説明

液晶装置、投射型表示装置および液晶装置の製造方法

【課題】配向膜を形成する際の下地に段差が存在していても、液晶分子を適正に配向させることのできる液晶装置、投射型表示装置、および液晶装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】液晶装置の製造工程において、第1配向膜16を形成する際、第1基板10の一方面10sに対する法線方向Lから斜めに傾いた方向から配向膜形成材料の蒸着を行い、法線方向Lから斜めに傾いた柱状構造物36からなる柱状構造物層37を形成する。また、蒸着を3回行うとともに、蒸着時の傾斜方向の方位角方向を3回の蒸着の各々において相違させ、第1柱状構造物層161、第2柱状構造物層162および第3柱状構造物層163を順次形成する。このため、柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向が3層の柱状構造物層37の各々において相違する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板面に対する法線方向から斜めに傾いた柱状構造物からなる配向膜が設けられた液晶装置、該液晶装置を備えた投射型表示装置、および当該液晶装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置では、一方面側に複数の画素電極および第1配向膜が設けられた第1基板と、この第1基板に対向する一方面側に共通電極および第2配向膜が設けられた第2基板とを有しており、第1基板と第2基板との間には液晶層が設けられている。ここで、ポリイミド膜等の有機膜にラビング処理を行ったものを配向膜として用いた場合、画素電極等に起因する段差部に起因して配向膜にラビングが適正に行われない領域が生じてしまい、この付近で液晶の配向乱れが生じることがある。このような問題は、例えば、画素電極のピッチを微細化すると、一層顕著に生じてしまう。
【0003】
一方、シリコン酸化物等の無機材料を斜方蒸着して得た膜を配向膜として用いることが提案されている。かかる構成によれば、基板面に対する法線方向から斜めに傾いた柱状構造物からなる柱状構造物層の表面形状が配向規制力を発揮するので、ラビングを必要としないという利点がある。しかしながら、斜方蒸着を利用して配向膜を形成した場合では、画素電極等に起因する段差があると、段差の陰になる領域に配向膜が適正に形成されない。
【0004】
そこで、第1回目の斜方蒸着を行った後、第1回目の斜方蒸着に対して方位角方向が略90°ずれた角度方向から第2回目の斜方蒸着を行うことが提案されている(特許文献1参照)。また、第1回目の斜方蒸着を行った後、第1回目の斜方蒸着に対して方位角方向が略180°ずれた角度方向から第2回目の斜方蒸着を行うことが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−277879号公報
【特許文献2】特開2005−181794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画素電極等に起因する段差は、画素電極の周りの4方に発生しているため、特許文献1、2に記載の技術では、段差に起因する配向膜の欠陥の発生を確実に防止することができず、液晶分子の配向を適正に制御することができないという問題点がある。また、斜方蒸着を利用して液晶分子のプレチルト角を制御しようとしても、段差付近に形成された配向膜は、液晶分子のプレチルト角を適正に制御することが困難である。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、配向膜を形成する際の下地に段差が存在していても、液晶分子を適正に配向させることのできる液晶装置、該液晶装置を備えた投射型表示装置、および当該液晶装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、一方面側に複数の画素電極および第1配向膜が設けられた第1基板と、該第1基板に対向する一方面側に共通電極および第2配向膜が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、を有する液晶装置であって、前記第1配向膜および前記第2配向膜のうち、少なくとも前記第1配向膜は、前記第1基板の基板面に対する法線方向から斜めに傾いた柱状構造物からなる柱状構造物層が3層以上積層された積層膜からなり、前記柱状構造物の傾斜方向の前記基板面の面内方向に沿った方位角方向が、前記3層以上の柱状構造物層の各々において相違することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、一方面側に複数の画素電極および第1配向膜が設けられた第1基板と、該第1基板に対向する一方面側に共通電極および第2配向膜が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、を有する液晶装置の製造方法であって、前記第1配向膜および前記第2配向膜のうち、少なくとも前記第1配向膜の形成工程では、前記第1基板の基板面に対する法線方向から斜めに傾いた方向から配向膜形成材料の蒸着を3回以上行い、前記蒸着時の傾斜方向の前記基板面の面内方向に沿った方位角方向を前記3回以上の蒸着の各々において相違させることを特徴とする。
【0010】
本発明では、少なくとも第1配向膜の形成工程では、第1基板の基板面に対する法線方向から斜めに傾いた方向から配向膜形成材料の蒸着を行い、法線方向から斜めに傾いた柱状構造物からなる柱状構造物層を形成する。また、本発明では、蒸着を3回以上行うとともに、蒸着時の傾斜方向の方位角方向を3回以上の蒸着の各々において相違させる。このため、柱状構造物の傾斜方向の方位角方向が3層以上の柱状構造物層の各々において相違することになる。このため、画素電極等に起因する段差が4方に向いている場合でも、少なくとも3方向から蒸着が行われるので、1回の蒸着時に陰になる部分には、他の蒸着時に柱状構造物(柱状構造物層)が形成される。また、3回以上の蒸着であれば、段差がいずれの方向に向いていても、3回以上の蒸着のうちのいずれかの蒸着の際に蒸着が行われる。従って、配向膜を形成する際の下地に、画素電極等に起因する段差が存在していても配向膜を適正に形成することができ、かかる段差付近でも液晶分子は配向膜によって配向が制御される。その際、段差付近の液晶分子は、段差以外の広くて平坦な領域に適正に形成された最上層の柱状構造物層によって適正に配向制御された液晶分子の影響を受け、適正な方位角方向に向かって適正なプレチルト角をもって配向することになる。それ故、液晶分子の配向を全域にわたって適正に制御することができる。
【0011】
本発明において、前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の層厚が最大であることが好ましい。3層以上の柱状構造物層のうち、最も液晶層側に設けられた柱状構造物層の表面形状が配向規制力を発揮する。従って、最も液晶層側に設けられた柱状構造物層を厚く形成すれば、配向膜の配向規制力を制御することができる。
【0012】
本発明において、前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の層厚は、前記積層膜の膜厚全体の1/2以上の厚さであることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記積層膜は、前記3層以上の前記柱状構造物層として、第1柱状構造物層、該第1柱状構造物層に対して前記液晶層側に積層された第2柱状構造物層、および前記第2柱状構造物層に対して前記液晶層側に積層された第3柱状構造物層を備えていることが好ましい。3回の蒸着であれば、段差がいずれの方向に向いていても、3回の蒸着のうちのいずれかの蒸着の際に蒸着が行われる。従って、配向膜を形成する際の下地に、画素電極等に起因する段差が存在していても配向膜を適正に形成することができる。
【0014】
本発明において、前記第1柱状構造物層と前記第2柱状構造物層とは、前記方位角方向が90°の角度を成し、前記第2柱状構造物層と前記第3柱状構造物層とは、前記方位角方向が90°の角度を成している構成を採用することができる。かかる構成によれば、互いに接する柱状構造物層において柱状構造物の方位角方向が極端に切り換わらないので、上層側の柱状構造物層の膜質を制御しやすい。
【0015】
本発明において、前記第1柱状構造物層と前記第2柱状構造物層とは、前記方位角方向が120°の角度を成し、前記第2柱状構造物層と前記第3柱状構造物層とは、前記方位角方向が120°の角度を成している構成を採用してもよい。かかる構成によれば、互いに接する柱状構造物層において柱状構造物の方位角方向が極端に切り換わらないので、上層側の柱状構造物層の膜質を制御しやすい。
【0016】
本発明において、前記第1配向膜および前記第2配向膜の双方が前記積層膜からなる構成を採用することができ、この場合、前記第1配向膜を構成する前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の前記方位角方向と、前記第2配向膜を構成する前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の前記方位角方向とは、アンチパラレルである構成を採用することができる。
【0017】
本発明において、前記第1配向膜は、前記3層以上の柱状構造物層からなり、前記第2配向膜は、単層の前記柱状構造物層からなり、前記第1配向膜を構成する前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の前記方位角方向と、前記第2配向膜を構成する前記柱状構造物層の前記方位角方向とは、アンチパラレルである構成を採用することができる。
【0018】
本発明において、前記柱状構造物は、前記基板面に対して45°の角度方向から成膜してなることが好ましい。かかる構成によれば、液晶層に用いた液晶分子にプレチルトを付すことができるので、液晶分子が傾く方向を確実に制御することができ、ディスクリネーションの発生を抑制することができる。
【0019】
本発明において、前記液晶層は、負の誘電率異方性を備えた液晶組成物からなる構成を採用することができる。
