説明

液晶表示装置

【課題】 液晶表示装置の表示輝度を向上させる。
【解決手段】
液晶表示装置は、対向する一対の基板と、基板間に挟持された液晶層と、基板の対向面の各々に形成された電極パターンを備えた第1の表示領域を有する第1の液晶セルと、対向する一対の基板と、基板間挟持された液晶層と、基板の対向面の各々に形成された電極パターンを備え、第1の表示領域とは異なる第2の表示領域を有し、第1の液晶セルに比べ液晶の応答速度が速い第2の液晶セルと、第1の液晶セルと第2の液晶セルが重なりあった構造体の下方に配置されたマルチカラー表示可能なバックライトとを有し、少なくとも第1の液晶セル、第2の液晶セルのいずれか一方において、一対の基板に挟持され、他方の液晶セルの表示領域と重なる位置に、基板と同等の屈折率を持つ等方性液体層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用情報表示装置やカーオーディオの表示部等に用いられるセグメント表示またはセグメント表示+ドットマトリクス表示が可能な液晶表示装置において、表示部をカラー表示させるために、カラーフィルタやブラックマスクを用いる方法がある。
【0003】
一方、カラーフィルタを用いず、例えば赤緑青(RGB)発光可能なマルチカラー発光ダイオード(LED)光源などにより構成されたマルチカラーバックライトを液晶セルと同期動作させカラー表示を行ういわゆるフィールドシーケンシャル(FS)駆動によるカラー液晶表示装置がある。
【0004】
FS駆動による表示では、例えば、1つの画像を表示する1フレーム内にバックライトがRGBそれぞれに点灯する3つのサブフレームを要する。液晶表示装置に印加される駆動波形は例えば矩形波である。駆動周波数は1つのサブフレーム内で1周期以上になるように設定し、上記入力信号に対して液晶表示装置が明暗表示できるようにOn、Off時の振幅(駆動電圧)が調整される。
【0005】
一般的な液晶表示装置は、印加電圧の変化に対する液晶の応答がバックライトの応答に比べて遅い。ノーマリブラックの液晶表示装置を例に挙げると、駆動電圧をしきい値以上の電圧から0Vに変化させても、応答時間が遅いためすぐに透過率が下降しない。透過率が十分に下降しない状態においてサブフレーム内で指定された色のバックライトを点灯すると、遮光すべき光が漏れるため色純度が低下する恐れがある。そのため、液晶表示装置がある程度応答するまでバックライトを点灯させないブランク時間を必要とする。
【0006】
サブフレーム動作を人間の目に認識されない速度、例えば約16.7ms/フレーム、約5.57ms/サブフレーム、約3ms/ブランク時間で駆動させれば、人間の目から見てちらつきの無いカラー表示を実現可能である。
【0007】
液晶表示素子をスタティック駆動(TFTによるアクティブマトリックス駆動も含む)により動作させる場合、概ね1サブフレーム内において電気光学応答を完了させることは可能であるが、マルチプレックス駆動で動作させる場合、その応答特性は走査線本数、すなわちDuty比により大きく変化することが知られている。
【0008】
発明者の検討においては、スタティック駆動にて立ち上がりもしくは立下りで遅い方の応答速度が略2.5ms程度である液晶セルを1/4Duty、1/3Biasマルチプレックス駆動させた場合、最適な電圧を印加しても立ち上がりもしくは立下りで遅い方の応答速度が略5msになってしまう。さらに走査線本数を増加した(具体的には1/9Duty、1/4Bias超)駆動条件においては、各サブフレームにおいて前サブフレームの色が混ざって色純度が低下したり、液晶表示装置の表示輝度が低下したりといった現象が生じる懸念がある。
【0009】
発明者らは、特開2005−301026号公報にて、1/9Duty、1/4Bias超の駆動条件下で、特にセグメント表示もしくはセグメント表示+ドットマトリックス表示のFS駆動液晶表示装置において、スタティック駆動する高速応答の液晶セルと、マルチプレックス駆動する通常速度応答の液晶セルとを組み合わせて2層構造の液晶表示素子とし、それを同期駆動させて表示品位を向上させる発明を提案した。
【0010】
【特許文献1】特許3894323号公報
【特許文献2】特開2005−301026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
