説明

液晶組成物

本発明は、液晶組成物およびこの組成物を含む物品に関する。この組成物は、本明細書に定義されている、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む。
【化1】


組成物の形成方法もまた提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能基化化合物と非官能基化化合物との混合物を含有する液晶組成物、液晶組成物の調製方法、および、組成物から製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモトロピック液晶は、一般に、形状に顕著な異方性を有する結晶性化合物である。すなわち、分子レベルで、これらは、ロッド様またはディスク様構造によって特徴付けられる。これらは、加熱されると、典型的には、段階的に溶融して、結晶から最終的な等方相への1回以上の熱転移を示す。メソフェーズとして知られる中間相は、分子が全体的に層に拘束されている数種のスメクチック相;および、分子が位置的な長距離秩序を伴わずに互いに平行に配向されているネマチック相を含むことが可能である。液晶相は、加熱サイクルで達成されることが可能であり、または、等方相からの冷却で到達可能である。一般的な液晶、および、特にねじれネマチック液晶の構造は、非特許文献1にさらに検討されている。
【0003】
ネマチック相の重要な変形例は、ねじれネマチック相またはコレステリック相と称されるキラル部分が存在するものである。この場合、分子は、ネマチック相のように相互に平行であるが、分子の配向ベクトル(ロッド様分子の平均方向)は、層の厚さを通じて方向が変化してネマチック分子のらせん状のパッキングをもたらす。らせんのピッチは、分子の長軸に直交している。異方性分子のこのらせん状のパッキングは、円偏光二色性、高度の偏光能;ならびに、紫外光、可視光、および、近赤外光を含む光の選択的な反射を含む、ねじれネマチック相の重要で、特徴的な光学特性をもたらす。可視域における反射は、鮮やかに呈色する層をもたらす。らせんの向きは、右手または左手方向であることが可能であり、および、回転の向きは材料の重要な特徴である。キラル部分は、例えば、コレステロールエステルのように液晶性分子自体の中に存在し得、または、コレステリック相の誘起を伴うネマチック相にドーパントとして添加されることが可能である。この現象は、非特許文献2などの資料においてさらに検討されている。
【0004】
ネマチックおよび/またはコレステリック光学特性を示す安定なポリマー層の調製に関心が集まっている。1つのアプローチは、溶融時にネマチックまたはコレステリック相を示す単官能反応性モノマーおよび/または多官能反応性モノマーの合成、低融点液晶組成物の配合、ならびに、ネマチック相またはコレステリック相の安定な光学特性を示すポリマーネットワークをもたらすためのそのネマチックまたはコレステリック相における液晶組成物の合成である。特許文献1に開示されているような、コレステリックモノマーの単独での使用は、例えば、所望の光学特性を有するコレステリック層をもたらすが、ポリマー層は、比較的弱い機械特性を有する。
【0005】
したがって、サーマルウィンドウ(thermal windows)、低い融点、および、結晶化に対する良好な相安定性を有すると共に、調製が容易であり、所望の特性を与えるために調整可能である液晶組成物に対する需要がいまだある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,637,896号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「The Physics of Liquid Crystals」,Gennes and Prost,Oxford University Press,1995年
【非特許文献2】BasslerおよびLabes,J.Chem.Phys.,52,631(1970年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載の本発明の一実施形態は、以下の式(I)、(II)および(III)の各々の構造
【化1】

(式中
Zは、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;
Yは、H、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;
ただし、ZはYとは等しくなく;
n1、n2、n3、n4、n5、および、n6は、各々独立して3〜20の整数であり;
mおよびpは、各々独立して0、1または2の整数であり;
Aは、群:
【化2】

(式中、R〜R10は、各々独立して、群:H、C〜C直鎖または分岐鎖アルキル、C〜C直鎖または分岐鎖アルキルオキシ、F、Cl、フェニル、−C(O)CH、CN、およびCFから選択され;Xは、群:−O−、−(CHC−、および−(CFC−から選択される二価ラジカルであり;ならびに、各BおよびBは、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCHである)、2,6−ナフチル、および、4,4’−ビフェニルから独立して選択される二価ラジカルであり;ただし、m+pが3または4に等しい場合、BおよびBの少なくとも2つがR11置換−1,4−フェニルである)
から選択される二価ラジカルである)
により表される化合物の群の少なくとも1種の化合物を含有する組成物を提供する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む液晶組成物であり、さらなる実施形態において、液晶組成物は、少なくとも1種のキラル化合物を含む。
【0010】
本発明の他の実施形態は、液晶組成物を含む物品であり、さらなる実施形態において、物品は、光学素子として製造される。
【0011】
本明細書に記載の本発明の他の実施形態は、
(a)少なくとも2個のヒドロキシル基と少なくとも2個の共有結合された炭素原子とを含み、ヒドロキシル基の各々が有機ポリオール中の異なる炭素原子に結合している1種以上の有機ポリオールを提供する工程;
(b)有機ポリオールを、任意により塩基の存在下に、
(i)以下の式(X)の構造:
Z−(CH−C(O)X (X)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;Zは、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CN、またはNOであり;および、nは3〜20に等しい整数である)
によって表される1種以上の官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;および
(ii)以下の式(XI)の構造:
Y−(CH−C(O)X (XI)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;Yは、H、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;および、tは3〜20に等しい整数である)
によって表される1種以上の非官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;
(ただし、ZはYとは異なる);と、反応溶剤中に、反応温度で反応させて、組成物および使用済反応混合物を含む混合物を提供する工程
により組成物を調製する方法である。
【0012】
他の実施形態において、本発明は、上記に開示されている方法により調製された組成物を提供し;ならびに、他の実施形態において、上記に開示の方法により調製された組成物は、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む。
【0013】
本明細書に記載の組成物は液晶組成物において多様な用途を有する。組成物の各化合物が、例えば、対称であるかまたは非対称であるよう、種々のラジカルおよび置換基について規定の範囲内から選択がなされ得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載の本発明の一実施形態は、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物
【化3】

(式中
Zは、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;
Yは、H、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;
ただし、ZはYとは等しくなく;
n1、n2、n3、n4、n5、および、n6は、各々独立して3〜20の整数であり;
mおよびpは、各々独立して0、1または2の整数であり;および
Aは、群:
【化4】

