説明

液晶装置、液晶装置の製造方法

【課題】剛性を低下させずに照明光の照射による過熱が抑制された液晶装置を得る。
【解決手段】透明性を有する第2の基板11と、第2の基板に対向する第1の基板10と、第1の基板10と第2の基板11との間に挟持された液晶層24と、第1の基板10の液晶層24側に形成された反射層16と、を備える液晶装置1であって、第1の基板10の液晶層24側とは反対側の面には、第1の基板10の厚さが厚い第1の領域51と第1の基板10の厚さが薄い第2の領域52とからなる段差が形成されており、第2の領域52には第1の基板10の形成材料よりも熱伝導性が高い材料からなる放熱手段6が配置されていることを特徴とする液晶装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、液晶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶プロジェクタ等の電子機器に用いられる液晶装置として、反射型液晶装置が注目されている。かかる液晶装置は、画素電極が反射型であるため、画素電極の下側にトランジスタ等のスイッチング素子を設けることができ、高解像度と高輝度の両立が可能という長所を有する一方で、表示面側から強い照明光が照射されることによる過熱という問題がある。かかる過熱を抑制するために、液晶装置に用いられる石英基板等の基板厚の低減、あるいは、該基板の裏面の全域に放熱板を装着する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−319853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述の方法は、基板の剛性の低下により液晶層にストレス等が生じ、表示品質の劣化の原因となり得るという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]透明性を有する第2の基板と、上記第2の基板に対向する第1の基板と、上記第1の基板と上記第2の基板との間に挟持された液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された反射層と、を備える液晶装置であって、上記第1の基板の上記液晶層側とは反対側の面には、上記第1の基板の厚さが厚い第1の領域と上記第1の基板の厚さが薄い第2の領域とからなる段差が形成されており、該第2の領域には上記第1の基板の形成材料よりも熱伝導性が高い材料からなる放熱手段が配置されていることを特徴とする液晶装置。
【0007】
このような構成であれば、第1の基板の剛性の低下を抑制しつつ放熱機能を向上させることができる。したがって、液晶装置の耐久性等を損わずに表示品質を向上できる。
【0008】
[適用例2]上述の液晶装置であって、上記第2の領域は周囲を上記第1の領域で囲まれた領域であることを特徴とする液晶装置。
【0009】
このような構成であれば、液晶装置を構成する基板の剛性の低下をより一層抑制できる。
【0010】
[適用例3]上述の液晶装置であって、上記熱伝導性が高い材料は金属であることを特徴とする液晶装置。
【0011】
金属は耐熱性と熱伝導性が高いため、第2の領域における上記第1の基板の厚さをより一層薄くできる。したがって、このような構成の液晶装置であれば、放熱機能及び表示品質をより一層向上させることができる。
【0012】
[適用例4]上述の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。
【0013】
このような電子機器であれば、該液晶装置に対してより強い光を照射できる。したがって、表示品質をより一層向上できる。
【0014】
[適用例5]透明性を有する第2の基板と、上記第2の基板に対向する第1の基板と、上記第1の基板と上記第2の基板との間に挟持された液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された反射層と、を備える液晶装置の製造方法であって、上記第1の基板の上記液晶層側とは反対側の面に凹部を形成する第1の工程と、上記凹部に上記第1の基板の形成材料よりも熱伝導性が高い放熱材料を配置する第2の工程と、を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0015】
このような製造方法であれば、第1の基板の形成材料を、局所的に熱伝導性がより高い材料に置き換えることができる。したがって、剛性の低下を抑制しつつ放熱性が向上した液晶装置を得ることができる。
【0016】
[適用例6]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第2の基板と上記第1の基板とはシール材を介して貼り合わされており、上記第1の工程は、上記第1の基板における上記シール材と平面視で重なる領域の内側の領域を所定の深さまでエッチングして上記凹部を形成する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0017】
