説明

液晶表示装置

【課題】白表示において、広角から観察した際の色相変化を抑制することが可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る液晶表示装置は、垂直配向液晶モードを採用した液晶パネル300と、液晶パネル300の背面に配置され、液晶パネル300に白色光を照射するバックライト光源100と、液晶パネル300とバックライト光源100との間に配置され、略鉛直方向に配向した二色性色素を含む光学フィルム200と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力であり、薄膜化や小型化や大画面化が可能である等の様々な利点から、パーソナルコンピュータや携帯機器のモニタや、テレビ用途に広く用いられている。このような液晶表示装置は、液晶物質層の液晶の配列状態により、様々なモードが提案されており、その一例として、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モード等がある。このような各モードのうち特にVAモードの液晶は、コントラストが高く、近年、注目されている。
【0003】
しかしながら、かかるVAモードの液晶は、黒表示をしている際に、法線方向から液晶を観察した場合の色相と広角方向から液晶を観察した場合の色相とが異なるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、液晶パネルに用いられる偏光板のレターデーション値を制御することにより、黒表示における広角から観察した際の色相変化の補償を行っている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−266800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の液晶表示装置では、白表示において、広角から観察した際の色相変化を補償することが困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、白表示において、広角から観察した際の色相変化を抑制することが可能な、新規かつ改良された液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、垂直配向液晶モードを採用した液晶パネルと、前記液晶パネルの背面に配置され、前記液晶パネルに白色光を照射するバックライト光源と、前記液晶パネルと前記バックライト光源との間に配置され、略鉛直方向に配向した二色性色素を含む光学フィルムと、を備える液晶表示装置が提供される。
【0009】
前記光学フィルムは、略鉛直方向に配向した高分子液晶を含み、前記二色性色素は、前記略鉛直方向に配向した高分子液晶中に添加されていてもよい。
【0010】
前記二色性色素の最大吸収波長は、550nm超過780nm未満であってもよい。
【0011】
前記二色性色素の分子長軸方向の吸収係数は、前記二色性色素の分子短軸方向の吸収係数より大きくてもよい。
【0012】
前記液晶パネルと前記光学フィルムとの間には、前記光学フィルムを透過した光を散乱させる散乱手段が存在しないことが好ましい。
【0013】
前記光学フィルムが吸収する前記白色光の強度は、前記光学フィルムに含有される前記二色性色素の含有量、または、前記光学フィルムの光路長の少なくともいずれか一方に基づいて決定されてもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、垂直配向液晶モードを採用した液晶パネルと、前記液晶パネルの背面に配置され、前記液晶パネルに白色光を照射するバックライト光源と、前記液晶パネルと前記バックライト光源との間に配置され、略鉛直方向に配向した二色性色素を含む光学フィルムと、を備える液晶表示装置における色相変化抑制方法であって、前記バックライト光源から射出され、略鉛直方向とは異なる方向に進行する前記白色光における所定帯域の光を、前記二色性色素により吸収し、前記所定帯域の光が吸収された前記白色光を前記液晶パネルに入射させることを特徴とする、色相変化抑制方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、白表示において、広角から観察した際の色相変化を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の説明に先立ち、従来の液晶表示装置の問題点について、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、従来の液晶表示装置における色相の極角依存性について説明するためのグラフ図である。
