説明

液晶組成物、及び液晶表示素子

【課題】屈折率異方性が大きい液晶組成物の提供。
【解決手段】式Iで表される化合物と、式IIで表される化合物とを含有する液晶組成物。式I中、R1及びR2は、H、C1〜12のアルキル基、又はC2〜12のアルケニル基;A1及びA2は、1個以上のFによって置換されていてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,4−シクロヘキセニレン基、又は1,4−フェニレン基;Z1及びZ2は、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は単結合;m及びnは、0又は1;X1及びX2は、H、F又はClを表すが、両方がHであることはない。式(II)中、A3及びA4は各々独立に、トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置等の種々の電気光学的液晶装置に用いられる液晶材料として有用な液晶組成物、及びこれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶性化合物を用いた表示素子(液晶表示素子)は極めて広い範囲で利用されるようになっている。液晶表示素子は液晶化合物の特性である光学(屈折率)異方性(Δn)や誘電率異方性(Δε)を利用したものであり、時計、電卓、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、携帯電話、プリンター、コンピューター、テレビ等に利用されている。
液晶化合物には固体相と液体相との中間に位置する固有の液晶相があり、その相形態はネマチック相、スメクチック相及びコレステリック相に大別される。これらのうち表示素子用、いわゆる駆動用液晶としてはネマチック相が最も広く利用されている。
実際に液晶表示素子として提案されている表示方式としては、散乱型(DS型)、ゲスト・ホスト型(GH型)、ねじれネマチック型(TN型)、超ねじれネマチック型(STN型)、薄膜トランジスター型(TFT型)及び強誘電性液晶(FLC)等が知られている。
駆動方式としては、スタティック駆動方式、時分割駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式及び2周波駆動方式等が知られている。現在広く使用されているアクティブマトリックス駆動方式において、TN(Twist Nematic)モードの液晶表示素子は、応答速度及び視野特性に劣るという欠点を有しており、TV等の視野覚特性が重要な用途においては問題となっている。これに対して、VA(Vertical alignment)モードやIPS(In−plane switching)モードは、視野角が広く、応答時間が短く、コントラストが高い等の長所を有することが知られている。
【0003】
VAモードは現在大型テレビで最も広く用いられているモードであり、VAモードに用いられる液晶材料には、低電圧駆動、高速応答、広い動作温度範囲が要求される。即ち、誘電率異方性が負で且つ絶対値が大きく、低粘度であり、高いネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)であることが要求されている。特に、高速応答のためには、液晶セルのセルギャップ(d)を小さくすることが求められているが、一方で、表示素子として機能するためには、液晶セルにはある程度の位相差が必要である。この位相差は屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δn×d)で表されるので、セルギャップdを小さくしつつ、必要な位相差を得るためには、液晶材料の屈折率異方性Δnを大きくする必要がある。
【0004】
誘電率異方性値が負の液晶化合物として、2,3−ジフルオロフェニレン骨格を有する液晶化合物(特許文献1参照)が開示されている。しかしこれらの化合物は、屈折率異方性値の絶対値は必ずしも十分には大きくなく、絶対値の大きな負の誘電率異方性をもち、且つ屈折率異方性が大きい液晶組成物の開発が望まれている。
【特許文献1】特表平2−503434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、屈折率異方性が大きい液晶組成物を提供し、さらにそれを用いたVA型等の液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1及びA2は各々独立に、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,4−シクロヘキセニレン基又は1,4−フェニレン基を表し;Z1及びZ2は各々独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は単結合を表し;m及びnは各々独立に、0又は1を表し;X1及びX2は各々独立に、水素、フッ素原子又は塩素原子を表すが、両方が水素原子であることはない。)で表される化合物の1種又は2種以上と、
【0007】
下記一般式(II):
【化2】