【0020】
本発明を適用した液晶装置は、各種電子機器において直視型表示装置等の各種の表示装置に用いることができる。また、本発明を適用した液晶装置は、投射型表示装置に用いることができる。かかる投射型表示装置は、本発明を適用した液晶装置に照射される照明光を出射する光源部と、前記液晶装置により変調された光を投射する投射光学系と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用した液晶装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した液晶装置に用いた液晶パネルの説明図である。
【図3】本発明を適用した液晶装置の画素の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る液晶装置の配向膜(第1配向膜および第2配向膜)の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る液晶装置の製造工程のうち、配向膜形成工程を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る液晶装置の製造工程のうち、配向膜形成工程を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る液晶装置の配向膜(第1配向膜および第2配向膜)の説明図である。
【図8】本発明を適用した投射型表示装置および光学ユニットの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、画素トランジスターを流れる電流の方向が反転する場合、ソースとドレインとが入れ替わるが、本説明では、画素電極が接続されている側(画素側ソースドレイン領域)をドレインとし、データ線が接続されている側(データ線側ソースドレイン領域)をソースとする。また、素子基板に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは素子基板の基板本体が位置する側とは反対側(対向基板が位置する側)を意味し、下層側とは素子基板の基板本体が位置する側(対向基板が位置する側とは反対側)を意味する。
【0023】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明を適用した液晶装置の電気的構成を示すブロック図である。なお、図1は、あくまで電気的な構成を示すブロック図であるため、容量電極等が延在している方向等、レイアウトについては模式的に示してある。
【0024】
図1において、本形態の液晶装置100(液晶装置)は、VA(Vertical Alignment)モードの液晶パネル100pを有しており、液晶パネル100pは、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画像表示領域10a(画素領域)を備えている。液晶パネル100pにおいて、後述する第1基板10(図2等を参照)では、画像表示領域10aの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交点に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、電界効果型トランジスターからなるスイッチング素子30(画素トランジスター)、および後述する画素電極9aが形成されている。スイッチング素子30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、スイッチング素子30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、スイッチング素子30のドレインには、画素電極9aが電気的に接続されている。
【0025】
第1基板10において、画像表示領域10aより外周側には走査線駆動回路104やデータ線駆動回路101が設けられている。データ線駆動回路101は各データ線6aに電気的に接続しており、画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0026】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、後述する第2基板20(図2等を参照)に形成された共通電極と液晶層を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号の変動を防ぐために、液晶容量50aと並列に蓄積容量55が付加されている。本形態では、蓄積容量55を構成するために、複数の画素100aに跨る第1容量電極5a(容量線)が形成されている。本形態において、第1容量電極5aは、共通電位Vcomが印加された共通電位線5cに導通している。
【0027】
(液晶パネル100pの構成)
図2は、本発明を適用した液晶装置100に用いた液晶パネル100pの説明図であり、図2(a)、(b)は各々、液晶パネル100pを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0028】
図2(a)、(b)に示すように、液晶パネル100pでは、第1基板10(素子基板)と第2基板20(対向基板)とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は第2基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバーあるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0029】
液晶パネル100pにおいて、第1基板10および第2基板20はいずれも四角形であり、液晶パネル100pの略中央には、図1を参照して説明した画像表示領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画像表示領域10aの外周縁との間には、略四角形の周辺領域10bが額縁状に設けられている。第1基板10において、画像表示領域10aの外側では、第1基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が接続されており、第1基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0030】
詳しくは後述するが、第1基板10の一方面10sおよび他方面10tのうち、第2基板20と対向する一方面10s側では、画像表示領域10aに、図1を参照して説明したスイッチング素子30、およびスイッチング素子30に電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には第1配向膜16が形成されている。
【0031】
また、第1基板10の一方面10s側において、周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9b(図2(b)参照)が形成されている。ダミー画素電極9bについては、ダミーの画素トランジスターと電気的に接続された構成、ダミーの画素トランジスターが設けられずに配線に直接、電気的に接続された構成、あるいは電位が印加されていないフロート状態にある構成が採用される。かかるダミー画素電極9bは、第1基板10において第1配向膜16が形成される面を研磨により平坦化する際、画像表示領域10aと周辺領域10bとの高さ位置を圧縮し、第1配向膜16が形成される面を平坦面にするのに寄与する。また、ダミー画素電極9bを所定の電位に設定すれば、画像表示領域10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止することができる。
【0032】
第2基板20の一方面20sおよび他方面20tのうち、第1基板10と対向する一方面20s側には共通電極21が形成されており、共通電極21の上層には第2配向膜26が形成されている。共通電極21は、第2基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素100aに跨って形成されている。また、第2基板20の一方面20s側には、共通電極21の下層側に遮光層108が形成されている。本形態において、遮光層108は、画像表示領域10aの外周縁に沿って延在する額縁状に形成されており、見切りとして機能する。遮光層108の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり、遮光層108とシール材107とは重なっていない。なお、第2基板20において、遮光層108は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域10fと重なる領域にブラックマトリクス部108bとしても形成されている。
【0033】
このように構成した液晶パネル100pにおいて、第1基板10には、シール材107より外側において第2基板20の角部分と重なる領域に、第1基板10と第2基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、第2基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、第1基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、第1基板10の側から共通電位Vcomが印加されている。シール材107は、略同一の幅寸法をもって第2基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角形である。但し、シール材107は、第2基板20の角部分と重なる領域では基板間導通用電極109を避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円弧状である。
【0034】
