説明

液晶表示装置

【課題】 振動が多い使用環境下でも信頼性の高いグランド接続を実現する技術を提供すること。
【解決手段】 液晶モジュール100の内側周縁部に光源160を配する液晶表示装置であって、液晶モジュール100の筐体を構成する金属製前面枠110および金属製背面カバー120と、液晶パネル130と光源160との間に介在させ、前面枠と略同形の枠形状を有する導電性の上ケース140と、を有し、前面枠外側端部、上ケース140外側端部、および、背面カバー120の外側端部に、それぞれ、垂直に折れ曲がり一体的に形成された有孔の接合部(接合部112,および接合部143、および、接合部123)を、液晶モジュール100を組み立てた際に重なり合う位置に設け、前面枠の枠幅未満の足の長さのビス190により、前面枠の接合部112と背面カバー120の接合部123の間に上ケース140の接合部143を挟んで、相互に合着可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、振動が多い使用環境下でも確実なグランド接続を実現できる表示品位の高い液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶パネルの背面側に配置されているバックライトの冷陰極管から発生するノイズが液晶パネルに悪影響を与え表示品質を低下させることが知られている。この対策として、例えば、特開2001−75485号公報「平面表示装置」に開示される技術が挙げられる。この公報には、冷陰極管の周辺に導電性の部材(シールド部材)を配置し、この導電性部材を前面枠(ベゼルカバー)に接続してノイズを低減する発明が開示されている。
【0003】
この他、同様な技術として、特開平11−183926号公報「液晶表示装置における箔状アース線の取付構造」、特開2001−305971号公報「表示装置」、または、特開2003−15150号公報「液晶パネル導電接続構造」などが知られている。
【特許文献1】特開2001−75485号公報
【特許文献2】特開平11−183926号公報
【特許文献3】特開2001−305971号公報
【特許文献4】特開2003−15150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
【0005】
すなわち、シールド部材と前面枠等との接続は、単に接している程度であると、衝撃や振動により、その接続が不安定となり、表示に影響を与えてしまうという問題点があった。特に、振動や衝撃が加わりやすい使用環境下では、接続素材または接続態様によっては、長期間の使用により接合部分のへたりが生じ、接地圧力が変化したり、接触不良が生じたりする場合があるという問題点があった。
【0006】
また、液晶表示装置はCRT表示装置と比較して筐体が小さいという利点を有するが、各種製品に搭載する場合には、表示面積は一定のまま容量を可能な限り小さく、かつ、その製品の設計自由度を高めるため、筐体には可能な限り凸部を設けないように、という強い要請もある。
【0007】
ところが、文献2および3に開示される技術では、筐体周縁部に凸部を設け、ここにグランドをとるようにしている。また、文献4に開示される技術では、凸部は設けないが、特殊な挟着構造を有するため、筐体の厚みが大きくなってしまう。また、文献1および文献4に開示される技術では、特殊なグランド用部材を用いるので、コストの増加、組立て作業性の悪化を招来してしまう。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、振動が多い使用環境下でも信頼性の高いグランド接続を実現する技術を提供することを目的とする。また、表示面に対し筐体容量が小さく、実質的に周囲に凸部のない液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の液晶表示装置は、液晶モジュールの内側周縁部に光源を配する液晶表示装置であって、液晶モジュールの筐体を構成する金属製前面ベゼルおよび金属製背面カバーと、液晶パネルと光源との間に介在させ、前面ベゼルと略同形の枠形状を有する導電性のシールド部材と、を有し、前記前面ベゼル外側端部、前記シールド部材外側端部、および、前記背面カバーの外側端部に、それぞれ、垂直に折れ曲がり一体的に形成された有孔接合片を、液晶モジュールを組み立てた際に重なり合う位置に設け、前面ベゼルの有孔接合片と背面カバーの有孔接合片の間にシールド部材の有孔接合片を挟んで、ビスにより相互に合着可能としたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項1にかかる発明は、ビスが直接シールド部材を締め付けず、へたりが生じない金属片(板金)間にシールド部材を合着する。また、ビスを側面方向から(横から)取り付けるので、幅増を招来せず、筐体側面にも凸部が形成されない。なお、言うまでもないが筐体は別途グランドされているものとする。
