説明

液晶装置及び電子機器

【課題】液晶パネルの視角特性に起因する色づきを低減し、表示品質を向上させた液晶装置を提供する。
【解決手段】本発明の液晶装置100は、素子基板11と対向基板12との間に液晶層50を挟持してなる液晶パネル10と、液晶パネル10に照明光を供給する照明装置30とを備えており、照明装置30から射出される色光の放射強度分布が、液晶パネル10における表示色ごとの視角特性を補償する分布であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透過型液晶装置のバックライト(照明装置)として、色域を広げて表現力を高める目的で色ごとに異なる光源を備えたものが知られている。この種のバックライトでは、その構造上、色ごとに光源の位置が異なってしまうため、各色の光源の出力光を均一に混色するための技術開発が主である。
【特許文献1】特開2007−65658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、液晶パネルはそれ自身が視角特性を有しており、斜め方向から液晶パネルを観察した場合に色の変化が生じる。この色づきは、上述したようなバックライトの白色の均一化では改善することができない。また、現状の液晶パネルのスペックでは、コントラストの高い領域の角度が表示されているのみであり、色づきについての改善は少ない。垂直配向方式やIPS(In-Plane Switching)等の横電界方式の液晶パネルにおいて、液晶をマルチドメイン化したり、画素内で電圧差を設ける等の手法によって多少改善されている程度である。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、液晶パネルの視角特性に起因する色づきを低減し、表示品質を向上させた液晶装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液晶装置は、上記課題を解決するために、一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶パネルと、前記液晶パネルに照明光を供給する照明装置とを備えた液晶装置であって、前記照明装置から射出される色光の放射強度分布が、前記液晶パネルにおける表示色ごとの視角特性を補償する分布であることを特徴とする。
この構成によれば、液晶パネルの視角特性を補償する放射強度分布を有する照明装置を備えることで、表示の色づきを抑えることができ、表示品質に優れた液晶装置とすることができる。
【0006】
あるいは、一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶パネルと、前記液晶パネルに照明光を供給する照明装置とを備えた液晶装置であって、前記液晶パネルにおける第1の表示色の明るさの分布が前記液晶パネルの第2の表示色の明るさの分布より広く、前記照明装置から射出される前記第1の表示色に対応する色光の放射強度分布が、前記第2の表示色に対応する色光の放射強度分布よりも狭いことを特徴とする構成も採用できる。
この構成によれば、液晶装置の明るさの分布に合わせて照明装置の放射強度分布が適切に設定されるので、表示の色づきを効果的に抑えることができ、表示品質に優れた液晶装置とすることができる。
【0007】
前記照明装置が、白色LEDからなる光源を備えており、前記白色LEDは、発光素子と、前記発光素子を封止する封止材とを有しており、前記封止材が、前記発光素子を中心とする極角方向において前記発光素子から射出される色光の成分毎に異なる複数の封止材を有することが好ましい。すなわち本発明では、白色LEDを光源とすることもできる。
【0008】
前記照明装置の前記液晶パネル側の面に光散乱層が設けられており、前記光散乱層が、前記色光の放射強度分布を変化させる散乱分布を有することを特徴とする少なくとも2つの前記色光を互いに異なる角度分布で散乱させることが好ましい。このように照明装置とは別途設けた光散乱層によって放射強度分布を調整してもよい。
【0009】
前記液晶パネルが垂直配向モードの液晶パネルであり、前記照明装置の放射強度分布が、極角度が大きくなるに従って、青色光の放射強度が他の前記色光の放射強度よりも大きくなる分布である構成とすることができる。
液晶パネルが垂直配向モードである場合には、青色光の明るさが不足する傾向にあるので、上記構成を採用することで、液晶パネルを斜め方向から見たときに表示が黄色く色づいて見えるのを抑えることができる。
【0010】
