説明

液晶表示素子

【課題】ODF法により製造された液晶表示素子において、シール材への液晶の差込みを
抑制し、且つ、液晶内に気泡の発生が抑制された液晶表示素子を提供する。
【解決手段】表示領域33の周囲に表示領域33とは間隔を隔てて形成された閉ループ状
のシール材31により貼り合わされた一対の基板11、25と、一対の基板11、25間
に配置された所定厚さのセルギャップに維持された液晶層35と、を備える液晶表示素子
10Aであって、表示領域33とシール材31との間には、表示領域33のセルギャップ
G1よりも大きいセルギャップG2が形成されたセル厚大領域30Aが形成されているこ
とを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶滴下(One Drop Fill:以下、「ODF」という)法を用いて製造される
液晶表示素子に関し、特に、液晶のシール材への差込み及び液晶内の気泡の発生を抑制し
た液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子に液晶を封入する方法としてODF法が知られている。ODF法は、各種
配線等が形成された二つの基板、例えばアレイ基板とカラーフィルター基板とを貼り合わ
せる前に、どちらか一方の下側となった基板にシール材を閉ループ状に塗布し、その内側
に液晶を滴下し、その後、もう一方の上側となった基板を覆い被せて貼り合わせ、紫外線
及び熱等によりシール材を硬化させる方法である。
【0003】
ODF法では、シール材が塗布された後に液晶を注入し、その後に一対の基板の貼り合
わせを行うことになるが、このとき、シール材はまだ硬化されていない状態のまま液晶と
接することになる。そうすると、液晶は長時間シール材と接しており、しかも、貼り合わ
せ時に圧力がかかることにより、まだやわらかいシール材に液晶の差し込みが発生し、最
終的には液晶がシール材を通過して液晶漏れを起こすことがあるという課題がある。
【0004】
一方、液晶表示素子におけるシール材の角部分では、シール材の辺部分と比べて液晶表
示素子の中央部分からの距離が遠いため、液晶材料が足りずに十分に液晶が広がらず、液
晶が充分に届かない部分には気泡が発生するという課題がある。
【0005】
このような課題を解決するために、下記特許文献1には、基板毎に最適な滴下量で液晶
を滴下できる液晶表示装置の製造方法が開示されている。すなわち、下記特許文献1の液
晶表示装置の製造方法では、基板上に液晶を滴下し、前記基板の液晶滴下面側を対向基板
に対向させて真空中で貼り合わせてから大気圧に戻すことにより液晶注入を行う液晶表示
装置の製造方法において、貼り合わせる2枚の基板間のセル厚を決定するために設けられ
た柱状スペーサーの支柱高さを測定して前記2枚の基板間に封止される最適液晶量を予測
し、予測値に基づいて滴下液晶量を制御している。
【0006】
下記特許文献1に開示されたODF法を用いる液晶表示装置の製造方法によれば、液晶
表示パネル毎に最適な液晶量を滴下でき、液晶量の不足によるいわゆる気泡や液晶量の過
多による表示むらをなくすことができ、安定した液晶表示装置の量産が可能となるとされ
ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3678974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に開示されている液晶表示装置の製造方法では、柱状スペーサ
ーの支柱高さを測定する必要があるため、そのための特別な装置を備える必要があり製造
費が高くなるという問題がある。さらに測定のための新たな工程が加わるために製造効率
が悪くなる問題もある。また、柱状スペーサーの支柱高さの測定の精度により、最適な液
晶量を誤るおそれもある。
【0009】
また、上記特許文献1には液晶を複数個所に滴下する方法も開示されているが、滴下さ
れた液晶は略同心円状に広がるため、辺部分には早く到達してしまうことには変わりがな
い。また、液晶が複数個所に滴下されることとなると、液晶の量も一箇所ごとに少なくな
り、結果として角部分に広がる液晶がより足りなくなるおそれがあるため、上記課題を解
決することは困難となる。
【0010】
本発明者らは、上記のような従来技術の問題点を解決すべく種々検討を重ねた結果、表
示領域とシール材との間に溝を設けることで、液晶がシール材に接する時間を短くするこ
とができると共に、この溝を液晶が流れることで、液晶が広がり難い角部分にも液晶を行
き渡らせることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち
、本発明は、シール材に液晶が差し込むのが抑制され、角部分での気泡の発生が抑制され