【0011】
また、請求項2に記載の液晶表示装置は、請求項1に記載の液晶表示装置において、さらに、液晶制御回路基板の台座を光源と背面カバーとの間に介在させ、当該台座の外側端部に、液晶制御回路基板面に対して垂直に折れ曲がり一体的に形成された有孔接合片を設け、前記ビスにより、当該有孔接合片も併せて合着可能としたことを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項2にかかる発明は、回路基板の台座も筐体に側面方向から固定可能となる。従って、液晶面に対して垂直方向の固定に加えて水平方向からも台座、ひいては、回路基板が固定されることとなり、ずれやがたつきなど振動の影響をより受けにくくなる。
【0013】
また、請求項3に記載の液晶表示装置は、請求項1または2に記載の液晶表示装置において、前記前面ベゼルと前記背面カバーの端部を折り曲げて筐体の側面を構成する側面部を設け、当該側面部の一片を前記有孔接合片としたことを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項3に記載の液晶表示装置は、側面部にそのまま孔を開けるだけで有孔接合片が形成される。また、液晶面を除き周囲が金属筐体となるので、他の電磁波の影響を受けにくく品質の高い液晶表示装置を提供可能ともなる。なお、側面部は外箱と中箱の関係のように重なり合う部分があってよいものとする。また、外箱と中箱のようにそれぞれが4つの側面を持っている必要性は必ずしもないものとし、例えば、背面カバーの一辺には上部側面を形成する折り曲げ片がないような構成であって良いものとする。
【0015】
また、請求項4に記載の液晶表示装置は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の液晶表示装置において、筐体が実質的に凸部のない直方体であり、車載用、船舶用、または、航空機用の液晶表示装置であることを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項4にかかる発明は、装着製品の設計自由度を高めることができる。なお、実質的に直方体とは、ビス用の窪みなどがあってもよいことを意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ビスが直接シールド部材を締め付けず、へたりが生じない金属片(板金)間にシールド部材が合着されるので、振動が多い使用環境下でも信頼性の高いグランド接続が実現でき、また、ビスが側面方向から取り付けられるので、幅増を招来せず、筐体側面にも凸部が形成されなくなるため、表示面に対し筐体容量が小さく実質的に周囲に凸部のない液晶表示装置を提供可能となる。
【0018】
また、本発明によれば、液晶面に対して垂直方向の固定に加えて水平方向からも台座、ひいては、回路基板が固定され、ずれやがたつきなど振動の影響をより受けにくくなり、品質の高い液晶表示装置を提供可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、側面部にそのまま孔を開けるだけで有孔接合片が形成され、簡便に液晶表示装置を製造可能となり、また、液晶面を除き周囲が金属筐体となるので、他の電磁波の影響を受けにくく品質の高い液晶表示装置を提供可能ともなる。
【0020】
また、本発明によれば、装着製品の設計自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、使用環境下で常に振動が加わる車載用の液晶モジュールの構造について説明する。図1は、液晶モジュールが組上がった外観構成を背面から示した斜視図である。図2は、積層された液晶モジュールの構成要素の展開図である。
【0022】
液晶モジュール100は、前面枠110と背面カバー120により筐体を形成し、この中に、液晶パネル130,上ケース140、光学系(プリズムシート151、拡散シート152、導光板153、光源160,および、反射板154)、下ケース170、制御回路基板180が積層して構成される。
【0023】
前面枠110と背面カバー120は、ともに金属製であり、一枚板を打ち抜き折り曲げられて各種孔や凹凸および側面が形成されている。具体的には、前面枠110には、液晶パネル130用の表示窓111が切り取られ、前面から見るとベゼルを形成するように構成されている。また、背面カバー120には、制御回路基板180上の電気コネクタ181に差し込むフレキシブル配線板(図示せず)を導入する切欠窓121が設けられている。