(式中、R3及びR4は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A3及びA4は各々独立に、
基(a): トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基は、O及び/又はSに置換されてもよい)、
基(b): 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基はNに置換されてもよい)、及び
基(c): 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基、
から選択されるいずれかの基であり、上記の基(a)、基(b)又は基(c)中に存在する水素原子は、CN又はハロゲン原子で置換されていてもよく;Z3は、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−CH2O−、−OCH2−、−OCH(CH3)−、−CH(CH3)O−、−(CH24−、−(CH23O−、−O(CH23−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Y1及びY2は各々独立に、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Z3及びA4が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく;pは0、1又は2を表す。)で表される化合物の1種又は2種以上とを含有する液晶組成物。
【0008】
[2] 前記1種又は2種以上の一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(III):
【化3】

(式中、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A5及びA6は各々独立に、
基(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基は、O及び/又はSに置換されてもよい)、
基(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基はNに置換されてもよい)、及び
基(d) 1,4−シクロヘキセニレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基、
から選択されるいずれかの基であり、上記の基(a)、基(b)又は基(d)中に存在する水素原子は、CN又はハロゲン原子で置換されていてもよく;Z4及びZ5は各々独立に、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−CH2O−、−OCH2−、−OCH(CH3)−、−CH(CH3)O−、−(CH24−、−(CH23O−、−O(CH23−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Y3及びY4は各々独立に、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;A5、A6、Z4及びZ5が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく;a及びbは各々独立に、0、1又は2であり;X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表すが、すべてが水素であることはない)で表される化合物である[1]の液晶組成物。
【0009】
[3] 前記一般式(I)で表される化合物の含有率が、5〜70質量%の範囲である[1]又[2]の液晶組成物。
[4] 前記一般式(II)で表される化合物の含有率が、10〜70質量%の範囲である[1]〜[3]のいずれかの液晶組成物。
[5] 前記一般式(I)において、X1及びX2がフッ素原子である[1]〜[4]のいずれかの液晶組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかの液晶組成物を使用した液晶表示素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の式で表される液晶化合物を組み合わせることによって、高い屈折率異方性を示す液晶組成物を提供することができる。上記特性の本発明の液晶組成物を用いることにより、良好な性能の液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明は、下記一般式(I)で表される化合物の1種又は2種以上と、下記一般式(II)で表される化合物の1種又は2種以上とを含有する液晶組成物に関する。本発明の液晶組成物は、下記(I)で表される化合物を含有することにより、これを含有しない液晶組成物と比較して、屈折率異方性Δnが大きいという特徴がある。
【0012】
【化4】

【0013】
式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1及びA2は各々独立に、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,4−シクロヘキセニレン基又は1,4−フェニレン基を表し;Z1及びZ2は各々独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は単結合を表し;m及びnは各々独立に、0又は1を表し;X1及びX2は各々独立に、水素、フッ素原子又は塩素原子を表すが、両方が水素原子であることはない。
【0014】
一般式(I)中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12(好ましくは炭素原子数1〜8、より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基、又は炭素原子数2〜12(好ましくは炭素原子数2〜8、より好ましくは炭素原子数2〜5)のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。R1及びR2の具体例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、アリルオキシ基が含まれる。
【0015】
一般式(I)中、A1及びA2は各々独立に、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,4−シクロヘキセニレン基、又は1,4−フェニレン基を表す。環に対するフッ素原子による置換は、最大4つまで可能である。環に対するフッ素原子による置換は、1又は2であるのが好ましい。
【0016】
一般式(I)中、Z1及びZ2は各々独立に、非環状の2価の基を表し、該当する基として好ましくは−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は単結合を表し、単結合であることが好ましい。
【0017】
一般式(I)中、m及びnは各々独立に、0又は1を表し、m=n=0であることが好ましい。
一般式(I)中、X1及びX2は各々独立に、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表すが、1個以上のフッ素原子であることが好ましく、X1及びX2が共にフッ素原子であることがより好ましい。
【0018】
前記一般式(I)で表される化合物の例には、R1、R2、A1、A2、Z1、Z2、m、n、X1及びX2の組み合わせにより種々の化合物が含まれる。それらの中では、下記一般式(Iaa)〜(Iej):
【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
のいずれかで表される化合物が好ましく、一般式(Iaa)及び(Iba)〜(Icf)の化合物がさらに好ましく、一般式(Iaa)の化合物が特に好ましい。式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、アリルオキシ基が挙げられる。
【0025】
前記一般式(I)で表される化合物は、実施例に具体的に記載の方法により、及び当該記載の方法を参考にして合成可能である。中間体となるジフルオロベンゼン誘導体の合成は、下記非特許文献1〜4を参考にして合成することができる。後述の実施例でも、中間体となるジフルオロベンゼン誘導体の合成は、下記の非特許文献1〜4に記載の方法を参考にして行った。これらの中間体を利用して本発明の化合物へと至る過程は、種々の反応を組み合わせることによって、容易に行うことができる。
非特許文献1:Liquid Crystals, 1989, 5, 159
非特許文献2:Journal of Organic Chemistry, 2003, 68, 6832-6835
非特許文献3:Angewandte Chemie. International Edition, 2000, 39, 4216
非特許文献4:Synlett, 1999, 4, 389
【0026】
【化10】

