説明

液晶モジュール

【課題】メーカー側は液晶パネル及びバックライトの駆動用データをユーザーに簡単に交付することができると共に、ユーザー側は液晶パネル及びバックライトの駆動用データをドライバICへ簡単且つ正確に設定することができる液晶モジュールを実現する。
【解決手段】液晶パネル12と、LED14R,14G,14Bを備えたバックライト16と、上記液晶パネル12を駆動する液晶ドライバIC18と、上記バックライト16のLED14R,14G,14Bを駆動するLEDドイラバIC20と、上記液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20の駆動用データが電子データとして記録された電子記憶媒体40を有する液晶モジュール10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶パネルと、 バックライトと、上記液晶パネル及びバックライトの駆動制御を行うドライバICを有する液晶モジュールに係り、特に、メーカー側は液晶パネル及びバックライトの駆動用データをユーザーに簡単に交付することができると共に、ユーザー側は液晶パネル及びバックライトの駆動用データをドライバICへ簡単且つ正確に設定することができる液晶モジュールを実現することにある。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の液晶モジュール70の概略的な構成を示す簡略化したブロック図であり、この液晶モジュール70は、液晶パネル72と、光源であるLED(発光ダイオード)74を備えたバックライト76と、上記液晶パネル72の駆動制御を行う液晶ドライバIC78と、上記バックライト76のLED74の駆動制御を行うLEDドイラバIC80を有している。
【0003】
上記液晶モジュール70を駆動するためには、液晶ドライバIC78及びLEDドイラバIC80に、液晶パネル72及びLED74駆動用のデータを設定する必要がある。
このため従来は、液晶モジュール70のメーカー側が作成した「紙媒体」のドライバIC仕様書82や動作仕様書84をユーザ−に交付し、ユーザー側において、ドライバIC仕様書82及び動作仕様書84から必要な駆動用データを抽出して制御MPU86に組み込み、該制御MPU86から駆動用データを液晶ドライバIC78及びLEDドイラバIC80に送出して設定を行っていた。
【0004】
尚、液晶パネル、バックライト、ドライバICを有する液晶モジュールとしては、例えば、特開2007−52338号公報(特許文献1)がある。
【特許文献1】特開2007−52338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の上記液晶モジュール70にあっては、駆動用データが記述されたドライバIC仕様書82や動作仕様書84が「紙媒体」でユーザーに交付されるため、ユーザー側でドライバIC仕様書82及び動作仕様書84を読み込んで液晶モジュール70の駆動方法について理解・習熟する必要があった。
【0006】
また、ユーザー側では「紙媒体」のドライバIC仕様書82及び動作仕様書84から必要な駆動用データを抽出した上で、手作業により駆動用データを制御MPU86に組み込まなければならないため、非常に手間がかかると共に、駆動用データの抽出・組み込み時にミスを生じることがあった。
【0007】
一方、メーカー側は、個々の液晶モジュール70毎に、異なるドライバIC仕様書82及び動作仕様書84を「紙媒体」で作成しなければならず、膨大なコスト及び手間がかかっていた。すなわち、製造された液晶モジュール70をそのまま同じ駆動用データで駆動させると、表示特性のバラツキが大きいことから、メーカー側は各液晶モジュール70毎に検査を行い、略同一の表示特性を発揮するよう液晶モジュール70毎に駆動用データを調整していた。
例えば、上記バックライト76の光源であるLED74は、同じ電流を流した場合の輝度のバラツキが大きいことから、各液晶モジュール70毎に、LED74の駆動用データである駆動用電流値を変えたドライバIC仕様書82及び動作仕様書84を「紙媒体」で作成していた。
また、メーカー側はドライバIC仕様書82及び動作仕様書84の内容についてユーザーのサポートを行う必要があり、サポート要員の確保等に伴う負担が大きかった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、メーカー側は液晶パネル及びバックライトの駆動用データをユーザーに簡単に交付することができると共に、ユーザー側は液晶パネル及びバックライトの駆動用データをドライバICへ簡単且つ正確に設定することができる液晶モジュールを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の液晶モジュールは、
液晶パネルと、バックライトと、上記液晶パネル及びバックライトを駆動するドライバICを有する液晶モジュールであって、さらに、上記ドライバICの駆動用データが電子データとして記録された電子記憶媒体を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に記載の液晶モジュールは、請求項1に記載の液晶モジュールにおいて、
