説明

液晶媒体

【課題】非常に大きい比抵抗値および低いしきい値電圧を同時に有する液晶媒体、特にMLC、TNまたはSTNディスプレイ用の液晶媒体を提供する。
【解決手段】正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体であって、1種または2種以上の式Iで表わされる新規な化合物を含有することを特徴とする。


式中、R1は、炭素原子1〜15を有するアルキル基またはアルコキシ基であり、Xは、F、Cl等であり、L1およびL2は、それぞれ相互に独立し、HまたはF等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体、その電気光学用途における使用、およびこの媒体を含有するディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は原則的に、表示デバイスに誘電体として使用される。この理由は、このような物質の光学的物性は印加電圧により変更することができるからである。液晶に基づく電気光学デバイスは当業者に広く充分に知られており、各種効果に基づくことができる。このようなデバイスの例には、動的散乱を有するセル、DAP(整列相の変形)セル、ゲスト/ホストセル、ねじれネマティック構造を有するTNセル、STN(スーパーツィストネマティック)セル、SBE(超複屈折効果)セルおよびOMI(光学モード干渉)セルがある。最も慣用の表示デバイスは、シャット−ヘルフリッヒ(Schadt-Helfrich)効果に基づいており、ねじれネマティック構造を有する。
【0003】
液晶材料は、良好な化学的安定性および熱に対する安定性を有し、また電場および電磁波照射線に対する良好な安定性を有していなければならない。さらにまた、液晶材料は、低粘度を有するべきであり、またセルにおいて、短いアドレス時間、低いしきい値電圧および大きいコントラストを付与しなければならない。
【0004】
液晶はまた、通常の動作温度において、すなわち室温以上ないし室温以下のできるだけ広い温度範囲において、適当な中間相、例えば前記セル用のネマティックまたはコレステリック中間相を有していなければならない。液晶は一般に、複数の成分の混合物として使用されることから、これらの成分は相互に容易に混和できるものであることが重要である。さらに別の性質、例えば導電性、誘電異方性および光学異方性などは、セルのタイプおよび用途分野に応じて種々の要件を満たしていなければならない。一例として、ねじれネマティック構造を有するセル用の材料は、正の誘電異方性および小さい導電率を有していなければならない。
【0005】
一例として、各画素の切換えに集積非線型素子を備えたマトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)の場合、大きい正の誘電異方性、広いネマティック相、比較的小さい複屈折率、非常に大きい比抵抗、良好な紫外線および温度安定性、ならびに低い蒸気圧を有する媒体が望まれる。
この型式のマトリックス液晶ディスプレイは公知である。各画素それぞれの切換えに使用することができる非線型素子の例には、能動的素子(すなわち、トランジスター)がある。この素子はまた、「アクティブマトリックス」の用語で表わされ、二つのタイプに分けることができる:
1.基板としてのシリコンウエファー上のMOS(金属酸化物半導体)または別のダイオード。
2.基板としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT類)。
【0006】
基板材料として単結晶シリコンを使用すると、種々の部分表示をモジュラー集合させてさえも、接合部分に問題が生じることから、ディスプレイの大きさが制限される。
好適であって、さらに有望なタイプ2の場合、使用される電気光学効果は通常、TN効果である。この効果は2種のテクノロジイ間で相違点を有する:すなわち化合物半導体、例えばCdSeなどを含有するTFT類、または多結晶形または無定形シリコンを基材とするTFT類である。後者の技術に関して、格別の研究が世界的規模で行われている。
【0007】
TFTマトリックスは、当該ディスプレイの一枚のガラス板の内側面に適用され、他方、もう一枚のガラス板の内側面は透明な対向電極を担持している。画素電極の大きさに比較すると、TFTは非常に小さく、また像に対してほとんど有害な効果を有していない。このテクノロジイはまた、各フィルターが切換え可能な画素に対して反対に位置するような方式で赤、緑および青フィルターがモザイク状に配列されている、全色コンパティブルディスプレイにまで発展させることができる。
TFTディスプレイは通常、透過光内に交差偏光板を備えたTNセルとして動作し、裏側から照射される。
【0008】
本明細書において、MLCディスプレイの用語は、集積非線型素子を備えたマトリックスディスプレイの全部を包含する。すなわちアクティブマトリックスに加えて、またバリスターまたはダイオード(MIM=金属−絶縁体−金属)などの受動的素子を備えたディスプレイが包含される。
この方式のMLCディスプレイは、TV用途に(例えば、ポケット型テレビ受像機)またはコンピューター用途(ラップトップ型)または自動車または航空機構築用の高度情報ディスプレイ用に特に適している。コントラストの角度依存性および応答時間に関連する問題に加えて、MLCディスプレイでは、液晶混合物の不充分に高い比抵抗値による問題が生じる(非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0009】
