評価結果を示すグラフであり、図4(A)は、照度波形データを示すグラフであり、図4(B)は、図4(A)に示された照度波形データからトレンド(右下がりの傾き)を取り除いたグラフである。また、図4(A)の照度波形データにおける照度の平均値(Average)と、図4(B)の照度波形データにおける照度の最高値(Max)及び最低値(Min)とを用いて、下記式(3)により周期Dにおける明暗差を表すコントラストC(照度ムラ)を評価した。
【0027】
C=((Max+Average)−(Min+Average))/((Max+Average)+(Min+Average))=(Max−Min)/(Max+Min+2×Average) ・・・・・・(3)
図5は、図1におけるガラス基板の凹凸の周が5〜15mmである場合についての、コントラストとガラス基板の凹凸の振幅との関係を示すグラフである。なお、縦軸はコントラストC(照度ムラ)を示し、横軸はガラス基板1の凹凸の振幅A(μm)を示す。ここで、●はガラス基板1における凹凸の周期Dが5mmであってスクリーン22a(上スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、■はガラス基板1における凹凸の周期Dが10mmであってスクリーン22a(上スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、▲はガラス基板1における凹凸の周期Dが15mmであってスクリーン22a(上スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、○はガラス基板1における凹凸の周期Dが5mmであってスクリーン22b(下スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、□はガラス基板1における凹凸の周期Dが10mmであってスクリーン22b(下スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、△はガラス基板1における凹凸の周期Dが15mmであってスクリーン22b(下スクリーン)に写し出された映像の評価結果である。
【0028】
図5から、ガラス基板1における凹凸の周期Dが短いほど、凹凸の振幅A(μm)に対するコントラストC(照度ムラ)の変化量が大きいことが分かる。
【0029】
図6は、図1におけるガラス基板の凹凸の振幅が0.08μmである場合についての、照度の周期とガラス基板の凹凸の周期との関係を示すグラフである。なお、縦軸は照度の周期λ(mm)を示し、横軸はガラス基板1の凹凸の周期D(mm)を示す。ここで、●はスクリーン22a(上スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、○はスクリーン22b(下スクリーン)に写し出された映像の評価結果である。
【0030】
図6から、照度の周期λ(mm)がガラス基板1における凹凸の周期D(mm)と比例していることが分かると共に、スクリーン22a(上スクリーン)の方が照度の周期λ(mm)が短いことが分かる。
【0031】
図7は、コントラストとコントラスト指標との関係を示すグラフである。なお、縦軸はコントラストC(照度ムラ)を示し、横軸はコントラスト指標(A/D)を示す。ここで、◆はガラス基板1における凹凸の振幅Aが0.08μmである場合を示し、■はガラス基板1における凹凸の振幅Aが0.16μmである場合を示し、▲はガラス基板1における凹凸の振幅Aが0.24μmである場合を示す。
【0032】
図7から、コントラストC(照度ムラ)の増加分がコントラスト指標(A/D)に比例すること、即ち、コントラストC(照度ムラ)の増加分がガラス基板1における凹凸の振幅Aに比例すると共に、ガラス基板1における凹凸の周期Dを2乗した値(D)に反比例することが分かる。これにより、コントラストC(照度ムラ)はガラス基板1における凹凸の振幅Aよりも周期Dに大きな影響を受けることが分かった。
【0033】
次に、空間周波数が2〜500本/mmの範囲における明暗模様の見易さΦがコントラストC(照度ムラ)に比例し、照度の周期(λ)に反比例する。即ち、見易さΦはC/λと比例することは明らかであるので、見易さΦは見易さ指標値γ(=A/D)と比例すると考えられる。
【0034】
