液晶光学素子、液晶光学素子の製造方法、表示装置、および電子機器
【課題】塗布などの簡単な方法によって製造され、光利用効率を向上させることができる液晶光学素子、および当該液晶光学素子の製造方法を提供すること。このような液晶光学素子を備えた表示装置、および当該表示装置を備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の液晶光学素子20は、無配向処理の施された基材1と、基材1上に設けられ、液晶材料からなる液晶層10と、を備えている。液晶層10は、基材1上において、基材1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11を有している。
【解決手段】本発明の液晶光学素子20は、無配向処理の施された基材1と、基材1上に設けられ、液晶材料からなる液晶層10と、を備えている。液晶層10は、基材1上において、基材1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光利用効率の向上効果を有する液晶光学素子、当該液晶光学素子の製造方法、当該液晶光学素子を備えた表示装置、および当該表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイなどの表示装置における光利用効率を向上させることは、少ない消費電力で鮮やかで明るい表示を実現するために重要である。LCDは原理的に偏光子を使用するため光利用効率が限られているという問題がある。また、有機ELディスプレイにおいても外光を遮蔽し視認性を高める為に偏光子が用いられている(例えば、特許文献1参照)。さらに、有機ELディスプレイやPDPの様な拡散光を利用する表示装置では、基板内で全反射が生じ表示に寄与しない光が大部分を占めるため光利用効率が低いという問題がある。
【0003】
図11はガラス基板1内に発生する導波光によって、光Lが失活する様子を説明した図面である。透明なガラス基板1の近傍で発光した光Lのうち、入射角度の小さい光Lはガラス基板1と空気との界面で全反射することによって、ガラス基板1を透過して表示面に到達することなく失活する。なお、ガラス基板の屈折率は約1.5であることから全光束の約80%が失活するため大きな問題である。
【0004】
また、従来から、図12に示すように、ガラス基板1と、ガラス基板1上に設けられ、樹脂からなるマイクロレンズ40と、を備えた光学素子が知られている。しかしながら、このような光学素子では、マイクロレンズ40によって、入射した光Lを基板法線方向に集光することはできるものの、入射角度の小さい光Lはマイクロレンズ40と空気との界面で全反射するため、やはり、光Lは失活してしまう。なお、マイクロレンズ40内の屈折率は均一になっている。
【0005】
このような問題に対しては、例えば、基板の法線方向に光ファイバー効果を発生させて、基板内を導波する光を基板前面に取り出すというか技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特許第2761453号
【特許文献2】特開平6-109917号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2に示すように、2次元のマイクロドメイン構造により光利用効率を向上させることができることは原理的に明らかである。しかしながら、特許文献2のように、ガラスを束ねて切断、研磨といった機械的な工程により2次元平面状の光ファイバーを作製する方法は、微細加工、大面積、大量生産、低価格といったいわゆる産業上競争力という点では実用性に欠けることは明らかである。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、塗布などの簡単な方法によって製造され、光利用効率を向上させることができる液晶光学素子および当該液晶光学素子の製造方法を提供することを目的とする。また、このような液晶光学素子を備えた表示装置、および当該表示装置を備えた電子機器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、無配向処理の施された基材と、
基材上に設けられ、液晶材料からなる液晶層と、を備え、
液晶層が、基材上において、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有していることを特徴とする液晶光学素子である。
【0009】
このような構成によって、塗布などの簡単な方法によって製造することができ、かつ光利用効率を向上させることができる液晶光学素子を得ることができる。
【0010】
本発明は、各円形状ドメイン部が半球形状からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0011】
本発明は、各円形状ドメイン部の間に設けられ、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部をさらに備えたことを特徴とする液晶光学素子である。
【0012】
このような構成によって、低角度で基材内に入射した光であっても、基材と液晶層との界面で全反射することなく液晶光学素子を透過することができ、液晶光学素子に入射した光が失活することを防止する光ファイバー効果を得ることができる。
【0013】
本発明は、円形状ドメイン部が、基材の法線方向から見た場合に直径500μm以下の円形状からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0014】
本発明は、円形状ドメイン部が、基材の法線方向から見た場合に直径50μm以下の円形状からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0015】
本発明は、液晶層の液晶材料が、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0016】
このような構成によって、液晶層内に、円形状ドメイン部を確実に形成することができる。
【0017】
本発明は、液晶層の液晶材料が、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0018】
このような構成によって、液晶層内に、円形状ドメイン部をより確実に形成することができる。
【0019】
本発明は、円形状ドメイン部が、直線偏光の光強度を増加させることを特徴とする液晶光学素子である。
【0020】
本発明は、円形状ドメイン部上に設けられ、円形状ドメイン部の形状を維持する接着層をさらに備えたことを特徴とする液晶光学素子である。
【0021】
このような構成によって、円形状ドメイン部の形状を安定して維持することができ、液晶光学素子の高い光利用効率を、安定して維持することができる。
【0022】
本発明は、前記基材が、ガラス基板からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0023】
本発明は、前記基材が、フィルムからなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0024】
本発明は、前記基材が、カラーフィルター基板またはカラーフィルターフィルムからなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0025】
本発明は、無配向処理の施された基材を準備する準備工程と、
当該基材上に液晶材料を塗布し、液晶層を形成する塗布工程と、
液晶層の液晶材料が等方相を形成する温度まで、液晶材料を加熱する加熱工程と、
加熱された液晶層の液晶材料を室温まで冷却し、基材上の液晶層に、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を形成する冷却工程と、
を備えたことを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0026】
このような構成によって、光利用効率を向上させることができる液晶光学素子を、基材上に液晶材料を塗布するという簡単な方法によって製造することができる。
【0027】
本発明は、各円形状ドメイン部が半球形状からなることを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0028】
本発明は、冷却工程において、各円形状ドメイン部の間に、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部が形成されることを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0029】
このように形成された中間部によって、低角度で基材内に入射した光であっても、基材と液晶層との界面で全反射することなく液晶光学素子を透過することができ、液晶光学素子に入射した光が失活することを防止する光ファイバー効果を得ることができる。
【0030】
本発明は、基材上に塗布される液晶材料が、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0031】
このような液晶材料を用いることによって、液晶層内に、円形状ドメイン部を確実に形成することができる。
【0032】
本発明は、基材上に塗布される液晶材料が、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0033】
このような液晶材料を用いることによって、液晶層内に、円形状ドメイン部をより確実に形成することができる。
【0034】
本発明は、液晶層の円形状ドメイン部に接着剤を塗布し、円形状ドメインの形状を維持する接着層を形成する接着工程をさらに備えたことを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0035】
このような構成によって、円形状ドメイン部の形状を安定して維持することができ、液晶光学素子の高い光利用効率を、安定して維持することができる液晶光学素子を製造することができる。
【0036】
本発明は、無配向処理の施された基材を準備し、当該基材上に液晶材料を塗布して液晶層を形成し、液晶層の液晶材料が等方相を形成する温度まで液晶材料を加熱し、加熱された液晶層の液晶材料を室温まで冷却する、ことによって製造され、
前記液晶層が、基材上において、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有していることを特徴とする液晶光学素子である。
【0037】