この抵抗値が減少するほど、MLCディスプレイのコントラストは低下し、残像消去の問題が生じることがある。液晶混合物の比抵抗値は一般に、MLCディスプレイの内部表面との相互作用によって、MLCディスプレイの寿命全般をとおして一般に減少させることから、許容される動作寿命を得るためには、大きい(初期)抵抗値は非常に重要である。特に、低電圧混合物の場合、非常に大きい比抵抗値を得ることは従来、不可能であった。温度上昇、ならびに加熱および/または紫外線照射線に露光した後、この比抵抗値の増加をできるだけ小さくすることがまた重要である。従来技術からの混合物の低温物性もまた、特に不利である。低温でさえも、結晶化および/またはスメクティック相が生成せず、また粘度に対する温度依存性ができるだけ小さいことが要求される。しかるに、従来技術のMLCディスプレイは、現在の要件を満たすものではない。
【0010】
裏側からの照射を用いる液晶ディスプレイ、すなわち透過により、および所望により、半透過方式により動作する液晶ディスプレイに加えて、反射型液晶ディスプレイに特別の関心が向けられている。これらの反射型液晶ディスプレイは、情報表示に周辺光を用いる。従って、これらのディスプレイは、対応する大きさおよび解像力を有するバックライト型液晶ディスプレイに比較して、エネルギー消費量が格別に少ない。TN効果は、非常に良好なコントラストを有することを特徴とするものであることから、この方式の反射型液晶ディスプレイは、明るい周辺状況下においてさえも、容易に読むことができる。これは、例えば腕時計およびポケット型計算機で用いられているように、簡単な反射型TNディスプレイとしてすでに知られている。
【0011】
しかしながら、この原理はまた、高品質で高解像力を有するアクティブマトリックス型ディスプレイ、例えばTFTディスプレイにもまた適用することができる。この場合、すでに慣用の透過型TFT−TNディスプレイの場合におけるように、小さい光学リターデーション(d・△n)を得るためには、低複屈折率(△n)を有する液晶の使用が必要である。この小さい光学リターデーションは、通常では許容されるコントラストの少ない視野角依存性をもたらす(特許文献1参照)。光が通過する有効層厚さが、同一層厚さを有する透過型ディスプレイのほぼ2倍の大きさを有することから、反射型ディスプレイでは、透過型ディスプレイに比較して、小さい複屈折率を有する液晶の使用がさらに重要である。
【0012】
従って、広い動作温度範囲、低温においてさえも短い応答時間、および低いしきい値電圧を有すると同時に、非常に大きい比抵抗値を有し、またこれら従来の欠点を有していないか、または有していても減少された程度である、MLCディスプレイに対する多大の要求が継続している。
TN(シャット−ヘルフリッヒ)セルの場合、このセルには下記の利点を助長する媒体が望まれる:
−拡大したネマティック相範囲(特に、低温に降下した場合でも)
−超低温においてさえも安定な保存性
−超低温における駆動能力(野外用途、自動車、航空機)
−紫外線照射線に対する増大した抵抗性(より長い寿命)。
【0013】
従来技術から利用することができた媒体は、これらの利点を達成することができると同時に、他のパラメーターを保有するものではない。
スーパーツイスト(STN)セルの場合、より大きい時分割特性および/またはより低いしきい値電圧および/またはより広いネマティック相範囲(特に、低温における)が可能である媒体が望まれる。この目的のために利用できるパラメーター(透明点、スメクティック−ネマティック転移点または融点、粘度、誘電パラメーター、弾性パラメーター)の幅のさらなる拡大が格別に望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ドイツ国特許第3022818号明細書(DE3022818)
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】トガシ,エス.(TOGASHI,S.)、セキグチ,ケイ.(SEKIGUCHI,K)、タナベ,エイチ.(TANABE,H)、ヤマモト,イー.(YAMAMOTO,E)、ソリマチ,ケイ.(SORIMACHI,K)、タジマ,イー.(TAJIMA,E.)、ワタナベ,エイチ.(WATANABE,H)、シミズ,エイチ.(SHIMIZU,H)著、プロク.ユーロディスプレイ(Proc.Eurodisplay )84,1984年9月、「ア 210−288 マトリックス エルシーディ コントロールド バイ ダブル ステージ ダイオード リングス」(A 210−288 Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings),141頁以降、パリ(Paris)
【0016】
【非特許文献2】ストロマー,エム.(STROMER,M)著、プロク.ユーロディスプレイ(Proc.Eurodisplay )84,1984年9月、「デザイン オブ シン フィルム トランジスタース フォア マトリックス アドレッシング オブ テレビジョン リキド クリスタル ディスプレイス」(Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays)、145頁以降、パリ(Paris)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、前記欠点を有していないか、または有していても小さい程度であり、また好ましくは非常に大きい比抵抗値および低いしきい値電圧を同時に有する液晶媒体、特にMLC、TNまたはSTNディスプレイ用の液晶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ここに、本発明による媒体をディスプレイで使用すると、この課題を達成することができることが見出された。本発明による媒体は大きい誘電異方性値、および非常に小さい光学異方性値を有する点で際立っている。同時に、この媒体は非常に低いしきい値電圧および非常に低い回転粘度γ1を有する。
従って、本発明は正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体に関し、この媒体は、1種または2種以上の式Iで表わされる化合物を含有することを特徴とするものである:
【0019】
【化1】