【0027】
式中、R3及びR4は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A3及びA4は各々独立に、
基(a): トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基は、O及び/又はSに置換されてもよい)、
基(b): 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基はNに置換されてもよい)、及び
基(c): 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基、
から選択されるいずれかの基であり、上記の基(a)、基(b)又は基(c)中に存在する水素原子は、CN又はハロゲン原子で置換されていてもよく;Z3は、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−CH2O−、−OCH2−、−OCH(CH3)−、−CH(CH3)O−、−(CH24−、−(CH23O−、−O(CH23−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Y1及びY2は各々独立に、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Z3及びA4が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく;pは0、1又は2を表す。
【0028】
一般式(II)中、R3及びR4は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12(好ましくは炭素原子数1〜8、より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基、又は炭素原子数2〜12(好ましくは炭素原子数2〜8、より好ましくは炭素原子数2〜5)のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されていてもよい。R3及びR4の具体例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、アリルオキシ基が含まれる。
【0029】
一般式(II)中、A3及びA4は各々独立に、下記基(a)〜(c)のいずれかを表す。
基(a): トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基は、O及び/又はSに置換されてもよい)であり、例えば、以下の基である。
【0030】
【化11】

【0031】
基(b): 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基はNに置換されてもよい)であり、例えば、以下の基である。
【0032】
【化12】

【0033】
基(c): 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基であり、例えば、以下の基である。
【0034】
【化13】

【0035】
上記の基(a)、基(b)又は基(c)中に存在する水素原子は、CN又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)で置換されていてもよい。各基は、2以上のCN及び/又はハロゲン原子を有していてもよく、上記構造中の2以上の*にCN及び/又はハロゲン原子を有していてもよい。
【0036】
一般式(II)中、Z3は、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−CH2O−、−OCH2−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−又は単結合であるのが好ましく、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−又は単結合であるのがより好ましい。
一般式(II)中、Y1及びY2は各々独立に、−COO−、−OCO−又は単結合であるのが好ましく、単結合であるのがより好ましい。
一般式(II)中、pは1または2であるのが好ましい。
【0037】
一般式(II)で表される化合物の例を以下に示すが、下記の例示化合物に限定されるものではない。
【化14】

【0038】
式中、R3及びR4は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。
【0039】
一般式式(II)で表される化合物の例には、下記一般式(III)で表される化合物が含まれる。
【0040】
【化15】

【0041】
式中、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A5及びA6は各々独立に、
基(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基は、O及び/又はSに置換されてもよい)、
基(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基はNに置換されてもよい)、及び
基(d) 1,4−シクロヘキセニレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基、
から選択されるいずれかの基であり、上記の基(a)、基(b)又は基(d)中に存在する水素原子は、CN又はハロゲン原子で置換されていてもよく;Z4及びZ5は各々独立に、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−CH2O−、−OCH2−、−OCH(CH3)−、−CH(CH3)O−、−(CH24−、−(CH23O−、−O(CH23−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Y3及びY4は各々独立に、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;A5、A6、Z4及びZ5が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく;a及びbは各々独立に、0、1又は2であり;X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表すが、すべてが水素であることはない。
【0042】
一般式(III)中、R5及びR6については、一般式(II)中のR3及びR4と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0043】
一般式(III)中、A5及びA6は各々独立に、上記基(a)及び(b)ならびに下記基(d)のいずれかを表す。
基(d) 1,4−シクロヘキセニレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基、
【化16】