このような製造方法であれば、上述のエッチングによる第1の基板の剛性の低下を抑制できる。
【0018】
[適用例7]上述の液晶装置の製造方法であって、上記放熱材料は金属であり、上記第2の工程は、上記放熱材料を上記凹部に接着する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0019】
このような製造方法であれば、該金属板により第1の基板の剛性を向上できる。したがって、剛性の低下をより一層抑制しつつ、放熱性が向上した液晶装置を得ることができる。
【0020】
[適用例8]上述の液晶装置の製造方法であって、上記放熱材料は金属であり、上記第2の工程は、溶融金属を上記凹部に流し込み金属層を形成する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0021】
このような製造方法であれば、金属材料を任意の形状にできる。したがって、上述の一部の領域の平面形状が複雑である場合においても剛性の低下を抑制と放熱性が向上とを両立させた液晶装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照し、液晶装置、液晶装置の製造方法、及び電子機器の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる液晶装置1の表示領域100における各素子、配線等の等価回路図である。なお、液晶装置1はアクティブマトリクス方式の反射型液晶装置であり、後述するようにプロジェクタのライトバルブとして用いられるものである。
【0024】
図示するように、液晶装置1の表示領域100においては、図示しない走査線駆動回路から延在する走査線12と、図示しないデータ線駆動回路から延在するデータ線14と、が交差するように形成されている。画素4は、走査線12とデータ線14との交差に対応して設けられており、画素4ごとに反射層としての画素電極16と、画素電極16への通電制御を行うためのスイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)20と、が形成されている。TFT20の3つの電極の内、ソース電極にはデータ線14が、ゲート電極には走査線12が、ドレイン電極には画素電極16が、夫々電気的に接続されている。また、走査線12と略平行に延在する容量線15が形成されており、TFT20のドレイン電極と容量線15との間に蓄積容量15aが形成されている。
【0025】
TFT20のゲート電極には、走査線12を介して、走査線駆動回路から所定のタイミングで走査信号G1、G2、…、Gnが、線順次に印加される。TFT20が走査信号G1、G2、…、Gnの入力により一定期間だけオン状態となり、データ線14から供給される画像信号S1、S2、…、Smが所定のタイミングで画素電極16に書き込まれる。画素電極16を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Smは、画素電極16と液晶層24(図3参照)を介して対向する対向電極18(図3参照)との間で一定期間保持される。
【0026】
図2は、液晶装置1の外観を示す斜視図である。液晶装置1は、枠状のシール材22を介して対向するように貼り合わされた、第1の基板としての素子基板10と第2の基板としての対向基板11との一対の基板を有している。素子基板10と対向基板11とシール材22とにより形成された空間には、液晶層24が封入されている。対向基板11の液晶層24とは反対側の面には、偏光板26が配置されている。素子基板10は、対向基板11より大きく、一部が対向基板11に対して張り出した状態で貼り合わされている。この張り出した部分には、液晶層24を駆動するためのドライバ回路が設けられている。
【0027】
図3は、液晶装置1の概略構成を示す模式断面図である。素子基板10と対向基板11との間に挟持された液晶層24は、液晶分子(不図示)を含有している。そして、該液晶分子は誘電異方性が正のポジ型の液晶分子である。したがって、電圧印加時には電界方向に沿って配向し、非印加時には後述する配向膜の配向方向に沿って配向する。対向基板11は透明性が必要であるため、透明材料であるガラス、あるいは石英等で形成されている。素子基板10は透明性は必要ではないが、剛性及び絶縁性が必要であり、対向基板11と同じくガラスあるいは石英で形成されている。
【0028】
