説明

液晶表示装置およびその製造方法

【課題】大きな安定化蓄積容量を有する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置は、薄膜トランジスタおよび蓄積容量を有するTFT基板と、カラーフィルタ基板と、前記基板間に液晶を有し、前記蓄積容量は、下部電極(2、11)と、この下部電極を覆う第1の絶縁膜(3、13A)と、前記第1の絶縁膜を覆う第2の絶縁膜(6、15)と、第2の絶縁膜の上に形成された上部電極(4、18A)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置およびその製造方法に関するもので、特に高解像度の液晶表示装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、良く知られているように、ガラス基板上に、画素ごとに液晶分子の配列を制御する画素電極を制御するための薄膜トランジスタおよび前記画素電極の充電電荷を保持する蓄積容量部を有するTFT基板と、カラーフィルタを有するカラーフィルタ基板と、前記TFT基板と前記カラーフィルタ基板との間に液晶を有している。
【0003】
このうち、蓄積容量部について説明すると、補助容量部とも称され、液晶の配列方向を変える画素電極の充電電荷を安定に保持する機能を有しており、安定な動作を確保するため、現在ではほぼすべての液晶表示装置において使用している。
【0004】
このような液晶表示装置の従来の一般的な製造方法は、ガラス基板上にアルミニウム等の金属でゲート(下部電極)を選択的に形成し、全体に絶縁膜として例えば窒化シリコン膜を堆積し、TFT部にはこの窒化シリコン膜の上に半導体層を形成し、その後さらにソース、ドレイン電極を形成し、端子部にはさらにシリコン窒化膜を堆積した後に開口部を形成してITO膜およびアルミニウム膜を形成し、蓄積容量部ではゲートと最初の窒化シリコン層の上に形成された金属層とこれらに挟まれたシリコン窒化膜により容量を形成している。このように、従来の液晶表示装置は、TFT部も蓄積容量部も同じ単一の絶縁膜を有している。
【0005】
液晶表示装置としての動作を安定させるため、蓄積容量値を増加させる要求がある。このためには、透過型あるいは半透過型の液晶表示装置(LCD)の場合、蓄積容量部を形成する部分の面積を増加させるか、絶縁膜の誘電率を増加させるか、電極間の絶縁層の膜厚を減少させる必要がある。
【0006】
しかし、高解像化のために画素数を増加させることが技術的なトレンドとなっている現在、チップサイズがそのままであれば、1画素あたりの面積は小さくならざるを得ず、使用できる蓄積容量部(CS:Storage Capacitor)の面積も小さくなるため、面積の増加は不可能である。
【0007】
また、高誘電率の絶縁膜の開発はこれまでにすでにいろいろなものが開発されており、今後すぐれた高誘電率絶縁膜を開発できる可能性は高くない。
【0008】
このため、蓄積容量値を増大させるには、電極間の距離を縮小すること、すなわち、絶縁膜厚を薄くすることが最も効果的と考えられる。
【0009】
このアプローチを行うため、蓄積容量部の電極部の上に2層の絶縁層を形成し、上層の絶縁層を選択的にエッチングして下層の絶縁層内に達するようにして下層の絶縁層膜厚を薄くし、容量値を増加させたものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許5,831,284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に示された技術では、上層の絶縁層を貫通して下層の絶縁層の膜厚を実質的に薄くできるものの、この下層絶縁膜の薄膜化はエッチングで行われるため、安定性に乏しく、所望の容量値を確実に得にくいばかりか、過剰エッチングによりリークが生じたり、下層絶縁膜が消失してしまうことがあり、歩留りが低いという問題がある。
【0011】
また、従来の蓄積容量部においては、図4に示すように、ガラス基板1の上に金属の下部電極2を選択的に形成し、その上に誘電膜としての窒化シリコン膜3を堆積し、その上に上部電極4を形成しているので、絶縁膜3の形状は下部電極2の形状に沿ったものとなる。この結果、下部電極上面のエッジすなわち段差部分2aに対応する部分の絶縁膜3にクラックが発生したり、薄い部分が生じて絶縁膜耐性が損なわれ、リーク電流が発生する等歩留りの低下を来すことがあるが、絶縁膜の薄膜化により、このような問題が起きやすくなっている。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、大きな蓄積容量値を有する蓄積容量部を安定して得ることのできる液晶表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、ガラス基板上に、画素ごとに液晶分子の配列を制御する画素電極を制御するための薄膜トランジスタおよび前記画素電極の充電電荷を保持する蓄積容量部を有するTFT基板と、カラーフィルタを有するカラーフィルタ基板と、前記TFT基板と前記カラーフィルタ基板との間に液晶とを有する液晶表示装置において、前記蓄積容量部は、下部電極と、この下部電極の周縁部およびその外側を覆う第1の絶縁膜と、前記下部電極および前記第1の絶縁膜を覆う第2の絶縁膜と、前記下部電極に対応して第2の絶縁膜の上に形成された上部電極で形成されたことを特徴とする液晶表示装置が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、ガラス基板上に、画素ごとに液晶分子の配列を制御する画素電極を制御するための薄膜トランジスタおよび前記画素電極の充電電荷を保持する蓄積容量部を有するTFT基板と、カラーフィルタを有するカラーフィルタ基板と、前記TFT基板と前記カラーフィルタ基板との間に液晶を有する液晶表示装置の製造方法において、前記蓄積容量部の形成は、前記ガラス基板上に第1の金属膜を形成し、これをパターニングして下部電極を得る工程と、前記下部電極を覆うように第1の絶縁膜を形成し、前記下部電極上でその周縁部に残存するようエッチング除去して前記下部電極を露出させる工程と、露出した前記下部電極上および前記周縁部に残存した前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を堆積させる工程と、前記第2の絶縁膜上に第2の金属膜を形成し、これを前記下部電極に対向する形状にパターニングする工程とにより行われることを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる液晶表示装置およびその製造方法は、蓄積容量部の下部電極の上に第1の絶縁膜を形成し、下部電極の端部に残存するように下部電極の上で第1の絶縁膜を除去し、全体に第2の絶縁膜を形成するようにしているので、下部電極上に確実に高誘電率膜を薄く形成でき、かつ端部が保護されることにより、リーク等の欠陥が発生することを抑制でき、安定して大容量値の蓄積容量部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明にかかる液晶表示装置の製造方法の実施例を説明する。以下の図面において、同じ構成要素や層については同じ参照番号を付している。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明にかかる液晶表示装置において特徴的な蓄積容量部の構成を示す断面図であって、図4の従来例に対応するものであり、同じ構成要素については同じ参照番号を付している。
【0018】
ガラス基板1の上に金属でなる下部電極2が選択的に形成されており、例えば窒化シリコンである第1の絶縁膜3が下部電極の周囲に形成され、その端部3aは下部電極の端部2aの上に位置している。そして、これら全体の上には第2の絶縁膜6が形成され、その上に下部電極に対応するように上部電極4が形成されている。全体の上には保護膜5が形成されている。なお、このような形状を得るには第1の絶縁膜3を下部電極の周縁部2aの上に残存するように、下部電極2上で選択的にエッチング除去する。この際、下部電極の周縁部2aの上に位置する第1の絶縁膜3ではエッチングが行われないため、欠陥等を生じるおそれが少ない。
【0019】
この実施例では、下部電極の端部2aに着目すると、この端部2aは第1の絶縁膜3の端部3aにより覆われ、この部分も含めてその上に好ましくは第1の絶縁膜よりも誘電率の高い第2の絶縁膜6が形成され、この第2の絶縁膜6が誘電膜として電荷を蓄積するようになっているため、下部電極の端部2aが第1の絶縁層3で保護された状態で、誘電膜6を安定に薄く形成することが可能である。
【0020】
したがって、高蓄積容量値の蓄積容量部を安定して形成することができる。
【0021】
図2および図3は本発明にかかる液晶表示装置の製造方法を示す工程別断面図であって、図2は蓄積容量部、図3はTFT部にそれぞれ着目して描いたものである。各図における分図(a)から(h)はそれぞれ同じ工程を表している。
【0022】
以下、工程に沿って説明する。
【0023】
まず、ガラス基板11を準備し、それぞれ電極となるアルミニウム等の金属層12を例えばスパッタリングにより例えば200〜300nmの厚さで堆積させ、これを所望形状のエッチングマスクを用いてエッチングすることにより、それぞれ電極を得る。すなわち、蓄積容量部においては下部電極12A(図2(a))、TFT部においてはゲート電極12B(図3(a))となっている。
【0024】
続いて、第1の絶縁膜13を全面に例えば100〜300nmの厚さで堆積させる。この堆積は例えばプラズマCVD法で行うことができる。この第1の絶縁膜の材料は例えば窒化シリコン(SiN)を選択することができる。そしてこの絶縁膜13は各部においてその機能上必要な形状にパターニングされる。すなわち、蓄積容量部では下部電極12Aの周縁部およびその外方に残存するように下部電極12Aの大部分を露出させるような開口14Aを生じるようにエッチングが行われ、TFT部では表示を行う部分のガラス基板11が露出するような開口14Bを生じるようにエッチングが行われる(図2(b)、図3(b)参照)。
【0025】
次に、全体に第2の絶縁膜15を例えばプラズマCVD法により堆積させる。この膜は第1の絶縁膜15と同じ材料でも良いが、蓄積容量部では容量を形成する誘電膜となる膜であるので、より高誘電率の膜、例えば酸化タンタル(Ta)などを使用することができる。また膜厚は蓄積容量部で必要な容量値を得るために必要とされる膜厚とすることができ、例えば100〜150nmである。
【0026】
なお、TFT部では、アモルファスシリコン等のチャネル層16および電極層17が形成される(図2(c)、図3(c)参照)。
【0027】
