説明

液晶表示パネルおよびその製造方法

【課題】従来に比較して、材料コストの低減が可能な液晶表示パネルおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】アクティブマトリクスアレイ基板とカラーフィルタ基板との間に液晶材が封入されてなる液晶表示パネルにおいて、アクティブマトリクスアレイ基板および/またはカラーフィルタ基板を構成するガラス基板として、アルカリ成分を含むアルカリガラス基板を用いる。アルカリ成分としては、NaOを6〜15重量%、または、NaOとKOとを合計で6〜15重量%含むと良い。また、アルカリガラス基板の歪点は、550〜600℃の範囲内にあると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル(Liquid Crystal Display Panel)は、液晶材を挟んだ2枚の基板からなり、透過あるいは反射光量を電気的に制御可能な光学素子である。
【0003】
一方の基板であるアレイ基板としては、例えば、アクティブマトリクスアレイ基板などが知られている。このアクティブマトリクスアレイ基板は、通常、ガラス基板上にゲート配線とソース配線とがマトリックス状に配置されており、その交点部分に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などのアクティブ素子が形成され、このアクティブ素子に画素電極が接続されている。
【0004】
また、他方の基板であるカラーフィルタ基板としては、例えば、ガラス基板上に、不要な光の漏れを防ぐためにブラックマトリクスを形成した後、R(赤)、G(緑)、B(青)の着色層をパターン形成し、必要に応じて保護膜を形成した後、画素電極に対向する共通電極を形成したものなどが知られている。
【0005】
ところで、アクティブマトリクスアレイ基板を備えたアクティブマトリクス型の液晶表示パネルは、イオン性の汚染によって、TFTなど、アクティブ素子の特性低下が発生しやすいことが知られている。
【0006】
そのため、この種の液晶表示パネルに用いるガラス基板、とりわけ、アクティブマトリクスアレイ基板側のガラス基板には、イオン源となるNaOなどのアルカリ成分を含まない無アルカリガラス基板を使用するのが、当該液晶技術分野におけるこれまでの技術常識になっている(例えば、非特許文献1など)。
【0007】
また、無アルカリガラス基板を用いたとしても、TFTなどの安定性を考慮し、さらに、アルカリイオンの侵入を阻止するバリア膜を、ガラス基板表面に1枚以上介在させ、このバリア膜上にTFTなどが形成されることさえある。
【0008】
これに対し、同じフラットディスプレイパネル(FDP:Flat Display Panel)であっても、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)は、液晶表示パネルと全く表示構造が異なっており、アクティブ素子を有していない。
【0009】
そのため、PDPでは、アルカリ成分が全く問題にならず、ソーダ石灰ガラス基板などのアルカリガラス基板が多用されている。
【0010】
また、PDPは、その製造時の処理温度が液晶表示パネルの処理温度よりも高い。このため、最近では、ソーダ石灰ガラスの歪点を高温側にシフトさせた高歪点のガラス基板も使用され始めている。
【0011】
【非特許文献1】社団法人 日本半導体製造装置協会 編,「液晶ディスプレイ製造装置用語辞典」,第2版,日刊工業新聞社,1999年10月20日,p.10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような背景の下、従来のアクティブマトリクス型の液晶表示パネルは、下記の点で改善の余地があった。
【0013】
すなわち、無アルカリガラス基板は、アルカリガラス基板に比較して、高価である。この理由としては、以下の点が考えられる。
【0014】
一般に、ガラス基板は、調合したガラス原料を溶融炉にて加熱溶融し、溶融ガラスとした後、これを板状に成形して徐冷し、所望の大きさに切断するなどして製造される。
【0015】
ここで、NaO源となる炭酸ナトリウムなどのアルカリ原料は、加熱溶融時における融点を下げる効果がある。そのため、これを添加しない無アルカリガラス基板の製造時には、アルカリガラス基板の製造時に比較して、溶融温度が必然的に高くなる。