たODF法により製造された液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の液晶表示素子は、
表示領域の周囲に前記表示領域とは間隔を隔てて形成された閉ループ状のシール材によ
り貼り合わされた一対の基板と、
前記一対の基板間に配置された所定厚さのセルギャップに維持された液晶層と、を備え
る液晶表示素子であって、
前記表示領域と前記シール材との間には、前記表示領域の前記セルギャップよりも大き
いセルギャップが形成されたセル厚大領域が形成されていることを特徴とする。
【0012】
従来のODF技術においての問題として、シール材の辺部分と角部分で、表示領域の中
央部分からの距離が異なることにより、辺部分では液晶が短時間で到達し、接触している
時間が長くなるため、シール材に入り込む差し込みという不具合がある。一方、シール材
の角部分では、液晶が足りず表示領域に気泡が発生する不具合がある。
【0013】
本発明の液晶表示素子では、表示領域とシール材との間には表示領域のセルギャップよ
りも大きいセルギャップを有するセル厚大領域が形成されている。これにより、ODF貼
り合わせ時に、表示領域の中央部分から広がってきた液晶がシール材の辺部分に到達する
と、この部分に形成されたセル厚大領域に流れ込むことで、液晶がシール材と接する時間
を減らすことができ、シール材への液晶の差込を抑制することができる。さらに、液晶が
広がり難かった角部分へも辺部分で流れ込んだ液晶がセル厚大領域に沿って移動すること
で、シール材の角部分へ十分な量の液晶が到達することができるので、液晶が足りなくな
ることによる気泡の発生も抑制することができる。
【0014】
また、本発明にかかる液晶表示素子においては、前記表示領域は矩形状とすることがで
きる。
【0015】
一般的に矩形状の液晶表示素子では中央部分と角部分とは距離があり上記課題が最も顕
著にあらわれるものであるが、本発明の液晶表示素子によれば、表示領域が矩形状の液晶
表示素子の角部分の液晶不足を抑制し、それに伴う気泡の発生をも抑制した液晶表示素子
を提供することができる。
【0016】
また、本発明にかかる液晶表示素子においては、前記セル厚大領域は、前記シール材の
長辺側の幅が広く、短辺側の幅が狭く形成することができる。
【0017】
通常、長辺側のシール材の方が、短辺側のシール材よりも表示領域の中央部分に近くな
るので、液晶が素早く到達するため、シール材への液晶の差込が起こりやすい。そこで、
本発明の液晶表示素子では、長辺側のセル厚大領域の幅は広く形成され、短辺側のセル厚
大領域の幅は狭く形成されているものとした。そのため、本発明の液晶表示素子によれば
、長辺側へ広がった液晶は、幅の広いセル厚大領域によりシール材側までへ到達するのに
時間がかかるようになるので、シール材への液晶の差込みを抑制することができる。また
、表示領域の中央部分からの距離に応じてセル厚大領域の大きさを変えることにより、効
率よく差込を抑制することができ、さらには角部分へ液晶を到達させやすくなるため液晶
層内に気泡が発生するのを抑制することができる。
【0018】
また、本発明にかかる液晶表示素子においては、前記セル厚大領域は、前記シール材の
角部分を除いて形成することが好ましい。
【0019】
本発明の液晶表示素子によれば、液晶の差込みが生じやすいシール材の辺部分にのみセ
ル厚大領域が形成されているものとすることで、シール材への液晶の差込を抑制しつつ、
セル厚大領域が形成されていない角部分では、セル厚大領域に沿って広がる液晶と、セル
厚大領域が形成されていない基板表面を広がる液晶により角部分まで液晶が行き渡りやす
くなり、気泡の発生をさらに抑制することができる。
【0020】
また、本発明にかかる液晶表示素子においては、前記セル厚大領域は、前記表示領域の
中心部から最も近い位置にある部分の幅が最も大きく、最も遠い位置にある部分の幅が最
も小さくなっており、前記表示領域の距離に応じて連続的ないし断続的に変化するように
形成することができる。
【0021】
本発明の液晶表示素子では、表示領域の中心部からの距離に応じてセル厚大領域が形成
される幅を変えるように形成されている。このようにすることで、液晶が最も早く到達す
る各辺側の中央部分のセル厚大領域の幅は最も広く形成され、最も遅く到達する角部分の
セル厚大領域は最も小さく形成されるようになる。そのため、本発明の液晶表示素子によ
れば、効率よく液晶によるシール材への差込みを抑制するとともに、角部分の気泡の発生
を抑制することができる。さらに、製造される液晶表示素子に応じて各辺の長辺部と短辺
部によりセル厚大領域の幅を変更することもできる。
【0022】
また、本発明にかかる液晶表示素子においては、前記セル厚大領域のセルギャップは、