(式中、R〜R10は、各々独立して、群:H、C〜C直鎖または分岐鎖アルキル、C〜C直鎖または分岐鎖アルキルオキシ、F、Cl、フェニル、−C(O)CH、CN、およびCFから選択され;Xは、群:−O−、−(CHC−、および−(CFC−から選択される二価ラジカルであり;ならびに、各BおよびBは、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCHである)、2,6−ナフチル、および、4,4’−ビフェニルから独立して選択される二価ラジカルであり;ただし、m+pが3または4に等しい場合、BおよびBの少なくとも2つがR11置換−1,4−フェニルである)
から選択される二価ラジカルである)
を含む組成物を提供する。
【0015】
本明細書において用いられるところ、略記「−OTf」とは、トリフレートまたはトリフルオロメタンスルホネート基とも称される、式CFSO−を有する官能基を指す。本明細書において用いられるところ、略記−OTs」とは、トシレート基とも称される、式CHSO−を有する官能基を指す。本明細書において用いられるところ、略記「−OMs」とは、メシレートまたはメタンスルホン酸基とも称される、式CHSO−を有する官能基を指す。
【0016】
「各BおよびBは、群・・・から独立して選択される二価ラジカルである」という句において、m=2の場合、2つのBユニットは各々独立して選択され、すなわち、これらは、同一であっても異なっていてもよく;ならびに、p=2の場合、2つのBユニットは各々独立して選択され、すなわち、これらは、同一であっても異なっていてもよい。加えて、C〜C基は、C、C、C、C、C、C、CまたはCのいずれか1つ以上であり得る。明細書全体を通じて、式(I)、(II)、(III)において、−A−がt−シクロヘキシル部分であると共に、mおよびpの一方または両方が0に等しい整数である場合、「アリールアルカノエートエステル」という用語は、シクロヘ
キシルアルカノエートエステル指すことが可能である。
【0017】
組成物の各化合物について、n1、n2、n3、n4、n5、および、n6は、各々独立して3〜10の整数であり得る。組成物の各化合物について、mおよびp=2の場合、BおよびBは、各々独立してR11置換−1,4−フェニルであり得る。
【0018】
一実施形態においては、Zは、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsであると共に、Yは、H、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsである。他の実施形態において、ZはBrであると共にYはHである。他の実施形態において、組成物の式(I)、(II)、(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは0であると共にpは0である。他の実施形態において、組成物の式(I)、(II)、(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0である。他の実施形態において、組成物の式(I)、(II)、(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1である。他の実施形態において、組成物の式(I)、(II)、(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0である、および組成物の式(I)、(II)、(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1である。他の実施形態において、n1、n2およびn4が同一である。他の実施形態において、組成物は式(I)の化合物を1つだけ含む。他の実施形態において、組成物は、式(I)の化合物を1つだけ含み、ならびに、n1、n2およびn4は同一である。
【0019】
本発明の他の実施形態は、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物であり、ここで、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは0であると共にpは0であると共に、式(I)は、以下の式(VIIa〜VIIf)の構造:
【化5】

によって表される化合物の群から選択される。
【0020】
この実施形態において、式(II)は、以下の式(XVIIa〜XVIIf)の構造:
【化6】

によって表される化合物の群から選択されると共に、式(III)は、以下の式(XVIIIa〜XVIIIf)の構造:
【化7】

によって表される化合物の群から選択される。
【0021】
式(VIIa〜VIIf)、(XVIIa〜XVIIf)、および(XVIIIa〜XVIIIf)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物は、液晶組成物のための希釈剤および粘度変性剤として有用である。これらの組成物の合成方法が以下に記載されている。好ましい組成物は、R〜RがHである式(VIIa〜VIId);R〜RがHであると共に、RがCHである式(VIIa);ならびに、Xが−C(CH−または−O−である式(VIIe)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。
【0022】
本発明の他の実施形態は、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物であり、ここで、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0であり、ならびに、式(I)は、以下の式(VIIIa〜VIIIe)の構造:
【化8】

によって表される化合物の群から選択される。
【0023】
この実施形態において、式(II)は、以下の式(XIXa〜XIXe)の構造:
【化9】

によって表される化合物の群から選択されると共に、式(III)は、以下の式(XXa〜XXe)の構造:
【化10】

によって表される化合物の群から選択される。
【0024】
式(VIIIa〜VIIIe)、(XIXa〜XIXe)、および(XXa〜XXe)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物は液晶組成物において有用である。このような組成物は、式(VIIIa〜VIIIe)に記載の少なくとも1種の化合物を含む場合、室温またはその付近で(RT、約25℃)ネマチック相を示す。他の液晶モノマーを組成物に添加して、広い温度範囲にわたってネマチック相をもたらすことが可能である。この群の中の他の化合物は、低い融点を示し得ると共に、液晶混合物において反応性希釈剤および粘度変性剤として用いられることが可能である。好ましい組成物は、式(VIIIa)(式中、R〜RはHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。これらの組成物の合成方法が以下に記載されている。
【0025】
本発明の他の実施形態は、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物であり、ここで、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1であると共に、式(I)は、以下の式(IXa〜IXe)の構造:
【化11】

によって表される化合物の群から選択される。
【0026】
この実施形態において、式(II)は、以下の式(XXIa〜XXIe)の構造:
【化12】

によって表される化合物の群から選択されると共に、式(III)は、以下の式(XXIIa〜XXIIe)の構造:
【化13】

によって表される化合物の群から選択される。
【0027】
式(IXa〜IXe)、(XXIa〜XXIe)、および、(XXIIa〜XXIIe)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物は液晶組成物において有用である。このような組成物は、式(IXa〜IXe)に記載の少なくとも1種の化合物を含む場合、ネマチック相を広い温度範囲にわたって示す。他の液晶モノマーを組成物に添加して、広い温度範囲にわたってネマチック相をもたらすことが可能である。好ましい組成物は、式(IXa)(式中、BおよびBはR11置換−1,4−フェニルである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。組成物のこの群において、さらに好ましい組成物は、例えば、以下の式(XXIII):
【化14】

