説明

液晶表示装置

【課題】消費電力を低減しつつ輝度を向上することができる液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】液晶パネル10の背面側に配置された偏光板15の吸収軸方向の直線偏光をバックライト20の方向に反射し、偏光板15の透過軸方向の直線偏光を透過する反射型偏光板16と、導光板22から出射された光を液晶パネル10に向けるプリズム列21aが形成された光路変換部21とを有する液晶表示装置1において、バックライト20は、反射型偏光板16と光路変換部21との間に配置された異方性拡散シート30を有し、異方性拡散シート30は、吸収軸方向に延伸され、反射型偏光板16側の面に凹凸形状に形成された凹凸部31aを有する屈折率異方性シート31と、凹凸部31aの表面に積層され、等方性の屈折率を有し、該屈折率が屈折率異方性シート31の延伸方向に垂直な透過軸方向の屈折率と等しい等方性材料部32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの背面から光を照射するバックライトを有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルの背面から光を照射するバックライトを有する液晶表示装置は、バックライトから照射される光を用いて液晶パネルに画像を表示している。このような液晶表示装置の液晶パネルは、一対の透明基板と、これら一対の透明基板に挟持された液晶材と、液晶パネルの表面側と背面側とに設けられた一対の偏光板と、を有し、これら一対の偏光板によって液晶材に入射する光の偏光状態を変化させるようにしている。
このため、バックライトから照射する光は、背面側の偏光板によって偏光板の吸収軸方向の直線偏光が吸収されてしまう。そこで、消費電力を低減しつつ輝度を向上するため、背面側の偏光板とバックライトとの間に反射型偏光板を設け、この反射型偏光板によって吸収軸方向の直線偏光をあらかじめバックライトの方向に反射し、再び液晶パネルに反射させて吸収軸方向の直線偏光を再利用する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、吸収軸方向の直線偏光とは、吸収軸方向の振動面をもつ直線偏光と同義である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−298634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された反射型偏光板は、反射型偏光子の光線入射側に散乱フィルムが積層された積層構成を有し、かつ反射型偏光子の透過軸と散乱フィルムのフィルム平面内の所定方向が平行に積層されている。
液晶表示に必要な偏光成分は、該散乱フィルムの所定方向を透過した後、さらに反射型偏光子の透過軸方向を透過する。
一方、液晶表示に不要な偏光成分のうち該散乱フィルムの該所定方向に垂直な方向を透過した直線偏光は、反射型偏光子の透過軸の直交方向で反射されて再び該散乱フィルムに戻され、散乱フィルムのX方向に再入射した該偏光成分は反射型偏光子側に後方散乱されて偏光が解消され、再び反射型偏光子に入射する。
反射型偏光子の透過軸方向の直線偏光は透過し、透過軸に直交する直線偏光は再び反射して散乱フィルム方向に戻されるといった過程を繰り返して液晶セル内に入射する光量を増やすようにしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の反射型偏光板を備えた液晶表示装置では、背面側の偏光板を透過した後に配線等の液晶パネルの背面によってバックライト方向に反射された直線偏光について考慮されておらず、バックライトにおいて透過軸方向の直線偏光であるものの反射型偏光板によって反射された吸収軸方向の直線偏光と同様に偏光を解消されてしまうので、液晶パネルの背面で反射した光の再利用の効率が低下し、結果的に輝度を上げるために電力供給量を上げなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、消費電力を低減しつつ輝度を向上することができる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる液晶表示装置は、液晶パネルの背面側に配置された偏光板の吸収軸方向の直線偏光をバックライトの方向に反射し、該偏光板の透過軸方向の直線偏光を透過する反射型偏光板と、導光板から出射された光を前記液晶パネルに向けるプリズム列が形成された光路変換部とを有する液晶表示装置において、前記バックライトは、前記反射型偏光板と前記光路変換部との間に配置された異方性拡散シートを有し、前記異方性拡散シートは、前記吸収軸方向に延伸され、前記反射型偏光