【0020】
式中、
1は、炭素原子1〜15を有し、ハロゲン化されているか、または未置換のアルキル基またはアルコキシ基であり、これらの基中に存在する1個または2個以上のCH2 基は、それぞれ相互に独立し、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−C≡C−、−C=C−、−O−、−CO−O−または−O−CO−により置き換えられていてもよく、
Xは、F、Cl、CNまたはSF5であり、もしくはそれぞれ6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、および
1およびL2は、それぞれ相互に独立し、HまたはFである。
【0021】
式Iで表わされる化合物は、チッソ(Chisso)保護権EP0881221およびEP0844229A1に包含される。
これらの保護権利下に開示されている混合物は、大きい△n値または低いしきい値電圧および同時に低い透明点と組み合わされている非常に高いしきい値電圧および比較的低い透明点を有するという欠点を有する。
本発明の目的は、比較的高い透明点、低いしきい値電圧、好ましくは≦1.3V、特に<1.25Vおよび非常に特に好ましくは<1.00Vのしきい値電圧を有する液晶混合物を提供する。△n値は好ましくは、0.06〜0.12の範囲にあるべきである。
【0022】
驚くべきことに、式Iで表わされる化合物を含有する液晶混合物が高い透明点および低いしきい値電圧を有することが見出された。本発明はまた、式Iで表わされる化合物に関する。式Iにおいて、L1=L2=Fである化合物、さらにまたL1=L2=Hである化合物は特に好ましい化合物として挙げられる。式Iにおいて、L1=L2=FおよびX=FまたはOCHF2である化合物は、非常に特に好ましい化合物として挙げられる。Xは好ましくは、CN、F、SF5、OCHF2、OC25、OC37、OCHFCF3、OCF2CHFCF3またはOCF3である。
【発明の効果】
【0023】
式Iで表わされる化合物は、広い用途範囲を有する。置換基を選択することによって、これらの化合物は液晶媒体を主として構成する基材として使用することができる;しかしながら、式Iで表わされる化合物はまた、別種の化合物からの液晶基材に添加して、例えばこの種の誘電体の誘電異方性および/または光学異方性を変えることができ、および/またはそのしきい値電圧および/またはその粘度を最適にすることができる。
式Iで表わされる化合物は、純粋な状態で無色であり、また電気光学用途に対して好ましく位置する温度範囲で液晶中間相を形成する。これらの化合物は化学物質、熱および光に対して安定である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
式I中に存在するR1がアルキル基および/またはアルコキシ基である場合、この基は直鎖状または分枝鎖状であることができる。この基は好ましくは直鎖状であって、炭素原子2個、3個、4個、5個、6個または7個を有し、従って好適例には、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシまたはヘプチルオキシがあり、さらにまたメチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、メトキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシまたはテトラデシルオキシであることができる。
【0025】
オキサアルキル基は好ましくは、直鎖状の2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−(=エトキシメチル)または3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニル、もしくは2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0026】
1がアルキル基であって、この基中に存在する1個のCH2基が−CH=CH−により置き換えられている場合、この基は直鎖状または分枝鎖状であることができる。この基は好ましくは、直鎖状であって、炭素原子2〜10個を有する。従って、この基は特に、ビニル、プロプ(prop)−1−または−2−エニル(enyl)、ブト(but)−1−、−2−または−3−エニル、ペント(pent)−1−、−2−、−3−または−4−エニル、ヘキシ(hex)−1−、−2−、−3−、−4−または−5−エニル、ヘプト(hept)−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−エニル、オクト(oct)−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−または−7−エニル、ノン(non)−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−エニル、もしくはデク(dec)−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−、−8−または−9−エニルである。
【0027】
1がアルキル基であって、この基中に存在する1個のCH2基が−O−により置き換えられており、および1個のCH2基が−CO−により置き換えられている場合、これらの基好ましくは、隣接している。従って、これらの基はアシルオキシ基−CO−O−またはオキシカルボニル基−O−CO−を含有する。これらの基は好ましくは、直鎖状であって、炭素原子2〜6個を有する。従って、これらの基は特に、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセトキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセトキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセトキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピルまたは4−(メトキシカルボニル)プチルである。
【0028】
1がアルキル基であって、この基中に存在する1個のCH2基が未置換または置換基を有する−CH=CH−により置き換えられおり、および隣接するCH2基がCOまたはCO−OまたはO−COにより置き換えられている場合、この基は直鎖状または分枝鎖状であることができる。この基は好ましくは、直鎖状であって、炭素原子4〜12個を有する。従って、これらの基は特に、アクリロイルオキシメチル、2−アクリロイルオキシエチル、3−アクリロイルオキシプロピル、4−アクリロイルオキシブチル、5−アクリロイルオキシペンチル、6−アクリロイルオキシヘキシル、7−アクリロイルオキシヘプチル、8−アクリロイルオキシオクチル、9−アクリロイルオキシノニル、10−アクリロイルオキシデシル、メタアクリロイルオキシメチル、2−メタアクリロイルオキシエチル、3−メタアクリロイルオキシプロピル、4−メタアクリロイルオキシブチル、5−メタアクリロイルオキシペンチル、6−メタアクリロイルオキシヘキシル、7−メタアクリロイルオキシヘプチル、8−メタアクリロイルオキシオクチルまたは9−メタアクリロイルオキシノニルである。
【0029】
1がアルキル基またはアルケニル基であって、1個のCNまたはCF3により置換されている場合、この基は好ましくは、直鎖状である。CNまたはCF3による置換は、いずれか所望の位置であることができる。
1がアルキル基またはアルケニル基であって、少なくとも1個のハロゲンにより置換されている場合、この基は好ましくは、直鎖状であり、またハロゲンは好ましくは、FまたはClである。多置換されている場合、ハロゲンは好ましくは、Fである。生成する基はまた、過フッ素化されている基を包含する。1個の置換基を有する場合、このフッ素または塩素置換基は、いずれか所望の位置に存在することができるが、好ましくはω−位置に存在する。
【0030】
分枝鎖状側鎖基R1を有する化合物は、慣用の液晶基材中で良好な溶解性を有することから、場合により重要であるが、特にこれらが光学活性である場合、カイラルドープ剤として重要である。この種のスメクティック化合物は、強誘電性材料の成分として適している。
この種の分枝鎖状基は一般に、1個よりも多くない鎖分枝を有する。好適分枝鎖状基R1は、イソプロピル、2−ブチル(=1−メチルプロピル)、イソブチル(=2−メチルプロピル)、2−メチルブチル、イソペンチル(=3−メチルブチル)、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、イソプロポキシ、2−メチルプロポキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキシルオキシ、1−メチルヘキシルオキシおよび1−メチルヘプチルオキシである。
【0031】
1がアルキル基であって、この基中に存在する2個または3個以上のCH2基が−O−および/または−CO−O−により置き換えられている場合、この基は、直鎖状または分枝鎖状であることができる。この基は好ましくは、分枝鎖状であって、炭素原子3〜12個を有する。従って、この基は特に、ビスカルボキシメチル、2,2−ビスカルボキシエチル、3,3−ビスカルボキシプロピル、4,4−ビスカルボキシブチル、5,5−ビスカルボキシペンチル、6,6−ビスカルボキシヘキシル、7,7−ビスカルボキシヘプチル、8,8−ビスカルボキシオクチル、9,9−ビスカルボキシノニル、10,10−ビスカルボキシデシル、ビス(メトキシカルボニル)メチル、2,2−ビス(メトキシカルボニル)エチル、3,3−ビス(メトキシカルボニル)プロピル、4,4−ビス(メトキシカルボニル)ブチル、5,5−ビス(メトキシカルボニル)ペンチル、6,6−ビス(メトキシカルボニル)ヘキシル、7,7−ビス(メトキシカルボニル)ヘプチル、8,8−ビス(メトキシカルボニル)オクチル、ビス(エトキシカルボニル)メチル、2,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)プロピル、4,4−ビス(エトキシカルボニル)ブチルまたは5,5−ビス(エトキシカルボニル)ペンチルである。
【0032】
式Iで表わされる化合物は、刊行物(例えば、Houben−Weyl著、Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)、Georg−Thieme出版社、Stuttgartなどの標準的学術書)に記載されているようなそれ自体公知の方法により、当該反応に適する公知の反応条件下に製造することができる。本明細書には詳細に記載されていないが、それ自体は公知である変法を用いることもできる。一例として、式Iで表わされる化合物は、下記のとおりに製造することができる。
【0033】
スキーム 1
【化2】