セグメント表示またはセグメント表示+ドットマトリクス表示部を有する液晶表示装置において、さらなる表示品位の向上が求められている。
【0012】
本発明の目的は、セグメント表示またはセグメント表示+ドットマトリクス表示部を有する液晶表示装置であって、マルチカラー表示を行いつつ表示輝度、色純度を向上させたFS駆動の液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によれば、対向する一対の基板と、該基板間に挟持された液晶層と、該基板の対向面の各々に形成された電極パターンを備えた第1の表示領域を有する第1の液晶セルと、対向する一対の基板と、該基板間挟持された液晶層と、該基板の対向面の各々に形成された電極パターンを備え、前記第1の表示領域とは異なる第2の表示領域を有し、前記第1の液晶セルに比べ液晶の応答速度が速い第2の液晶セルと、前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルが重なりあった構造体の下方に配置されたマルチカラー表示可能なバックライトとを有する液晶表示装置であって、少なくとも前記第1の液晶セル、前記第2の液晶セルのいずれか一方において、前記一対の基板に挟持され、他方の液晶セルの表示領域と重なる位置に、前記基板と同等の屈折率を持つ等方性液体層を有する液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
セグメント表示またはセグメント表示+ドットマトリクス表示部を有する液晶表示装置の表示輝度、色純度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を参照して、本発明の実施例による液晶表示装置に共通な構成について説明する。図1は、液晶表示装置の概略的構成を示すブロック図である。実施例の液晶表示装置は、液晶表示素子1と、バックライト2と、駆動装置3とを含んで構成される。
【0016】
液晶表示素子1は、パターン電極によって画定される、少なくとも2つの表示領域を含む。表示領域の各々に対応してバックライト2の領域が(例えば領域Aと領域Bに)分割されている。
【0017】
バックライト2は、液晶表示素子1の背面に備えられ、表示領域毎に設けられた光源LSと、光源LSから放出された光が、対応する表示領域のみに入射するように、配光を制御する配光構造とを含む。各光源LSは、単色もしくは複数の色(例えばRGB)を発光可能なLEDを含んで構成され、それぞれ独立のタイミングで点灯可能である。
【0018】
図2Aに、バックライト構造例1を示す。これは、サイドライト式バックライトの構造例である。図1と同様に、ここでは表示領域が領域Aと領域Bに分かれている場合について説明する。図示のように、導光板からなる側壁6の、表示領域AとBとの境界4に、例えば金属からなる反射板5が挿入されており、側壁6が、表示領域A側の部分1Aと表示領域B側の部分1Bとに分割されている。
【0019】
側壁6で囲まれた表示領域A側の部分1Aの端部に光源LSAが設置され、表示領域B側の部分1Bの端部に光源LSBが設置されている。反射板5が設けられていることにより、光源LSA、LSBから放出された光は、相互に混ざることなく、各々、表示領域Aのみ、表示領域Bのみを照明する。
【0020】
図2Bに、バックライト構造例2を示す。図2Bに示すバックライトは、いわゆる直下型バックライト構造である。光を拡散反射させる側壁6を持つ箱状の構造体が、光を拡散反射させる隔壁7で、表示領域A側の部分6Aと、表示領域B側の部分6Bとに仕切られている。隔壁7は、表示領域AとBの境界4に設けられている。
【0021】
表示領域A側の部分6Aの底部に光源LSAが設置され、表示領域B側の部分6Bの底部に光源LSBが設置されている。光源LSA、LSBから放出された光は、隔壁7により、相互に混ざることなく、散乱板8を介して、それぞれ、表示領域Aのみ、表示領域Bのみを照明する。
【0022】
なお、ある領域から他領域にバックライト光が漏れないためには、相互に隣接する表示領域に含まれる表示パターン間の最短距離(表示画素間の最短距離)を1mm以上、好ましくは2mm以上とするのが好ましい。
【0023】
