説明

液晶媒体

【課題】高い比抵抗と同時に広い動作温度範囲、短い応答時間および低い閾値電圧を有するMLCディスプレイ用液晶媒体の提供。
【解決手段】極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、これが、式I:(式中、R11、R12は、置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基等を示し、環Aは1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基等を示す。)


で表される少なくとも1種の化合物を含む、前記液晶媒体、並びにVA、ECB、PALC、FFSまたはIPS効果に基づくアクティブマトリックスディスプレイのためのこの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、式I:
【化1】

式中、
11およびR12は、各々、互いに独立して、H、15個までのC原子を有し、無置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されているアルキルまたはアルケニル基であり、ここでさらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、−O−、−S−、
【化2】

−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−により、O原子が互いに直接結合しない様式で置換されていてもよく、
【0002】
【化3】

は、
a)1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−シクロヘキシレン基であって、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH基は、−O−または−S−により置換されていてもよく、
b)1,4−フェニレン基であって、ここで、1つまたは2つのCH基は、Nにより置換されていてもよく、
c)ピペリジン−1,4−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フェナントレン−2,7−ジイルおよびフルオレン−2,7−ジイルからなる群からの基、
を示し、ここで、基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子により、好ましくは1個または2個のフッ素原子により、単置換または多置換されていてもよい、
で表わされる少なくとも1種の化合物を含む、前記液晶媒体に関する。
この種類の媒体は、特に、ECB効果に基づくアクティブマトリクスアドレッシングを有する電気光学ディスプレイ、およびIPS(面内切換)ディスプレイのために用いられるべきものである。本発明による媒体は、負の誘電異方性を有するのが好ましい。
【背景技術】
【0003】
電気的に制御された複屈折、即ちECB(電気的複屈折制御)効果またはDAP(配向相の変形)効果の原理は、1971年に最初に記載された(非特許文献1)。非特許文献2および非特許文献3の論文が続いた。
【0004】
非特許文献4、非特許文献5および非特許文献6の論文は、ECB効果に基づく高度情報ディスプレイ素子における使用に適するためには、液晶相が、弾性定数の比率K/Kの高い値、光学異方性Δnの高い値、および誘電異方性Δεについて≦−0.5の値を有さなければならないことを示した。ECB効果に基づく電気光学ディスプレイ素子は、ホメオトロピックな端部配向を有する(VA技術=垂直配向)。誘電的に負の液晶媒体はまた、いわゆるIPS効果を用いるディスプレイにおいても用いることができる。
【0005】
電気光学ディスプレイ素子におけるこの効果の工業的な応用には、多数の要求を満たすべきLC相が必要とされる。ここで特に重要なのは、水分、空気および物理的影響に対する、例えば熱、赤外線、可視および紫外線領域における照射、並びに直流および交流電界に対する化学的耐性である。
さらに、工業的に用いることができるLC相は、好適な温度範囲において液晶中間相および低い粘度を有することが必要である。
【0006】
現在までに開示された液晶中間相を有する一連の化合物のいずれも、これらの要求をすべて満たす単一の化合物を含んでいない。従って、2〜25種、好ましくは3〜18種の化合物の混合物が、一般に、LC相として用いることができる物質を得るために調製される。しかし、最適な相をこのようにして容易に調製することは不可能であり、その理由は、顕著に負の誘電異方性および十分な長期安定性を有する液晶材料が、これまでに入手可能ではなかったからである。
【0007】
マトリクス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)は、知られている。個別の画素を個別に切り換えるために用いることができる非線型素子は、例えば能動素子(即ちトランジスタ)である。そこで用語「アクティブマトリクス」を用い、2つのタイプを区別することができる:
1.基板としてのシリコンウェファー上のMOS(金属酸化物半導体)トランジスタ。
2.基板としてのガラス板上の薄膜トランジスタ(TFT)。
【0008】
タイプ1においては、用いられる電気光学的効果は、通常、動的散乱またはゲスト−ホスト効果である。基板材料としての単結晶シリコンの使用は、ディスプレイの大きさを制限する。その理由は、種々の部分ディスプレイのモジュラー式組み立てさえも、接合部分に問題が生じるからである。
好ましく、さらに有望なタイプ2の場合において、用いられる電気光学効果は、通常、TN効果である。
【0009】
2つの技術の間で、区別がなされる:例えばCdSeなどの化合物半導体を含むTFT、または多結晶もしくは非晶質シリコンを基材とするTFT。後者の技術は、世界中で集中的に研究努力されている。
【0010】
TFTマトリクスは、ディスプレイの1枚のガラス板の内側に施され、一方他方のガラス板は、その内側に透明な対向電極を担持している。画素電極の大きさと比較するとTFTは極めて小さく、画像に対する悪影響をほとんど有していない。この技術はまた、フィルター素子が各々の切換可能な画素に対向するように、赤色、緑色および青色フィルターのモザイクを配列した、フルカラー可能ディスプレイに拡張することができる。