前記液晶パネルが横電界モードの液晶パネルであり、前記照明装置の放射強度分布が、第1の方位角方向において極角度が大きくなるに従って青色光の放射強度が、他の前記色光の放射強度よりも大きくなる分布であり、前記第1の方位角と直交する第2の方位角方向において極角度が大きくなるに従って赤色光の放射強度が、他の前記色光の放射強度よりも大きくなる分布である構成とすることもできる。
液晶パネルが横電界モードである場合には、表示の色づきの態様が液晶パネルの方位角方向によって異なったものとなるので、上記のように、方位角によって異なる放射強度分布を有する照明装置を備えた構成を採用することが好ましい。
【0011】
前記照明装置が、前記色光ごとに独立した複数の光源を備えていることが好ましい。
この構成によれば、色光ごとの放射強度分布の調整が容易になり、より高精度に表示の色づきを防止できる液晶装置となる。
【0012】
前記照明装置が、複数の前記色光にそれぞれ対応するLEDからなる光源を備えており、前記LEDの放射強度分布が前記色ごとに異なる構成としてもよい。
この構成によれば、表示に用いられる原色ごとに放射強度分布を設定することができ、より効果的に表示の色づきを抑えることができる。
【0013】
前記LEDが、発光素子と、前記発光素子を封止する封止材とを有しており、前記封止材が、前記発光素子を中心とする極角方向において複数の異なる屈折率を有する構成としてもよい。
色ごとに異なる放射強度分布を有するLEDは、かかる構成により実現することができる。
【0014】
次に、本発明の電子機器は、先に記載の本発明の液晶装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、斜め方向から観察したときの色づきが低減された高画質の表示部を備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の液晶装置の概略構成を示す断面図である。図2は、本実施形態に係る照明装置の概略構成を示す平面図である。
なお、各図面においては、各構成要素を見やすくするため、各構成要素の寸法の比率、縮尺等は適宜変えて示している。
【0016】
本実施形態の液晶装置100は、液晶パネル10と、照明装置30とを主体として構成されている。液晶パネル10と照明装置30との間には、複数の光学素子(33〜35)を備えた光学部材36が配設されている。
液晶パネル10は、素子基板11と対向基板12とを備えており、素子基板11及び対向基板12の周縁部に沿って環状に設けられたシール材13の内側に液晶層50が封入されている。液晶層50中には、素子基板11と対向基板12との間隔(セルギャップ)を保持するスペーサ29が散布されている。
【0017】
素子基板11はガラスやプラスチック等の基板を基体としてなり、その液晶層50側には、透明導電材料からなる画素電極16や配向膜(図示略)等を含む液晶制御層21が形成されている。素子基板11の液晶層50と反対側の面には、偏光板6aが配設されている。
【0018】
対向基板12はガラスやプラスチック等の基板を基体としてなり、その液晶層50側には、透明導電材料からなる対向電極17や配向膜(図示略)等を含む液晶制御層22が形成されている。対向基板12の液晶層50と反対側の面には、偏光板6aと対を成す偏光板6bが配設されている。
また、対向基板12と対向電極17との間には、カラー表示を行うためのカラーフィルタ18が形成されている。カラーフィルタ18は、画素電極16と平面視で重なる領域(画素領域)ごとに形成された赤色材層18Rと、緑色材層18Gと、青色材層18Bとを周期的に配列した構造を備えている。各色の色材層の間には、遮光層BMが形成されている。
【0019】
また、素子基板11は、平面視で対向基板12よりも張り出した張出領域11aを有しており、かかる張出領域11aに実装端子領域が形成されている。具体的には、張出領域11aには、図示略の配線パターンが形成され、この配線パターンに対して、画素電極16(あるいは画素電極16に接続されたスイッチング素子)及び対向電極17が、配線や導通材を介して電気的に接続されている。さらに、張出領域11aの配線パターンに対して、液晶パネル10を電気的に駆動する液晶駆動用IC(電子部品)20がCOG(Chip on Glass)実装されている。液晶駆動用IC20の実装形態としては、COG実装以外にも、FPC(Flexible Print Circuit)実装等の他の形態を採用することもできる。
【0020】
液晶パネル10は、パッシブマトリクス型、アクティブマトリクス型のいずれであってもよく、液晶の配向形態も、TN型、VAN型、STN型、強誘電型、反強誘電型等の種々の公知の形態を採りうる。また、素子基板11に反射膜を形成して反射型の液晶表示装置を構成してもよく、この反射膜に開口部やスリット等の透光部を形成して、半透過反射型の液晶表示装置を構成することもできる。