駆動装置3が、液晶表示素子1と各マルチカラー光源LSを所望のタイミングで同期駆動させる。光源の駆動は、通常のFS駆動もしくはカラーブレークレスFS駆動を液晶表示装置の用途に応じて行う。カラーブレークレスFS駆動では、各セグメント表示部を1フレーム当たり1つのサブフレームでしか明表示としないが、1つのサブフレームで原色表示もしくは複数の光源を同時点灯して混色表示を行うことにより、所望のカラー表示を行う。
【0024】
次に、高速応答する液晶表示素子の例を説明する。
【0025】
図3A〜図3Cを参照して、ノーマリホワイト(NW)ツイストネマチック(TN)モード液晶表示素子について説明する。図3Aは、NWTNモード液晶表示素子の概略斜視図である。図示の液晶表示素子は、液晶セル11が、クロスニコル配置の偏光板21、22に挟まれ、上下のガラス基板12、13と、それらの間に形成された液晶層14とを含んで構成される。偏光板21、22としてポラテクノ製SKN18243Tを用いている。
【0026】
図3Bに示すように、液晶セルのガラス基板12、13それぞれの、液晶層側内面に、表示パターン形状の透明電極31が配置され、さらにその内面に、水平配向膜32が形成されている。上下ガラス基板12、13の間で液晶層14が左捩れ90°になるようにそれぞれの基板にラビング処理が施されている。液晶層14は、左捩れのカイラル材が添加されたΔε>0の液晶材料が満たされている。液晶層14の厚さ(セル厚)は約2μmに設定されている。また、液晶セル厚dと液晶材料の捩れピッチpのd/pは約0.35に設定されている。液晶材料の複屈折率Δnとセル厚dの積であるリタデーションΔndは約446nmに設定されている。
【0027】
なお、偏光板の透過軸方向は上側が図中の4時半であり、下側が7時半の方向である。基板のラビング方向は各々の側の偏光板の軸方向と平行である。液晶層中央分子配向方位は液晶表示素子を法線方向から観察したときに面内において6時の方位になるようにラビング方向を調整されている。
【0028】
LCDの視角特性を改善するために、表示パターン部以外の領域(片側の基板だけでも良いし、両側の基板でも良い)にブラックマスクを設けても良い。ブラックマスクは、金属薄膜(クロムやモリブデンの薄膜を用いる。但し、表示パターン部とは電気的に絶縁している)、または黒色樹脂(顔料またはカーボンをアクリル等の樹脂中に分散したもの)で形成する。ブラックマスクは、カラーブレークレスFS駆動を行う場合において採用することが好ましい。
【0029】
図3Cに示すように、絶縁膜41、ブラックマスク42は、例えば、液晶セル11のガラス基板12(13)と透明電極31との間に形成される。必要に応じて、透明電極31と配向膜32との間に形成しても良い。
【0030】
図4に、垂直配向(VA)モード液晶表示素子の概略斜視図を示す。VAモード液晶表示素子の液晶セル51では、上下ガラス基板52、53それぞれの液晶層側内面に、所望のパターンを形成した透明電極が配置され、さらにその内面に、垂直配向膜が形成されている。垂直配向膜は、アンチパラレル配向になるようにラビング処理が施されている。液晶層にはΔε<0の液晶材料が満たされており、その層厚は略2μm、リタデーションΔndは略300nmに設定されている。液晶層中央分子の配向方位は12時方位に設定されている。
【0031】
液晶セル51外の上下にはクロスニコルの偏光板61、62を配置し、上側偏光板61の吸収軸を12時方位から反時計回りに45°回転させた位置に設定している。液晶セル51と上下偏光板61、62間には視角補償板71、72として、負の二軸光学異方性を有する光学フィルムを貼り合せている。試作した液晶表示素子においては、住友化学製のヨウ素系偏光板および負の二軸光学異方性フィルムを用いた。光学フィルム71、72の面内遅相軸(矢印)は偏光板吸収軸に略平行に配置し、面内位相差は略45nm、フィルム厚さ方向の位相差は略120nmとしている。なお、視角補償板は液晶セル51の上面又は下面のいずれか一方のみに配置されていても良い。光学フィルムパラメータの適切な値について説明すると、フィルムの厚さ方向位相差(2枚以上使用時にはその合計)は液晶セルのΔndに対して略0.5倍〜略1.0倍、面内位相差は略30nm〜略65nmに設定することが好ましい。
(実施例1)
発明者らは、通常応答速度の第1の液晶セルと、比較的高速応答する第2の液晶セルが積層された液晶表示素子であって、少なくとも一部の表示領域において、一方のセルに液晶層を形成し、他方のセルに等方性液体層を形成した液晶表示素子を有する液晶表示装置を発案した。
【0032】
