説明

液晶装置および電子機器

【課題】 駆動電圧の上昇を生じることなく、また焼き付きの発生率を低減することが可能で、さらにはプロジェクタ等の光変調装置に用いた場合にも劣化が生じ難い配向層を備えた液晶装置を提供する。
【解決手段】 本発明の液晶装置は、一対の基板10,20間に液晶層50を挟持してなる液晶装置であって、前記一対の基板10,20の各液晶層50側に配設された電極9,23と、これら電極9,23の少なくとも一方の液晶層50側に配設された配向層11(21)とを備え、前記配向層11(21)が、自身の表面形状によって液晶分子の配向を規制するものであり、且つ透光性の導電材料にて構成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタ等の投射型表示装置における光変調装置として、液晶装置が用いられている。液晶装置は、対向配置された一対の基板に液晶層が挟持されて構成されている。この一対の基板の内側には、液晶層に電圧を印加するための電極が形成されている。また、この電極の内側には、電圧無印加時において液晶分子の配列を制御する配向膜が形成されている。この配向膜として、ポリイミド膜の表面にラビング処理を施したものが用いられている。そして、電圧無印加時と電圧印加時との液晶分子の配列変化に基づいて、液晶装置に画像表示が行われる構成となっている。
【0003】
しかしながら、このようなポリイミドからなるラビング配向膜を備えた液晶装置を液晶プロジェクタの光変調装置に採用した場合には、光源から照射される強い光や熱によってラビング配向膜が次第に分解されることがあった。そして長期間の使用後には、電圧無印加時に液晶分子を所望のプレチルト角に配列することができなくなるなど液晶分子の配向制御機能が低下して、液晶プロジェクタの表示品質が悪化することがあった。
【0004】
そこで、ポリイミドのラビング配向膜に代えて、電極の表面に凹凸を形成して液晶分子の配向制御を行う構成が、特許文献1に開示されている。この構成は、電極の表面に多数の平行な溝が形成されたもので、この溝に沿って、多数の鋸歯状の凸部が繰り返し形成されたものである。そして、液晶分子は、各溝に沿って一軸方向に配向され、また各鋸歯状凸部に沿ってプレチルト角を持つようになっている。
【特許文献1】特開平9−152612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した構成では、フォトレジストをホログラフィック露光する方法や、光硬化性化合物に形状を型により転写する方法等により凹凸を形成しているが、これらの樹脂材料で配向膜を形成した場合、配向膜の絶縁性が高いため、当該液晶装置において駆動電圧の上昇や焼付き等の現象が生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、駆動電圧の上昇を生じることなく、また焼き付きの発生率を低減することが可能で、さらにはプロジェクタ等の光変調装置に用いた場合にも劣化が生じ難い配向層を備えた液晶装置の提供を目的としている。また、このような液晶装置を簡便に製造する方法と、該液晶装置を備えた電子機器を提供することを異なる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の液晶装置は、一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶装置であって、前記一対の基板の各液晶層側に配設された電極と、これら電極の少なくとも一方の液晶層側に配設された配向層とを備え、前記配向層が、自身の表面形状によって液晶分子の配向を規制するものであり、且つ透光性の導電材料にて構成されてなることを特徴とする。
【0008】
このような液晶装置によると、配向層が導電材料にて構成されてなるため、駆動電圧が上昇することなく、また焼き付きの発生も防止ないし抑制することが可能となる。そして、配向層を導電性の金属若しくは金属化合物にて構成すれば、従来のようなポリイミドのラビング配向膜に比して、用いる光源によらず、耐久性に優れた配向層を構成することが可能となる。具体的には、配向層として電極よりも導電性の低い金属若しくは金属化合物、例えばインジウム錫酸化物からなるものを採用することができる。なお、本発明の液晶装置が具備する配向層は、自身の表面形状に沿って液晶分子を配向規制するものであるが、特にその表面にラビング処理を施すと、ラビング方向に沿って液晶分子を配向させ、配向層の表面形状に沿ってプレチルトを付与することが可能となる。また、特に本発明の液晶装置が具備する配向層は、下地に形成される電極と同様のパターンを具備していることが好ましい。
【0009】
本発明の液晶装置の配向層は、その表面に複数の傾斜面を所定パターンにて具備してなるものとすることができる。或いは、その表面に所定の周期で並列してなる複数の凸条を具備してなり、該凸条は、それぞれ傾斜角が異なり且つ当該凸条の延在方向に延びる2つの傾斜面を具備してなるものとすることもできる。この場合、傾斜面に沿って液晶分子を配向規制することが可能となり、上述の通りラビング処理を施すことで、該ラビング方向に液晶分子を配向させ、且つ傾斜面に沿ってプレチルトを付与することが可能となる。なお、ラビング方向は傾斜方向に沿って、或いは凸条の延在方向と交わる方向に沿って施すことができる。