次の工程では、金属層18が全面に形成され、所定のパターニングにより、蓄積容量部では上部電極18A、TFT部では電極層17の上に形成された電極配線18Bとなる。また、TFT部ではソースとドレインを分離するための分離溝19も形成される(図2(d)、図3(d)参照)。
【0028】
次に、全体に絶縁膜20が堆積され、エッチングを行うことにより、TFT部では電極取り出し用の開口21と表示部開口22が形成される(図2(e)、図3(e)参照)。
【0029】
次の工程では、全体に絶縁膜26が形成され、TFT部では電極取り出し用の開口27が開口21の中に、また表示部開口28が表示部開口22を広げる形で形成される。(図2(f)、図3(f)参照)。
【0030】
続いて、全体に透明電極となるITO膜を形成する。ITO膜は被着性が良いので、TFT部における電極取り出し開口27のような狭い場所にも回り込んで被着する。また、電極部のように、連続していると都合が悪い場所では適当なフォトマスクを用いて不連続な透明電極とする(図2(g)、図3(g)参照)。
【0031】
さらに、透明であることを要求されない場所には、例えばモリブデン膜のような高融点金属膜でなるバッファ膜30を形成後、反射膜としてのアルミニウム膜31を選択的に堆積させる(図2(h)、図3(h)参照)。
【0032】
以上のように、本発明にかかる液晶表示装置では、蓄積容量部で、下部電極の上に形成された第1の絶縁膜を下部電極の周縁部が第1の絶縁膜の端部で覆われるように選択的に除去し、これらの上に第2の絶縁膜を形成しているので、下部電極上に確実に高誘電率膜を薄く形成でき、かつ端部が保護されることにより、リーク等の欠陥が発生することを抑制でき、大容量値の蓄積容量部を安定に形成することができる。
【0033】
以上の実施例においては、使用される絶縁膜は2層であったが、第2の絶縁膜に相当する膜を複数層で形成することにより、より高誘電率の膜を得て、安定した大容量の蓄積容量を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる液晶表示装置中の特徴的な部分である蓄積容量部の構成を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる液晶表示装置の製造工程を蓄積容量部に着目して描いた工程別断面図である。
【図3】本発明にかかる液晶表示装置の製造工程をTFT部に着目して描いた工程別断面図である。
【図4】従来の液晶表示装置における蓄積容量部の問題を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1、11 ガラス基板
2、12A 下部電極
3、13 第1の絶縁膜
4、18A 上部電極
6、15 第2の絶縁膜
12 金属層
14A 開口
18 金属層
20 絶縁膜
29 ITO膜
31 アルミニウム膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に、画素ごとに液晶分子の配列を制御する画素電極を制御するための薄膜トランジスタおよび前記画素電極の充電電荷を保持する蓄積容量部を有するTFT基板と、カラーフィルタを有するカラーフィルタ基板と、前記TFT基板と前記カラーフィルタ基板との間に液晶とを有する液晶表示装置において、
前記蓄積容量部は、下部電極と、この下部電極の周縁部およびその外側を覆う第1の絶縁膜と、前記下部電極および前記第1の絶縁膜を覆う第2の絶縁膜と、前記下部電極に対応して第2の絶縁膜の上に形成された上部電極とを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の絶縁膜は前記第1の絶縁膜よりも誘電率の高い材料でなることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2の絶縁膜は複数の膜の積層体でなることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
ガラス基板上に、画素ごとに液晶分子の配列を制御する画素電極を制御するための薄膜トランジスタおよび前記画素電極の充電電荷を保持する蓄積容量部を有するTFT基板と、カラーフィルタを有するカラーフィルタ基板と、前記TFT基板と前記カラーフィルタ基板との間に液晶とを有する液晶表示装置の製造方法において、
前記蓄積容量部の形成は、
前記ガラス基板上に第1の金属膜を形成し、これをパターニングして下部電極を得る工程と、
前記下部電極を覆うように第1の絶縁膜を形成し、前記下部電極上でその周縁部に残存するようエッチング除去して前記下部電極を露出させる工程と、
露出した前記下部電極上および前記周縁部に残存した前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を堆積させる工程と、
前記第2の絶縁膜上に第2の金属膜を形成し、これを前記下部電極に対向する形状にパターニングする工程とにより行われることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記第2の絶縁膜は前記第1の絶縁膜よりも薄く形成されることを特徴とする、請求項4に記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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