図5Aに、液晶表示素子の電極パターンを示す。図5Aは、上段5A−1が第1の液晶セル、下段5A−2が第2の液晶セルを示す。
【0033】
第1の液晶セルは、ドットマトリクス表示領域およびクロスハッチで示された等方性液体層を有する。ドットマトリクス表示領域はマルチプレックス駆動を行うため、比較的応答速度が遅くなる。
【0034】
第2の液晶セルは、有効表示面内全般に液晶層を有し、液晶層は、セグメント電極および「TEMP」で示された温度表示領域(まとめてセグメント表示領域と呼ぶこととする)およびドットマトリクス表示領域の最外形から全方位に2mm大きくしたベタ電極部からなる。第2の液晶セルは、FS駆動に対応した比較的応答速度の速い駆動(スタティック駆動など)を行う。
【0035】
等方性液体層は、第2の液晶セルにおける温度表示部の表示領域を面内で包括する。その配置範囲は、視差の観点から、温度表示部の最外形から全方位に少なくとも1mm以上大きく取ることが望ましい。
【0036】
図5Bに、実施例1による液晶表示素子1の概略断面図を示す。図では、上側が液晶表示素子の前側でかつ観察者側とする。
【0037】
図示の液晶表示素子1は、大きく分けて、上から順に偏光板101、第1の液晶セル103、中間偏光板105、第2の液晶セル104、偏光板102に分類される。
【0038】
最上部の偏光板101として、ポラテクノ製SKN18243Tを用い、その吸収軸を略135°(観察者側から見て3時方向を0°とした場合に対する角度)に設定する。
【0039】
第1の液晶セル103は、上下ガラス基板106a、106bが、中間層107(液晶層108、等方性液体層109)を挟持する構造である。
【0040】
液晶層108と上下ガラス基板106a、106bとの間には、それぞれ電極パターン110a、110bが形成される。また、電極パターン110a、110bを覆うように、液晶層108側に向けて、絶縁膜が形成され、さらに水平配向膜が形成される。液晶層108はここでは180°スーパーツイストネマチック(STN)層である。そのリタデーションは950nmである。
【0041】
等方性液体層109を形成する等方性液体として、屈折率がガラスの屈折率と同等(1.5±0.1)のものを用いる。実施例1ではエクソン化学製アイソパーLを用いる。等方性液体層109は、液晶層に比べ多くの光を透過することが期待される。なお、等方性液体層109を通過する光は、隣接するガラス基板との境界においても光路が大きくは変化せず、表示素子全体として観察者の視角に対する影響をほとんどなくすことが出来る。
【0042】
液晶層108(図5A−1におけるドットマトリクス部に相当)と等方性液体層109(図5A−1におけるクロスハッチで示されたセグメント表示部に相当)とはシール材107sで隔離される。シール材107sの幅は例えば1.5mmであり、セグメント表示領域とドットマトリクス表示領域の最外形の中間に配置することが好ましい。
【0043】
第1の液晶セル103と第2の液晶セル104との間に配置された中間偏光板105は、180°捩れポラテクノ社製Twistarフィルムを具備し、吸収軸は45°である。そのリタデーションは950nmである。中間偏光板105の配置領域は、第1の液晶セルにおけるドットマトリクス表示領域のみとする。
【0044】
第2の液晶セル104の基本的構造は、図3Aに示したNWTN素子の偏光板を外した構造と同様である。すなわち、ガラス基板111a、111bが液晶層113を挟持する構造である。液晶層113のガラス基板111a、111bと接する面において、電極パターン114a、114bが形成される。さらに液晶層113側に向けて、電極パターン114a、114bを覆うように絶縁膜が形成され、さらに水平配向膜が形成される。配向膜はラビング処理が施され、液晶層113が90°捩れとなっている。液晶層113、電極パターン114a、114b、絶縁膜、水平配向膜を併せて中間層112と呼んでも良い。
【0045】
最下部の偏光板102として、ポラテクノ製SKN18243Tを用いる。セグメント表示領域においては吸収軸を135°とし、ドットマトリクス表示領域においては吸収軸を45°とすると共に、互いに吸収軸が異なる領域同士は間隔を設ける(例えば略1mm程度)。これにより、液晶表示素子1は全体としてノーマリブラックモードとなる。
【0046】