これまでに開示されたTFTディスプレイは、通常、透過に交差偏光板を備えたTNセルとして動作し、背面照明される。
用語MLCディスプレイは、ここで、集積非線型素子を備えたすべてのマトリクスディスプレイを含み、即ちアクティブマトリクスに加えて、受動素子、例えばバリスターまたはダイオード(MIM=金属−絶縁体−金属)を有するディスプレイをも含む。
【0011】
このタイプのMLCディスプレイは、特に、TV用途に(例えば、ポケット型TV)、または自動車もしくは航空機の構成における高度情報ディスプレイ用に適する。コントラストの角度依存性および応答時間に関する問題に加えて、MLCディスプレイでは、液晶混合物の不適切に高い比抵抗値による困難も生じる(非特許文献7、非特許文献8)。抵抗値が減少するに従って、MLCディスプレイのコントラストは低下する。液晶混合物の比抵抗値は一般に、ディスプレイの内側表面との相互作用によって、MLCディスプレイの寿命を通して減少するため、高い(初期)抵抗値は、長い動作期間にわたり許容できる抵抗値を有する必要のあるディスプレイのために、極めて重要である。
【非特許文献1】M.F. Schieckel and K. Fahrenschon,” Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields”, Appl. Phys. Lett. 19 (1971), 3912.
【非特許文献2】J.F. Kahn, Appl. Phys. Lett. 20 (1972), 1193.
【非特許文献3】G. Labrunie and J. Robert, J. Appl. Phys. 44 (1973), 4869.
【非特許文献4】J. Robert and F. Clerc, SID 80 Digest Techn. Papers (1980), 30.
【非特許文献5】J. Duchene, Displays 7 (1986), 3.
【非特許文献6】H. Schad, SID 82 Digest Techn. Papers (1982), 244.
【非特許文献7】TOGASHI, S., SEKIGUCHI, K., TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H., SHIMIZU, H., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: A210-288 Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings, pp. 141 ff., Paris.
【非特許文献8】STROMER, M., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays, pp. 145 ff., Paris.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまでに開示されたMLC−TNディスプレイの欠点は、これらの比較的低いコントラスト、比較的高い視野角依存性およびこれらのディスプレイにおいてモノクロ階調を作る困難さである。
従って、極めて高い比抵抗と同時に広い動作温度範囲、短い応答時間および低い閾値電圧を有し、これらの補助により種々のモノクロ階調を作ることができるMLCディスプレイに対する多大な要求が継続している。
【0013】
本発明は、モニターおよびTV用途のみでなく、携帯電話およびナビゲーションシステム用にも用いるMLCディスプレイであって、ECBまたはIPS効果に基づき、前に示した欠点を有さないか、または有していても一層低い程度のみにであり、同時に極めて高い比抵抗値を有する前記MLCディスプレイを提供する目的を有する。特に、携帯電話およびナビゲーションシステムのためには、非常に高い温度および非常に低い温度においても動作することが保証されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことには、この目的は、式Iで表される少なくとも1種の化合物を含むネマティック液晶混合物を、これらのディスプレイ素子において用いた場合に達成されることが見出された。式Iで表わされる化合物は、例えば、WO 2002/055463から知られている。
従って、本発明は、式Iで表される少なくとも1種の化合物を含む、極性化合物の混合物に基づく液晶媒体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による混合物は、透明点が≧85℃の極めて広いネマティック相の範囲、極めて好ましい値の容量性閾値、比較的高い値の保持比および、同時に−30℃および−40℃において極めて良好な低温安定性および、極めて低い回転粘度を示す。本発明による混合物はさらに、透明点と回転粘度の良好な比率および、高い負の誘電異方性により区別される。
【0016】
本発明による混合物のいくつかの好ましい態様を、以下に示す:
a)式Iの化合物のR11および/またはR12は、好ましくは、H、6個までのC原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルコキシを示す;R11およびR12は、特に好ましくはアルキルを示し、ここでアルキル基は、同一でも異なっていてもよい。R12は特に好ましくはアルコキシまたはアルケニルオキシを示す。
【0017】
b)式IのR11が好ましくは以下の意味:直鎖状アルキル、ビニル、1E−アルケニルまたは3−アルケニル、を有する、液晶媒体。
がアルケニルを示す場合、これは好ましくは、CH=CH、CH−CH=CH、C−CH=CH、CH=CH−CまたはCH−CH=CH−Cである。
c)式Iで表される、1種、2種、3種、4種または5種以上の化合物、好ましくは1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。
d)式Iで表される化合物の混合物全体における割合が、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも4重量%、特に好ましくは2〜20重量%である、液晶媒体。
【0018】
e)さらに、式IIAおよび/またはIIB:
【化4】