板側の面に凹凸形状に形成された凹凸部を有する屈折率異方性シートと、前記凹凸部の表面に積層され、等方性の屈折率を有し、該屈折率が前記屈折率異方性シートの延伸方向に垂直な前記透過軸方向の屈折率と等しい等方性材料部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記異方性拡散シートは、前記吸収軸方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差の絶対値が、前記透過軸方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差の絶対値よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記凹凸部は、厚み方向に直交する底部断面が前記屈折率異方性シートの延伸方向を長手方向とする楕円形状である凸部を複数形成したものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記凹凸部は、ホットエンボス加工によって形成されたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記異方性拡散シートは、前記等方性材料部の表面に表面形状が平坦な平坦化シートを積層されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記異方性拡散シートは、複数枚重ねて積層されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、上記の発明において、前記凹凸部は、凹凸形状に形成された回折格子であることを特徴とする。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる液晶表示装置は、液晶パネルの背面側に配置された偏光板の吸収軸方向の直線偏光をバックライトの方向に反射し、該偏光板の透過軸方向の直線偏光を透過する反射型偏光板と、導光板から出射された光を前記液晶パネルに向けるプリズム列が形成された光路変換部とを有する液晶表示装置において、前記バックライトは、前記反射型偏光板と前記光路変換部との間に配置された異方性拡散シートを有し、前記異方性拡散シートは、該異方性拡散シートの表面に凹凸形状の回折格子が形成され、該回折格子の溝が前記吸収軸方向と平行になるように配置されることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる液晶表示装置は、前記反射型偏光板で反射して前記バックライトの方向に戻る前記吸収軸方向の直線偏光が、前記等方性材料部と、前記屈折異方性シートとの屈折率の差によって、前記凹凸部の表面で散乱して偏光を解消する。また、前記液晶パネルの背面側の偏光板を透過した後に前記液晶パネルの配線等の液晶パネルの背面によって前記バックライト方向に反射された前記透過軸方向の直線偏光が、屈折率異方性シートの前記透過軸方向の屈折率と前記等方性材料部の屈折率とが等しいため、散乱せず前記透過軸方向の偏光を維持したまま前記異方性拡散シートを透過するので、前記液晶パネルの背面で反射した光の再利用効率を向上させ、結果的に消費電力を低減しつつ輝度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる液晶表示装置の全体構成を示した模式図である。
【図2】図2は、図1に示した液晶表示装置の斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した屈折率異方性シートの正面図である。
【図4】図4は、異方性拡散シートにて偏光を維持したまま透過する直線偏光と、散乱して偏光を解消される直線偏光とを示した図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1の変形例1を示した図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1の変形例2を示した図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1の変形例3を示した図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態1の変形例4を示した図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態2にかかる液晶表示装置の全体構成を示した模式図である。
