説明

液晶媒体

【課題】液晶媒体を提供する。
【解決手段】本発明は、式(IA)、(IB)および(IC)の化合物群より選択される少なくとも1種類の化合物を含有し、極性化合物の混合物に基づく負の誘電異方性を有する液晶媒体に関し、ただし、R1A、R2A、R1B、R2B、R1C、R、L、m、n、o、pおよびbは請求項1で特定される意味を有し、および、特に、ECB、PALC、FFSまたはIPS効果に基づくアクティブマトリクスディスプレイ用の液晶媒体の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式IA、IBおよびICの化合物群より選択される少なくとも1種類の化合物を含み、極性化合物の混合物に基づく負の誘電異方性の液晶媒体に関する。
【0002】
【化1】

式中、
1A、R1B、R2BおよびR1Cは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有するアルキル基を表し、
2AおよびR2Cは、それぞれ互いに独立に、6個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基は無置換であるか、CNまたはCFで単置換されているか、または、ハロゲンで少なくとも単置換されており、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、
【0003】
【化2】

−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、また、LがFであればR2Cはハロゲン、好ましくはFまたはClを表してもよく、
Lは、HまたはFを表し、
m、n、oおよびpは、それぞれ互いに独立に、0、1または2を表し、
bは、0または1を表す。
【0004】
このタイプの媒体は、特に、ECB効果に基づくアクティブマトリクスアドレスを有する電気光学的ディスプレイ用およびIPS(in plane switching)およびFFS(fringe field switching)ディスプレイ用に使用できる。本発明による媒体は、好ましくは、負の誘電異方性を有する。
【背景技術】
【0005】
電気的制御複屈折率の原理、ECB効果またはDAP(deformation of aligned phases)効果も、1971年に初めて記載された(M.F.SchieckelおよびK.Fahrenschon、「Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields」、Appl.Phys.Lett.19巻(1971年)、3912頁(非特許文献1))。その後、J.F.Kahn(Appl.Phys.Lett.20巻(1972年)、1193頁(非特許文献2))およびG.LabrunieおよびJ.Robert(J.Appl.Phys.44巻(1973年)、4869頁(非特許文献3))による報文が続いた。
【0006】
J.RobertおよびF.Clerc(SID 80 Digest Techn.Papers(1980年)、30頁(非特許文献4))、J.Duchene(Displays 7巻(1986年)、3頁(非特許文献5))およびH.Schad(SID 82 Digest Techn.Papers(1982年)、244頁(非特許文献6))による報文では、ECB効果に基づく高情報量のディスプレイ素子中での使用に適するものとするためには、液晶相が弾性定数の比K/Kに対する高い値、光学異方性Δnに対する高い値および誘電異方性Δεに対する−0.5以下の値を有していなければならないことが示された。ECB効果に基づく電気光学的ディスプレイ素子はホメオトロピックなエッジ配向を有している(VA技術、即ち、垂直配向)。また、誘電的に負の液晶媒体も、所謂IPSまたはFFS効果を使用するディスプレイにおいて使用できる。
【0007】
ECB効果を使用するディスプレイは、所謂VAN(vertically aligned nematic)ディスプレイとして、例えば、MVA(multi−domain vertical alignment、例えば:Yoshide、H.ら、論文3.1:「MVA LCD for Notebook or Mobile PCs(以下省略)」SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、6〜9頁(非特許文献7)およびLiu、C.T.ら、論文15.1:「A 46−inch TFT−LCD HDTV Technology(以下省略)」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、750〜753頁(非特許文献8))、PVA(patterned vertical alignment、例えば:Kim、Sang Soo、論文15.4:「Super PVA Sets New State−of−the−Art for LCD−TV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、760〜763頁(非特許文献9))、ASV(advanced super view、例えば:Shigeta、MitzuhiroおよびFukuoka、Hirofumi、論文15.2:「Development of High Quality LCDTV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、754〜757頁(非特許文献10))モード、加えて、IPS(in−plane switching)ディスプレイ(例えば:Yeo、S.D.、論文15.3:「A LC Display for the TV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、758および759頁(非特許文献11))および長く知られているTN(twisted nematic)ディスプレイに加えて特にテレビ用途向けとして現在のところ最も重要な液晶ディスプレイの3種類のより最近のタイプの1つとして確立されてきた。一般的な形態において技術が比較されており、例えば2004年6月のSoukにおけるSIDセミナーにおいて、セミナーM−6:「Recent Advances in LCD Technology」、セミナー講義ノート、M−6/1〜M−6/26(非特許文献12)およびMiller、Ian、SIDセミナー 2004、セミナーM−7:「LCD−Television」、セミナー講義ノート、M−7/1〜M−7/32(非特許文献13)である。例えば:Kim、Hyeon Kyeongら、論文9.1:「A57−in.Wide UXGA TFT−LCD for HDTV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、106〜109頁(非特許文献14)のように、オーバードライブによるアドレス方法により、近年のECBディスプレイの応答時間は既に著しく改良されてきたが、ビデオに対応できる応答時間を達成することは、特にモノクロ階調のスイッチングにおいて、依然として満足いくほどには未だ解決されていない問題である。
【0008】
この効果を電気光学的ディスプレイ素子において工業的に応用するには、多数の要求を満足するLC相が必要となる。ここで特に重要なものは、水分、空気、および熱、赤外線、可視および紫外領域の放射および直流および交流電界などの物理的影響に対する化学的耐性である。
【0009】
更に、工業的に使用できるLC相は、適切な温度範囲での液晶中間相および低粘度を有することが要求される。
【0010】
現在までに開示されてきた液晶中間相を有する一連の化合物は、単一の化合物でこれら全ての要求を満たすものを含んでいない。従って、LC相として使用できる物質を得るためには、一般に、2〜25種類、好ましくは3〜18種類の化合物の混合物が調製される。しかしながら、著しく負の誘電異方性および適切な長期安定性を有する液晶材料がこれまで入手できなかったため、この方法で最適な相を容易には調製することは不可能であった。
【0011】
マトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)は既知である。個々のピクセルを個々にスイッチングするために使用することができる非線形素子は、例えば、アクティブ素子(即ち、トランジスター)である。なお、用語「アクティブマトリックス」を使用し、2つのタイプに区別できる。
【0012】
1.基体としてのシリコンウエハー上のMOS(金属酸化物半導体)トランジスター。
【0013】
2.基体としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT)。
【0014】
タイプ1の場合、使用される電気光学的効果は、通常、動的散乱またはゲスト−ホスト効果である。基体材料として単結晶シリコンを使用すると、種々の部品ディスプレイのモジュール組み立て品であっても接続部での問題が生じるため、ディスプレイの大きさが制限される。
【0015】
好適であってより有望なタイプ2の場合、使用される電気光学的効果は、通常、TN効果である。
【0016】
2つの技術が区別される:例えばCdSeなどの化合物半導体を含むTFT、または多結晶またはアモルファスシリコンに基づくTFTである。後者の技術について、世界的に集中した研究がなされている。
【0017】
TFTマトリックスはディスプレイの一方のガラス板の内面に適用され、他方のガラス板はその内面に透明な対向電極を備える。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。また、この技術はフルカラー対応のディスプレイにも拡張でき、このディスプレイにおいては、フィルター素子がスイッチ可能なピクセルのそれぞれに対向するように、赤、緑および青フィルターのモザイクが配置される。
【0018】
これまでに開示されたTFTディスプレイは、通常、透過光に対して直交した偏光板を備えるTNセルとして作動させ、バックライトで照らされる。
【0019】
本明細書において、用語MLCディスプレイは、集積非線形素子を備える任意のマトリックスディスプレイ、即ち、アクティブマトリックスに加えて、バリスターまたはダイオード(MIM、即ち、metal−insulator−metal)などのパッシブ素子を備えたディスプレイも網羅する。
【0020】
このタイプのMLCディスプレイは、特にテレビ用途(例えばポケットテレビ)または自動車または航空機内での高度情報ディスプレイに適している。コントラストの角度依存性および応答時間の問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、液晶混合物の比抵抗が十分に高くないことに起因する問題もある[TOGASHI,S.、SEKIGUCHI,K.、TANABE,H.、YAMAMOTO,E.、SORIMACHI,K.、TAJIMA,E.、WATANABE,H.およびSHIMIZU,H.、Proc.Eurodisplay 84、1984年9月:A210〜288頁、Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings、141ff頁、パリ(非特許文献15);STROMER,M.、Proc.Eurodisplay 84、1984年9月、Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays、145ff頁、パリ(非特許文献16)]。抵抗の低下に伴い、MLCディスプレイのコントラストが劣化する。液晶混合物の比抵抗はディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命全体に渡って低下するので、許容される抵抗値を長期の動作期間で有さなければならないディスプレイのためには、高い(初期)抵抗が非常に重要である。
【0021】
これまでに開示されたMLC−TNディスプレイの不具合は、それらの比較的低いコントラスト、比較的高い視野角依存性およびこれらのディスプレイ中でグレーシェイドを生じさせることが困難なことである。
【0022】
よって、非常に高い比抵抗を有すると同時に、広い動作温度範囲、短い応答時間および低い閾電圧を有しており、これらのおかげで各種のグレーシェイドを生じさせることができるMLCディスプレイが引き続き強く要求されている。
【0023】
特にテレビ用途向けには、短い応答時間を達成することが非常に重要である。これを達成するために、ECB用途において使用される誘電的に中性の化合物は、特に下式の化合物である。
【0024】
【化3】