素子基板10の液晶層24側には、TFT20と反射層としての画素電極16とが形成されている。画素電極16はAl(アルミニウム)等の導電性と反射性を有する材料で形成されている。なお、画素電極16をITO(酸化インジウム・錫合金)等の透明導電材料で形成し、該画素電極と素子基板10との間に反射層を別途形成してもよい。TFT20と画素電極16との間には層間絶縁層30が形成されており、TFT20と画素電極16とは該層間絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して導通している。そして、画素電極16の液晶層24側の、少なくとも平面視で表示領域100(図1参照)と重なる領域には第1の配向膜44が形成されている。なお、素子基板10の液晶層24側の面から該第1の配向膜までの構成要素を総称して、以下、素子層35と称する。
【0029】
素子基板10の液晶層24側の反対側の面には、放熱手段としての金属板6が配置されている。ここで、該反対側の面は、第1の領域51と第2の領域52とに区画されている。第2の領域52は平面視で(枠状の)シール材22の内側の領域、すなわち平面視でシール材22に囲まれた領域である。したがって、第1の領域51は、平面視でシール材22と重なる領域と平面視でシール材22の外側の領域とを合わせた領域である。ここで、第2の領域52は、上述の反対側の面から所定の深さまでエッチングされており、凹部53が形成されている。そして、金属板6は該凹部内に接着層8により接着されている。なお、凹部53の深さは素子基板10の板厚の略80%が好ましい。したがって、素子基板10の板厚が1.2mmである場合、凹部53の深さは略1.0mmとなる。
【0030】
対向基板11の液晶層24側には、遮光層28が形成されている。遮光層28は、平面視で、画素電極16が形成されていない領域に形成されている。画素電極16が平面視でマトリクス状の形成されている場合、遮光層28は平面視で格子状となる。そして、対向基板11の液晶層24側の少なくとも表示領域100には、遮光層28を覆うように対向電極18が形成されている。対向電極18は透明性が必要であり、上述のITOで形成されている。そして、対向電極18の液晶層24側には第2の配向膜46が形成されている。また、対向基板11の液晶層24側の反対側の面には偏光板26が配置されている。該偏光板の偏光方向は、第2の配向膜46の配向方向と略同一である。対向基板11の液晶層24側の面から第2の配向膜46までの構成要素を総称して、以下、対向層36と称する。
【0031】
第1の配向膜44の配向方向と第2の配向膜46の配向方向とは互いに直交している。したがって、画素電極16と対向電極18との間に電圧が印加されていない状態では液晶層24に含有される液晶分子は90度ねじれるツイスト配向となる。一方、上記一対の電極間に電圧が印加されている場合、該液晶分子は素子基板10の基板面に対して垂直方向に配向される。液晶装置1は、画素4毎に画素電極16と対向電極18との間に印加する電圧を調整することにより液晶層24に含有されるの液晶分子の配向を制御して、画素電極16で反射される外光(太陽光等の、液晶装置の外部から照射される光)の比率を調節することにより、表示領域100(図2参照)に画像を形成する。
【0032】
ここで、上述したように、画素電極16に照射される外光の一部は、該画素電極に吸収されて熱に変わり、さらに素子基板10を加熱する。本実施形態にかかる液晶装置1は、平面視でシール材22の内側、すなわち画素電極16が形成されている領域を全て含む領域に上述の凹部53が形成されており、該凹部内に金属板6が配置されている。素子基板10の厚さは該凹部では元の厚さの略20%まで薄くなっているため、上述の熱は金属板6に速やかに伝わる。そして、金属板6は素子基板10の形成材料であるガラスよりも熱伝導性が高いため、かかる熱は金属板6の素子基板10とは反対側の面から外部に放散される。したがって、液晶装置1は従来の液晶装置と比べて使用時、すなわち外光が照射されているときの温度上昇が抑制される。したがって、液晶層24の温度上昇が抑制され、安定した画像表示が可能となる。
【0033】
また、液晶装置1は金属板6による放熱の効果を、液晶装置の剛性を低減することなく得ている。単に放熱能力を向上させるためには、素子基板10を全面的に薄くして金属板6を配置(接着)する方法も有り得る。しかし、かかる方法によれば液晶装置全体の剛性が低下するため、上述の一対の基板間の間隔すなわちセル厚(液晶層の層厚)を一定に保つことが困難となり、画像表示能力を劣化させ得る。
【0034】
液晶装置1は、平面視で周囲を枠状のシール材22で囲まれた領域のみ、すなわち第2の領域52のみ素子基板10をエッチングして板厚を低減して凹部53を形成している。したがって、該凹部の周囲の領域すなわち第1の領域51では、素子基板10の板厚は初期の厚さのままで保たれており、かかる枠状の部分で液晶装置全体の剛性を保つことができる。したがって、本実施形態の液晶装置1であれば、セル厚の変動による表示品質の低下及び耐久性の低下等を抑制しつつ液晶層24の過熱を抑制することができ、液晶装置としての品質を向上できる。