上記の構造において、第1の液晶セル103は白黒表示を行うシャッタとしての機能を、第2の液晶セル104はFS液晶表示素子としての機能を割り当てられる。これにより、図5Aに示すようなドットマトリクスを含んだ表示容量の大きな液晶表示素子であっても、FS駆動を用いたカラー表示が可能となる。
【0047】
さらに、本実施例では、第1の液晶セル103におけるセグメント表示領域に等方性液体層を設けたことで、明表示時の透過率を略33%と、ドットマトリクス表示部の明表示時の透過率18.8%に比べ大きくすることが出来る。これにより、セグメント表示部とドットマトリクス表示部とに同等の輝度のバックライトを用いた場合、表示素子としてはセグメント表示部が明るく観察される。従って、表示素子として均質な輝度を求める場合、ドットマトリクスの輝度に合わせてセグメント表示部のバックライト数(もしくは出力でも良い)を57%程度に減らすことが出来る。
【0048】
図5Cに、バックライトの配置平面図を示す。図示のように、バックライトLS(ここでは図2Bに示したような構造である。マルチカラーLEDからの光を散乱板で散乱させて液晶表示素子に照射する。マルチカラーLEDは任意の色を発光可能)のセグメント表示領域における配置密度を、ドットマトリクス表示領域の配置密度より小さくして配置する。これにより、コストダウンが期待できる。
【0049】
(実施例2)
図6は、実施例2による液晶表示素子1の概略断面図である。実施例2では、液晶セル203、204として、図4に示したVAモード液晶表示素子を用いた構成例を説明する。実施例2は、実施例1の効果に加えて、広視角範囲における外観表示品質の保持を可能とする構成である。
【0050】
図6に示す実施例2は、高速応答する第2の液晶セル204を上側に、通常速度で応答する第1の液晶セル203を下側に配置しており、両方ともVAモードである。図6における符号は、図5Aにおいて、第1の液晶セルと第2の液晶セルを上下入れ替え、百の位を1から2に変更したものに対応する。
【0051】
VAモード液晶セルのセル条件を説明すると、液晶層厚が4μm、リタデーションが略600nmである。
【0052】
上側偏光板201と上側ガラス基板211aとの間に、上側偏光板と軸方向の同じ視角補償板を配置する。視角補償板は、厚さ方向リタデーションが略220nmで、負の2軸異方性を有する光学フィルムである。
【0053】
中間偏光板205として、ドットマトリクス表示領域に、吸収軸45°の偏光板とそれに負の2軸異方性の視角補償板を貼り合わせたものを配置する。但し、液晶表示素子を斜めから見たときの光漏れを防ぐために、セグメント表示領域に略1mm重なるようにする。
【0054】
下側の第1の液晶セル203の下に、偏光板を貼り合わせる。その吸収軸の角度は、セグメント表示領域において45°、ドットマトリクス表示領域において135°である。なお、セグメント表示領域とドットマトリクス表示領域との間に1mm程度の間隔を設ける。
【0055】
実施例2による液晶表示装置においては、通常応答液晶セル203のドットマトリクス表示領域が白黒シャッタとしての機能を果たし、高速応答液晶セル204がFS駆動の液晶表示素子としての機能を果たす。
【0056】
なお、高速応答液晶セル204と通常応答液晶セル203の位置を入れ替えても良い。その場合、必要に応じて偏光板の軸方向や視角補償板の貼り方を調整する。
(実施例3)
図7Aは、実施例3による液晶表示素子1の概略断面図である。実施例3は、セグメント表示領域、ドットマトリクス表示領域共に等方性液体層を設けた構造である。
【0057】
図示のように、通常速度応答の第1の液晶セル303を上側に配置し、高速応答の第2の液晶セル304を下側に配置する。ここでは2つのセル共にVAモードの液晶表示素子を採用する。
【0058】
図7Aにおける符号は、図5Aにおいて、百の位を1から3に変更したものに対応する。図5Aとのその他の違いは、中間偏光板が無いことと、第2の液晶セルに等方性液体層315が設けられていることである。
【0059】
上下に設けられた偏光板の吸収軸方向は上側135°、下側45°である。但し、セグメント表示領域とドットマトリクス表示領域とで視角補償条件が異なるため、偏光板は互いの表示領域間で1mm程度の隙間が存在する。
【0060】
図7Aに示した構造では、上述したように、偏光板に隙間が存在し、その隙間から光抜けが生じる。この光抜けを避けたい場合には、他の構造を考える必要がある。
【0061】