【0010】
さらに、本発明の液晶装置の配向層は、その表面に所定の周期で並列してなる複数の凸条を具備してなり、該凸条の延在方向と交わる方向の断面形状が不等辺の鋸歯状であるものとすることができる。この場合も、凸条の鋸歯形状に沿って液晶分子を配向規制することが可能となり、上述の通りラビング処理を施すことで、該ラビング方向に液晶分子を配向させ、且つ傾斜面に沿ってプレチルトを付与することが可能となる。
【0011】
また、前記配向層は、その表面に所定の周期で並列してなる複数の凸条と、各凸条の間に配設されてなる溝条とを具備してなり、前記凸条の延在方向と平行な方向の断面形状が、複数の不等辺の鋸歯状物が所定の周期で配列した形状であるものとすることができる。この場合、凸条と溝条の延在方向に沿って液晶分子を配向させ、且つ各凸条の鋸歯形状に沿ってプレチルトを付与することが可能となる。つまり、ラビング処理を施さなくても、液晶分子に配向を付与することが可能となるのである。
【0012】
前記配向層の表面には、シロキサン等からなる垂直配向層が形成されているものとすることができる。この場合、液晶を配向するためのラビング処理を施す必要がなく、また当該垂直配向層を形成する際は、シランカップリング剤等を用いることで、その工程が簡便なものとなる。
【0013】
次に、本発明の電子機器は、上述した液晶装置を備えたことを特徴とする。この構成によれば、信頼性の高い電子機器を提供することができる。具体的には、プロジェクタ等の投射型表示装置の光変調装置として上述の液晶装置を用いることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
[液晶装置]
まず、本発明の液晶装置の実施の形態につき、図1ないし図5を用いて説明する。
本実施形態では、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTという)素子を用いたアクティブマトリクス方式の透過型液晶装置を例にして説明する。図1は、当該液晶装置の画像表示領域を構成すべくマトリクス状に配置された複数の画素の等価回路図である。また、図2はTFTアレイ基板に形成された複数の画素の平面図であり、図3は液晶装置の断面構成を模式的に示す図である。さらに、図4は当該液晶装置に具備された配向膜の構成を模式的に示す斜視図であり、図5は該配向膜の断面模式図である。
【0016】
図1に示すように、透過型液晶装置の表示領域を構成すべくマトリクス状に配置された複数の画素には、導電体である画素電極9が形成されている。また、その画素電極9の側方には、当該画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30が形成されている。このTFT素子30のソースには、データ線6aが電気的に接続されている。各データ線6aには画像信号S1、S2、…、Snが供給される。なお画像信号S1、S2、…、Snは、各データ線6aに対してこの順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給してもよい。
【0017】
また、TFT素子30のゲートには、走査線3aが電気的に接続されている。走査線3aには、所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される。なお走査信号G1、G2、…、Gmは、各走査線3aに対してこの順に線順次で印加する。また、TFT素子30のドレインには、画素電極9が電気的に接続されている。そして、走査線3aから供給された走査信号G1、G2、…、Gmにより、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオン状態にすると、データ線6aから供給された画素信号S1、S2、…、Snが、各画素の液晶に所定のタイミングで書き込まれる。
【0018】
液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極9と後述する共通電極との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、画素電極9と容量線3bとの間に蓄積容量70が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶に入射した光が変調されて階調表示が可能となる。
【0019】
次に、図2を用いて、実施形態の液晶装置の平面構造について説明する。実施形態の液晶装置では、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITOという)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極9(破線9aによりその輪郭を示す)が、マトリクス状に配列形成されている。また、画素電極9の縦横の境界に沿って、データ線6a、走査線3aおよび容量線3bが設けられている。実施形態では、各画素電極9の形成された領域が画素であり、マトリクス状に配置された各画素毎に表示を行うことが可能な構造になっている。