【0035】
なお、金属板6の形成材料は熱伝導性が高い材料が好ましい。したがって、Al、Cu(銅)等で形成することが好ましい。また、金属板6は凹部53内に完全に埋め込まれている必要はなく、素子基板10の液晶層24側の反対側の、第1の領域51における面よりも盛り上がっていてもよい。また、接着層8の形成材料は熱伝導性に優れたシリコン系の材料が好ましい。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態にかかる液晶装置2の概略構成を示す模式断面図である。本実施形態にかかる液晶装置2は、放熱手段として金属板6に替わって金属層7が配置されていることが特徴である。そして、液晶装置2は、かかる放熱手段の差異を除いては、液晶装置1と略同一の構成を有している。そこで、第1の実施形態の液晶装置1の説明における図1〜図2に相当する図は記載せず、液晶装置1の説明における図3に相当する図、すなわち模式断面図のみを示す。そして、図4においては、図3に示す構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略する。
【0037】
上述したように、本実施形態にかかる液晶装置2は、凹部53内に金属層7が配置されている。該金属層は溶融金属を流し込むことで形成できる。したがって、接着層8は不要であり、素子基板10に直接接触するように形成できる。したがって、金属層7は素子基板10との間の熱伝導性が向上しており、画素電極16において生じた熱をより一層容易に外部に放散できる。
【0038】
また、凹部53の平面形状が矩形ではなく複雑な形状であっても、容易に放熱手段を形成できる。したがって、凹部53の平面形状、あるいは液晶装置の平面形状の自由度が向上する。なお、金属層7の形成材料は低融点であることが必要であり、その他の条件すなわち熱伝導性が高いこと等は上述の金属板6と同様である。したがって、金属板6と同様にAl等を用いることが好ましい。
【0039】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、図5(a)及び図5(b)を用いて述べる。図5(a)は、第2の実施形態の液晶装置2の説明における図4に相当する図、すなわち模式断面図であり、図5(b)は、液晶装置3を素子基板10側から見た模式平面図である。
本実施形態にかかる液晶装置3は、放熱手段としての金属層7の配置の態様に特徴がある。そして、液晶装置3は、かかる金属層7の態様を除いては、液晶装置2と略同一の構成を有している。そこで、回路図等は記載せず、上述の模式断面図と模式平面図とでのみ説明する。そして、図5(a)においては、図4に示す構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略する。
【0040】
図5(a)に示すように、液晶装置3に形成されている凹部53の深さ、及び液晶装置3が備えている金属層7の厚さは、第2の実施形態の液晶装置2が備える該深さ及び該厚さと略同一である。したがってシール材22で囲まれた領域内にも第1の領域51が形成されており、該領域により凹部53が分割されている点で異なっている。
【0041】
図5(b)に示すように、液晶装置3における第1の領域51は、素子基板10の外縁部と共に、シール材22で囲まれた矩形の領域、すなわち平面視で表示領域100(図2参照)と重なる領域にも形成されている。上述の表示領域100と重なる領域では、第1の領域51は交差するように形成されている。したがって凹部53、すなわち金属層7が形成されている領域(図5(a)に示す第2の領域52)は、シール材22で囲まれた矩形の領域内に4分割されるように形成されている。
【0042】
上述したように、シール材22で囲まれた矩形の領域は照射光により温度が上昇する領域である。かかる領域内に第1の領域51を形成することは、上述の温度の上昇を抑制する機能を若干低下させ得る。一方で、かかる態様であれば、凹部53を形成から金属層7を形成するまでの間の素子基板10の剛性を向上できる。したがって、本実施形態にかかる液晶装置3は、かかる剛性の向上により金属層7の形成等を容易に行うことができ、信頼性当も向上している。なお、第1の領域51は、上述のシール材22で囲まれた矩形の領域内に複数本形成することもできる。
【0043】
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態として、液晶装置の製造方法について図面を用いて説明する。図6(a)〜(e)は、金属板6を備える、第1の実施形態の液晶装置1と同様の液晶装置の製造方法を示す工程断面図である。図6においては、TFT20等の形成工程は省略し、凹部53の形成工程と金属板6の配置工程を主に示している。また、上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には、同一の符号を付与している。以下、各工程について順に説明する。