前記表示領域側からシール材側に向かって順次大きくなるように形成することができる。
【0023】
セル厚大領域のセルギャップを前記表示領域からシール材側に向かって順次大きくなる
ように形成すれば、液晶がよりセル厚大領域に広がりやすくなる。そのため、本発明の液
晶表示素子によれば、より液晶がシール材に液晶が差し込み難くなると共に液晶内に気泡
の発生も少ない液晶表示素子が得られる。
【0024】
また、本発明にかかる液晶表示素子においては、前記セル厚大領域は、前記一対の基板
の一方又は両方の基板の前記表示領域と前記シール材との間に形成された樹脂層に形成さ
れた溝からなることが好ましい。
【0025】
本発明の液晶表示素子によれば、従来形成される樹脂層に溝を形成することによってセ
ル厚大領域を形成することができるため、特別な製造工程や材料を用いることなくセル厚
大領域を形成することができるので、安価な液晶表示素子を提供することができる。
【0026】
また、本発明にかかる液晶表示素子においては、前記セル厚大領域は、前記一対の基板
の少なくとも一方に形成することができる。
【0027】
本発明の液晶表示素子によれば、液晶を滴下する際の下側になる基板にセル厚大領域を
形成すればよいので、製造される様々な液晶表示素子の基板に対応することができる。さ
らに、一対の基板の両方の基板にセル厚大領域を形成することで、基板を貼り合わせたと
きに、シール材に到達する液晶を両方の基板に形成されたセル厚大領域によって広げるこ
とができるので、シール材の差込み及び角部の気泡の発生をさらに抑制することができる
。また、一対の各基板ごとに形成されるセル厚大領域の形状を変えて形成することもでき
るので、セル厚大領域の形状により液晶の広がる時間や速度を制御することができ、液晶
表示素子の大きさや形状に合わせて設計の幅を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の実施形態1の液晶表示素子の平面図である。
【図2】実施形態1の液晶表示素子のカラーフィルター基板を透視して示す1サブ画素分の拡大平面図である。
【図3】図2のIII−III線で切断した断面図である。
【図4】図4Aは図1のVIA−VIA線での断面図であり、図4Bは図1のIVB−IVB線での断面図であり、図4Cは図1のVIC−VIC線での断面図である。
【図5】図5Aは実施形態1の液晶表示素子に液晶が広がっていく過程を示した模式平面図であり、図5Bは図5AのVB−VB線での断面図であり、図5Cは図5AのVC−VC線での断面図である。
【図6】図6Aは実施形態2に係る液晶表示素子の平面図であり、図6Bは図6AのVIB−VIB線での断面図であり、図6Cは図6AのVIC−VIC線での断面図である。
【図7】図7Aは実施形態3に係る液晶表示素子の平面図であり、図7Bは図7AのVIIB−VIIB線での断面図であり、図7Cは図7AのVIIC−VIIC線での断面図である。
【図8】図8Aは実施形態4に係る液晶表示素子の平面図であり、図8Bは図8AのVIIIB−VIIIB線での断面図であり、図8Cは図8AのVIIIC−VIIIC線での断面図である。
【図9】図9A及び図9Bは実施形態4に係る液晶表示素子の他の構成を示す平面図である。
【図10】図10Aは実施形態5に係る液晶表示素子の図4Aに対応する断面図であり、図10Bは実施形態5に係る液晶表示素子の他の構成を示す断面図であり、図10Cは実施形態6に係る液晶表示素子の図4Aに対応する断面図であり、図10Dは実施形態6に係る液晶表示素子の他の構成を示す断面図である。
【図11】図11Aは従来例の液晶表示素子に液晶が広がっていく過程を示した模式平面図であり、図11Bは図11AのXIA−XIA線での断面図であり、図11Cは図11AのXIC−XIC線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態
は、本発明の技術思想を具体化するための液晶表示素子を例示するものであって、本発明
をこの液晶表示素子に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれる
その他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。なお、この明細書における説明
のために用いられた各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさ
とするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比
例して表示されているものではない。
【0030】
ちなみに、以下に述べるアレイ基板及びカラーフィルター基板の「表面」とは各種配線
が形成された面を示すものとする。なお、本発明に於ける液晶表示素子は、TN(Twiste
d Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モードあるいはMVA(Multi-domain
Vertical Alignment)モードで駆動するいわゆる縦電界方式の液晶表示素子や、IPS(
In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード等の横電界方式
の液晶表示素子にも適用可能であるが、以下においてはFSSモードの液晶表示素子に代
表させて各実施形態の液晶表示素子を説明する。
【0031】
[実施形態1]
まず、図1を参照して、実施形態1の液晶表示素子10Aの構成について説明する。図
1に示すように、実施形態1の液晶表示素子10Aは、矩形状のガラス等からなる第1透
明基板12上に各種配線等を形成したアレイ基板11(本発明の「一方の基板」に対応)
と、矩形状のガラス等からなる第2透明基板26にカラーフィルター層等を形成したカラ
ーフィルター基板25(本発明の「他方の基板」に対応)が対向配置されている。そして
、このアレイ基板11とカラーフィルター基板25はシール材31で貼り合わされており
、このシール材31で形成された空間内に液晶35(図3参照)が封入されている。また
、シール材31で囲まれた領域内であって、後述する複数のサブ画素領域32が形成され
ている領域(表示に寄与する領域)が表示領域33となり、この表示領域33の外側が非
表示領域34(「額縁領域」とも言う)となっている。
【0032】
なお、アレイ基板11はカラーフィルター基板25と対向配置させたときに所定スペー
スの張出した部分が形成されるようにカラーフィルター基板25より若干サイズが大きい
ものが使用されている。この張出した部分は、液晶35を駆動するためのドライバーIC
36等が配置される実装領域12aとなっている。また、実施形態1にかかる液晶表示素
子10AはODF法で製造されたものであるため、液晶注入口は形成されていない。なお
、アレイ基板11の表示領域33とシール材31との間には、表示領域33部分の基板間
の隙間のセルギャップG1よりも大きいセルギャップG2(図4参照)を有するセル厚大
領域30Aが形成されている。このセル厚大領域30Aについての詳細は後述する。
【0033】
次にアレイ基板11及びカラーフィルター基板25の構成について、図2ないし図4を
参照して説明する。先ず、アレイ基板11には、第1透明基板12の表面に例えばMo/
Alの2層配線からなる複数の走査線13が互いに平行になるように形成されている。ま
た、この走査線13が形成された第1透明基板12の表面全体に亘って窒化ケイ素ないし
は酸化ケイ素等の透明絶縁材料からなるゲート絶縁膜15が被覆されている。そしてスイ
ッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)17が形成
される領域には、このゲート絶縁膜15の表面に例えばアモルファスシリコン層からなる
半導体層16が形成されている。この半導体層16が形成されている位置の走査線13の
領域がTFT17のゲート電極Gを形成する。
【0034】
また、ゲート絶縁膜15の表面には、例えばMo/Al/Moの3層構造の導電性層か
らなるソース電極Sを含む信号線14及びドレイン電極Dが形成されている。この信号線
14のソース電極S部分及びドレイン電極D部分は、いずれも半導体層16の表面に部分
的に重なっている。また、このアレイ基板11の表面全体に亘って窒化ケイ素ないしは酸
化ケイ素等の透明絶縁材料からなるパッシベーション膜18が被覆されている。さらに、
このパッシベーション膜18の表面全体に例えば樹脂材料からなる層間膜19が被覆され
ており、ドレイン電極Dに対応する位置のパッシベーション膜18及び層間膜19にはコ
ンタクトホール24が形成されている。なお、層間膜19には、後述するシール材31と
表示領域33との間には層間膜19が形成されない溝部分19aが設けられている(図4
参照)。
【0035】
そして、図2に示したパターンとなるように、走査線13及び信号線14で囲まれた領
域(以下「サブ画素領域32」という)の層間膜19上に、例えばITO(Indium Thin
Oxide)ないしIZO(Indium Zinc Oxide)からなる透明導電性材料で下電極20が形成
されている。この下電極20はコンタクトホール24を介してドレイン電極Dと電気的に
接続されている。そのため、この下電極20は画素電極として作動する。さらに、この下
電極20上には電極間絶縁膜21が形成されている。この電極間絶縁膜21には、例えば
窒化ケイ素等の絶縁性が良好な透明絶縁材料が使用される。
【0036】
そして、この電極間絶縁膜21上にはサブ画素領域32に複数の、例えば平面視でバー