【0044】
上記の基(a)、基(b)又は基(d)中に存在する水素原子は、CN又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)で置換されていてもよい。各基は、2以上のCN及び/又はハロゲン原子を有していてもよく、上記構造中の2以上の*にCN及び/又はハロゲン原子を有していてもよい。
【0045】
一般式(III)中、Z4及びZ5は各々独立に、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−又は単結合であるのが好ましく、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−又は単結合であるのがより好ましい。
一般式(III)中、Y3及びY4は各々独立に、−COO−、−OCO−又は単結合であるのが好ましく、単結合であるのがより好ましい。
【0046】
一般式(III)で表される化合物の例を以下に示すが、下記の例示化合物に限定されるものではない。
【化17】

【0047】
式中、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。
【0048】
本発明の液晶組成物は、第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上を含有するが、1種〜15種含有するのが好ましく、1種〜12種含有するのがより好ましく、1種〜8種含有するのがさらに好ましい。
本発明の液晶組成物中、一般式(I)で表される化合物の1種又は2種以上の含有率は、液晶組成物の全質量に対して、5〜70質量%であるのが好ましく、10〜65質量%であるのがより好ましく、10〜60質量%であるのがさらに好ましい。
【0049】
本発明の液晶組成物は、第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上を含有するが、1種〜12種含有するのが好ましく、1種〜8種含有するのがより好ましく、1種〜6種含有するのがさらに好ましい。
本発明の液晶組成物中、一般式(II)で表される化合物の1種又は2種以上の含有率は、液晶組成物の全質量(但し液晶組成物が有機溶媒を含有する場合は、有機溶媒を除いた固形分の全質量)に対して、10質量%〜70質量%であるのが好ましい。これらの化合物は、粘度を低下させる作用があり、低い粘度を重視する態様では、式(II)の化合物の含有率が多いことが好ましい。一方、誘電率異方性の絶対値の増大に寄与するのは式(I)の化合物であるので、絶対値の大きな誘電率異方性を態様では、式(II)の化合物の含有率を小さくし、式(I)の化合物の含有率を大きくするのが好ましい。
【0050】
一般式(I)で表される化合物は、これを添加することにより液晶組成物のΔnを大きくする作用がある。具体的には、一般式(II)で表される液晶化合物及びそれを2種以上含む液晶組成物の例には、ネマチック液晶相を示す液晶化合物及び液晶組成物が含まれるが、当該液晶化合物又は液晶組成物に、一般式(I)で表される化合物の1種又は2種以上を添加すると、無添加のものと比較して、Δnが大きくなる。また、一般式(I)で表される化合物の例には、Δεが負に大きい化合物が含まれ、そのような特性の式(I)の化合物を、Δεが負の液晶化合物又は液晶組成物に添加すると、Δεの値を負に大きくする作用がある。具体的には、一般式(II)で表される液晶化合物及びそれを2種以上含む液晶組成物の例には、ネマチック液晶相を示すとともに、Δεが負の液晶化合物及び液晶組成物が含まれるが、当該液晶化合物又は液晶組成物に、一般式(I)で表される化合物の1種又は2種以上を添加すると、Δεが負に大きくなる場合がある。
【0051】
本発明の液晶組成物は、ネマチック相、スメクチック相及びコレステリック相のいずれの液晶相を示すものであってもよい。いずれかの液晶相を示すために、上記式(I)及び(II)で表される化合物とともに、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有していてもよいし、また種々の添加剤を含有していてもよい。一例は、ネマチック液晶相を示す液晶組成物である。ネマチック液晶相を示すネマチック液晶組成物の態様では、ネマチック相−等方性液体相転移温度が60℃〜120℃の範囲であり、25℃における誘電率異方性が−7〜−2の範囲であり、25℃における屈折率異方性が0.06〜0.15の範囲であり、20℃における粘度が60mPa・s以下であることが好ましい。
ネマチック相−等方性液体相転移温度は75℃以上であることがより好ましく、85℃以上であることがさらに好ましい。25℃における誘電率異方性が−2.5以下であることがより好ましく、−3.5以下であることがさらに好ましい。25℃における屈折率異方性が0.07以上であることがより好ましく、0.09以上であることがさらに好ましい。20℃における粘度は40mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明の液晶組成物、特に上記ネマチック液晶組成物の態様は、液晶表示素子に有用であり、特にアクティブマトリクス駆動用液晶表示素子に有用であり、VAモード、IPSモード又はECBモード用液晶表示素子に用いることができる。特に、VAモード液晶表示素子として有用である。本発明の液晶組成物を利用した液晶表示素子は、高温域まで高い電圧保持率を維持できることが期待され、即ち信頼性に優れていることが期待される。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
一般式(I)で表される化合物は以下の方法を用いて合成可能であるが、一般式(I)の化合物の合成法は以下の合成例に限定されるものではない。
【0054】
<液晶化合物の屈折率異方性Δnの測定>
液晶化合物の屈折率異方性Δnの測定方法について説明する。ネマチック液晶組成物LCM(I)に、5〜20質量%になるように、検体である液晶化合物を溶解し、ネマチック液晶組成物を調製した。得られたネマチック液晶組成物を、くさび型の液晶セル(N−Wedge NLCD−057、商品名、NIPPO DENKI CO.,LTD.製)に注入し、25℃における550nmのΔnを算出した。ネマチック液晶組成物LCM(I)の25℃における550nmのΔnが、0.090であることより、検体である液晶化合物の屈折率異方性Δnを外挿法によって算出した。液晶組成物LCM(I)の質量組成比を下記に示す。
【化18】