LCDテレビ用途において、長時間にわたりディスプレイをアドレスすると、例えば、画像の固着、即ち、画像の明らかな「焦付き」などの信頼性の問題が頻発する。
【0025】
この問題は、テレビセットの動作時間を延長した後のみに頻発する。その原因は、多くの場合、長時間のバックライトに対する曝露と同時に動作温度の上昇と考えられ、結果としてディスプレイにおける更なる未説明の過程が進行する場合があり、例えば、配向層および液晶混合物間の相互作用である。液晶混合物については、画像の固着が発生する原因は頻繁に使用される中性のアルケニル化合物であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】欧州特許第0 168 683号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 122 389号明細書
【特許文献3】欧州特許第0 969 071号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】M.F.SchieckelおよびK.Fahrenschon、「Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields」、Appl.Phys.Lett.19巻(1971年)、3912頁
【非特許文献2】J.F.Kahn、Appl.Phys.Lett.20巻(1972年)、1193頁
【非特許文献3】G.LabrunieおよびJ.Robert、J.Appl.Phys.44巻(1973年)、4869頁
【非特許文献4】J.RobertおよびF.Clerc、SID 80 Digest Techn.Papers(1980年)、30頁
【非特許文献5】J.Duchene、Displays 7巻(1986年)、3頁
【非特許文献6】H.Schad、SID 82 Digest Techn.Papers(1982年)、244頁
【非特許文献7】Yoshide、H.ら、論文3.1:「MVA LCD for Notebook or Mobile PCs(以下省略)」SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、6〜9頁
【非特許文献8】Liu、C.T.ら、論文15.1:「A 46−inch TFT−LCD HDTV Technology(以下省略)」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、750〜753頁
【非特許文献9】Kim、Sang Soo、論文15.4:「Super PVA Sets New State−of−the−Art for LCD−TV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、760〜763頁
【非特許文献10】Shigeta、MitzuhiroおよびFukuoka、Hirofumi、論文15.2:「Development of High Quality LCDTV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、754〜757頁
【非特許文献11】Yeo、S.D.、論文15.3:「A LC Display for the TV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、758および759頁
【非特許文献12】セミナーM−6:「Recent Advances in LCD Technology」、セミナー講義ノート、M−6/1〜M−6/26
【非特許文献13】Miller、Ian、SIDセミナー 2004、セミナーM−7:「LCD−Television」、セミナー講義ノート、M−7/1〜M−7/32
【非特許文献14】Kim、Hyeon Kyeongら、論文9.1:「A57−in.Wide UXGA TFT−LCD for HDTV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、106〜109頁
【非特許文献15】TOGASHI,S.、SEKIGUCHI,K.、TANABE,H.、YAMAMOTO,E.、SORIMACHI,K.、TAJIMA,E.、WATANABE,H.およびSHIMIZU,H.、Proc.Eurodisplay 84、1984年9月:A210〜288頁、Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings、141ff頁、パリ
【非特許文献16】STROMER,M.、Proc.Eurodisplay 84、1984年9月、Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays、145ff頁、パリ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、特にモニターおよびテレビ用途向けで、ECB効果またはIPSまたはFFS効果を基礎とし、上記の不具合を有していないか有していても低減されている液晶混合物を提供する目的に基づいている。特にモニターおよびテレビ用には、非常に高温および非常に低温においても液晶混合物が動作し、同時に短い応答時間を有し、同時に信頼性の挙動が向上しており、特に長時間の動作後に画像の固着がないか著しく低減されていることが保証されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0029】
驚くべきことに、これらのディスプレイ素子において、式IA、IBおよびICの化合物群からの少なくとも1種類の化合物を含むネマチック液晶混合物を使用すれば、この目的を達成できることが見出された。
【0030】
式IA、IBおよびICの化合物は、アルケニル側鎖における二重結合が末端ではないという事実により区別される。
【0031】
式IAの化合物は、例えば、欧州特許第0 168 683号明細書(特許文献1)および欧州特許第0 122 389号明細書(特許文献2)より既知である。式IBの化合物は、例えば、欧州特許第0 969 071号明細書(特許文献3)より既知である。式ICの化合物は、例えば、欧州特許第0 969 071号明細書(特許文献3)より既知である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
よって、本発明は、極性化合物の混合物を基礎とし、式IA、IB、ICの化合物群より選択される少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体に関する。
【0033】
好ましくは、本発明による混合物は、60℃以上、好ましくは65℃以上、特には70℃以上の透明点、容量閾値に対する非常に好ましい値、保持率に対する比較的高い値を有する非常に広いネマチック相範囲、および同時に−30℃および−40℃において非常に良好な低温安定性ならびに非常に低い回転粘度および短い応答時間を示す。更に、本発明による混合物は、回転粘度γが改良されていることに加え、応答時間を改良するために弾性定数K33が増加していることを確認でき、向上された信頼性の挙動を示すという事実によって区別される。
【0034】
本発明による混合物の幾つかの好ましい実施形態を以下に与える。
【0035】
a)式IA、IBおよびICにおけるR1A、R1B、R2BおよびR1Cは、好ましくは、直鎖状のアルキルを表し、特に、C、n−C、n−C、更に、n−C11、n−C13である。
【0036】
2AおよびR2Cは、好ましくは、アルキルまたはアルコキシを表し、特に、CH、n−C、n−C11、更に、C、n−Cである。
【0037】
式IA、IBおよびICの化合物におけるアルケニル側鎖は、好ましくは、Eコンフィグレーションである。
【0038】
b)式IA、IBおよび/またはICの1種類、2種類、3種類または4種類以上、好ましくは、1種類、2種類または3種類の化合物を含む液晶媒体。
【0039】
c)混合物全体における式IAの化合物の割合は5重量%以上、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは15重量%以上である液晶媒体。
【0040】
混合物全体における式IBの化合物の割合は、存在するのであれば、好ましくは5重量%以上、特に10重量%以上、非常に特に好ましくは20重量%以上である。
【0041】
混合物全体における式ICの化合物の割合は、存在するのであれば、好ましくは2重量%以上、特に4重量%以上、非常に特に好ましくは5重量%以上である。
【0042】
本発明による混合物における式IA、IBおよび/またはICの化合物の総割合は、好ましくは5重量%以上、特に10重量%以上、非常に特に好ましくは15重量%以上である。
【0043】
d)式IA、IBおよびICの好ましい化合物は、下式の化合物である。
【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