【0016】
そうすると、そのような高温に耐え得るジルコニア系耐火物などの高価な炉材が必要になったり、高温溶融により溶融炉が劣化しやすくなったりするなど、ガラス基板の製造に困難を伴うようになる。このような理由により、無アルカリガラス基板の価格が高くなるものと考えられる。
【0017】
近年、液晶表示パネルは、急速な勢いで大型化が進められている。そしてこのパネル大型化に伴い、液晶表示パネルの材料コスト全体に占めるガラス基板コストの比率は、増大してきている。それ故、材料コストの低減が急務になっている。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の解決しようとする課題は、従来に比較して、材料コストの低減が可能な液晶表示パネルを提供することにある。また、他の課題は、材料コストの低減が可能な液晶表示パネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決すべく、本発明者らは種々の検討を重ねた結果、当該液晶技術分野におけるこれまでの技術常識をあえて覆すことによって本発明をなすに至ったものである。
【0020】
すなわち、本発明に係る液晶表示パネルは、アクティブマトリクスアレイ基板とカラーフィルタ基板との間に液晶材が封入されてなり、上記アクティブマトリクスアレイ基板および/または上記カラーフィルタ基板を構成するガラス基板が、アルカリ成分を含むアルカリガラス基板であることを要旨とする。
【0021】
ここで、上記アルカリガラス基板は、アルカリ成分として、NaOを6〜15重量%、または、NaOとKOとを合計で6〜15重量%含むことが好ましい。
【0022】
また、アルカリ成分としてNaOとKOとを含む場合には、KO/NaO(重量比)は2以上であることが好ましい。
【0023】
また、上記アルカリガラス基板は、その歪点が550〜600℃の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
また、上記アクティブマトリクスアレイ基板が有するアクティブ素子は、薄膜トランジスタであることが好ましく、とりわけ、その薄膜トランジスタは、逆スタガー型であると良い。
【0025】
一方、本発明に係る液晶表示パネルの製造方法は、アクティブマトリクスアレイ基板とカラーフィルタ基板との間に液晶材が封入されてなる液晶表示パネルの製造方法であって、上記アクティブマトリクスアレイ基板および/または上記カラーフィルタ基板を構成するガラス基板として、アルカリ成分を含むアルカリガラス基板を用いることを要旨とする。
【0026】
ここで、上記アクティブマトリクスアレイ基板および/または上記カラーフィルタ基板の製造工程には、上記アルカリガラス基板を侵す酸によるエッチング工程を含まないことが好ましい。
【0027】
上記酸としては、バッファードフッ酸(BHF)などが挙げられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る液晶表示パネルは、アクティブマトリクスアレイ基板および/またはカラーフィルタ基板を構成するガラス基板として、アルカリガラス基板を用いている。そのため、無アルカリガラス基板を用いた従来の液晶表示パネルに比較して、大幅に材料コストの低減を図ることが可能である。
【0029】
とりわけ、両基板のガラス基板がアルカリガラス基板である場合には、材料コストの低減効果が大きくなるばかりでなく、両基板間の熱膨張差も小さくすることができる。そのため、反りなどの小さな液晶表示パネルを得やすくなるなどの利点がある。
【0030】
なお、これまでアクティブマトリクス型の液晶表示パネルのガラス基板としては、無アルカリガラス基板を用いることが技術常識とされてきた。しかしながら、後述する本実施例に示すように、これをアルカリガラス基板に代替しても、液晶表示パネルの性能に実質的な問題がほとんど生じないことは確認できている。
【0031】
ここで、上記アルカリガラス基板中に含まれるアルカリ成分として、NaOまたはNaOとKOとの合計が6重量%以上であれば、ガラス製造時におけるガラス溶融温度が高くなり過ぎず、均質性、清澄性も良好で、ガラス基板の製造コストの低減に寄与しやすい点で好ましい。一方、NaOまたはNaOとKOとの合計が15重量%以下であれば、高歪点を維持しやすいため、熱的に安定で、体積抵抗率が低下し過ぎなくなる点で好ましい。
【0032】