図8は、見易さとガラス基板の凹凸の振幅との関係を示すグラフである。なお、縦軸は見易さΦ(=C/λ)を示し、横軸はガラス基板1における凹凸の振幅A(μm)を示す。ここで、●はガラス基板1における凹凸の周期Dが5mmであってスクリーン22a(上スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、■はガラス基板1における凹凸の周期Dが10mmであってスクリーン22a(上スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、▲はガラス基板1における凹凸の周期Dが15mmであってスクリーン22a(上スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、○はガラス基板1における凹凸の周期Dが5mmであってスクリーン22b(下スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、□はガラス基板1における凹凸の周期Dが10mmであってスクリーン22b(下スクリーン)に写し出された映像の評価結果であり、△はガラス基板1における凹凸の周期Dが15mmであってスクリーン22b(下スクリーン)に写し出された映像の評価結果である。
【0035】
図8から、スクリーン22a(上スクリーン)に写し出された映像の方が見易さΦ(=C/λ)が大きくなることが分かり、また、スクリーン22a(上スクリーン)とスクリーン22b(下スクリーン)との場合における見易さΦ(=C/λ)の差は、ガラス基板1における凹凸の周期D(μm)が小さいほど顕著になる傾向があることが分かった。
【0036】
図9は、見易さと見易さ指標値との関係を示すグラフである。なお、縦軸は見易さΦ(=C/λ)を示し、横軸は見易さ指標値γ(=A/D)を示す。ここで、◆はガラス基板1における凹凸の振幅Aが0.08μmである場合を示し、■はガラス基板1における凹凸の振幅Aが0.16μmである場合を示し、▲はガラス基板1における凹凸の振幅Aが0.24μmである場合を示す。
【0037】
図9から、見易さΦ(=C/λ)は、見易さ指標値γ(=A/D)に比例することが分かった。即ち、見易さΦ(=C/λ)がガラス基板1における凹凸の振幅Aに比例すると共にガラス基板1における凹凸の周期Dを3乗した値(D)に反比例することが分かる。これにより、見易さΦ(=C/λ)はガラス基板1における凹凸の振幅Aよりも周期Dに大きな影響を受けることが分かった。
【0038】
このように、見易さΦ(=C/λ)は、見易さ指標値γ(=A/D)に比例するので、見易さ指標値γ(=A/D)を小さくすることによって、見易さΦ(=C/λ)を小さくすることができ、もって明暗模様を見にくくすることができる。
【0039】
以下、本発明の実施例を図10及び図11を用いて説明する。
(実施例1)
カットオフ値0.8〜8mmの測定における見易さ指標値γ(=A/D)の最大値が0.02以下(0.02)であり、積分値が2.0以下(1.93)であり、フロートガラス板の一方の表面にスパッタ法によりアルミニウム(Al)から成る増反射膜を形成したものの各波長(450nm、550nm、650nm)における反射率、及び、反射像確認(55インチのリアプロジェクションテレビ(RPTV)の反射像(白色表示)を1.5m位置から観察)を行った。なお、フロート製法により製造される際にドローラインコントロールを実施したものとそうでないものについて反射像確認を実施した。
【0040】
また、図10において、◎は良品基準レベルを大きく超えることを示し、○は良品基準レベルを超えることを示し、△は良品基準レベルと同等であることを示し、×は良品基準レベルを下回ることを示す。
【0041】
その結果、各波長(450nm、550nm、650nm)における反射率は96%、94%、91%であり、反射像確認は、ドローラインコントロールを実施したものについては明暗模様が確認されたものの良品基準レベルを超えていたのに対して、ドローラインコントロールを実施したものについては明暗模様が確認されて良品基準レベルに達していなかった。
(実施例2)
カットオフ値0.8〜8mmの測定における見易さ指標値γ(=A/D)の最大値が0.01以下(0.008)であり、積分値が1.0以下(0.82)であり、フロートガラス板の一方の表面にスパッタ法によりアルミニウム(Al)から成る増反射膜を形成したものの各波長(450nm、550nm、650nm)における反射率、及び、反射像確認(55インチのリアプロジェクションテレビ(RPTV)の反射像(白色表示)を1.5m位置から観察)を行った。なお、フロート製法により製造される際にドローラインコントロールを実施したものとそうでないものについて反射像確認を実施した。
【0042】
その結果、各波長(450nm、550nm、650nm)における反射率については96%、94%、91%であり、反射像確認については、ドローラインコントロールの有無に関係なく明暗模様が確認されず、完全に良品基準レベルを超えるものであった。
(実施例3)