このような構成によって、塗布などの簡単な方法によって製造することができ、かつ光利用効率を向上させることができる液晶光学素子を得ることができる。
【0038】
本発明は、各円形状ドメイン部が半球形状からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0039】
本発明は、各円形状ドメイン部の間に設けられ、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部をさらに備えたことを特徴とする液晶光学素子である。
【0040】
このような構成によって、低角度で基材内に入射した光であっても、基材と液晶層との界面で全反射することなく液晶光学素子を透過することができ、液晶光学素子に入射した光が失活することを防止する光ファイバー効果を得ることができる。
【0041】
本発明は、液晶層の液晶材料が、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0042】
このような構成によって、液晶層内に、円形状ドメイン部を確実に形成することができる。
【0043】
本発明は、液晶層の液晶材料が、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0044】
このような構成によって、液晶層内に、円形状ドメイン部をより確実に形成することができる。
【0045】
本発明は、円形状ドメイン部上に、円形状ドメイン部の形状を維持する接着層が設けられたことを特徴とする液晶光学素子である。
【0046】
このような構成によって、円形状ドメイン部の形状を安定して維持することができ、液晶光学素子の高い光利用効率を、安定して維持することができる。
【0047】
本発明は、上述した液晶光学素子を備えたことを特徴とする表示装置である。
【0048】
本発明は、上述した表示装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、塗布などによって基材上に設けられ、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有する液晶層によって、簡単に光利用効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る液晶光学素子の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図8は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0051】
図1に示すように、液晶光学素子20は、無配向処理の施されたガラス基板(基材)1と、ガラス基板1上に設けられ、液晶材料からなる液晶層10と、を備えている。なお、図1は、本実施の形態による液晶光学素子20の断面図を示している。
【0052】
このうち、液晶層10は、図2および図3(a)に示すように、ガラス基板1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11を有している。なお、図2および図3(a)は、本実施の形態による液晶光学素子20の液晶層10を上方から撮影した顕微鏡写真である。また、図2に中に示されている直線は、20μmの長さを示している。
【0053】
ところで、本願で、円形状ドメイン部11が「円形状で均一な大きさ」からなるとは、図2および図3(a)に示した顕微鏡写真からも分かるように、円形状ドメイン部11が略円形状でほぼ均一な大きさからなっていることを意味している。
【0054】
また、図1および図3(b)に示すように、円形状ドメイン部11は半球形状からなっている。また、各円形状ドメイン部11の間には、円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高い屈折率n2を持つ中間部12が設けられている。なお、本願で、円形状ドメイン部11が「半球形状」からなるとは、円形状ドメイン部11が略半球形状からなっていることを意味している。
【0055】
上述した円形状ドメイン部11は、あまり大きいと肉眼で目だってしまい違和感が生じるので、ガラス基板1の法線方向から見た場合に直径500μm以下の円形状からなることが好ましく、直径50μm以下の円形状からなることがさらに好ましい。なお、円形状ドメイン部11の大きさは、後述するように、液晶層10を冷却する速度を調整することによって、適宜調整することができる。
【0056】
また、液晶層10内に円形状ドメイン部11を確実に形成することができるため、液晶層10の液晶材料は、室温でスメクティック相を形成する材料からなることが好ましい。なお、本願で「室温」とは、25℃を意味している。
【0057】
さらに、液晶層10内に円形状ドメイン部11をより確実に形成することができるため、液晶層10の液晶材料は、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることがさらに好ましい。なお、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、液晶層10の液晶材料は、室温でスメクティックC相を形成する材料からなってもよい。
【0058】
ところで、室温でスメクティックA相を形成する材料としては、例えば、8CB(4-n-octyl-4’cyanobiphenyl)などを挙げることができる。
【0059】
次に、このような構成からなる液晶光学素子20の製造方法について説明する。
【0060】
まず、無配向処理が施され、清浄されたガラス基板1を準備する(準備工程81)(図4参照)。ここで無配向処理とは、ガラス基板1の表面が特定の配向を有さないように、当該表面を処理することであって、ガラス基板1の表面がそもそも特定の配向を持っていない場合には、何ら処理を施す必要がない。
【0061】
すなわち、本願において、「無配向処理の施された基材(ガラス基板)1」とは、特定の配向を有さないように表面が処理されたガラス基板1だけでなく、そもそも特定の配向を持っていないガラス基板1も意味している。
【0062】
次に、ガラス基板1上に液晶材料を塗布し、液晶層10aを形成する(塗布工程83)(図4参照)。
【0063】
次に、液晶層10aの液晶材料が等方相を形成する温度まで、液晶材料を加熱する(加熱工程85)(図4参照)。
【0064】
次に、加熱された液晶層10aの液晶材料を室温まで冷却する(冷却工程87)(図4参照)。
【0065】
このように、加熱された液晶層10aの液晶材料を室温まで冷却することによって、図1乃至図3(a)−(c)に示すように、ガラス基板1上の液晶層10に、半球形状からなり、ガラス基板1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11が形成される。
【0066】
このとき、液晶材料が円形状ドメイン部11間の間隙を繋ぐことによって、円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高い屈折率n2を持つ中間部12が形成される。
【0067】
なお、上述のように、ガラス基板(基材)1上に設けられた液晶層10内で、半球形状の円形状ドメイン部11が形成される理由としては、液晶層10内の液晶分子mの性質に基づいていると考えられる。
【0068】
すなわち、液晶分子mは、一般的に、清浄なガラス基板1などの基材面には水平配向する傾向が強く、他方、空気界面に対しては垂直配向する性質を有している。このため、液晶分子mは、無配向処理の施された清浄なガラス基板1上で、同心円上に水平配向し(図3(c)参照)、空気との界面に近づくに従って徐々に垂直方向に近づいて配向していく(図3(b)参照)。この結果、無配向処理の施された清浄なガラス基板1上に配置された液晶層10では、半球形状の円形状ドメイン部11が形成されるのである。
【0069】
なお、液晶層10aの液晶材料を冷却する速度を速くすると液晶層10に形成された円形状ドメイン部11の大きさを大きくすることができ、逆に、速度を遅くすると液晶層10に形成された円形状ドメイン部11の大きさを小さくすることができる。
【0070】
次に、上述のような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0071】
最初に、本実施の形態による液晶光学素子20の基本的な作用について説明する。
【0072】
図3(b)および図5に示すように、本実施の形態による液晶光学素子20の液晶層10は、円形状ドメイン部11と、この円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高い屈折率n2からなり(n2>n1となり)、円形状ドメイン部11の間に周期的に形成された中間部12とを有している。
【0073】
このため、図5に示すように、円形状ドメイン部11によって入射した光Lを集光するだけでなく、円形状ドメイン部11の屈折率n1より高い屈折率n2を有する中間部12によって、入射した光Lが失活することを防止することができる。
【0074】
すなわち、上述のように、中間部12の屈折率n2が円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高くなっているので、(中間部12が円形状ドメイン部11と同じ屈折率を有しているならば全反射してしまうような)低角度でガラス基板1と液晶層10との界面に入射した光Lであっても、当該界面で全反射することなく液晶光学素子20を透過する。
【0075】
この結果、本実施の形態による液晶光学素子20によると、液晶光学素子20に入射した光Lを集光するレンズ効果に加えて、液晶光学素子20に入射した光Lが失活することを防止する光ファイバー効果も得ることができる。
【0076】
なお、液晶層の中間部12は、円形状ドメイン部11と同一の液晶材料から構成されているにも係わらず、円形状ドメイン部11の屈折率n1と異なる(円形状ドメイン部11の屈折率n1より高い)屈折率n2を有しているのは、円形状ドメイン部11内と中間部12内における液晶分子mの配向が異なっているためである。
【0077】
すなわち、円形状ドメイン部11では、上述のように、液晶分子mが、ガラス基板1上で同心円上に水平配向し、空気との界面に近づくに従って徐々に垂直方向に近づいて配向している。これに対して、中間部12は、液晶材料が円形状ドメイン部11間の間隙を繋ぐことによって形成され、円形状ドメイン部11と異なる形状からなっているので、中間部12内の液晶分子mは円形状ドメイン部11内の液晶分子mと異なる態様で配向している(図3(b)参照)。この結果、中間部12は、円形状ドメイン部11の屈折率n1と異なる屈折率n2を有している。