上記電子記憶媒体に、液晶モジュールの履歴情報が記録されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に記載の液晶モジュールは、請求項2に記載の液晶モジュールにおいて、
上記履歴情報が暗号化されて電子記憶媒体に記録されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に記載の液晶モジュールは、請求項1乃至3の何れかに記載の液晶モジュールにおいて、
上記電子記憶媒体が、不揮発性メモリであることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に記載の液晶モジュールは、請求項4に記載の液晶モジュールにおいて、
上記不揮発性メモリが、フラッシュメモリ又はEEPROMであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の液晶モジュールは、液晶パネル及びバックライトを駆動するドライバICの駆動用データが電子データとして記録された電子記憶媒体を有しているので、メーカー側は、従来の液晶モジュール70の場合のように、駆動用データが記述された「紙媒体」のドライバIC仕様書82や動作仕様書84を作成する必要がなく、簡単にドライバICの駆動用データをユーザーに交付することができる。
【0015】
また、ユーザー側は、電子データとして記録されているドイラバICの駆動用データを読み出し、これをドイラバICへ送出することで設定を行うことができるので、従来の液晶モジュール70の場合のように、「紙媒体」のドライバIC仕様書82及び動作仕様書84を理解・習熟したり、「紙媒体」のドライバIC仕様書82及び動作仕様書84から抽出した駆動用データを「手作業」で制御MPU86に組み込む必要がなく、簡単且つ正確にドライバICの設定を行うことができる。
さらに、メーカー側も、従来の液晶モジュール70の場合のように、「紙媒体」のドライバIC仕様書82及び動作仕様書84の内容についてユーザーをサポートする必要がなくなるので、負担を大幅に軽減することができる。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の液晶モジュールは、電子記憶媒体に液晶モジュールの履歴情報を記録したので、製品に故障や事故等の問題が生じた際、上記電子記憶媒体から履歴情報を読み出すことにより、原因究明のための追跡調査を容易に行うことができる。
【0017】
上記履歴情報は、敢えてユーザー側に知らせる必要のない情報であると共に、メーカー側の秘密に関わる情報を含む可能性があるため、請求項3に記載の液晶モジュールの如く、暗号化して電子記憶媒体に記録するのが好ましい。
【0018】
請求項4に記載の液晶モジュールの如く、上記電子記憶媒体としては、電源を供給しなくても記憶を保持できる安価な不揮発性メモリが好適であり、この不揮発性メモリとしては、請求項5に記載の如く、フラッシュメモリ又はEEPROMが該当する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の液晶モジュール10の概略的な構成を示す簡略化したブロック図であり、この液晶モジュール10は、液晶パネル12と、光源である赤色発光用のLED14R,緑色発光用のLED14G,青色発光用のLED14Bを備えたバックライト16と、上記液晶パネル12の駆動制御を行う液晶ドライバIC18と、上記バックライト16のLED14R,14G,14Bの駆動制御を行うLEDドイラバIC20を有している。
【0020】
本発明の液晶モジュール10は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色を選択的に発光可能なLED14R,14G,14Bを備えたバックライト16を使用することにより、カラーフィルタを用いることなくカラー表示が可能なフィールドシーケンシャル型の液晶モジュール10である。
【0021】
すなわち、液晶パネル12及びバックライト16の概略断面図を示す図2の通り、上記液晶パネル12は、所定間隔を設けて対向配置した透光性絶縁材より成る前面基板22と背面基板24との間に液晶26を配置して成る。
また、前面基板22の裏面には、所定形状と成された透明なセグメント電極28が形成されている。
さらに、上記背面基板24の表面には、上記前面基板22のセグメント電極28と対向する透明電極30が形成されている。
また、上記前面基板22の表面、及び、背面基板24の裏面には偏光板32が配置されており、前面基板22側の偏光板32の表面が表示面34となっている。
【0022】
上記バックライト16は、導光板36の一側面に沿って、上記赤色発光用のLED14R,緑色発光用のLED14G,青色発光用のLED14Bが配置されている。
また、上記導光板36の裏面には、一側面から導光板36内部に入射したLED14の光を散乱して導光板36の表面から出射させる光散乱層38が形成されている。
【0023】