カットオフ値0.8〜8mmの測定における見易さ指標値γ(=A/D)の最大値が0.006以下(0.006)であり、積分値が0.6以下(0.48)であり、フロートガラス板の一方の表面にスパッタ法によりアルミニウム(Al)から成る増反射膜を形成したものの各波長(450nm、550nm、650nm)における反射率、及び、反射像確認(55インチのリアプロジェクションテレビ(RPTV)の反射像(白色表示)を1.5m位置から観察)を行った。なお、フロート製法により製造される際にドローラインコントロールを実施したものとそうでないものについて反射像確認を実施した。
【0043】
その結果、各波長(450nm、550nm、650nm)における反射率については96%、94%、91%であり、反射像確認については、ドローラインコントロールの有無に関係なく明暗模様が確認されず、完全に良品基準レベルを超えるものであった。
【0044】
次に、本発明の他の実施の形態に係る液晶パネルを図面を参照しながら詳述する。
【0045】
図12は、本発明の他の実施の形態に係る液晶パネルの構成を概略的に示す断面図である。
【0046】
図12において、液晶パネル30は、互いに対向するガラス基板31,32と、2枚のガラス基板31,32の間に注入された液晶層34と、2枚のガラス基板31,32の対向する面のそれぞれに当接するように配置された球状のスペーサ33a,33bとを備える。
【0047】
この液晶パネル30において、ガラス基板31には、該ガラス基板31の製法(フロート法)に起因して、山と谷が生じているため、ガラス基板31に当接するスペーサ33aと、当接しないスペーサ33bとが存在することになる。つまり、山と谷の高さの差を振幅A、或る谷から隣接する谷までの1周期の長さを周期Dとすると、周期Dの両端の谷と2つのスペーサ33aが当接する場合、両端の谷の間に存在する山の部分に配置されたスペーサ33bは、ガラス基板31から振幅Aだけ離れた位置に配置される。
【0048】
しかし、実際には、ガラス基板31,32の間には液晶層34が注入されており、液晶層34は表面張力を有していることから、該表面張力によってガラス基板31は液晶層34に引きつけられ、振幅Aが矯正されてスペーサ33bとガラス基板31との距離は、実際にはΔAとなると想定される。
【0049】
そこで、本発明者等は、上述の現象について、隣接するスペーサ33a間のガラス基板31を梁と仮定して、以下の力学モデルを適用した。
【0050】
図13は、隣接するスペーサ間のガラス基板が梁と仮定されたときの力学モデルを概略的に示す図である。
【0051】
図13において、幅W、板厚tの梁は、梁長がDとなるように三角柱で支えられる。この場合、梁の上部から垂直に荷重Fをかけると、梁がδだけ撓む。このとき、梁の断面二次モーメントIは下記式(4)で示され、
I=t×W/12 ・・・(4)
また、撓みδは断面二次モーメントIを用いると、下記式(5)で示される。
δ=F×D/(4×E×I) ・・・(5)(但し、Eはヤング率である。)
上記式(4)、(5)より、撓みδは下記式(6)に示す通りとなる。
δ=F×D/(4×E×W×t) ・・・(6)
図13の力学モデルを図12の液晶パネルに適用すると、図13における荷重Fが図12における表面張力に該当する。ここで、表面張力によるガラス基板31の引き付け量(撓みδ)が振幅A以上である(A/δ≦1、以下「A/δ」を「うねり矯正指標値」と称する。)場合には、表面張力によってガラス基板13のうねりは矯正されることになる。
【0052】
また、上記式(6)より、撓みδは周期Dの3乗に比例するので、上述した見易さ指標値γ(=A/D)とうねり矯正指標値A/δとの関係は下記式(7)で示され、
A/δ∝A/D=γ ・・・(7)
うねり矯正指標値A/δは見易さ指標値γに比例する。すなわち、うねり矯正指標値A/δを見易さ指標値γを用いて代用的に表すことができると考えられる。
【0053】
ところで、一般的に、ガラス基板31のうねりは、表面張力によるガラス基板31の引き付け量(撓みδ)が大きいほど、又は振幅Aが小さいほど矯正されやすい。これをうねり矯正指標値A/δに当てはめると、うねり矯正指標値A/δが小さいほどガラス基板31のうねりは矯正され易いこととなる。一方、うねり矯正指標値A/δは見易さ指標値γに比例することから、見易さ指標値γが小さいほどガラス基板31のうねりは矯正され易く、結果として、うねりに起因する色ムラが抑制される。
【0054】
