説明

液晶ポリエステル繊維の製造方法

【課題】高強度、高弾性率および繊維軸垂直方向に高い耐圧縮性を有し、かつ耐摩耗性に優れる液晶ポリエステル繊維を提供する。
【手段】少なくとも縮合多環芳香族炭化水素構造を有するポリマー構成である液晶ポリエステル(A)と、縮合多環芳香族炭化水素構造を有しないポリマー構成である液晶ポリエステル(B)を、溶融状態でブレンドした後に紡糸し、その後、230℃以上の温度で固相重合を施すことを特徴とする液晶ポリエステル繊維の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高強度、高弾性率および繊維軸垂直方向に高い耐圧縮性を有し、かつ耐摩耗性に優れる液晶ポリエステル繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは剛直な分子鎖からなるポリマーであり、溶融紡糸においてはその分子鎖を繊維軸方向に高度に配向させ、さらに高温下で熱処理を施すことにより固相重合するため、溶融紡糸で得られる繊維の中では最も高い強度、弾性率が得られることが知られている。さらに液晶ポリエステル繊維は高い耐薬品性や低吸湿特性を有するため、ロープやネット類などに用途を持っていた。また、近年では、スクリーン印刷用の紗織物、セールクロス、各種電気製品のコード補強材、防護手袋、プラスチックの補強材、光ファイバーのテンションメンバー、膜体の基布などの比較的繊度の低い液晶ポリエステルの需要が伸びている。
【0003】
一方で液晶ポリエステル繊維は剛直な分子鎖が繊維軸方向へ高度に配向し緻密な結晶が生成されるため、繊維軸垂直方向への相互作用が低く、摩擦によりフィブリルが発生しやすく耐摩耗性に劣るという欠点を持つ。このため繊維の高次加工工程での毛羽発生による工程通過性悪化、毛羽混入による製品の品位・性能低下が発生することから、液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性向上が求められている。中でもフィルター、スクリーン印刷用紗においては、高性能化のために開口部の欠点減少が要求されている。開口部の欠点は、製織工程での摩擦により繊維が削られフィブリル化し、そのフィブリルが開口部を塞ぐことに起因しているため、液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性向上が強く求められている。
【0004】
加えて、フィルター用メッシュ織物、スクリーン印刷用紗においては、性能を長期間維持するために開口部の面積が使用中に減少しないことも要求されている。開口部の面積が減少するとフィルターとしては流体通過時の圧力損失の増加が生じ、スクリーン印刷用紗としてはインク、ペーストの透過性が阻害され印刷欠点が生じるため製品寿命が短くなるなどの問題が発生する。この開口部面積の減少はメッシュを構成する繊維が繊維軸垂直方向(横方向)に潰れて扁平化することにより起こるため、繊維の繊維軸垂直方向(横方向)の耐圧縮性が強く求められている。
【0005】
液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性を改善するために、芯成分が液晶ポリエステル、鞘成分がポリフェニレンスルフィドからなる芯鞘型複合繊維(特許文献1参照)や、島成分が液晶ポリエステル、海成分が屈曲性熱可塑性ポリマーからなる海島型複合繊維が提案されている(特許文献2参照)。これらの技術では屈曲性ポリマーが繊維表面を形成することで耐摩耗性の向上は達成できるものの、液晶ポリエステル以外の成分の分率が多いため繊維の強度が劣る、液晶ポリエステルの高い耐薬品性や低吸湿特性が低下してしまう、液晶ポリエステルの高強度化に必要な繊維の固相重合において低融点の繊維表面が融着しやすくなるという問題があった。この問題は液晶ポリエステルと他成分との複合という手段に起因しており、このことから液晶ポリエステル単独でも耐摩耗性を向上し得る技術が望まれていた。
【0006】
そこで、液晶ポリエステル単独繊維の耐摩耗性を改善するために、示差熱量測定にて観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+10℃以上の温度で熱処理を施す液晶ポリエステルの製造方法が提案されている(特許文献3参照)。該技術は固相重合後の液晶ポリエステル繊維に熱処理を施すことにより、液晶ポリエステル繊維の結晶性を低下させ耐摩耗性を向上させるものである。しかしながら、縮合多環芳香族炭化水素構造を有するポリマー構成である液晶ポリエステルを熱処理した場合では十分な耐摩耗性向上効果が発現せず、また縮合多環芳香族炭化水素構造を有しないポリマー構成である液晶ポリエステルを熱処理した場合では繊維軸垂直方向(横方向)の圧縮に対して弱くなってしまい、該技術では耐摩耗性と耐圧縮性の両立は難しいという問題があった。
【0007】
一方、2種の液晶ポリエステルを混合あるいは複合して溶融紡糸を行う技術としては、重量平均分子量の異なる2種の液晶ポリエステルを混合溶融紡糸する液晶ポリエステル繊維の製造方法(特許文献4参照)や、芯成分が液晶ポリエステルから成り鞘成分が芯成分の融点よりも高い融点を有するポリマー(液晶ポリエステルを含む)から成る芯鞘型複合繊維の製造方法が提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、特許文献4の技術は耐圧縮性について何ら示唆されておらず、また実施例に明示されているような同種のポリマーを用いた場合では結晶性が低下せず、十分な耐摩耗性を得ることができないという問題があった。さらに、特許文献5の技術についても耐圧縮性について何ら示唆されておらず、また芯鞘複合繊維であるため芯成分と鞘成分の界面付近でしか結晶化を阻害できず、結晶性が高く耐摩耗性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−229815号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2003−239137号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2008−240228号公報(第1頁)
【特許文献4】特開平5−222613号公報(第1頁)
【特許文献5】特開平6−57534号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高強度、高弾性率および繊維軸垂直方向に高い耐圧縮性を有し、かつ耐摩耗性に優れる液晶ポリエステル繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、少なくとも縮合多環芳香族炭化水素構造を有するポリマー構成である液晶ポリエステル(A)と、縮合多環芳香族炭化水素構造を有しないポリマー構成である液晶ポリエステル(B)を、溶融状態でブレンドした後に紡糸し、その後、230℃以上の温度で固相重合を施すことにより解決できる。
【発明の効果】
【0011】