特に好ましい化合物は、式IA−1およびIC−1の化合物である。
【0046】
式IAの非常に特に好ましい化合物は、下の化合物である。
【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

好ましい混合物は、下式の化合物
【0049】
【化8】

を下式の化合物
【0050】
【化9】

と組み合わせて、それぞれ好ましくは5〜15重量%の濃度で含む。
【0051】
好ましい混合物は、下式の化合物
【0052】
【化10】

を下式の化合物
【0053】
【化11】

と組み合わせて、それぞれ好ましくは5〜15重量%の濃度で含む。
【0054】
e)式IIAおよび/またはIIBの1種類以上の化合物を追加的に含む液晶媒体。
【0055】
【化12】

式中、
は15個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基は無置換であるか、CNまたはCFで単置換されているか、または、ハロゲンで少なくとも単置換されており、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、
【0056】
【化13】

−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、
およびZ2’は、それぞれ互いに独立に、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−を表し、
pは1または2を表し、および
vは1〜6を表す。
【0057】
式IIAおよびIIBの化合物において、Zは同一または異なる意味のいずれを有していてもよい。
【0058】
式IIAおよびIIBの化合物において、Rは、好ましくは、1〜6個のC原子を有するアルキルを表し、特に直鎖状のアルキルであり、好ましくは、CH、C、n−C、n−C、n−C11である。
【0059】
式IIAおよびIIBの化合物において、L、L、LおよびLは、好ましくは、L=L=FおよびL=L=F、更に、L=FおよびL=Cl、L=ClおよびL=F、L=FおよびL=Cl、L=ClおよびL=Fを表す。式IIAおよびIIBにおいて、ZおよびZ2’は、好ましくは、それぞれ互いに独立に、単結合、更に、−C−架橋を表す。
【0060】
式IIBにおいてZが−C−の場合、Z2’は、好ましくは、単結合であり、Z2’が−C−の場合、Zは、好ましくは、単結合である。式IIAおよびIIBの化合物において、(O)C2v+1は、好ましくは、OC2v+1、更に、C2v+1を表す。
【0061】
式IIAおよびIIBの好ましい化合物を下に述べる。
【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】


式IIAおよびIIBの化合物において、Rは、それぞれの場合、好ましくは、6個までのC原子を有する直鎖状のアルキル、特に、CH、C、n−C、n−C、n−C11を表す。L1〜4は、好ましくは、それぞれFを表す。
【0067】
混合物全体における式IIAおよび/またはIIBの化合物の割合は、好ましくは、少なくとも20重量%である。
【0068】
f)式IIIの1種類以上の化合物を追加的に含む液晶媒体。
【0069】
【化19】

式中、
31およびR32は、それぞれ互いに独立に、12個までのC原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を表し、および
【0070】
【化20】

は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−C−、−CF=CF−を表す。
【0071】
式IIIの好ましい化合物を下に述べる。
【0072】
【化21】

式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0073】
本発明による媒体は、好ましくは、式IIIa、式IIIbおよび/または式IIIdの少なくとも1種類の化合物を含む。
【0074】
混合物全体における式IIIの化合物の割合は、好ましくは、少なくとも5重量%である。
【0075】
g)下式の化合物を、好ましくは20重量%未満、特に10重量未満の総量で含む液晶媒体。
【0076】
【化22】

下の化合物を含む本発明による混合物が更に好ましい。
【0077】
【化23】

h)下式の1種類以上の四環式化合物を追加的に含む液晶媒体。
【0078】
【化24】

式中、
7〜10は、それぞれ互いに独立に、請求項2でRに示される意味の1つを有し、および
wおよびxは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表す。
【0079】
i)式Y−1〜Y−6の1種類以上の化合物を追加的に含む液晶媒体。
【0080】
【化25】

式中、R13〜R18は、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し;zおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表し;xは、0、1、2または3を表す。
【0081】
本発明による媒体は、特に好ましくは、式Y−1〜Y−6の1種類以上の化合物を5重量%以上の量で含む。
【0082】
j)下式の1種類以上の化合物を、好ましくは3重量%を超える、特に5重量%以上、非常に特に好ましくは5〜25重量%の量で追加的に含む液晶媒体。
【0083】
【化26】

式中、
19は、1〜7個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを表す。
【0084】
k)式T−1〜T−21の1種類以上のフッ素化されたターフェニル類を追加的に含む液晶媒体。
【0085】
【化27】

【0086】
【化28】

【0087】
【化29】


式中、
Rは1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、mは1〜6である。
【0088】
Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシを表す。
【0089】
本発明による媒体は、好ましくは、式T−1〜T−21のターフェニル類を、2〜30重量%、特に5〜20重量%の量で含む。
【0090】
式T−1、T−2、T−3およびT−21の化合物が特に好ましい。これらの化合物において、Rは、好ましくは、それぞれ1〜5個のC原子を有するアルキル、更に、アルコキシを表す。
【0091】
下式の化合物を含む本発明による媒体が特に好ましい。
【0092】
【化30】

式中、alkylおよびalkylは上で示される意味を有する。
【0093】
混合物のΔn値が0.1以上に意図されている場合、ターフェニル類が、好ましくは、本発明による混合物において使用される。好ましい混合物は、化合物群T−1〜T−21より選択される1種類以上のターフェニル化合物を2〜20重量%で含む。
【0094】
l)式B−1〜B−3の1種類以上のビフェニル類を追加的に含む液晶媒体。
【0095】
【化31】