【0055】
<液晶組成物の屈折率異方性Δnの測定>
25℃でネマチック相を呈する液晶組成物は、外挿法ではなく、前述の方法に準じて直接屈折率異方性Δnを測定した。
【0056】
<液晶化合物の誘電率異方性Δεの測定>
液晶化合物の誘電率異方性Δεの測定方法について説明する。ネマチック液晶組成物LCM(I)に、5〜20質量%になるように、検体である液晶化合物を溶解し、ネマチック液晶組成物を調製した。得られたネマチック液晶組成物の誘電率異方性Δεを周波数応答アナライザ(東陽テクニカ社製、1255B、商品名)を用いて測定した。分子長軸に平行な誘電率ε//の測定に用いた液晶セルの基板は、ITO透明電極層が形成されたガラス基板(厚み1.1mm)であり、セルギャップ8μmで、エポキシ樹脂シール付きであり、一対の基板の対向面には、JSR製ポリイミド配向膜JALS−2021(商品名、垂直配向)が形成されたものである。分子長軸に垂直な誘電率ε⊥の測定に用いた液晶セルの基板は、ITO透明電極層が形成されたガラス基板(厚み1.1mm)であり、セルギャップ8μmで、エポキシ樹脂シール付きであり、一対の基板の対向面には、日産化学製配向膜SE−130(商品名、水平配向)が形成されたものである。誘電率異方性Δεは、ε//−ε⊥と定義した。誘電率異方性Δεは、25℃、周波数100〜1000Hzの範囲で測定し、100、400、1000Hzにおける測定結果の平均値を測定値とした。ネマチック液晶組成物LCM(I)の25℃におけるΔεが、−1.33であることより、検体である液晶化合物の誘電率異方性Δεを外挿法によって算出した。液晶組成物LCM(I)の質量組成比を下記に示す。
【化19】

【0057】
<液晶組成物の誘電率異方性Δεの測定>
25℃でネマチック相を呈する液晶組成物は、外挿法ではなく、前述の方法に準じて直接誘電率異方性Δεを測定した。
【0058】
1. 実施例1 式(Iaa)中、R1がn−ペンチル基であり、R2がn−プロピル基である化合物(LC1)の合成
【化20】

