説明

液晶乳化物の製造方法

【課題】液晶を膜乳化して液晶乳化物を製造する場合に比べ、乳化不良を抑制し、高速で乳化を行えるとともに、粗大粒子の発生が効果的に抑制される液晶乳化物の製造方法を提供する。
【解決手段】液晶組成物から目標とする粒径よりも平均粒径が大きい1次液晶乳化粒子16を含む予備乳化物17を作製する予備乳化工程と、前記予備乳化物を、孔径が前記1次液晶乳化粒子の平均粒径よりも小さく、かつ、70%以上が平均孔径に対して±20%以内の範囲内にある貫通孔14が多数形成されている多孔質膜12に通過させることにより、前記1次液晶乳化粒子の平均粒径よりも平均粒径が小さい2次液晶乳化粒子18を含む液晶乳化物19に再乳化する膜乳化工程と、を含む液晶乳化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶乳化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子分散型の液晶表示素子は無電源で表示のメモリー性を有すること、偏光板を使用しないため明るい表示が得られること、カラーフィルターを用いずにカラー表示がなされることなどの特徴を有することから近年注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特に、コレステリック液晶は螺旋状に配向した棒状分子からなり、その螺旋ピッチに一致した光を干渉反射(選択反射と呼ばれる)する性質を持つ。それゆえ螺旋ピッチを赤色、緑色、青色の波長に相当する大きさに設定することで、カラーフィルターを用いずに色鮮やかなカラー表示が得られるといった特徴を有する。
【0004】
例えば、一対の電極付きの基板に挟まれたセル内に封入されたコレステリック液晶は、2種類の配向状態、すなわち、プレーナ(P)配向とフォーカルコニック(F)配向をとることが知られている。P配向は螺旋軸が基板面に垂直に配向した状態であり選択反射を生じる。一方、F配向は螺旋軸が基板面に平行に配向した状態であり、光を透過する。これら2つの配向状態は電極間に印加する電圧を制御することで相互に遷移される。
【0005】
それゆえ、上記セルの背面に黒色等の光吸収体を配置することで、P配向時は選択反射色に呈色した明表示を、F配向時には光吸収体の黒色に呈色した暗表示が得られる。上記の配向形態のうち、P配向とF配向は共に無電源で安定に存在される。この性質を利用して無電源で表示を維持するメモリー表示が実現される。
【0006】
一方、液晶の流動を防止し、押し変形や曲げ変形に対する画像の維持性を向上させるため、マトリックス樹脂(樹脂部材)やマイクロカプセル等の高分子に液晶を分散保持や内包させる技術も提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0007】
また、液晶乳化粒子(ミセル)を含む液晶乳化物(液晶エマルジョン)を表示要素として用いる技術も提案されている。このような液晶乳化物を製造する方法として、例えば、液晶、水等を含む液晶組成物を、高速攪拌機を用いて機械的に乳化させる方法、超音波ホモジナイザーを用いて乳化させせる方法などがある。さらに、液晶粒子の粒径分布の均一化を図る観点などから、液晶を多孔質膜に通過させて水溶液中に分散させる方法も提案されている(特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−080303号公報
【特許文献2】特開2000−147479公報
【特許文献3】特開2001−249314公報
【特許文献4】特開平09−015568号公報
【特許文献5】特開平6−27447号公報
【特許文献6】特開平6−242420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、液晶を膜乳化して液晶乳化物を製造する場合に比べ、乳化不良を抑制し、高速で乳化を行えるとともに、粗大粒子の発生が効果的に抑制される液晶乳化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では、以下の液晶乳化物の製造方法が提供される。
請求項1に係る発明は、液晶組成物から目標とする粒径よりも平均粒径が大きい1次液晶乳化粒子を含む予備乳化物を作製する予備乳化工程と、前記予備乳化物を、孔径が前記1次液晶乳化粒子の平均粒径よりも小さく、かつ、70%以上が平均孔径に対して±20%以内の範囲内にある貫通孔が多数形成されている多孔質膜に通過させることにより、前記1次液晶乳化粒子の平均粒径よりも平均粒径が小さい2次液晶乳化粒子を含む液晶乳化物に再乳化する膜乳化工程と、を含むことを特徴とする液晶乳化物の製造方法である。