式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、および
alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0096】
混合物全体における式B−1〜B−3のビフェニル類の割合は、好ましくは、少なくとも3重量%、特に5重量%以上である。
【0097】
式B−1〜B−3の化合物のなかでも、式B−2の化合物が特に好ましい。
【0098】
特に好ましいビフェニル類を下に示す。
【0099】
【化32】

式中、alkylは、1〜6個のC原子を有するアルキル基を表す。本発明による媒体は、特に好ましくは、式B−1aおよび/またはB−2cの1種類以上の化合物を含む。
【0100】
m)式Z−1〜Z−7の少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0101】
【化33】

式中、Rおよびalkylは上で示される意味を有する。
【0102】
n)式O−1〜O−15の少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0103】
【化34】

【0104】
【化35】

式中、RおよびRはR2Aで示される意味を有し、RおよびRは好ましくは、それぞれ互いに独立に、直鎖状のアルキルを表す。
【0105】
好ましい媒体は、式O−1、O−3、O−4、O−9、O−13、O−14および/またはO−15の1種類以上の化合物を含む。
【0106】
o)本発明による好ましい液晶媒体は、例えば、式N−1〜N−5の化合物などのテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含有する1種類以上の物質を含む。
【0107】
【化36】

式中、R1NおよびR2Nは、それぞれ互いに独立に、R2Aに示される意味を有し、好ましくは、直鎖状のアルキル、直鎖状のアルコキシまたは直鎖状のアルケニルを表し、ZおよびZは、それぞれ互いに独立に、−C−、−CH=CH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CHCHCH−、−CHCHCH=CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CFO−、−OCF−、−CH−または単結合を表す。
【0108】
p)好ましい混合物は、式BCのジフルオロジベンゾクロマン化合物、式CRのクロマン類、式PH−1およびPH−2のフッ素化フェナントレン類、式BFのフッ素化ジベンゾフラン類の群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0109】
【化37】

式中、
B1、RB2、RCR1、RCR2、R、Rは、それぞれ互いに独立に、R2Aの意味を有し、cは0、1または2である。本発明による混合物は、好ましくは、式BC、CR、PH−1、PH−2および/またはBFの化合物を、3〜20重量%の量、特に3〜15重量%の量で含む。
【0110】
式BCおよびCRの特に好ましい化合物は、化合物BC−1〜BC−7およびCR−1〜CR−5である。
【0111】
【化38】

【0112】
【化39】

式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、および
alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0113】
式BC−2の1種類、2種類または3種類の化合物を含む混合物が、非常に特に好ましい。
【0114】
q)好ましい混合物は、式Inの1種類以上のインダン化合物を含む。
【0115】
【化40】

式中、
11、R12、R13は、1〜5個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ、アルコキシアルキルまたはアルケニル基を表し、
12およびR13は、ハロゲン、好ましくはFを追加的に表す。
【0116】
【化41】

を表し、
iは、0、1または2を表す。
【0117】
式Inの好ましい化合物は、下で与えられる式In−1〜In−16の化合物である。
【0118】
【化42】

【0119】
【化43】

【0120】
【化44】

式In−1、In−2、In−3の化合物が特に好ましい。
【0121】
本発明による混合物において、式Inおよびサブ式In−1〜In−16の化合物は、好ましくは5重量%以上、特に5〜30重量%、非常に特に好ましくは5〜25重量%の濃度で使用する。
【0122】
r)好ましい混合物は、式L−1〜L−11の1種類以上の化合物を含む。
【0123】
【化45】