【0018】
なお、本明細書においては、図2に示したような座標系を採用し、ある基板12の平面をxy平面とし、基板12の鉛直方向をz軸方向とする。また、あるベクトル14が定義される場合に、ベクトル14とz軸とのなす角θを極角と定義し、ベクトル14のxy平面への射影とy軸とのなす角φを方位角と定義する。ここで、図2におけるベクトル14の向きは、便宜的なものであり、z軸正方向側から負方向側に向かうベクトルであってもよく、z軸負方向側から正方向側に向かうベクトルであってもよい。ここで、ベクトル14は、液晶物質や二色性色素の分子長軸方向であってもよく、基板12を液晶表示装置の表示面とし、液晶表示装置を斜視する場合の視線の向きであってもよい。
【0019】
図1は、画素が4つのドメインに分割された垂直配向液晶モード(VAモード)を採用した液晶表示装置の表示面を図2における基板12とし、視線の向きを図2におけるベクトル14とした場合に、液晶表示装置を方位角φ=45度から斜視した際の白表示の分光スペクトルである。図1の横軸は波長を表しており、図1の縦軸は透過率を表している。また、図1に示したスペクトルでは、視線と液晶表示装置の法線方向とのなす角(すなわち、極角θ)を0度から60度まで10度ごとに変化させて測定している。なお、θが0度の場合のスペクトルと、θが10度の場合のスペクトルは、スペクトルに大きな変化は見られず、ほぼ重なっている。
【0020】
図1を参照すると、極角θが大きくなるにつれて青色の波長帯域の透過率が低下しており、黄色の色づきが大きくなっていることがわかる。また、極角θが50度のスペクトルでは、この傾向が顕著であることがわかる。この結果は、垂直配向液晶モードの液晶表示装置を広角側から観察すると、白表示をしている場合であっても、観測者には黄色を帯びた画像として認識されてしまうこと、すなわち、液晶表示装置を広角から観察した際に色相変化が生じてしまうことを示唆している。
【0021】
そこで、本願発明者は、かかる問題を解決するために鋭意研究を行い、白表示において、広角から観察した際の色相変化を抑制することが可能な液晶表示装置に想到した。
【0022】
<本実施形態に係る液晶表示装置の構成について>
続いて、図3〜図5を参照しながら、本実施形態に係る液晶表示装置10の構成について、詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る液晶表示装置10の構成について説明するための説明図であり、図4は、本実施形態に係る二色性色素の軸方向について説明するための説明図であり、図5は、本実施形態に係る二色性色素の吸収特性の一例を示す分光スペクトルである。
【0023】
図3に示したように、本実施形態に係る液晶表示装置10は、バックライト光源100と、光学フィルム200と、液晶パネル300とを主に備える。
【0024】
バックライト光源100は、後述する光学フィルム200および液晶パネル300に対して、例えば白色光を照射する照射部である。本実施形態に係るバックライト光源100は、例えば、冷陰極管(Cold−Cathode Fluorescent Lamp:CCFL)や、フラット蛍光ランプ(Flat Fluorescent Lamp:FFL)や、電界発光(ElectroLuminescence:EL)素子や発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等を使用することが可能である。また、本実施形態に係るバックライト光源100は、上述のものに限定されるわけではなく、白色光を照射可能な光源であれば、任意のものを使用することが可能である。
【0025】
光学フィルム200は、バックライト光源100と後述する液晶パネル300の間に配設される部材である。光学フィルム200は、バックライト光源100から射出された白色光の一部を吸収するとともに、光学フィルム200の上面に配置されている液晶パネル300に、一部が吸収された白色光を透過させる。かかる光学フィルム200については、以下で詳細に説明する。
【0026】
液晶パネル300は、当該液晶パネル300に設けられた電極(図示せず。)に印加される電圧のオン・オフに応じて、バックライト光源100および光学フィルム200を透過した光の透過・遮断を制御する。かかる液晶パネル300は、図3に示したように、例えば、偏光フィルム301,311と、ガラス基板303,309と、液晶物質層305と、光学フィルタ307と、を主に備える。液晶パネル300には、画素が平面的に並んで構成されており、液晶パネル300は、各画素に所定の電圧を印加するための電極(図示せず。)も備える。