かかる構成の液晶装置100において、画素電極9aおよび共通電極21をITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透光性の導電膜により形成すると、透過型の液晶装置を構成することができる。これに対して、共通電極21をITOやIZO等の透光性導電膜により形成し、画素電極9aをアルミニウム等の反射性導電膜により形成すると、反射型の液晶装置を構成することができる。液晶装置100が反射型である場合、第2基板20の側から入射した光が第1基板10の側の基板で反射して出射される間に変調されて画像を表示する。液晶装置100が透過型である場合、第1基板10および第2基板20のうち、一方側の基板から入射した光が他方側の基板を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。
【0035】
液晶装置100は、モバイルコンピューター、携帯電話機等といった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、第2基板20には、カラーフィルター(図示せず)や保護膜が形成される。また、液晶装置100では、使用する液晶層50の種類や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差フィルムや偏光板等が液晶パネル100pに対して所定の向きに配置される。さらに、液晶装置100は、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各液晶装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルターは形成されない。
【0036】
本形態において、液晶装置100が、後述する投射型表示装置においてRGB用のライトバルブとして用いられる透過型の液晶装置であって、第2基板20から入射した光が第1基板10を透過して出射される場合を中心に説明する。また、本形態において、液晶装置100は、液晶層50として、誘電異方性が負のネマチック液晶組成物を用いたVAモードの液晶パネル100pを備えている場合を中心に説明する。
【0037】
(画素の具体的構成)
図3は、本発明を適用した液晶装置100の画素の説明図であり、図3(a)、(b)は各々、第1基板10において隣り合う画素の平面図、および図3(a)のF−F′線に相当する位置で液晶装置100を切断したときの断面図である。なお、図3(a)では、各領域を以下の線で表してある。
走査線3a=太い実線
半導体層1a=細くて短い点線
データ線6aおよびドレイン電極6b=一点鎖線
第1容量電極5aおよび中継電極5b=細くて長い破線
第2容量電極7a=二点鎖線
画素電極9a=太くて短い破線
【0038】
図3(a)に示すように、第1基板10には、複数の画素100aの各々に矩形状の画素電極9aが形成されており、隣り合う画素電極9aにより挟まれた縦横の画素間領域10fと重なる領域に沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。より具体的には、画素間領域10fのうち、第1方向(X方向)に延在する第1画素間領域10gと重なる領域に沿って走査線3aが延在し、第2方向(Y方向)に延在する第2画素間領域10hと重なる領域に沿ってデータ線6aが延在している。データ線6aおよび走査線3aは各々、直線的に延びており、データ線6aと走査線3aとが交差する領域にスイッチング素子30が形成されている。第1基板10には、データ線6aと重なるように、図1を参照して説明した第1容量電極5a(容量電極)が形成されている。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、第1基板10は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体10w、基板本体10wの液晶層50側の表面(一方面10s側)に形成された画素電極9a、画素スイッチング用のスイッチング素子30、および第1配向膜16を主体として構成されている。第2基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20w、その液晶層50側の表面(第1基板10と対向する一方面20s側)に形成された共通電極21、および第2配向膜26を主体として構成されている。
【0040】
第1基板10において、基板本体10wの一方面側には、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる走査線3aが形成されている。本形態において、走査線3aは、タングステンシリサイド(WSix)等の遮光性導電膜から構成されており、スイッチング素子30に対する遮光膜としても機能している。本形態において、走査線3aは、膜厚が200nm程度のタングステンシリサイドからなる。なお、基板本体10wと走査線3aとの間には、シリコン酸化膜等の絶縁膜が設けられることもある。
【0041】
基板本体10wの一方面10s側において、走査線3aの上層側には、シリコン酸化膜等の絶縁膜12が形成されており、かかる絶縁膜12の表面に、半導体層1aを備えたスイッチング素子30が形成されている。本形態において、絶縁膜12は、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC254)を用いた減圧CVD法やテトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜と、高温CVD法により形成したシリコン酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)との2層構造を有している。
【0042】
スイッチング素子30は、走査線3aとデータ線6aとの交差領域において走査線3aの延在方向に長辺方向を向けた半導体層1aと、半導体層1aの長さ方向と直交する方向に延在して半導体層1aの長さ方向の中央部分に重なるゲート電極3cとを備えている。また、スイッチング素子30は、半導体層1aとゲート電極3cとの間に透光性のゲート絶縁層2を有している。半導体層1aは、ゲート電極3cに対してゲート絶縁層2を介して対向するチャネル領域1gを備えているとともに、チャネル領域1gの両側にソース領域1bおよびドレイン領域1cを備えている。本形態において、スイッチング素子30は、LDD構造を有している。従って、ソース領域1bおよびドレイン領域1cは各々、チャネル領域1gの両側に低濃度領域1b1、1c1を備え、低濃度領域1b1、1c1に対してチャネル領域1gとは反対側で隣接する領域に高濃度領域1b2、1c2を備えている。
【0043】
半導体層1aは、多結晶シリコン膜等によって構成されている。ゲート絶縁層2は、半導体層1aを熱酸化したシリコン酸化膜からなる第1ゲート絶縁層2aと、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜等からなる第2ゲート絶縁層2bとの2層構造からなる。ゲート電極3cは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなり、半導体層1aの両側において、第2ゲート絶縁層2bおよび絶縁膜12を貫通するコンタクトホール12a、12bを介して走査線3aに導通している。本形態において、ゲート電極3cは、膜厚が100nm程度の導電性のポリシリコン膜と、膜厚が100nm程度のタングステンシリサイド膜との2層構造を有している。
【0044】
なお、本形態では、液晶装置100を透過した後の光が他の部材で反射した際、かかる反射光が半導体層1aに入射してスイッチング素子30で光電流に起因する誤動作が発生することを防止することを目的に、走査線3aを遮光膜により形成してある。但し、走査線をゲート絶縁層2の上層に形成し、その一部をゲート電極3cとしてもよい。この場合、図3に示す走査線3aは、遮光のみを目的として形成されることになる。
【0045】
ゲート電極3cの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜41が形成されており、層間絶縁膜41の上層には、データ線6aおよびドレイン電極6bが同一種類の導電膜によって形成されている。層間絶縁膜41は、例えば、シランガス(SH4)と亜酸化窒素(N2O)とを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。
【0046】
データ線6aおよびドレイン電極6bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、データ線6aおよびドレイン電極6bは、膜厚が20nmのチタン(Ti)膜、膜厚が50nmの窒化チタン(TiN)膜、膜厚が350nmのアルミニウム(Al)膜、膜厚が150nmのTiN膜をこの順に積層してなる4層構造を有している。データ線6aは、層間絶縁膜41および第2ゲート絶縁層2bを貫通するコンタクトホール41aを介してソース領域1b(データ線側ソースドレイン領域)に導通している。ドレイン電極6bは、第1画素間領域10gと重なる領域において、半導体層1aのドレイン領域1c(画素電極側ソースドレイン領域)と一部が重なるように形成されており、層間絶縁膜41および第2ゲート絶縁層2bを貫通するコンタクトホール41bを介してドレイン領域1cに導通している。
【0047】
データ線6aおよびドレイン電極6bの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜42が形成されている。層間絶縁膜42は、例えば、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。
【0048】
層間絶縁膜42の上層側には、第1容量電極5aおよび中継電極5bが同一種類の導電膜によって形成されている。第1容量電極5aおよび中継電極5bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、第1容量電極5aおよび中継電極5bは、膜厚が350nm程度のAl膜と、膜厚が150nm程度のTiN膜との2層構造を有している。第1容量電極5aは、データ線6aと同様、第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在している。中継電極5bは、第1画素間領域10gと重なる領域において、ドレイン電極6bと一部が重なるように形成されており、層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール42aを介してドレイン電極6bに導通している。