図7Bに、実施例3の変型例を示す。図示のように、この変型例においては、ドットマトリクス表示領域を覆う中間偏光板325を上下液晶セルの間に形成する。中間偏光板325は、セグメント表示領域に1mm程度重なるようにする。その他の構造は、図7Aと同様である。
【0062】
実施例3およびその変型例によれば、どの表示領域においても第1、第2の液晶セルのどちらかに等方性液体層が存在するため、液晶表示装置として表示が明るくなる。従来品と同等の明るさを得るだけで良い場合には、マルチカラーLEDの数を減らすことが出来、コストダウンに繋がる。
(実施例4)
図8は、実施例4による液晶表示素子の概略断面図である。第1、第2の液晶セルに用いる液晶表示素子は実施例3と同様である。但し、実施例3と異なり、第1の液晶セル側にセグメント表示領域に対応する電極パターン410a、410bを設け、第2の液晶セルにドットマトリクス表示領域に対応する電極パターン414a、414bを設けた。また、中間偏光板405は、セグメント表示領域に設け、下部偏光板402をドットマトリクス表示領域に設けた。なお、中間偏光板405をドットマトリクス表示領域に1mm程度オーバーラップさせるか、下部偏光板402をセグメント表示領域に1mm程度オーバーラップさせる。
【0063】
表示例として、ドットマトリクス表示領域を白色表示にし、セグメント表示領域を複数色表示させる例を挙げる。
【0064】
セグメント表示領域では、バックライトをカラーブレークレス駆動させることによりカラー表示を行う。ドットマトリクス表示領域においては、バックライトを白色で常時点灯させる。
【0065】
バックライトをカラーブレークレス駆動させるセグメント表示領域と、バックライトを常時白色点灯させるドットマトリクス表示領域では、LED一個あたりの輝度にして5倍程度(ドットマトリクス表示領域の方が明るい)の差が出る。従って、全体的に均質な表示をさせたい場合、ドットマトリクス表示領域のLEDを大幅に減らすことが出来る。
【0066】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、等方性液体層は、少なくともどちらか一方の液晶セルに設けるだけでも、液晶表示素子の透過率を向上させることが出来る。
【0067】
サブフレームを等時間に分割せず、不等時間に分割しても良い。また1フレームの時間も1フレームごとに変化させて良い。
【0068】
バックライトLSは、必ずしも表示領域毎に分割しなくても良い。例えば、実施例1において、ドットマトリクス表示領域を白色表示、セグメント表示領域を複数色表示させたい場合、表示領域毎に分割せずとも、通常のFS駆動、カラーブレークレス駆動どちらを用いても表示は可能である。但し、マルチカラーLEDの輝度ムラを軽減するためにバックライト出射面には散乱板を配置すると良い。
【0069】
図9は、2層TN液晶表示素子の概略斜視図である。高速応答液晶セルとして、2層構造のTN液晶表示素子を用いても良い。
【0070】
図示のように、2層TN液晶表示素子は、クロスニコル配置の偏光板91、92間に2つの液晶セル81、82が積層された構造において、下側のセル82を「駆動セル」、上側のセル81を「補償セル」として動作させる。
【0071】
「駆動セル」82の構造は、図1で示したNWTNモード液晶表示素子の液晶セルと同様である。駆動セルには、外部から駆動電圧を印加して表示部の明暗表示を行う。
【0072】
一方、「補償セル」81においては、2枚のガラス基板間の液晶層が右捩れ90°になるようにラビング処理を施す。また、液晶層中に右ねじれを誘起するようなカイラル剤を添加する。液晶層中央分子の配向方位は3時の方向である。また、ガラス基板に表示パターン電極は形成しない。この補償セルにより、正面観察時にはリタデーションがほぼ0となり、ノーマリブラックモードとなる。その他の条件は駆動セル82と同様である。なお、補償セル81は、同様な光学特性を有する光学フィルム、例えばポラテクノ製Twistarフィルム等で代替可能である。
【0073】
なお、偏光板の軸方向を表示モードに合わせて変えることは自明であろう。
【0074】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、液晶表示装置の概略的構成を示すブロック図である。
【図2】図2Aは、バックライトの構造例1であり、図2Bは、バックライトの構造例2である。