状のスリット23を有するITOないしIZOからなる透明導電性材料で上電極22が形
成されている。この上電極22は、表示領域33の全体に亘って形成されており、非表示
領域34において共通配線(図示省略)と電気的に接続されている。そのため、上電極2
2は共通電極として作動する。この後、表示領域33の上電極22を含む表面全体に配向
膜(図示省略)が設けられることにより実施形態1の液晶表示素子10Aのアレイ基板1
1となる。
【0037】
このとき、図4に示すように、アレイ基板11には、前述した層間膜19が形成されな
い溝部分19aが表示領域33のセルギャップG1よりも大きいセルギャップG2となる
セル厚大領域30Aが形成されている。また、実施形態1の液晶表示素子10Aでは、図
4Aないし図4Cに示すように、シール材31の長辺部分31a、短辺部分31b及び角
部分31cに形成されるセル厚大領域30Aの深さG2及び幅WAは同一とされている。
また、図4では、アレイ基板に形成される第1電極、電極間絶縁膜及び第2電極は省略し
てある。
【0038】
次に、カラーフィルター基板25は、図3に示すように、ガラス基板等からなる第2透
明基板26の表面に、アレイ基板11の走査線13、信号線14及びTFT17並びに非
表示領域34に対応する位置を被覆するように遮光層27が形成されている。そして、遮
光層27が形成された第2透明基板26の表面には、複数色、例えば赤、緑、青の3色か
らなるカラーフィルター層28が形成されている。さらに、遮光層27及び、カラーフィ
ルター層28の表面を被覆するように透明樹脂からなるオーバーコート層29が形成され
ている。また、オーバーコート層29の表面には、カラーフィルター基板25の表面全体
に亘り配向膜(図示省略)が形成されている。また、アレイ基板11及び、カラーフィル
ター基板25の外面にはそれぞれ偏光板(図示省略)が設けられている。
【0039】
シール材31は、専用のシールディスペンサーを用いてアレイ基板11上に描画される
。本実施形態1にかかる液晶表示素子10Aでは、液晶注入口が形成されないので、シー
ル材31は閉ループ状に塗布される(図1参照)。シール材31の描画が終了した後、O
DF法により液晶35が滴下され、カラーフィルター基板25を重ねて圧力を加え、紫外
線又は熱等によりシール材31が硬化され、両基板11、25が貼り合わされる。なお、
シール材31はアレイ基板11上に描画しているが、カラーフィルター基板25上であっ
ても構わない。また液晶が滴下されるのも、必ずしもシール材31が描画されている基板
というわけではなく、シール材31が描画されている基板と反対側の基板に滴下して、両
基板を貼り合せてもよい。ただし本発明の特徴であるセル厚大領域30Aを形成している
基板側に液晶を滴下した方がより効果的となる。
【0040】
次に、図4、図5及び図11を参照して、この液晶35が塗布され基板同士が貼り合わ
される際の、アレイ基板11にセル厚大領域30Aが形成されたことによる本実施形態1
の効果を、従来例と比較しながら説明する。なお、図11に示す従来例としての液晶表示
素子10'は、実施形態1の液晶表示素子10Aと対比すると、セル厚大領域が形成され
ていないことが異なるのみなので、その他の共通する構成部分には同一の参照符号を付し
、詳細な説明は省略する。
【0041】
図11Aに示すように、従来の液晶表示素子10'にODF法を用いて液晶35を滴下
し、封入する場合、シール材31の辺部分31a、31bと角部分31cとでは、表示領
域33の中央部分からの距離が異なることにより、辺部分31a、31bでは液晶35a
、35bが短時間で到達することとなり、特に長辺部分31aではこの傾向が顕著となる
。さらに、ODF法ではシール材31は未硬化状態で液晶35と接することとなるため、
図11Bに示すように液晶35とシール材31の接触している時間が長くなり、貼り合わ
せ時の圧力がかかると、液晶35'がシール材31に差し込み、シール材31が破れて液
晶漏れを起すことがある。
【0042】
一方、シール材31の角部分31cでは、距離があるため、図11Cに示すように、液
晶35cが角部分31cに届くまで時間がかかるので、十分な量の液晶35がないため、
液晶35で満たされない部分が発生し、この部分に気泡37が発生してしまうことがある
。この気泡37は、ODF法により液晶35を注入して基板11、25を貼り合わせると
きには、真空状態にした装置内で行われるため、貼り合わせが完了して再び大気圧に戻さ
れた際に液晶で満たされていない部分、すなわち角部分に発生することとなる。この気泡
37は、液晶表示素子が傾いたり加速度が加わったりすると移動してしまうことがあり、
表示領域33に留まると表示不良の原因となる。
【0043】