式中、
は、R11について示した意味を有し、
pは、1または2を示し、および
vは、1〜6を示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。
【0019】
f)さらに、式III:
【化5】

式中、
31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルケニル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を示し、および、
【化6】

は、
【化7】

を示し、
Zは、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−または−CF=CF−を示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。
【0020】
g)式IIAおよび/またはIIBで表される化合物の、混合物全体における割合が、少なくとも20重量%である、液晶媒体。
h)式IIIで表される化合物の、混合物全体における割合が、少なくとも5重量%である、液晶媒体。
【0021】
i)従属式I1〜I9:
【化8】

から選択される少なくとも1種の化合物を含む、液晶媒体。
【0022】
j)さらに、式IIIa〜IIIj:
【化9】

【0023】
式中、
alkylおよびalkylは、各々、互いに独立して、1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示し、および
alkenylおよびalkenylは、各々、互いに独立して、2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニル基を示す、
から選択される1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。
【0024】
本発明による媒体は、好ましくは、式IIIa、IIIbおよび/またはIIIeで表わされる少なくとも1種の化合物を含む。
特に好ましい式IIIeおよびIIIfで表わされる化合物を、以下に示す:
【化10】

【0025】
本発明による特に好ましい媒体は、式:
【化11】

で表わされる化合物を、30〜60重量%、好ましくは30〜50重量%含む。
【0026】
k)2〜20重量%の、式Iで表される1種または2種以上の化合物、および
20〜80重量%の、式IIAおよび/またはIIBで表される1種または2種以上の化合物、
を含み、またはこれらからなり、
ここで式IおよびIIAおよび/またはIIBで表される化合物の総量が≦100重量%である、
液晶媒体。
【0027】
l)さらに、式:
【化12】

式中、
およびRは、各々、互いに独立して、請求項1においてR11について示した意味の1つを有し、
wおよびxは、各々、互いに独立して、1〜6を示す、
で表される1種または2種以上の四環式化合物を含む、液晶媒体。
【0028】
n)さらに、式Y−1〜Y−11:
【化13】