【0034】
本発明はまた、電気光学ディスプレイ(特に、フレームとともにセルを形成している2枚の面平行外側基板、外側基板上の各画素を切換えるための集積非線型素子、およびセル内に位置している正の誘電異方性および大きい比抵抗値を有するネマティック液晶混合物を備えたSTNまたはMLCディスプレイ)に関し、およびこれらの媒体の電気光学用途における使用に関する。
【0035】
本発明による液晶混合物は、利用できるパラメーター範囲の格別の拡大を可能にする。
透明点、低温における粘度、熱および紫外線安定性、ならびに誘電異方性の達成される組合せは、従来技術からの従来の混合物に比較して、はるかに優れている。
高い透明点、低温におけるネマティック相および同時に、小さい△nにかかわる要件は、従来では、不適当な程度に達成されていたのみであった。例えばZLI−3119などの混合物は匹敵する透明点および匹敵する好ましい粘度を有するが、これらの△εは+3であるのみである。別種の混合物系は、匹敵する粘度および△ε値を有するが、60℃の領域の透明点を有するのみである。
【0036】
本発明による液晶混合物は、−20℃、好ましくは−30℃、特に好ましくは−40℃にまで低下したネマティック相を保有しながら、60℃以上、好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上の透明点を得ることができると同時に、≧8、好ましくは≧10の誘電異方性値△εおよび大きい比抵抗値の獲得を可能にし、これにより優れたSTNおよびMLCディスプレイを得ることが可能にされる。特に、本混合物は低い動作電圧を有するという特徴を有する。TNしきい値電圧は、1.3V以下、好ましくは1.25V以下、特に好ましくは<1.0Vである。
【0037】
本発明による混合物は、その成分を適当に選択することによってまた、その他の有利な性質を保有しながら、より高いしきい値電圧においてより高い透明点(例えば、110℃以上)を得ることができ、またはより低いしきい値電圧においてより低い透明点を得ることができる。同様に、粘度を対応して僅かに高めると、大きい△ε値を有し、従って低いしきい値電圧を有する混合物を得ることができる。
【0038】
本発明によるMLCディスプレイは、グーチ(Gooch)およびタリイ(Tarry)の第一次透過率極小値で好ましく動作する(C.H.GoochおよびH.A.Tarry著、Electron.Lett.10、2−4、1974;C.H.GoochおよびH.A.Tarry著、Appl.Phys.Vol.8、1575−1584、1975)。この場合、特に好ましい電気光学的性質、例えば特性曲線の大きい急峻度およびコントラストの小さい角度依存性に加えて(ドイツ国特許3022818)、第二次透過率極小値において、類似ディスプレイにおけるしきい値電圧と同一のしきい値電圧において、より小さい誘電異方性でも充分である。これは、シアノ化合物を含有する混合物の場合に比較し、本発明による混合物を使用することによって、第一次極小値で格別に大きい比抵抗値を得ることを可能にする。各成分およびそれらの重量割合を適当に選択することによって、MLCディスプレイの既定の層厚さに要求される複屈折率の設定に、当業者は簡単で常習的方法を用いることができる。
【0039】
20℃における流動粘度V20は好ましくは、<60mm2/秒、特に好ましくは<50mm2/秒である。本発明による混合物の20℃における回転粘度γ1は、好ましくは<220mPa・秒、特に好ましくは<200mPa・秒である。ネマティック相範囲は、好ましくは少なくとも90°、特に少なくとも100°である。この範囲は好ましくは、少なくとも−20°から+80°まで拡大される。
【0040】
液晶ディスプレイには、短い応答時間が望まれる。これは特に、ビデオ再生することができるディスプレイに当てはまる。この種のディスプレイの場合、長くて25msの応答時間(合計:ton+toff)が要求される。この応答時間の上限は、像リフレッシュ周波数(image refresh frequency)によって決定される。回転粘度γ1に加え、チルト角はまた、応答時間に影響を与える。特に、式Iで表わされる化合物を>20%の量で含有する混合物は、Merck KGaAからの市販品であるZLI−4792に比較し、>2.5°、好ましくは>3.0°のチルト角を示す。
【0041】
電圧保持率(HR)の測定値は、式Iで表わされる化合物を含有する本発明による混合物が、式Iで表わされる化合物の代わりに、例えば式:
【化3】