少なくとも縮合多環芳香族炭化水素構造を有するポリマー構成である液晶ポリエステル(A)と、縮合多環芳香族炭化水素構造を有しないポリマー構成である液晶ポリエステル(B)を、溶融状態でブレンドした後に紡糸し、その後、230℃以上の温度で固相重合を施すことで高強度、高弾性率および繊維軸垂直方向に高い耐圧縮性を有し、かつ耐摩耗性に優れる液晶ポリエステル繊維を得ることができる。このようにして得られた液晶ポリエステル繊維は、各種電気製品のコード補強材、防護手袋、プラスチックの補強材、光ファイバーのテンションメンバー等の用途に使用でき、特にハイメッシュ織物が必要とされるフィルター、スクリーン紗用途に対し、開口部の欠点を減少させ、開口部の面積を使用中に減少させない等の性能向上が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】横方向降伏荷重、繊維軸垂直方向の圧縮弾性率(圧縮弾性率)を求めるための、繊維直径方向に圧子を用いて圧縮負荷を一定の試験速度で加えて得られる荷重−変位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の液晶ポリエステル繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0014】
本発明で用いられる液晶ポリエステルとは、溶融時に異方性溶融相(液晶性)を形成し得るポリエステルである。この特性は例えば、液晶ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察することにより確認できる。
【0015】
本発明に用いる液晶ポリエステル(A)は縮合多環芳香族炭化水素を含む構造単位を液晶ポリエステルに含むものである。縮合多環芳香族炭化水素とは2つ以上の芳香環が縮合したものであり、縮合多環芳香族炭化水素を含む構造単位とはこれら化合物のオキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジヒドロキシ化合物からなるモノマーを重合体に含むことを指す。縮合多環芳香族炭化水素を主鎖中に含むことで高い強度と繊維軸垂直方向の耐圧縮性を両立することができる。縮合多環芳香族炭化水素の例としてはナフタレン、アズレン、アントラセン、クリセン、ピレン、コロネンおよびそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体等が挙げられる。また、縮合多環芳香族炭化水素の芳香族環数の上限としては、製造が容易である点から6個以下が好ましく、4個以下がより好ましく、3個以下がより好ましい。なお、ビフェニルやターフェニルに代表される鎖状多環芳香族炭化水素は本発明においては縮合多環芳香族炭化水素とは区別して扱う。
【0016】
縮合多環芳香族炭化水素を含む構造単位としては、重合がしやすく、得られる液晶ポリエステル(A)の融点が過度に高くならず、また製糸性も良好となることからナフタレンおよびそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体のオキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジヒドロキシ化合物をモノマーとして用いることが好ましく、分子間相互作用を高め、繊維の強度を高くできるためナフタレンのオキシカルボン酸(ヒドロキシナフトエ酸)、ジカルボン酸(ナフタレンジカルボン酸)、ジヒドロキシ化合物(ジヒドロキシナフタレン)を用いることがより好ましく、構造単位としては下記(VII)〜(IX)のいずれかであることがより好ましい。中でも製糸性により優れ、強度がより高い点でヒドロキシナフトエ酸を用いる構造単位である(VII)が特に好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】
本発明に用いる液晶ポリエステル(A)は縮合多環芳香族炭化水素を含む構造単位を液晶ポリエステル(A)の構造単位全体に対し5モル%以上含む。本発明で用いる液晶ポリエステル(A)の構造単位全体に対する縮合多環芳香族炭化水素を含む構造単位のモル%は、液晶ポリエステル(A)を構成するモノマー単位の総モル数に対する縮合多環芳香族炭化水素を含むモノマー単位の総モル数の百分率で定義され、例えば2種類以上の縮合多環芳香族炭化水素を含む構造単位を用いる場合はその合計を縮合多環芳香族炭化水素を含むモノマー単位の総モル数とする。この分率が5モル%以上であることで高強度と繊維軸垂直方向の耐圧縮性を両立することができる。この分率が高いほど繊維軸垂直方向の耐圧縮性は高まるため10モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。ただし縮合多環芳香族炭化水素を含む構造単位が液晶ポリエステル繊維全体に対して過度に増えると強度が低下するため、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がさらに好ましい。
【0019】
一方、本発明に用いる液晶ポリエステル(B)は縮合多環芳香族炭化水素を含む構造単位を液晶ポリエステルに含まないものである。縮合多環芳香族炭化水素を含まないことで、液晶ポリエステル(A)とブレンドし溶融紡糸して得た繊維を固相重合する際に、互いの結晶化を抑制することができ、固相重合後においても結晶性が低く耐摩耗性に優れた繊維を得ることができる。
【0020】
本発明に用いる液晶ポリエステル(B)は4成分以上の構成単位から成ることが好ましく、5成分以上の構成単位から成ることがより好ましい。4成分以上の構成単位から成ることで結晶化度が過度に高くなりすぎず、耐摩耗性の高い繊維となる。また、構成単位の上限としては、10成分以下の構成単位から成ることが好ましく、8成分以下の構成単位から成ることがより好ましい。10成分以下の構成単位から成ることで結晶性が低くなりすぎず固相重合時の融着を低減させることができる。
【0021】
上記した条件を満たせば、本発明に用いる液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)はa.芳香族オキシカルボン酸の重合物、b.芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、脂肪族ジオールの重合物、c.aとbとの共重合物などを用いることができるが、高強度、高弾性率、高耐熱のためには脂肪族ジオールを用いない全芳香族ポリエステルとすることが好ましい。ここで芳香族オキシカルボン酸としては、ヒドロキシ安息香酸および/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸および/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。さらに、芳香族ジオールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、ジオキシジフェニールおよび/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられ、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
【0022】
本発明に用いる液晶ポリエステル(A)の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸成分と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸成分とハイドロキノン成分とナフタレンジカルボン酸成分および/またはテレフタル酸成分とが共重合されたものなどが挙げられ、特に好ましい例としては、下記構造単位(I)および(II)が共重合されたものが挙げられる。
【0023】
【化4】

【0024】
本発明に用いる液晶ポリエステル(B)の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸成分と4,4’−ジヒドロキシビフェニル成分とハイドロキノン成分とテレフタル酸成分および/またはイソフタル酸成分とが共重合されたものが挙げられ、特に好ましい例としては、下記構造単位(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)が共重合されたものが挙げられる。