【図10】図10は、異方性拡散シートにて偏光を維持したまま透過する直線偏光と、回折して偏光を解消される直線偏光とを示した図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明にかかる液晶表示装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる液晶表示装置1の全体構成を示した模式図である。図2は、図1に示した液晶表示装置1の斜視図である。図3は、図1に示した屈折率異方性シート31の正面図である。図4は、異方性拡散シート30にて偏光を維持したまま透過する直線偏光R2と、散乱して偏光を解消される直線偏光R3とを示した図である。なお、図1〜4で背面側偏光板15の透過軸方向をY軸とし、背面側偏光板15の吸収軸方向をX軸とし、XY軸平面の法線方向をZ軸としている。
液晶表示装置1は、アクティブマトリクス方式であり、液晶表示パネル10と、バックライト20と、図示しない制御部とを有する。
【0019】
液晶パネル10は、一対の透明基板である第1の透明基板11および第2の透明基板12と、これら一対の透明基板に挟持される液晶材13と、一対の偏光板である表面側偏光板14および背面側偏光板15と、反射型偏光板16とを有する。
【0020】
第1の透明基板11は、ガラス材等からなり、可視光に対して透明な板状の基板である。第1の透明基板11は、液晶材13側の表面にカラーフィルタ17が形成され、カラーフィルタ17の表面には図示しない配向膜が形成されている。
【0021】
第2の透明基板12は、ガラス材等からなり、可視光に対して透明な板状の基板である。第2の透明基板12は、マトリクス状に配置された複数の画素を形成する図示しない電極、信号線12a、図示しない薄膜トランジスタ等が液晶材13側の表面に形成されている。また、第2の透明基板12は、図示しない配向膜が液晶材13と接する面に形成されている。
【0022】
表面側偏光板14は、第1の透明基板11の液晶材13とは反対側の面に配置されている。表面側偏光板14は、所定方向の直線偏光を吸収し、これと振動面が直交する直線偏光を透過する。すなわち、表面側偏光板14は、所定の直線偏光を吸収する吸収軸と、この吸収される直線偏光に対して振動面が直交する直線偏光を透過する透過軸とを有する。
【0023】
背面側偏光板15は、第2の透明基板12の液晶材13とは反対側の面、すなわち液晶パネル10の背面側に配置されている。背面側偏光板15は、所定方向の直線偏光を吸収し、これと振動面が直交する直線偏光を透過する。すなわち、背面側偏光板15は、所定の直線偏光を吸収する吸収軸と、この吸収される直線偏光に対して振動面が直交する直線偏光を透過する透過軸とを有する。また、背面側偏光板15は、吸収軸方向が表面側偏光板14の吸収軸方向に対して直交するように配置されている。すなわち、表面側偏光板14と背面側偏光板15とはクロスニコルに配置されている。
【0024】
反射型偏光板16は、背面側偏光板15の液晶材13側の面とは反対側の面に貼り付けられている。反射型偏光板16は、背面側偏光板15の透過軸方向の直線偏光を透過し、背面側偏光板15の吸収軸方向の直線偏光を反射するものである。
【0025】
バックライト20は、液晶パネル10の表示領域に光を照射するためのものである。このバックライト20には、エッジライト方式を用いている。バックライト11は、異方性拡散シート30、プリズムシート21、導光板22、反射シート23および光源24を有する。
【0026】
異方性拡散シート30は、反射型偏光板16とプリズムシート21との間に配置される。異方性拡散シート30は、屈折率異方性シート31および等方性材料部32を有する。屈折率異方性シート31は、一軸延伸のPET(Polyethylene terephthalate)からなるシートであり、背面側偏光板15の吸収軸方向に延伸されている。この屈折率異方性シート31は、X、YおよびZ軸方向それぞれの屈折率を屈折率nx、ny、nzとした場合、|nx−nz|>|ny−nz|となるようにしている。
【0027】
なお、本発明の実施の形態1の屈折率異方性シート31は、一軸異方性を有するシートである。このため、X、YおよびZ軸方向それぞれの屈折率nx,ny,nzは、nx=ne、ny=nz=n0となる。ここで、屈折率neは異常光線屈折率を示し、屈折率n0は常光線屈折率を示している。屈折率neおよび屈折率n0のそれぞれは、例えば、n0=1.53、ne=1.71に設定される。
【0028】
また、屈折率異方性シート31は、凹凸部31aを有する。凹凸部31aは、反射型偏光板16から反射した直線偏光を散乱するために屈折率異方性シート31の表面上に形成した凹凸形状部分である。凹凸部31aは、図3に示すように、厚み方向に直交する底部断面がX軸方向を長手方向とする楕円形状である凸部を複数形成した部分である。この凹凸部31aは、ホットエンボス加工によって形成される。ここで、ホットエンボス加工とは、通常ホットエンボスと呼ばれる加熱した版を樹脂フィルムに押し当てながらパターン転写する方法である。