【0021】
そして、液晶制御層21、22の具体的構成は、液晶パネル10の形態に合わせて適宜変更される。例えば、パッシブマトリクス型の液晶パネル10を構成する場合には、画素電極16及び対向電極17に代えて、互いに交差する方向に延在するストライプ電極がそれぞれ液晶制御層21,22に形成される。また、アクティブマトリクス型であれば、画素電極16に対応してスイッチング素子が設けられ、対向電極17は複数の画素電極16と対向するストライプ状又は平面ベタ状(表示領域を覆う一様な平面形状)の共通電極とされる。
【0022】
照明装置30は、図1及び図2に示すように、LED光源である赤色発光素子31Rと、緑色発光素子31Gと、青色発光素子31Bとを、回路基板32上に周期的に配列して実装した構成を備えている。本実施形態の場合、図3上下方向に同一色の発光素子31R、31G、31Bがそれぞれ配列されており、図3左右方向には、発光素子31R、31G、31Bの発光素子列が周期的に配列されている。
【0023】
照明装置30は、赤色発光素子31R、緑色発光素子31G、及び青色発光素子31Bからそれぞれ射出される赤色光、緑色光、及び青色光を、混色された白色光(又はそれぞれの色光のまま)の状態で、液晶パネル10に照明光として射出する。液晶パネル10は、供給された照明光を変調しつつ透過させることで、各画素において所定の色光を制御された輝度で射出する。これにより、液晶パネル10の表示領域に画像が表示される。
【0024】
光学部材36は、照明装置30から射出される照明光を散乱あるいは集光する機能を備えるものであり、必要に応じて設けられる部材である。光学部材36の具体的構成としては、例えば、散乱板(散乱層)33と、第1のプリズムシート34と、第2のプリズムシート35とを積層したものを挙げることができる。
【0025】
なお、図2に示した発光素子の配列は一例に過ぎず、他の配列形態であってもよいのはもちろんである。例えば、赤色発光素子31Rの列と、青色発光素子31Bの列との間に配置された緑色発光素子31Gの列を、赤色発光素子31R及び青色発光素子31Bの列に対して半ピッチずらして配置した配列とすることもできる。また、赤色発光素子31Rと緑色発光素子31Gと青色発光素子31Bとが互いに等間隔に配置されたデルタ配列とすることもできる。
さらに、赤色発光素子31Rと緑色発光素子31Gと青色発光素子31Bの設置個数の比率を異ならせてもよく、例えば、緑色発光素子31Gを相対的に多く配置したベイヤ配列を採用することもできる。
【0026】
ここで図3は、照明装置30の放射強度分布を示すグラフである。図3に示すように、本実施形態の照明装置30は、色光ごとに異なる放射強度分布を有している。具体的には、極角度が大きい領域において、青色光の放射強度が相対的に大きく、赤色光の放射強度が相対的に小さくなっている。
【0027】
図3に示す放射強度分布を有する照明装置30は、例えば、図4(a)、(b)に示す発光素子31aを備えた構成により実現することができる。図4(a)は発光素子31aの平面図、図4(b)は図4(a)に示すA−A’線に沿う断面図である。
【0028】
発光素子31aは、LEDチップ131aと、LEDチップ131aを封止する第1の封止材131bと、第1の封止材131bの表面に設けられた4つの第2の封止材131cとを有する。LEDチップ131aは、赤、緑、青のいずれかの色光を放射する半導体素子であり、第1の封止材131bの底部に配置されている。第2の封止材131cは、図4(a)に示すように、LEDチップ131aの四方を取り囲むように配置されている。なお、封止材の材質はエポキシ樹脂、アクリル、シリコンまたは上記材料を組合わせた高分子材料等がある。
【0029】
図4(b)に示すように、LEDチップ131aから第1の封止材131bの頂部方向に放射された色光のうち、一部の光L1は第1の封止材131bの頂部とその近傍から射出され、他の一部の光L2は第1の封止材131bの表面に形成された第2の封止材131cに入射し、第2の封止材131cを透過して発光素子31aの外部に射出される。
【0030】