請求項2に係る発明は、前記液晶がコレステリック液晶、またはスメクチック液晶であることを特徴とする請求項1に記載の液晶乳化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、液晶を膜乳化して液晶乳化物を製造する場合に比べ、乳化不良を抑制し、高速で乳化を行えるとともに、粗大粒子の発生が効果的に抑制される液晶乳化物の製造方法が提供される。
請求項2の発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、粗大粒子の数が少なく、電子ペーパーにより適した液晶乳化物が得られる液晶乳化物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る膜乳化工程を概略的に示す図である。
【図2】膜乳化によって液晶乳化物を製造する従来の方法を概略的に示す図である。
【図3】多孔質膜の孔内を液晶分子が長軸配向方向に流動する場合を概念的に示す図である。
【図4】多孔質膜の孔内で液晶分子の長軸配向方向が流動方向に対して略垂直となる場合を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当する要素(部材)には同一符号を付し、又は、符号を省略することとし、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
本発明者らは、液晶乳化物を製造する方法について鋭意検討を行った。例えば、図2に示すように、液晶26を多孔質膜22に通過させて水を主体とする分散媒体30に分散させることにより液晶乳化物(液晶乳化粒子28)を製造する場合、攪拌機やホモジナイザーを用いて乳化させる場合に比べ、粒径の均一化を図る点では有利であるが、乳化速度の再現性が悪い、乳化中に乳化速度が不安定になる、乳化が途中で止まる、液晶組成によっては全く乳化できない、といった乳化不良が生じ易い。さらに、上記のような膜乳化によって液晶乳化粒子28を含む液晶乳化物を製造しても、粗大粒子が発生し易く、表示要素として用いたときに表示ムラの原因となり易い。
【0015】
このような乳化不良の主な原因は、液晶26が多孔質膜22を通過する際の孔24内での液晶の配向にあると推測される。例えば、液晶分子は棒状であり、図3に示すように、多孔質膜22の孔24内を液晶分子26Aが長軸配向方向に流動する場合は粘性が低い。一方、図4に示すように、液晶分子26Aの長軸配向方向が流動方向に対して略垂直となって孔24内を移動する場合は、数倍から1桁以上の高い粘性を示すことになる。このため、多孔質壁面との相互作用で、一旦壁面に垂直に液晶分子26Aが配向すると、粘性が上昇して乳化速度が遅くなったり、液晶26の流動が止まったりするものと考えられる。
【0016】
そこで、本発明者らは、研究及び検討を重ねた結果、均一な孔径の貫通孔を多数有する多孔質膜に対して、孔径よりも大きな平均粒径を有する1次液晶乳化粒子を含む予備乳化物を予め調製し、これを上記の多孔質膜に通過させれば、乳化不良が効果的に抑制されて高速で液晶乳化物が得られるとともに、粗大粒子の発生も効果的に抑制されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0017】
<予備乳化工程>
まず、液晶組成物から目標とする粒径よりも平均粒径が大きい1次液晶乳化粒子を含む予備乳化物(1次液晶エマルション)を作製する。
【0018】
−液晶組成物−
液晶組成物としては、攪拌等によって液晶を含む予備乳化物が得られるように、少なくとも液晶及び水を含むものを用いる。
本実施形態で使用する液晶としては、例えば、ネマチック液晶、スメックチック液晶、コレステリック液晶等、周知の液晶が挙げられる。配向不良は粘度が高い液晶、例えば、スメクチック液晶やコレステリック液晶、特に可視波長域にBragg反射を生ずる短ピッチなコレステリック液晶ほど生じやすく、本発明はこれらの液晶に対して特に効果的である。これらの中でも、電子ペーパー等に用いる表示媒体としてはコレステリック液晶が好適である。
【0019】