に示されているとおり基R〜Rの1つがClまたはCHであり;ならびに、基R〜Rの3つがH−−である少なくとも1種の化合物をさらに含む。
【0028】
これらの好ましい組成物において、n1およびn2が、独立して、3〜10の整数である化合物を含むものがさらに好ましい。これらの組成物の合成方法が以下に記載されている。
【0029】
本発明の他の実施形態は、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物であって、ここで、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0であり;ならびに、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1である。このような組成物は、液晶組成物において有用であることが可能であると共に、室温(RT)またはその付近でネマチック相を示すことが可能である。他の液晶モノマーを組成物に添加して、広い温度範囲にわたってネマチック相をもたらすことが可能である。好ましい組成物は、式(VIIIa)および/または式(IXa)(式中、R〜RはHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。他の好ましい組成物は、式(XXIII)の化合物の少なくとも1種を含む。他の好ましい組成物は、式(VIIIa)および/または式(IXa)(式中、基R〜Rの1つはCHであり;ならびに、基R〜Rの3つはHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。これらの組成物の合成方法が以下に記載されている。
【0030】
他の実施形態において、式(I)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて約0.1モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態において、式(I)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて約5モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態において、式(I)の各々の化合物は、組成物の総含有量に基づいて約20モルパーセント〜約80モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0031】
他の実施形態において、式(II)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて、約5モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態において、式(II)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて約10モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0032】
他の実施形態において、式(III)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて約0.1モルパーセント〜約90モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態において、式(III)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて約0.1モルパーセント〜約60モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0033】
化合物の各々を個別に合成し、次いで、これらを組み合わせて所望の組成物を形成するのではなく、本発明の組成物が本明細書に記載の方法の一実施形態(以下に開示のものなど)により調製される場合、方法の実施形態を用いることによる1つの結果は、組成物中の式(I)、(II)および(III)の各々の化合物の相対量が、この方法によって実施される一定の関係によって決定されることである。組成物が本明細書に記載の方法のその実施形態によって調製される場合、式(I)、(II)または(III)の1つの化合物の所望の量は予め選択されており、および、反応体の適切な比が採用されてその式の化合物が所望の量で生成される。式(II)、(II)または(III)化合物の1つを所望の量で生成するために選択された反応体の比はまた、しかしながら、一定の関係に従って一定量の他の2つの化合物をも生成することとなる。例えば、プロセスのこの実施形態において、反応体中で用いられた脱離基の量に関連して生成される式(I)、(II)または(III)化合物の各々の量は、予め決定され得る一定の関係に従うこととなる。
【0034】
どの式(I)、(II)または(III)の化合物についてどれくらいの量が予め選択されるかは、組成物の所望される最終用途(例えば所望される柔軟性または脆性の程度)に応じる。式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む本明細書に記載の組成物の本明細書に記載の方法による調製は、それ故、式(I)、(II)および(III)化合物の各々の相対的な含有割合を調節することにより本明細書に記載の組成物の物理特性を調整し得るため、単一の化合物を含む組成物、式(I)、(II)および(III)の化合物の一部を含む組成物、または、個別に形成された化合物をブレンドすることにより調製された組成物を超える利点を提供することが可能である。例えば、本明細書に記載の組成物の結晶速度、熱特性または架橋度(それ故、柔軟性または脆性)はこのような様式において調整され得る。
【0035】
本明細書に記載の本発明の他の実施形態は、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物を調製する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、
(a)少なくとも2個のヒドロキシル基と少なくとも2個の共有結合された炭素原子とを含み、ヒドロキシル基の各々が有機ポリオール中の異なる炭素原子に結合している1種以上の有機ポリオールを提供する工程;ならびに、
(b)有機ポリオールを、任意により塩基の存在下に、(i)以下の式(X)の構造:
Z−(CH−C(O)X (X)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;Zは、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;および、nは3〜20に等しい整数である)
によって表される1種以上の官能基化アルキル酸またはアルキル酸ハロゲン化物;および、
(ii)以下の式(XI)の構造:
Y−(CH−C(O)X (XI)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;Yは、H、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;および、tは3〜20に等しい整数である)により表される1種以上の非官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;(ただし、ZはYと異なっている);と、反応溶剤中に、反応温度で反応させて、上述のとおり、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物と、使用済反応混合物とを含む混合物を提供する工程を含む。好ましくは、XがOHである場合、本方法は、カルボジイミド脱水剤の使用をさらに含む。
【0036】
本発明の方法の種々の実施形態において、ポリオールは、以下の式(XIIa〜XIIf)の構造によって表される化合物の群:
【化15】

から選択され得、式中、R〜R10およびXは上記のとおりである。本方法のこれらの実施形態を用いて、上記のとおり式(VIIa〜VIIf)の化合物を含む組成物を提供することが可能である。本方法において有用であると共に好ましい式(XIIa〜XIIf)の特定のジオールとしては:ハイドロキノン、メチルヒドロキノン、クロロヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA、6F−ビスフェノールA、4,4’−オキシジフェノール、および、t−1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0037】
本明細書に記載の方法の他の実施形態において、ポリオールは、以下の式(XIIIa〜XIIIg)の構造:
【化16】