【0029】
【化14】

式中、R13〜R22は、各々、互いに独立して、R11について示した意味を有し、zおよびmは、各々、互いに独立して、1〜6を示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。Rは、H、CH、Cまたはn−Cを示す。xは0、1、2または3を示す。
【0030】
本発明による媒体は、特に好ましくは、式Y−2、Y−3、Y−11で表わされ、アルケニル側鎖を有する、1種または2種以上の化合物を含む。
【0031】
o)さらに、式:
【化15】

式中、
23はR11について示された意味を有し、およびmは1〜6を示す、
で表わされる1種または2種以上の化合物を、好ましくは>3重量%、特に≧5重量%、および非常に特に好ましくは5〜25重量%の量で含む、液晶媒体。
【0032】
p)さらに、式T−1〜T−22:
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

式中、RはR11について示された意味を有する、
で表される1種または2種以上のフッ化テルフェニルを含む、液晶媒体。
【0035】
Rは、好ましくは、それぞれの場合において1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキル、アルコキシもしくはアルコキシアルキル、2〜6個のC原子を有するアルケニルまたはアルケニルオキシである。Rは好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを示す。
本発明による媒体は、好ましくは、式T−1〜T−22で表わされるテルフェニルを、2〜30重量%、特に5〜20重量%の量で含む。
【0036】
特に好ましいのは、式T−1、T−2、T−3およびT−22で表わされる化合物である。これらの化合物において、Rは好ましくは、それぞれの場合において1〜5個のC原子を有するアルキルを、さらにアルコキシを示す。
テルフェニルは好ましくは、式I、IIA、IIBおよびIIIで表わされる化合物と共に、Δn≧0.10を有する混合物中で用いられる。好ましい混合物は、2〜20重量%のテルフェニルおよび、5〜60重量%の式IIAおよび/またはIIBで表わされる化合物を含む。
【0037】
q)さらに、式B−1〜B−5:
【化19】

式中、alkyl、alkyl,alkenylおよびalkenylは、上に示された意味を有する、
で表される1種または2種以上のビフェニルを含む、液晶媒体。
【0038】
式B−1〜B−5で表されるビフェニルの、混合物全体における割合は、好ましくは少なくとも3重量%、特に≧5重量%である。
式B−1〜B−5で表される化合物のうち、式B−1およびB−4で表わされる化合物が、特に好ましい。
【0039】
同様に、好ましいビフェニルは、式:
【化20】

式中、
Rは、1個または2〜6個のC原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはアルケニルオキシであり、alkenylは前に示した意味を有する、で表わされるものである。特に、本発明の媒体は、式B−1aおよび/またはB−2cで表わされる化合物の群からの、1種または2種以上の化合物を含む。
【0040】
r)さらに、式:
【化21】

式中、
24〜25は、R11について示した意味を有し、R26は、CH、Cまたはn−Cを示し、およびqは1または2を示す、
で表わされる1種または2種以上の化合物を、
好ましくは>3重量%、特に≧5重量%、および非常に特に好ましくは5〜25重量%の量で含む、液晶媒体。
【0041】
s)さらに、式Z−1〜Z−21:
【化22】

【0042】
【化23】

【0043】
【化24】

式中、
Rおよびalkylは、上に示した意味を有し、およびpは1または2である、
で表わされる少なくとも1種の化合物を、
好ましくは≧5重量%、特に≧10重量%の量で含む、液晶媒体。
【0044】
特に好ましいのは、式Z−1〜Z−13で表わされる1種、2種または3種以上の化合物と、さらに式IIで表わされる1種、2種または3種以上の化合物を含む媒体である。このタイプの混合物は好ましくは、式IIで表わされる化合物を≧10重量%含む。
【0045】
t)式O−1〜O−12:
【化25】