【0124】
【化46】

式中、
R、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、請求項1でR2Aに示される意味を有し、alkylは1〜6個のC原子を有するアルキル基を表す。Sは1または2を表す。
【0125】
式L−1およびL−4の化合物が特に好ましい。
【0126】
式L−1〜L−10の化合物は、好ましくは5〜50重量%、特に5〜40重量%、非常に特に好ましくは10〜40重量%の濃度で使用する。
【0127】
本発明は、更に、請求項1〜9のいずれか一項に記載される液晶媒体を誘電体として含有することを特徴とし、ECB、IPSまたはFFS効果を基礎としてアドレスするアクティブマトリクスを有する電気光学的ディスプレイに関する。
【0128】
本発明による液晶媒体は、好ましくは−20℃以下〜70℃以上、特に好ましくは−30℃以下〜80℃以上、非常に特に好ましくは−40℃以下〜90℃以上のネマチック相を有する。本明細書において、表現「ネマチック相を有する」は、対応する温度における低温においてスメクチック相および結晶化が確認されず、他方でネマチック相から加熱しても更に透明化が起きないという意味を有する。低温における検討は対応する温度において流動粘度計中で行なわれ、電気光学的用途に対応する層厚を有する試験用セル中において少なくとも100時間保存して確認する。対応する試験用セル中において−20℃の温度における保存安定性が1000時間以上の場合、媒体はこの温度において安定であると言われる。−30℃および−40℃の温度において、対応する時間は、それぞれ500時間および250時間である。高温においては、従来法により毛細管中で透明点を測定する。
【0129】
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも60Kのネマチック相範囲と、20℃において最大で30mm・s−1の流動粘度ν20を有する。
【0130】
液晶混合物における複屈折率Δnの値は、一般に、0.07および0.16の間、好ましくは、0.08および0.12の間である。
【0131】
本発明による液晶混合物は、約−0.5〜−8.0、特に−3.0〜−6.0のΔεを有し、ただしΔεは誘電異方性を表す。20℃における回転粘度γは、好ましくは、165mPa・s未満、特に140mPa・s未満である。
【0132】
本発明による液晶媒体は、閾電圧(V)について比較的低い値を有する。それらは、好ましくは1.7V〜3.0V、特に好ましくは2.75V以下、非常に特に好ましくは2.4V以下の範囲内である。
【0133】
本発明においては、用語「閾電圧」は、他に明示されない限り、フレデリックス閾値としても知られる容量閾値(V)に関する。
【0134】
加えて、本発明による液晶媒体は、液晶セル中において、特にディスプレイバックライトに曝された後に電圧保持率に対して高い値を有する。
【0135】
一般に、低いアドレス電圧または閾電圧を有する液晶媒体は、より大きいアドレス電圧または閾電圧を有する液晶媒体よりも低い電圧保持率を示し、逆もそうである。
【0136】
本発明において、用語「誘電的に正の化合物」はΔε>1.5を有する化合物を表し、「誘電的に中性の化合物」は−1.5≦Δε≦1.5を有する化合物を表し、「誘電的に負の化合物」はΔε<−1.5を有する化合物を表す。本明細書において、化合物の誘電異方性は10%の化合物を液晶ホストに溶解して決定され、それぞれの場合で20μmの層厚でホメオトロピックおよびホモジニアス表面配向を有する少なくとも1つの試験用セル中で1kHzにおいて、結果として得られる混合物のキャパシタンスを決定する。測定電圧は典型的には0.5V〜1.0Vであるが、検討されるそれぞれの液晶混合物の容量閾値よりも常に低くする。
【0137】
誘電的に正および誘電的に中性の化合物に使用されるホスト混合物はZLI−4792で、誘電的に負の化合物に使用されるホスト混合物はZLI−2857で、いずれもドイツ国メルク社製である。検討される化合物を添加後にホスト混合物の誘電率の変化より検討される個々の化合物の値が得られ、使用される化合物の100%に外挿する。10%の検討される化合物をホスト混合物中に溶解する。これに対して材料の溶解度が低すぎる場合、所望の温度で検討できるようになるまで濃度を段階的に半分にしていく。
【0138】
本発明において示される全ての温度の値は℃である。
【0139】
電圧保持率は、メルク社で製造された試験用セル中で決定される。測定用セルはソーダ石灰ガラス製の基体を有し、ポリイミド配向層(ポリイミドAL60702、JSR社製)を備える。層厚は均一に6.0μmである。透明ITO電極の面積は1cmである。
【0140】
本発明による混合物は、例えば、VAN、MVA、(S)−PVAおよびASVなどの全てのVA−TFT用途に適切である。それらは、更に、負のΔεのIPS (in−plane switching)、FFS(fringe field switching)およびPALC用途に適切である。
【0141】
本発明によるディスプレイにおけるネマチック液晶混合物は、一般に、2種類の成分AおよびBを含み、それ自身、1種類以上の個々の化合物から成る。
【0142】
成分Aは著しい負の誘電異方性を有し、ネマチック相へ−0.5以下の誘電異方性を与える。式IA、IBおよび/またはICの1種類以上の化合物に加え、成分Aは、好ましくは、式IIAおよび/またはIIBの化合物、更に、式IIIの化合物を含む。
【0143】
成分Aの割合は、好ましくは、45および100%の間、特に60および100%の間である。
【0144】
成分Aのためには、−0.8以下のΔεの値を有する1種類(またはそれ以上)の個々の成分(1種類または複数種類)が好ましくは選択される。混合物全体における割合Aが小さくなるほど、この値をより負としなければならない。