そこで、本実施形態1の液晶表示素子10Aでは、図4及び図5に示すようにシール材
31と表示領域33との間にセル厚大領域30Aが形成されている。なお、図5に示すア
レイ基板では、第1電極、電極間絶縁膜及び第2電極は図示を省略してある。
【0044】
この実施形態1の液晶表示素子10Aに対して、ODF法により液晶35を滴下し、貼
り合わせを行う場合、図5Aに示すようにシール材31の長辺部分31aの液晶35aは
、従来例と同様に短時間で到達する。このとき、実施形態1の液晶表示素子10Aにはセ
ル厚大領域30Aが形成されているため、図5Bに示すように、液晶35aはこのセル厚
大領域30Aに流れ込み、シール材31と接触するまでに時間を要し、シール材31と長
時間接することが抑制される。さらに、セル厚大領域30Aは閉ループ上に塗布されたシ
ール材31に沿って形成されているため、図5A,図5Cに示すように、セル厚大領域3
0Aに流れ込んだ液晶35は、セル厚大領域30Aに沿って広がり、角部分31cに到達
することとなる。そのため、従来、液晶35が広がり難かった角部分31cには、表示領
域33上を広がる液晶35cとセル厚大領域30Aに沿って広がる液晶35dによって、
十分な量の液晶35で満たされるようになり、液晶不足による気泡の発生を抑制すること
ができる(図4A、図4B参照)。
【0045】
そして、アレイ基板11及びカラーフィルター基板25の貼り合わせが完了した後、ア
レイ基板11の実装領域12aにドライバーDr等が設置され、本実施形態1にかかる液
晶表示素子10となる。
【0046】
以上より、実施形態1にかかる液晶表示素子10Aによれば、表示領域33とシール材
31との間にセル厚大領域30Aが形成されていることにより、ODF貼り合わせ時のシ
ール材31への液晶35の差し込み、及び、液晶35が広がり難かった角部分での気泡の
発生を抑制した液晶表示素子を提供することができる。
【0047】
また、実施形態1の液晶表示素子は矩形状であるので、表示領域33が矩形の液晶表示
素子の角部分の液晶不足を抑制し、それに伴う気泡の発生をも抑制した液晶表示素子を提
供することができる。なお、表示領域33が矩形のものについて本実施形態では示してい
るが、表示領域が円形や馬蹄形のようなものであってもよい。特に馬蹄形のような一部に
角部分が存在しているような形状であれば非常に効果的である。
【0048】
また、実施形態1の液晶表示素子に形成されたセル厚大領域30Aは、従来アレイ基板
に形成された層間膜19(樹脂膜)に溝を形成することによって形成されているため、特
別な製造工程や材料を用いることなくセル厚大領域30Aを形成することができるので、
安価な液晶表示素子を提供することができる。
【0049】
[実施形態2]
次に、図6を参照して、実施形態2にかかる液晶表示素子10Bについて説明する。な
お、実施形態2にかかる液晶表示素子10Bは、実施形態1にかかる液晶表示素子10A
に比べセル厚大領域30Bの形成パターンが異なるのみなので、実施形態1にかかる液晶
表示素子10Aと同一の構成については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略
する。
【0050】
実施形態2の液晶表示素子10Bは、図6Aないし図6Cに示すように、シール材の長
辺部分31a側のセル厚大領域30B1の幅WB1が広く形成され、シール材の短辺部分
31b側のセル厚大領域30B2の幅WB2は狭く形成されている。
【0051】
液晶35は、上述したようにシール材31の辺側に素早く到達することとなるが、特に
シール材の長辺部分31a側の方が、短辺部分31b側よりも表示領域33の中央部分に
近くなるので、シール材31への液晶35の差込が起こりやすくなる。そのため、本実施
形態2の液晶表示素子10Bでは、長辺部分31a側へ広がった液晶35aは、幅の広い
セル厚大領域30B1によりシール材31まで到達するのに時間がかかるようになり、シ
ール材31への液晶35の差込みを抑制することができる。また、短辺部分31b側に広
がった液晶35bは、長辺部分31a側に比べて到達が遅くなるが、角部分31cに比べ
れば早く到達する。そのため、短辺部分31b側に幅の狭いセル厚大領域30B2が形成
されることにより、短辺部分31b側に効率よく液晶35を広げることができると共に、
液晶35がシール材31と接触する時間を短くし液晶の差込みを抑制しつつ、幅の狭いセ
ル厚大領域30B2に液晶を流すことで角部分31cへ液晶35を効率よく広げることが
でき、気泡の発生を抑制することができる。
【0052】
[実施形態3]
次に、図7を参照して、実施形態3にかかる液晶表示素子10Cについて説明する。な
お、実施形態3にかかる液晶表示素子10Cは、実施形態1にかかる液晶表示素子10A