また、上記アルカリガラス基板が、アルカリ成分としてNaOとKOとを含む場合、KO/NaO(重量比)が2以上であるときには、混合アルカリ効果により、ガラス中でのアルカリイオンの移動を抑制しやすくなる。そのため、材料コストの低減効果に加え、パネル信頼性も向上させやすくなる利点がある。
【0033】
また、上記アルカリガラス基板の歪点が550〜600℃の温度範囲内にある場合には、ガラス基板の熱的な安定性が向上する。そのため、当該液晶表示パネルの製造性を向上させることができる。また、アルカリイオンの溶出を抑制しやすくなる利点もある。
【0034】
また、上記アクティブマトリクスアレイ基板が有するアクティブ素子が薄膜トランジスタである場合には、従来に比較して低廉なTFT液晶表示パネルを提供することが可能となる。
【0035】
この場合、上記薄膜トランジスタが逆スタガー構造であるときには、正スタガー構造であるときに比較して、半導体層とアルカリガラス基板との距離が遠くなる。また、アルカリガラス基板上にはゲート絶縁膜も成膜されている。したがって、アルカリイオンによる影響をより受け難くできる利点がある。
【0036】
一方、本発明に係る液晶表示パネルの製造方法は、アクティブマトリクスアレイ基板および/またはカラーフィルタ基板を構成するガラス基板として、アルカリ成分を含むアルカリガラス基板を用いている。そのため、従来に比較して、安価な材料コストで液晶表示パネルを製造することができる。
【0037】
この際、アクティブマトリクスアレイ基板および/またはカラーフィルタ基板の製造工程に、アルカリガラス基板を侵す酸によるエッチング工程を含まない場合には、当該アルカリガラス基板からのアルカリイオンの溶出を抑制しやすくなり有利である。
【0038】
とりわけ、バッファードフッ酸(BHF)によるエッチング工程を含まない場合には、当該アルカリガラス基板からのアルカリイオンの溶出を一層抑制しやすくなり、得られる液晶表示パネルの信頼性向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本実施形態に係る液晶表示パネル(以下、「本パネル」ということがある。)およびその製造方法(以下、「本製造方法」ということがある。)について詳細に説明する。
【0040】
1.本パネル
本パネルは、アクティブマトリクスアレイ基板と、これに対向して設けられたカラーフィルタ基板と、両基板の間に封入された液晶材とを備えたアクティブマトリクス型の液晶表示パネルである。
【0041】
ここで、本パネルは、上記両基板のうち、少なくとも一方の基板を構成するガラス基板が、アルカリガラス基板よりなる。なお、両基板のうち、何れか一方の基板のガラス基板がアルカリガラス基板である場合には、他方の基板のガラス基板は無アルカリガラス基板であっても良い。
【0042】
アルカリガラス基板とは、ソーダ石灰系ガラスなど、NaO、KOなどのアルカリ成分を含むガラス基板のことであり、アルカリ成分を含まない無アルカリガラス基板と区別される。
【0043】
もっとも、無アルカリガラス基板といえども、通常、アルカリ成分を全く含まないという意味で用いられることはない。1%未満のオーダーで不純物としてアルカリ成分が存在するものも、当液晶業界では無アルカリガラス基板と称されている。
【0044】
本パネルにおいて、アクティブマトリクスアレイ基板のガラス基板が無アルカリガラス基板であり、カラーフィルタ基板のガラス基板がアルカリガラス基板である場合には、次の利点がある。すなわち、この場合、アクティブマトリクスアレイ基板のアクティブ素子とアルカリガラス基板との距離が大きく離れている。そのため、アルカリ成分による影響をそれほど考慮する必要がない。したがって、早期に製品への導入が図りやすく、材料コスト低減によるメリットを早期に享受することが可能となる。
【0045】
より好ましくは、両基板のガラス基板がアルカリガラス基板であると良い。材料コストの低減効果が大きくなるばかりでなく、両基板間の熱膨張差も小さくすることができる。そのため、反りなどを小さくすることができるなどの利点も生じるからである。
【0046】
上記アルカリガラス基板のアルカリ成分として、NaOを含み、KOを含まない場合、NaO含有量としては、6〜15重量%の範囲内にあることが好ましい。また、NaOおよびKOを含む場合、NaOとKOとの合計の含有量としては、6〜15重量%の範囲内にあることが好ましい。