【0025】
【化5】

【0026】
なお、本発明で用いる液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)には、上記条件を満たせば、上記構造単位以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸(1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)などの脂環式ジカルボン酸、クロロハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオールおよびp−アミノフェノールなどを本発明の効果を損なわない5モル%程度以下の範囲で共重合させても良い。
【0027】
また、本発明に用いる液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)には、本発明の効果を損なわない5重量%程度以下の範囲で、ポリエステル、ポリオレフィンやポリスチレンなどのビニル系重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリケトン、半芳香族ポリエステルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などのポリマーを添加しても良く、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリエステル99Mなどが好適な例として挙げられる。なお、これらのポリマーを添加する場合、その融点は液晶ポリエステルの融点±30℃以内にすることが製糸性を損なわないために好ましい。
【0028】
さらに本発明の効果を損なわない範囲内で、各種金属酸化物、カオリン、シリカなどの無機物や、着色剤、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、末端基封止剤、相溶化剤等の各種添加剤を少量含有しても良い。
【0029】
本発明に用いる液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)の融点は、溶融紡糸可能な温度範囲を広くするため好ましくは200〜360℃であり、より好ましくは250〜360℃であり、さらに好ましくは270〜350℃である。また、本発明における液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)の融点差は50℃以内であることが好ましい。なお、融点は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)で行う示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、およそTm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温速度で50℃まで冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点とした。
【0030】
本発明における液晶ポリエステル(B)の混合比率は10〜50重量%とすることが好ましく、20〜40重量%とすることが更に好ましい。液晶ポリエステル(B)の混合比率が10〜50重量%となることで、耐圧縮性に優れる液晶ポリエステル(A)が繊維中に連続相として配置することになり、優れた耐圧縮性を有する繊維となる。
【0031】
本発明の液晶ポリエステル繊維の製造方法は、溶融状態で液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)をブレンドした後に紡糸することが重要である。このようにして得られた液晶ポリエステル繊維は、耐圧縮性の高い液晶ポリエステル(A)が繊維中に点在し液晶ポリエステル繊維の耐圧縮性を高めることができることができる。さらに、本発明者らは鋭意検討の結果、液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)が固相重合時の結晶化を阻害しあうため、結晶性が低く耐摩耗性に優れた繊維と成ることを見出した。なお、液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)を用いた芯鞘複合繊維の場合、芯成分と鞘成分の界面付近でしか結晶化を阻害できないため、結晶性の高い繊維となってしまう。
【0032】
ブレンド方法としては、例えば液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)を予め2軸または1軸エクストルーダー等により溶融混練後チップ化した後に通常の溶融紡糸機を用いて紡糸する方法や、2軸または1軸エクストルーダー等により溶融混練したポリマーを溶融状態のまま配管を経由させ紡糸する方法が挙げられる。
【0033】
溶融紡糸において、2軸または1軸エクストルーダー等により押し出されたポリマーは配管を経由しギアーポンプなど公知の計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、口金へと導かれる。このときポリマー配管から口金までの温度(紡糸温度)は、液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)の融点以上500℃以下とすることが好ましく、液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)の融点+10℃以上、400℃以下とすることがより好ましく、液晶ポリエステル(A)および液晶ポリエステル(B)の融点+20℃以上、370℃以下とすることがさらに好ましい。なお、ポリマー配管から口金までの温度をそれぞれ独立して調整することも可能である。この場合、口金に近い部位の温度をその上流側の温度より高くすることで吐出が安定する。
【0034】
本発明の液晶ポリエステル繊維を得るには、口金孔の孔径を小さくするとともに、ランド長(口金孔の孔径と同一の直径を有する直管部の長さ)を長くすることが好ましい。ただし孔径が過度に小さいと孔の詰まりが発生しやすくなるため口金孔の直径は0.03mm以上0.30mm以下が好ましく、0.05mm以上0.25mm以下がより好ましく、0.08mm以上0.20mm以下がさらに好ましい。ランド長は過度に長いと圧力損失が高くなるため、ランド長を孔径で除した商で定義されるL/Dは0.5以上3.0以下が好ましく0.8以上2.5以下がより好ましく、1.0以上2.0以下がさらに好ましい。また均一性を維持するために1つの口金の孔数は1孔以上50孔以下が好ましく、30孔以下がより好ましく、10孔以下がさらに好ましい。なお、口金孔の直上に位置する導入部の直径は口金孔径の5倍以上の孔径のストレート孔とすることが圧力損失を高めない点で好ましい。また、導入部と口金孔の孔径と同一の直径を有する直管部の接続部分はテーパーとすることが異常滞留を抑制する上で好ましいが、テーパー部分の長さはランド長の2倍以下とすることが圧力損失を高めず、流線を安定させる上で好ましい。
【0035】