【0020】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に伸びる本線部(すなわち平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aとの交点からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とによって構成されている。また、図2中に右上がりの斜線で示した領域には、第1遮光膜11aが形成されている。そして、容量線3bの突出部と第1遮光膜11aとがコンタクトホール13を介して電気的に接続され、後述する蓄積容量が形成されている。
【0021】
次に、図3を用いて、本実施形態の液晶装置の断面構造について説明する。
本実施形態の液晶装置は、ガラスやプラスチック等の透明基板で構成される2枚の基板(素子基板10,対向基板20)を含んで構成され、該一対の基板10,20間に液晶層50が挟持されている。素子基板10の液晶層側にはITO等で構成された透明電極9がマトリクス状に形成されており、透明電極9の更に液晶層側には、液晶分子の配向規制を行う配向膜11が透明電極9のパターンに倣って形成されている。
【0022】
一方、対向基板20の液晶層側には、基板全面にベタ状の透明電極23が形成されており、透明電極23の更に液晶層側には、液晶分子の配向規制を行う配向膜21が基板全面にベタ状に形成されている。なお、基板10,20の外面側(液晶層50とは異なる側)には、液晶層50内に直線偏光を入射させるための吸収型偏光層14,24がそれぞれ配設されている。なお、吸収型偏光層は液晶装置外の光学部材に設けても良い。
【0023】
図3の構成においては、一対の基板10,20が、シール材(図示略)を介して貼り合わせられ、その内部に液晶が封入されている。この場合、液晶層50の液晶モードとしてTN(Twisted Nematic)モードが採用されているが、TN(Twisted Nematic)モードの他に、STN(Super Twisted Nematic)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、VANモード(Vertical Alignment Nematic)すなわち負の誘電率を持つ液晶層、等を採用することができる。
【0024】
以下、液晶装置を構成する各部材について詳細に説明する。
まず、素子基板10は、ガラスや石英等の透光性の基板であって、画素電極9に対する電圧印加をスイッチング駆動するTFT素子30(図1参照)を備えている。画素電極9はITO(インジウム錫酸化物)等の透光性の導電材料にて構成されており、膜厚が50nm〜100nm程度(例えば85nm)とされている。
【0025】
また、配向膜11もITO(インジウム錫酸化物)等の透光性の導電材料にて構成されており、膜厚が100nm〜1000nm程度(例えば500nm)とされている。そして、本実施形態では、配向膜11のパターンは画素電極9のパターンと同一であり、配向膜11の導電性は画素電極9の導電性よりも低いものである。
【0026】
さらに、配向膜11は、その表面形状によって液晶分子を配向規制する構成となっている。具体的には、図4及び図5に示すように、その表面に複数の傾斜面12a,12bをストライプ状に備えており、各傾斜面12a,12bにより凸条15が形成されている。つまり、それぞれ傾斜方向の異なるストライプ状の傾斜面12aと傾斜面12bとが連続して形成されることにより、複数の凸条15が所定の周期で並列して形成されているのである。したがって、凸条15は、その延在方向と交わる方向の断面形状が不等辺の鋸歯状とされている。
【0027】
なお、このような配向膜11の表面には、凸条15の延在方向と交わる方向にラビング処理が施されており、該ラビング方向に沿って液晶分子を配向させ、傾斜面12aに沿ってプレチルトを付与することが可能となる。なお、本実施形態では凸条15のピッチ幅は約10μm、傾斜面12aの傾斜角は約4°にて構成されている。
【0028】
一方、対向基板20は、素子基板10と同様、ガラスや石英等の透光性の基板から構成されており、その液晶層側にITO(インジウム錫酸化物)等の透光性の導電材料にて構成された共通電極23が、膜厚50nm〜150nm程度(例えば140nm)に形成されている。また、共通電極23の更に液晶層側には、同じくITO(インジウム錫酸化物)等の透光性の導電材料にて構成された配向膜21が形成されており、その膜厚は100nm〜1000nm程度(例えば500nm)とされている。なお、配向膜21及び共通電極23は、対向基板20の全面にベタ状に形成されている。
【0029】
配向膜21は、その表面形状によって液晶分子を配向規制する構成となっており、素子基板10側の配向膜11と同様の構成を有している(図4及び図5参照)。なお、素子基板10側の配向膜11の凸条と対向基板20側の配向膜21の凸条とは、その条線が直交するように配置されている。すなわち各配向膜11,21のラビング方向が互いに交差するように、各基板10,20が対向配置され、TNモードの液晶装置を構成している。
【0030】
以上のような構成の液晶装置によると、配向膜11,21が導電材料にて構成されてなるため、液晶層50を駆動するための駆動電圧が上昇することなく、また焼き付きの発生も防止ないし抑制することが可能となる。また、配向膜11,21がITO(金属化合物)にて構成されているため、ポリイミドのラビング配向膜に比して、耐光性に優れた配向膜となる。