【0078】
なお、中間部12の屈折率n2が、円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高くなる理由としては、液晶分子配向が異なる為と考えられるが詳細は不明である。
【0079】
次に、液晶光学素子20を透過する透過光の強度について、図6(a)−(c)を用いて説明する。
【0080】
まず、図6(a)に示すように、液晶光学素子20の上方および下方の各々に直線偏光子32,31を配置した。なお、下方に配置された直線偏光子31の透過軸ta1と、上方に配置された直線偏光子32の透過軸ta2とは、直交するようにして配置され、クロスニコルの状態になっている。
【0081】
次に、光源(図示せず)から光Lを照射した。この光Lは、直線偏光子31の下方に配置されたレンズ35を通過した後、直線偏光子31を通過し、液晶光学素子20に到達した(図6(a)参照)。
【0082】
このようにして液晶光学素子20に到達した光Lは、液晶光学素子20を通過した後、上方に配置された直線偏光子32を通過して、フォトディテクター(PD)38に達した。そして、このフォトディテクター38によって、透過光の強度を測定した(図6(a)参照)。
【0083】
このようにして測定された透過光の強度を、図7(a)に示す。ここで、図6(a)に示した構成(液晶光学素子20の上方および下方の各々に直線偏光子32,31を配置した構成)によって測定された結果は、図7(a)において三角印(△)で示されている。なお、フォトディテクター38で測定された透過光の強度は、信号強度(mV)で示されている。
【0084】
また、図6(b)に示すように、図6(a)の構成から上方の直線偏光子32を取り除いた構成(液晶光学素子20の下方にのみ直線偏光子31を配置した構成)によっても、液晶光学素子20を透過する透過光を測定した。このように図6(b)に示す構成によって測定された結果は、図7(a)に示すグラフでは、四角印(◇)で示されている。
【0085】
また、図7(a)に示したグラフのうち、図6(a)に示した構成によって測定された結果(△で示した結果)では、横軸の「空気」は、上方の直線偏光子32と下方の直線偏光子31の間に何も配置していないときの結果を示し、横軸の「ガラス基板」は、上方の直線偏光子32と下方の直線偏光子31の間にガラス基板1を配置したときの結果を示し、横軸の「液晶光学素子」は、上方の直線偏光子32と下方の直線偏光子31の間に液晶光学素子20を配置したときの結果を示している。
【0086】
また、図7(a)に示したグラフのうち、図6(b)に示した構成によって測定された結果(◇で示した結果)では、横軸の「空気」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に何も配置していないときの結果を示し、横軸の「ガラス基板」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間にガラス基板1を配置したときの結果を示し、横軸の「液晶光学素子」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に液晶光学素子20を配置したときの結果を示している。
【0087】
図7(a)に示すグラフから、液晶光学素子20を通過したとき(横軸が「液晶光学素子」の場合)の直線偏光の透過光強度は、直交偏偏光子31の上方に何も配置していないとき(横軸が「空気」の場合)の透過光強度、および直交偏偏光子31の上方にガラス基板1を配置したとき(横軸が「ガラス基板」の場合)の透過光強度と比較して増加していることが分かる。なお、図6(a)に示した構成、および図6(b)に示した構成によって測定される光は直進光であり、液晶ディスプレイ(LCD)で用いられる光に対応している。
【0088】
また、図6(c)に示すように、液晶光学素子20上に蛍光体41を塗布したものを用いて、液晶光学素子20を透過する透過光の強度も測定した。
【0089】
すなわち、まず、図6(c)に示すように、液晶光学素子20上に蛍光体41を塗布した。その後、この液晶光学素子20の下方に直線偏光子31を配置した。
【0090】
次に、光源から光Lを照射した。この光Lは、直線偏光子31の下方に配置されたレンズ35を通過した後、直線偏光子31を通過し、液晶光学素子20に到達した(図6(c)参照)。
【0091】
このようにして液晶光学素子20に到達した光Lは、蛍光体41で拡散された後、フォトディテクター(PD)38に達した。そして、このフォトディテクター38によって、光Lの強度を測定した(図6(c)参照)。
【0092】
このようにして測定された透過光の強度を、図7(b)に示す。なお、図7(b)に示したグラフの縦軸の縮尺は、図7(a)に示したグラフの縦軸の縮尺と異なっているので、留意すべきである。
【0093】
この図7(b)において、横軸の「空気」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に何も配置していないときの結果を示し、横軸の「ガラス基板」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間にガラス基板1を配置したときの結果を示し、横軸の「蛍光体」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に蛍光体41が塗布されたガラス基板1を配置したときの結果を示し、横軸の「液晶光学素子」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に蛍光体41が塗布された液晶光学素子20を配置したときの結果を示している。
【0094】
図7(b)に示すグラフから、蛍光体41が塗布された液晶光学素子20を通過したとき(横軸が「液晶光学素子」の場合)の直線偏光の透過光強度は、直交偏偏光子31とフォトディテクター38の間に蛍光体41が塗布されたガラス基板1を配置したとき(横軸が「蛍光体」の場合)の透過高強度と比較して、やはり、増加していることが分かる。
【0095】
なお、蛍光体41が塗布された液晶光学素子20を通過した透過光強度が、直交偏偏光子31とフォトディテクター38の間に何も配置していないとき(横軸が「空気」の場合)の透過光強度、および直交偏偏光子31とフォトディテクター38の間にガラス基板1を配置したとき(横軸が「ガラス基板」の場合)の透過光強度と比較して小さくなっているのは、液晶光学素子20上に塗布された蛍光体41によって光が拡散されるためである。
【0096】
また、図7(b)に示した構成によって測定される光は拡散光であり、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ(PDP)で用いられる光に対応している。
【0097】
ところで、上述したガラス基板1上に液晶層10が設けられた液晶光学素子20は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイなどの表示装置の基板として利用することができる。
【0098】
また、上述のような液晶光学素子20を用いた表示装置は、様々な電子機器の表示部として用いることができ、例えば、携帯電話機50a(図8(a)参照)、PDA(Personal Digital Assistant)50b(図8(b)参照)、PC(Personal Computer)、テレビ受像機50c(図8(c)参照)、ビデオカメラ、デジタルカメラ50d(図8(d)参照)などの表示部として用いることができる。
【0099】
なお、図8(a)に示すように、携帯電話機50aは、情報を表示する表示部52aと、操作を行う操作部51aとを備えている。また、図8(b)に示すように、PDA50bは、情報を表示する表示部52bと、操作を行う操作部51bとを備えている。また、図8(c)に示すように、テレビ受像機50cは、画像を表示する表示部52cと、操作を行う操作部51cとを備えている。さらに、図8(d)に示すように、デジタルカメラ50dは、画像を撮影する撮影部53dと、撮影部53dによって撮られた画像を表示する表示部52dと、操作を行う操作部51dとを備えている。
【0100】
なお、上記では、ガラス基板1と、ガラス基板1上に設けられ、液晶材料からなる液晶層10と、を備えた液晶光学素子20を用いて説明したが、このような態様に限らない。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイなどの表示装置の表示画面に無配向処理を施し、清浄した後、液晶材料を直接塗布することによって、液晶層10を形成してもよい。
【0101】
また、基材としてガラス基板1を用いる代わりに、可塑性を有するフィルムを用いてもよい。このように基材として可塑性を有するフィルムを用いた液晶光学素子20によれば、上述のような表示装置の表示画面に貼り付けて使用することができる。
【0102】
さらに、基材として、カラーフィルター基板またはカラーフィルターフィルムを用いて液晶光学素子20を得てもよい。
【0103】
(実施例)
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0104】
最初に、本発明による液晶光学素子20の製造例について説明する。
【0105】
まず、洗浄済みの無配向処理の施されたガラス基板1を準備した(図4参照)。
【0106】
次に、ガラス基板1上に、室温(25℃)でスメクティックA相となる液晶材料8CB(4-n-octyl-4’cyanobiphenyl)を滴下し、液晶層10aを形成した(図4参照)。
【0107】
次に、この液晶層10aを、液晶材料が等方相となる温度(60℃)まで加熱した(図4参照)。
【0108】
次に、60℃から−0.5℃/分の早さで室温(25℃)まで、液晶層10aを冷却した(図4参照)。
【0109】
このようにして得られた液晶光学素子20の液晶層10を顕微鏡によって観察したところ、図2に示すように、ガラス基板1上に塗布された8CBからなる液晶層10が、ガラス基板1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11を有していることが分かった。
【0110】
なお、本実施例で用いた8CBでは、等方相−ネマティック相転移温度が41℃であり、ネマティック相−スメクティックA相転移温度が33℃であり、スメクティックA相−結晶相転移温度が21℃である。
【0111】