【0027】
偏光フィルム301は、光学フィルム200を透過した光の偏光を制御するフィルムであり、偏光フィルム311は、液晶パネル300から射出する光の偏光を制御するフィルムである。これらの偏光フィルム301,311は、後述する液晶物質層305に用いられている液晶物質の配向の仕方に応じて、それぞれの偏光フィルムにおける偏光軸の向きが決定される。
【0028】
また、偏光フィルム301,311と、後述するガラス基板303,309との間には、後述する液晶物質層305の電圧印加状態での着色を補償するための位相差フィルムが、1または2以上設けられていてもよい。かかる位相差フィルムとして、例えば光学1軸性フィルムを使用することが可能である。各光学1軸性フィルムの偏光軸と、図3に示したx軸とのなす角は、所定の角度とすることが可能である。
【0029】
ガラス基板303,309は、後述する液晶物質層305の上下に設けられ、液晶物質層305を形成する液晶物質を担持する基板である。かかるガラス基板303,309は、所定の成分を含有するガラスを用いて形成される。また、かかるガラス基板303,309と、液晶物質層305との間には、所定の金属や、インジウム−スズ酸化物(Indium−Tin Oxide:ITO)等を用いて、パターニングされた電極(図示せず。)が形成される。
【0030】
なお、後述する液晶物質層305を構成する液晶物質の配向を制御するために、ガラス基板303,309の表面に、いわゆる配向処理が施されていてもよい。配向処理の一例としては、例えば、ガラス基板303,309の表面にポリイミド等を用いて配向膜を形成した後に、形成した薄膜を所定の方向にこする処理(いわゆる、ラビング処理)や、ガラス基板303,309の表面に光配向膜を形成した後に、所定波長の光を照射する処理等を挙げることができる。また、かかる配向処理は、ガラス基板303,309の表面に形成された電極(図示せず。)に対して実施してもよい。
【0031】
液晶物質層305は、所定の液晶物質を用いて形成される膜である。かかる液晶物質層305を形成する液晶物質は、所定の方向に配向している。ここで、液晶物質は、全てが完全に同一の方向に配向しているわけではなく、それぞれの液晶物質が平均的に所定の方向に配列している。以降、かかる平均の配向方向(より詳細には、平均の配向方向を表す単位ベクトル)を、ダイレクターと称する。
【0032】
本実施形態に係る液晶表示装置10は、液晶物質層305の液晶物質のダイレクターが垂直方向(図3におけるz軸方向)と略平行であるVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。また、本実施形態に係る液晶物質層305を形成する液晶物質は、液晶物質の分子長軸方向の誘電率が分子短軸方向の誘電率よりも小さい液晶物質(いわゆる、負の誘電異方性を有する液晶物質)であることが好ましい。
【0033】
また、視野角特性を改善して斜めから見ても表示品位の低下が生じないように、液晶物質層305を構成する各画素は、2つまたは4つの領域(ドメイン)に配向分割されていてもよい。液晶物質層305の配向分割は、ガラス基板303,309に設けられている電極に、所定のスリットを形成したり、所定形状のリブを形成したりすることで実現可能である。
【0034】
光学フィルタ307は、液晶物質層305の上方(図3におけるz軸正方向側)に設けられ、可視光帯域におけるバンドパスフィルタの役割を果たす。かかる光学フィルタ307は、図3に示したように、それぞれ赤色光だけ、緑色光だけ、青色光だけを透過する三種類の微小カラーフィルタが、所定の平面配列構造となるように設けられる。かかる光学フィルタ307は、それぞれ所定波長の光を吸収する色素、顔料、染料等を用いて形成される。
【0035】
(光学フィルム200の構成について)
次に、光学フィルム200について、詳細に説明する。光学フィルム200は、図3に示したように、例えば、ベースフィルム201と、当該ベースフィルム201上に形成された高分子液晶層203と、を備える。
【0036】
ベースフィルム201は、光学フィルム200の基板であり、例えば、透明性が高く、丈夫であり、複屈折性のない物質からなるフィルムを使用することが可能である。このような物質の例として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムやノルボルネン系の化合物を用いたフィルム等を挙げることができる。かかるベースフィルム201上に、高分子液晶層203が形成される。