によって表される化合物の群から選択される1種以上のエステルジオールを含み得、式中、R〜R11は上記のとおりである。この方法のこれらの実施形態を用いて、上記のとおり式(VIIIa〜VIIIe)の化合物を含む組成物を提供することが可能である。この方法において有用であると共に好ましい特定の式(XIIIa〜XIIIg)のエステルジオールとしては:4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、2−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、2−クロロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、2−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、2−フェニル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、6−ヒドロキシナフチル4−ヒドロキシベンゾエート、5−ヒドロキシナフチル4−ヒドロキシベンゾエート、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)4−ヒドロキシベンゾエート、t−4−ヒドロキシシクロヘキシル4−ヒドロキシベンゾエート、t−4−ヒドロキシシクロヘキシル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、2−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、2−クロロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メチルベンゾエート、2−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メチルベンゾエート、および3−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メチルベンゾエートが挙げられる。
【0038】
本方法において有用なかつ好ましい6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸に由来する式(XIIIe)により記載される特定の化合物を含む組成物をもたらす他のエステルジオールは:6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸4−ヒドロキシフェニルエステル(CAS No.[17295−17−9])、6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸2−メチル−4−ヒドロキシフェニルエステル、6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸3−メチル−4−ヒドロキシフェニルエステル、6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸2−クロロ−4−ヒドロキシフェニルエステル、および6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルエステルである。
【0039】
本方法において有用なかつ好ましい4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸に由来する式(XIIIg)に記載されている特定の化合物を含む組成物をもたらす他のエステルジオールとしては:4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸4−ヒドロキシフェニルエステル、4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸2−メチル−4−ヒドロキシフェニルエステル、4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸3−メチル−4−ヒドロキシフェニルエステル、4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸2−クロロ−4−ヒドロキシフェニルエステル、および4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルエステルが挙げられる。
【0040】
本明細書に記載の方法の他の実施形態において、ポリオールは、以下の式(XIVa〜XIVf)の構造:
【化17】