なお、上述した方法を用いて、市販の液晶ディスプレイ(LCD)および有機ELディスプレイの表示画面に、直接液晶層10を形成した後、当該液晶ディスプレイ(LCD)および有機ELディスプレイの表示画面の輝度を測定したところ、輝度が上昇し、光利用効率が向上していることを確認することができた。
【0112】
また、上述した方法を用いて、カラーフィルター基板に液晶層10を形成した後、光を照射して当該カラーフィルター基板を透過する透過光の強度を測定したところ、何ら処理を施していないカラーフィルター基板と比較して、透過光の強度が増加した。
【0113】
第2の実施の形態
次に、図9および図10により、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9および図10に示す第2の実施の形態は、円形状ドメイン部11上に、円形状ドメイン部11の形状を維持する接着層15を設けたものであり、その他の構成は図1乃至図8に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0114】
図9および図10に示す第2の実施の形態において、図1乃至図8に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0115】
図9に示すように、本実施の形態の液晶光学素子20は、無配向処理の施されたガラス基板(基材)1と、ガラス基板1上に設けられ、液晶材料からなる液晶層10と、円形状ドメイン部11上に設けられた接着層15と、を備えている。なお、液晶層10は、図9に示すように、半球形状からなる複数の円形状ドメイン部11と、各円形状ドメイン部11間に設けられた中間部12とを有している。
【0116】
このような液晶光学素子20の製造方法を以下に示す。
【0117】
まず、無配向処理が施され、清浄されたガラス基板1を準備する(準備工程81)(図10参照)。
【0118】
次に、ガラス基板1上に液晶材料を塗布し、液晶層10aを形成する(塗布工程83)(図10参照)。
【0119】
次に、液晶層10aの液晶材料が等方相を形成する温度まで、液晶材料を加熱する(加熱工程85)(図10参照)。
【0120】
次に、加熱された液晶層10aの液晶材料を室温まで冷却する(冷却工程87)(図10参照)。
【0121】
このように、加熱された液晶層10aの液晶材料を室温まで冷却することによって、図1乃至図3(a)−(c)に示すように、ガラス基板1上の液晶層10に、半球形状からなり、ガラス基板1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11が形成される。
【0122】
次に、液晶層10の円形状ドメイン部11上に接着剤を塗布し、接着層15を形成する(接着工程89)(図9および図10参照)。
【0123】
このように、円形状ドメイン部11上に接着層15を設けることによって、円形状ドメイン部11の形状を安定して維持することができる。このため、液晶光学素子20の高い光利用効率を、安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子の液晶層を上方から撮影した顕微鏡写真。
【図3】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子の液晶層を上方から撮影した顕微鏡写真と、液晶光学素子を示す断面図および平面図との関係を示す図。
【図4】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子の製造方法を示すフロー図。
【図5】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子を透過する光の様子を示す断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子を透過する透過光の強度を測定する装置を示す概略図。
【図7】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子を透過した透過光の強度を示すグラフ図。
【図8】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子および表示装置を用いることができる電子機器の例を示す概略図。
【図9】本発明の第2の実施の形態による液晶光学素子を示す断面図。
【図10】本発明の第2の実施の形態による液晶光学素子の製造方法を示すフロー図。
【図11】ガラス基板内に発生する導波光によって、光が失活する様子を説明した図
【図12】従来のマイクロレンズを備えた光学素子を示す断面図。
【符号の説明】
【0125】
1 基材(ガラス基板)
10 (円形状ドメイン部を有する)液晶層
10a (円形状ドメイン部を有さない)液晶層
11 円形状ドメイン部
12 中間部
15 接着層
20 液晶光学素子
31,32 直線偏光子
41 蛍光体
81 準備工程
83 塗布工程
85 加熱工程
87 冷却工程
89 接着工程
m 液晶分子
ta1,ta2 透過軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、光利用効率の向上効果を有する液晶光学素子、当該液晶光学素子の製造方法、当該液晶光学素子を備えた表示装置、および当該表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイなどの表示装置における光利用効率を向上させることは、少ない消費電力で鮮やかで明るい表示を実現するために重要である。LCDは原理的に偏光子を使用するため光利用効率が限られているという問題がある。また、有機ELディスプレイにおいても外光を遮蔽し視認性を高める為に偏光子が用いられている(例えば、特許文献1参照)。さらに、有機ELディスプレイやPDPの様な拡散光を利用する表示装置では、基板内で全反射が生じ表示に寄与しない光が大部分を占めるため光利用効率が低いという問題がある。
【0003】
図11はガラス基板1内に発生する導波光によって、光Lが失活する様子を説明した図面である。透明なガラス基板1の近傍で発光した光Lのうち、入射角度の小さい光Lはガラス基板1と空気との界面で全反射することによって、ガラス基板1を透過して表示面に到達することなく失活する。なお、ガラス基板の屈折率は約1.5であることから全光束の約80%が失活するため大きな問題である。
【0004】
また、従来から、図12に示すように、ガラス基板1と、ガラス基板1上に設けられ、樹脂からなるマイクロレンズ40と、を備えた光学素子が知られている。しかしながら、このような光学素子では、マイクロレンズ40によって、入射した光Lを基板法線方向に集光することはできるものの、入射角度の小さい光Lはマイクロレンズ40と空気との界面で全反射するため、やはり、光Lは失活してしまう。なお、マイクロレンズ40内の屈折率は均一になっている。
【0005】
このような問題に対しては、例えば、基板の法線方向に光ファイバー効果を発生させて、基板内を導波する光を基板前面に取り出すというか技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特許第2761453号
【特許文献2】特開平6-109917号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2に示すように、2次元のマイクロドメイン構造により光利用効率を向上させることができることは原理的に明らかである。しかしながら、特許文献2のように、ガラスを束ねて切断、研磨といった機械的な工程により2次元平面状の光ファイバーを作製する方法は、微細加工、大面積、大量生産、低価格といったいわゆる産業上競争力という点では実用性に欠けることは明らかである。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、塗布などの簡単な方法によって製造され、光利用効率を向上させることができる液晶光学素子および当該液晶光学素子の製造方法を提供することを目的とする。また、このような液晶光学素子を備えた表示装置、および当該表示装置を備えた電子機器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、無配向処理の施された基材と、
基材上に設けられ、液晶材料からなる液晶層と、を備え、
液晶層が、基材上において、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有していることを特徴とする液晶光学素子である。
【0009】
このような構成によって、塗布などの簡単な方法によって製造することができ、かつ光利用効率を向上させることができる液晶光学素子を得ることができる。
【0010】
本発明は、各円形状ドメイン部が半球形状からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0011】
本発明は、各円形状ドメイン部の間に設けられ、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部をさらに備えたことを特徴とする液晶光学素子である。
【0012】
このような構成によって、低角度で基材内に入射した光であっても、基材と液晶層との界面で全反射することなく液晶光学素子を透過することができ、液晶光学素子に入射した光が失活することを防止する光ファイバー効果を得ることができる。
【0013】
本発明は、円形状ドメイン部が、基材の法線方向から見た場合に直径500μm以下の円形状からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0014】
本発明は、円形状ドメイン部が、基材の法線方向から見た場合に直径50μm以下の円形状からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0015】
本発明は、液晶層の液晶材料が、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0016】
このような構成によって、液晶層内に、円形状ドメイン部を確実に形成することができる。
【0017】
本発明は、液晶層の液晶材料が、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0018】
このような構成によって、液晶層内に、円形状ドメイン部をより確実に形成することができる。
【0019】
本発明は、円形状ドメイン部が、直線偏光の光強度を増加させることを特徴とする液晶光学素子である。
【0020】