このような構成の発光素子31aでは、第1及び第2の封止材131b、131cの屈折率を調整することで、発光素子31aから射出される色光の放射強度分布を制御することが可能である。例えば、第2の封止材131cの屈折率を、第1の封止材131bの屈折率よりも小さくすると、第2の封止材131cに入射した光L2の進行方向をLEDチップ131aからの直進方向よりも外側に向けることができ、極角度の大きい領域における放射強度を高めることができる。したがって、上記構成の発光素子31aを、青色発光素子31Bに用いることで、相対的に広い放射強度分布を有する青色光(B)を射出する発光素子とすることができ、図3に示した放射強度分布を実現することができる。
【0031】
一方、極角度の大きい領域における放射強度を相対的に低くする場合には、第2の封止材131cを、第1の封止材131bよりも大きい屈折率を有する材料を用いて形成すればよい。このような構成とすることで、例えば、赤色光(R)に対応する赤色発光素子31Rを発光素子31aを用いて実現することができる。
【0032】
なお、照明装置30を構成する複数色の発光素子31R、31G、31Bのすべてに図4(a)、(b)に示す発光素子31aを用いる必要はなく、第2の封止材131cが形成されていない通常の発光素子と混在させてもよい。例えば、広い放射強度分布が必要な青色発光素子31Bにのみ発光素子31aを用い、その他の赤色発光素子31R及び緑色発光素子31Gは通常構成の発光素子としてもよい。
【0033】
また、図4(a)では、第2の封止材131cを第1の封止材131b上の4箇所に点在させているが、かかる構成に限らず、第2の封止材131cの形成箇所を増減したり、第2の封止材131cをリング状に形成することもできる。これらの構成変更によって、各発光素子の放射強度分布を容易に調整することができる。
【0034】
また、照明装置30を構成する発光素子としては、図4(c)に示す構成のものも適用できる。図4(c)に示す発光素子31bは、回路基板45上に、赤色LEDチップ41Rと、緑色LEDチップ41Gと、青色LEDチップ41Bとが実装され、これらの色光を混合して射出する白色LEDである。そして、LEDチップ41R、41G、41Bは、それぞれ異なる封止材42R、42G、42Bによって封止されている。封止材42R、42G、42Bの形状は、例えば、図4(a)、(b)に示した第1の封止材131bと同様とすることができ、またこれに限らず、放射角度分布の設計に応じて適宜変更することができる。
【0035】
上記構成の発光素子31bでは、各色のLEDチップ41R、41G、41Bが、それぞれ異なる封止材42R、42G、42Bを用いて封止されているので、封止材42R、42G、42Bの構造や屈折率を調整することで、色ごとに異なる放射強度分布を容易に得ることができる。
なお、図4(c)では各色のチップに対応させて封止材42R、42G、42Bを配置しているが、2つのLEDチップに共通の封止材を設けてもよいのはもちろんである。また、白色LEDを構成する各色のLEDチップは、赤、緑、青の組み合わせに限られるものではない。
【0036】
また、図4(d)に示す発光素子31cも適用できる。発光素子31cは、発光素子31aと同様に、第1の封止材131bと第2の封止材131cとを備えた構成であるが、第1の封止材131bの頂部が平坦面となっており、この平坦面状にドーム状の第2の封止材131cが設けられている。LEDチップ131aと第2の封止材131cとは平面視で重なる位置に配置されている。
発光素子31cでは、発光素子131aの正面に配置された第2の封止材131cの形状や屈折率によって放射強度分布を調整することができる。例えば、第2の封止材131cを、第1の封止材131bの形成材料よりも大きい屈折率を有する材料を用いて形成することで、第2の封止材131cを透過して射出される光L2を外側に向けて射出させることができる。
【0037】
上述した照明装置30の放射強度分布は、液晶パネル10の視角特性に基づいて、極角度が大きい領域における表示の色づきを補償するように設定される。例えば、液晶パネル10の表示モード等が異なる場合には、その視角特性も異なったものとなるので、それぞれの視角特性に応じて照明装置30の放射強度分布が設定される。
以下、VA(垂直配向)モードの液晶パネル10を備える場合と、FFS(Fringe Field Switching)方式の横電界モードの液晶パネル10を備える場合とについてそれぞれ詳細に説明する。
【0038】
[VAモード]
図5は、VAモードの液晶パネル10における画素の概略構成を示す平面図である。
図5に示す液晶パネル10は、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)方式の液晶パネルである。液晶パネル10の表示領域には、矩形状の画素電極16と、平面視ジグザグ形状の複数の凸条部21a、及び凸条部22aと、が形成されている。凸条部21a、22aのうち、稜線を実線で示す凸条部21aは、素子基板11の画素電極16上に形成されている。一方、稜線を破線で示す凸条部22aは、液晶層50を介して画素電極16と対向する対向電極17(図5には不図示)上に形成されている。