【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
2種以上のポリオールの混合物を用いることが得られる組成物の生成物分布の複雑さを高める一手段である。これは、組成物の特性またはその最終用途の特性を調整するための方法であることが可能である。ポリオールは、例えば、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物について、mが1であると共にpが0である組成物、および、これらの同じ式の各々の少なくとも1種の化合物について、mが1であると共にpが1である組成物といった、2つ以上のメソゲンを有する組成物を提供するために選択されることが可能である。ポリオールの他の組み合わせもまた用いられることが可能である。
【0044】
式(X)に記載の好ましい官能基化アルキル酸ハロゲン化物は、酸塩化物(X=Cl)である。一実施形態においては、式(X)において、ZはBr、I、−OTs、−OTfまたは−OMsである。式(XI)に記載されている好ましい非官能基化アルキル酸ハロゲン化物は、酸塩化物(X=Cl)である。一実施形態においては、式(XI)において、Yは、H、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsである。一実施形態においては、式(X)においてZはBrであると共に、式(XI)においてYはHである。
【0045】
有機ポリオールがジオールである場合、官能基化アルキル酸ハロゲン化物および非官能基化アルキル酸ハロゲン化物の総量は、ジオールの量に基づいて、好ましくは約1.8〜約2.5当量、および、より好ましくは約2.0当量である。用いられた官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が、組成物中に得られた式(I)、(II)および(III)の化合物の相対量を決定する。例えば、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との1:1混合物(モル基準で)は、式(I)、(II)および(III)の化合物の相対的なモル量が、それぞれ、1:2:1である組成物をもたらす。あるいは、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物と(例えば、ジオールに対して、1.6当量の官能基化アルキル酸ハロゲン化物と0.4当量の非官能基化アルキル酸ハロゲン化物)の4:1混合物(モル基準で)は、64mol%式(I)の化合物、32mol%式(II)の化合物、および、4mol%式(III)の化合物を有する組成物をもたらす。官能基化アルキル酸ハロゲン化物対非官能基化アルキル酸ハロゲン化物の所与の比について、生成物の分布は、すべての可能性の統計学的な混合物である。官能基化アルキル酸ハロゲン化物および/または非官能基化アルキル酸ハロゲン化物の総数を高めることが、生成物分布の複雑さ、すなわち、得られる組成物中の各式(I)、(II)および(III)の化合物の数を高める一手段である。
【0046】
他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物が提供され、ここで、式(I)の化合物の総量は、組成物の総含有量に基づいて約0.1モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲である。他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて組成物が提供され、ここで、式(I)の化合物の総量は、組成物の総含有量に基づいて約5モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲である。他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて組成物が提供され、ここで、式(I)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて、約20〜約80モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0047】
他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物が提供され、ここで、式(II)の化合物の総量は、組成物の総含有量に基づいて約5モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲である。他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて組成物が提供され、ここで、式(II)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて、約10〜約50モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0048】
他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物が提供され、ここで、式(III)の化合物は、組成物の総含有量に基づいて約0.1モルパーセント〜約90モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて組成物が提供され、ここで、式(III)の化合物の総量は、組成物の総含有量に基づいて約0.1モルパーセント〜約60モルパーセントの範囲である。
【0049】
この方法、または、数々の非官能基化アルキル酸ハロゲン化物と併せて数々の官能基化アルキル酸ハロゲン化物を用いるその変形例は、組成物を提供する簡便であると共に好ましい方法である。
【0050】
反応溶剤は、アルコールとの酸ハロゲン化物縮合を実施するために有用である技術分野において公知である任意の溶剤であることが可能であり、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンまたはジメトキシエタンなどのアルキルエーテル;酢酸エチルまたは酢酸ブチルなどのアルキルエステル;キシレンまたはトルエンなどの炭化水素;1,2−ジクロロエタンまたはジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;ならびに、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセタミド(DMAc)などのアミドが挙げられる。好ましい反応溶剤はTHFである。
【0051】
反応温度は、副生成物が最低で適切な反応速度が得られる温度である。反応温度は、一般に、−30℃〜約50℃であり、および、好ましくは、約0℃〜約室温(RT、例えば25℃)である。
【0052】
ステップ(b)において任意により用いられる場合、塩基は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、あるいは、炭酸水素塩といった無機塩基;または、少なくとも2個の脂肪族基を有するか、もしくは、N原子の周囲に立体的な混み合いを誘起するよう置換される脂環式もしくは芳香族環にN原子があるアミン塩基などの有機塩基を含むことが可能である。典型的には、アミン塩基は、水溶解度が低く、かつ、約10の共役酸のpKを有するものであろう。それ故、アミン塩基は、例えば2,6−ジメチルピリジンといったピリジンもしくは置換ピリジンなどの芳香族複素環式塩基であり得;または、充分な立体傷害を伴っている第二級アミンであり得る。好適な第二級アミンの例は、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンである。しかしながら、式R121314N(式中、R12、R13およびR14の各々が独立してC〜C10アルキル基もしくはC〜Cシクロアルキル基である)の第三級アミンが好ましい。アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルが挙げられる。式R121314Nの好適な第三級アミンは、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリエチルアミン、t−ブチルジメチルアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルイソブチルアミン、N,N−ジイソプロピル−2−エチルブチルアミン、トリ−n−ブチルアミンである。群:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、および2,6−ジメチルピリジンから選択されるアミン塩基が好ましい。塩基は、用いたアルキル酸ハロゲン化物の合計(すなわち、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との和)の1当量当たり、約0.8〜約5当量の量で存在していることが好ましい。
【0053】
ステップ(b)において任意により用いられる塩基がアミン塩基である場合、反応の副生成物はアミン塩酸塩などのアミン塩である。一実施形態において、このアミン塩は、例えば、反応混合物をろ過することにより使用済反応混合物から除去される。他の実施形態において、ステップ(b)によってもたらされる式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む混合物は、使用済反応混合物から技術分野において公知である多様な方法によって分離されることが可能である。好ましい方法は:アミン塩副生成物をろ過するステップ;反応混合物を水中に析出させ、ろ過するステップ;反応混合物を水および/または有機溶剤中に分割するステップ;反応混合物を水で洗浄するステップ;反応混合物を乾燥剤で乾燥させるステップ;蒸発により溶剤を除去するステップ;ならびに、粗生成物を、式(I)、(II)および(III)の化合物の混合物を溶解させることなく、選択的に副産物を除去する1種以上の溶剤で洗浄するステップのいずれか1つ以上を含む。
【0054】
ステップ(b)において用いられる場合、好適なカルボジイミド脱水剤は、通例、酸をアルコールおよびフェノールとカップリングする際に用いられる任意のジイミドであり得る。ステップ(b)について好ましいカルボジイミドはジシクロヘキシルカルボジイミドである。
【0055】
本発明の他の実施形態は、例えば本発明の組成物であり得る、本発明の方法によって形成された組成物である。式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物は、
(a)少なくとも2個のヒドロキシル基と少なくとも2個の共有結合された炭素原子とを含み、ヒドロキシル基の各々が有機ポリオール中の異なる炭素原子に結合している1種以上の有機ポリオールを提供する工程;および
(b)有機ポリオールを、任意により塩基の存在下に、
(i)以下の式(X)の構造:
Z−(CH−C(O)X (X)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;Zは、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsであり;および、nは3〜20に等しい整数である)
によって表される1種以上の官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;ならびに、
(ii)以下の式(XI)の構造:
Y−(CH−C(O)X (XI)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;YはHであり;および、tは3〜20に等しい整数である)
によって表される1種以上の非官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;
(ただし、ZはYとは異なっている);と、反応溶剤中に反応温度で反応させて、組成物および使用済反応混合物を含む混合物を提供する工程
により入手され得る。
【0056】
式(VIIIa〜VIIIe)および(IXa〜IXe)の化合物の少なくとも1種を含むものなどの本発明の組成物は、本発明の他の実施形態である液晶組成物において有用である。これらの組成物の多くは溶融の際にネマチック相を示す。本発明の種々の実施形態の組成物が、それぞれのネマチック相を定義する対応する熱転移と共に以下の実施例において示されている。
【0057】
本発明のさらなる実施形態において、液晶組成物は、重合性キラルモノマーおよび/または非重合性キラルモノマーを含む少なくとも1種のキラル化合物を含んでいることが可能である。好ましい液晶組成物は、式(VIIIa〜VIIIe)および(IXa〜IXe)の化合物の少なくとも1種を含む。
【0058】
安息香酸塩エステル、アルキルエステル、および、コレステローのルのアルキル炭酸塩などのコレステロールエステルまたはカーボネートを含むキラル化合物は、コレステリック相を示すことで知られており、ネマチック相におけるキラリティーを含み、ねじれネマチック相の生成に有用であることが知られている。本明細書において用いられるところ、「ねじれネマチック相」、「コレステリック相」、および、「キラルネマチック」という用語は同義である。本発明の液晶組成物への組み込みに有用なコレステロールエステルとしては、アルキルおよびアルコキシ基がC〜C直鎖または分岐鎖アルキル基であるコレステロールベンゾエート、コレステロール4−アルキルベンゾエートおよびコレステロール4−アルコキシベンゾエート;コレステロールプロピオネート、コレステロールブタノエート、コレステロールヘキサノエート、コレステロールオクタノエート、コレステロールデカノエート、コレステロールウンデカノエート、コレステロールドデカノエート、コレステロールヘキサデカノエート、および、コレステロールオクタデカノエートが挙げられる。この目的のために有用なコレステロールカーボネートとしては、フェニルコレステロールカーボネート、4−アルキルフェニルコレステロールカーボネート、4−アルコキシフェニルコレステロールカーボネート、および、アルキルまたはアルコキシ基がC〜C直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキルコレステロールカーボネートが挙げられる。
【0059】
本発明の組成物の一実施形態において、組み込まれるキラル化合物は重合性キラルモノマーであり、米国特許第4,637,896号明細書に記載の重合性コレステロール誘導体;米国特許第6,010,643号明細書に記載の重合性テルペノイド誘導体;米国特許第5,560,864号明細書に記載のキラル中心が分岐アルキル鎖の非対称炭素原子である重合性誘導体;米国特許第6,120,859号明細書および米国特許第6,607,677号明細書に記載のビシナルジオールまたは置換ビシナルジオールの重合性誘導体;ならびに、米国特許第6,723,395号明細書、米国特許第6,217,792号明細書、米国特許第5,942,030号明細書、米国特許第5,885,242号明細書および米国特許第5,780,629号明細書に記載の重合性キラル化合物が挙げられる。好適なキラル化合物の追加の例が、同時継続中の、本出願人による、米国特許出願公開第2007/0267599号明細書、国際公開第2009/023759号パンフレットおよび国際公開第2009/023762号パンフレットに記載されている。この段落において上記に列挙されている文献は、参照により、各々が、すべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される。
【0060】
本発明の組成物における使用のための重合性キラルモノマーの好ましい群は、以下の式(XV)の構造:
【化18】