【0029】
等方性材料部32は、屈折率異方性シート31の凹凸部31aの表面に形成され、凹凸部31aによる凹凸形状の表面を平坦化する層である。等方性材料部32は、等方性の屈折率ntを有し、この屈折率ntが屈折率異方性シート31の屈折率ny(=屈折率n0)と等しいものである。
【0030】
プリズムシート21は、異方性拡散シート30と導光板22との間に配置され、光路変換部として、導体板22から出射される光の方向を液晶パネル10の背面の正面方向に向けるものである。プリズムシート21は、プリズム列部21aおよびベースフィルム部21cを有する。
プリズム列部21aは、プリズム列としてベースフィルム部21cの表面に複数のプリズム21bを列で設けた部分である。各プリズム21bは、段を形成された斜面Sを有する。プリズム列部21aは、各プリズム21bの稜線Lが光源24からの光が入射する導光板22の端面の辺に沿った方向に延びるように並んで配置されている。すなわち、プリズム列部21aは、各プリズム21bの稜線LがX軸方向に平行になるように並んで配置されている。
【0031】
プリズム21bは、導光板22から出射してプリズムシート21に入射した光の進行方向を液晶パネル10の背面の正面方向に屈折するように形成されている。このプリズムシート21は、プリズム21bの斜面Sに段を設けているので、プリズム材料の屈折率の波長分散による色付きを低減する機能を有する。
【0032】
ベースフィルム部21cは、プリズムシート21の基部となるフィルムである。例えば、PET(Polyethylene terephthalate)からなる。ベースフィルム部21cは、可視光に対して透明なフィルムである。このベースフィルム部21cは、その光学軸を、背面側偏光板15の透過軸に対して略平行あるいは略垂直にして配置される。
【0033】
このようなプリズムシート21によれば、プリズム21bの稜線Lに対して垂直方向の偏光がより強く出射されるため、背面側偏光板15の透過軸に対してプリズム21bの稜線Lが垂直となるようにしている。これによって、背面側偏光板15を透過する光量が大きくなるようにしている。また、プリズムシート21は一枚で、偏光方向(吸収軸方向、透過軸方向)に稜線Lが垂直あるいは平行になるようにしているので、液晶パネル10の背面で反射して戻ってきた偏光が崩れにくい。なお、プリズムシート21は、一枚に限らず、複数のプリズムシート21を用いてもよい。この場合、プリズムシート21は、プリズム21bの稜線Lが平行になるように配置する。
【0034】
導光板22は、光源24によって端面から入射する光を表面から面状に出射させるものである。導光板22は、プリズムシート21と反射シート23との間に配置される。導光板22は、合成樹脂等からなり、可視光に対して透明な板状部材である。
【0035】
反射シート23は、導光板22から出射される光を導光板22に反射して戻すものである。反射シート23は、合成樹脂シートの表面に高い反射率の反射面23aが形成されたものである。この反射面23aは、例えば、合成樹脂シートの表面に銀等の反射率の高い金属を蒸着によって成膜することによって形成される。この反射シート23は、反射面23aを導光板22の液晶パネル10側の面と反対側の面に対向して配置されている。
【0036】
光源24は、例えば白色光を出射する発光ダイオード(LED;Light Emitting Diodes)によって実現される。光源24は、導体板22の端面に複数個設けられる。なお、光源24は、必要に応じてその個数を調整するとよい。
【0037】
図示しない制御部は、CPU等によって実現され、液晶パネル10およびバックライト20を含む液晶表示装置1の各部と電気的に接続され、液晶表示装置1全体の動作を制御するものである。また、この制御部は、外部システムから入力された映像データを一時的に保持するメモリ等を有するものである。
【0038】
このようなバックライト20によって、図4に示すように、反射型偏光板16で反射してバックライト20の方向に戻るX軸方向(吸収軸方向)の直線偏光R3は、等方性材料32に入射する。この等方性材料32の表面は平坦であるため、直線偏光R3は、散乱を抑えられて等方性材料32に入射される。
【0039】
その後、直線偏光R3は、等方性材料部32と屈折異方性シート31との境界に入り、等方性材料部32と、屈折異方性シート31との屈折率の差|nx−nt|によって、凹凸部31aの表面で散乱して偏光を解消する。ここで、凹凸部31aは厚み方向に直交する底部断面がX軸方向を長手方向とする楕円形状である凸部を複数形成したものであるので、反射型偏光板16を反射した直線偏光R3は、X軸方向に対して垂直方向により強く散乱する。この実施の形態1の液晶表示装置1のようにバックライト20にプリズムシート21を用いたものは、プリズム21bの稜線Lに垂直方向の視野角が狭くなるものの、凹凸部31aによってプリズム21bの稜線Lに垂直方向により強く光を散乱させるようにして視野角を拡大させている。