而して、フィールドシーケンシャル型の液晶モジュール10においては、バックライト16の光源である赤色発光用のLED14R,緑色発光用のLED14G,青色発光用のLED14Bを時間的に高速で切り替えながら点灯駆動させると共に、これに同期して特定のセグメント電極28と透明電極30間に電圧を印加して液晶26の配向状態を変化させ、R、G、Bの色の光を選択的に透光可能とすることにより、表示面34において、セグメント電極28の形状に対応したR、G、Bの表示パターンを高速且つ連続的に時分割方式で重ねて表示させ、人間の目の残像現象によりR、G、Bを混合させて所望の色のカラー表示を行うことができるものである。
【0024】
例えば、R、G、Bの何れか1色のみの表示パターンを高速且つ連続的に時分割方式で重ねて表示した場合には、R、G、Bの何れか1色での表示が可能である。
また、R、G、Bの何れか2色の表示パターンを高速且つ連続的に時分割方式で重ねて表示した場合には、R、G、Bの何れか2色の混色での表示が行われる。
さらに、R、G、Bの3色の表示パターンを高速且つ連続的に時分割方式で重ねて表示した場合には、上記3色の混色での表示が行われる。尚、3色の表示パターンを高速且つ連続的に時分割方式で重ねて表示した場合において、各色の発光時間の積分値を調整することにより、所望の色の表示を行うことができる。
【0025】
上記LEDドイラバIC20は、バックライト16の光源である赤色発光用のLED14R,緑色発光用のLED14G,青色発光用のLED14Bの点灯駆動を制御するものであり、各LED14への駆動電流のON/OFFのタイミング、通電時間等の制御を行う。
また、上記液晶ドライバIC18は、液晶パネル12のセグメント電極28と透明電極30間の電圧印可のON/OFFのタイミング、印可時間等の制御を行うものである。
【0026】
本発明の液晶モジュール10は、液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20の駆動用データが電子データとして記録された電子記憶媒体40を有している。
液晶ドライバIC18の駆動用データとしては、例えば、液晶パネル12のセグメント電極28と透明電極30間の電圧印可のON/OFFのタイミング、印可時間、印可電圧値、周波数等がある。
また、LEDドイラバIC20の駆動用データとしては、例えば、各LED14への駆動電流のON/OFFのタイミング、駆動周期、各LED14の通電時間、電流値等がある。
【0027】
尚、上記電子記憶媒体40としては、電源を供給しなくても記憶を保持できる安価な不揮発性メモリが好適であり、例えば、フラッシュメモリやEEPROMが該当する。また、不揮発性メモリ内蔵マイコンチップを用いても良い。
【0028】
図1に示すように、ユーザーは、制御MPU42を用いて電子記憶媒体40から電子データとして記録されている液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20の駆動用データを読み出し、液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20へ送出して設定を行うのである。
【0029】
而して、本発明の液晶モジュール10は、液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20の駆動用データが電子データとして記録された電子記憶媒体40を有しているので、メーカー側は、駆動用データが記述された「紙媒体」のドライバIC仕様書82や動作仕様書84を作成する必要がなく、簡単に液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20の駆動用データをユーザーに交付することができる。
【0030】
また、ユーザー側は、電子データとして記録されている液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20の駆動用データを制御MPU42を介して読み出し、これを液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20へ送出することで設定を行うことができるので、従来の液晶モジュール70の場合のように、「紙媒体」のドライバIC仕様書82及び動作仕様書84を理解・習熟したり、「紙媒体」のドライバIC仕様書82及び動作仕様書84から抽出した駆動用データを「手作業」で制御MPU86に組み込む必要がなく、簡単且つ正確に液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20の設定を行うことができる。
さらに、メーカー側も、従来の液晶モジュール70の場合のように、「紙媒体」のドライバIC仕様書82及び動作仕様書84の内容についてユーザーをサポートする必要がなくなるので、負担を大幅に軽減することができる。
【0031】
尚、液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20の駆動用データに更新や修正が必要な場合、本発明の液晶モジュール10にあっては、メーカー側は更新・修正した駆動用データを電子記憶媒体40に書き込み、ユーザー側は更新・修正された駆動用データを液晶ドライバIC18及びLEDドイラバIC20へ送出すれば良い。
【0032】
以下において、本発明に係る液晶モジュール10の駆動電圧調整を行う場合を例に挙げて、液晶ドライバIC18の設定方法を説明する。
