説明

液晶性樹脂組成物、およびそれからなる成形品

【課題】反射率および白色度が高く、かつ薄肉流動性に優れた液晶性樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)酸化チタン30〜400重量部、(C)青色着色料0.001〜1.0重量部を含有してなる液晶性樹脂組成物。さらに、針状ホウ酸アルミニウムウィスカーなどの繊維状充填材を(A),(B),(C)の合計100重量部に対し、1〜50重量部配合することもできる。最少厚みが0.05〜2.0mmである成形品に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率および白色度が高く、薄肉流動性に優れる液晶性樹脂組成物、およびそれからなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、照明、ディスプレー、識別装置に使用される光源が白熱球からLED(発光ダイオード)、有機ELなどに変わりつつあり、これらが携帯電話のバックライト、LEDのリフレクターなどといったIT機器に使用されている。これらのIT機器は軽薄短小化と高性能化の流れにのって、製品は小さく、薄く、複雑化の方向へと進んでいる。
【0003】
このようなLED用途には白色度の要求が高く、ナイロン46,6T,9Tなどのいわゆる芳香族ナイロンが使用されていた(例えば、特許文献1参照)が、製品の軽薄短小と高機能化により、製品の薄肉部位での充填不良や、LED発光輝度増加にともなう雰囲気温度の上昇から、熱変色による白色度の低下が問題となっていた。
【0004】
このような問題点を克服する方法としては、液晶性樹脂をベースポリマとして使用する方法が提案されており、例えば液晶ポリエステル樹脂に酸化チタンを添加する方法(例えば、特許文献2および特許文献3)などがすでに知られているが、これだけだと白色度が不十分で、反射板としての特性が満足に得ることができない問題があった。
【特許文献1】特開2004−75994号公報
【特許文献2】特開昭62−179780号公報
【特許文献3】特開2004−277539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、反射率および白色度が高く、薄肉流動性に優れる液晶性樹脂組成物、およびそれからなる成形品に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、液晶性樹脂に特定種類・範囲の充填剤を添加することで、白色度を改善させつつ、薄肉流動性を維持できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)酸化チタン30〜400重量部、(C)青色着色料0.001〜1.0重量部を配合してなる液晶性樹脂組成物、
2.(C)青色着色料が群青および/または酸化コバルトである1記載の液晶性樹脂組成物、
3.(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対し、(D)繊維状充填剤1〜50重量部を配合してなる1または2記載の液晶性樹脂組成物、
4.(D)繊維状充填剤が針状ホウ酸アルミニウムウィスカーである3記載の液晶性樹脂組成物、
5.1〜4のいずれか記載の液晶性樹脂組成物を成形してなる成形品、および
6.成形品の最小厚みが0.05〜2.0mmである5記載の成形品、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下に説明するとおり、優れた白色度と薄肉流動性を有する液晶性樹脂成形品が得られるため、超小型のLED製品に与える効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる(A)液晶性樹脂としては、異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルおよび液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられ、その具体例としては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、および上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドが挙げられる。
【0011】
異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルの例としては、好ましくは下記の(I)、(II)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、および、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
(ただし式中のR1は、
【0014】
【化2】

【0015】
から選ばれた一種以上の基を示し、R2は、
【0016】
【化3】

【0017】
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示し、構造単位(II)および(III) の合計と構造単位(IV)は実質的に等モルである。)
上記構造単位(I)は、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステルの構造単位であり、構造単位(II)は、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III )は、エチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)は、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0018】
【化4】