【0040】
また、背面側偏光板15を透過した後に液晶パネル10の配線12a等の液晶パネル10の背面によってバックライト20方向に反射されたY軸方向(透過軸方向)の直線偏光R2は、等方性材料32に入射する。この等方性材料32の表面は平坦であるため、直線偏光R2は、散乱を抑えられて等方性材料32に入射される。
【0041】
その後、直線偏光R2は、等方性材料部32と屈折異方性シート31との境界に入り、屈折率異方性シート31のY軸方向の屈折率nyと等方性材料部32の屈折率ntとが等しいため、散乱せずY軸方向の偏光を維持したまま異方性拡散シート30を透過する。なお、背面側偏光板15を透過した後に液晶パネル10背面で反射した光をより多く再利用する場合は、液晶パネル10の非開口部に金属膜等の反射率の高い膜を設けるようにするとよい。
バックライト20に直線偏光を入射した場合に,入射偏光と同じ方向の偏光で反射してきた光の輝度をIp、入射偏光とは垂直方向の偏光で反射してきた輝度をIcとしたときに,偏光解消度αを
α=Ic/Ip ・・・(1)
で定義すると,反射型偏光板から反射された直線偏光は偏光解消度αが大きいことが望ましく、液晶パネル10の背面によってバックライト20方向に反射された直線偏光は偏光解消度αが小さいことが望ましい。反射型偏光板による光再利用の効果を有効に得るためには,反射型偏光板から反射された直線偏光の偏光解消度αは0.7以上、さらには0.8以上とすることが望ましい。一方、液晶パネル10の背面によってバックライト20方向に反射された直線偏光を有効に再利用するためには、この方向の直線偏光の偏光解消αを0.5以下、さらには0.4以下とすることが望ましい。
【0042】
本発明の実施の形態1の液晶表示装置1では、反射型偏光板16で反射してバックライト20の方向に戻る吸収軸方向の直線偏光は、等方性材料部32と、屈折異方性シート31との屈折率の差によって、凹凸部31aの表面で散乱して偏光を解消する。また、液晶パネル10の背面側偏光板15を透過した後に液晶パネル10の配線12a等の液晶パネル10の背面によってバックライト20方向に反射された透過軸方向の直線偏光は、屈折率異方性シート30の透過軸方向の屈折率と等方性材料部32の屈折率とが等しいため、散乱せず透過軸方向の偏光を維持したまま異方性拡散シート30を透過するので、液晶パネル10の背面で反射した光の再利用の効率を向上させ、結果的に消費電力を低減しつつ輝度を向上することができる。
【0043】
また、本発明の実施の形態1の液晶表示装置1では、ホットエンボス加工によって凹凸部31aを形成し、この凹凸部31aによって光を散乱させるようにしていので、マトリックス相に微粒子等の散乱相を分散させた材料を延伸したフィルムによって光を散乱させるようにしたもの、すなわち微粒子の均一な分散、凝集、ボイドの発生の抑制を図りながら屈折率の調整を行わなければならないものに比して屈折率の調整を容易に行うことができる。
【0044】
また、本発明の実施の形態1では、屈折率異方性シート31が厚み方向に直交する底部断面がX軸方向を長手方向とする楕円形状である凸部を複数形成されているので、反射型偏光板16を反射した直線偏光をX軸方向に対して垂直方向により強く拡散させることができる。従って、バックライト20がプリズムシート21を光路変換手段に用いる場合においても視野角を拡大することができる。
【0045】
また、本発明の実施の形態1では、異方性拡散シート30によって液晶パネル10に照射される光を散乱させるため、プリズムシート21の周期性が原因となるモアレの発生を低減することができる。
【0046】
なお、本発明の実施の形態1では、凹凸部31aが厚み方向に直交する底部断面がX軸方向を長手方向とする楕円形状である凸部を形成したものを例示したが、これに限らない。すなわち、光を散乱する凹凸形状に形成されていればよい。例えば、X軸方向とY軸方向の半径が等しい半球形状の凸部を形成するようにしてもよく,X軸方向につながった形状としてもよい。
【0047】
次に、本発明の実施の形態1の変形例1について説明する。図5は、本発明にかかる実施の形態1の変形例1を示した図である。本発明の実施の形態1の変形例1では、等方性材料部32の表面に表面形状が平坦な平坦化シート40を積層している。この平坦化シート40は、屈折率が等方性のシートを用いることが好ましい。なお、平坦化シート40として、屈折率異方性のシートを用いる場合、平坦化シート40は、その光学軸を屈折率異方性シート31の光学軸と平行になるように配置する。このように等方性材料部32の表面に平坦化シート40を貼り合わせることによって、等方性材料部32を薄くすることができ、かつ異方性拡散シート30の液晶パネル10側の表面をより平坦化して、表面での光の散乱をより低減することができる。