【0049】
第1容量電極5aおよび中継電極5bの上層側にはシリコン酸化膜等の透光性の絶縁膜44がエッチングストッパー層として形成されており、かかる絶縁膜44には、第1容量電極5aと重なる領域に開口部44bが形成されている。本形態において、絶縁膜44は、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。ここで、開口部44bは、図3(a)では図示を省略するが、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分と、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分とを備えたL字形状に形成されている。
【0050】
絶縁膜44の上層側には透光性の誘電体層40が形成されており、かかる誘電体層40の上層側には第2容量電極7aが形成されている。第2容量電極7aは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、第2容量電極7aは、膜厚が300nm程度のTiN膜からなる。誘電体層40としては、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等のシリコン化合物を用いることができる他、アルミニウム酸化膜、チタン酸化膜、タンタル酸化膜、ニオブ酸化膜、ハフニウム酸化膜、ランタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜等の高誘電率の誘電体層を用いることができる。第2容量電極7aは、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分と、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分とを備えたL字形状に形成されている。従って、第2容量電極7aのうち、第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分は、絶縁膜44の開口部44bにおいて、誘電体層40を介して第1容量電極5aに重なっており、第2容量電極として利用されている。このようにして、本形態では、第1容量電極5a、誘電体層40、および第2容量電極7aは、第1画素間領域10gと重なる領域に蓄積容量55を構成している。
【0051】
また、第2容量電極7aにおいて、第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分は、中継電極5bと部分的に重なっており、誘電体層40および絶縁膜44を貫通するコンタクトホール44aを介して中継電極5bに導通している。
【0052】
第2容量電極7aの上層側には透光性の層間絶縁膜45が形成されており、層間絶縁膜45の上層側には、膜厚が20nm程度のITO膜等の透光性導電膜からなる画素電極9aが形成されている。層間絶縁膜45は、例えば、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。画素電極9aは、データ線6aと走査線3aとの交差領域の近傍で第2容量電極7aと部分的に重なっており、層間絶縁膜45に形成されたコンタクトホール45aを介して、画素電極9aと第2容量電極7aとが導通している。
【0053】
画素電極9aの表面には第1配向膜16が形成されている。第1配向膜16は無機配向膜からなる。本形態において、第1配向膜16は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる。
【0054】
第2基板20では、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wの一方面20sおよび他方面20tのうち、液晶層50側の面(第1基板10に対向する側の面)に、ITO膜等の透光性導電膜からなる共通電極21が形成されており、かかる共通電極21を覆うように第2配向膜26が形成されている。第2配向膜26は、第1配向膜16と同様、無機配向膜からなる。本形態において、第2配向膜26は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる。かかる第1配向膜16および第2配向膜26は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を斜め配向させ、液晶パネル100pは、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。
【0055】
第1配向膜16および第2配向膜26の詳細構成は、図4等を参照しながら後述する。なお、図1および図2を参照して説明したデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104には、nチャネル型の駆動用トランジスターとpチャネル型の駆動用トランジスターとを備えた相補型トランジスター回路等が構成されている。ここで、駆動用トランジスターは、スイッチング素子30の製造工程の一部を利用して形成されたものである。このため、第1基板10においてデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104が形成されている領域も、図3(b)に示す断面構成と略同様な断面構成を有している。
【0056】
(第1配向膜16、26の構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100の配向膜(第1配向膜16および第2配向膜126)の説明図である。なお、図4では、配向膜(第1配向膜16および第2配向膜126)を中心に図示してあり、画素電極9aの下層側に形成された層間絶縁膜等の図示を省略してある。また、図4においては、柱状構造物層37の第3柱状構造物層163、263が厚く形成されていることを図示するにあたって、柱状構造物36を2層に重ねて模式的に図示してあるが、柱状構造物36が連続して厚く形成されている形態で表すこともできる。
【0057】
図3を参照して説明したように、第1基板10において画素電極9aは、層間絶縁膜45の平坦な表面に形成されているため、画素電極9aの4つの辺9a1、9a2、9a3、9a4に沿っては、画素電極9aの厚さ分の段差9dが発生している。それでも、本形態では、図4および図5を参照して以下に説明するように、3層以上の柱状構造物層37の積層膜によって第1配向膜16が形成されているので、画素電極9aの周りを含めた画像表示領域10aの全域に第1配向膜16を好適に形成することができる。また、本形態では、第2基板20には、画素間領域10fと重なる領域等にブラックマトリクス部108bを形成したため、ブラックマトリクス部108bに沿っては、ブラックマトリクス部108bの厚さ分の段差が発生している。それでも、本形態では、図4および図5を参照して以下に説明するように、3層以上の柱状構造物層37の積層膜によって第2配向膜26が形成されているので、ブラックマトリクス部108bの周りを含めた画像表示領域10aの全域に第2配向膜26を好適に形成することができる。
【0058】
図4に示すように、第1配向膜16は、第1基板10の一方面10s(基板面)に対する法線方向Lから斜めに傾いた柱状構造物36からなる柱状構造物層37が3層以上積層された積層膜からなる。本形態において、第1配向膜16は、3層以上の柱状構造物層37として、第1柱状構造物層161、第1柱状構造物層161に対して液晶層50側に積層された第2柱状構造物層162、および第2柱状構造物層162に対して液晶層50側に積層された第3柱状構造物層163を備えている。ここで、第1柱状構造物層161、第2柱状構造物層162、および第3柱状構造物層163では、柱状構造物36の傾斜方向は、基板面の面内方向に沿った方位角方向が各々相違する。また、3層の柱状構造物層37のうち、最も液晶層50側に設けられた第3柱状構造物層163の層厚が最大であり、第3柱状構造物層163は、第1配向膜16(積層膜)の膜厚全体の1/2以上の厚さである。例えば、第1配向膜16の厚さは約80nmであり、第3柱状構造物層163の厚さは40〜50nmである。
【0059】
また、第2配向膜26は、第1配向膜16と同様、第2基板20の一方面20s(基板面)に対する法線方向Lから斜めに傾いた柱状構造物36からなる柱状構造物層37が3層以上積層された積層膜からなる。本形態において、第2配向膜26は、3層以上の柱状構造物層37として、第1柱状構造物層261、第1柱状構造物層261に対して液晶層50側に積層された第2柱状構造物層262、および第2柱状構造物層262に対して液晶層50側に積層された第3柱状構造物層263を備えている。ここで、第1柱状構造物層261、第2柱状構造物層262、および第3柱状構造物層263では、柱状構造物36の傾斜方向は、基板面の面内方向に沿った方位角方向が各々相違する。また、3層の柱状構造物層37のうち、最も液晶層50側に設けられた第3柱状構造物層263の層厚が最大であり、第3柱状構造物層263は、第2配向膜26(積層膜)の膜厚全体の1/2以上の厚さである。例えば、第2配向膜26の厚さは約80nmであり、第3柱状構造物層263の厚さは40〜50nmである。
【0060】
本形態において、第1配向膜16および第2配向膜26のいずれにおいても、柱状構造物36は、シリコン酸化物からなる。また、第3柱状構造物層163における柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向と、第3柱状構造物層263における柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向とは、180°反転するアンチパラレルの関係にある。例えば、第3柱状構造物層163における柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向は1時30分の方位であり、第3柱状構造物層263における柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向は7時30分の方位である。ここで、第1柱状構造物層161、261、第2柱状構造物層162、262、および第3柱状構造物層163、263はいずれも、基板本体10w、20wの一方面10s、20sに対して45°の仰角をもった斜め方向から成膜してなる。
