説明

液晶装置及び電子機器

【課題】視認性の低下を抑制する。
【解決手段】液晶装置(1)は、第1基板(10)と第2基板(20)との間に挟持される液晶層(50)と、第1基板に設けられると共に、第2基板側から液晶層に入射する光を第2基板側に反射する反射層(80)とを備える反射型の液晶パネル(100)と、第2基板に対向して設けられると共に、反射層において反射された光を拡散する光拡散層(200)と、第2基板に対向して設けられると共に、液晶パネルの視野角を補償する視野角補償層(500)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば反射型の液晶装置及びこのような液晶装置を備える電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置では、例えば表示パネルである液晶パネルを構成する一対の基板間において液晶を所定の配向状態としておき、例えば画像表示領域に形成された画素部毎に、液晶に所定の電圧を印加することにより、液晶における配向や秩序を変化させて、光を変調することにより階調表示を行う。
【0003】
このような液晶装置として、反射型の液晶装置があげられる(例えば、特許文献1参照)。反射型の液晶装置では、外光が前面側の基板を通して液晶層に入射し、裏面側の基板に形成された反射板にて反射された後、再び液晶層及び前面側の基板を通過して視認される。特に、特許文献1では、広い視野角で明るい液晶装置であって且つ表示のにじみ(ボケ)や混色などをなくした液晶装置を実現するために、前面の透明基板上に、光拡散性の異なる2つの散乱層を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−249129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような散乱層を設ける反射型の液晶装置では、液晶パネルへの光の入射角度(或いは、散乱層への光の入射角度)が重要な要素となってくる。より具体的には、光源の方向等によって光の入射角度が変化することに起因して表示の明るさが変動するため、入射する光の角度等に応じてユーザが様々な方向から液晶パネルを視認することになりかねない。従って、より広視野角な液晶装置の開発が切望されている。
【0006】
本発明は、例えば上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えば広視野角の反射型の液晶装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(液晶装置)
上記課題を解決するために、本発明の液晶装置は、第1基板と第2基板との間に挟持される液晶層と、前記第1基板の前記液晶層側に設けられると共に、前記第2基板側から前記液晶層に入射する光を前記第2基板側に反射する反射層とを備える反射型の液晶パネルと、前記第2基板に対向して設けられると共に、前記反射層において反射された光を拡散する光拡散層と、前記第2基板に対向して設けられると共に、前記液晶パネルの視野角を補償する視野角補償層とを備える。
【0008】
本発明の液晶装置によれば、液晶パネルを構成する一対の基板(つまり、第1基板及び第2基板)間に挟持されている液晶分子の配向状態を、第1基板上に形成される電極(例えば、後述の画素電極)及び第2基板上に形成される電極(例えば、後述の共通電極)の夫々の電位差によって生ずる電界によって変化させることができる。特に、本発明の液晶装置では、第1基板上に反射層が設けられている。この反射層は、第1基板の液晶層側に設けられることが好ましいが、第1基板の液晶層とは反対側に設けられてもよい。このため、本発明の液晶装置は、いわゆる反射型の(或いは、半透過反射型の)液晶装置として動作する。従って、本発明の液晶装置によれば、光源(例えば、太陽や照明パネル等)から出射される光は、第2基板側から液晶パネル内部(つまり、液晶層)に入射し、その後反射層によって第2基板側に向かって反射される。これにより、反射された光がユーザによって視認されることで、ユーザは液晶装置に表示される画像を視認する。
【0009】
本発明では、第2基板に対向するように(つまり、液晶パネルの第2基板側に対向するように)光拡散層が設けられている。光拡散層は、光拡散性を有する層である。このような光拡散層は、例えば、一の入射角から入射する光を拡散し且つ前記一の入射角とは異なる他の入射角から入射する光を透過する(或いは、後方散乱する)光拡散性を有していてもよい。或いは、このような光拡散層は、入射してくる光を所望の態様で又は任意の態様で拡散させる光拡散性を有していてもよい。このため、反射層において反射された光は、光拡散層において拡散された後にユーザに視認される。これにより、広視野角で明るい液晶装置を実現することができる。
【0010】