【0047】
両含有量の下限が6重量%以上であれば、ガラス製造時におけるガラス溶融温度が高くなり過ぎず、均質性、清澄性も良好で、ガラス基板の製造コストの低減に寄与しやすい点で好ましい。なお、6%未満になると、より高温での溶融に耐えうる高価な設備が必要となるし、ガラス溶融も不十分になる傾向が見られる。
【0048】
一方、両含有量の上限が15重量%以下であれば、高歪点を維持しやすいため、熱的に安定で、体積抵抗率が低下し過ぎない点で好ましい。
【0049】
また、上記アルカリガラス基板が、アルカリ成分としてNaOとKOとを含む場合、KO/NaO(重量比)は2以上であると良い。混合アルカリ効果により、ガラス中でのアルカリイオンの移動を抑制しやすくなるからである。
【0050】
また、上記アルカリガラス基板の歪点は、550〜600℃の温度範囲内にあると良い。この場合には、ガラス基板の熱的な安定性が向上し、当該液晶表示パネルの製造性を向上させることができるなどの利点があるからである。また、アルカリイオンの溶出も抑制しやすくなる。上記歪点とは、ガラスが粘度1014.5ポイズを示す温度を指す。
【0051】
なお、上記歪点の上限は、高い程好ましい。一般的な無アルカリガラスには、歪点が650℃以上のものが存在するが、現在入手しうるアルカリガラスは、その歪点が600℃程度のものしか確認できていない。一方、上記歪点の下限は、一般のソーダライムガラスが510℃程度であることを考慮すると、550℃以上が好ましい。
【0052】
以上を満たすアルカリガラス基板は、例えば、旭硝子株式会社、日本電気硝子株式会社、セントラル硝子株式会社などから入手することが可能である。
【0053】
本パネルにおいて、アクティブマトリクスアレイ基板が有するアクティブ素子(スイッチング素子)としては、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と称する。)が好ましい。
【0054】
アクティブマトリクスアレイ基板がTFTを有する場合、TFTの構造は、特に限定されるものではなく、逆スタガー型構造、正スタガー型構造の何れであっても良い。
【0055】
上記TFTの構造としては、好ましくは、逆スタガー型構造を採用すると良い。逆スタガー構造は、正スタガー構造に比較して、半導体層とアルカリガラス基板との距離が遠くなる。また、アルカリガラス基板上にはゲート絶縁膜も成膜されている。したがって、アルカリイオンによる影響をより受け難くできる利点があるからである。
【0056】
以下、逆スタガー型構造のTFTを有するアクティブマトリクスアレイ基板(以下、「TFTアレイ基板」と称する。)を備えた本パネルの構成の一例につき、図面を用いて具体的に説明する。
【0057】
図1は、本パネルが備えうるTFTアレイ基板の1つの画素領域の一例を模式的に示した平面図である。図2は、図1中のA−A’線に沿った本パネルの断面図である。なお、以下では、TFTアレイ基板およびカラーフィルタ基板の両基板がアルカリガラス基板を備える場合について説明を行っている。
【0058】
図2に示すように、本パネル10は、TFTアレイ基板12と、これに対向して設けられたカラーフィルタ基板14と、両基板12、14の間に封入された液晶材16とを備えている。
【0059】
図1に示すように、TFTアレイ基板12は、アルカリガラス基板18上に、相互に平行に延びる複数のゲート配線20と、ゲート配線20と直交して相互に平行に延びる複数のソース配線22と、各ゲート配線20の間にゲート配線20に沿って相互に平行に延びる複数の補助容量配線24と、ゲート配線20およびソース配線22の各交差部分に設けられたTFT26と、各TFT26に対応して一対のゲート配線20および一対のソース配線22で囲まれる領域に設けられ、1つの画素を構成する画素電極28とを備えている。
【0060】
図1および図2に示すように、TFT26は、ゲート配線22に電気的に接続されたゲート電極30と、ゲート電極30を覆うゲート絶縁膜32と、ゲート絶縁膜32を介してゲート電極30の上方に形成された半導体層34(真性半導体層34a、不純物添加半導体層34b)と、半導体層34上に形成されたソース電極36およびドレイン電極38とを有している。
【0061】
半導体層34のソース領域およびドレイン領域は、コンタクト層として機能する不純物添加半導体層34bを介して、ソース電極36およびドレイン電極38にそれぞれ電気的に接続されている。