【0044】
まず、図6(a)に示すように、素子層35が形成された素子基板10の液晶層24側の面にシール材22を形成する。素子層35が形成される領域は、将来的に表示領域100(図2参照)となる領域と略一致する。そして、シール材22は該表示領域を囲むように枠状に形成される。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、素子基板10と、対向層36が形成された対向基板11と、を貼り合わせる。シール材22により、上述の一対の基板は所定の間隔を空けて対向し、該一対の基板とシール材22とにより空間が生じる。そして、該空間に液晶分子を含有する液材を充填して液晶層24を形成する。
【0046】
次に、図6(c)に示すように、素子基板10の外側の面、すなわち液晶層24側の反対側の面の第1の領域51に、レジスト層32を形成する。レジスト層32は、シール材22の液晶層24側とは反対側の面、及び素子基板10の端面と対向基板11の端面にも形成する。本実施形態では平面視で、素子層35とシール材22との間が若干空いており、平面視でシール材22とも素子層35とも重ならない環状の領域が生じている。かかる環状の領域には放熱手段としての金属板6を配置する必要性が少ない。したがって、かかる環状の領域は第1の領域51に含めることが好ましい。
【0047】
レジスト層32は一般的なフォトレジストに限定されず、ガラスあるいは石英のエッチングに用いられるフッ酸系のエッチング液に耐性がある材料であれば用いることができる。また、形成方法もフォト工程に限定される必要はない。印刷法、あるいはテープ状の材料を貼付する手法を用いることもできる。レジスト層32は、対向基板11の液晶層24側の反対側の面の全域にも形成される。かかるレジスト層はパターニングを必要としないため、スピンコート法で形成することができる。さらには、液晶装置全体をレジストに浸した後、第2の領域52の該レジストをフォト工程により除去することも可能である。
【0048】
次に、図6(d)に示すように、素子基板10の第2の領域52を所定の深さまでエッチングして、凹部53を形成する。そして、レジスト層32を除去する。
【0049】
次に、図6(e)に示すように、凹部53内に図示しない接着層8(図3参照)を形成し、該接着層で放熱手段としての金属板6を接着する。そして、対向基板11の液晶層24側の反対側の面に、偏光板26を配置する。以上の工程により上述の第1の実施形態にかかる液晶装置を形成できる。
【0050】
なお、本図に示す実施形態では、単体の液晶装置に対応する大きさの素子基板10を用いる場合を示しているが、大型の素子基板10を用いて複数の液晶装置をマトリクス状に形成した後、個々の液晶装置に分割する方法も可能である。また、対向基板11側のレジスト層32は必須ではない。素子基板10のみエッチングに接触させる手法であれば、かかる対向基板11側のレジスト層32を形成することなく凹部53を形成できる。
【0051】
次に、上述の第1〜第3の実施形態にかかる反射型液晶装置のいずれかを電子機器としての投射型表示装置(プロジェクタ)におけるライトバルブに適用した例について説明する。図7は、投射型表示装置101の概略構成を示す図である。なお、以下の記載においては図3も参照する。
【0052】
図7に示すように、光源ランプ200から射出された光(概ね白色光)は、クロスダイクロイックミラーからなる色分解ミラー201により、三原色光、すなわち青色光Bと赤色光Rと緑色光Gとに分光される。また、上述の各光はミラー202を介して偏光ビームスプリッタ203に入射され、偏光ビームスプリッタ203によりS偏光が色光変調用のライトバルブ5(B,R,G)に入射される。なお、ライトバルブ5に付記されたアルファベットは、入射される色光の色を表わしている。
【0053】
入射された色光は、各ライトバルブ5(R,G,B)の対向基板11側から入射し、各画素電極16により反射され、再び液晶層24を透過して射出される。液晶層24を透過する際に、画素電極16と対向電極18との間に印加されていた実効電圧に応じて、入射されたS偏光の偏光軸がP偏光軸とS偏光軸との間で各画素4(図1参照)毎に回転制御される。偏光ビームスプリッタ203ではライトバルブ5(B,R,G)から戻ってきたS偏光成分は反射しP偏光成分を透過する。従って、各偏光ビームスプリッタ203からは、ライトバルブ5(B,R,G)から射出された光の偏光軸の回転程度に応じた光量の色光が透過してくる。この光量が、各色光に割り当てられた階調レベルに応じた光量(透過率)に相当する。
【0054】