で表わされるシアノフェニルシクロヘキサン化合物または式:
【化4】

で表わされるエステル化合物を含有する類似混合物に比較して、温度の上昇に伴うHRの減少を格別に小さくすることが証明された[S.Matsumoto等著、Liquid Crystals 5、1320(1989);K.Niwa等著、Proc.SID Conference,San Francisco、1984年6月、304頁(1984年);G.Weber等著、Liquid Crystals 5、1381(1989)]。
【0042】
本発明による混合物の紫外線安定性はまた、格別に良好である。すなわち、これらの混合物は紫外線に露光しても、HRの格別に小さい減少を示す。
式Iで表わされる特に好ましい化合物は、下記式I−1〜I−10で表わされる化合物である:
【0043】
【化5】

【0044】
各式中、R1は式Iに定義されているとおりである。
これらの好適化合物の中で、式I−1、式I−2、式I−3および式I−4で表わされる化合物は特に好適な化合物として挙げられ、特に式I−1および式I−2で表わされる化合物は特に好適な化合物として挙げられる。
本発明はさらにまた、式I−1〜I−8において、R1が上記定義のとおりである化合物に関する。R1は好ましくは、6個までの炭素原子を有する直鎖状アルキル基またはアルケニル基である。特に好適な化合物として、下記化合物は特に好ましい化合物として挙げられる:
【0045】
【化6】

式中、
alkylは、CH3、C25、n−C37、n−C49、n−C5H11またはn−C613である。
【0046】
好適態様を以下に示す:
−媒体は、1種、2種または3種以上の式I−1〜I−9で表わされる化合物を含有する;
−媒体は、1種または2種以上の一般式II〜VIからなる群から選択される化合物をさらに含有する:
【0047】
【化7】

【0048】
上記各式中、各基は、下記に定義されているとおりである:
0は、それぞれ9個までの炭素原子を有するn−アルキル基、アルコキシ基、オキサアルキル基、フルオロアルキル基またはアルケニル基であり、
0は、FまたはClであり、もしくはそれぞれ6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化オキサアルキル基、ハロゲン化アルケニルオキシ基またはハロゲン化アルコキシ基であり、
0は、−C24−、−CF=CF−、−C24−、−(CH24−、−OCH2−、−CH2O−、−CF2O−または−OCF2−であり、
1〜Y4は、それぞれ相互に独立し、HまたはFであり、
rは、0または1である。
式IVで表わされる化合物は、好ましくは下記化合物である:
【0049】
【化8】

【0050】
−媒体は、1種または2種以上の一般式VII〜XIIからなる群から選択される化合物をさらに含有する:
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
上記各式中、R0、X0およびY1-4は、それぞれ相互に独立し、請求項3に定義されているとおりである。X0は好ましくは、F、Cl、CF3、OCF3またはOCHF2である。R0は好ましくは、それぞれ6個までの炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、オキサアルキル基、フルオロアルキル基またはアルケニル基である。
−媒体は、1種または2種以上の下記式Ea〜Edで表わされる化合物をさらに含有する:
【0053】
【化11】

【0054】
上記各式中、R0は請求項3に定義されているとおりである。
−式Ea〜Edで表わされる化合物の割合は、好ましくは10〜30重量%、特に15〜25重量%である;
−全体としての混合物中の式I〜VIで表わされる化合物全体の割合は、少なくとも50重量%である;
−全体としての混合物中の式Iで表わされる化合物の割合は、0.5〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%である;
−全体としての混合物中の式II〜VIで表わされる化合物の割合は、30〜80重量%である;
【0055】
【化12】

【0056】
−媒体は、式II、式III、式IV、式Vおよび/または式VIで表わされる化合物を含有する;
−R0は、炭素原子2〜7個を有する直鎖状アルキル基またはアルケニル基である;
−媒体は基本的に、式I〜VIおよび式XIIIで表わされる化合物からなる;
−媒体は、好ましくは下記一般式XIV〜XVIIIからなる群から選択される化合物をさらに含有する:
【0057】
【化13】

【0058】
上記各式中、R0およびX0は上記定義のとおりである。1,4−フェニレン環は、CN、塩素またはフッ素により置換されていてもよい。この1,4−フェニレン環は好ましくは、1個または2個以上のフッ素原子により置換されている。
−媒体は、1種、2種、3種または4種以上、好ましくは2種または3種の下記式で表わされる化合物をさらに含有する:
【0059】
【化14】

上記各式中、“alkyl”および“alkyl”は、下記定義のとおりである。
本発明の混合物中の式O1および/またはO2で表わされる化合物の割合は、好ましくは5〜10重量%、特に1から12重量%、非常に特に好ましくは、3〜10重量%である。
【0060】
−媒体は、好ましくは式IVaで表わされる化合物を5〜35重量%の割合で含有する。
−媒体は好ましくは、1種、2種または3種の式IVaにおいて、X0がFまたはOCF3である化合物を含有する。
−媒体は好ましくは、1種または2種以上の式IIa〜IIgで表わされる化合物を含有する:
【0061】
【化15】