【0048】
次に、本発明の実施の形態1の変形例2について説明する。図6は、本発明にかかる実施の形態1の変形例2を示した図である。本発明の実施の形態1の変形例2では、屈折率異方性シート31と等方性材料部32とを複数枚重ねて積層するようにしている。すなわち、異方性拡散シート30を複数枚重ねて積層するようにしている。このように、異方性拡散シート31を複数枚重ねて積層することによって、反射型偏光板16で反射した透過軸方向の直線偏光をより散乱させて偏光を解消することができる。
【0049】
次に、本発明の実施の形態1の変形例3について説明する。図7は、本発明にかかる実施の形態1の変形例3を示した図である。本発明の実施の形態1の変形例3では、液晶表示装置1が、プリズムシート21に代えて逆プリズムシート50を有している。逆プリズムシート50は、導光板22から出射された光を全反射して液晶パネル10の背面の正面方向に向ける。液晶パネル10からの反射光、すなわち反射型偏光板16からの反射光、あるいは背面側偏光板15を透過した後の液晶パネル10の配線12a等からの反射光は、逆プリズムシート50で全反射して導光板22に戻るため、逆プリズムシート50による偏光の解消度合いを小さく抑えることができる。
なお、この逆プリズムシート50についてもプリズムシート21と同様に、プリズムの稜線Lに対して垂直方向の視野角が狭く、また稜線Lに対して垂直方向の偏光が強くなる傾向があるため、背面側偏光板15の透過軸、異方性拡散シート30の光学軸の方向を実施の形態1と同様にするとよい。
【0050】
次に、本発明の実施の形態1の変形例4について説明する。図8は、本発明にかかる実施の形態1の変形例4を示した図である。本発明の実施の形態1の変形例4では、液晶表示装置1が、プリズムシート21に代えてプリズムシート60を有する。このプリズムシート60は、X軸方向に直交する断面が頂角90度の直角三角形形状のプリズム60bが列をなして形成されたプリズム列部60aを有する。また、液晶表示装置1が拡散シート61を有する。
【0051】
拡散シート61は、光を拡散させるとともに、光の方向を液晶パネル10背面の正面方向に向ける機能を有する。拡散シート61は、プリズムシート60と導光板22との間に配置されている。このように拡散シート61を設けることによって、液晶パネル10背面の正面方向に輝度のピークを向けるようにしている。拡散シート61は、拡散シート61での偏光の解消度合いを小さくするため、拡散シート61の光学軸をプリズムシート60のプリズム60bの稜線Lに平行または垂直になるように配置する。
なお、プリズムシート60は複数設けても構わない。例えば、二枚のプリズムシート60をプリズム60bの稜線Lをクロスにして配置する場合、プリズム60bの稜線Lが背面側偏光板15の透過軸、又は吸収軸に平行になるように配置する。この場合、液晶パネル10に近い側のプリズム60bの稜線Lが背面側偏光板15の吸収軸方向となり、遠い側のプリズム60bの稜線Lが背面側偏光板15の透過軸方向となるように配置することが好ましい。
【0052】
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2の液晶表示装置について説明する。図9は、本発明の実施の形態2にかかる液晶表示装置2の全体構成を示した模式図である。図10は、異方性拡散シート70にて偏光を維持したまま透過する直線偏光R2と、回折して偏光を解消される直線偏光R3とを示した図である。
本発明の実施の形態1の液晶表示装置1では、凹凸部31aによって光を散乱させることによって偏光を解消するものを示したが、この実施の形態2の液晶表示装置2は、光を回折させることによって偏光を解消するようにしている。
液晶表示装置2は、実施の形態1の液晶表示装置1の異方性拡散シート30に代わって異方性拡散シート70を有する。この異方性拡散シート70は、凹凸部31aに代わって凹凸形状に形成された回折格子70aが屈折率異方性シート31に形成されている。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0053】
回折格子70aは、図10に示すように、X軸方向に直交する断面が三角形形状の回折格子である。回折格子70aは、反射型偏光板16から反射した偏光を回折させることによって、光の進行方向を変えるものである。
【0054】