【0061】
かかる構成の液晶装置100において、液晶層50に用いた液晶分子51は、第1配向膜16の表面形状による配向規制力、および第2配向膜26の表面形状による配向規制力を受け、所定のプレチルト角をもって斜め配向する。ここで、第1配向膜16および第2配向膜26では、第3柱状構造物層163、263が最も液晶層50側に位置するので、液晶分子51は、第3柱状構造物層163、263の表面形状による配向規制力を受け、所定のプレチルト角をもって斜め配向する。
【0062】
(第1配向膜16および第2配向膜26の形成方法)
次に、第1配向膜16および第2配向膜26の形成方法を説明しながら、第1配向膜16および第2配向膜26の構成をより詳細に説明する。図5は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100の製造工程のうち、配向膜形成工程を示す説明図であり、図5(a)、(b)、(c)は、斜方蒸着時の基板面に対する仰角を示す説明図、斜方蒸着時の方位角方法を示す説明図、および画素電極9aの周り(段差)に蒸着が行われる様子を示す説明図である。図5において、方位角方向を示すにあたって、X軸方向の一方側を3時00分とし、X軸方向の他方側を9時00分とし、Y軸方向の一方側を12時00分とし、Y軸方向の他方側を6時00分として説明する。なお、本形態の液晶装置100の製造工程では、周知の方法で第1基板10に画素電極9aまでを形成した後、画素電極9aの表面側に第1配向膜16を形成する。また、周知の方法で第2基板20に共通電極21までを形成した後、共通電極21の表面側に第2配向膜26を形成する。従って、以下の説明では、液晶装置100の製造工程のうち、配向膜形成工程のみを説明し、他の工程の説明を省略する。
【0063】
本形態の液晶装置100を製造するにあたって、図5(a)、(b)に示す第1配向膜16の形成工程では、第1基板10の一方面10s(基板面)に対する法線方向Lから斜めに傾いた方向から配向膜形成材料(シリコン酸化物)の蒸着を行い、図4に示すように、法線方向Lから斜めに傾いた柱状構造物36からなる柱状構造物層37を形成する。また、本形態では、蒸着を3回行って、3層の柱状構造物層37(第1柱状構造物層161、第2柱状構造物層262、および第3柱状構造物層263)を形成するとともに、蒸着時の傾斜方向の方位角方向を3回の蒸着の各々において相違させる。
【0064】
より具体的には、図5(a)、(b)に示すように、第1回目の蒸着工程では、矢印S1で示すように、方位角方向として、7時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第1基板10の一方面10sとが成す角度θ1は、45°である。その結果、図4に示す第1柱状構造物層161が形成される。かかる第1柱状構造物層161において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、7時30分の方向である。
【0065】
次に、第2回目の蒸着工程では、矢印S2で示すように、方位角方向として、10時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第1基板10の一方面10sが成す角度θ2は、45°である。その結果、図4に示す第2柱状構造物層162が形成される。かかる第2柱状構造物層162において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、10時30分の方向である。
【0066】
次に、第3回目の蒸着工程では、矢印S3で示すように、方位角方向として、1時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第1基板10の一方面10sが成す角度θ3は、45°である。その結果、図4に示す第3柱状構造物層163が形成される。かかる第3柱状構造物層163において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、1時30分の方向である。
【0067】
かかる条件によれば、第1回目の蒸着工程での蒸着の方位角方向と、第2回目の蒸着工程での蒸着の方位角方向とが成す角度φ12は90°であり、第1柱状構造物層161と第2柱状構造物層162とにおいて、柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向は90°相違することになる。また、第2回目の蒸着工程での蒸着の方位角方向と、第3回目の蒸着工程での蒸着の方位角方向とが成す角度φ23は90°であり、第2柱状構造物層162と第3柱状構造物層163とにおいて、柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向は90°相違することになる。また、第1回目の蒸着工程での蒸着の方位角方向と、第3回目の蒸着工程での蒸着の方位角方向とが成す角度φ13は180°であり、第1柱状構造物層161と第3柱状構造物層163とにおいて、柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向は180°相違することになる。かかる構成は、第1配向膜16を形成する際、蒸着源を固定する一方、第1基板10を載置したステージを回転させることにより実現することができる。また、上記の構成は、蒸着室に異なる方位角方向に複数の蒸着源を設け、第1基板10を固定したまま、複数の蒸着源から順次、蒸着流を第1基板10に向けて供給することによっても実現することができる。
【0068】
このようにして第1配向膜16を形成すると、図5(c)に示すように、第1回目の蒸着工程では、線T1で示すように、画素電極9aの4辺9a1、9a2、9a3、9a4に沿って発生した段差9dのうち、6時00分の方向に向く辺9a3に沿って発生した段差9d、および9時00分の方向に向く辺9a4に沿って発生した段差9dに蒸着が行われる。また、第2回目の蒸着工程では、線T2で示すように、12時00分の方向に向く辺9a1に沿って発生した段差9d、および9時00分の方向に向く辺9a4に沿って発生した段差9dに蒸着が行われる。また、第3回目の蒸着工程では、線T3で示すように、12時00分の方向に向く辺9a1に沿って発生した段差9d、および3時00分の方向に向く辺9a2に沿って発生した段差9dに蒸着が行われる。それ故、画素電極9aの4辺9a1、9a2、9a3、9a4に沿って発生した段差9dの全てに蒸着が行われる。
【0069】
また、第2配向膜26の形成工程では、図示を省略するが、第1配向膜16の形成工程における方位角度方向を180°反転させた方向から蒸着を行う。より具体的には、第1回目の蒸着工程では、方位角方向として、1時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第2基板20の一方面20sが成す角度は、45°である。その結果、図4に示す第1柱状構造物層261が形成さる。かかる第1柱状構造物層261において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、1時30分の方向である。次に、第2回目の蒸着工程では、方位角方向として、4時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第2基板20の一方面20sが成す角度は、45°である。その結果、図4に示す第2柱状構造物層262が形成される。かかる第2柱状構造物層262において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、4時30分の方向である。次に、第3回目の蒸着工程では、方位角方向として、7時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第2基板20の一方面20sが成す角度は、45°である。その結果、図4に示す第3柱状構造物層263が形成される。かかる第3柱状構造物層263において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、7時30分の方向である。
【0070】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、第1配向膜16の形成工程では、第1基板10の一方面10sに対する法線方向Lから斜めに傾いた方向から配向膜形成材料の蒸着を行い、法線方向Lから斜めに傾いた柱状構造物36からなる柱状構造物層37を形成する。また、本形態では、蒸着を3回行うとともに、蒸着時の傾斜方向の方位角方向を3回の蒸着の各々において相違させる。このため、柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向が3層の柱状構造物層37の各々において相違することになる。このため、画素電極9a等に起因する段差が発生している場合でも、3方向から蒸着が行われるので、1回の蒸着時に陰になる部分には、他の蒸着時に柱状構造物36(柱状構造物層37)が形成される。また、3回の蒸着であれば、段差がいずれの方向に向いていても、3回の蒸着のうちのいずれかの蒸着の際に蒸着が行われる。従って、第1配向膜16を形成する際の下地に、画素電極9a等に起因する段差が存在していても、第1配向膜16を適正に形成することができ、かかる段差付近でも液晶分子51は第1配向膜16によって配向が制御される。その際、段差付近の液晶分子51は、段差以外の広くて平坦な領域に適正に形成された最上層の柱状構造物層37によって適正に配向制御された液晶分子51の影響を受け、適正な方位角方向に向かって適正なプレチルト角をもって配向することになる。それ故、液晶分子51の配向を全域にわたって適正に制御することができる。
【0071】