【0145】
成分Bは明瞭なネマトゲン性、および20℃において30mm・s−1以下、好ましくは25mm・s−1以下の流動粘度を有する。
【0146】
成分Bにおける特に好ましい個々の化合物は、20℃において18mm・s−1以下、好ましくは12mm・s−1以下の流動粘度を有する非常に低粘度のネマチック液晶である。
【0147】
成分Bはモノトロピック性またはエナンチオトロピック性のネマチックであり、スメクチック相を有さず、液晶混合物において非常に低い温度までスメクチック相の発生を防止することができる。例えば、高いネマトゲン性の各種材料をスメクチック液晶混合物に加える場合、達成されるスメクチック相の抑制の程度を通して、これらの材料のネマトゲン性を比較できる。
【0148】
多数の適切な材料が文献より当業者に知られている。式IIIの化合物が特に好ましい。
【0149】
加えて、また、これらの液晶相は18種類を超える成分を含んでもよく、好ましくは18〜25種類の成分である。
【0150】
その相は、式IA、IBおよび/またはICの化合物、および式IIAおよび/またはIIBおよび任意成分としてIIIの化合物の、好ましくは4〜15種類、特に5〜12種類、特に好ましくは10種類未満の化合物を含む。
【0151】
式IA、IB、ICの化合物、および式IIAおよび/またはIIBおよび任意成分としてIIIの化合物に加え、他の構成成分も、例えば、混合物全体の45%まで、しかし、好ましくは35%まで、特に10%までの量で存在してもよい。
【0152】
他の構成成分は、好ましくは、ネマチックまたはネマトゲン性の物質より選択され、特に、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、安息香酸フェニルまたはシクロヘキシル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルまたはシクロヘキシル類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルナフタレン類、1,4−ビスシクロヘキシルビフェニル類またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニルまたはシクロヘキシルジオキサン類、ハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換桂皮酸類に分類される既知の物質である。
【0153】
このタイプの液晶相の構成成分として適する最も重要な化合物は、式IVで特徴付けることができる。
【0154】
−L−G−E−R10 IV
式中、LおよびEは、それぞれ、1,4−二置換ベンゼンおよびシクロヘキサン環、4,4’−二置換ビフェニル、フェニルシクロヘキサンおよびシクロへキシルシクロヘキサン構造、2,5−二置換ピリミジンおよび1,3−ジオキサン環、2,6−二置換ナフタレン、ジおよびテトラヒドロナフタレン、キナゾリンおよびテトラヒドロキナゾリンにより形成される群からの炭素またはヘテロ環式環構造を表す。
【0155】
Gは、−CH=CH−、−N(O)=N−、−CH=CQ−、−CH=N(O)−、−C≡C−、−CH−CH−、−CO−O−、−CH−O−、−CO−S−、−CH−S−、−CH=N−、−COO−Phe−COO−、−CFO−、−CF=CF−、−OCF−、−OCH−、−(CH−、−(CHO−またはC−C単結合であり、Qはハロゲン、好ましくは塩素または−CNを表し、RおよびR10は、それぞれ、18個までの、好ましくは8個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、あるいは、これらの基の1つは、CN、NC、NO、NCS、CF、SF、OCF、F、ClまたはBrを表す。
【0156】
これらの化合物の殆どにおいて、RおよびR10は互いに異なっており、これらの基の1つは、通常、アルキルまたはアルコキシ基である。また、提案された置換基の他に変わったものも一般的である。多くのそのような物質またはそれらの混合物も商業的に入手できる。全てのこれらの物質は、文献より既知の方法により調製できる。
【0157】
当業者には言うまでもなく、本発明によるVA、IPS、FFSまたはPALC混合物は、例えば、H、N、O、ClおよびFが対応する同位体で置き換えられた化合物も含むことができる。
【0158】
更に、例えば、米国特許第6,861,107号明細書で開示される通りのいわゆる反応性メソゲン(RM)である重合性化合物を、混合物を基礎として好ましくは0.12〜5重量%、特に好ましくは0.2〜2%の濃度で、本発明による混合物に加えることができる。このタイプの混合物は所謂ポリマー安定化VAモード用に使用でき、反応性メソゲンの重合が液晶混合物中で起こるよう意図されている。このための前提条件は、液晶混合物自身が重合性成分を一切含んでいないことである。
【0159】
本発明による液晶ディスプレイの構造は、例えば、欧州特許出願公開第0 240 379号公報に記載される通りの通常の構成に対応する。
【0160】
以下の例は、本発明を制限することなく、本発明を説明することを意図している。上および下において、パーセントのデータは重量パーセントを表し、全ての温度は摂氏度で示される。
【0161】
式IIAおよび/またはIIBの化合物および式IB、ICおよびIDの化合物群からの1種類以上の化合物に加え、本発明による混合物は、好ましくは、下に示す1種類以上の化合物を含む。
【0162】
以下の略称を使用する:
(n、m、z:それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6;(O)C2m+1はOC2m+1またはC2m+1を意味する)。
【0163】
【化47】