式中、RおよびRはR11について示した意味を有し、そしてRおよびRは、各々、互いに独立して、好ましくは直鎖状アルキル、さらにアルケニルを示す、
で表わされる少なくとも1種の化合物を含む、液晶媒体。
【0046】
本発明による好ましい液晶媒体は、テトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含む1種または2種以上の物質、例えば、式N−1〜N−5:
【化26】

【0047】
式中、RおよびRは、各々、互いに独立して、R11について示した意味を有し、好ましくは直鎖状アルキル、直鎖状アルコキシまたは直鎖状アルケニルを示し、およびZ、ZおよびRは、各々、互いに独立して、
−C−、−CH=CH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CHCHCH−、−CHCHCH=CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CH−または単結合を示す、
で表わされる化合物を含む。
【0048】
本発明はさらに、ECB効果に基づくアクティブマトリクスアドレッシングを有する電気光学ディスプレイであって、誘電体として、請求項1〜9のいずれかに記載の液晶媒体を含むことを特徴とする、前記電気光学ディスプレイに関する。
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも60Kのネマティック相範囲および20℃で最大30mm・s−1の流動粘度ν20を有する。
【0049】
本発明の液晶混合物は、−0.5〜−8.0、特に−3.0〜−6.0のΔεを有し、ここでΔεは、誘電異方性を示す。回転粘度γは、好ましくは<200mPa・s、特に<170mPa・sである。
液晶混合物における複屈折Δnは、一般に0.07〜0.16、好ましくは0.08〜0.12である。
【0050】
本発明の混合物は、すべてのVA−TFT用途、例えばVAN、MVA、(S)−PVAおよびASVに適する。これらは、さらに、負のΔεのIPS(面内切換)、FFS(フリンジフィールド切換)およびPALC用途に適する。
本発明によるディスプレイにおけるネマティック液晶混合物は、一般に、それら自体が1種または2種以上の個別の化合物からなる2つの成分AおよびBを含む。
【0051】
成分Aは、顕著に負の誘電異方性を有し、ネマティック相に≦−0.5の誘電異方性を付与する。これは、好ましくは、式I、IIA、IIBおよび/またはIIIで表される化合物を含む。
成分Aの割合は、好ましくは45〜100%、特に60〜100%である。
【0052】
成分Aについて、≦−0.8のΔεの値を有する1種(または2種以上)の個別の化合物が、好ましくは選択される。この値は、混合物全体におけるAの割合が小さくなれば、より負でなければならない。
成分Bは、顕著なネマトゲン性および、20℃において30mm・s−1以下の、好ましくは25mm・s−1以下の流動粘度を有する。
【0053】
成分B中の特に好ましい個別の化合物は、20℃において18mm・s−1以下の、好ましくは12mm・s−1以下の流動粘度を有する、極度に低い粘度のネマティック液晶である。
成分Bは、単変的に、または互変的にネマティックであり、スメクティック相の発生を、液晶混合物における極めて低い温度まで防止することができる。例えば、高いネマトゲン性を有する種々の材料を、スメクティック液晶混合物に加える場合には、これらの材料のネマトゲン性を、達成されるスメクティック相の抑制の程度により比較することができる。
【0054】
多数の好適な材料が、文献から当業者に知られている。特に好ましいのは、式IIIで表される化合物である。
さらに、これらの液晶相はまた、18種よりも多い成分、好ましくは18〜25種の成分を含むことができる。
【0055】
相は、好ましくは、4〜15種、特に5〜12種、特に好ましくは<10種の、式I、IIAおよび/またはIIBおよび随意にIIIで表される化合物を含む。
式I、IIAおよび/またはIIBおよびIIIで表される化合物に加えて、他の構成成分もまた、例えば混合物全体の45%まで、しかし好ましくは35%まで、特に10%までの量で存在することができる。
【0056】
他の構成成分は、好ましくは、ネマティックまたはネマトゲン性物質から選択され、特に既知の物質から、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、テルフェニル類、フェニルまたはシクロヘキシル安息香酸類、フェニルまたはシクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルナフタレン類、1,4−ビスシクロヘキシルビフェニル類またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニルまたはシクロヘキシルジオキサン類、随意にハロゲン化されたスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換ケイ皮酸エステル類の群から選択される。
【0057】
このタイプの液晶相の構成成分として適する最も重要な化合物は、式IV:
−L−G−E−R10 IV
式中、LおよびEは、各々、1,4−二置換ベンゼンおよびシクロヘキサン環、4,4’−二置換ビフェニル、フェニルシクロヘキサンおよびシクロヘキシルシクロヘキサン系、2,5−二置換ピリミジンおよび1,3−ジオキサン環、2,6−二置換ナフタレン、ジおよびテトラヒドロナフタレン、キナゾリンおよびテトラヒドロキナゾリンにより形成された群からの炭素環式または複素環式環系を示し、
【0058】
Gは、
【化27】