ここで、本発明者等は、ドローラインコントロールを伴うフロート法によって山と谷を有し(うねりのある)、且つ振幅Aが互いに異なる複数のガラス基板を製造した。そして、該複数のガラス基板31を用いて複数の液晶パネルを製造し、各液晶パネルの色ムラを観測した。このとき板厚が0.2〜1.1mm(±0.1mm)であり、振幅Aが9.8×10−9mであり、周期Dが2.93×10−2mのガラス基板31を用いた液晶パネルにおいて、色ムラが観測されないことが分かった。これは、液晶層34の表面張力により、ガラス基板31のうねりが矯正されたためと考えられた。このときの振幅A及び周期Dを上記式(1)に代入すると、カットオフ値0.8〜8mmの測定条件において、ろ波うねり曲線のスペクトル解析による空間周波数2〜500本/mm間の、見易さ指標値γは下記式(8)で示す値となる。
γ=A/D=9.8×10−9/(2.93×10−2)≒0.0004・・・(8)
以上より、少なくとも見易さ指標値γが0.0004以下であれば、ガラス基板31のうねりは液晶層34の表面張力によって矯正されて色ムラが抑制され、該色ムラが観測されないことが分かった。
【0055】
また、見易さ指標値γは周期Dの3乗に反比例するので、周期Dが大きいほどガラス基板31のうねりは矯正され易い。ここで、上述した色ムラが観測されない条件では、周期Dが2.93×10−2mであったことから、少なくとも周期Dが3.0×10−2m以上であれば色ムラが抑制されることも推察された。
【0056】
さらに、本発明者等は各液晶パネルの色ムラの観測から、ガラス基板31において振幅Aが5.0×10−9m以下であると、ほぼ周期Dに関係なく、液晶パネルにおいて色ムラが観測されないという知見を得た。
【0057】
上述した力学モデルに基づいた考察では、周期Dが小さくなるほど見易さ指標値γは大きくなり、ガラス基板31のうねりは矯正されにくく、色ムラが観測され易くなる。したがって、上記知見を力学モデルに基づいて説明するのは困難であるため、本発明者等は、人間の明暗(コントラスト)認識が空間周波数に依存することに着目して以下の仮説を類推した。
【0058】
すなわち、図14のグラフに示すように、人間の明暗認識の相対感度(最大感度を1として標準化した感度)は、ある特定の空間周波数(図14では3サイクル/deg)において極値(相対感度で1.0)を示し、該特定の空間周波数より小さい又は大きい空間周波数において低下する。注目すべきは特定の空間周波数より小さくなっても相対感度は低下するということである。ここで、空間周波数は周期Dに相当するから、図14のグラフから周期Dが小さくなると相対感度は低下することが分かる。そして、相対感度が低下するということは、観察者(人間)が液晶パネルに発生する色ムラの発生に鈍感、すなわち、色ムラを観測しにくくなることに他ならない。したがって、周期Dが小さくなるほど色ムラを観測しにくくなる。
【0059】
また、振幅Aが5.0×10−9m以下であることを上記式(1)を用いて表すと、下記式(9)で示す見易さ指標値γの範囲と等価となる。
γ=A/D≦5.0×10−9/D・・・(9)
(但し、Dはmである)
以上から、振幅Aが5.0×10−9m以下、すなわち、見易さ指標値γが5.0×10−9/D(/m)以下の場合、もともと振幅が小さくて色ムラが観測しにくいこと、並びに、或る特定の空間周波数以外では人間の明暗認識の相対感度が低下することとの相乗効果から、どのような周期Dであっても液晶パネルにおいて色ムラが観測されないと推察された。
【0060】
以上より、板厚が0.2〜1.1mm(±0.1mm)のガラス基板31を備える液晶パネルでは、少なくとも、カットオフ値0.8〜8mmの測定条件において、ろ波うねり曲線のスペクトル解析による空間周波数2〜500本/mm間の見易さ指標値γが0.0004以下であるか、若しくは、見易さ指標値γが5.0×10−9/D(/m)以下であれば、液晶パネルにおいて色ムラが観測されないことが推察された。これらの関係をグラフに示すと、図15のグラフとなる。
【0061】
図15は、液晶パネルにおける色ムラの観測限界を示すグラフである。なお、縦軸は見易さ指標値γ(=A/D)を示し、横軸はガラス基板31における周期Dを示す。
【0062】
図15のグラフにおいて、基準線(1)は見易さ指標値γ=0.0004に対応する線であり、基準線(2)は見易さ指標値γ=5.0×10−9/D(/m)に対応する線である。また「△」でプロットした折れ線及び「○」でプロットした折れ線は、それぞれ従来のフロート法により製造されたガラス基板(サンプル1)の上面のデータと下面のデータを示し、「●」でプロットした折れ線は本実施の形態に係る液晶パネル用ガラス基板(サンプル2)のデータを示す。なお、サンプル2もフロート法によって製造されるが、ドローラインコントロールにおける諸制御値がサンプル1と異なる。
【0063】