【0037】
なお、後述する高分子液晶層203を構成する高分子液晶の配向を制御するために、ベースフィルム201の表面に、いわゆる配向処理が施されることが好ましい。配向処理の一例としては、例えば、ベースフィルム201の表面にポリイミド等を用いて配向膜を形成した後に、形成した薄膜を所定の方向にこする処理(いわゆる、ラビング処理)や、ベースフィルム201の表面に光配向膜を形成した後に、所定波長の光を照射する処理等を挙げることができる。本実施形態に係るベースフィルム201には、後述する高分子液晶層203に含まれる高分子液晶205および二色性色素207が略垂直に配向するように、上述のような配向処理が施される。
【0038】
ベースフィルム201上に形成される高分子液晶層203は、図3に示したように、主に高分子液晶205と二色性色素207とを含む。なお、図3においては、高分子液晶205および二色性色素207を、模式的に略楕円形を用いて図示している。
【0039】
高分子液晶205は、本実施形態に係る光学フィルム200を構成するマトリックスとして機能する。本実施形態に係る高分子液晶層203では、高分子液晶205を構成するメソゲン基の分子長軸方向は、ベースフィルム201に対して略垂直方向に配向している。すなわち、図3における高分子液晶205を表す略楕円形の長軸は、メソゲン基の分子長軸方法となる。本実施形態に係る光学フィルム200では、略鉛直方向(図3におけるz軸方向)に透過する光は高分子液晶205により吸収されずに透過することが好ましいため、メソゲン基の分子長軸方向の吸収係数は、メソゲン基の分子短軸方向の吸収係数よりも大きいことが好ましい。
【0040】
なお、本実施形態に係る高分子液晶205として、メソゲン基の分子長軸方向が略鉛直方向に配向可能な化合物であれば、任意の物質を使用可能である。かかる高分子液晶205は、メソゲン基が高分子の主鎖に含まれる主鎖型高分子液晶であってもよく、メソゲン基が高分子の側鎖に含まれる側鎖型高分子液晶であってもよい。かかる高分子液晶205の例として、例えば、特許第3248037号公報に記載されているような、液晶性ポリエステルがある。
【0041】
二色性色素207は、光二色性を示す色素である。本実施形態に係る光学フィルム200に用いられる二色性色素207は、図4に示したように色素分子を略楕円形で表した際に、可視光帯域における分子直軸方向209の吸収係数α//が、分子短軸方向211の吸収係数αよりも大きい。
【0042】
また、本実施形態に係る光学フィルム200に用いられる二色性色素207は、例えば、550nm超過780nm未満の帯域に最大吸収波長が存在し、可視光帯域における長波長側の光を強く吸収する、青系の二色性色素であることが好ましい。550nmという波長は最大比視感度近傍の波長であり、かかる波長の光を多く吸収する二色性色素を用いると、光の吸収に伴い液晶表示装置の明るさを犠牲にすることとなるため、好ましくない。他方、最大吸収波長が780nm超過である場合には、可視光帯域の光を効果的に吸収することが困難となるため、好ましくない。また、二色性色素207の最大吸収波長は、黄色やオレンジ色の光を効率よく吸収するように、例えば、580nm以上とすることが更に好ましい。
【0043】
また、このような二色性色素207において、例えば、図5に示したように、二色性色素の分子直軸方向209の透過率の波長依存性と、分子短軸方向211の透過率の波長依存性に、違いがあることが好ましい。図5において、波長依存性が小さく可視光帯域の光を高い割合で透過させている方向が分子短軸方向211であり、波長依存性が大きい方向が分子長軸方向209である。
【0044】
上述のような青系の二色性色素として、例えば、アゾ系の色素や、アントラキノン系の色素等を挙げることができる。アゾ系の色素の一例として、例えば、特許第3086718号公報に記載の青系の二色性色素や、以下に示した化学式1や化学式2のような色素を使用することが可能である。
【0045】
【化1】

【0046】
本実施形態に係る光学フィルム200では、上述のような二色性色素を少なくとも1種類含有し、2種類以上の二色性色素が含有されていてもよい。光学フィルム200に添加する二色性色素は、透過させたい光の波長および光量に基づいて、二色性色素の吸収特性等を参照しながら、適宜組み合わせて選択することが可能である。
【0047】