また、第1配向膜16の形成工程と同様に、第2配向膜26の形成工程でも、蒸着を3回行うとともに、蒸着時の傾斜方向の方位角方向を3回の蒸着の各々において相違させる。このため、柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向が3層の柱状構造物層37の各々において相違することになる。このため、ブラックマトリクス部108b等に起因する段差が発生している場合でも、3方向から蒸着が行われるので、1回の蒸着時に陰になる部分には、他の蒸着時に柱状構造物36(柱状構造物層37)が形成される。また、3回の蒸着であれば、段差がいずれの方向に向いていても、3回の蒸着のうちのいずれかの蒸着の際に蒸着が行われる。従って、第2配向膜26を形成する際の下地に、ブラックマトリクス部108b等に起因する段差が存在していても、第2配向膜26を適正に形成することができ、かかる段差付近でも液晶分子51は第2配向膜26によって配向が制御される。その際、段差付近の液晶分子51は、段差以外の広くて平坦な領域に適正に形成された最上層の柱状構造物層37によって適正に配向制御された液晶分子51の影響を受け、適正な方位角方向に向かって適正なプレチルト角をもって配向することになる。それ故、液晶分子51の配向を全域にわたって適正に制御することができる。
【0072】
また、第1配向膜16および第2配向膜26のいずれにおいても、3層の柱状構造物層37のうち、最も液晶層50側に設けられた第3柱状構造物層163、263の表面形状が配向規制力を発揮することから、本形態では、3層の柱状構造物層37のうち、最も液晶層50側に設けられた第3柱状構造物層163、263の厚さが最も厚く設定されている。また、第3柱状構造物層163の厚さは、第1配向膜16の全体厚の1/2以上であり、第3柱状構造物層263の厚さは、第2配向膜26の全体厚の1/2以上である。このため、第1配向膜16および第2配向膜26の配向規制力を確実に制御することができる。
【0073】
また、第1配向膜16では、第1柱状構造物層161と第2柱状構造物層162とでは、柱状構造物36の方位角方向が90°の角度を成し、第2柱状構造物層162と第3柱状構造物層163とでは、柱状構造物36の方位角方向が90°の角度を成している。また、第2配向膜26でも、同様に、第1柱状構造物層261と第2柱状構造物層262とでは、柱状構造物36の方位角方向が90°の角度を成し、第2柱状構造物層262と第3柱状構造物層263とでは、柱状構造物36の方位角方向が90°の角度を成している。このため、互いに接する柱状構造物層37において柱状構造物36の方位角方向が極端に切り換わらないので、上層側の柱状構造物層37の膜質を制御しやすい。それ故、第1配向膜16および第2配向膜26の配向規制力を確実に制御することができる。
【0074】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の形態2に係る液晶装置100の製造工程のうち、配向膜形成工程を示す説明図であり、図6(a)、(b)、(c)は、斜方蒸着時の基板面に対する仰角を示す説明図、斜方蒸着時の方位角方法を示す説明図、および画素電極9aの周り(段差)に蒸着が行われる様子を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0075】
実施の形態1では、互いに接する柱状構造物層37において、柱状構造物36の方位角方向が90°の角度を成していたが、本形態では、互いに接する柱状構造物層37において、柱状構造物36の方位角方向が120°の角度を成している。
【0076】
より具体的には、図6(a)、(b)に示すように、第1回目の蒸着工程では、矢印S1で示すように、方位角方向として、5時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第1基板10の一方面10sが成す角度θ1は、45°である。その結果、図4に示す第1柱状構造物層161が形成される。かかる第1柱状構造物層161において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、5時30分の方向である。
【0077】
次に、第2回目の蒸着工程では、矢印S2で示すように、方位角方向として、9時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第1基板10の一方面10sが成す角度θ2は、45°である。その結果、図4に示す第2柱状構造物層162が形成される。かかる第2柱状構造物層162において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、9時30分の方向である。
【0078】
次に、第3回目の蒸着工程では、矢印S3で示すように、方位角方向として、1時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第1基板10の一方面10sが成す角度θ3は、45°である。その結果、図4に示す第3柱状構造物層163が形成される。かかる第3柱状構造物層163において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、1時30分の方向である。
【0079】
このようにして第1配向膜16を形成すると、図6(c)に示すように、第1回目の蒸着工程では、線T1で示すように、画素電極9aの4辺9a1、9a2、9a3、9a4に沿って発生した段差9dのうち、3時00分の方向に向く辺9a2に沿って発生した段差9d、および6時00分の方向に向く辺9a3に沿って発生した段差9dに蒸着が行われる。また、第2回目の蒸着工程では、線T2で示すように、12時00分の方向に向く辺9a1に沿って発生した段差9d、および9時00分の方向に向く辺9a4に沿って発生した段差9dに蒸着が行われる。また、第3回目の蒸着工程では、線T3で示すように、12時00分の方向に向く辺9a1に沿って発生した段差9d、および3時00分の方向に向く辺9a2に沿って発生した段差9dに蒸着が行われる。それ故、画素電極9aの4辺9a1、9a2、9a3、9a4に沿って発生した段差9dの全てに蒸着が行われる。
【0080】
ここで、第3回目の蒸着の際、6時00分の方向に向く辺9a3に沿って発生した段差9d、および9時00分の方向に向く辺9a4に沿って発生した段差9dによって陰が発生し、図4に第3柱状構造物層163が形成されないことになる。このような場合でも、第1柱状構造物層161または第2柱状構造物層162が形成されていれば、液晶分子51は、第1柱状構造物層161または第2柱状構造物層162から配向規制力を受けて配向しようとする。その際、陰になった箇所の周りには第3柱状構造物層163から配向規制力を受けて配向した液晶分子51が存在するため、第3柱状構造物層163が適正に形成されなかった部分があっても、全域において液晶分子51は適正に配向することになる。
【0081】
また、第2配向膜26の形成工程では、図示を省略するが、第1配向膜16の形成工程における方位角度方向を180°反転させた方向から蒸着を行う。より具体的には、第1回目の蒸着工程では、方位角方向として、11時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第2基板20の一方面20sが成す角度は、45°である。その結果、図4に示す第1柱状構造物層261が形成される。かかる第1柱状構造物層261において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、11時30分の方向である。次に、第2回目の蒸着工程では、方位角方向として、3時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第2基板20の一方面20sが成す角度は、45°である。その結果、図4に示す第2柱状構造物層262が形成される。かかる第2柱状構造物層262において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は3時30分の方向である。次に、第3回目の蒸着工程では、方位角方向として、7時30分の方向からシリコン酸化膜を蒸着する。その際、蒸着方向と第2基板20の一方面20sが成す角度は、45°である。その結果、図4に示す第3柱状構造物層263が形成され、かかる第3柱状構造物層263において、柱状構造物36は、法線方向Lから斜めに傾いており、その傾斜方向の方位角方向は、7時30分の方向である。
【0082】
このような構成であっても、柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向が3層の柱状構造物層37の各々において相違することになるため、画素電極9a等に起因する段差が存在していても、第1配向膜16を適正に形成することができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。また、第1配向膜16では、第1柱状構造物層161と第2柱状構造物層162とでは、柱状構造物36の方位角方向が120°の角度を成し、第2柱状構造物層162と第3柱状構造物層163とでは、柱状構造物36の方位角方向が120°の角度を成している。また、第2配向膜26でも、同様に、第1柱状構造物層261と第2柱状構造物層262とでは、柱状構造物36の方位角方向が120°の角度を成し、第2柱状構造物層262と第3柱状構造物層263とでは、柱状構造物36の方位角方向が120°の角度を成している。このため、互いに接する柱状構造物層37において柱状構造物36の方位角方向が極端に切り換わらないので、上層側の柱状構造物層37の膜質を制御しやすい。それ故、第1配向膜16および第2配向膜26の配向規制力を確実に制御することができる。
【0083】
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の形態3に係る液晶装置100の配向膜(第1配向膜16および第2配向膜126)の説明図である。なお、図7では、図4と同様、配向膜(第1配向膜16および第2配向膜126)を中心に図示してあり、画素電極9aの下層側に形成された層間絶縁膜等の図示を省略してある。また、図7においては、図4と同様、柱状構造物層37の第3柱状構造物層163、263が厚く形成されていることを図示するにあたって、柱状構造物36を2層に重ねて模式的に図示してあるが、柱状構造物36が連続して厚く形成されている形態で表すこともできる。また、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0084】