ここで、各サンプルを用いて液晶パネルを製造し、該液晶パネルにおいて色ムラを観測したところ、サンプル1では色ムラが観測され、サンプル2では色ムラが観測されなかった。そして、図15のグラフにおいて、サンプル1では基準線(1)よりも上に位置し、且つ基準線(2)よりも上に位置するデータが存在するが、サンプル2では基準線(1)や基準線(2)よりも上に位置するデータが存在しない。すなわち、図15のグラフにおける基準線(1)や基準線(2)が色ムラの観測限界を示していることが分かった。
【0064】
サンプル1,2の色ムラの観測結果及びデータ(周期D、見易さ指標値γ)から、図15のグラフを通じて、板厚が0.2〜1.1mm(±0.1mm)のガラス基板31を備える液晶パネルでは、少なくとも見易さ指標値γが0.0004以下であるか、若しくは、見易さ指標値γが5.0×10−9/D(/m)以下であれば色ムラが観測されないことが分かった。
【0065】
なお、上述したサンプル2はフロート法によって製造されたが、本実施の形態に係る液晶パネル用ガラス基板としては、上述した条件(カットオフ値0.8〜8mmの測定条件において、ろ波うねり曲線のスペクトル解析による空間周波数2〜500本/mm間の見易さ指標値γが0.0004以下であるか、若しくは、見易さ指標値γが5.0×10−9/D(/m)以下であること)を満たすものであれば、フロート法で製造されたガラス基板に多少の研磨を施したものであってもよく、当該研磨の量としては5μm以下であることが生産性(製造工数削減、品質管理工数削減)の面から妥当である。
【0066】
また、本発明者等は、色ムラの観測限界に関する他の指標値をとしてA/Dで定義される他の指標値εについて検討した。
【0067】
図16は、各サンプルにおける他の指標値とガラス基板における周期との関係を示すグラフである。なお、縦軸は他の指標値εを示し、横軸はガラス基板31における周期D(mm)を示す。
【0068】
図16のグラフにおいて「△」,「○」,「●」で示される各データは図15のグラフにおけるサンプル1,2の各データに対応する。ここで、上述したように、「△」や「○」に対応するサンプル1では色ムラが観測され、且つ「●」に対応するサンプル2では色ムラが観測されなかった。一方で、サンプル1における他の指標値εは、周期Dが8〜20mmの範囲において、3.5×10−7(図中破線で示す)より大であり、且つサンプル2における他の指標値εは、周期Dが8〜20mmの範囲において3.5×10−7以下である。
【0069】
以上より、周期Dが8〜20mmの範囲において他の指標値εが3.5×10−7以下であれば、色ムラが観測されないことが分かった。
【符号の説明】
【0070】
1 フロートガラス板(ガラス基板)
2 増反射膜
3 反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚が0.2〜1.1mm(±0.1mm)であり、カットオフ値0.8〜8mmの測定条件において、ろ波うねり曲線のスペクトル解析による空間周波数2〜500本/mm間の下記式(1)で表される見易さ指標値γが0.0004(/m)以下、若しくは見易さ指標値γが5.0×10−9/D(/m)以下であることを特徴とする液晶パネル用ガラス基板。
γ=A/D ・・・・・・(1)
(但し、Aは前記ガラス基板のろ波うねり曲線の振幅(m)であり、Dは前記ガラス基板の前記ろ波うねり曲線の周期(m)である)
【請求項2】
フロート法によって製造されることを特徴とする請求項1記載の液晶パネル用ガラス基板。
【請求項3】
ろ波うねり曲線の周期が2mm以上且つ8mm未満では、下記式(2)で表される他の指標値εが3.5×10−7以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶パネル用ガラス基板。
ε=A/D ・・・・・・(2)
【請求項4】
互いに対向する2枚のガラス基板と、前記2枚のガラス基板の間に介装された液晶層と、前記2枚のガラス基板の対向する面のそれぞれに当接するように配置されたスペーサとを備える液晶パネルであって、
前記ガラス基板は請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶パネル用ガラス基板であることを特徴とする液晶パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−212156(P2012−212156A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134627(P2012−134627)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【分割の表示】特願2008−522681(P2008−522681)の分割
【原出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】