液晶パネル12は、使用する液晶材料、その他の部材の仕様等の相違により特性が異なるため、最適な駆動電圧を測定して調整する必要がある。
【0033】
駆動電圧調整は、先ず、メーカー側が各液晶モジュール10毎に光学測定器を用いて液晶パネル12の特性を測定した上で、当該液晶パネル12の駆動に最適な駆動電圧値を規定し、上記駆動電圧値に調整する液晶ドライバIC18の駆動用データを電子記憶媒体40に記録する。その後、ユーザー側に液晶モジュール10を出荷する。
【0034】
液晶モジュール10の出荷を受けたユーザー側は、液晶ドライバIC18の駆動用データを電子記憶媒体40から制御MPU42を介して読み出し、これを液晶ドライバIC18へ送出することにより、上記駆動電圧調整で規定された駆動電圧値で液晶パネル12が駆動するよう設定される。
【0035】
本発明の液晶モジュール10において、上記電子記憶媒体40に、個々の液晶モジュール10の各種の履歴情報を記録しておくことが望ましい。
上記履歴情報としては、例えば液晶モジュール10のシリアルナンバー、製造年月日、製造工場名、製造担当者名、検査担当者名、製品出荷日、出荷先等の情報が該当し得るが、具体的な記録項目はメーカー側で任意に選択・設定できるものである。
【0036】
尚、上記履歴情報は、敢えてユーザー側に知らせる必要のない情報であると共に、メーカー側の秘密に関わる情報を含む可能性があるため、暗号化して電子記憶媒体40に記録するのが好ましい。
暗号化は一定のアルゴリズムに従ってデータ(履歴情報)を変換し、データ(履歴情報)の内容を第三者が分からなくすることをいい、種々の公知の暗号化方式を用いることができる
【0037】
而して、履歴情報を電子記憶媒体40に記録して成る本発明の液晶モジュール10にあっては、製品に故障や事故等の問題が生じた際、液晶モジュール10の電子記憶媒体40から、例えば製造工場名、製造年月日、製造担当者名等の履歴情報を読み出すことにより、原因究明のための追跡調査を容易に行うことができるようになる。
【0038】
因みに、従来の液晶モジュール70の場合には、シリアルナンバーやロットナンバーを印字したシールを個々の製品に貼付する程度であったので、製品に故障や事故等の問題が生じた際は、上記シリアルナンバーやロットナンバーを元に製造工場や製造年月日等を割り出さなければならず追跡調査に手間と時間がかかっていた。
【0039】
尚、図1及び上記においては、説明の便宜上、液晶ドライバIC18とLEDドイラバIC20に分けて説明したが、液晶パネル12及びバックライト16の光源であるLED14R,LED14G,LED14Bの駆動を制御する単一のドライバICを使用しても勿論良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の液晶モジュールの概略的な構成を示す簡略化したブロック図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置の液晶パネル及びバックライトを模式的に示す概略断面図である。
【図3】従来の液晶モジュールの概略的な構成を示す簡略化したブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
10 液晶モジュール
12 液晶パネル
14R 赤色発光用のLED
14G 緑色発光用のLED
14B 青色発光用のLED
16 バックライト
18 液晶ドライバIC
20 LEDドイラバIC
22 液晶パネルの前面基板
24 液晶パネルの背面基板
26 液晶
28 セグメント電極
30 透明電極
32 偏光板
34 液晶パネルの表示面
36 導光板
38 光散乱層
40 電子記憶媒体
42 制御MPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルと、バックライトと、上記液晶パネル及びバックライトを駆動するドライバICを有する液晶モジュールであって、さらに、上記ドライバICの駆動用データが電子データとして記録された電子記憶媒体を有することを特徴とする液晶モジュール。
【請求項2】
上記電子記憶媒体に、液晶モジュールの履歴情報が記録されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶モジュール。
【請求項3】
上記履歴情報が暗号化されて電子記憶媒体に記録されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶モジュール。
【請求項4】
上記電子記憶媒体が、不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の液晶モジュール。
【請求項5】
上記不揮発性メモリが、フラッシュメモリ又はEEPROMであることを特徴とする請求項4に記載の液晶モジュール。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−255823(P2012−255823A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127318(P2011−127318)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】