【0062】
【化16】

上記各式中、R0は上記定義のとおりである。
【0063】
式IIa〜IIgで表わされる化合物において、R0は好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルまたはn−ペンチルである。
−媒体は好ましくは、1種または2種以上の下記式で表わされる化合物を含有する:
【化17】

【0064】
【化18】

【0065】
【化19】

各式中、R0は上記定義のとおりである。
【0066】
本発明による媒体はさらに好ましくは、1種または2種以上の式DD−1および/または式DD−2で表わされる化合物を含有する:
【化20】

【0067】
式中、Ra-dはそれぞれ相互に独立し、炭素原子1〜6個を有する直鎖状アルキル基またはアルコキシ基である。
本発明による混合物中の式DD−1および/または式DD−2で表わされる化合物の割合は好ましくは、0〜10重量%、特に0.1〜8重量%、特に好ましくは0.5〜4重量%である。
−(I):(II+III+IV+V+VI)重量比は好ましくは、1:10〜10:1である。
−媒体は基本的に、一般式I〜XIIIからなる群から選択される化合物からなる。
−全体としての混合物中の、式IVbおよび/または式IVcにおいて、X0がフッ素であり、およびR0がCH3、C25、n−C37、n−C49またはn−C511である化合物の割合は、2〜20重量%、特に2〜15重量%である。
【0068】
−媒体は好ましくは、式II〜VIにおいて、R0がメチルである化合物を含有する。本発明による混合物は、特に好ましくは下記式で表わされる化合物を含有する:
【化21】

【0069】
−媒体は好ましくは、1種、2種または3種以上の、好ましくは1種または2種の下記式で表わされるジオキサン化合物を含有する:
【化22】

【0070】
各式中、R0は上記定義のとおりである。
本発明による混合物中のこれらのジオキサン化合物D−1および/またはD−2の割合は、好ましくは0〜30重量%、特に5〜25重量%、非常に特に好ましくは8〜20重量%である。
−媒体は好ましくは、1種、2種または3種以上の、好ましくは1種または2種の式P−1〜P−4で表わされるピラン化合物を含有する:
【0071】
【化23】

各式中、R0は上記定義のとおりである。
【0072】
媒体は好ましくは、1種、2種または3種以上の式Z1〜Z7で表わされる二環状化合物を含有する:
【化24】

各式中、R1aおよびR2aはそれぞれ相互に独立し、H、CH3、C25またはn−C37であり、R0、alkylおよびalkylは請求項3に定義されているとおりであるか、または下記定義のとおりである。
上記二環状化合物の中で、化合物Z−1、Z−2、Z−5およびZ−6は特の好適な化合物として挙げられる。
【0073】
−媒体は、1種、2種または3種以上の式AN1〜AN11で表わされる縮合環を有する化合物をさらに含有する:
【化25】