口金孔より吐出されたポリマーは保温、冷却領域を通過させ固化させた後、一定速度で回転するローラー(ゴデットローラー)により引き取られる。保温領域は過度に短いと口金面の温度が低下し、過度に長いと製糸性が悪くなるため口金面から1mm以上200mm以下とすることが好ましく、5mm以上100mm以下とすることがより好ましい。保温領域は加熱手段を用いて雰囲気温度を高めることも可能であり、その温度範囲は100℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上400℃以下がより好ましい。冷却は不活性ガス、空気、水蒸気等を用いることができるが、平行あるいは環状に噴き出す空気流を用いることが環境負荷を低くする点から好ましい。
【0036】
引き取り速度は生産性、単糸繊度の低減のため300m/分以上が好ましく、500m/分以上がより好ましく、800m/分以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが曳糸性の点から2000m/分程度となる。
【0037】
引き取り速度を吐出線速度で除した商で定義される紡糸ドラフトは1以上500以下とすることが好ましく、5以上200以下とすることがより好ましく、12以上100以下とすることがさらに好ましい。
【0038】
溶融紡糸においてはポリマーの冷却固化から巻き取りまでの間に油剤を付与することが繊維の取り扱い性を向上させる上で好ましい。油剤は公知のものを使用できるが、高温での固相重合に耐え得るポリシロキサン系のシリコーンオイルなどを主体とした油剤を用いることがより好ましい。
【0039】
巻き取りは公知の巻き取り機を用いパーン、チーズ、コーンなどの形態のパッケージとすることができるが、巻き取り時にパッケージ表面にローラーが接触しないパーン巻きとすることが繊維に摩擦力を与えずフィブリル化させない点で好ましい。
【0040】
次に、溶融紡糸で得られた繊維は強伸度および弾性率を向上させるため230℃以上の温度で固相重合を施すことが重要である。固相重合はパッケージ状、カセ状、トウ状(例えば、金属網等にのせて行う)、あるいはローラー間で連続的に糸条として処理することも可能であるが、設備が簡素化でき、生産性も向上できる点からパッケージ状で行うことが好ましい。なお、固相重合の温度は液晶ポリエステルの分解反応を抑制するため、500℃以下が好ましい。
【0041】
パッケージ状で固相重合を行う場合、単繊維繊度を細くした際に顕著となる融着を防止する技術が重要となる。融着防止のためには固相重合を行う際の繊維パッケージの巻密度が重要であり、本発明の繊維を得るためには巻き密度が0.1g/cc以上、0.6g/cc以下の繊維パッケージとしてボビン上に形成し、これを固相重合することが好ましい。ここで巻密度とは、パッケージ外寸法と心材となるボビンの寸法から求められるパッケージの占有体積Vf(cc)と繊維の重量Wf(g)からWf/Vfにより計算される値である。なお、占有体積Vfはパッケージの外形寸法を実測するか、写真を撮影し写真上で外形寸法を測定し、パッケージが回転対称であることを仮定し計算することで求められる値であり、Wfは繊度と巻取長から計算される値、もしくは巻取前後での重量差により実測される値である。巻密度が小さいほどパッケージにおける繊維間の密着力が弱まり融着が抑制できるため、0.5g/cc以下が好ましく、巻密度は過度に小さいとパッケージが巻き崩れるため0.2g/cc以上とすることが好ましい。したがって好ましい範囲は、0.2g/cc以上、0.5g/cc以下である。
【0042】
このような巻密度が小さいパッケージは溶融紡糸における巻き取りで形成する場合には、設備生産性、生産効率化が向上するために望ましく、一方、溶融紡糸で巻き取ったパッケージを巻き返して形成する場合には、巻き張力を小さくすることができ、巻密度をより小さくできるため好ましい。巻き返しにおいては巻き張力を小さくするほど巻き密度は小さくできるので巻き張力は0.15cN/dtex以下が好ましく、巻き張力が過度に小さいとパッケージ巻き崩れが発生するため0.01cN/dtex以上が好ましい。巻き密度を低くするためには溶融紡糸で巻き取られたパッケージから調速ローラーを介せず直接、速度制御された巻取機で巻き取ることが有効である。また、巻き返し速度を800m/分以下、特に600m/分以下とすることも巻き密度を低くするために有効である一方、巻き返し速度は生産性のためには高い方が有利であり、50m/分以上、特に100m/分以上とすることが好ましい。
【0043】
また、低張力巻き取りにおいても安定したパッケージを形成するため、ならびに端面部の融着を回避し安定したパッケージを形成するためには巻き形態は両端にテーパーがついたテーパーエンド巻取とすることが好ましい。
【0044】
該繊維パッケージを形成するために用いられるボビンは円筒形状のものであればいかなるものでも良く、繊維パッケージとして巻き取る際に巻取機に取り付けこれを回転させることで繊維を巻き取り、パッケージを形成する。固相重合に際しては繊維パッケージをボビンと一体で処理することもできるが、繊維パッケージからボビンのみを抜き取って処理することもできる。また、いずれの場合にもボビンの外層にはクッション材を巻き付け、その上に液晶ポリエステル溶融紡糸繊維を巻き取っていくことが好ましい。クッション材の材質は、固相重合の温度に耐えうる有機繊維または金属繊維からなるフェルトが好ましく、厚みは0.1mm以上、20mm以下が好ましい。
【0045】
固相重合時の融着を防ぐため、繊維表面に油分を付着させることは好ましい実施形態である。これら成分の付着は溶融紡糸から巻き取りまでの間に行っても良いが、付着効率を高めるためには巻き返しの際に行う、あるいは溶融紡糸で少量を付着させ、巻き返しの際にさらに追加することが好ましい。
【0046】
油分付着方法はガイド給油でも良いが、総繊度の細い繊維に均一に付着させるためには金属製あるいはセラミック製のキスロール(オイリングロール)による付着が好ましい。油分の成分としては固相重合での高温熱処理で揮発させないため耐熱性が高い方が良く、塩やタルク、スメクタイトなどの無機物質、フッ素系化合物、シロキサン系化合物(ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなど)およびこれらの混合物などが好ましい。中でもシロキサン系化合物は固重での融着防止効果に加え、易滑性にも効果を示すため特に好ましい。
【0047】
これらの成分は固体付着、油分の直接塗布でも構わないが付着量を適正化しつつ均一塗布するためにはエマルジョン塗布が好ましく、安全性の点から水エマルジョンが特に好ましい。したがって成分としては水溶性あるいは水エマルジョンを形成しやすいことが望ましく、ジメチルポリシロキサンの水エマルジョンを主体とし、これに塩や水膨潤性のスメクタイトを添加した混合油剤が最も好ましい。
【0048】
繊維への油分の付着量は融着抑制のためには多い方が好ましく、0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。一方、多すぎると繊維がべたつきハンドリングを悪化させる他、後工程で工程通過性を悪化させるため8.0重量%以下が好ましく、6.0重量%以下がより好ましく、4.0重量%以下が特に好ましい。
【0049】
固相重合は窒素等の不活性ガス雰囲気中や、空気のような酸素含有の活性ガス雰囲気中または減圧下で行うことが可能であるが、設備の簡素化および繊維あるいは付着物の酸化防止のため窒素雰囲気下で行うことが好ましい。この際、固相重合の雰囲気は露点が−40℃以下の低湿気体が好ましい。
【0050】