本発明は、円形状ドメイン部上に設けられ、円形状ドメイン部の形状を維持する接着層をさらに備えたことを特徴とする液晶光学素子である。
【0021】
このような構成によって、円形状ドメイン部の形状を安定して維持することができ、液晶光学素子の高い光利用効率を、安定して維持することができる。
【0022】
本発明は、前記基材が、ガラス基板からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0023】
本発明は、前記基材が、フィルムからなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0024】
本発明は、前記基材が、カラーフィルター基板またはカラーフィルターフィルムからなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0025】
本発明は、無配向処理の施された基材を準備する準備工程と、
当該基材上に液晶材料を塗布し、液晶層を形成する塗布工程と、
液晶層の液晶材料が等方相を形成する温度まで、液晶材料を加熱する加熱工程と、
加熱された液晶層の液晶材料を室温まで冷却し、基材上の液晶層に、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を形成する冷却工程と、
を備えたことを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0026】
このような構成によって、光利用効率を向上させることができる液晶光学素子を、基材上に液晶材料を塗布するという簡単な方法によって製造することができる。
【0027】
本発明は、各円形状ドメイン部が半球形状からなることを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0028】
本発明は、冷却工程において、各円形状ドメイン部の間に、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部が形成されることを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0029】
このように形成された中間部によって、低角度で基材内に入射した光であっても、基材と液晶層との界面で全反射することなく液晶光学素子を透過することができ、液晶光学素子に入射した光が失活することを防止する光ファイバー効果を得ることができる。
【0030】
本発明は、基材上に塗布される液晶材料が、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0031】
このような液晶材料を用いることによって、液晶層内に、円形状ドメイン部を確実に形成することができる。
【0032】
本発明は、基材上に塗布される液晶材料が、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0033】
このような液晶材料を用いることによって、液晶層内に、円形状ドメイン部をより確実に形成することができる。
【0034】
本発明は、液晶層の円形状ドメイン部に接着剤を塗布し、円形状ドメインの形状を維持する接着層を形成する接着工程をさらに備えたことを特徴とする液晶光学素子の製造方法である。
【0035】
このような構成によって、円形状ドメイン部の形状を安定して維持することができ、液晶光学素子の高い光利用効率を、安定して維持することができる液晶光学素子を製造することができる。
【0036】
本発明は、無配向処理の施された基材を準備し、当該基材上に液晶材料を塗布して液晶層を形成し、液晶層の液晶材料が等方相を形成する温度まで液晶材料を加熱し、加熱された液晶層の液晶材料を室温まで冷却する、ことによって製造され、
前記液晶層が、基材上において、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有していることを特徴とする液晶光学素子である。
【0037】
このような構成によって、塗布などの簡単な方法によって製造することができ、かつ光利用効率を向上させることができる液晶光学素子を得ることができる。
【0038】
本発明は、各円形状ドメイン部が半球形状からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0039】
本発明は、各円形状ドメイン部の間に設けられ、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部をさらに備えたことを特徴とする液晶光学素子である。
【0040】
このような構成によって、低角度で基材内に入射した光であっても、基材と液晶層との界面で全反射することなく液晶光学素子を透過することができ、液晶光学素子に入射した光が失活することを防止する光ファイバー効果を得ることができる。
【0041】
本発明は、液晶層の液晶材料が、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0042】
このような構成によって、液晶層内に、円形状ドメイン部を確実に形成することができる。
【0043】
本発明は、液晶層の液晶材料が、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする液晶光学素子である。
【0044】
このような構成によって、液晶層内に、円形状ドメイン部をより確実に形成することができる。
【0045】
本発明は、円形状ドメイン部上に、円形状ドメイン部の形状を維持する接着層が設けられたことを特徴とする液晶光学素子である。
【0046】
このような構成によって、円形状ドメイン部の形状を安定して維持することができ、液晶光学素子の高い光利用効率を、安定して維持することができる。
【0047】
本発明は、上述した液晶光学素子を備えたことを特徴とする表示装置である。
【0048】
本発明は、上述した表示装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、塗布などによって基材上に設けられ、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有する液晶層によって、簡単に光利用効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る液晶光学素子の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図8は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0051】
図1に示すように、液晶光学素子20は、無配向処理の施されたガラス基板(基材)1と、ガラス基板1上に設けられ、液晶材料からなる液晶層10と、を備えている。なお、図1は、本実施の形態による液晶光学素子20の断面図を示している。
【0052】
このうち、液晶層10は、図2および図3(a)に示すように、ガラス基板1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11を有している。なお、図2および図3(a)は、本実施の形態による液晶光学素子20の液晶層10を上方から撮影した顕微鏡写真である。また、図2に中に示されている直線は、20μmの長さを示している。
【0053】
ところで、本願で、円形状ドメイン部11が「円形状で均一な大きさ」からなるとは、図2および図3(a)に示した顕微鏡写真からも分かるように、円形状ドメイン部11が略円形状でほぼ均一な大きさからなっていることを意味している。
【0054】
また、図1および図3(b)に示すように、円形状ドメイン部11は半球形状からなっている。また、各円形状ドメイン部11の間には、円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高い屈折率n2を持つ中間部12が設けられている。なお、本願で、円形状ドメイン部11が「半球形状」からなるとは、円形状ドメイン部11が略半球形状からなっていることを意味している。
【0055】
上述した円形状ドメイン部11は、あまり大きいと肉眼で目だってしまい違和感が生じるので、ガラス基板1の法線方向から見た場合に直径500μm以下の円形状からなることが好ましく、直径50μm以下の円形状からなることがさらに好ましい。なお、円形状ドメイン部11の大きさは、後述するように、液晶層10を冷却する速度を調整することによって、適宜調整することができる。
【0056】
また、液晶層10内に円形状ドメイン部11を確実に形成することができるため、液晶層10の液晶材料は、室温でスメクティック相を形成する材料からなることが好ましい。なお、本願で「室温」とは、25℃を意味している。
【0057】
さらに、液晶層10内に円形状ドメイン部11をより確実に形成することができるため、液晶層10の液晶材料は、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることがさらに好ましい。なお、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、液晶層10の液晶材料は、室温でスメクティックC相を形成する材料からなってもよい。
【0058】
ところで、室温でスメクティックA相を形成する材料としては、例えば、8CB(4-n-octyl-4’cyanobiphenyl)などを挙げることができる。
【0059】
次に、このような構成からなる液晶光学素子20の製造方法について説明する。
【0060】
まず、無配向処理が施され、清浄されたガラス基板1を準備する(準備工程81)(図4参照)。ここで無配向処理とは、ガラス基板1の表面が特定の配向を有さないように、当該表面を処理することであって、ガラス基板1の表面がそもそも特定の配向を持っていない場合には、何ら処理を施す必要がない。
【0061】
すなわち、本願において、「無配向処理の施された基材(ガラス基板)1」とは、特定の配向を有さないように表面が処理されたガラス基板1だけでなく、そもそも特定の配向を持っていないガラス基板1も意味している。
【0062】
次に、ガラス基板1上に液晶材料を塗布し、液晶層10aを形成する(塗布工程83)(図4参照)。
【0063】
次に、液晶層10aの液晶材料が等方相を形成する温度まで、液晶材料を加熱する(加熱工程85)(図4参照)。
【0064】
次に、加熱された液晶層10aの液晶材料を室温まで冷却する(冷却工程87)(図4参照)。
【0065】