コレステリック液晶は、光学活性化合物を含む液晶材料であり、1)ネマチック液晶にカイラル剤と呼ばれる光学活性化合物等を添加する方法、2)コレステロール誘導体などのようにそれ自身光学活性な液晶材料を用いる方法などによって得られる。前者の場合、ネマチック液晶材料としては、シアノビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルベンゾエート系、シクロヘキシルベンゾエート系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系、スチルベン系、トラン系など公知のネマチック液晶含有組成物が利用される。カイラル剤としてはコレステロール誘導体や、2−メチルブチル基などの光学活性基を有する化合物等が利用される。
【0020】
また、高分子液晶、中分子液晶、低分子液晶のいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。
なお、コレステリック液晶の螺旋ピッチは、カイラル剤の種類や添加量、液晶の材質によって変化する。選択反射の波長は可視波長域の他、紫外波長域や赤外波長域でもよい。
【0021】
また、本実施形態では、水中油型乳化物(「O/W型エマルション」)を得るため、液晶組成物は水を含む。乳化を安定化するために、水には、1)アニオン界面活性剤、例えば、高級脂肪酸のナトリウム塩などの石鹸、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステルなどの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、りん酸エステル塩などや、2)カチオン界面活性剤、例えば、高級アルキルアミン塩や第4級アンモニウム塩などや、3)ノニオン界面活性剤、例えば、高級アルコールのポリエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのポリエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸アミンおよび脂肪族アミドのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリキールエチレンオキサイド付加物,多価アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどや、4)両性界面活性剤、例えば、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤など、5)保護コロイド剤、例えば、ポリビニルアルコール、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを加えてもよい。
【0022】
液晶組成物には、例えば、界面活性剤、色素、粒子、カプセル化や高分子分散化するためのモノマーなどの添加物を加えてもよい。
【0023】
−予備乳化−
液晶組成物から予備乳化物を作製する手段としては、目標とする粒径よりも平均粒径が大きい液晶乳化粒子(1次液晶乳化粒子)を含む液晶乳化物が作製されれば特に限定されない。例えば、プロペラ式、スクリュー式、パドル式、内歯式などの回転翼型の攪拌装置、超音波攪拌装置、ジェット式攪拌装置、膜乳化装置などから、液晶の種類、予備乳化物の目標平均粒径などに応じて選択して予備乳化物を作製すればよい。
【0024】
なお、攪拌装置などによって予備乳化物を作製する場合、予備乳化物に含まれる1次液晶乳化粒子の粒径は不均一となるが、次の膜乳化工程によって粒径の均一化を図るため、1次液晶乳化粒子の粒径は不均一でもよく、粒径も特に限定されない。
ただし、1次液晶乳化粒子の粒径が次の膜乳化工程で使用する多孔質膜の孔径に対して大き過ぎると乳化速度の低下(生産性の低下)を招くおそれがある観点から、1次液晶乳化粒子の体積平均粒径は多孔質膜の孔径に対して、1倍以上10倍以下の範囲内にあることが好ましい。1次液晶乳化粒子の具体的な体積平均粒径は、膜乳化工程で使用する多孔質膜の孔径にもよるが、例えば、孔径4.4μmの多孔質膜に対しては、4.4μm以上44μm以下の範囲である。
【0025】
例えば、コレステリック液晶を含む油相と、純水に界面活性剤を添加した水相をそれぞれ用意し、攪拌装置によって攪拌することで1次液晶乳化粒子を含む予備乳化物を作製する。
予備乳化物中の液晶(1次液晶乳化粒子)の含有量は、液晶の種類、1次液晶乳化粒子の粒径と多孔質膜の孔径との比、目的とする2次液晶乳化粒子の粒径などにもよるが、液晶の含有量が低過ぎると、次工程で得られる2次液晶乳化粒子が少なく、生産性の低下を招き、一方、液晶の含有量が高過ぎると、次の膜乳化工程で膜を通過する速度(乳化速度)が遅くなってやはり生産性の低下を招くおそれがある。これらの観点から、予備乳化物中の液晶の含有量は、1重量%以上60重量%以下であることが好ましい。
【0026】
<膜乳化工程>