1.−1 4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン−1−カルボン酸エチルエステルの合成
20gの4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン−1−カルボン酸を、150mLのエタノールに溶解し、4mLの濃硫酸を添加した後、6時間加熱環流を行った。室温まで冷却後、20gの炭酸水素ナトリウムを添加し、さらに100mLの水を加えた後、溶媒を減圧下で留去した。残渣を酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮を行い、目的物を無色の油状物として得た。収量は22.0gであり、収率は97.7%であった。
1H−NMRスペクトルデータ(重クロロホルム):4.07(2H,q,J=5.7Hz)、1.72(6H,m)、1.36(6H,m)、1.35−1.02(11H,m)、0.88(3H,t,J=5.7Hz)。
【0059】
1.−2 4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン−1−メタノールの合成
40gのビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリドナトリウム(70%トルエン溶液)を、150mLのテトラヒドロフランに添加し、窒素雰囲気下で撹拌した。この反応液に22gの4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン−1−カルボン酸エチルエステルのテトラヒドロフラン溶液を、25〜30℃に保ちながら滴下した。反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出を行った。希塩酸で洗浄後、有機相を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、目的物を無色油状物として得た。収量は16.2gであり、収率は88.3%であった。
1H−NMRスペクトルデータ(重クロロホルム):3.23(2H,s)、1.38(12H,s)、1.36−1.01(8H,m)、0.86(3H,t,J=7.2Hz)。
【0060】
1.−3 4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン−1−カルボアルデヒドの合成
16.0gの4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン−1−メタノールを、80mLの塩化メチレンに溶解し、室温で撹拌を行った。この混合液に、臭化ナトリウム0.6gを6mLの水に溶解した溶液を添加し、さらに0.4gの2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカルを加えた。この反応液に、激しく撹拌を行いながら市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度約5%)に15g/リットルの炭酸水素ナトリウムを加えたものを滴下した。約100mL滴下したところで反応は完結した。反応終了後、反応液に100mLの水を加えた後、分液を行い、有機相を取り出した。この有機相を直接シリカゲルカラムにチャージし、クロマトグラフィーで精製した。目的物が含まれるフラクションを集め、濃縮して目的物を無色油状物として得た。収量は14.1gである、及び収率は89.0%であった。
1H−NMRスペクトルデータ(重クロロホルム):9.44(1H,s)、1.61(6H,m)、1.41(6H,m)、1.34−1.05(8H,m)、0.88(3H,t,J=7.2Hz)。
【0061】
1.−4 1−エチニル−4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタンの合成
窒素気流下にて、34.0gの臭化ブロモメチル(トリフェニル)ホスホニウムを、250mLのテトラヒドロフランに加え、撹拌懸濁した。この反応液に、−15℃以下で29.0gのt−ブトキシカリウムを少しずつ添加した。添加終了後、40分間撹拌した後、13.5gの4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン−1−カルボアルデヒドのテトラヒドロフラン溶液を滴下し、そのままの温度で1時間撹拌した後、冷却を止め、反応液をゆっくり室温まで戻した。室温で3時間撹拌した後、水を加えて濃縮し、酢酸エチルで抽出を行った。有機相は無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、目的物を無色油状物として得た。収量は7.4gであり、及び収率は55.9%であった。
1H−NMRスペクトルデータ(重クロロホルム):2.06(1H,s)、1.74(6H,m)、1.36(6H,m)、1.35−1.00(8H,m)、0.86(3H,t,J=7.2Hz)。
【0062】
1.−5 4−ヨード−2,3−ジフルオロ−1−n−プロピルベンゼンの合成
窒素気流下にて、5.0gの2,3−ジフルオロ−1−n−プロピルベンゼンを100mLのテトラヒドロフランに加え、攪拌しながら−78℃まで冷却した後に、24mLのn−ブチルリチウム(1.6M/L)をゆっくりと滴下した。−78℃で2時間攪拌後、ヨウ素10.6gを溶かしたテトラヒドロフラン溶液を加え、反応液を室温まで昇温した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、n−ヘキサンで抽出を行った。有機相を希塩酸で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、目的物を無色油状物として得た。収量は8.7gであり、収率は96%であった。
【0063】
1.−6 化合物(LC1)の合成
2.0gの4−ヨード−2,3−ジフルオロ−1−n−プロピルベンゼン、1.44gの1−エチニル−4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン、及び3.5mLのN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加えたN,N−ジメチルアセトアミド10mLの溶液に、窒素気流下にて、250mgのビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド及び135mgのヨウ化銅(I)を加え、室温下2時間攪拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、n−ヘキサンで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、目的物を無色結晶として得た。収量は2.21gであり、収率は87%であった。
1H−NMRスペクトルデータ(重クロロホルム):7.01(1H,ddd,J=8.4,6.3,1.8Hz)、6.80(1H,ddd,J=8.4,6.3,1.5Hz)、2.60(2H,td,J=7.8,1.2Hz)、1.81(6H,m)、1.61(2H,m)、1.39(6H,m)、1.35−1.00(8H,m)、0.92(3H,t,J=7.2Hz)、0.87(3H,t,J=7.2Hz)。
得られた化合物(LC1)は、液晶性を示し、以下の通りの液晶相への転移温度、誘電率異方性Δε、及び屈折率異方性Δnを示した。
液晶性 Cr 58℃ N (31℃) Iso、
Δε(外挿値)= −2.1、
Δn(外挿値)=0.136。
【0064】
2. 実施例2 式(Iaa)中、R1がn−ペンチル基、及びR2がエトキシ基である化合物(LC2)の合成法
【化21】