このように、加熱された液晶層10aの液晶材料を室温まで冷却することによって、図1乃至図3(a)−(c)に示すように、ガラス基板1上の液晶層10に、半球形状からなり、ガラス基板1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11が形成される。
【0066】
このとき、液晶材料が円形状ドメイン部11間の間隙を繋ぐことによって、円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高い屈折率n2を持つ中間部12が形成される。
【0067】
なお、上述のように、ガラス基板(基材)1上に設けられた液晶層10内で、半球形状の円形状ドメイン部11が形成される理由としては、液晶層10内の液晶分子mの性質に基づいていると考えられる。
【0068】
すなわち、液晶分子mは、一般的に、清浄なガラス基板1などの基材面には水平配向する傾向が強く、他方、空気界面に対しては垂直配向する性質を有している。このため、液晶分子mは、無配向処理の施された清浄なガラス基板1上で、同心円上に水平配向し(図3(c)参照)、空気との界面に近づくに従って徐々に垂直方向に近づいて配向していく(図3(b)参照)。この結果、無配向処理の施された清浄なガラス基板1上に配置された液晶層10では、半球形状の円形状ドメイン部11が形成されるのである。
【0069】
なお、液晶層10aの液晶材料を冷却する速度を速くすると液晶層10に形成された円形状ドメイン部11の大きさを大きくすることができ、逆に、速度を遅くすると液晶層10に形成された円形状ドメイン部11の大きさを小さくすることができる。
【0070】
次に、上述のような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0071】
最初に、本実施の形態による液晶光学素子20の基本的な作用について説明する。
【0072】
図3(b)および図5に示すように、本実施の形態による液晶光学素子20の液晶層10は、円形状ドメイン部11と、この円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高い屈折率n2からなり(n2>n1となり)、円形状ドメイン部11の間に周期的に形成された中間部12とを有している。
【0073】
このため、図5に示すように、円形状ドメイン部11によって入射した光Lを集光するだけでなく、円形状ドメイン部11の屈折率n1より高い屈折率n2を有する中間部12によって、入射した光Lが失活することを防止することができる。
【0074】
すなわち、上述のように、中間部12の屈折率n2が円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高くなっているので、(中間部12が円形状ドメイン部11と同じ屈折率を有しているならば全反射してしまうような)低角度でガラス基板1と液晶層10との界面に入射した光Lであっても、当該界面で全反射することなく液晶光学素子20を透過する。
【0075】
この結果、本実施の形態による液晶光学素子20によると、液晶光学素子20に入射した光Lを集光するレンズ効果に加えて、液晶光学素子20に入射した光Lが失活することを防止する光ファイバー効果も得ることができる。
【0076】
なお、液晶層の中間部12は、円形状ドメイン部11と同一の液晶材料から構成されているにも係わらず、円形状ドメイン部11の屈折率n1と異なる(円形状ドメイン部11の屈折率n1より高い)屈折率n2を有しているのは、円形状ドメイン部11内と中間部12内における液晶分子mの配向が異なっているためである。
【0077】
すなわち、円形状ドメイン部11では、上述のように、液晶分子mが、ガラス基板1上で同心円上に水平配向し、空気との界面に近づくに従って徐々に垂直方向に近づいて配向している。これに対して、中間部12は、液晶材料が円形状ドメイン部11間の間隙を繋ぐことによって形成され、円形状ドメイン部11と異なる形状からなっているので、中間部12内の液晶分子mは円形状ドメイン部11内の液晶分子mと異なる態様で配向している(図3(b)参照)。この結果、中間部12は、円形状ドメイン部11の屈折率n1と異なる屈折率n2を有している。
【0078】
なお、中間部12の屈折率n2が、円形状ドメイン部11の屈折率n1よりも高くなる理由としては、液晶分子配向が異なる為と考えられるが詳細は不明である。
【0079】
次に、液晶光学素子20を透過する透過光の強度について、図6(a)−(c)を用いて説明する。
【0080】
まず、図6(a)に示すように、液晶光学素子20の上方および下方の各々に直線偏光子32,31を配置した。なお、下方に配置された直線偏光子31の透過軸ta1と、上方に配置された直線偏光子32の透過軸ta2とは、直交するようにして配置され、クロスニコルの状態になっている。
【0081】
次に、光源(図示せず)から光Lを照射した。この光Lは、直線偏光子31の下方に配置されたレンズ35を通過した後、直線偏光子31を通過し、液晶光学素子20に到達した(図6(a)参照)。
【0082】
このようにして液晶光学素子20に到達した光Lは、液晶光学素子20を通過した後、上方に配置された直線偏光子32を通過して、フォトディテクター(PD)38に達した。そして、このフォトディテクター38によって、透過光の強度を測定した(図6(a)参照)。
【0083】
このようにして測定された透過光の強度を、図7(a)に示す。ここで、図6(a)に示した構成(液晶光学素子20の上方および下方の各々に直線偏光子32,31を配置した構成)によって測定された結果は、図7(a)において三角印(△)で示されている。なお、フォトディテクター38で測定された透過光の強度は、信号強度(mV)で示されている。
【0084】
また、図6(b)に示すように、図6(a)の構成から上方の直線偏光子32を取り除いた構成(液晶光学素子20の下方にのみ直線偏光子31を配置した構成)によっても、液晶光学素子20を透過する透過光を測定した。このように図6(b)に示す構成によって測定された結果は、図7(a)に示すグラフでは、四角印(◇)で示されている。
【0085】
また、図7(a)に示したグラフのうち、図6(a)に示した構成によって測定された結果(△で示した結果)では、横軸の「空気」は、上方の直線偏光子32と下方の直線偏光子31の間に何も配置していないときの結果を示し、横軸の「ガラス基板」は、上方の直線偏光子32と下方の直線偏光子31の間にガラス基板1を配置したときの結果を示し、横軸の「液晶光学素子」は、上方の直線偏光子32と下方の直線偏光子31の間に液晶光学素子20を配置したときの結果を示している。
【0086】
また、図7(a)に示したグラフのうち、図6(b)に示した構成によって測定された結果(◇で示した結果)では、横軸の「空気」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に何も配置していないときの結果を示し、横軸の「ガラス基板」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間にガラス基板1を配置したときの結果を示し、横軸の「液晶光学素子」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に液晶光学素子20を配置したときの結果を示している。
【0087】
図7(a)に示すグラフから、液晶光学素子20を通過したとき(横軸が「液晶光学素子」の場合)の直線偏光の透過光強度は、直交偏偏光子31の上方に何も配置していないとき(横軸が「空気」の場合)の透過光強度、および直交偏偏光子31の上方にガラス基板1を配置したとき(横軸が「ガラス基板」の場合)の透過光強度と比較して増加していることが分かる。なお、図6(a)に示した構成、および図6(b)に示した構成によって測定される光は直進光であり、液晶ディスプレイ(LCD)で用いられる光に対応している。
【0088】
また、図6(c)に示すように、液晶光学素子20上に蛍光体41を塗布したものを用いて、液晶光学素子20を透過する透過光の強度も測定した。
【0089】
すなわち、まず、図6(c)に示すように、液晶光学素子20上に蛍光体41を塗布した。その後、この液晶光学素子20の下方に直線偏光子31を配置した。
【0090】
次に、光源から光Lを照射した。この光Lは、直線偏光子31の下方に配置されたレンズ35を通過した後、直線偏光子31を通過し、液晶光学素子20に到達した(図6(c)参照)。
【0091】
このようにして液晶光学素子20に到達した光Lは、蛍光体41で拡散された後、フォトディテクター(PD)38に達した。そして、このフォトディテクター38によって、光Lの強度を測定した(図6(c)参照)。
【0092】
このようにして測定された透過光の強度を、図7(b)に示す。なお、図7(b)に示したグラフの縦軸の縮尺は、図7(a)に示したグラフの縦軸の縮尺と異なっているので、留意すべきである。
【0093】
この図7(b)において、横軸の「空気」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に何も配置していないときの結果を示し、横軸の「ガラス基板」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間にガラス基板1を配置したときの結果を示し、横軸の「蛍光体」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に蛍光体41が塗布されたガラス基板1を配置したときの結果を示し、横軸の「液晶光学素子」は、直線偏光子31とフォトディテクター38の間に蛍光体41が塗布された液晶光学素子20を配置したときの結果を示している。
【0094】
図7(b)に示すグラフから、蛍光体41が塗布された液晶光学素子20を通過したとき(横軸が「液晶光学素子」の場合)の直線偏光の透過光強度は、直交偏偏光子31とフォトディテクター38の間に蛍光体41が塗布されたガラス基板1を配置したとき(横軸が「蛍光体」の場合)の透過高強度と比較して、やはり、増加していることが分かる。
【0095】
なお、蛍光体41が塗布された液晶光学素子20を通過した透過光強度が、直交偏偏光子31とフォトディテクター38の間に何も配置していないとき(横軸が「空気」の場合)の透過光強度、および直交偏偏光子31とフォトディテクター38の間にガラス基板1を配置したとき(横軸が「ガラス基板」の場合)の透過光強度と比較して小さくなっているのは、液晶光学素子20上に塗布された蛍光体41によって光が拡散されるためである。
【0096】