【0164】
【化48】

【0165】
【化49】

【0166】
【化50】

【0167】
【化51】

【0168】
【化52】

【0169】
【化53】

【0170】
【化54】

【0171】
【化55】

【0172】
【化56】

【0173】
【化57】

本発明によって使用できる液晶混合物は、それ自体従来の様式で調製される。一般に、より少量で使用される成分の所望の量を、主要な組成を構成する成分中で、有利には昇温して溶解する。有機溶媒、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノール中で成分の溶液を混合し、完全に混合後に、例えば蒸留によって溶媒を再び除去することも可能である。
【0174】
適切な添加剤を利用することで、本発明による液晶相を、例えば、ECB、VAN、IPS、GHまたはASM−VA−LCDと言ったこれまで開示された任意のタイプのディスプレイ中において使用できるように改変できる。
【0175】
また、誘電体は、UV吸収剤、抗酸化剤、ナノ微粒子およびフリーラジカル補足剤などの当業者に既知で文献に記載される更なる添加剤を含むこともできる。例えば、0〜15%の多色性色素、安定化剤またはキラルドーパントを加えることができる。
【0176】
例えば、0〜15%の多色性色素を加えることができ、更に、導電性塩、好ましくは4−ヒドロキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラフェニルボラン酸テトラブチルアンモニウムまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.24巻、249〜258頁(1973年)参照)を、導電性を改良するために添加することができ、誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するための物質を加えることもできる。このタイプの物質は、例えば、ドイツ国特許出願公開第22 09 127、22 40 864、23 21 632、23 38 281、24 50 088、26 37 430および28 53 728号公報に記載されている。
【0177】
表Aに、本発明による混合物に添加できる可能なドーパントを示す。混合物がドーパントを含む場合、0.01〜4重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%の量で使用する。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

例えば、混合物の総量を基礎として10重量%まで、好ましくは0.01〜6重量%、特に0.1〜3重量%の量で、本発明による混合物に添加できる安定剤を下で表Bに示す。
【0180】
【表3】