【0019】
であり、R2が
【0020】
【化5】

【0021】
であるものが特に好ましい。
【0022】
また、液晶性ポリエステルアミドの例としては、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、p−アミノフェノールとテレフタル酸から生成した液晶性ポリエステルアミド、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸、p−アミノ安息香酸およびポリエチレンテレフタレートから生成した液晶性ポリエステルアミド(特開昭64−33123号公報)などが挙げられる。
【0023】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)、(II)および(IV)からなる共重合体、または、(I)、(II)、(III) および(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I)、(II)、(III) および(IV)の共重合量は任意である。しかし、流動性の点から次の共重合量であることが好ましい。
【0024】
すなわち、上記構造単位(III) を含む場合は、耐熱性、難燃性および機械的特性の点から、上記構造単位(I)および(II)の合計は、構造単位(I),(II)および(III) の合計に対して60〜95モル%が好ましく、75〜93モル%がより好ましい。また、構造単位(III) は、構造単位(I),(II)および(III) の合計に対して40〜5モル%が好ましく、25〜7モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の構造単位(II)に対するモル比[(I)/(II)]は、耐熱性と流動性のバランスの点から好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III) の合計と実質的に等モルである。
【0025】
一方、上記構造単位(III) を含まない場合は、流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(II)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましい。構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルである。
【0026】
なお、上記において「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマ主鎖を構成するユニットとしてはジオキシ単位とジカルボニル単位が等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0027】
なお、本発明で好ましく使用できる上記液晶性ポリエステルを重縮合する際には、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族、脂環式ジオール、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸などを、本発明の目的を損なわない程度の少割合の範囲でさらに共重合せしめることができる。 また、液晶性ポリエステルアミドとしては、上記好ましい液晶性ポリエステルに、さらにp−アミノフェノールおよび/またはp−アミノ安息香酸を共重合したものも好ましく挙げることができる。
【0028】
本発明における液晶性樹脂の製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0029】
例えば、上記の好ましく用いられる液晶性ポリエステルの製造において、上記構造単位(III) を含まない場合は下記(1)および(2)の製造方法が、構造単位(III) を含む場合は下記(3)の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、4,4’−ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマ、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で、(1)または(2)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0030】
これらの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を添加した方が好ましいときもある。
【0031】
本発明における(A)液晶性樹脂は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能なものもあり、その際には0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.5dl/g以上が好ましく、特に上記構造単位(III) を含む場合は1.0〜3.0dl/gが好ましく、上記構造単位(III) を含まない場合は2.0〜10.0dl/gが好ましい。
【0032】
また、本発明における(A)液晶性樹脂の溶融粘度は、1〜2,000Pa・sが好ましく、特に2〜1,000Pa・sがより好ましい。
【0033】
なお、上記の溶融粘度は、液晶性樹脂の融点(Tm)+10℃の条件で、ズリ速度1,000/秒の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0034】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定によりポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度Tm1の観測後、Tm1+20℃の温度でまで昇温し、同温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度を指す。
【0035】
本発明で用いる(B)酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ルチルおよびアナターゼ型の混合物を用いることができる。耐熱性、熱劣化の観点からはルチル型を用いるのが好ましく、一方で近紫外側(380〜420nm)付近の白色度を高くするにはアナターゼ型を用いるのが好ましい。現時点総合的に判断すると、ルチル型を用いるのが好ましい。
【0036】
本発明で用いる(B)酸化チタンの重量平均粒子径は0.05〜0.50μmであり、好ましくは0.1〜0.4μmであり、より好ましくは0.2〜0.35μmである。
粒子径が大きいほど白色度が低下し、小さすぎると流動性が低下し好ましくない。
【0037】
本発明の(B)酸化チタンは(A)液晶性樹脂100重量部に対し、40〜400重量部用いられ、好ましくは50〜300重量部、より好ましくは50〜200重量部用いられる。(B)酸化チタンが少なすぎると白色度が低下し、多すぎると薄肉流動性が低下し好ましくない。