【0031】
[液晶装置の製造方法]
次に、上記液晶装置の製造方法について説明する。
まず、基板10上にTFT素子30を公知の方法により形成し、その後、ITOをスパッタ法等により基板10上に形成することで電極用の導電膜を得る。
【0032】
その後、該導電膜上に配向膜用のITOをゾル−ゲル法により形成する。具体的には、非晶質のITOゾルを調製し、これに結晶性のITOを種結晶として添加し、ゾル−ゲル法を応用してゲル化したITOゲルを加熱結晶化するものとしている。すなわち、インジウムアルコキシドIn(OR)とスズアルコキシドSn(OR’)(R、R’はいずれも炭素数1〜10のアルキル基である)とを原料として調製されたITOゾル又はそれを加水分解したITOゾルにITO種結晶を添加し、その混合物を加熱してITOゲルを結晶化させる手法を用いた。
【0033】
さらに詳述すると、エタノールアミンを添加して安定化させたインジウムブトキシドIn(OCとスズブトキシドSn(OCとをイソプロピルアルコールを溶媒として混合し、この混合溶液を窒素気流中において80℃の温度に3時間保持して還流させる。これにより、複合アルコキシドIn−O−Sn(OCを成分として含有するITOゾルが調製される。また、上記したようにイソプロピルアルコールを溶媒としてインジウムブトキシドとスズブトキシドとを混合した後、その混合溶液に等量の水を添加し、上記と同様の操作を行って加水分解することにより、ITOゾルを調製するようにしてもよい。次に、ITOゾルに結晶性ITO粉末を添加し、コーティング溶液を調製するとともに、該コーティング溶液を先に形成した導電膜上にスピンコート(浸漬塗布)する。これにより導電膜上ITOゾルが形成される。
【0034】
次に、形成したITOゾルに対し、本実施形態で示した配向膜11,21が備える凸条15の形状に応じた凹凸を有する型を押し当てるとともに、該型を押し当てた状態でゾル状物を加熱してITOを結晶化(焼成)した。以上のような方法により、凸条15を有する配向膜が形成される。その後、導電膜及び配向膜を公知のフォトリソグラフィ法によりマトリクス状にパターニングし、さらに図4に示した方向にラビング処理を施して、画素電極9及び配向膜11を備えた素子基板10を得る。
【0035】
一方、対向基板20側については、基板20を用意し、該基板20上にITOをスパッタ法等により形成することで、電極用の導電膜を得る。そして、該導電膜上に配向膜用のITOを素子基板10側と同様にゾル−ゲル法により形成する。なお、対向基板20側では、導電膜及び配向膜のパターニングは行わない。
【0036】
以上のような工程により得た各基板10,20を、互いの配向膜11,21のラビング方向が直交し、且つ凸条15の凸頂部の位置が互い違いとなるように位置合わせしながら、シール剤を介して貼り合わせる。そして、その後、公知の方法により液晶を注入し、注入口を封止するとともに、偏光層14,24を形成して上記実施形態の液晶装置を得るものとしている。
【0037】
[液晶装置の変形例]
以下、液晶装置の変形例について図6及び図7を参照しつつ説明する。
図6は、第1の変形例に係る液晶装置が備える配向膜11の構成を示す断面模式図である。この配向膜11は、表面にシロキサンからなる垂直配向膜11bを有している。このような垂直配向膜11bは、上述した凸条15を有する配向膜11を形成した後、公知のシランカップリング剤をカップリング処理することで形成することができる。素子基板10側の配向膜11の凸条と対向基板20側の配向膜21の凸条とを、その凸頂部の位置が互い違いとなるように、つまり一方の配向膜の凸頂部と他方の配向膜の溝部とを平面視重畳するように配置することにより、VANモードの液晶装置が構成される。
【0038】
また、図7は、第2の変形例に係る液晶装置が備える配向膜11の構成を示す断面模式図である。この配向膜11は、その表面に所定の周期(ピッチ幅P=0.25μm)で並列してなる複数の凸条15aと、各凸条15aの間に配設されてなる溝条16とを有しており、凸条15aの延在方向と平行な方向の断面形状が、複数の不等辺の鋸歯状物が所定の周期(ピッチ幅W=10μm)で配列した形状を有している。なお、このような表面形状は、上述した型形状を適宜対応させることにより得ることができる。
【0039】
この第2の変形例が備える配向膜によると、凸条15aと溝条16の延在方向に沿って液晶分子を配向させ、且つ各凸条15aの鋸歯形状に沿ってプレチルトを付与することが可能となる。つまり、ラビング処理を施さなくても、液晶分子に配向を付与することが可能となるのである。なお、このような配向膜に対しても、図6に示したシロキサンからなる垂直配向膜を形成するものとしても良い。
【0040】
[投射型表示装置]
次に、本発明の電子機器の具体例である投射型表示装置につき、図8を用いて説明する。図8は、投射型表示装置の要部を示す概略構成図である。この投射型表示装置は、上記液晶装置を光変調装置として備えたものである。
【0041】