【0039】
ここで、図6は、VAモードの液晶パネル10の視角特性を示すグラフである。図7は、図6の極角0°(180°)における明るさ(透過率)の分布を示す図である。
図6は、VAモードの液晶パネル10と、白色光を射出する照明装置とを用いて、液晶パネル10を明表示したときの極角80°における表示の色づきの分布を示すグラフである。具体的には、図6の分布において濃く示した領域に黄色の色づきが発生しており、特に方位角45°、135°、225°、315゜の位置で色づきの程度が大きくなっている。表示が黄色く色づくのは、図7に示すように、液晶パネル10の極角方向において、青色光の透過率の変化が特に大きくなっており、極角50°(−50°)の近傍で青色光の透過率が大きく落ち込むためである。
【0040】
なお、図6及び図7に示す視角特性の測定に用いた照明装置は、従来から用いられている照明装置であり、青色光を蛍光体で変換した白色LED又は冷陰極管を光源に用いたものである。これらの光源では、単一の放射強度分布で光が放射されるため、白色光を構成する各色成分の放射強度分布も当然同一になる。
【0041】
そして、本実施形態の液晶装置100では、図6に示した液晶パネル10の視角特性に合わせて照明装置30の放射強度分布が設定されている。すなわち、図3に示したように、青色光の透過率が他の色光に比して低くなる極角度の大きい領域において、青色光の放射強度が他の色光の放射強度よりも大きくなるように設定される。これにより、液晶パネル10から射出される表示光の各色光成分の明るさを揃えることができ、視角特性に起因する色づきを低減することができる。
【0042】
さらに本実施形態の場合、図3に示したように、極角度の大きい領域において、緑色光の放射強度が赤色光の放射強度よりも高くなっている。これにより、図7に示した赤色光と緑色光の透過率の差異を補償することができ、より効果的に表示の色づきを抑えられるようになっている。
【0043】
また、図6に示した視角特性は、液晶パネル10を明表示したときのものであり、中間階調で表示を行った場合には、図8及び図9に示すように、各色光の透過率分布が変化する。図8は、明るい中間階調(グレー表示)、図9は、暗い中間階調(グレー表示)における明るさ(透過率)の分布を示す図である。
VAモードの液晶パネル10の場合、階調間で透過率分布のグラフ形状は変化するが、極角度が大きい領域で青色光の透過率が最も低く、赤色光の透過率が最も高くなる傾向は階調によらず同様である。したがって、図3に示した放射強度分布を有する照明装置30を備えることで、幅広い階調において表示の色づきを低減することができる。
【0044】
[横電界モード]
次に、図10は、FFS方式の横電界モードの液晶パネル10における画素の概略構成を示す部分平面図である。図10に示すように、液晶パネル10の画素領域には、平面視ストライプ状の画素電極16sと、画素電極16sを内包する平面領域に形成された共通電極16cと、が形成されている。画素電極16sと共通電極16cは、いずれも素子基板11の液晶制御層21に形成されており、両電極の間には絶縁層が形成されている。また、図10には、偏光板6aの透過軸60aと、偏光板6bの透過軸60bとが矢印として示されている。
なお、図10に示す画素構成の液晶パネル10では、対向基板12の対向電極17は形成されていなくてもよい。
【0045】
本例において、素子基板11の液晶制御層21に形成された配向膜と、対向基板12の液晶制御層22に形成された配向膜は、いずれも偏光板6bの透過軸60bと平行な方向にラビング処理されている。したがって、液晶層50を構成する液晶分子51は、画素電極16sに電圧を印加しない状態において、図示のように偏光板6bの透過軸60bに沿って平行配向している。そして、画素電極16sに電圧を印加すると、画素電極16sと共通電極16cとの間に形成される電界の強度に応じて図示の矢印方向に回転する。
【0046】
図11は、FFS方式の液晶パネル10の視角特性を示す図である。
FFS方式の液晶パネル10の場合、VAモードの液晶パネルと異なり、表示の色づきが方位角によって異なった様相を呈する。具体的には、方位角0°〜90°、及び180°〜270°の範囲(図11の領域C)では、白表示が青っぽく(シアンに近い色に)色づいて見える。一方、方位角90°〜180°、及び270°〜360°の範囲(図11の領域Y)では、白表示が黄色く色づいて見える。