また、固相重合の進行と共に液晶ポリエステル繊維の融点は上昇するため、固相重合温度は、固相重合に供する液晶ポリエステル繊維の融点+100℃程度まで高めることができる。なお、固相重合温度を時間に対し段階的にあるいは連続的に高めることは、融着を防ぐと共に固相重合の時間効率を高めることができ、より好ましい。このとき、固相重合は目的性能により数分から数十時間行われるが、優れた強度および弾性率を有した繊維を得るためには最高到達温度で5時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましい。また、固相重合反応は経過時間と共に飽和するため100時間程度で十分である。
【0051】
このようにして得られた液晶ポリエステル繊維は、示査熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク(Tm1)におけるピーク半値幅をFWHM℃、融解熱量をΔH1J/gとしたとき、下記条件1を満たすことが好ましい。
条件1:ΔH1/FWHM≦0.8
条件1を満たすことにより、結晶性が低く耐摩耗性に優れた繊維となる。また、ΔH1/FWHMの値が小さくなるほど耐摩耗性は向上するため、0.5以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましい。なお、ΔH1/FWHMの下限は特に制限されないが、本発明で達し得る下限としては0.001程度である。
【0052】
固相重合後のパッケージはそのまま製品として供することもできるが、製品運搬効率を高めるために固相重合後のパッケージを再度巻き返して巻き密度を高めることが好ましい。固相重合後の巻き返しにおいては、解舒による固相重合パッケージの崩れを防ぎ、更に軽微な融着を剥がす際のフィブリル化を抑制するために固相重合パッケージを回転させながら、回転軸と垂直方向(繊維周回方向)に糸を解舒する、いわゆる横取りにより解舒することが好ましく、更に固相重合パッケージの回転は自由回転ではなく積極駆動により回転させることが好ましい。
【0053】
固相重合後の液晶ポリエステル繊維に対して無機粒子やポリシロキサン等の付着物が過度に付着した場合、それらを除去するため洗浄を行っても良い。洗浄方法としては、例として、繊維がパッケージから解舒されてから巻き取られるまでの間に、水等の溶媒に接触させる方法や布帛でふき取る方法等が挙げられる。洗浄において溶媒を使用する場合、取扱いが容易であることや環境負荷が小さいことから水を溶媒として用いるのが好ましい。また、洗浄効率を高めるために、溶媒を揺動・バブリングさせる方法や超音波振動させる方法がより好ましい。更に、溶媒への接触時間は、洗浄効率を高めるために0.3秒以上が好ましく、0.5秒以上がより好ましい。このようにして洗浄した繊維は、高次加工工程において簡単に脱落してしまうような付着物が除去され、加工性が向上する。
【0054】
また、本発明における液晶ポリエステル繊維は、耐摩耗性を更に向上させるために固相重合後の繊維を高温で短時間熱処理をしても良い。
【0055】
熱処理は、工程中でのフィブリルの発生を防ぎ、かつ均一な処理を行うため、非接触にて行うことが好ましい。加熱手段としては雰囲気の加熱、レーザーや赤外線を用いた輻射加熱等があるがブロックまたはプレートヒーターを用いたスリットヒーターによる加熱が処理の安定性を高める上で好ましい。
【0056】
熱処理温度は繊維の結晶の完全性を更に低下させるために400℃以上とすることが好ましく、430℃以上とすることがより好ましい。また、上限温度はヒーターの熱によって液晶ポリエステル繊維が溶断する温度であり、固相重合した繊維の融点ならびに処理時間により変化するが600℃以下程度である。
【0057】
処理時間は過度に長いと液晶ポリエステル繊維が溶断しやすくなるため1.0秒以下とすることが好ましく、0.8秒以下とすることがより好ましい。また、処理時間の下限は結晶の完全性を低下させるために0.01秒以上とすることが好ましく、0.03秒以上とすることがより好ましく、0.05秒以上とすることが更に好ましい。処理長、処理速度は処理時間が上記した範囲となるように調整すれば良いが、処理長は1cm以上200cm以下が好ましく、処理速度は1m/分以上500m/分以下が好ましい。
【0058】
さらに、本発明における液晶ポリエステル繊維は、目的に応じて各種仕上げ油剤を付与しても良い。
【0059】
本発明の製造方法で得られる液晶ポリエステル繊維の分子量は、25万以上150万以下が好ましい。25万以上の高い分子量を有することで高い強度、伸度、弾性率を有し織物性能が向上する他、特に細繊度化した際には衝撃吸収性が高まり高次工程での糸切れを抑制でき、耐摩耗性も向上する。また、融点も高いため優れた耐熱性を有する。分子量は高いほどこれらの特性は向上するため、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましい。分子量の上限は特に限定されないが、本発明で達し得る上限としては150万程度である。なお、本発明で言う分子量とは、溶媒としてペンタフルオロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)の混合溶媒を用い、液晶ポリエステルの濃度が0.04〜0.08重量/体積%となるように溶解させGPC測定用試料とし、これを、Waters社製GPC測定装置を用いて下記条件にて測定し、ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量を分子量とした。また、室温24時間の放置でも不溶物がある場合は、さらに24時間静置し、上澄み液を試料とした。
カラム:ShodexK−806M 2本、K−802 1本
検出器:示差屈折率検出器RI(2414型)
温度 :23±2℃
流速 :0.8mL/分
注入量:200μL
本発明の製造方法で得られる液晶ポリエステル繊維の単糸繊度は、18.0dtex以下が好ましい。単繊維繊度を18.0dtex以下と細くすることで、繊維のしなやかさが向上し繊維の加工性が向上する、表面積が増加するため接着剤等の薬液との密着性が高まると言った特性を有することに加え、モノフィラメントからなる平織物とする場合は厚みを薄くでき、更に織密度を高くできるという利点を持つ。単繊維繊度は好ましくは10.0dtex以下であり、より好ましくは7.0dtex以下である。また、単繊維繊度の下限は特に制限されないが、本発明で達し得る下限としては0.1dtex程度である。
【0060】
本発明の製造方法で得られる液晶ポリエステル繊維の強度は、10.0cN/dtex以上であることが好ましく、12.0cN/dtex以上がさらに好ましく、15.0cN/dtex以上がより好ましい。強度の上限は特に限定されないが、本発明で達し得る上限としては30.0cN/dtex程度である。なお、本発明で言う強度は実施例に記載した強伸度・弾性率測定での引張強さを指す。
【0061】
本発明の製造方法で得られる液晶ポリエステル繊維の伸度は、1.0%以上であることが好ましく、2.0%以上がさらに好ましい。伸度が1.0%以上あることで繊維の衝撃吸収性が高まり、高次加工工程での工程通過性、取扱い性に優れる。伸度の上限は特に限定されないが、本発明で達し得る上限としては5.0%程度である。なお、本発明で言う強度は実施例に記載した強伸度・弾性率測定での破断伸度を指す。
【0062】
また、本発明の製造方法で得られる液晶ポリエステル繊維の弾性率は、500cN/dtex以上であることが好ましく、600cN/dtex以上がさらに好ましい。弾性率の上限は特に限定されないが、本発明で達しえる上限としては弾性率1200cN/dtex程度である。なお、本発明で言う弾性率とは実施例に記載した強伸度・弾性率測定での初期引張抵抗度を指す。
【0063】