に対してセル厚大領域の形成パターンが異なるのみなので、実施形態1にかかる液晶表示
素子10Aと同一の構成については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する

【0053】
実施形態3の液晶表示素子10Cは、図7Aないし図7Cに示すように、セル厚大領域
30Cは、アレイ基板11に形成されたシール材31の角部分31cを除いた辺部分31
a、31bのみに形成されている。
【0054】
このような構成とすることで、実施形態3の液晶表示素子10Cによれば、液晶35の
差込みが生じやすいシール材31の辺部分31a、31bにのみセル厚大領域30Cが形
成されているので、上述した実施形態1の場合と同様にシール材31への液晶35の差込
を抑制することができる。さらに、セル厚大領域が形成されていない角部分31cでは、
液晶がセル厚大領域に流れ込むことがないため、液晶35は無駄なく広がることができる
。そのため、辺部分31a、31bに形成されたセル厚大領域30Cに沿って広がる液晶
35と、角部分31cのセル厚大領域が形成されていない基板表面を広がる液晶35によ
り、角部分31cまで液晶35が到達しやすくなり、気泡の発生をさらに抑制することが
できるようになる。
【0055】
なお、実施形態3の液晶表示素子の短辺部分のセル厚大領域30Cの幅を長辺部分のセ
ル厚大領域の幅に比べ狭く形成してもよい。このようにすることで、上記実施形態2の発
明の効果も奏することができる。
【0056】
[実施形態4]
次に、図8を参照して、実施形態4にかかる液晶表示素子10Dについて説明する。な
お、実施形態4にかかる液晶表示素子10Dは、実施形態1にかかる液晶表示素子10A
に対してセル厚大領域の形成パターンが異なるのみなので、実施形態1にかかる液晶表示
素子10Aと同一の構成については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する

【0057】
実施形態4の液晶表示素子10Dでは、図8Aないし図8Cに示すように、セル厚大領
域30Dは、表示領域33の中心部から最も近い位置にある部分の幅WD1が最も大きく
、最も遠い位置にある部分の幅WD2が最も小さくなっており、表示領域33からの距離
に応じて連続的に変化した、平面視でいわゆる「ひし形状」に形成されている。このよう
な構成とすることで、液晶35が最も早く到達する各辺部分31a、31b側の中央部分
のセル厚大領域30Dの幅は最も広く形成され、最も遅く到達する角部分31cのセル厚
大領域30Dは最も小さく形成されるようになる。
【0058】
そのため、実施形態4の液晶表示素子10Dでは、液晶35の広がり方に応じて液晶3
5によるシール材31への差込みを効率よく抑制できる。さらに、角部分31cでは、セ
ル厚大領域30Dの幅が最も狭く形成されるため、液晶35が基板上を広がるとともに、
辺部分31a、31bのセル厚大領域30Dからも液晶35を広げることもできるため、
角部分31cに十分に液晶35を満たすことができ、角部分31cの気泡の発生を抑制す
ることができる。さらに、製造される液晶表示素子の形状に応じて各辺の長辺部分と短辺
部分によりセル厚大領域の幅を変更することもできる。
【0059】
また、実施形態4の液晶表示素子のセル厚大領域30Dの形状を、連続的ではなく図9
Aの液晶表示素子10Dに示すような断続的なセル厚大領域30Dとしてもよいし、
さらに、図9Bの液晶表示素子10Dに示すような楕円状のセル厚大領域30Dとし
てもよい。
【0060】
[実施形態5]
次に、図10A、図10Bを参照して、実施形態5にかかる液晶表示素子10Eについ
て説明する。なお、実施形態5にかかる液晶表示素子10Eは、実施形態1にかかる液晶
表示素子10Aに比べセル厚大領域の形成パターンが異なるのみなので、実施形態1にか
かる液晶表示素子10Aと同一の構成については同一の参照符号を付与してその詳細な説
明は省略する。
【0061】
実施形態5の液晶表示素子10Eでは、セル厚大領域30EのセルギャップGEは、表
示領域33側からシール材31側に向かって順次大きくなるように傾斜状に形成されてい
る。このような構成とすることで、液晶35がセル厚大領域30Eに広がりやすくなり、
角部分31cへの液晶35の供給の効率を上げることができる。また、この形状は図9B
の液晶表示素子10Eに示すようなセル厚大領域30Eのようになだらかな曲線状と
なるようなセルギャップGEとしてもよい。
【0062】
[実施形態6]
次に、図10C、図10Dを参照して、実施形態6にかかる液晶表示素子10Fについ
て説明する。なお、実施形態6にかかる液晶表示素子10Fは、実施形態1にかかる液晶
表示素子10Aはセル厚大領域がアレイ基板に形成されていたのに対し、カラーフィルタ