【0074】
【化26】

【0075】
各式中、R0は上記定義のとおりである。
−本発明による媒体は特に、>75℃の透明点および<1.2Vのしきい値電圧を有する点で際立っている。
慣用の液晶材料と、特に1種または2種以上の式II、式III、式IV、式Vおよび/または式VIで表わされる化合物と混合されている式Iで表わされる化合物は、比較的少ない割合でさえも、しきい値電圧の低下および低い複屈折値をもたらすと同時に、低いスメクティック−ネマティック転移温度を有する広いネマティック相を生じさせ、従って保存寿命が改良されることが見出された。
【0076】
「alkyl」または「alkyl*」の用語は、炭素原子1〜7個を有する直鎖状および分枝鎖状のアルキル基を包含し、特に直鎖状基、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。炭素原子1〜5個を有する基は一般に好適である。
【0077】
「alkenyl」の用語は、炭素原子2〜7個を有する直鎖状および分枝鎖状のアルケニル基、特に直鎖状基を包含する。好適アルケニル基には、C2−C7−1E−アルケニル、C4−C7−3E−アルケニル、C5−C7−4−アルケニル、C6−C7−5−アルケニルおよびC7−6−アルケニル、特にC2−C7−1E−アルケニル、C4−C7−3E−アルケニルおよびC5−C7−4−アルケニルがある。特に好適なアルケニル基の例には、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどがある。5個までの炭素原子を有する基は一般に、好適である。
【0078】
「フルオロアルキル」の用語は好ましくは、末端フッ素を有する直鎖状基、すなわちフルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルを包含する。しかしながら、別の位置のフッ素も除外されない。
「オキサアルキル」または「アルコキシ」の用語は好ましくは、式Cn2n+1−O−(CH2mで表わされる直鎖状基(式中、nおよびmは、それぞれ相互に独立し、1〜6であり、mはまた、0であることができる)を包含する。好ましくは、n=1およびm=1〜6であるか、またはm=0およびn=1〜3である。
【0079】
0およびX0の意味を適当に選択することによって、アドレス時間、しきい値電圧、透過特性曲線の急峻度などを所望の様相で改変することができる。一例として、1E−アルケニル基、3E−アルケニル基、2E−アルケニルオキシ基などは一般に、アルキル基およびアルコキシ基に比較し、より短いアドレス時間、改良されたネマティック相形成傾向および弾性定数K33(ベンド)とK11(スプレイ)とのより大きい比をもたらす。4−アルケニル基、3−アルケニル基などは一般に、アルキル基およびアルコキシ基に比較し、より低いしきい値電圧およびより小さいK33/K11値をもたらす。
−CH2CH2−基は一般に、1個の共有結合に比較し、大きいK33/K11値をもたらす。大きいK33/K11値は、例えば90°のねじれを有するTNセルにおいて、より平坦な透過特性曲線(中間調が得られる)を容易にし、またSTN、SBEおよびOMIセルにおいて、より急峻な透過特性曲線(より大きい時分割比が得られる)を助長し、またその逆も生じる。
【0080】
式Iで表わされる化合物と式II+III+IV+V+VIで表わされる化合物との最適重量比は、所望の性質、式I、式II、式III、式IV、式Vおよび/または式VIで表わされる成分の選択および存在することができる別の成分の選択に実質的に依存する。前記範囲内の適当な混合比は、場合毎に容易に決定することができる。
【0081】
本発明よる混合物中の式I〜XIIIで表わされる化合物の総量に制限はない。従って、これらの混合物は、1種または2種以上の追加の成分を含有することができ、これにより種々の性質を最適にすることができる。しかしながら、アドレス時間およびしきい値電圧に対して見出される効果は一般に、式I〜XIIIで表わされる化合物の総濃度が高いほど大きくなる。
【0082】
特に好適な態様において、本発明による媒体は、式II〜VI(好ましくは、式II、式IIIおよび/または式IV、特に式IVa)において、X0がF、OCF3、OCHF2、OCH=CF2、OCF=CF2またはOCF2−CF2Hである化合物を含有する。式Iで表わされる化合物との好ましい相乗効果は、特に有利な性質をもたらす。特に、式Iで表わされる化合物および式IVaで表わされる化合物を含有する混合物は、それらの低いしきい値電圧の点で際立っている。
本発明による媒体に使用することができる式I〜XVIIIおよびそれらの付属式で表わされる化合物はそれぞれ、公知であるか、または公知化合物と同様に製造することができる。
【0083】
偏光板、電極基板および表面処理された電極からの本発明によるMLCディスプレイの構造は、この種のディスプレイに慣用の構造に相当する。ここで、「慣用の構造」の用語は広く解釈されるべきであり、また誘導型および改変型のMLCディスプレイの全部を包含し、特にポリ−SiTFTまたはMIMに基づくマトリックスディスプレイ素子を包含する。
しかしながら、本発明によるディスプレイとねじれネマティックセルに基づく慣用のディスプレイとの間の重要な差違は、液晶層の液晶パラメーターの選択にある。
【0084】
本発明に従い使用することができる液晶混合物は、それ自体慣用の方法で製造することができる。一般に、主成分を構成する成分中に、有利には高められた温度において、少量で用いられる諸成分の所望量を溶解させる。有機溶媒、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノール中の諸成分の溶液を混合し、充分に混合した後、次いで溶媒を、例えば蒸留により、再度分離することができる。
誘電体はまた、当業者にとって公知であり、刊行物に開示されている追加の添加剤、例えば紫外線安定剤[例えば、Cibaからのチヌビン(Tinuvin)(登録商品名)]、酸化防止剤、フリーラディカル捕獲剤などを含有することができる。一例として、0〜15%の多色染料またはカイラルドープ剤を添加することができる。適当な安定剤およびドープ剤は、下記表CおよびDに示されている。
【0085】
Cは結晶相を表わし、Sはスメクティック相を表わし、ScはスメクティックC相を表わし、Nはネマティック相を表わし、およびIはアイソトロピック相を表わす。
10は10%透過率(基板表面に対して垂直の視野角)にかかわる電圧を表わす。tonはV10の数値の2.0倍に相当する動作電圧におけるスイッチ−オン時間を表わし、またtoffはスイッチ−オフ時間を表わす。△nは光学異方性を表わす。△εは誘電異方性を表わす(△ε=ε−ε、ここでεは分子縦軸に対して平行の誘電率を表わし、およびεはそこに垂直な誘電率を表わす)。電気光学データは、別段の記載がないかぎり、TNセルにおいて第一次極小値で(すなわち、0.5μmのd・△n値で)、20℃において測定した。光学データは、別段の記載がないかぎり、20℃において測定した。
【0086】
本特許出願書および下記例において、液晶化合物の構造は頭文字で示されており、その化学式への変換は下記表AおよびBに従い成される。基Cn2n+1およびCm2m+1は全部が、n個またはm個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖状アルキル基である;ここでnおよびmは整数であり、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。表Bのコードは、自明である。表Aには、基本構造にかかわる頭文字のみが示されている。各場合、この基本構造にかかわる頭文字の後に、ダッシュにより分離して、置換基R1*、R2*、L1*およびL2*に関するコードが示されている。
【0087】
【表1】

【0088】
好適混合物の成分を下記表AおよびBに示す。
表A
【化27】

【0089】
【化28】

【0090】
【化29】

【0091】
表B
【化30】

【0092】
【化31】

【0093】
【化32】

【0094】
【化33】

【0095】
【化34】

【0096】
【化35】

【0097】
式Iで表わされる化合物に加えて、少なくとも1種、2種、3種または4種の表Bからの化合物を含有する液晶混合物は、特に好ましいものとして挙げられる。
表C:
表Cは、本発明による混合物に一般に添加することができるドープ剤を示す。混合物は、好ましくは0〜10重量%、特に0.01〜5重量%、特に好ましくは0.01〜3重量%のドープ剤を含有する。
【0098】
【化36】