本発明の製造方法で得られる液晶ポリエステル繊維は、マルチフィラメント、モノフィラメント、ステープルファイバー、カットファイバー等任意の形状でよい。また、織物、編物、不織布、組み紐等の繊維構造物として利用することができる。特に、高強度、高弾性率でかつ耐摩耗性に優れる繊維であるため、モノフィラメントとして好適である。例として、本発明におけるモノフィラメントを、従来のポリエチレンテレフタレート繊維等を使用したスクリーン紗に適用した場合、優れた耐摩耗性を有するため欠点が発生し難く、高強度、高弾性率および優れた寸法安定性を有するスクリーン紗を得ることができる。また、該液晶ポリエステルは優れた耐圧縮性を有するため、印刷繰り返し精度も良好である。
【0064】
上記用途以外に、本発明の製造方法で得られる液晶ポリエステル繊維は、一般産業用資材、土木・建築資材、スポーツ用途、防護衣、ゴム補強資材、電気材料(特に、テンションメンバーとして)、音響材料、一般衣料等の分野で広く用いられる。有効な用途としては、フィルター、ロープ、ネット、魚網、コンピューターリボン、プリント基板用基布、抄紙用のカンバス、エアーバッグ、飛行船、ドーム用等の基布、ライダースーツ、釣糸、各種ライン(ヨット、パラグライダー、気球、凧糸)、ブラインドコード、網戸用支持コード、自動車や航空機内各種コード、電気製品やロボットの力伝達コード等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
次に、具体的実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例で挙げられている物性の測定方法を以下に示す。
【0066】
A.液晶ポリエステル繊維のTm1、Tm1におけるピーク半値幅、ΔHm1、液晶ポリエステルポリマーの融点
TA instruments社製DSC2920により示差熱量測定を行い、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度をTm1(℃)とし、Tm1におけるピーク半値幅(FWHM)(℃)、融解熱量(ΔHm1)(J/g)を測定した。
【0067】
なお、参考例に示した液晶ポリエステルポリマーについてはTm1の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で50℃まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークをTm2とし、Tm2をもってポリマーの融点とした。
【0068】
B.繊度
検尺機にて繊維を100mカセ取りし、その重量(g)を100倍し、1水準当たり10回の測定を行い、平均値を繊度(dtex)とした。
【0069】
C.強伸度・弾性率
JIS L1013:1999記載の方法に準じて、試料長100mm、引張速度50mm/分の条件で、オリエンテック社製テンシロンUCT−100を用い1水準当たり10回の測定を行い、平均値を強力(cN)、強度(cN/dtex)、伸度(%)、弾性率(cN/dtex)とした。
【0070】
D.横方向降伏荷重、繊維軸垂直方向の圧縮弾性率(圧縮弾性率)
単繊維1本をセラミックス製等の剛性の高いステージに静置し、正方形の圧子を用い、圧子の対角線方向に繊維を置いた状態で、下記条件において繊維直径方向に圧子を用いて圧縮負荷を一定の試験速度で加え、図1に示すような荷重−変位曲線を得た後、横方向降伏荷重、繊維軸垂直方向の圧縮弾性率を算出した。なお、圧縮弾性率を耐圧縮性の指標とした。
【0071】
なお、測定に当たっては、装置系の変形量の補正を行うため試料を置かない状態で荷重−変位曲線を得て、これを直線近似して荷重に対する装置の変形量を算出し、試料を置いて荷重−変位曲線を測定した際の各々のデータ点の変位から、その荷重に対する装置の変形量を減じて試料そのものの変位を求め、これを以下の算出に用いた。
【0072】
横方向降伏荷重の算出は、図1に示すように、荷重−変位曲線において降伏点を概略判定し、降伏点よりも低変位側で勾配が最大となる接線と、降伏点よりも高変位側で勾配が最小となる接線を求め、この2本の直線の交点の荷重を横方向降伏荷重として求めた。また、荷重−変位曲線は試料1水準について3回測定し、横方向降伏荷重も3回算出し、これを平均したものを横方向降伏荷重とした。
【0073】
圧縮弾性率の算出に当たっては、荷重−変位曲線で線形性が成立する2点での荷重と変位を用いて圧縮弾性率を算出した。その低荷重側の点は荷重をかけた初期では圧子がサンプル全面にあたっていない可能性があるため、荷重約30mNの点とした。ただしここで定めた低荷重点が非線形領域内の場合には、降伏点を通過するように荷重−変位曲線に沿って低荷重側に直線を引き、その直線と変位のずれが0.1μm以内となる最小荷重の点とした。また、高荷重側は荷重約100mNの点とした。なお、高荷重側の点が降伏点荷重を超える場合には、低荷重側の点を通過するように荷重−変位曲線に沿って高荷重側に直線を引き、その直線との変位のずれが0.1μm以内となる最大荷重の点を高荷重側の点とした。なお、下記数1式中のlは707μmとして計算を行い、単繊維半径は試験前に光学顕微鏡を用いて試料の直径を10回測定し、これを平均して求めた平均直径を1/2にした値を用いた。また、荷重−変位曲線は試料1水準について3回測定し、圧縮弾性率も3回算出し、これを平均したものを圧縮弾性率とした。このとき、圧縮弾性率が0.4GPa以上を○、0.3GPa以上0.4GPa未満を△、0.3GPa未満を×とした。
【0074】
【数1】

【0075】
装置 :(株)島津製作所社製微小圧縮試験機
圧子 :ダイヤモンド製平面圧子(1辺500μmの正方形)
負荷速度 :41.5mN/s(負荷速度一定方式)
サンプリング速度 :0.05秒
測定雰囲気 :室温大気中(23±2℃、50±5%RH)
E.金属素材に対する耐摩耗性M
2.45cN/dtex(2.5g重/dtex)の荷重をかけた繊維を垂直に垂らし、繊維に対して垂直になるように直径3.8mmの硬質クロム梨地加工金属棒ガイド(湯浅糸道工業(株)製棒ガイド)を接触角2.7°で押し付け、ストローク長30mm、ストローク速度600回/分でガイドを繊維軸方向に擦過させ、実体顕微鏡観察を行い、棒ガイド上もしくは繊維表面上に白粉またはフィブリルの発生が確認されるまでの時間を測定し、7回の測定のうち最大値および最小値を除いた5回の平均値を求め耐摩耗性Mとした。このとき、耐摩耗性Mが40秒以上を○、10秒以上40秒未満を△、10秒未満を×とした。
【0076】
参考例1
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に縮合多環芳香族炭化水素を含むモノマーとして6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸559重量部、縮合多環芳香族炭化水素を含まないモノマーとしてp−ヒドロキシ安息香酸1109重量部、および無水酢酸1213重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、315℃まで4時間で昇温した。
【0077】
重合温度を315℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
【0078】
参考例2
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に縮合多環芳香族炭化水素を含まないモノマーとしてp−ヒドロキシ安息香酸820重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル328重量部、ハイドロキノン85重量部、テレフタル酸274重量部、イソフタル酸146重量部および無水酢酸1213重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、330℃まで4時間で昇温した。