【0181】
【表4】

【0182】
【表5】

【0183】
【表6】

【実施例】
【0184】
以下の例は、本発明を制限することなく、本発明を説明することを意図している。上および下において、
は20℃における容量閾電圧(V)を表し、
Δnは20℃および589nmで測定される光学異方性を表し、
Δεは20℃および1kHzでの誘電異方性を表し、
cp.は透明点(℃)を表し、
は20℃における「スプレイ」変形の弾性定数(pN)を表し、
は20℃における「ベンド」変形の弾性定数(pN)を表し、
γは20℃で測定される回転粘度(mPa・s)を表し、磁界中での回転法で決定され、
LTSは低温安定性(ネマチック相)を表し、試験セル中で決定され、
VHR(20)は20℃における電圧保持率(%)を表し、
VHR(100)は100℃における5分後の電圧保持率(%)を表し、
VHR(BL)はバックライト曝露後の電圧保持率(%)を表し、
VHR(100、BL)はバックライト曝露後および100℃における5分後の電圧保持率(%)を表し、
商業用CCFL(冷カソード蛍光ランプ)バックライトである。
【0185】
閾電圧の測定用に使用されるディスプレイは、20μm離れている2枚の平坦で平行な外板と、液晶のホメオトロピック配向をもたらすSE−1211(日産化学製)の配向層が外板の内側上にオーバーレイされた電極層とを有している。
【0186】
他に明言しない限り、本出願における全ての濃度は対応する混合物または混合物成分に関する。全ての物理的特性は、「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月刊、メルク社、ドイツ国に記載される通りに決定され、他に明言しない限り、20℃の温度を適用する。
【0187】
<混合物例>
<例1>
【0188】
【表7】

<例2>
【0189】
【表8】

<例3>
【0190】
【表9】

<例4>
【0191】
【表10】

<例5>
【0192】
【表11】

<例6>
【0193】
【表12】

<例7>
【0194】
【表13】

<例8>
【0195】
【表14】

<例9>
【0196】
【表15】

<例10>
【0197】
【表16】

<例11>
【0198】
【表17】

<例12>
【0199】
【表18】

<例13>
【0200】
【表19】

<例14>
【0201】
【表20】

<例15>
【0202】
【表21】

<比較例1>
【0203】
【表22】

<例16>
【0204】
【表23】

<例17>
【0205】
【表24】

<例18>
【0206】
【表25】

それぞれの場合において、V18a〜iで述べられる個々の物質を1種類が20%で上に示されるホスト中に組み込み、バックライト曝露後のVHR(100)(%)を測定する。
【0207】
【表26】

バックライト曝露後のホスト中において、式IA、IBおよびICの化合物は参照物質よりも高い電圧保持率を示すことが表に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IA、IBおよびICの化合物群より選択される少なくとも1種類の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化1】

(式中、
1A、R1B、R2BおよびR1Cは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有するアルキル基を表し、
2AおよびR2Cは、それぞれ互いに独立に、6個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基は無置換であるか、CNまたはCFで単置換されているか、または、ハロゲンで少なくとも単置換されており、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、
【化2】


−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−OC−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、また、LがFであるときR2Cはハロゲン、好ましくはFまたはClを表してもよく、
Lは、HまたはFを表し、
m、n、oおよびpは、それぞれ互いに独立に、0、1または2を表し、
bは、0または1を表す。)
【請求項2】
式IIAおよび/またはIIBの1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶媒体。
【化3】

(式中、
は15個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は無置換であるか、CNまたはCFで単置換されているか、または、ハロゲンで少なくとも単置換されており、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、
【化4】

−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、
およびZ2’は、それぞれ互いに独立に、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−を表し、
pは1または2を表し、および
vは1〜6を表す。)
【請求項3】
式IIIの1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。
【化5】

(式中、
31およびR32は、それぞれ互いに独立に、12個までのC原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を表し、および
【化6】

は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−C−、−CF=CF−を表す。)
【請求項4】
該媒体は式IA−1〜IC−3の少なくとも1種類の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化7】

【化8】

(式中、R2A、R2CおよびLは、請求項1で示される意味を有する。)
【請求項5】
該媒体は下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化9】

(式中、
7〜10は、それぞれ互いに独立に、請求項2でRに示された意味の1つを有し、および
wおよびxは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表す。)
【請求項6】
該媒体は式T−1〜T−21の1種類以上のターフェニル類を追加的に含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化10】

【化11】

【化12】

(式中、
Rは1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、および
mは1〜6を表す。)
【請求項7】
該媒体は式O−1〜O−14の1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化13】

【化14】

(式中、
およびRは、それぞれ互いに独立に、請求項1でR2Aに示された意味を有する。)
【請求項8】
該媒体は式Inの1種類以上のインダン化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【化15】

(式中、
11、R12、R13は、1〜5個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ、アルコキシアルキルまたはアルケニル基を表し、
12およびR13は追加的にハロゲンを表し、
【化16】

を表し、

iは、0、1または2を表す。)
【請求項9】
混合物全体における式IA、IBおよび/またはICの化合物の割合は5重量%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項10】
式IA、IBおよびICの少なくとも1種類の化合物を少なくとも1種類の更なる液晶化合物と混合し、添加剤を加えてもよいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶媒体を調製する方法。
【請求項11】
電気光学的ディスプレイにおける請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶媒体の使用。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶媒体を誘電体として含有することを特徴とするアクティブマトリクスアドレスを有する電気光学的ディスプレイ。
【請求項13】
ECB、PALC、FFSまたはIPSディスプレイであることを特徴とする請求項12に記載の電気光学的ディスプレイ。

【公表番号】特表2010−535910(P2010−535910A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520462(P2010−520462)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006500
【国際公開番号】WO2009/021671
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】