【0065】
2.−1 4−トリフルオロメタンスルホナート−2,3−ジフルオロ−1−エトキシベンゼンの合成
窒素気流下にて、4.0gの2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェノールを20mLのピリジンに溶かし、氷冷下、無水トリフルオロメタンスルホン酸4.2mLを滴下した。反応液を室温まで昇温し、1時間攪拌した後、水を加え、n−ヘキサンで抽出を行った。有機相を希塩酸で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、目的物を無色油状物として得た。収量は6.95gであり、収率は99%であった。
【0066】
2.−2 化合物(LC2)の合成
2.0gの4−トリフルオロメタンスルホナート−2,3−ジフルオロ−1−エトキシベンゼン、1.33gの1−エチニル−4−n−ペンチルビシクロ〔2.2.2〕オクタン、及び3.5mLのN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加えたN,N−ジメチルアセトアミド10mLの溶液に、窒素気流下にて、250mgのビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、及び135mgのヨウ化銅(I)を加え、80℃にて5時間攪拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、n−ヘキサンで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、目的物を無色結晶として得た。収量は1.81gであり、収率は77%であった。
1H−NMRスペクトルデータ(重クロロホルム):7.01(1H,ddd,J=9.9,7.5,2.4Hz)、6.61(1H,ddd,J=9.3,7.5,1.8Hz)、4.10(2H,q,J=6.9Hz)、1.81(6H,m)、1.44(3H,t,J=7.2Hz)、1.39(6H,m)、1.35−1.00(8H,m)、0.87(3H,t,J=7.2Hz)。
得られた化合物(LC2)は、液晶性を示し、以下の通りの液晶相への転移温度、誘電率異方性Δε、及び屈折率異方性Δnを示した。
液晶性 Cr 79.5℃ N 80.5℃ Iso、
Δε(外挿値)=−5.4、
Δn(外挿値)=0.152。
【0067】
3. 比較例1
比較例として、一般式(I)で表される化合物を含まない、下記組成の液晶組成物Aを調製した。液晶組成物Aの特性を、下記表1に示す。
【0068】
【化22】