各偏光ビームスプリッタ203を透過した色光は、色合成プリズム204内にX字状に形成された青色光反射・赤色光反射の波長選択反射層により、青色光Bと赤色光Rが反射され、緑色光Gが透過されて、カラー光が合成されて射出される。このカラー光を投射レンズ205によりスクリーン206に投射して該スクリーン上に画像を表示する。
【0055】
このような構成において、投射型表示装置101のライトバルブ5として用いられている反射型液晶装置は、素子基板10の液晶層24の反対側に配置された金属板6により装置全体の温度上昇が抑制されるため、液晶層24等の温度の温度変動を抑制できる。したがって、投射型表示装置101の画像表示の安定性を向上できる。また、冷却のための風速及び風量等を低減できるため、投射型表示装置101の騒音低減やサイズの縮小も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態にかかる液晶装置の等価回路図。
【図2】第1の実施形態にかかる液晶装置の外観を示す斜視図。
【図3】第1の実施形態にかかる液晶装置の概略構成を示す模式断面図。
【図4】第2の実施形態にかかる液晶装置の概略構成を示す模式断面図。
【図5】第3の実施形態にかかる液晶装置の概略構成を示す模式図。
【図6】第4の実施形態としての液晶装置の製造工程を示す工程断面図。
【図7】電子機器としての投射型表示装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0057】
1…液晶装置、2…液晶装置、4…画素、5…ライトバルブ、6…放熱手段としての金属板、7…放熱手段としての金属層、8…接着層、10…第1の基板としての素子基板、11…第2の基板としての対向基板、12…走査線、14…データ線、15…容量線、15a…蓄積容量、16…反射層としての画素電極、18…対向電極、20…TFT、22…シール材、24…液晶層、26…偏光板、28…遮光層、30…層間絶縁層、32…レジスト層、35…素子層、36…対向層、44…第1の配向膜、46…第2の配向膜、51…第1の領域、52…第2の領域、53…凹部、100…表示領域、101…投射型表示装置、200…光源ランプ、201…色分解ミラー、202…ミラー、203…偏光ビームスプリッタ、204…色合成プリズム、205…投射レンズ、206…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する第2の基板と、
前記第2の基板に対向する第1の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された反射層と、
を備える液晶装置であって、
前記第1の基板の前記液晶層側とは反対側の面には、前記第1の基板の厚さが厚い第1の領域と前記第1の基板の厚さが薄い第2の領域とからなる段差が形成されており、該第2の領域には前記第1の基板の形成材料よりも熱伝導性が高い材料からなる放熱手段が配置されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、前記第2の領域は周囲を前記第1の領域で囲まれた領域であることを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液晶装置であって、
前記熱伝導性が高い材料は金属であることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
透明性を有する第2の基板と、
前記第2の基板に対向する第1の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された反射層と、
を備える液晶装置の製造方法であって、
前記第1の基板の前記液晶層側とは反対側の面に凹部を形成する第1の工程と、
前記凹部に前記第1の基板の形成材料よりも熱伝導性が高い放熱材料を配置する第2の工程と、
を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第2の基板と前記第1の基板とはシール材を介して貼り合わされており、
前記第1の工程は、前記第1の基板における前記シール材と平面視で重なる領域の内側の領域を所定の深さまでエッチングして前記凹部を形成する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記放熱材料は金属であり、
前記第2の工程は、前記放熱材料を前記凹部に接着する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記放熱材料は金属であり、
前記第2の工程は、溶融金属を前記凹部に流し込み金属層を形成する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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