次いで、予備乳化物を多孔質膜に通過させて膜乳化(再乳化)を行う。図1は、本実施形態における膜乳化工程を概略的に示している。予備乳化物17を、孔径が1次液晶乳化粒子16の平均粒径よりも小さく、かつ、均一な貫通孔14が多数形成されている多孔質膜12に通過させることにより、1次液晶乳化粒子16の平均粒径よりも平均粒径が小さい2次液晶乳化粒子18を含む液晶乳化物(2次液晶エマルション)19に再乳化する。
【0027】
−多孔質膜−
多孔質膜12は、貫通孔14の孔径が少なくとも1次液晶乳化粒子16の平均粒径よりも小さく、かつ、目的とする2次液晶乳化粒子18に応じた孔径を有する貫通孔14が多数形成されているものを用いる。例えば、予備乳化物17を多孔質膜12に通過させて得られる2次液晶乳化粒子18を電子ペーパーなどの液晶表示媒体に使用する観点から、多孔質膜12に形成されている貫通孔14の孔径は、0.05μm以上20μm以下が好ましく、0.1μm以上20μm以下がより好ましく、1μm以上20μm以下が特に好ましい。なお、本実施形態において「孔径が均一」とは、多孔質膜12に形成されている孔14の70%以上が、平均孔径に対して±20%以内の範囲内にあることを意味する。
【0028】
多孔質膜12の貫通孔14の気孔率は、低過ぎると生産性が低下し、高過ぎると膜全体の強度の低下を招くおそれがある観点から、通常20%以上80%以下、特に30%以上70%以下の範囲内で形成されていることが好ましい。
【0029】
多孔質膜12の材質としては、例えば、ガラス、セラミック、シリコン、金属、高分子(樹脂)などが挙げられ、膜乳化時に要求される機械的強度(耐圧性)、均一な径の細孔を形成する容易性、化学的安定性などの観点から、ガラスが好適である。また、フォトリソグラフィー法によって均一な貫通孔をエッチング形成したシリコン基板も好適に利用できる。
また、多孔質膜12の形状は特に限定されないが、膜乳化工程を容易に行う観点から、板状又は筒状(例えば円筒状)であることが好ましい。
また、多孔質膜12の厚みは、厚過ぎると生産性が低下し、薄過ぎると膜全体の強度の低下を招くおそれがある観点から、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0030】
−膜乳化(再乳化)−
多孔質膜12を内部に設けた容器10内に予備乳化物17を投入し、投入した側から圧力を加えて予備乳化物17を多孔質膜12に通過させる。予備乳化物17に加える圧力は、水相と液晶の粘度や表面張力、1次液晶乳化粒子16の粒径、多孔質膜12の孔径、多孔質膜12の厚みなどによって異なるが、通常は、1KPa以上1MPa以下である。
【0031】
このような膜乳化工程では、予備乳化物17を多孔質膜12に通過させる際、多孔質膜12の孔14内の壁面に水15の膜が形成され、水15と共に液晶16が流れる。このため、液晶16が多孔質膜12に直接接触することによる配向増粘に起因した乳化不良が防止され、液晶から直接膜乳化を行う場合よりも高速で乳化が行われる。
また、上記のような予備乳化工程と膜乳化工程を経て製造された2次液晶乳化粒子18を含む液晶乳化物19は、粗大粒子の発生が少なく、液晶組成物から攪拌装置や膜乳化法によって得られる液晶乳化物に比べて液晶粒子の粒径分布の均一性が高く、液晶表示媒体の表示要素として好適である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例、比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は、これらにより制限されるものではない。尚、実施例、比較例に示される「部」および「%」は、いずれも重量基準である。評価項目及び方法は下記の通りである。
【0033】
−粒子径分布−
エマルションをホールスライドグラス上に50マイクロリットル取り、キーエンスVH−8000型デジタルマイクロスコープにて、500倍の倍率で粒子を撮影した。撮影された写真により、画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング社)を用いて粒径を測定し、数平均粒径を求めた。乳化粒径のねらい値を15μmとして乳化を行ない、粒径50μm以上の粒子数を粗大粒子数として計数した。
【0034】
−乳化速度−
一定時間ごとにエマルションを分取して、上記の手順で粒子を撮影し、画像解析ソフトを用いて体積平均粒径と粒子数を計数した。これらから乳化された油相の体積を計算し、乳化時間に対する傾きから乳化速度を求めた。
【0035】
<実施例1>
−油相の調製−