【0024】
液晶パネル130は、2枚の透明ガラス基板間に液晶が封入された液晶基板131と、液晶基板131に制御信号を送るフレキシブル配線板132からなり、制御回路基板180からの制御信号により、各種情報を表示する。なお、フレキシブル配線板132は、上ケース140と光学系150と下ケース170を外側から包む形で制御回路基板180上の電気コネクタ(図示せず)に接続される。
【0025】
上ケース140は、前面枠110と同程度もしくはそれ以下の巾の枠部141に、下ケース170とかみ合う複数のツメ足142が一体的に延設されている。
このような上ケース140はその形状が複雑であるため、金型による樹脂成形で製造している。更にこの樹脂製の上ケース140には導電フィラが混入されており、グランドをとることにより、光源160のノイズの影響が液晶パネル130に及ばない構成としている。従って、上ケースはノイズを遮蔽するのでいわばノイズ遮蔽部材(シールド部材)ということができる。グランドのとり方については後述する。
【0026】
プリズムシート151、拡散シート152、導光板153、および反射板154は、光源160の光を効率的、かつ、均一に液晶パネル130側へ導く様構成されている。
【0027】
光源160は、冷陰極管161と光源リード線162からなる。冷陰極管161は、液晶モジュール100の内側周縁部に配されており、上ケース140の枠部141は、この冷陰極管161に沿うように形成されている。枠部141の巾は、上ケース140のグランドが十全にとれている場合に液晶の表示品質に影響を及ぼさない程度で可能な限り巾を狭くすることが好ましい。これにより、筐体に対する液晶の面積を広くすることができ、換言すれば、コンパクトかつ広面積の液晶表示装置を提供可能となる。
【0028】
下ケース170は、制御回路基板180の台座となるとともに、上ケース140のツメ足142にはめるツメ171を対応する位置にそれぞれ設けてある。下ケース170も上ケース140と同様に樹脂製であり、上ケース140と共にツメ171を介して光学系150を密に一体的に収納する。また、下ケース170には、二カ所、制御回路基板180を固定する係止爪172が設けてある(一方は図示されず)。さらに、下ケース170には、背面カバー120をビス留めするビス孔173が複数設けてあり、背面カバー120を堅強に下ケース170に固定する。これにより、液晶モジュール100は縦方向(液晶面に垂直な方向)に固定されることとなる。
【0029】
制御回路基板180は、外部からの信号を電気コネクタ181により入力し、基板上に設けた各種の回路等によりその入力信号を処理し液晶パネル130へ出力する。なお、電気回路上、特に電気コネクタ181付近はノイズが発生しやすいので液晶表示品質を維持するために、電気コネクタ181近傍に接地用の基板回路露出部182を設け、背面カバー120の板バネ122にて接地する構成としている。
【0030】
次に、上ケース140(シールド部材)のグランドのとり方について説明する。一般的な液晶モジュールでは、シールド部材は樹脂製であり、金属製の筐体にビス留めしてグランドをとっている。そして本実施の形態の液晶モジュール100は、車載用の液晶表示装置に適用されるものであり、環境によっては高温や低温の下で使用され、更には常時振動が加わり時には大きな振動が加わる等、非常に厳しい条件での使用が想定されている。従って、単に金属と樹脂とをビス留めすると、長期間の使用によって緩みやへたりが生じかねない。従って、本実施の形態では、金属製の前面枠110と金属製の背面カバー120とによりシールド部材である樹脂製の上ケース140の端部を挟んでビス留めする構成としている。
【0031】
図3は、図1の符号Aで指し示した接合部分の拡大図である。接合部分は、外側から、前面枠110の接合部112と上ケース140の接合部143と背面カバー120の接合部123と下ケース170の接合部174とが、それぞれに開けられた穴を液晶モジュール100の表示面に対して水平な方向に一直線状に並べ、金属製のビス190で固定されるようになっている。
【0032】
ビス190の径は、二つの金属板(前面枠110の接合部112および上ケース140の接合部143)の孔に螺合する大きさである。これにより、しっかりとした金属同士が締め付け合い、かつ、両側から押さえられる形となるので、間の樹脂製の上ケース140にへたりや緩みが極めて生じにくくなる。従って、グランドが確実となり、液晶パネル130に対する冷陰極管161のノイズの影響を長期的に安定して遮蔽することが可能となる。
【0033】