【0099】
【化37】

【0100】
【化38】

【0101】
表D:
例として、本発明による混合物に添加することができる安定剤の例を下記に示す:
【化39】

【0102】
【化40】

【0103】
【化41】

【0104】
【化42】

【0105】
【化43】

【0106】
下記例は、本発明を説明しようとするものであり、制限を示すものではない。本明細書全体をとおして、パーセンテージは重量パーセントである。全部の温度は摂氏度で示されている。m.p.は融点を表わし、cl.p.は透明点を表わす。さらにまた、C=結晶状態、N=ネマティック相、S=スメクティック相、およびI=アイソトロピック相である。これらの記号間のデータは転移温度である。△nは光学異方性を表わし(589nm、20℃)、△εは誘電異方性を表わす(1kHz、20℃)。流動粘度V20(mm2/秒)および回転粘度γ1(mPa・秒)は20℃で測定した。
【0107】
「慣用の仕上げ処理」の用語は、所望により、反応混合物に水を添加し、この混合物をジクロロメタン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルまたはトルエンで抽出し、相を分離させ、有機相を乾燥させ、次いで蒸発させ、次いで生成物を減圧における蒸留または結晶化および/またはクロマトグラフイにより精製することを意味する。これらの例、ならびに合成および反応スキームにおいて、下記略語を使用する。
n−BuLi n−ヘキサン中n−ブチルリチウムの1.6モル溶液
DMAP 4−(ジメチルアミノ)ピリジン
THF テトラヒドロフラン
DCC N,N´−ジシクロヘキシルカルボジイミド
LDA リチウムジメチルアミド
TsOH トルエンスルホン酸
RT 室温
【0108】

【化44】

【0109】
p−トルエンスルホン酸一水加物0.0055molを含有するトルエン200ml中のプロピルプロパンジオール0.054molおよび対応するシクロヘキサンアルデヒド0.054molを、水分離器上で環流させる。冷却した反応混合物を次いで、水性NaHCO3溶液により抽出し、p−トルエンスルホン酸を分離する。Na2SO4を用い乾燥させ、次いで蒸発させた後、有機相から得られた残留物をトルエン/ヘプタンの1:1(容量による)混合物を用いシリカゲルに通し濾過する。蒸発させ、蒸発残留物19.0gを、−20℃においてヘプタン60mlから再結晶後、濾液から純粋なジオキサン誘導体7.4gを得る。
【0110】
下記式で表わされる化合物が同様にして製造される:
【化45】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
【表5】

【0115】
【表6】

【0116】
例 M1
【表7】

【0117】
例 M2
【表8】

【0118】
例 M3
【表9】

【0119】
例 M4
【表10】

【0120】
例 M5
【表11】

【0121】
例 M6
【表12】

【0122】
例 M7
【表13】

【0123】
例 M8
【表14】

【0124】
例 M9
【表15】

【0125】
例 M10
【表16】

【0126】
例 M11
【表17】

【0127】
例 M12
【表18】

【0128】
例 M13
【表19】

【0129】
例 M14
【表20】

【0130】
例 M15
【表21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体であって、1種または2種以上の式Iで表わされる化合物を含有することを特徴とする液晶媒体:
【化1】

式中、
1は、炭素原子1〜15を有し、ハロゲン化されているか、または未置換のアルキル基またはアルコキシ基であり、これらの基中に存在する1個または2個以上のCH2 基は、それぞれ相互に独立し、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−C≡C−、−C=C−、−O−、−CO−O−または−O−CO−により置き換えられていてもよく、
Xは、F、Cl、CNまたはSFであり、もしくはそれぞれ6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、および
1およびL2は、それぞれ相互に独立し、HまたはFである。
【請求項2】
1種、2種または3種以上の式I−1〜I−10で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の液晶媒体:
【化2】

上記各式中、R1は請求項1に定義されているとおりである。
【請求項3】
1種または2種以上の一般式II、式III、式IV、式Vおよび式VIからなる群から選択される化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の液晶媒体:
【化3】

上記各式中、各基は、下記の意味を有する:
0は、それぞれ9個までの炭素原子を有するn−アルキル基、オキサアルキル基、フルオロアルキル基またはアルケニル基であり、
0は、FまたはClであり、もしくはそれぞれ6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルケニルオキシ基またはハロゲン化アルコキシ基であり、
0は、−C24、−CF=CF−、−C24−、−(CH24−、−OCH2−、−CH2O−、−CF2O−または−OCF2−であり、
〜Y4は、それぞれ相互に独立し、HまたはFであり、
rは、0または1である。
【請求項4】
全体としての混合物中の式I〜VIで表わされる化合物全体の割合が、少なくとも50重量%であることを特徴とする請求項3に記載の液晶媒体。
【請求項5】
1種または2種以上の式Ea〜Edで表わされる化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶媒体:
【化4】

上記各式中、R0は請求項3に定義されているとおりである。
【請求項6】
1種または2種以上の式IIa〜IIgで表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液晶媒体:
【化5】

上記各式中、R0は、請求項3に定義されているとおりである。
【請求項7】
1種または2種以上の式O1および式O2で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶媒体:
【化6】

上記各式中、
alkylおよびalkyl*は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1〜7個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基である。
【請求項8】
1種または2種以上の式D1および/または式D2で表わされるジオキサン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液晶媒体:
【化7】

上記各式中、R0は、請求項3に定義されているとおりである。
【請求項9】
全体としての混合物中の式Iで表わされる化合物の割合が、0.5〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の液晶媒体の電気光学用途における使用。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の液晶媒体を含有する電気光学液晶ディスプレイ。
【請求項12】
式I−1〜I−8で表わされる化合物:
【化8】

式中、Rは、請求項1に定義されているとおりである。

【公開番号】特開2011−122154(P2011−122154A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273028(P2010−273028)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【分割の表示】特願2004−157006(P2004−157006)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】