【0062】
TFT26のドレイン電極38には、補助容量配線24に至るまでドレイン配線40が延設されている。ドレイン配線40のうち、補助容量配線24とゲート絶縁膜32を介して対向する部分が補助容量電極42として機能する。また、補助容量配線24のうち、補助容量電極42とゲート絶縁膜32を介して対向する部分が補助容量対向電極(図示されない)として機能する。
【0063】
TFT26上には、絶縁膜44が形成されている。この絶縁膜44は、TFT26のチャネル部の保護膜としても機能する。ドレイン電極38上に位置する絶縁膜44の表面には、コンタクトホール46が形成されている。画素電極28は、コンタクトホール46を通じて、TFT26のドレイン電極38と電気的に接続されている。そして、画素電極28上には、配向膜(図示されない)が形成されている。
【0064】
一方、図2に示されるように、カラーフィルタ基板14は、アルカリガラス基板18’上に、カラーフィルタ層(図示されない)、オーバーコート層(保護膜)(図示されない)、共通電極48が順に積層された積層構造を有している。そして、共通電極48上には、配向膜(図示されない)が形成されている。
【0065】
カラーフィルタ層には、各画素電極28に対応して赤、緑および青のうちの1色の着色層が設けられ、各着色層の間にはブラックマトリクスが設けられている。
【0066】
上述した両基板12、14の間に挟持される液晶材16は、特に限定されることなく、種々の表示モード用の液晶材を用いることができる。例えば、旋光性を利用するTN(Twisted Nematic)モードの液晶材や、複屈折性を利用するECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶材などを用いることができる。ECBモードのなかでも、VA(Vertically Aligned)モードは、高コントラスト比を実現することができる。VAモードの液晶材としては、例えば、負の誘電異方性を有するネマチック液晶材などを例示することができる
【0067】
なお、液晶材16の封入に用いるシール材(図示されず)としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂と紫外線硬化性樹脂との混合物などを例示することができる。
【0068】
2.本製造方法
本製造方法は、上述した本パネルを製造することができる方法である。したがって、本製造方法は、アクティブマトリクスアレイ基板の製造工程、カラーフィルタ基板の製造工程、得られた両基板を貼り合わせ、液晶材が封入されたパネルを製造するパネル製造工程を含んでいる。
【0069】
そして、本製造方法では、少なくとも、アクティブマトリクスアレイ基板および/またはカラーフィルタ基板の製造時に使用するガラス基板として、アルカリガラス基板を用いることになる。製造に使用するアルカリガラス基板としては、上述した割合のアルカリ成分、および/または、歪点を有するものを適用することができる。
【0070】
一般に、アクティブマトリクスアレイ基板の製造工程では、エッチングが行われる。また、カラーフィルタ基板の製造工程においても、エッチングが行われることがある。
【0071】
本製造方法では、当該アルカリガラス基板からのアルカリイオンの溶出を極力抑制する観点から、アクティブマトリクスアレイ基板および/またはカラーフィルタ基板の製造工程に、アルカリガラス基板を侵す酸によるエッチング工程、特に、ウェットエッチング工程を含まないことが好ましい。
【0072】
上記アルカリガラス基板を侵す酸としては、例えば、バッファードフッ酸(BHF)などを例示することができる。
【0073】
上記ウェットエッチングを行う場合としては、アクティブマトリクスアレイ基板の製造時では、例えば、絶縁膜(保護膜)、透明電極の形成時などを例示することができる。
【0074】
以下、上述した構成のTFTアレイ基板、カラーフィルタ基板を製造する場合を例にとり、本製造方法を具体的に説明する。
【0075】
(TFTアレイ基板の製造工程)
図3は、TFTアレイ基板12の製造工程の一例を模式的に示した図である。図3(a)に示すように、アルカリガラス基板18上に、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)などよりなる単層または多層の第1金属膜(膜厚50〜150nm程度)をスパッタリング法などにより成膜する。