またはC−C単結合を示し、Qは、ハロゲン、好ましくは塩素、または−CNを示し、RおよびR10は、各々、18個まで、好ましくは8個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを示し、またはこれらの基の1つは、代替的に、CN、NC、NO、NCS、CF、OCF、F、ClもしくはBrを示す、
により特徴づけることができる。
【0059】
これらの化合物のほとんどにおいて、RおよびR10は互いに異なっており、これらの基の1つは、通常アルキルまたはアルコキシ基である。提案された置換基の他の変形も、一般的である。多くのこのような物質またはこれらの混合物もまた、商業的に入手できる。これらの全ての物質は、文献から知られている方法により製造することができる。
【0060】
当業者には言うまでもないことであるが、本発明のVA、IPS、FFSまたはPALC混合物は、例えばH、N、O、ClおよびFが対応する同位体により置換されている化合物も含むことができる。
本発明の液晶ディスプレイの構造は、例えばEP-A 0 240 379に記載されているような、通常の配置に相当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下の例は、本発明を、これを限定することなく説明することを意図する。本明細書中において、百分率は重量パーセントであり;すべての温度は摂氏温度で示す。
式Iで表される化合物に加えて、本発明の混合物は好ましくは、1種または2種以上の以下に示す化合物を含む。
【0062】
以下の略語を用いる:
(n、mおよびz:各々、互いに独立して、1、2、3、4、5または6)
【化28】

【0063】
【化29】

【0064】
【化30】

【0065】
【化31】

【0066】
【化32】

【0067】
【化33】

【0068】
【化34】

【0069】
【化35】

【0070】
【化36】

【0071】
【化37】

【0072】
本発明に従って用いることができる液晶混合物は、それ自体慣用である方法で製造される。一般的に、少ない方の量で用いる成分の所望の量を、有利には高温で、主要成分を構成する成分中に溶解する。有機溶剤、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノール中で成分の溶液を混合し、混合した後に、例えば蒸留により溶剤を再び除去することも可能である。
【0073】
誘電体はまた、当業者に知られており、文献中に記載されている他の添加剤、例えばUV吸収剤、酸化防止剤および遊離基スカベンジャーを含むことができる。例えば、0〜15%の多色性染料、安定剤またはキラルなドーパントを加えることができる。
【0074】
例えば、0〜15%の多色性染料を加えることができ、さらに導電性塩、好ましくは4−ヘキソキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボラナート(tetrabutylammonium tetraphenylboranate)もしくはクラウンエーテル類の錯塩を加えることができ(例えばHaller et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. Volume 24, pages 249-258 (1973))、導電性を改善することができるか、または、物質を加えて、誘電異方性、粘度および/またはネマティック相の配向を改変することができる。このタイプの物質は、例えば、DE-A 22 09 127、22 40 864、23 21 632、23 38 281、24 50 088、26 37 430および28 53 728に記載されている。
表Aは、本発明の混合物に加えることができる可能なドーパントを示す。混合物がドーパントを含む場合には、これを、0.01〜4重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%の量で用いる。
【0075】
【化38】