また、図7(b)に示した構成によって測定される光は拡散光であり、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ(PDP)で用いられる光に対応している。
【0097】
ところで、上述したガラス基板1上に液晶層10が設けられた液晶光学素子20は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイなどの表示装置の基板として利用することができる。
【0098】
また、上述のような液晶光学素子20を用いた表示装置は、様々な電子機器の表示部として用いることができ、例えば、携帯電話機50a(図8(a)参照)、PDA(Personal Digital Assistant)50b(図8(b)参照)、PC(Personal Computer)、テレビ受像機50c(図8(c)参照)、ビデオカメラ、デジタルカメラ50d(図8(d)参照)などの表示部として用いることができる。
【0099】
なお、図8(a)に示すように、携帯電話機50aは、情報を表示する表示部52aと、操作を行う操作部51aとを備えている。また、図8(b)に示すように、PDA50bは、情報を表示する表示部52bと、操作を行う操作部51bとを備えている。また、図8(c)に示すように、テレビ受像機50cは、画像を表示する表示部52cと、操作を行う操作部51cとを備えている。さらに、図8(d)に示すように、デジタルカメラ50dは、画像を撮影する撮影部53dと、撮影部53dによって撮られた画像を表示する表示部52dと、操作を行う操作部51dとを備えている。
【0100】
なお、上記では、ガラス基板1と、ガラス基板1上に設けられ、液晶材料からなる液晶層10と、を備えた液晶光学素子20を用いて説明したが、このような態様に限らない。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイなどの表示装置の表示画面に無配向処理を施し、清浄した後、液晶材料を直接塗布することによって、液晶層10を形成してもよい。
【0101】
また、基材としてガラス基板1を用いる代わりに、可塑性を有するフィルムを用いてもよい。このように基材として可塑性を有するフィルムを用いた液晶光学素子20によれば、上述のような表示装置の表示画面に貼り付けて使用することができる。
【0102】
さらに、基材として、カラーフィルター基板またはカラーフィルターフィルムを用いて液晶光学素子20を得てもよい。
【0103】
(実施例)
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0104】
最初に、本発明による液晶光学素子20の製造例について説明する。
【0105】
まず、洗浄済みの無配向処理の施されたガラス基板1を準備した(図4参照)。
【0106】
次に、ガラス基板1上に、室温(25℃)でスメクティックA相となる液晶材料8CB(4-n-octyl-4’cyanobiphenyl)を滴下し、液晶層10aを形成した(図4参照)。
【0107】
次に、この液晶層10aを、液晶材料が等方相となる温度(60℃)まで加熱した(図4参照)。
【0108】
次に、60℃から−0.5℃/分の早さで室温(25℃)まで、液晶層10aを冷却した(図4参照)。
【0109】
このようにして得られた液晶光学素子20の液晶層10を顕微鏡によって観察したところ、図2に示すように、ガラス基板1上に塗布された8CBからなる液晶層10が、ガラス基板1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11を有していることが分かった。
【0110】
なお、本実施例で用いた8CBでは、等方相−ネマティック相転移温度が41℃であり、ネマティック相−スメクティックA相転移温度が33℃であり、スメクティックA相−結晶相転移温度が21℃である。
【0111】
なお、上述した方法を用いて、市販の液晶ディスプレイ(LCD)および有機ELディスプレイの表示画面に、直接液晶層10を形成した後、当該液晶ディスプレイ(LCD)および有機ELディスプレイの表示画面の輝度を測定したところ、輝度が上昇し、光利用効率が向上していることを確認することができた。
【0112】
また、上述した方法を用いて、カラーフィルター基板に液晶層10を形成した後、光を照射して当該カラーフィルター基板を透過する透過光の強度を測定したところ、何ら処理を施していないカラーフィルター基板と比較して、透過光の強度が増加した。
【0113】
第2の実施の形態
次に、図9および図10により、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9および図10に示す第2の実施の形態は、円形状ドメイン部11上に、円形状ドメイン部11の形状を維持する接着層15を設けたものであり、その他の構成は図1乃至図8に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0114】
図9および図10に示す第2の実施の形態において、図1乃至図8に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0115】
図9に示すように、本実施の形態の液晶光学素子20は、無配向処理の施されたガラス基板(基材)1と、ガラス基板1上に設けられ、液晶材料からなる液晶層10と、円形状ドメイン部11上に設けられた接着層15と、を備えている。なお、液晶層10は、図9に示すように、半球形状からなる複数の円形状ドメイン部11と、各円形状ドメイン部11間に設けられた中間部12とを有している。
【0116】
このような液晶光学素子20の製造方法を以下に示す。
【0117】
まず、無配向処理が施され、清浄されたガラス基板1を準備する(準備工程81)(図10参照)。
【0118】
次に、ガラス基板1上に液晶材料を塗布し、液晶層10aを形成する(塗布工程83)(図10参照)。
【0119】
次に、液晶層10aの液晶材料が等方相を形成する温度まで、液晶材料を加熱する(加熱工程85)(図10参照)。
【0120】
次に、加熱された液晶層10aの液晶材料を室温まで冷却する(冷却工程87)(図10参照)。
【0121】
このように、加熱された液晶層10aの液晶材料を室温まで冷却することによって、図1乃至図3(a)−(c)に示すように、ガラス基板1上の液晶層10に、半球形状からなり、ガラス基板1の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部11が形成される。
【0122】
次に、液晶層10の円形状ドメイン部11上に接着剤を塗布し、接着層15を形成する(接着工程89)(図9および図10参照)。
【0123】
このように、円形状ドメイン部11上に接着層15を設けることによって、円形状ドメイン部11の形状を安定して維持することができる。このため、液晶光学素子20の高い光利用効率を、安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子の液晶層を上方から撮影した顕微鏡写真。
【図3】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子の液晶層を上方から撮影した顕微鏡写真と、液晶光学素子を示す断面図および平面図との関係を示す図。
【図4】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子の製造方法を示すフロー図。
【図5】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子を透過する光の様子を示す断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子を透過する透過光の強度を測定する装置を示す概略図。
【図7】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子を透過した透過光の強度を示すグラフ図。
【図8】本発明の第1の実施の形態による液晶光学素子および表示装置を用いることができる電子機器の例を示す概略図。
【図9】本発明の第2の実施の形態による液晶光学素子を示す断面図。
【図10】本発明の第2の実施の形態による液晶光学素子の製造方法を示すフロー図。
【図11】ガラス基板内に発生する導波光によって、光が失活する様子を説明した図
【図12】従来のマイクロレンズを備えた光学素子を示す断面図。
【符号の説明】
【0125】
1 基材(ガラス基板)
10 (円形状ドメイン部を有する)液晶層
10a (円形状ドメイン部を有さない)液晶層
11 円形状ドメイン部
12 中間部
15 接着層
20 液晶光学素子
31,32 直線偏光子
41 蛍光体
81 準備工程
83 塗布工程
85 加熱工程
87 冷却工程
89 接着工程
m 液晶分子
ta1,ta2 透過軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無配向処理の施された基材と、
基材上に設けられ、液晶材料からなる液晶層と、を備え、
液晶層は、基材上において、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有していることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
各円形状ドメイン部は半球形状からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
各円形状ドメイン部の間に設けられ、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
円形状ドメイン部は、基材の法線方向から見た場合に直径500μm以下の円形状からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
円形状ドメイン部は、基材の法線方向から見た場合に直径50μm以下の円形状からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
液晶層の液晶材料は、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
液晶層の液晶材料は、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
円形状ドメイン部は、直線偏光の光強度を増加させることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