本実施形態に係る光学フィルム200では、上述のような二色性色素207が、高分子液晶205とともにベースフィルム201に対して垂直に配向(すなわち、ホメオトロピック配向)している。二色性色素207がホメオトロピック配向することで、波長依存性の大きな分子長軸方向209はベースフィルム201に対して垂直となり、波長依存性の小さな分子短軸方向211はベースフィルム201に対して平行となる。
【0048】
図3におけるz軸方向に対して平行に進行する白色光が、上述のように配向している二色性色素207に入射すると、分子短軸方向211の吸収係数αが作用し、入射した白色光は、白色光のまま、図3におけるz軸方向に進行する。z軸方向に対して平行に進行する白色光が、液晶パネル300に入射すると、この白色光は、白色光のまま液晶パネル300を透過することとなる。したがって、観測者が液晶表示装置10を正面から見ると、観測者は白色光を観測することとなる。
【0049】
他方、観測者が液晶表示装置10を広角方向から観測する場合には、観測者は、光学フィルム200および液晶パネル300を斜めに進行してきた光を観測することとなる。光学フィルム200に斜めに白色光が入射すると、この白色光は、広角方向に進行する光であるほど(すなわち、極角θが大きい方向に進む光であるほど)、分子短軸方向211の吸収係数αの影響は小さくなり、二色性色素207の分子直軸方向209の吸収係数α//の影響が大きくなる。その結果、光学フィルム200を透過した光は、二色性色素207の吸収特性に応じて二色性色素207に吸収され、広角方向に進行する光であるほど青色光となる。VAモードの液晶パネル300では、広角方向に進行する光ほど黄色味を帯びて見えるため、広角方向に進行する青色光が液晶パネル300に入射すると、結果として白色光が液晶パネル300から射出されることとなる。そのため、観測者が液晶表示装置10を広角方向から見た場合であっても、観測者は白色光を観測することとなる。
【0050】
本実施形態に係る光学フィルム200では、当該光学フィルム200が実装される液晶表示装置10の明るさを犠牲にしないように、光学フィルム200が吸収する白色光の光量を決定する。この際、光学フィルム200の膜厚を一定に保ったうえで高分子液晶205中に添加される二色性色素207の濃度を調整して、二色性色素207が吸収する白色光の光量を決定してもよく、高分子液晶205中に添加される二色性色素207の濃度を一定に保ったうえで光学フィルム200の膜厚を調整し、光学フィルム200を透過する白色光の光路長を変化させることで二色性色素207が吸収する白色光の光量を決定してもよい。また、二色性色素207の添加量と光学フィルム200の膜厚の双方を調整し、二色性色素207が吸収する白色光の光量を決定してもよい。
【0051】
なお、光学フィルム200と液晶パネル300との間には、光学フィルム200を透過した光を散乱させる散乱フィルタ等の散乱手段を設けないことが好ましい。かかる散乱手段を設けると、光学フィルム200を透過した広角方向に進む青色光が散乱手段によって散乱されてしまい、広角方向へと進行しなくなってしまうからである。
【0052】
<本実施形態に係る光学フィルム200の製造方法>
続いて、本実施形態に係る光学フィルム200の製造方法の一例について、以下で詳細に説明する。
【0053】
まず、所定の高分子液晶と所定の二色性色素とを所定の溶剤に溶解し、高分子液晶層203を形成するための溶液を調整する。次に、TACやノルボルネン系フィルム等の等方的で位相差のないフィルムに対して、フィルムの表面を疎水性にしたうえで垂直配向性ポリイミド等の配向膜を成膜して、配向処理を行う。かかる処理を行うことで、光学フィルム200のベースフィルムを得ることができる。
【0054】
続いて、配向処理の終了したベースフィルムに対して、調整した溶液をコーティングして、高分子液晶および二色性色素を含む膜を形成する。その後、高分子液晶および二色性色素を含む膜に対して、所定波長の紫外光を照射して、膜を硬化させる。かかる処理を行うことで、高分子液晶は、ベースフィルムに対して垂直に配向し、高分子液晶が垂直配向するのに伴い、二色性色素もベースフィルムに対して垂直に配向することとなる。
【0055】
なお、上述の製造方法は、本実施形態に係る光学フィルム200の製造方法の一例であって、高分子液晶および二色性色素をベースフィルムに対して垂直に配向させることが可能な方法であれば、上述の方法以外の製造方法を用いることも可能である。
【0056】
<本実施形態に係る液晶表示装置10の色相変化>
次に、本実施形態に係る光学フィルム200を備えた液晶表示装置10を作製し、実際の色相変化を測定した。
【0057】