【0076】
その後、フォトリソグラフィー技術(Photo Engraving Process、以下「PEP技術」と称する。)により、ゲート配線20、ゲート電極30、補助容量配線42をパターン形成する。この第1金属膜のパターン形成時に行うエッチングとしては、BCl+Cl、CF(+O)などのドライエッチングガスによるドライエッチングを適用することができる。
【0077】
次いで、図3(b)に示すように、上記工程を経た基板表面に、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiOx)などよりなるゲート絶縁膜32(膜厚50〜150nm程度)をプラズマCVD法などにより成膜する。
【0078】
次いで、図3(c)に示すように、上記工程を経た基板表面に、アモルファスシリコンなどの真性半導体膜(膜厚150nm程度)、n型のアモルファスシリコンなどの不純物添加半導体膜(膜厚50nm程度)とを連続して成膜する。
【0079】
その後、PEP技術により、ゲート電極30上に半導体層34(真性半導体層34a、不純物添加半導体層34b)をパターン形成する。このパターン形成時に行うエッチングとしては、CF+O、CCl+O、SFなどのドライエッチングガスによるドライエッチングを適用することができる。
【0080】
次いで、図3(d)に示すように、上記工程を経た基板表面に、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)などよりなる単層または多層の第2金属膜(膜厚100〜200nm程度)をスパッタリング法などにより成膜する。
【0081】
その後、PEP技術により、ソース配線22、ソース電極36、ドレイン電極38、ドレイン配線40をパターン形成する。この第2金属膜のパターン形成時に行うエッチングとしては、弱酸のウェットエッチング液によるウェットエッチング、BCl+Cl、CF(+O)などのドライエッチングガスによるドライエッチングを適用することができる。
【0082】
さらに、ソース電極36およびドレイン電極38をマスクとして、半導体層34のうち、不純物添加半導体層34bを、CF+O、CCl+O、SFなどのドライエッチングガスによるドライエッチングにて除去し、チャネル部を形成する。
【0083】
次いで、図3(e)に示すように、上記工程を経た基板表面に、窒化シリコン(SiNx)などよりなる絶縁膜44(膜厚300nm程度)をプラズマCVD法などにより成膜する。
【0084】
その後、PEP技術により、ドレイン電極38上の絶縁膜44にコンタクトホール46を形成する。このコンタクトホール46形成時に行うエッチングとしては、従来、BHFによるウェットエッチング液を用いたウェットエッチングが主流であった。本製造方法では、アルカリガラス基板18を用いているので、特に、このような強酸によるウェットエッチングを行わないことが好ましい。
【0085】
したがって、本製造方法では、コンタクトホール46形成時に行うエッチングとして、CF(+O)、CHF+O、SFなどのドライエッチングガスによるドライエッチングを適用すると良い。
【0086】
次いで、図3(f)に示すように、上記工程を経た基板表面に、ITO(Indium Tin Oxide)などよりなる透明導電膜(膜厚10nm程度)をスパッタリング法などにより成膜する。
【0087】
その後、PEP技術により、画素電極28をパターン形成する。この画素電極のパターン形成時に行うエッチングとしては、HCl+HNOなどのウェットエッチング液によるウェットエッチングを適用することができる。
【0088】
以上のような工程を経ることにより、TFTアレイ基板12を製造することができる。
【0089】
(カラーフィルタ基板の製造工程)
カラーフィルタ基板の製造工程には、ブラックマトリクス形成工程、カラーフィルタ層形成工程、オーバーコート層(保護膜)形成工程、共通電極形成工程とが含まれる。
【0090】
先ず、アルカリガラス基板18’上に、クロム(Cr)などよりなる金属膜(膜厚100nm程度)をスパッタリング法などにより成膜する。
【0091】
その後、PEP技術により、ブラックマトリクスをパターン形成する。このブラックマトリクスのパターン形成時に行うエッチングとしては、硝酸セリウム第2アンモニウムと過塩素酸の水溶液などのウェットエッチング液によるウェットエッチングを適用することができる。