に表されるものであり、式中、RおよびRは、各々独立して、群:H、F、ClおよびCHから選択され;n1およびn2は、各々独立して3〜20の整数であり;qおよびrは、各々独立して0、1または2の整数であるが、ただし、q+rは≧1であり;Dは、群:
【化19】

から選択される二価のキラルラジカルであり;ならびに、BおよびBは、各々、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCHである)、2,6−ナフチル、および、4,4’−ビフェニルから独立して選択される二価ラジカルであり;ただし、q+r=3であり、BおよびBの少なくとも一方はR置換−1,4−フェニルであり;ならびに、q+r=4である場合、BおよびBの少なくとも2つがR置換−1,4−フェニルである。好ましくは、RおよびRは、独立して、HまたはCHであり;ならびに、n1およびn2は、独立して、3〜10の整数である。
【0061】
式(XV)の化合物が、例えば、対称または非対称であるよう、種々のラジカルおよび置換基について規定の範囲内から選択がなされ得る。
【0062】
本発明を実施するための重合性キラルモノマーの他の好ましい群は、以下の式(XVI)の構造:
【化20】

により表されるものであり、式中、Rは、群:H、F、ClおよびCHから選択され;Eは、群:−(CHn7−、−(CHn8O−および−(CHCHO)n9−から選択され;n7およびn8は、各々、3〜20の整数であり;n9は1〜4の整数であり;ならびに、yは0または1の整数である。
【0063】
任意選択でキラルモノマーを含む本発明の組成物からの液晶層の形成は、均一な層、または、所望の場合には、パターン化された、もしくは、不均一な層をもたらす任意の方法によって達成されることが可能である。ロッドコーティング、押出し成形コーティング、グラビアコーティング、および、スピンコーティング、吹付け、印刷、ブレード印刷、へら付け、または、これらの方法の組み合わせを含むコーティングを用いることが可能である。コーティングおよびへら付けが好ましい方法である。多くの商業用コーティング機器、コーティングロッドおよびナイフブレードなどのデバイス、ならびに、印刷機器を用いて、液晶混合物を液晶または等方相として適用することが可能である。
【0064】
ねじれネマチック相の光反射能は、ねじれネマチック相の配向またはテクスチャに応じる。高度な透明度が反射域の外で要求される多くの用途に関しては、または、きわめて良好に画定された反射域が要求される用途においては、平面において高度な均一性、または、均質な配向が要求される。平面配向における不連続部および分域境界は、高度のヘーズおよび反射域の減損をもたらす可能性がある。平面配向における高度の均一性は、配向層、および/または、基材への適用の最中および/またはその後のねじれネマチック相の機械的シェアリングの組み合わせで達成されることが可能である。配向層は、典型的には、基材に適用され、および、ラビング織布で機械的にバフがかけられたポリマーであるか、または、偏光で光学的に配向されたポリマーである。バフかけまたは光学的配向は、界面に適用された液晶分子を一方向に配向させる。有用なポリイミド配向層が、例えば、米国特許第6,887,455号明細書に記載されている。希釈液晶混合物をコートすることによるねじれネマチック相の配向が、米国特許第6,410,130号明細書に記載されている。
【0065】
液晶層を処理して所望の液晶相を得る工程は、例えば所望の相または光学特性を達成するための液晶層の冷却もしくは加熱;、例えば、液晶層へのナイフブレードの適用、もしくは、液晶層が挿入されている2つ以上の基材のシェアリングによる液晶層への機械的シェアの印加;または、振動、超音波処理、あるいは、基材への他の形態のじょう乱などのステップを含んでいることが可能である。
【0066】
本発明により提供される液晶組成物は、さらに、例えば、2−エトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエ
チレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む重合性希釈剤を少量で含んでいてもよい。
【0067】
本発明によって提供される液晶組成物は、さらに、1種以上の界面活性剤、均展剤、粘度変性剤、湿潤剤、脱泡剤および紫外線安定剤などの典型的な添加剤を少量で含んでいてもよい。選択は、度々、観察されるコーティング、および、配向品質、および、液晶コーティングの基材および他の層に対する所望される粘着性に応じることとなる。典型的な界面活性剤は、シロキシ−、フルオリル−、アルキル−およびアルキニル−置換界面活性剤を含む。これらとしては、Byk(登録商標)(Byk Chemie)、Zonyl(登録商標)(DuPont)、Triton(登録商標)(Dow)、Surfynol(登録商標)(Air Products)、および、Dynol(登録商標)(Air
Products)界面活性剤が挙げられる。
【0068】
ねじれネマチック相の赤外光域、可視光域または紫外光域における光の選択的な反射能は、多くの用途において有用である。平面偏光または不偏光の伝播方向がねじれネマチック層のらせん軸に沿っている場合、最大反射波長λは、式λ=npによって支配され、式中、nはnおよびnの平均であり、ならびに、nおよびnは、それぞれ、伝播方向において計測されたねじれネマチック相の常光屈折率および異常光屈折率と定義され、ならびに、pはらせんのピッチ(らせん自体が反復する距離)である。λの近くから外れた光は、基本的に透過の際に影響はされない。波長λに近い波長を有する光については、ねじれネマチック相は、光のおよそ50%が反射され、および、光のおよそ50%が透過されるような選択的な光の反射を示し、反射光線および透過光線は共に実質的に円偏光される。右らせんは右偏光を反射し、左偏光を透過させる。約λを中心とするこの反射波長帯の帯域Δλは、式Δλ=λΟ・Δn/n(式中、Δn=n−n)によって決定されることが可能であり、液晶材料中に存在する複屈折を反射する。ピッチpは、キラルドーパントの量、ドーパントのねじれ力、および、ネマチック材料の選択を操作することにより、効果的に調整することが可能である。ピッチは温度に感応性であり、温度変化に伴って巻き戻しまたは巻き増しされ;ならびに、電界、ドーパント、および、他の環境的配慮に感応性である。それ故、ねじれネマチック相においては、ピッチ、それ故、最大反射の波長の操作は、広く多様なツールで達成されることが可能である。しかも、反射波長帯の帯域Δλもまた、米国特許第5,506,704号明細書および米国特許第5,793,456号明細書に記載の様式で操作されることが可能である。
【0069】
本発明の組成物から得られる物品は、光学素子として、または、光学素子の部品として有用である。光学素子は、フィルム、コーティング、または、光の特徴を変更するために用いられる成形物品のいずれかである。光学素子によってもたらされる変更としては、透過率もしくは反射率の変化に伴う光強度の変化、波長もしくは波長分布の変化、偏光状態の変化、光の一部もしくはすべての伝播方向の変化、または、例えば、光の集束、コリメート、あるいは、拡散による強度の空間分布の変化が挙げられる。光学素子の例としては、直線偏光子、円偏光子、レンズ、鏡、コリメータ、拡散器、反射器等が挙げられる。液晶組成物を含む光学素子を包含する物品の有用性の例は、例えば、P.Palffy−Muhorayによる、「The Diverse World of Liquid Crystals」,Physics Today(2007年),60(9),54〜60ページの総体的な概説において提供されている。
【実施例】
【0070】
本発明の有利な属性および効果が、以下に記載のとおり、一連の実施例(実施例1〜3)からより完全に評価され得る。しかしながら、これらの実施例が基づいている実施形態
は単なる例示であり、本発明を例示するためのこれらの実施形態の選出は、これらの実施例に記載されていない材料、条件、明細、要素、レジメ、反応体、ステップ、処方成分、または、技術が本発明の実施に好適ではないことを示すものではなく、または、これらの実施例において記載されていない主題が添付の特許請求の範囲およびその均等物から排除されることを示すものではない。
【0071】
以下の実施例においては、熱転移は摂氏温度で記されている。以下の表記法観察された相の記載に用いられている:K=結晶性、N=ネマチック、S=スメクチック、TN*=ネジレネマクチック、X=不識別相、I=等方性、P=重合。熱転移および相の割当は示差走査熱量測定法および高温光学顕微鏡法で行った。別段の記載のない限り、相挙動は第1の加熱サイクルに関する。
【0072】
化合物1は、米国特許出願公開第2007/0228326号明細書に記載のとおり入手した。これらの実施例において用いたすべての他の材料は市販されている供給元から入手した。
【0073】
実施例1
この実施例は、本発明の一実施形態の液晶混合物である混合物1の形成を例示する。混合物1は、1種の式(I)の化合物、2種の式(II)の化合物、および、1種の式(III)の化合物を含む組成物に相当する。
【0074】
【化21】