【0047】
すなわち、領域C(方位角0°〜90°、180°〜270°)では、極角度が大きい領域での赤色光の透過率の低下が他の色光よりも大きく、領域Y(方位角90°〜180°、270°〜360°)では、極角度が大きい領域での青色光の透過率の低下が他の色光よりも大きい。
【0048】
図11に示す視角特性を有する液晶パネル10と組み合わされる照明装置30としては、各色光の放射強度分布が、方位角に応じて異なっている構成のものが用いられる。
具体的には、上記照明装置30において、方位角45°(224°)の方向における放射強度分布が、図12(a)に示すように、極角度の大きい領域において、赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の順で放射強度が低くなる分布として設定される。その一方で、方位角135°(315°)の方向における放射強度分布が、図12(b)に示すように、極角度の大きい領域において、青色光(B)、緑色光(G)、赤色光(R)の順で放射強度が低くなる分布として設定される。
【0049】
図12に示す放射強度分布を有する照明装置30についても、図4に示した発光素子31aを用いて実現することができる。発光素子31aでは、第1の封止材131bの表面に形成される第2の封止材131cの位置や形状を自在に調整できるため、例えば、青色光を射出する発光素子31aでは、液晶パネル10の方位角135°と方位角315°に対応する位置に、それぞれ低屈折率の第2の封止材131cを形成し、赤色光を射出する発光素子31aでは、液晶パネル10の方位角45°と方位角225°に対応する位置に、それぞれ低屈折率の第2の封止材131cを形成した構成とすればよい。
【0050】
以上に説明した実施の形態では、照明装置30を構成する発光素子の構成によって各色光の放射強度分布を異ならせることとしたが、照明装置30の液晶パネル10側に設けられる光学部材36によって照明装置30の放射強度分布を制御してもよい。
【0051】
例えば、図13(a)に示すように、光学部材36に含まれる散乱板33として、照明装置30の発光素子31R、31G、31Bごとに対応させて形状の異なるドーム状の散乱部材33R、33G、33Bを配置した構成とすれば、発光素子31R、31G、31Bごとに異なる散乱角度分布を有する散乱板33とすることが可能であり、これにより、例えば径の大きい散乱部材33Bでは、より広い極角範囲に光を射出させることができ、色光ごとに異なる放射強度分布の照明光を液晶パネル10に供給することができる。なお、散乱部材33R、33Bに付した点線の曲線は、散乱部材33Gの形状を比較のために示したものであり、散乱部材33R、33Bは、いずれも散乱部材33Gよりも大きい径で形成されている。散乱部材33R、33Bにおいて、光の射出範囲を広げたい方向のみを大きくしてもよい。
また、図示した散乱部材33R、33G、33Bの形状は一例である。
また例えば、図13(b)に示すように、光学部材36に含まれる散乱板33を、入射する光の波長に応じて異なる屈折率を有する散乱部材33R、33G、33Bを有する構成とすることで、各色光ごとの射出角度を異ならせることができる。
図13(a)、(b)のいずれの構成を採用した場合にも、散乱部材33R、33G、33Bの形状又は屈折率を調整することで、図3や図12に示した放射強度分布の照明光を作り出すことができ、垂直配向モードや横電界モードの液晶パネルに好適に組み合わせることができる。
【0052】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器について説明する。
本発明の電子機器は、上述した液晶装置100を表示部として有したものであり、具体的には図14に示すものが挙げられる。図14は、薄型大画面テレビの一例を示した斜視図である。
図14において、薄型大画面テレビ1200は、上記実施形態の液晶装置100を用いた表示部1201と、薄型大画面テレビ本体(筐体)1202と、スピーカーなどの音声出力部1203とを備えている。
【0053】
図14に示す電子機器は、上記実施形態の液晶装置100を備えた表示部1201を備えているので、表示部における視野角の違いによって発生する表示の色づきが抑制され、高品質の表示が得られる電子機器となっている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図。
【図2】同、照明装置の概略構成を示す部分平面図。
【図3】照明装置の放射強度分布を示す図。