【0092】
この際、近年主流となっている樹脂BM材料を用いた場合には、PEP技術により、ブラックマトリクスをパターン形成することができる。この場合には、酸によるエッチングを行わなくて済む利点がある。
【0093】
次いで、ブラックマトリクスの間に、それぞれ、顔料分散レジストなどの材料を用いて、赤、緑および青の何れかの着色層(膜厚2μm程度)をパターン形成し、カラーフィルター層を形成する。
【0094】
次いで、カラーフィルター層の表面に、アクリル樹脂などを塗布し、オーバーコート層(膜厚1μm程度)を形成する。
【0095】
次いで、オーバーコート層の表面に、ITO膜などよりなる共通電極48(膜厚100nm程度)を、スパッタリング法などにより成膜する。
【0096】
以上のような工程を経ることにより、カラーフィルタ基板14を製造することができる。
【0097】
(パネル製造工程)
パネル製造工程には、配向膜形成工程、配向処理工程、シール材形成工程、液晶材滴下工程、スペーサ散布工程、貼り合わせ工程などが含まれる。
【0098】
先ず、上記のようして製造したTFTアレイ基板12およびカラーフィルタ基板14のそれぞれの表面に、ポリイミド系樹脂などによる配向膜を形成した後、配向膜に対して配向処理(ラビング)を施す。
【0099】
次いで、上記工程を経たTFTアレイ基板12および/またはカラーフィルタ基板14の表面に、シールパターニング装置などを用いて、シール材とコモン転移材とを塗布する。また、TFTアレイ基板12および/またはカラーフィルタ基板14の表面に、スペーサ散布装置などを用いて、セルギャップを所定の値に均一に保つためのスペーサを散布する。
【0100】
次いで、上記工程を経たTFTアレイ基板12および/またはカラーフィルタ基板14の表面におけるシール材に囲まれる領域に、液晶滴下装置などを用いて、液晶材16を滴下する。
【0101】
次いで、減圧雰囲気下にて、TFTアレイ基板12とカラーフィルタ基板14とを貼り合わせた後、シール材に熱を作用させ、シール材を硬化させる。なお、シール材を硬化させた後に、TFTアレイ基板12とカラーフィルタ基板14との隙間に液晶材16を注入し、その後、注入口を封止する方法などを採用することもできる。
【0102】
以上のような工程を経ることにより、本パネル10を製造することができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0104】
1.液晶表示パネルの作製
(実施例)
逆スタガー型のa−SiTFTを有するTFTアレイ基板およびカラーフィルタ基板のガラス基板として、680mm×880mm×0.7mmのアルカリガラス基板(NaO:4.3重量%、KO:8.6重量%、歪点583℃)を用い、実施例に係るアクティブマトリクス型液晶表示パネル(9.2インチWVGA)を作製した。
【0105】
なお、ガラス基板以外の使用材料については、一般的に使用されているものを用いる限り、特別な材料を組み合わせて使用する必要はない。さらに、各層の膜種や膜厚などの設計条件にも特別な制限はない。パネル作製プロセスについては、上述のとおり、強酸によるエッチングプロセスは使用しないことが好ましく、実際に行ったプロセスにおいても、保護膜のエッチングにはドライエッチングを使用した。
【0106】
(比較例)
上記実施例に係る液晶表示パネルの作製において、上記アルカリガラス基板に代えて、無アルカリガラス基板(コーニング株式会社製、「1737G」、歪点665℃)を用いた点以外は同様にして、比較例に係るアクティブマトリクス型液晶表示パネルを作製した。
【0107】
2.評価
上記作製した各液晶表示パネルを用いて、エージング試験を行った。エージング試験を行った理由は、この試験によれば、アルカリ成分による影響を比較的簡単に調べることができるからである。
【0108】
この際、エージング条件は、以下の通りとした。
<高温通電エージング>
温度60℃、ゲート電圧:13.5V〜−16.3V、ソース電圧:6.0V〜−6.0V、バックライト輝度:2400cd/m
【0109】
図4に、実施例および比較例に係る液晶表示パネルのエージング試験結果を示す。なお、図4中、実線が、実施例に係る液晶表示パネル、破線が、比較例に係る液晶表示パネルの結果をそれぞれ示している。
【0110】
図4によれば、両者の電圧変化を比較しても、ばらつきの範囲内であることが分かる。