回折格子70aは、格子溝Dの方向が、プリズム21bの稜線Lの方向と同じ方向に配置される。これにより、反射型偏光板16で反射した直線偏光はプリズム21bの稜線Lの方向に垂直な方向に回折されるので、プリズム21bの稜線Lに垂直な方向では視野角が狭くなるものの、回折格子70aによって視野角を拡大させている。
このように回折格子70aを配置した場合、回折格子70aは、格子溝Dの方向が背面側偏光板15の透過軸に対して垂直方向となるので、反射型偏光板16で反射した直線偏光は、回折格子70aに対して主にTE偏光として入射する。このため、回折格子70aは、TE偏光の0次の回折効率が小さく、高次の次数に回折するように格子定数、格子溝深さを設定する。
【0055】
このようなバックライト80によって、図10に示すように、反射型偏光板16で反射してバックライト20の方向に戻るX軸方向(吸収軸方向)の直線偏光R3は、等方性材料32に入射する。この等方性材料32の表面は平坦であるため、直線偏光R3は、散乱を抑えられて等方性材料32に入射される。
【0056】
その後、直線偏光R3は、等方性材料部32と屈折異方性シート31との境界に入り、等方性材料部32と、屈折異方性シート31との屈折率の差|nx−nt|によって回折格子70aの表面で回折して偏光を解消する。回折格子70aは、格子溝Dの方向が、プリズム21bの稜線Lの方向と同じ方向に配置されているので、反射型偏光板16を反射した直線偏光をX軸方向に対して垂直方向に回折させる。
【0057】
また、背面側偏光板15を透過した後に液晶パネル10の配線12a等の液晶パネル10の背面によってバックライト80方向に反射されたY軸方向(透過軸方向)の直線偏光R2は、等方性材料32に入射する。この等方性材料32の表面は平坦であるため、直線偏光R2は、散乱を抑えられて等方性材料32に入射される。
【0058】
その後、直線偏光R2は、等方性材料部32と屈折異方性シート31との境界に入り、屈折率異方性シート31のY軸方向の屈折率nyと等方性材料部32の屈折率ntとが等しいため、回折せずY軸方向の偏光を維持したまま異方性拡散シート70を透過する。
【0059】
本発明の実施の形態2の液晶表示装置2では、反射型偏光板16で反射してバックライト20の方向に戻る吸収軸方向の直線偏光は、等方性材料部32と、屈折異方性シート31との屈折率の差によって、回折格子70aの表面で回折して偏光を解消する。また、液晶パネル10の背面側偏光板15を透過した後に液晶パネル10の配線12a等の液晶パネル10の背面によってバックライト20方向に反射された透過軸方向の直線偏光は、屈折率異方性シート70の透過軸方向の屈折率と等方性材料部32の屈折率とが等しいため、散乱せず透過軸方向の偏光を維持したまま異方性拡散シート70を透過するので、液晶パネル10の背面で反射した光の再利用効率を向上させ、結果的に消費電力を低減しつつ輝度を向上することができる。
【0060】
次に、本発明の実施の形態2の変形例について説明する。図11は、本発明にかかる実施の形態2の変形例を示した図である。本発明の実施の形態2の変形例では、異方性拡散シート70が等方性材料部32を有しない構成である。すなわち、異方性拡散シート90が回折格子70aを形成された屈折異方性シート31のみの構成となっている。
回折格子70aは、TM偏光とTE偏光とで回折効率が異なるため、0次の回折効率が小さく高次の回折効率の高い偏光方向を反射型偏光板16によって反射した偏光の方向と一致させる。
屈折率異方性シート31は、回折格子70aで回折した光の偏光を崩さないように、遅相軸、進相軸のどちらかを回折格子70aの溝Dに垂直にする。なお、屈折率異方性シート31は、等方性の屈折率を有するシートを用いてもよい。
また、回折格子70aは、格子定数の値を光の波長以下に小さくすると、その波長以上の光はTE偏光の高次の回折効率が高くなり、TM偏光は高次の回折効率が小さくなる。この場合、回折格子70aは、反射型偏光板16で反射した吸収軸方向の直線偏光は回折格子70aに対してTE偏光として入射するように配置する。すなわち、回折格子70aの溝Dが吸収軸方向と平行になるように屈折率異方性シート31を配置する。
【0061】
なお、本発明の実施の形態1,2では、屈折率異方性シート31が一軸異方性のシートであるものを例示したが、これに限らず、屈折率異方性シート31は、X、YおよびZ軸方向それぞれの屈折率を屈折率nx、ny、nzとした場合、|nx−nz|>|ny−nz|の関係を満たせばよい。例えば、二軸異方性のシートであってもよい。
【0062】
なお、本発明の実施の形態1,2では、屈折率異方性シート31は、一軸延伸のPETを用いるものを例示したがPETに限定されない。例えば、一軸延伸のPEN(Polyether nitrile)を用いてもよい。この場合、屈折率neおよび屈折率n0のそれぞれは、例えば、n0=1.56、ne=1.86に設定される。