なお、液晶モジュール100では、最も外側になる接合部112をビス190の頭分だけ窪ませ、前面枠110の側面(筐体側面)のツラが揃うように構成している。また、ビス190も横方向から進入、つまり液晶モジュール100の表示面に対して水平な方向から進入させるようにしている。これにより液晶モジュール100は、幅増を招来せず、筐体側面にも凸部が形成されない構造としている。特にビス190を縦方向から進入させる構成の場合、強固に固定するためにはある程度ビス190の長さが必要であり、縦方向、つまり液晶モジュール100の表示面に対して垂直な方向に液晶モジュール100が厚くなってしまう。しかビス190を横方向から進入させる構成であれば、ビス190を長くしたところで、ビス190の径程度の厚みがあればよい。
【0034】
また、制御回路基板180は、電気コネクタやICチップが登載され、基板自体の厚みとあわせて、必然的にある程度の高さを有する。上述の接合部(接合部112,接合部143、接合部123,接合部174)は、この高さ程度に収められるので、液晶モジュール100の厚み増を招来しない。これは特に実施例のような限られたスペースに取り付けられる車載用のモジュールにおいては、設計する上で重要である。
【0035】
以上、液晶モジュール100は、幅と厚みを有効利用し、表示面に対し筐体容量を小さく、実質的に直方体形状とすることが可能となる。特に、車の運転席周りは、他の計器など、限られた空間の中に多数の部品を集中的に搭載する必要があるので、相対的に広い画面を提供しつつ、他の機器の筐体形状に影響を与えない液晶モジュール100は好適である。
【0036】
なお、液晶面に平行な方向にビス留めして前面枠110と、背面カバー120と、上ケース140と下ケース170を固定するので、垂直方向のビス留めと併せて、液晶モジュール100は耐震性能が向上しているといえる。
【0037】
本発明は、車載用の他、振動の多い使用環境下となる船舶、航空機などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】液晶モジュールが組上がった外観構成を背面から示した斜視図である。
【図2】積層された液晶モジュールの構成要素の展開図である。
【図3】図1の符号Aで指し示した接合部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0039】
100 液晶モジュール
110 前面枠
112 接合部
120 背面カバー
123 接合部
140 上ケース
141 枠部
142 ツメ足
143 接合部
170 下ケース
171 ツメ
172 係止爪
174 接合部
190 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶モジュールの内側周縁部に光源を配する液晶表示装置であって、
液晶モジュールの筐体を構成する金属製前面ベゼルおよび金属製背面カバーと、
液晶パネルと光源との間に介在させた導電性のシールド部材と、
を有し、
前記前面ベゼル外側端部、前記シールド部材外側端部、および、前記背面カバーの外側端部に、それぞれ、垂直に折れ曲がり一体的に形成された有孔接合片を、液晶モジュールを組み立てた際に重なり合う位置に設け、
前面ベゼルの有孔接合片と背面カバーの有孔接合片の間にシールド部材の有孔接合片を挟んで、ビスにより相互に合着可能としたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
さらに、液晶制御回路基板の台座を光源と背面カバーとの間に介在させ、
当該台座の外側端部に、液晶制御回路基板面に対して垂直に折れ曲がり一体的に形成された有孔接合片を設け、
前記ビスにより、当該有孔接合片も併せて合着可能としたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記前面ベゼルと前記背面カバーの端部を折り曲げて筐体の側面を構成する側面部を設け、
当該側面部の一片を前記有孔接合片としたことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
筐体が実質的に凸部のない直方体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の車載用、船舶用、または、航空機用の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−10967(P2006−10967A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186741(P2004−186741)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】