【0069】
4. 実施例3:液晶組成物Bの調製
85質量部の液晶組成物A、及び15質量部の化合物(LC2)を混合して、液晶組成物Bを調製した。液晶組成物Bの特性を、下記表1に示す。
【0070】
5. 実施例4:液晶組成物Cの調製
80質量部の液晶組成物A、5質量部の化合物(LC1)、及び15質量部の化合物(LC2)を混合して、液晶組成物Cを調製した。液晶組成物Cの特性を、下記表1に示す。
【0071】
6. 実施例5:液晶組成物Dの調製
70質量部の液晶組成物A、及び30質量部の化合物(LC2)を混合して、液晶組成物Dを調製した。液晶組成物Dの特性を、表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物B、C、及びDはいずれも、一般式(I)で表される化合物を含有しない液晶組成物Aと比較して、Δnが大きいことが理解できる。
【0074】
7. 比較例2:液晶組成物Eの調製
比較例として、一般式(I)で表される化合物を含まない液晶組成物Eを調製した。液晶組成物Eの特性を、下記表1に示す。
【0075】
【化23】

【0076】
8. 実施例6:液晶組成物Fの調製
85質量部の液晶組成物E、及び15質量部の化合物(LC2)を混合して、液晶組成物Fを調製した。液晶組成物Fの特性を、下記表2に示す。
【0077】
9. 実施例7:
80質量部の液晶組成物E、5質量部の化合物(LC1)、及び15質量部の化合物(LC2)を混合して、液晶組成物Gを調製した。液晶組成物Gの特性を、下記表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物F及びGはいずれも、一般式(I)で表される化合物を含有しない液晶組成物Eと比較して、Δnが大きく、しかもΔεも負に大きくなっていることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、所定の式で表される液晶化合物を組み合わせることによって、負の誘電率異方性を示すとともに、高い屈折率異方性を示す液晶組成物を提供することができる。上記特性の本発明の液晶組成物を用いることにより、高温域まで高い電圧保持率を維持できる信頼性に優れた、VA方式、ECB方式、及びIPS方式等のアクティブマトリックス駆動液晶ディスプレイを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A1及びA2は各々独立に、1個以上のフッ素原子によって置換されていてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,4−シクロヘキセニレン基又は1,4−フェニレン基を表し;Z1及びZ2は各々独立に、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2CH2−、又は単結合を表し;m及びnは各々独立に、0又は1を表し;X1及びX2は各々独立に、水素、フッ素原子又は塩素原子を表すが、両方が水素原子であることはない。)で表される化合物の1種又は2種以上と、
下記一般式(II):
【化2】

(式中、R3及びR4は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A3及びA4は各々独立に、
基(a): トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基は、O及び/又はSに置換されてもよい)、
基(b): 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基はNに置換されてもよい)、及び
基(c): 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基、
から選択されるいずれかの基であり、上記の基(a)、基(b)又は基(c)中に存在する水素原子は、CN又はハロゲン原子で置換されていてもよく;Z3は、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−CH2O−、−OCH2−、−OCH(CH3)−、−CH(CH3)O−、−(CH24−、−(CH23O−、−O(CH23−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Y1及びY2は各々独立に、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Z3及びA4が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく;pは0、1又は2を表す。)で表される化合物の1種又は2種以上とを含有する液晶組成物。
【請求項2】
前記1種又は2種以上の一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(III):
【化3】

(式中、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、又は炭素原子数2〜12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO又はSに置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく;A5及びA6は各々独立に、
基(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基は、O及び/又はSに置換されてもよい)、
基(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基はNに置換されてもよい)、及び
基(d) 1,4−シクロヘキセニレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基、
から選択されるいずれかの基であり、上記の基(a)、基(b)又は基(d)中に存在する水素原子は、CN又はハロゲン原子で置換されていてもよく;Z4及びZ5は各々独立に、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CF2CF2−、−CF=CF−、−CH2O−、−OCH2−、−OCH(CH3)−、−CH(CH3)O−、−(CH24−、−(CH23O−、−O(CH23−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;Y3及びY4は各々独立に、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−又は単結合を表し;A5、A6、Z4及びZ5が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく;a及びbは各々独立に、0、1又は2であり;X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表すが、すべてが水素であることはない)で表される化合物である請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される化合物の含有率が、5〜70質量%の範囲である請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記一般式(II)で表される化合物の含有率が、10〜70質量%の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記一般式(I)において、X1及びX2がフッ素原子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶組成物を使用した液晶表示素子。

【公開番号】特開2010−83938(P2010−83938A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252463(P2008−252463)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】