円形状ドメイン部上に設けられ、円形状ドメイン部の形状を維持する接着層をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
前記基材は、ガラス基板からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項11】
前記基材は、フィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項12】
前記基材は、カラーフィルター基板またはカラーフィルターフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項13】
無配向処理の施された基材を準備する準備工程と、
当該基材上に液晶材料を塗布し、液晶層を形成する塗布工程と、
液晶層の液晶材料が等方相を形成する温度まで、液晶材料を加熱する加熱工程と、
加熱された液晶層の液晶材料を室温まで冷却し、基材上の液晶層に、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を形成する冷却工程と、
を備えたことを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
【請求項14】
各円形状ドメイン部は半球形状からなることを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項15】
冷却工程において、各円形状ドメイン部の間に、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部が形成されることを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項16】
基材上に塗布される液晶材料は、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項17】
基材上に塗布される液晶材料は、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項18】
液晶層の円形状ドメイン部に接着剤を塗布し、円形状ドメインの形状を維持する接着層を形成する接着工程をさらに備えたことを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項19】
無配向処理の施された基材を準備し、当該基材上に液晶材料を塗布して液晶層を形成し、液晶層の液晶材料が等方相を形成する温度まで液晶材料を加熱し、加熱された液晶層の液晶材料を室温まで冷却する、ことによって製造され、
前記液晶層は、基材上において、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有していることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項20】
各円形状ドメイン部は半球形状からなることを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項21】
各円形状ドメイン部の間に設けられ、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部をさらに備えたことを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項22】
液晶層の液晶材料は、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項23】
液晶層の液晶材料は、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項24】
円形状ドメイン部上に、円形状ドメイン部の形状を維持する接着層が設けられたことを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項25】
請求項1または19に記載の液晶光学素子を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項26】
請求項25に記載の表示装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
無配向処理の施された基材と、
基材上に設けられ、液晶材料からなる液晶層と、を備え、
液晶層は、基材上において、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有していることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
各円形状ドメイン部は半球形状からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
各円形状ドメイン部の間に設けられ、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
円形状ドメイン部は、基材の法線方向から見た場合に直径500μm以下の円形状からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
円形状ドメイン部は、基材の法線方向から見た場合に直径50μm以下の円形状からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
液晶層の液晶材料は、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
液晶層の液晶材料は、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
円形状ドメイン部は、直線偏光の光強度を増加させることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
円形状ドメイン部上に設けられ、円形状ドメイン部の形状を維持する接着層をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
前記基材は、ガラス基板からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項11】
前記基材は、フィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項12】
前記基材は、カラーフィルター基板またはカラーフィルターフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項13】
無配向処理の施された基材を準備する準備工程と、
当該基材上に液晶材料を塗布し、液晶層を形成する塗布工程と、
液晶層の液晶材料が等方相を形成する温度まで、液晶材料を加熱する加熱工程と、
加熱された液晶層の液晶材料を室温まで冷却し、基材上の液晶層に、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を形成する冷却工程と、
を備えたことを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
【請求項14】
各円形状ドメイン部は半球形状からなることを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項15】
冷却工程において、各円形状ドメイン部の間に、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部が形成されることを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項16】
基材上に塗布される液晶材料は、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項17】
基材上に塗布される液晶材料は、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項18】
液晶層の円形状ドメイン部に接着剤を塗布し、円形状ドメインの形状を維持する接着層を形成する接着工程をさらに備えたことを特徴とする請求項13に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項19】
無配向処理の施された基材を準備し、当該基材上に液晶材料を塗布して液晶層を形成し、液晶層の液晶材料が等方相を形成する温度まで液晶材料を加熱し、加熱された液晶層の液晶材料を室温まで冷却する、ことによって製造され、
前記液晶層は、基材上において、基材の法線方向から見た場合に円形状で均一な大きさからなる複数の円形状ドメイン部を有していることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項20】
各円形状ドメイン部は半球形状からなることを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項21】
各円形状ドメイン部の間に設けられ、円形状ドメイン部の屈折率よりも高い屈折率を持つ中間部をさらに備えたことを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項22】
液晶層の液晶材料は、室温でスメクティック相を形成する材料からなることを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項23】
液晶層の液晶材料は、室温でスメクティックA相を形成する材料からなることを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項24】
円形状ドメイン部上に、円形状ドメイン部の形状を維持する接着層が設けられたことを特徴とする請求項19に記載の液晶光学素子。
【請求項25】
請求項1または19に記載の液晶光学素子を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項26】
請求項25に記載の表示装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2008−261972(P2008−261972A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103499(P2007−103499)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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