【0075】
10gの化合物1を40mL THFおよび9.5mLトリエチルアミン中に溶解させ、および、0℃に冷却した。60mL THF中の8.96g6−塩化ブロモヘキサノイルおよび1.68g塩化バレロイルの混合物を20分間かけて滴下した。攪拌をさらに30分間、0℃で継続した。冷却浴を除去し、反応をさらに90分間撹拌した。反応をろ過して塩を除去し、塩をTHFで洗浄した。溶剤のおよそ75%を減圧下で除去し、および、原油を過剰量の水に添加して、無色の沈殿物を形成した。固形分をろ過し、水、メタノールで洗浄し、および、乾燥させて、17.74gの混合物1を得た。第1の加熱工程:K81−85 N177−179 I
【0076】
実施例2
この実施例は、本発明の一実施形態の液晶混合物である混合物2の形成を例示する。混合物2は、1種の式(I)の化合物、4種の式(II)の化合物、および、4種の式(III)の化合物を含む組成物に相当する。
【0077】
【化22】

【0078】
10gの化合物1を40mL THFおよび9.5mLトリエチルアミン中に溶解させ、および、溶液を0℃に冷却した。30mL THF中の9.56g 6−塩化ブロモヘキサノイル、0.75g塩化ヘキサノイル、および、0.91g塩化オクタノイルの混合物を20分間かけて滴下した。反応混合物をさらに30分間、0℃で撹拌し、冷却浴を除去し、および、反応をさらに90分間かけて撹拌させた。反応混合物をろ過して塩を除去し、塩をTHFですすぎ、および、有機物をジエチルエーテルで希釈し、および、水で洗浄した。この有機物をMgSOで乾燥させ、ろ過し、および、濃縮して、18.58gの混合物2をオフホワイトの固体として得た。第1の加熱工程:K85−91 N 166−171 I
【0079】
実施例3
この実施例は、本発明の一実施形態の液晶混合物である混合物3の形成を例示する。混合物3は、4種の式(I)の化合物、8種の式(II)の化合物、および、4種の式(III)の化合物を含む組成物に相当する。
【0080】
【化23】