【図3】図3A〜図3Cは、ノーマリホワイト(NW)ツイストネマチック(TN)モード液晶表示素子を説明する図である。
【図4】図4は、垂直配向(VA)モード液晶表示素子の概略斜視図である。
【図5】図5Aは、液晶表示素子の電極パターンであり、図5Bは、実施例1による液晶表示素子1の概略断面図であり、図5Cは、バックライトの配置平面図である。
【図6】図6は、実施例2による液晶表示素子1の概略断面図である。
【図7】図7Aは、実施例3による液晶表示素子1の概略断面図であり、図7Bは、実施例3の変型例による液晶表示素子1の概略断面図である。
【図8】図8は、実施例4による液晶表示素子の概略断面図である。
【図9】図9は、2層TN液晶表示素子の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
1 液晶表示素子
2 バックライト
3 駆動装置
4 境界
5 反射板
6 側壁
7 隔壁
8 散乱板
11、51、81、82、103、104、203、204、303、304、323、324、403、404 液晶セル
12、13、52、53、106a、106b、111a、111b、206a、206b、211a、211b、306a、306b、311a、311b、326a、326b、331a、331b、406a、406b、411a、411b 基板
21、22、61、62、91、92、101、102、105、201、203、205、301、302、321、322、325、401、402、405 偏光板
71、72 視角補償板
107、112、207、212、307、312、327、332、407、412 中間層
107s、112s、207s、212s、307s、312s、327s、332s、407s、412s シール材
108、113、208、213、308、313、328、333、408、413 液晶層
109、209、309、315、329、335、409、415 等方性液体層
110a、110b、114a、114b、210a、210b、214a、214b、310a、310b、314a、314b、330a、330b、334a、334b、410a、410b、414a、414b 電極
LS、LSA、LSB 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の基板と、該基板間に挟持された液晶層と、該基板の対向面の各々に形成された電極パターンを備えた第1の表示領域を有する第1の液晶セルと、
対向する一対の基板と、該基板間挟持された液晶層と、該基板の対向面の各々に形成された電極パターンを備え、前記第1の表示領域とは異なる第2の表示領域を有し、前記第1の液晶セルに比べ液晶の応答速度が速い第2の液晶セルと、
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルが重なりあった構造体の下方に配置されたマルチカラー表示可能なバックライトと
を有する液晶表示装置であって、
少なくとも前記第1の液晶セル、前記第2の液晶セルのいずれか一方において、前記一対の基板に挟持され、他方の液晶セルの表示領域と重なる位置に、前記基板と同等の屈折率を持つ等方性液体層を有する液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1の液晶セルに形成された電極パターンがドットマトリクスパターンであり、第2の液晶セルに形成された電極パターンがセグメントパターンである請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1の液晶セルに形成された電極パターンがセグメントパターンであり、第2の液晶セルに形成された電極パターンがドットマトリクスパターンである請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記等方性液体層の屈折率が1.5±0.1である請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−204850(P2009−204850A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46598(P2008−46598)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】