説明

液晶表示装置

【課題】マグネシウム・ニッケル系合金薄膜などの希土類金属の水素化物からなる薄膜の実用的な新たな用途を提供する。
【解決手段】マグネシウム・ニッケル系合金薄膜などの希土類金属の水素化物を含む調光ミラー層20を、情報表示部としての液晶パネル部11の後側に配置した。従って、印加する電圧を制御するのみで、透明状態とすることにより、液晶パネル部11の情報をバックライトにより表示させることができると共に、該調光ミラー層20を鏡面状態とすることにより、外部光により液晶パネル部11の情報を表示させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶表示装置に関し、特に、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜などの希土類金属の水素化物の薄膜を適用した液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
1996年に希土類金属の水素化物からなる薄膜が、鏡の状態から光を透過させる透明な状態に物性変換する性質を有することが知られるようになり、その後、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜が金属鏡面膜と透明膜とに変換することが、2001年5月14日米国発行のAPPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME78 NUMBER20 にて明らかにされ、さらに、米国特許出願公開US2002/0044717A1号として公開されている。また、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜の構造を調製することにより、電解質を用いて鏡面状態と透明状態とに電気的に制御できることも知られている(非特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
米国特許出願公開US2002/0044717A1号明細書
【非特許文献1】
APPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME78 NUMBER20、2001年5月14日
【非特許文献2】
「光学特性に優れた調光ミラー薄膜材料を開発」、独立行政法人産業技術総合研究所、2002年12月17日発表、インターネット(URL:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2002/pr20021217/pr20021217.html)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した調光ミラー材料は、現在のところ、実現性ある用途としては、建物の窓ガラスあるいは自動車の窓ガラスとしての用途が検討されているのみである。すなわち、鏡面状態とすることによって外部からの太陽光を遮蔽する機能をもたせることで、省エネルギー効果を企図したものであるが、窓ガラス以外で実現性のある用途は未だ提供されていない。
【0005】
一方、液晶表示装置には、その表示形態として、液晶パネル部(液晶セル)の後側にライトを配置した透過型(バックライト方式)や、液晶パネル部の後側に反射板を配置し、外部光を反射させて情報を表示する反射型がある。しかしながら、透過型の場合には、太陽光など、外部から強い光が入ると画面が見にくくなるという欠点があり、反射型の場合には、外部光が弱い場合には画面が見にくいという欠点がある。また、反射型の欠点を補うために、液晶パネル部の前面に導光板を配置したフロントライト方式もあるが、この場合には、導光板表面に凹凸があるため、表示される画像品位の点で問題がある。また、バックライトと液晶パネル部との間に、同一面上に透過面と反射面を備えた反射透過層を配置して、透過型と反射型の欠点を補う透過反射方式も知られているが、同一面上に2種類の機能をもつ面を作っているため、バックライトの透過効率及び外部光の反射効率が共に1/2以下となり、光源の利用効率の点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みなされたものであり、調光ミラー材料を液晶表示装置に適用することにより、透過型と反射型の有する双方の欠点を解消し、光源の利用効率を向上させることが可能な液晶表示装置を提供し、もって、調光ミラー材料の実現性ある新規な用途を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、印加電圧を制御することにより鏡面状態と透明状態とに物性変換する希土類金属の水素化物を含む調光ミラー層を、液晶パネル部の裏側に配置したことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記調光ミラー層の裏側に配設されるバックライトを備え、印加電圧を制御することにより、該調光ミラー層が透明状態の場合には、前記バックライトからの光を透過させ、該バックライトを光源として情報を表示し、鏡面状態の場合には、該調光ミラー層で外部光を反射させ、該外部光を光源として情報を表示する構成であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置を提供する。
請求項3記載の本発明では、携帯端末機の表示装置として用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示装置を提供することを課題とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を更に詳しく説明する。図1は、本実施形態の液晶表示装置1の要部を示す図である。この液晶表示装置1は、液晶パネル部11と、調光ミラー層20とを備えて構成される。液晶パネル部11は、従来公知の液晶セルであり、注入される液晶層を中心として、その両側に配向膜、透明電極、ガラス基板、偏向フィルタがサンドイッチ状に積層された構造を備えている。なお、人が視認する方向に寄った側、すなわち液晶層の前側に配置される透明電極とガラス基板との間には、カラーフィルタが配置される。かかる液晶パネル部11は、LSIなどの素子に接続され、それらによって構成される液晶駆動部12により駆動制御され、組み込まれたソフトウエアや操作ボタンからの指令に従って、表示する情報の切り替えを行う。
【0009】
液晶パネル部11の後側、すなわち、人が視認する方向と反対側には、バックライト15が配置される。従って、バックライト15が駆動している際には、このバックライト15の光により、液晶パネル部11に表示される情報が視認可能となる。
【0010】