【図4】発光素子の構成を示す図。
【図5】VAモードの液晶パネルの画素構成を示す図。
【図6】VAモードの液晶パネルの視角特性を示す図。
【図7】VAモードの液晶パネルの明るさの分布を示す図。
【図8】VAモードの液晶パネルの中間階調における明るさの分布を示す図。
【図9】VAモードの液晶パネルの中間階調における明るさの分布を示す図。
【図10】FFS方式の液晶パネルの画素構成を示す図。
【図11】FFS方式の液晶パネルの視角特性を示す図。
【図12】FFS方式の液晶パネルと組み合わされる照明装置の放射強度分布を示す図。
【図13】散乱板の構成例を示す断面図。
【図14】電子機器の一例を示す図。
【符号の説明】
【0055】
100 液晶装置、10 液晶パネル、30 照明装置、31a、31b 発光素子、31R 赤色発光素子、31G 緑色発光素子、31B 青色発光素子、33 散乱板(散乱層)、36 光学部材、131b 第1の封止材、131c 第2の封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶パネルと、前記液晶パネルに照明光を供給する照明装置とを備えた液晶装置であって、
前記照明装置から射出される色光の放射強度分布が、前記液晶パネルにおける表示色ごとの視角特性を補償する分布であることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶パネルと、前記液晶パネルに照明光を供給する照明装置とを備えた液晶装置であって、
前記液晶パネルにおける第1の表示色の明るさの分布が前記液晶パネルの第2の表示色の明るさの分布より広く、
前記照明装置から射出される前記第1の表示色に対応する色光の放射強度分布が、前記第2の表示色に対応する色光の放射強度分布よりも狭いことを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
前記液晶パネルが垂直配向モードの液晶パネルであり、
前記照明装置の放射強度分布が、極角度が大きくなるに従って、青色光の放射強度が他の前記色光の放射強度よりも大きくなる分布であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記液晶パネルが横電界モードの液晶パネルであり、
前記照明装置の放射強度分布が、第1の方位角方向において極角度が大きくなるに従って青色光の放射強度が、他の前記色光の放射強度よりも大きくなる分布であり、
前記第1の方位角と直交する第2の方位角方向において極角度が大きくなるに従って赤色光の放射強度が、他の前記色光の放射強度よりも大きくなる分布である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記照明装置が、白色LEDからなる光源を備えており、
前記白色LEDは、発光素子と、前記発光素子を封止する封止材とを有しており、
前記封止材が、前記発光素子を中心とする極角方向において前記発光素子から射出される色光の成分毎に異なる複数の封止材を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記照明装置の前記液晶パネル側の面に光散乱層が設けられており、
前記光散乱層が、前記色光の放射強度分布を変化させる散乱分布を有することを特徴とする少なくとも2つの前記色光を互いに異なる角度分布で散乱させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記照明装置が、前記色光ごとに独立した複数の光源を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記照明装置が、複数の前記色光にそれぞれ対応するLEDからなる光源を備えており、
前記LEDの放射強度分布が前記色ごとに異なることを特徴とする請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記LEDが、発光素子と、前記発光素子を封止する封止材とを有しており、
前記封止材が、前記発光素子を中心とする極角方向において複数の異なる屈折率を有することを特徴とする請求項8に記載の液晶装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−210673(P2009−210673A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51678(P2008−51678)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】