図8において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は本実施形態の液晶装置からなる光変調装置、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズ、831、832、833は入射側の偏光板、834、835、836は出射側の偏光板である(なお、上記実施形態では液晶装置に偏光板14,24が組み込まれている)。光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。
【0042】
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用液晶光変調装置822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用液晶光変調装置823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用液晶光変調装置824に入射される。
【0043】
各光変調装置により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0044】
このように、投射型表示装置の液晶光変調装置822,823,824として、本実施形態の液晶装置を使用すれば、光源810から照射される強い光や熱により配向膜が分解されることはない。また、駆動電圧が低く、長期間の使用後にも焼き付き等が生じることもなく、投射型表示装置の表示品質を低下させることがない。
【0045】
なお、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、上記実施形態ではスイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を採用してもよい。また、上記実施形態では透過型液晶装置を例にして説明したが、本発明の液晶装置を反射型や半透過型の液晶装置に適用することも可能である。さらに、電子機器として3板式の投射型表示装置を例にして説明したが、本発明の液晶装置を単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に適用することも可能である。
【0046】
また、本発明の電子機器の他の具体例として、携帯電話を挙げることができる。この携帯電話は、上記実施形態の液晶装置を表示部に備えたものである。また、その他の電子機器としては、例えばICカード、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の液晶装置における複数の画素の等価回路図。
【図2】TFTアレイ基板に形成された複数の画素の平面図。
【図3】本実施形態の液晶装置の断面構成を示す断面模式図。
【図4】本実施形態の液晶装置が備える配向膜の構成を模式的に示す斜視図。
【図5】本実施形態の液晶装置が備える配向膜の構成を模式的に示す断面図。
【図6】第1の変形例の液晶装置が備える配向膜の構成を模式的に示す断面図。
【図7】第2の変形例の液晶装置が備える配向膜の構成を模式的に示す斜視図。
【図8】投射型表示装置の要部を示す構成図。
【符号の説明】
【0048】
9…画素電極(電極)、10,20…基板、11,21…配向膜(配向層)、11b…垂直配向膜、12a,12b…傾斜面、15,15a…凸条、16…溝条、23…共通電極(電極)、50…液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶装置であって、
前記一対の基板の各液晶層側に配設された電極と、
これら電極の少なくとも一方の液晶層側に配設された配向層とを備え、
前記配向層が、自身の表面形状によって液晶分子の配向を規制するものであり、且つ透光性の導電材料にて構成されてなることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記配向層は、その表面に複数の傾斜面を所定パターンにて具備してなることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記配向層は、その表面に所定の周期で並列してなる複数の凸条を具備してなり、該凸条は、それぞれ傾斜角が異なり且つ当該凸条の延在方向に延びる2つの傾斜面を具備してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記配向層は、その表面に所定の周期で並列してなる複数の凸条を具備してなり、該凸条の延在方向と交わる方向の断面形状が不等辺の鋸歯状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記配向層は、その表面に所定の周期で並列してなる複数の凸条と、各凸条の間に配設されてなる溝条とを具備してなり、前記凸条の延在方向と平行な方向の断面形状が、複数の不等辺の鋸歯状物が所定の周期で配列した形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記配向層の表面には、垂直配向層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−38904(P2006−38904A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214008(P2004−214008)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】