実施の形態1、2では、第1配向膜16および第2配向膜26のいずれにおいても、3層の柱状構造物層37により構成したが、本形態では、図7に示すように、第1配向膜16は、3層の柱状構造物層37により構成する一方、第2配向膜26は単層の柱状構造物層37からなる。ここで、第1配向膜16の柱状構造物層163における柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向と、第2配向膜26の柱状構造物層37における柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向とは、180°反転するアンチパラレルの関係にある。例えば、第1配向膜16の第3柱状構造物層163における柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向は1時30分の方位であり、第2配向膜26の柱状構造物層37における柱状構造物36の傾斜方向の方位角方向は7時30分の方位である。かかる構成は、例えば、図2に示すブラックマトリクス部108bに起因する段差が小さい場合や、ブラックマトリクス部108bが形成されていない場合等に適用される。
【0085】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、透過型の液晶装置100に本発明を適用した例を説明したが、反射型の液晶装置100に本発明を適用してもよい。また、上記実施の形態では、柱状構造物層37の多層膜によって配向膜を形成するにあたって、柱状構造物層37を3層としたが、3層以上の多層膜によって配向膜を形成してもよい。
【0086】
[電子機器への搭載例]
(投射型表示装置および光学ユニットの構成例)
図8は、本発明を適用した投射型表示装置および光学ユニットの概略構成図であり、図8(a)、(b)は各々、透過型の液晶装置を用いた投射型表示装置の説明図、および反射型の液晶装置を用いた投射型表示装置の説明図である。
【0087】
図8(a)に示す投射型表示装置110は、液晶パネルとして透過型の液晶パネルを用いた例であるのに対して、図8(b)に示す投射型表示装置1000は、液晶パネルとして反射型の液晶パネルを用いた例である。但し、以下に説明するように、投射型表示装置110、1000はいずれも、光源部130、1021と、光源部130、1021から互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶装置100と、複数の液晶装置100から出射された光を合成して出射するクロスダイクロイックプリズム119、1027(光合成光学系)と、光合成光学系により合成された光を投射する投射光学系118、1029とを有している。また、投射型表示装置110、1000においては、液晶装置100およびクロスダイクロイックプリズム119、1027(光合成光学系)を備えた光学ユニット200が用いられている。
【0088】
(投射型表示装置の第1例)
図8(a)に示す投射型表示装置110は、観察者側に設けられたスクリーン111に光を照射し、このスクリーン111で反射した光を観察する、いわゆる投影型の投射型表示装置である。投射型表示装置110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロイックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117と、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119(合成光学系)と、リレー系120とを備えている。
【0089】
光源112は、赤色光R、緑色光G、および青色光Bを含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光Rを透過させるとともに、緑色光G、および青色光Bを反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光Gおよび青色光Bのうち青色光Bを透過させるとともに緑色光Gを反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光Rと緑色光Gと青色光Bとに分離する色分離光学系を構成する。
【0090】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレーター121および偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレーター121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を、例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0091】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶装置100(赤色用液晶パネル100R)、および第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光Rは、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0092】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶装置100(赤色用液晶パネル100R)は、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光Rを変調し、変調した赤色光Rをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0093】
なお、λ/2位相差板115a、および第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115a、および第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0094】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光Gを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。かかる液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶装置100(緑色用液晶パネル100G)、および第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光Gは、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、液晶装置100(緑色用液晶パネル100G)は、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光Gを変調し、変調した緑色光Gをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0095】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光Bを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。かかる液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶装置100(青色用液晶パネル100B)、および第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光Bは、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0096】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶装置100(青色用液晶パネル100B)は、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光Bを変調し、変調した青色光Bをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。なお、λ/2位相差板117a、および第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0097】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光Bの光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光Bをリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光Bを液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0098】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光Bを反射して緑色光Gを透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光Rを反射して緑色光Gを透過する膜である。従って、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117の各々で変調された赤色光Rと緑色光Gと青色光Bとを合成し、投射光学系118に向けて出射するように構成されている。
【0099】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射トランジスター特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光R、および青色光Bをs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光Gをp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0100】
(投射型表示装置の第2例)