一方、本実施形態においては、上記した液晶パネル部11とバックライト15との間に、調光ミラー層20が設けられる。調光ミラー層20としては、例えば、上記した非特許文献2に開示されたもの、すなわち、希土類金属の水素化物からなる薄膜であるマグネシウム・ニッケル系合金薄膜を含み、これに電解質層を組み合わせたものを用いることができる。なお、調光ミラー層20を液晶パネル部11とバックライト15との間に配設するに当たっては、例えば、透明な薄型の基板に、上記薄膜をスパッタリング等により形成して支持することにより、容易に配設することができる。
【0011】
調光ミラー層20には、電極が設けられており、印加電圧の制御により、鏡面膜となったり、透明膜となったりする。すなわち、調光ミラー層20として、上記マグネシウム・ニッケル系合金薄膜を用いた場合には、電圧の印加方向を変えることによって、透明状態から鏡面状態となったり、鏡面状態から透明状態となったりする。調光ミラー層20は、液晶パネル部11の後側に位置するため、鏡面状態の際には、前方から入射する外部光を反射し、透明状態に変化すると、バックライト15の光を透過させる。
【0012】
本実施形態の液晶表示装置1は、例えば、図2に示したように、携帯電話、PHS、PDA等の携帯端末機に組み込まれて使用される。もちろん、デスクトップ式、ノート式のパーソナルコンピュータのディスプレイとして用いたり、液晶テレビのディスプレイとして用いることもできる。
【0013】
そして、例えば、任意の又は特定の操作ボタンを操作することにより、電圧の印加方向が変わるように設定する。これにより、昼間など、太陽光のように強い外部光源が存在する際には、調光ミラー層20へ所定方向に電圧が印加されるように操作して鏡面状態にする。この結果、外部光が、鏡面状態となった調光ミラー層20に反射され、液晶パネル部11の情報を表示させる。
【0014】
一方、夜間など、十分な外部光源が得られない場所で使用する際には、操作ボタンを操作して、調光ミラー層20への印加電圧の方向を上記と逆方向にする。これにより、調光ミラー層20は透明状態となるため、バックライト15の光を透過し、液晶パネル部11の情報を表示させる。
【0015】
従って、本実施形態においては、太陽光など、外部から強い光が入ると画面が見にくくなるという従来の透過型の液晶表示装置の欠点を補い、調光ミラー層20の状態を制御して鏡面状態に変化させることにより、強い外部光の下では、反射型として使用することができる。その一方、外部光が弱い場合に画面が見にくくなるという従来の反射型の液晶表示装置の欠点を補い、かかる場合には、調光ミラー層20の状態を制御して透明状態に変化させることにより、バックライト15を用いた透過型として使用することができる。従って、従来のフロントライト方式のように、反射型の欠点を補うために設けられる導光板を配設する必要がなく、画像品位の劣化の問題もない。また、調光ミラー層20は、鏡面状態と透明状態とに確実に変化するため、鏡面状態における外部光の反射効率が高く、また、透明状態におけるバックライト15の透過効率が高い。このため、従来の透過反射方式と比較して、光源の利用効率が優れている。しかも、調光ミラー層20を構成するマグネシウム・ニッケル系合金薄膜等は、きわめて薄く、透明な薄型の基板に対してスパッタリング等によって容易に形成できるため、構造を複雑化させることがなく、安価に製造できると共に、携帯端末機に組み込んだ際にも、全体の重さやコンパクト性(薄さ)に悪影響を与えることもない。
【0016】
なお、本発明の液晶表示装置は上記した実施形態に限定されるものではない。上記した実施形態では、調光ミラー層への電圧の印加方向の切り替え(制御)を、任意の又は特定の操作ボタンにより行う構成としているが、光センサを設け、太陽光のような強い外部光を検知した際に、調光ミラー層に対して、透明状態から鏡面状態に変化させるように電圧を印加し、強い外部光を検知しなくなった際には、鏡面状態から透明状態に変化させるように電圧を印加する制御回路を組み込むこともできる。
【0017】
また、上記実施形態では、調光ミラー層として用いたマグネシウム・ニッケル系合金薄膜を、電圧の印加方向が変化するような回路構成とすることにより印加電圧を制御し、鏡面状態から透明状態に又は透明状態から鏡面状態に変化させるものであるが、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜は、透明状態と鏡面状態との中途の状態を、印加電圧の大きさに従って維持する性質も有する。従って、例えば、携帯端末機等の特定の操作ボタンを操作した際に、あるいは、光センサにより受光した外部光の強さが所定の範囲の場合に、かかる中途状態を維持可能な電圧が供給されるように制御される回路構成とすれば、バックライトの透過効率を制御でき、明るさを調整することもできる。
【0018】
【発明の効果】
本発明の液晶表示装置によれば、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜などの希土類金属の水素化物を含む調光ミラー層を、液晶パネル部の後側に備えている。従って、印加する電圧を制御するのみで、透明状態とすることにより、バックライトを利用した透過型として使用できると共に、該調光ミラー層を鏡面状態とすることにより、外部光を反射させて情報を表示させる反射型として使用することができる。従って、従来の透過型と反射型の有する双方の欠点を解消できると共に、光源の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、同上の実施形態に係る液晶表示装置を携帯電話に適用した例を示す図である。
【符号の説明】
1 表示装置
11 液晶パネル部
15 バックライト
20 調光ミラー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電圧を制御することにより鏡面状態と透明状態とに物性変換する希土類金属の水素化物を含む調光ミラー層を、液晶パネル部の裏側に配置したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記調光ミラー層の裏側に配設されるバックライトを備え、印加電圧を制御することにより、該調光ミラー層が透明状態の場合には、前記バックライトからの光を透過させ、該バックライトを光源として情報を表示し、鏡面状態の場合には、該調光ミラー層で外部光を反射させ、該外部光を光源として情報を表示する構成であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
携帯端末機の表示装置として用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2004−258399(P2004−258399A)
【公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−49815(P2003−49815)
【出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【出願人】(503077361)株式会社ティーエヌケーインキュベーション (3)
【Fターム(参考)】