【0079】
重合温度を330℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
【0080】
参考例3
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に縮合多環芳香族炭化水素を含まないモノマーとしてp−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部および無水酢酸1078重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら100〜250℃で5時間、250〜300℃で2時間反応させた。
【0081】
その後、重合温度を315℃に保持し、1.5時間で67Paに減圧し、更に30分〜3時間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
【0082】
参考例1〜3で得られた液晶性ポリエステルの特性を表1に示す。いずれの樹脂もホットステージにて窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察したところ光学的異方性(液晶性)が確認された。なお、溶融粘度は高化式フローテスターを用い、温度を融点+10℃、剪断速度を1000/sとして測定した。
【0083】
【表1】

【0084】
実施例1
参考例1の液晶ポリエステルを80重量%、参考例2の液晶ポリエステルを20重量%用いて、大阪精機工作株式会社製φ15mm単軸エクストルーダーにて(ヒーター温度290〜340℃)溶融押し出しし、ギアーポンプで計量しつつ紡糸パックにポリマーを供給した。このときのエクストルーダー出から紡糸パックまでの紡糸温度は350℃とした。紡糸パックでは金属不織布フィルター(渡辺義一製作所社製WLF−10)を用いてポリマーを濾過し、孔径0.13mm、ランド長0.26mmの孔を5個有する口金より吐出量3.0g/分(単孔あたり1.0g/分)でポリマーを吐出した。
【0085】
吐出したポリマーは40mmの保温領域を通過させた後、環状冷却風により糸条の外側から冷却し固化させ、5フィラメントともに1000m/分の第1ゴデットロールに引き取った。このときの紡糸ドラフトは16である。これを同じ速度である第2ゴデットロールを介した後、5フィラメント中の4本はサクションガンにて吸引し、残り1本を、ダンサーアームを介しスピンドルトラバース型のパーンワインダー(巻取パッケージに接触するコンタクトロール無し)を用いてパーンの形状に巻き取った。約100分の巻取時間中、糸切れは発生せず製糸性は良好であった。
【0086】
この紡糸繊維パッケージから繊維を縦方向(繊維周回方向に対し垂直方向)に解舒し、調速ローラーを介さず、速度を一定とした巻取機(神津製作所社製ET−68S調速巻取機)にて200m/分で巻き返しを行った。このとき、巻き返し工程途中において、ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製「SH200−350cs」、粘度350cSt)1.0重量%水系エマルジョンを繊維に対してポリジメチルシロキサン成分が4.0重量%となるよう給油ガイドを用いて繊維に付着させた。給油に際しては油剤の飛散やリターンは無く、給油ガイド吐出量の全量が繊維に付着した。なお、巻き返しの心材にはステンレス製の穴あきボビンにケブラーフェルト(目付280g/m、厚み1.5mm)を巻いたものを用い、巻き返し時の張力を0.05cN/dtex、巻き密度を0.08g/cmとし、巻き量は2万mとした。更にパッケージ形状はテーパー角20°のテーパーエンド巻きとし、テーパー幅調整機構の改造によりトラバース幅を常に揺動させるようにし、コンタクトロールを用いず、またトラバースガイドと繊維の接点を繊維パッケージから5mmとした。
【0087】
これを密閉型オーブンを用い、室温から240℃までは約30分で昇温し、240℃にて3時間保持した後、4℃/時間で295℃まで昇温し、更に295℃で15時間保持する条件にて固相重合を行った。なお、雰囲気は除湿窒素を流量25NL/分にて供給し、庫内が加圧にならないよう排気口より排気させた。
【0088】
こうして得られた固相重合パッケージをインバーターモーターにより回転できる送り出し装置に取り付け、繊維を横方向(繊維周回方向)に200m/分で送り出しつつ解舒を行い巻取機にて巻き取った。
【0089】
得られた液晶ポリエステル繊維は表2に示すような性能を有しており、耐摩耗性および耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0090】
実施例2
参考例1の液晶ポリエステルを50重量%、参考例2の液晶ポリエステルを50重量%用いること以外は実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た。
【0091】
得られた液晶ポリエステル繊維は表2に示すような性能を有しており、耐摩耗性および耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0092】
実施例3
参考例1の液晶ポリエステルを90重量%、参考例2の液晶ポリエステルを10重量%用いること以外は実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た。
【0093】
得られた液晶ポリエステル繊維は表2に示すような性能を有しており、耐摩耗性および耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0094】
実施例4
参考例1の液晶ポリエステルを40重量%、参考例2の液晶ポリエステルを60重量%用いること以外は実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た。
【0095】
得られた液晶ポリエステル繊維は表2に示すような性能を有しており、耐圧縮性は実施例1〜3と比較してやや劣るものの良好であり、かつ耐摩耗性に優れた繊維となった。
【0096】
実施例5
参考例1の液晶ポリエステルを95重量%、参考例2の液晶ポリエステルを5重量%用いること以外は実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た。
【0097】
得られた液晶ポリエステル繊維は表2に示すような性能を有しており、耐摩耗性は実施例1〜4と比較してやや劣るものの良好であり、かつ耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0098】
実施例6
参考例1の液晶ポリエステルを80重量%、参考例3の液晶ポリエステルを20重量%用いること以外は実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た。
【0099】
得られた液晶ポリエステル繊維は表3に示すような性能を有しており、耐摩耗性および耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0100】
実施例7
実施例1と同様の方法で固相重合前の紡糸原糸を得た後に、密閉型オーブンを用いて、室温から240℃までは約30分で昇温し、240℃で15時間保持する条件にて固相重合を行った。なお、雰囲気は除湿窒素を流量25NL/分にて供給し、庫内が加圧にならないよう排気口より排気させた。