図8(b)に示す投射型表示装置1000は、光源光を発生する光源部1021と、光源部1021から出射された光源光を赤色光R、緑色光G、および青色光Bの3色の色光に分離する色分離導光光学系1023と、色分離導光光学系1023から出射された各色の光源光によって照明される光変調部1025とを有している。また、投射型表示装置1000は、光変調部1025から出射された各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム1027(合成光学系)と、クロスダイクロイックプリズム1027を経た像光をスクリーン(不図示)に投射する投射光学系1029とを備えている。
【0101】
かかる投射型表示装置1000において、光源部1021は、光源1021aと、一対のフライアイ光学系1021d、1021eと、偏光変換部材1021gと、重畳レンズ1021iとを備えている。本形態においては、光源部1021は、放物面からなるリフレクタ1021fを備えており、平行光を出射する。フライアイ光学系1021d、1021eは、システム光軸と直交する面内にマトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材1021gは、フライアイ光学系1021eから出射した光源光を、例えば図面に平行なp偏光成分のみに変換して光路下流側光学系に供給する。重畳レンズ1021iは、偏光変換部材1021gを経た光源光を全体として適宜収束させることにより、光変調部1025に設けた複数の液晶装置100を各々均一に重畳照明可能とする。
【0102】
色分離導光光学系1023は、クロスダイクロイックミラー1023aと、ダイクロイックミラー1023bと、反射ミラー1023j、1023kとを備える。色分離導光光学系1023において、光源部1021からの略白色の光源光は、クロスダイクロイックミラー1023aに入射する。クロスダイクロイックミラー1023aを構成する一方の第1ダイクロイックミラー1031aで反射された赤色光Rは、反射ミラー1023jで反射されダイクロイックミラー1023bを透過して、入射側偏光板1037r、p偏光を透過させる一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032r、および光学補償板1039rを介して、p偏光のまま、液晶装置100(赤色用液晶パネル100R)に入射する。
【0103】
また、第1ダイクロイックミラー1031aで反射された緑色光Gは、反射ミラー1023jで反射され、その後、ダイクロイックミラー1023bでも反射されて、入射側偏光板1037g、p偏光を透過させる一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032g、および光学補償板1039gを介して、p偏光のまま、液晶装置100(緑色用液晶パネル100G)に入射する。
【0104】
これに対して、クロスダイクロイックミラー1023aを構成する他方の第2ダイクロイックミラー1031bで反射された青色光Bは、反射ミラー1023kで反射されて、入射側偏光板1037b、p偏光を透過する一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032b、および光学補償板1039bを介して、p偏光のまま、液晶装置100(青色用液晶パネル100B)に入射する。なお、光学補償板1039r、1039g、1039bは、液晶装置100への入射光および出射光の偏光状態を調整することで、液晶層の特性を光学的に補償している。
【0105】
このように構成した投射型表示装置1000では、光学補償板1039r、1039g、1039bを経て入射した3色の光は各々、各液晶装置100において変調される。その際、液晶装置100から出射された変調光のうち、s偏光の成分光は、ワイヤーグリッド偏光板1032r、1032g、1032bで反射し、出射側偏光板1038r、1038g、1038bを介してクロスダイクロイックプリズム1027に入射する。クロスダイクロイックプリズム1027には、X字状に交差する第1誘電体多層膜1027aおよび第2誘電体多層膜1027bが形成されており、一方の第1誘電体多層膜1027aは赤色光Rを反射し、他方の第2誘電体多層膜1027bは青色光Bを反射する。従って、3色の光は、クロスダイクロイックプリズム1027において合成され、投射光学系1029に出射される。そして、投射光学系1029は、クロスダイクロイックプリズム1027で合成されたカラーの像光を、所望の倍率でスクリーン(図示せず。)に投射する。
【0106】
(他の投射型表示装置)
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【0107】
(他の電子機器)
本発明を適用した液晶装置100については、上記の電子機器の他にも、携帯電話機、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の電子機器において直視型表示装置として用いてもよい。
【符号の説明】
【0108】
9a・・画素電極、10・・第1基板、16・・第1配向膜、20・・第2基板、21・・共通電極、26・・第2配向膜、36・・柱状構造物、37・・柱状構造物層、100・・液晶装置、110、1000・・投射型表示装置、161、261・・第1柱状構造物層、162、262・・第2柱状構造物層、163、263・・第3柱状構造物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面側に複数の画素電極および第1配向膜が設けられた第1基板と、
該第1基板に対向する一方面側に共通電極および第2配向膜が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、
を有する液晶装置であって、
前記第1配向膜および前記第2配向膜のうち、少なくとも前記第1配向膜は、前記第1基板の基板面に対する法線方向から斜めに傾いた柱状構造物からなる柱状構造物層が3層以上積層された積層膜からなり、
前記柱状構造物の傾斜方向は、前記基板面の面内方向に沿った方位角方向が前記3層以上の柱状構造物層の各々において相違することを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の層厚が最大であることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の層厚は、前記積層膜の膜厚全体の1/2以上の厚さであることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記積層膜は、前記3層以上の前記柱状構造物層として、第1柱状構造物層、該第1柱状構造物層に対して前記液晶層側に積層された第2柱状構造物層、および前記第2柱状構造物層に対して前記液晶層側に積層された第3柱状構造物層を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第1柱状構造物層と前記第2柱状構造物層とは、前記方位角方向が90°の角度を成し、
前記第2柱状構造物層と前記第3柱状構造物層とは、前記方位角方向が90°の角度を成していることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第1柱状構造物層と前記第2柱状構造物層とは、前記方位角方向が120°の角度を成し、
前記第2柱状構造物層と前記第3柱状構造物層とは、前記方位角方向が120°の角度を成していることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第1配向膜および前記第2配向膜の双方が前記積層膜からなり、
前記第1配向膜を構成する前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の前記方位角方向と、前記第2配向膜を構成する前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の前記方位角方向とは、アンチパラレルであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記第1配向膜は、前記3層以上の柱状構造物層からなり、
前記第2配向膜は、単層の前記柱状構造物層からなり、
前記第1配向膜を構成する前記3層以上の柱状構造物層のうち、最も前記液晶層側に設けられた柱状構造物層の前記方位角方向と、前記第2配向膜を構成する前記柱状構造物層の前記方位角方向とは、アンチパラレルであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記柱状構造物は、前記基板面に対して45°の角度から成膜してなることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項10】
前記液晶層は、負の誘電率異方性を備えた液晶組成物からなることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の液晶装置を備えた投射型表示装置であって、
前記液晶装置に照射される照明光を出射する光源部と、前記液晶装置により変調された光を投射する投射光学系と、を有していることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項12】
一方面側に複数の画素電極および第1配向膜が設けられた第1基板と、
該第1基板に対向する一方面側に共通電極および第2配向膜が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、
を有する液晶装置の製造方法であって、
前記第1配向膜および前記第2配向膜のうち、少なくとも前記第1配向膜の形成工程では、前記第1基板の基板面に対する法線方向から斜めに傾いた方向から配向膜形成材料の蒸着を3回以上行い、
前記蒸着時の傾斜方向の前記基板面の面内方向に沿った方位角方向を前記3回以上の蒸着の各々において相違させることを特徴とする液晶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−25067(P2013−25067A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159617(P2011−159617)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】