まず、特許第3248037号公報に記載の液晶性ポリエステルに対し、化学式1および化学式2の二色性色素をそれぞれ5%ずつ添加し、TACフィルム上に高分子液晶層を形成した。かかる光学フィルムをVAモードの液晶パネルのリア側に配置し、液晶パネルを斜め60度(極角)方向から観察した際の白表示の色相変化を測定した。なお、光学フィルムに用いられた二色性色素の最大吸収波長は、約620nmであった。
【0058】
その結果、本実施形態に係る液晶表示装置10における色相変化Δxyは、0.010であったのに対し、本実施形態に係る光学フィルムを設けなかった液晶表示装置では、色相変化Δxyは0.043であった。
【0059】
この結果より、本実施形態に係る光学フィルムを設けることで、斜め60度(極角)方向から観察した際の白表示の色相変化を、従来の1/4以下にすることができたことがわかる。
【0060】
また、上述の光学フィルムと液晶パネルのリア側偏光フィルムとの間に、ヘイズ90%の拡散フィルムを配置し、同様にして色相変化を測定した。その結果、得られた色相変化Δxyは、0.039であった。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、上述した実施形態においては、光学フィルム200が高分子液晶をマトリックスとして形成される場合について説明したが、光学フィルム200に用いられる液晶は、ホメオトロピック配向が可能な液晶であれば、低分子液晶であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来の液晶表示装置における色相の極角依存性について説明するためのグラフ図である。
【図2】座標系の定義について説明するための説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置を説明するための説明図である。
【図4】同実施形態に係る二色性色素の軸方向について説明するための説明図である。
【図5】同実施形態に係る二色性色素の吸収特性の一例を示す分光スペクトルである。
【符号の説明】
【0064】
10 液晶表示装置
100 バックライト光源
200 光学フィルム
201 ベースフィルム
203 高分子液晶層
205 高分子液晶
207 二色性色素
209 分子長軸方向
211 分子短軸方向
300 液晶パネル
301,311 偏光フィルム
303,309 ガラス基板
305 液晶物質層
307 光学フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直配向液晶モードを採用した液晶パネルと、
前記液晶パネルの背面に配置され、前記液晶パネルに白色光を照射するバックライト光源と、
前記液晶パネルと前記バックライト光源との間に配置され、略鉛直方向に配向した二色性色素を含む光学フィルムと、
を備えることを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項2】
前記光学フィルムは、略鉛直方向に配向した高分子液晶を含み、
前記二色性色素は、前記略鉛直方向に配向した高分子液晶中に添加される
ことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記二色性色素の最大吸収波長は、550nm超過780nm未満である
ことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記二色性色素の分子長軸方向の吸収係数は、前記二色性色素の分子短軸方向の吸収係数より大きい
ことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶パネルと前記光学フィルムとの間には、前記光学フィルムを透過した光を散乱させる散乱手段が存在しない
ことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記光学フィルムが吸収する前記白色光の強度は、
前記光学フィルムに含有される前記二色性色素の含有量、または、前記光学フィルムの光路長の少なくともいずれか一方に基づいて決定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−116015(P2009−116015A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288489(P2007−288489)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】