【0101】
こうして得られた固相重合パッケージをインバーターモーターにより回転できる送り出し装置に取り付け、繊維を横方向(繊維周回方向)に200m/分で送り出しつつ解舒を行い巻取機にて巻き取った。
【0102】
得られた液晶ポリエステル繊維は表3に示すような性能を有しており、実施例1と比較して強度はやや劣るものの、耐摩耗性および耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0103】
実施例8
実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た後、ヒーター温度(処理温度)400℃としたスリット幅5.6mm、処理長500mmのスリットヒーターを、ヒーターと非接触として処理速度150m/分(処理時間0.20秒)で通過させ熱処理を行い、巻取機にて巻き取った。
【0104】
得られた液晶ポリエステル繊維は表3に示すような性能を有しており、耐摩耗性および耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0105】
実施例9
実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た後、ヒーター温度(処理温度)450℃としたスリット幅5.6mm、処理長500mmのスリットヒーターを、ヒーターと非接触として処理速度200m/分(処理時間0.15秒)で通過させ熱処理を行い、巻取機にて巻き取った。
【0106】
得られた液晶ポリエステル繊維は表3に示すような性能を有しており、耐摩耗性および耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0107】
実施例10
実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た後、ヒーター温度(処理温度)450℃としたスリット幅5.6mm、処理長500mmのスリットヒーターを、ヒーターと非接触として処理速度150m/分(処理時間0.20秒)で通過させ熱処理を行い、巻取機にて巻き取った。
【0108】
得られた液晶ポリエステル繊維は表3に示すような性能を有しており、耐摩耗性および耐圧縮性に優れた繊維となった。
【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
比較例1
参考例1の液晶ポリエステルのみを用いること以外は実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た。
【0112】
得られた液晶ポリエステル繊維は表4に示すような性能を有しており、耐圧縮性に優れているものの、耐摩耗性が低く加工工程に耐えうる繊維ではなかった。
【0113】
比較例2
参考例2の液晶ポリエステルのみを用いること以外は実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た。
【0114】
得られた液晶ポリエステル繊維は表4に示すような性能を有しており、耐摩耗性および耐圧縮性が低く加工工程に耐えうる繊維ではなかった。
【0115】
比較例3
参考例2の液晶ポリエステルを80重量%、参考例3の液晶ポリエステルを20重量%用いること以外は実施例1と同様の方法で液晶ポリエステル繊維を得た。
【0116】
得られた液晶ポリエステル繊維は表4に示すような性能を有しており、耐摩耗性に優れるものの、耐圧縮性が低くスクリーン印刷などの使用に耐えうる繊維ではなかった。
【0117】
比較例4
実施例1と同様の方法で固相重合前の紡糸原糸を得た後に、密閉型オーブンを用いて、室温から220℃までは約30分で昇温し、220℃で15時間保持する条件にて固相重合を行った。なお、雰囲気は除湿窒素を流量25NL/分にて供給し、庫内が加圧にならないよう排気口より排気させた。
【0118】
こうして得られた固相重合パッケージをインバーターモーターにより回転できる送り出し装置に取り付け、繊維を横方向(繊維周回方向)に200m/分で送り出しつつ解舒を行い巻取機にて巻き取った。
【0119】
得られた液晶ポリエステル繊維は表4に示すような性能を有しており、耐圧縮性に優れるものの、強度不足のため耐摩耗性評価時に繊維が破断してしまい、測定することが不可能であった。
【0120】
比較例5
実施例1で得られた固相重合前の紡糸原糸を用いて評価を行った。
【0121】
得られた液晶ポリエステル繊維は表4に示すような性能を有しており、耐圧縮性に優れるものの、強度不足のため耐摩耗性評価時に繊維が破断してしまい、測定することが不可能であった。なお、融点測定ではピークが2つあり重なった状態であったが、一つのピークとみなして半値幅および融解熱量を計算した。
【0122】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル繊維の製造方法において、少なくとも縮合多環芳香族炭化水素構造を有するポリマー構成である液晶ポリエステル(A)と、縮合多環芳香族炭化水素構造を有しないポリマー構成である液晶ポリエステル(B)を、溶融状態でブレンドした後に紡糸し、その後、230℃以上の温度で固相重合を施すことを特徴とする液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項2】
示査熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク(Tm1)におけるピーク半値幅をFWHM℃、融解熱量をΔH1J/gとしたとき、下記条件1を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
条件1:ΔH1/FWHM≦0.8
【請求項3】
請求項1または2で得た繊維について、400℃以上の温度で1秒以下の高温短時間熱処理を施すことを特徴とする液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項4】
液晶ポリエステル(A)が下記構造(I)、(II)に示す反復構成単位の組み合わせからなるポリマー構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【化1】

【請求項5】
液晶ポリエステル(B)が5成分以上の構成単位からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項6】
液晶ポリエステル(B)が下記構造(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)に示す反復構成単位の組み合わせからなるポリマー構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【化2】

【請求項7】
液晶ポリエステル(B)の混合比率が10〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法により得られた液晶ポリエステル繊維。

【図1】
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【公開番号】特開2010−242246(P2010−242246A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90768(P2009−90768)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】