【0038】
本発明で用いる(C)青色着色料は、公知の着色料(無機顔料、有機顔料、染料)を用いることができ、群青、酸化コバルト、フタロシアニン系ブルー、アンスラキノン系ブルーなどが挙げることができる。これらのうち、群青および酸化コバルトが好ましい。
【0039】
本発明の(B)青色着色料は(A)液晶性樹脂100重量部に対し、0.001〜1.0重量部用いられ、好ましくは0.01〜0.5重量部、より好ましくは0.01〜0.1重量部用いられる。(B)青色着色料が少なすぎると黄色度が上昇し、多すぎると白色度が低下し好ましくない。
【0040】
本発明の液晶性樹脂組成物には、さらに(D)無機充填剤を含有させることにより反射率と機械特性を向上せしめることが可能である。なお、ここでいう(D)無機充填剤とは、繊維状充填剤(たとえばガラス繊維、ミルドガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石こう繊維、ウィスカ(たとえばホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカ、石こうウィスカなど)、金属繊維(たとえばステンレス繊維、マグネシウム繊維、銅繊維など)などの無機質繊維)、鱗片状充填剤(たとえばマイカ、タルク、カオリン、ガラスフレーク、ワラステナイト、グラファイトなど)、粒状充填剤(たとえば球状シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズポリリン酸カルシウム)、などを挙げることができる。これらのうち、ガラス繊維、ミルドガラス繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカーなどの繊維状充填剤が好ましく用いられ、より好ましくはミルドガラス繊維およびホウ酸アルミニウムウィスカーが用いられ、さらに好ましくはホウ酸アルミニウムウィスカーが用いられる。
【0041】
上記(D)無機充填剤は、液晶性樹脂組成物の成形加工性、機械特性の点から、(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対し、通常、50重量部以下で用いられ、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下で用いられる。下限については特に制限はないが、1重量部以上用いることが好ましい。
【0042】
本発明の液晶性樹脂成形品は、上記の液晶性樹脂組成物に、目的を損なわない範囲で、
酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂(フッ素樹脂など)を添加して、所定の特性を付与することができる。この場合、白色度を阻害しやすいものは好ましくないので、種類および添加量に注意が必要である。
【0043】
本発明の液晶性樹脂組成物は溶融混練により製造することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用いることができる。これらのうち、本発明の液晶性樹脂組成物は、(B)酸化チタンおよび(C)青色着色料の分散を良好にする必要があることから、押出機を用いることが好ましく、二軸押出機を用いることがより好ましく、なかでも中間添加口を有する二軸押出機を用いることが特に好ましい。溶融混練方法は、原料供給口から(A)液晶性樹脂を二軸押出機に供給し、(A)液晶性樹脂を溶融させ、該溶融状態の(A)液晶性樹脂に中間添加口から(B)酸化チタンと(C)青色着色料を供給するのが好ましい。さらに(D)無機充填剤は、(B)酸化チタンと(C)青色着色料の分散性を良好にするため、一度(A)、(B)および(C)からなる液晶性樹脂組成物をペレット化したうえでこれを原料共有口から二軸押出機に供給し、中間添加口から(D)無機充填剤を供給するのが好ましい。
【0044】
かくして得られる本発明の液晶性樹脂組成物は薄肉流動性にすぐれ、かつ機械特性も損なうことがないため、射出成形、押出成形、シート成形、ブロー成形などの成形法により各種成形品に成形されるが、その優れた薄肉流動性を活かして、射出成形することが好ましい。
【0045】
また本発明の液晶性樹脂組成物は、その優れた薄肉流動性、機械特性を活かして、薄肉部位を有する成形品を得ることができ、その実質的な最小厚みが0.05〜2.0mm、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.2〜0.8mmの厚みを有する成形品により好ましく使用できる。
【0046】
そして、本発明の液晶性樹脂成形品は、電気、電子、自動車、機械、雑貨などの用途に限定なく、LED(発光ダイオード)や有機ELを使用した部品の周辺に使用できる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。
【0048】
[参考例1]
p−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸292重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1367重量部(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を、撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃で昇温しながら2時間反応させ、145℃から320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃、1.0時間で133Paに減圧し、さらに約1.5時間攪拌を続け重縮合を行った。p−オキシベンゾエート単位がp−オキシベンゾエート単位、4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル当量、4,4’−ジオキシビフェニル単位が4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル当量、テレフタレート単位がテレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計に対して65モル当量からなる融点314℃、溶融粘度25Pa・s(324℃、オリフィス0.5mm直径×10mm、ズリ速度1,000/秒)の液晶性ポリエステル(A1)を得た。
【0049】
[参考例2]