【0076】
【化39】

【0077】
例えば本発明の混合物に加えることができる安定剤を、以下の表Bに示す。
【化40】

【0078】
【化41】

【0079】
【化42】

【0080】
【化43】

【0081】
【化44】

【0082】
以下の例は、本発明を、これを限定することなく説明することを意図する。本明細書中、
は、20℃における容量性の閾値電圧[V]を示し、
Δnは、20℃および589nmで測定した光学異方性を示し、
Δεは、20℃および1kHzにおける誘電異方性を示し、
cl.p.は、透明点[℃]を示し、
γは、20℃で測定した回転粘度[mPa・s]を示し、
は、20℃における、「スプレー」変形弾性定数[pN]を示し、
は、20℃における、「曲げ」変形弾性定数[pN]を示し、
LTSは、試験セル中で決定した低温安定性(ネマティック相)を示す。
【0083】
閾値電圧の測定のために用いたディスプレイは、20μmの間隔における2枚の面平行外側板および、液晶のホメオトロピックな配向を行う外側板の内側上にSE−1211(日産化学)被覆配向層を有する電極層を有する。
【0084】
混合物例
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、式I:
【化1】

式中、
11およびR12は、各々、互いに独立して、H、15個までのC原子を有し、無置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されているアルキルまたはアルケニル基を示し、ここでさらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、−O−、−S−、
【化2】

−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−により、O原子が互いに直接結合しない様式で置換されていてもよく、
【化3】

は、
a)1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−シクロヘキシレン基であって、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH基は、−O−または−S−により置換されていてもよく、
b)1,4−フェニレン基であって、ここで、1つまたは2つのCH基は、Nにより置換されていてもよく、
c)ピペリジン−1,4−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フェナントレン−2,7−ジイルおよびフルオレン−2,7−ジイルからなる群からの基、
を示し、ここで、基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子により単置換または多置換されていてもよい、
で表わされる少なくとも1種の化合物を含む、前記液晶媒体。
【請求項2】
さらに、式IIAおよび/またはIIB:
【化4】

式中、
は、15個までのC原子を有し、無置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されているアルキルまたはアルケニル基を示し、ここでさらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、各々、互いに独立して、−O−、−S−、
【化5】

−C≡C−、−CO−、−OC−O−、−O−CO−または−O−CO−O−により、O原子が互いに直接結合しない様式で置換されていてもよく、
pは、1または2を示し、および、
vは、1〜6を示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液晶媒体。
【請求項3】
さらに、式III:
【化6】

式中、
31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルケニル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を示し、
【化7】

は、
【化8】

を示し、
Zは、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−または−CF=CF−を示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶媒体。
【請求項4】
式Iで表される1種、2種、3種、4種または5種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項5】
式Iで表される化合物の混合物全体における割合が、少なくとも2重量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項6】
式IIAおよび/またはIIBで表される化合物の混合物全体における割合が、少なくとも20重量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項7】
式IIIで表される化合物の混合物全体における割合が、少なくとも3重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項8】
式I1〜I9:
【化9】

式中、
11は、請求項1に示した意味を有し、alkylは、1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示す、
から選択される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項9】
式Iで表される1種または2種以上の化合物を2〜20重量%、および
式IIAおよび/またはIIBで表される1種または2種以上の化合物を20〜80重量%、
を含むことを特徴とし、
ここで式IおよびIIAおよび/またはIIBで表される化合物の総量が≦100重量%である、請求項1〜8のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項10】
VA、ECB、PALC、FFSまたはIPS効果に基づくアクティブマトリクスアドレッシングを有する電気光学ディスプレイであって、これが、誘電体として、請求項1〜9のいずれかに記載の液晶媒体を含むことを特徴とする、前記電気光学ディスプレイ。

【公開番号】特開2007−92033(P2007−92033A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−215177(P2006−215177)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】