【0063】
なお,本発明の実施の形態1,2では、背面側偏光板15の透過軸をY軸,背面側偏光板15の吸収軸をX軸とし、X軸とY軸が導光板22の端面の辺に対して平行ないし垂直に配置するものを例示したが、X軸とY軸が導光板22の端面の辺に対して実効的に平行または垂直とみなせる程度に傾きを有していてもよい。X軸とY軸が導光板22の端面の辺と角度が0°以上で,15°以下ないし10°以下,或いは90°以下で75°以上ないし80°以上であれば実効的に平行または垂直とみなすことができる。
【0064】
なお、本発明の実施の形態1,2によってこの発明が限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1、2 液晶表示装置
10 液晶表示パネル
11 第1の透明基板
12 第2の透明基板
12a 配線
13 液晶材
14 表面側偏光板
15 背面側偏光板
16 反射型偏光板
17 カラーフィルタ
20,80 バックライト
21,60 プリズムシート
21a,60a プリズム列部
21b,60b プリズム
21c ベースフィルム部
22 導光板
23 反射シート
24 光源
30,70,90 異方性拡散シート
31 屈折率異方性シート
31a 凹凸部
32 等方性材料部
40 平坦化シート
50 逆プリズムシート
61 拡散シート
70a 回折格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルの背面側に配置された偏光板の吸収軸方向の直線偏光をバックライトの方向に反射し、該偏光板の透過軸方向の直線偏光を透過する反射型偏光板と、導光板から出射された光を前記液晶パネルに向けるプリズム列が形成された光路変換部とを有する液晶表示装置において、
前記バックライトは、
前記反射型偏光板と前記光路変換部との間に配置された異方性拡散シートを有し、
前記異方性拡散シートは、
前記吸収軸方向に延伸され、前記反射型偏光板側の面に凹凸形状に形成された凹凸部を有する屈折率異方性シートと、
前記凹凸部の表面に積層され、等方性の屈折率を有し、該屈折率が前記屈折率異方性シートの延伸方向に垂直な前記透過軸方向の屈折率と等しい等方性材料部と、
を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記異方性拡散シートは、
前記吸収軸方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差の絶対値が、前記透過軸方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記凹凸部は、
厚み方向に直交する底部断面が前記屈折率異方性シートの延伸方向を長手方向とする楕円形状である凸部を複数形成したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記凹凸部は、
ホットエンボス加工によって形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記異方性拡散シートは、
前記等方性材料部の表面に表面形状が平坦な平坦化シートを積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記異方性拡散シートは、
複数枚重ねて積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記凹凸部は、
凹凸形状に形成された回折格子であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
液晶パネルの背面側に配置された偏光板の吸収軸方向の直線偏光をバックライトの方向に反射し、該偏光板の透過軸方向の直線偏光を透過する反射型偏光板と、導光板から出射された光を前記液晶パネルに向けるプリズム列が形成された光路変換部とを有する液晶表示装置において、
前記バックライトは、前記反射型偏光板と前記光路変換部との間に配置された異方性拡散シートを有し、
前記異方性拡散シートは、
該異方性拡散シートの表面に凹凸形状の回折格子が形成され、該回折格子の溝が前記吸収軸方向と平行になるように配置されることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−63670(P2012−63670A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209028(P2010−209028)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】