【0081】
【表3】

【0082】
本明細書に示されている式の各々には、(i)他の可変ラジカル、置換基または数値係数のすべてを一定に維持しながら、可変項、置換基または数値係数の1つを規定の範囲内から選択すること、および、(ii)次いで、他の可変ラジカル、置換基または数値係数の各々について、他のものを一定に維持しながら、規定の範囲内から同一の選択を実施することにより、その式において形成可能である個別の独立した化合物の各々およびすべてが記載されている。規定の範囲内から、この範囲によって記載されている群の構成要素の1つのみの可変ラジカル、置換基または数値係数のいずれかについて行った選択に追加して、ラジカル、置換基または数値係数の群の構成要素のすべてではないが2つ以上を選択することにより、複数の化合物が記載され得る。可変ラジカル、置換基または数値係数のいずれかについて規定の範囲内から行った選択が、(a)この範囲によって記載されている群の構成要素の1つのみ、または、(b)この群の構成要素のすべてではないが2つ以上、を含有するサブグループである場合、選択された構成要素は、サブグループを形成するために選択されていない群全体のこれらの構成要素を除外することにより選択される。このような事例においては、化合物、または、複数の化合物は、1つ以上の可変ラジカル、置換基または数値係数を含有していると記載され得、この可変ラジカル、置換基または数値係数の各々は、サブグループの形成のために除外された構成要素の不在下で、その可変ラジカル、置換基または数値係数のための範囲によって記載された、群全体の構成要素によって定義される。
【0083】
本発明の一定の機構は、本開示または図面の1つに記載されているか否かにかかわらず種々のこのような機構を一緒に組み合わせる実施形態の文脈において本明細書に記載されている。しかしながら、本発明の範囲は、任意の特定の実施形態における一定の機構のみの記載によっては限定されず、本発明はまた、(1)いずれかの記載の実施形態の機構の一部のサブコンビネーションであって、サブコンビネーションの形成に省略された機構の不在によって特徴付けられたサブコンビネーション;(2)記載の実施形態の組み合わせにおいて包含されている個別の機構の各々;ならびに、(3)記載の実施形態の特質の1つ以上またはすべてから、本明細書における他の箇所に開示されている他の特質と一緒に形成された特質の他の組み合わせを含む。
【0084】
数値の範囲が本明細書において言及されている場合、この範囲は、その端点、ならびに、その範囲内のすべての個別の整数および小数を含み、また、これらの端点および内部の整数および小数のすべての種々の可能な組み合わせによってその中に形成されるより狭い範囲の各々であって、あたかもこれらのより狭い範囲の各々が明確に言及されているような場合と同じ程度で値のより大きな群のサブグループが形成される範囲を含む。本明細書において、数値の範囲が規定された値を超えて規定されている場合、この範囲は、それにもかかわらず、有限であり、および、本明細書に記載されている本発明の文脈内で動作可能である値によってその上限が有界とされる。本明細書において、数値の範囲が規定された値未満として規定されている場合、この範囲は、それにもかかわらず、ゼロではない値によってその下限が有界とされている。
【0085】
この明細書において、別段の明確な記載がない限り、または、使用の文脈による逆の明記がない限りにおいて、本発明の実施形態が、含んでいる(comprising)、含んでいる(including)、含有している、有している、から組成されている、または、構成されていると規定、または、記載している場合、一定の特質もしくは要素、1つ以上の特質または要素は、明確に規定または記載されているものに追加して、この実施形態中に存在し得る。しかしながら、本発明の代替的な実施形態は一定の特質または要素から実質上構成されると規定または記載され得るが、この実施形態において、操作の原理を著しく異ならせるか、または、実施形態の特徴を区別するであろう特質または要素はその中に存在していない。本発明のさらなる代替的な実施形態は、一定の特質または要素から実質上構成されると規定または記載されるが、この実施形態において、または、その産業的な変形において、特定的に規定または記載された特質または要素のみが存在している。
【0086】
この明細書において、使用されている文脈による明確な別段の記載または逆の明記がない限りにおいて:
(a)本明細書において言及されている、量、サイズ、配合物、パラメータ、ならびに、他の量および特徴は、特に用語「約」によって修飾されている場合、正確である必要性はなくてもよく、および、許容誤差、換算因数、端数処理、計測誤差等、ならびに、本発明の文脈内で、規定された値と機能的および/または操作可能に同等であるその外の値の規定された値内への包含が反映されて、近似しているか、および/または、規定(所望される)ものよりも大きいかまたは小さくてもよく;
(b)部、割合、または、比のすべての数量は重量基準の部、割合、または、比として与えられ;
(c)本発明の要素または特質の存在の記載または説明に対する不定冠詞「a」または「an」の使用は、これらの要素または特質の存在を1つの数に限定せず;
(d)「を含む(include)」、「を含む(includes)」および「を含んでいる(including)」という語は、実際にはそうではなくても、「特に限定されないが」という句が続いていると読まれ、および、解釈されるべきであり;および
(e)「または、あるいは、もしくは」という語は、本明細書において用いられるところ、包含的であり;より具体的には、句「AまたはB」は「A、B、または、AおよびBの両方」を意味し;ならびに、「または、あるいは、もしくは」の排他的な意味での使用は、例えば、「AまたはBのいずれか」および「AまたはBの一方」などの用語によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)、(II)および(III)の各々の構造
【化1】

[式中、
Zは、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;
Yは、H、F、Cl、Br、I、−OTs、−OTf、−OMs、CNまたはNOであり;
ただし、ZはYとは等しくなく;
n1、n2、n3、n4、n5、およびn6は、各々独立して3〜20の整数であり;
mおよびpは、各々独立して0、1または2の整数であり;
Aは、群:
【化2】

(式中、R〜R10は、各々独立して、群:H、C〜C直鎖または分岐鎖アルキル、C〜C直鎖または分岐鎖アルキルオキシ、F、Cl、フェニル、−C(O)CH、CN、およびCFから選択され;Xは、群:−O−、−(CHC−、および−(CFC−;から選択される二価ラジカルである)から選択される二価ラジカルであり、そして
各BおよびBは、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCHである)、2,6−ナフチル;および4,4’−ビフェニル;から独立して選択される二価ラジカルであり;
ただし、m+pが3または4に等しい場合、BおよびBの少なくとも2つがR11置換−1,4−フェニルである]
によって表される化合物の群からの少なくとも1つの化合物を含む組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物の総量が、組成物の総含有量に基づいて約5モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(II)の化合物の総量が、組成物の総含有量に基づいて約0.1モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
式(III)の化合物の総量が、組成物の総含有量に基づいて約0.1モルパーセント〜約90モルパーセントの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1つの化合物について、mが0であると共にpが0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式の各々の少なくとも1つの化合物について、mが1であると共にpが0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1つの化合物について、mが1であると共にpが1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1つの化合物について、mが1であると共にpが0であり;そして式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1つの化合物について、mが1であると共にpが1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
n1〜n6が、各々独立して、3〜10からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
n1、n2およびn4が同一である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
組成物が、式(I)の化合物を1つだけ含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
n1、n2およびn4が同一である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
Zが、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsであり;そしてYが、H、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ZがBrであると共にYがHである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を含む液晶組成物。
【請求項16】
式(I)が、以下の式(XXIII):
【化3】

である、請求項15に記載の液晶組成物。
【請求項17】
少なくとも1つのキラル化合物をさらに含む、請求項15に記載の液晶組成物。
【請求項18】
請求項15に記載の液晶組成物を含む物品。
【請求項19】
請求項17に記載の液晶組成物を含む物品。
【請求項20】
光学素子として製造される、請求項18に記載の物品。
【請求項21】
光学素子として製造される、請求項19に記載の物品。

【公表番号】特表2012−529559(P2012−529559A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515050(P2012−515050)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037726
【国際公開番号】WO2010/144411
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】