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル168重量部、テレフタル酸150重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート173重量部および無水酢酸1011重量部を、撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら室温から150℃まで昇温しながら3時間反応させ、150℃から250℃まで2時間で昇温し、250から335℃まで1.5時間で昇温させた後、335℃、1.5時間で6.5×10−3Paまで減圧し、さらに約0.25時間撹拌を続け重縮合を行った。芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位10モル当量、エチレンジオキシ単位10モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点328℃、溶融粘度18Pa・s(338℃、オリフィス0.5mm直径×10mm、ズリ速度1,000/秒)の液晶性ポリエステル(A2)を得た。
【0050】
[参考例3]
特開昭54−77691号公報に従って、p−アセトキシ安息香酸921重量部と6−アセトキシ−ナフトエ酸435重量部を、撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重縮合を行った。p−アセトキシ安息香酸から生成した構造単位57モル当量および6−アセトキシ−ナフトエ酸から生成した構造単位22モル当量からなる融点283℃溶融粘度30Pa・s(293℃,オリフィス0.5mm直径×10mm、ズリ速度1,000/秒)の液晶性ポリエステル(A3)を得た。
【0051】
[実施例1〜5,比較例1〜6]
シリンダー設定温度を液晶性樹脂の融点+10℃、スクリュウ回転数を250rpmに設定した、44mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(日本製鋼所製TEX−44)を用いて、参考例1〜3で得た(A)液晶性樹脂100重量部に対し、(B)酸化チタンおよび(C)青色着色料を表1に示す割合でを原料供給口から添加して溶融状態とし、必要に応じて(D)繊維状充填剤を中間添加口から供給し、吐出量30kg/時間で溶融混練してペレットを得た。このペレットを用いて下記の各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
なお、(B)酸化チタン、(C)青色着色料および(D)繊維状充填剤としては、それぞれ下記のものを使用した。
B:酸化チタン(ルチル型)
C1:群青
C2:酸化コバルト(II)
D1:ホウ酸アルミニウムウィスカ(四国化成工業社製YS3A 平均繊維径0.8μm)
D2:ガラス繊維(日本電気硝子社製ECS790DE 平均繊維径6μm)
【0053】
[特性の測定法]
(1)反射率
住友重機械社製SE−30D成形機を用いて、液晶性樹脂の融点+20℃の成形温度、金型温度は90℃、にて射出成形を行い、幅40mm、長さ40mm、厚み1mmの角板試験片を作成した。その角板試験片から、紫外線近赤外分光光度計(島津製作所製UV−3150)と積分球の検出器を用いて500nmおよび900nmにおける反射率をそれぞれ測定した。一般的に波長が短いものほど反射しにくくなるため、判定基準は波長により異なり、500nmの波長においては、反射率が70%以上のものを「良好」(○)、それ以下のものを「劣る」(×)とし、900nmの波長においては反射率が90%以上のものを「良好」(○)、それ以下のものを「劣る」(×)とした。
【0054】
(2)色調
・白色度(WI):前述の角板試験片をSMカラーコンピュータ(スガ試験機社製:MODEL SM−5)を用いて測定した。白色度が80以上のものを「良好」(○)、それ以下のものを「劣る」(×)とした。
・黄色度(YI):白色度と同じ方法で測定し、黄色度が3.0以下のものを「良好」(○)、それ以上のものを「劣る」(×)とした。
・耐熱劣化(△YI):角板試験片を150℃、2時間の加熱処理し、加熱処理前後の黄色度の差を△YIとした。△YIが1.0以下のものを「良好」(○)、それ以上のものを「劣る」(×)とした。
【0055】
(3)薄肉流動性
・流動長:住友重機械社製SE−30D成形機を用いて、射出速度300mm/秒、射出圧力40MPa、成形温度は液晶性樹脂の融点+20℃、金型温度は90℃の条件で連続成形(射出時間/冷却時間=1.0/10.0秒、スクリュウ回転数100rpm、背圧1MPa、サックバック10mm)を行い、棒状試験片(幅12.7mm、厚み0.5mm、サイドゲート0.5mm×5.0mm)を成形し、成形品の長さを流動長として測定した。流動長の長いものほど、薄肉流動性は良く、流動長が50mm以上のものを「良好」(○)、それ以下のものを「劣る」(×)とした。
【0056】
(4)機械特性
・引張強さ:ASTM D638にしたがい測定した。引張強さが100MPa以上のものを「優れる」(◎)、35以上のものを「良好」(○)、それ以下のものを「劣る」(×)とした。
【0057】
これらの結果を表1に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
以上の結果から、本発明の液晶性樹脂組成物は、比較例の樹脂組成物と比較して、反射率および白色度が高く、かつ薄肉流動性に優れた組成物であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の液晶性樹脂組成物およびそれからなる成形品は、反射率および白色度が高く、かつ薄肉流動性に優れるため、LED(発光ダイオード)や有機ELなどの光源周辺の部品に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)酸化チタン30〜400重量部、(C)青色着色料0.001〜1.0重量部を配合してなる液晶性樹脂組成物。
【請求項2】
(C)青色着色料が群青および/または酸化コバルトである請求項1記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対し、(D)繊維状充填剤1〜50重量部を配合してなる請求項1または2記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項4】
(D)繊維状充填剤が針状ホウ酸アルミニウムウィスカーである請求項3記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の液晶性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項6】
成形品の最小厚みが0.05〜2.0mmである請求項5記載の成形品。

【公開番号】特開2007−320996(P2007−320996A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150133(P2006−150133)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】