ー基板に形成されている。なお、その他の構成については実施形態1の液晶表示素子10
Aと共通するので、実施形態1にかかる液晶表示素子10Aと同一の構成については同一
の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0063】
実施形態6の液晶表示素子10Fでは、セル厚大領域30Fはカラーフィルター基板2
5に形成されている。このセル厚大領域30Fの形成は、カラーフィルター基板25に形
成されるオーバーコート層29に溝部分29aを設けることで形成することができる。実
施形態6の液晶表示素子10Fによれば、液晶35を滴下する際の下側にカラーフィルタ
ー基板25を用いることができるようになるので、様々な液晶表示素子に用いられる基板
に対応することができる。
【0064】
さらに、図10Dに示すように一対の基板11、25の両方にセル厚大領域30F
形成することで、基板を貼り合わせたときに、シール材31に到達する液晶35を両方の
基板に形成されたセル厚大領域30Fによって広げることができるので、シール材31
の差込み及び角部分31cの気泡の発生をさらに抑制することができる。
【0065】
また、一対の各基板ごとに形成されるセル厚大領域の形状を変えて形成することもでき
るので、セル厚大領域の形状により液晶の広がる時間や速度を制御することができ、液晶
表示素子の大きさや形状に合わせて設計の幅を広げることができる。
【符号の説明】
【0066】
10A〜10F、10'…液晶表示素子 11…アレイ基板 12…第1透明基板 12
a…実装領域 13…走査線 14…信号線 15…ゲート絶縁膜 16…半導体層 1
7…TFT 18…パッシベーション膜 19…層間膜 20…下電極 21…電極間絶
縁膜 22…上電極 23…スリット 24…コンタクトホール 25…カラーフィルタ
ー基板 26…第2透明基板 27…遮光層 28…カラーフィルター層 29…オーバ
ーコート層 30A〜30F…セル厚大領域 31…シール材 31a…長辺部分 31
b…短辺部分 31c…角部分 32…サブ画素領域 33…表示領域 34…非表示領
域 35…液晶 36…ドライバーIC 37…気泡 D…ドレイン電極 G…ゲート電
極 S…ソース電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域の周囲に前記表示領域とは間隔を隔てて形成された閉ループ状のシール材によ
り貼り合わされた一対の基板と、
前記一対の基板間に配置された所定厚さのセルギャップに維持された液晶層と、を備え
る液晶表示素子であって、
前記表示領域と前記シール材との間には、前記表示領域の前記セルギャップよりも大き
いセルギャップが形成されたセル厚大領域が形成されていることを特徴とする液晶表示素
子。
【請求項2】
前記表示領域は矩形状であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記セル厚大領域は、前記シール材の長辺側の幅が広く、短辺側の幅が狭く形成されて
いることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記セル厚大領域は、前記シール材の角部分を除いて形成されていることを特徴とする
請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記セル厚大領域は、前記表示領域の中心部から最も近い位置にある部分の幅が最も大
きく、最も遠い位置にある部分の幅が最も小さくなっており、前記表示領域の距離に応じ
て連続的ないし断続的に変化するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2
に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記セル厚大領域のセルギャップは、前記表示領域側からシール材側に向かって順次大
きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記セル厚大領域は、前記一対の基板の一方又は両方の基板の前記表示領域と前記シー
ル材との間に形成された樹脂層に形成された溝からなることを特徴とする請求項1又は2
に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
前記セル厚大領域は、前記一対の基板の少なくとも一方に形成されていることを特徴と
する請求項1又は2に記載の液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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