【0111】
これにより、無アルカリガラス基板をアルカリガラス基板に代替しても、液晶表示パネルの性能に実質的な問題がほとんど生じないことが確認できた。
【0112】
以上、本発明の一実施形態および一実施例について説明したが、上記実施形態および実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0113】
すなわち、本パネルおよびその製造方法は、アクティブマトリクスアレイ基板および/またはカラーフィルタ基板を構成するガラス基板として、アルカリガラス基板を用いる点に最大のポイントがある。
【0114】
したがって、両基板の表面に形成する各種配線や機能層などの積層構造、その材質、膜厚、成膜方法などは、上述した以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形・改良することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示パネルが備えうるTFTアレイ基板の1つの画素領域の一例を模式的に示した平面図である。
【図2】図1中のA−A’線に沿った本パネルの断面図である。
【図3】TFTアレイ基板の製造工程の一例を模式的に示した図である。
【図4】実施例および比較例に係る液晶表示パネルのエージング試験結果を示した図である。
【符号の説明】
【0116】
10 液晶表示パネル
12 TFTアレイ基板(アクティブマトリクスアレイ基板)
14 カラーフィルタ基板
16 液晶材
18 アルカリガラス基板
18’ アルカリガラス基板
26 TFT(アクティブ素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリクスアレイ基板とカラーフィルタ基板との間に液晶材が封入されてなる液晶表示パネルであって、
前記アクティブマトリクスアレイ基板および/または前記カラーフィルタ基板を構成するガラス基板は、アルカリ成分を含むアルカリガラス基板であることを特徴とする液晶表示パネル。
【請求項2】
前記アルカリ成分として、NaOを6〜15重量%、または、NaOとKOとを合計で6〜15重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項3】
O/NaO(重量比)が2以上であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示パネル。
【請求項4】
前記アルカリガラス基板は、その歪点が550〜600℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の液晶表示パネル。
【請求項5】
前記アクティブマトリクスアレイ基板が有するアクティブ素子は、薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の液晶表示パネル。
【請求項6】
前記薄膜トランジスタは、逆スタガー型であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示パネル。
【請求項7】
アクティブマトリクスアレイ基板とカラーフィルタ基板との間に液晶材が封入されてなる液晶表示パネルの製造方法であって、
前記アクティブマトリクスアレイ基板および/または前記カラーフィルタ基板を構成するガラス基板として、アルカリ成分を含むアルカリガラス基板を用いることを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記アクティブマトリクスアレイ基板および/または前記カラーフィルタ基板の製造工程に、前記アルカリガラス基板を侵す酸によるエッチング工程を含まないことを特徴とする請求項7に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記酸は、バッファードフッ酸(BHF)であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−158253(P2008−158253A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346995(P2006−346995)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】