透明化点が100℃、選択反射波長が460nmの、トラン化合物を主成分とするコレステリック液晶組成物(メルク社製)を用意し、十分に室温に慣らした。
【0036】
−水相の調製−
純水にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(和光純薬社製)を0.25%溶解し、溶解終了後、十分に室温に慣らした。
【0037】
−予備乳化O/W型エマルション(1次液晶乳化粒子を含む乳濁液)の作製−
水相4部に対して1部の油相を添加し、外筒径が7mmの内歯式ミキサー(オムニ社製)により回転数4000rpmで5分間攪拌して、液晶乳化粒子の数平均粒径が25μm、不揮発分濃度20%の予備乳化O/Wエマルションを調製した。
【0038】
−O/W型エマルション(2次液晶乳化粒子を含む乳濁液)の作製−
SPGテクノ社製の膜乳化装置「マイクロキット」を用いて膜乳化した。乳化用の膜には平均孔径4.4μmのSPG多孔質膜を用いた。
100mlビーカーに前記水相100部を取り、乳化用の膜を収めた乳化ヘッドをこれに漬浸してセットした。次に、乳化ヘッドの油相容器へ前記の予備乳化O/W型エマルションを5部投入して、8kPaの圧を加えて再乳化(膜乳化)し、液晶乳化粒子の数平均粒径が15μmのO/W型エマルションを得た。
【0039】
膜乳化は2500マイクロリットル/分でほぼ一定速度で進行し、約2時間で終了した。
膜乳化終了時に計数した粗大粒子数は、50マイクロリットルあたり1.5個であった。
【0040】
<比較例1>
予備乳化はせずに、前記の油相1部を膜乳化してO/W型エマルションを得た。油相及び水相の調製は実施例と同様に行い、O/Wエマルションの作製は、予備乳化は行わず、乳化を容易ならしめるために水相及び油相を60℃に加熱しながら膜乳化を行なった以外は実施例1と同様の手順で行った。
【0041】
膜乳化は43マイクロリットル/分の速度で進行したが、23時間経過時に全量を乳化し終わることなく乳化が停止したので、ここで終了した。
膜乳化終了時に計数した粗大粒子数は、50マイクロリットルあたり約600個であった。
実施例1及び比較例1の乳化速度及び粗大粒子数を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1の液晶の重量に対する乳化速度は、予備乳化O/Wエマルションの濃度が20%であることから、500マイクロリットル/分と求められ、比較例より10倍以上の高速で乳化されたと評価される。
また、比較例1の乳化は途中で停止してしまったが、実施例1の乳化は最後まで順調に進行し、粗大粒子数も2桁少ない量であった。
【0044】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。例えば、得られた2次液晶乳化粒子を含む液晶乳化物を液晶表示媒体に使用する場合は、液晶組成物を乾燥等によって濃縮して2次液晶乳化粒子18の濃度を高めてもよいし、水等により希釈して濃度を薄めてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 容器
12 多孔質膜
14 貫通孔
15 水
16 1次液晶乳化粒子
17 予備乳化物
18 2次液晶乳化粒子
19 液晶乳化物
22 多孔質膜
24 孔
26 液晶
26A 液晶分子
28 液晶乳化粒子
30 分散媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶組成物から目標とする粒径よりも平均粒径が大きい1次液晶乳化粒子を含む予備乳化物を作製する予備乳化工程と、
前記予備乳化物を、孔径が前記1次液晶乳化粒子の平均粒径よりも小さく、かつ、70%以上が平均孔径に対して±20%以内の範囲内にある貫通孔が多数形成されている多孔質膜に通過させることにより、前記1次液晶乳化粒子の平均粒径よりも平均粒径が小さい2次液晶乳化粒子を含む液晶乳化物に再乳化する膜乳化工程と、
を含むことを特徴とする液晶乳化物の製造方法。
【請求項2】
前記液晶がコレステリック液晶、またはスメクチック液晶であることを特徴とする請求項1に記載の液晶乳化物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−190946(P2010−190946A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32485(P2009−32485)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】