加えて、本発明では、第2基板に対向するように(つまり、液晶パネルの第2基板側に対向するように)視野角補償層が設けられている。視野角補償層は、液晶装置の視野角を補償する機能を有する層であり、典型的には、例えば透過する光に対して所定の位相差を付与する位相差板である。このような視野角補償層は、液晶パネルの特性(例えば、動作モードや視野角等)を考慮して、適切な又は所望の視野角が液晶装置全体として実現されるように視野角を補償する機能を有することが好ましい。その結果、反射層において反射された光は、液晶装置の視野角が適切な又は所望の視野角となるように(言い換えれば、広視野角となるように)視野角補償層において適宜補償される。このため、相対的に広視野角な液晶装置を実現することができる。これにより、液晶パネルへの光の入射角度(或いは、光拡散層への光の入射角度)に依存してユーザが様々な方向から液晶パネルを視認する必要がある場合にも、液晶装置の視認性を維持することができる。或いは、液晶パネルへの光の入射角度(或いは、光拡散層への光の入射角度)を最適に設定することに起因して当該最適な入射角度に対応する所定の角度から液晶パネルを視認する必要がある場合にも、液晶装置の視認性を維持することができる。
【0011】
尚、より好ましくは、反射型の液晶パネルは、単体としても広視野角を有していることが好ましい。このような液晶パネルを視野角補償層と共に用いることで、より広視野角な液晶装置を実現することができる。尚、ここでいう「広視野角」とは、例えば、TNモードの液晶パネルの視野角と比較して広い視野角を意味する広い趣旨であるが、典型的には、ECBモードやVAモードと同等程度又はそれ以上の視野角を意味する趣旨である。
【0012】
本発明の液晶装置の一の態様では、前記視野角補償層は前記光拡散層と前記第2基板との間に設けられている。
【0013】
この態様によれば、液晶層と視野角補償層の間で、光が拡散されることがないので、液晶層を斜めの方向から見たときに生じる位相差の変化を確実に視野角補償層で補償することができる。
【0014】
本発明の液晶装置の一の態様では、前記光拡散層の前記第2基板とは反対側に偏光板が設けられ、前記光拡散層と前記偏光板の間に1/4波長板を備えている。
【0015】
この態様によれば、光拡散層によって後方に散乱された光が発生しても、偏光板と1/4波長板により吸収されるため、コントラストを高く保つことができる。
【0016】
本発明の液晶装置の一の態様では、前記液晶パネルは、ECBモードの液晶パネルであり、前記視野角補償層は、面内方向及び厚み方向の夫々において複屈折性を示す第1位相差板を含む。
【0017】
この態様によれば、ECBモードの液晶パネルと第1位相差板とを用いることで、上述した各種効果を好適に享受することができる。より具体的には、ECBモードの液晶パネルでは、電圧を液晶層に印加した場合に液晶分子の一部が厚み方向に完全に立ち上がらない場合があるが、当該厚み方向に完全に立ち上がらない液晶分子(つまり、寝ている液晶分子)による複屈折性を第1位相差板の面内方向の複屈折性によって補償し且つ当該厚み方向に駆動する液晶分子(つまり、立っている液晶分子)による複屈折性を第1位相差板の厚み方向の複屈折性によって補償することで、広視野角の液晶装置を実現することができる。
【0018】
上述の如く視野角補償層が第1位相差板を含む液晶装置の態様では、前記第1位相差板は、2軸位相差板又はOプレートであるように構成してもよい。
【0019】
このように構成すれば、3次元屈折率がnx>ny>nz(但し、nx及びnyは面内方向の屈折率を示し且つnzは厚み方向の屈折率を示す)となる2軸位相差板や液晶分子のハイブリッド配向を利用することで2軸位相差板と同様の機能を有するOプレート(例えば、いわゆるNRやNH)を第1位相差板として用いることで、上述した各種効果を好適に享受することができる。
【0020】
本発明の液晶装置の他の態様では、前記液晶パネルは、VAモードの液晶パネルであり、前記視野角補償層は、面内方向において複屈折性を示さず且つ厚み方向において複屈折性を示す第2位相差板を含む。
【0021】
この態様によれば、VAモードの液晶パネルと第2位相差板とを用いることで、上述した各種効果を好適に享受することができる。つまり、VAモードの液晶パネルでは、電圧無印加時に液晶分子が第1及び第2基板に対して略垂直となるが、当該略垂直な液晶分子による複屈折性を第2位相差板の厚み方向の複屈折性によって補償することで、広視野角の液晶装置を実現することができる。
【0022】
上述の如く視野角補償層が第2位相差板を備える液晶装置の態様では、前記第2位相差板は、ネガティブCプレートであるように構成してもよい。
【0023】
このように構成すれば、3次元屈折率がnx=ny>nzとなる(但し、nx及びnyは面内方向の屈折率を示し且つnzは厚み方向の屈折率を示す)位相差板であるネガティブCプレートを第2位相差板として用いることで、上述した各種効果を好適に享受することができる。
【0024】
(電子機器)
上記課題を解決するために、本発明の電子機器は、上述した本発明の液晶装置(但し、その各種態様を含む)を備える。
【0025】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の液晶装置(或いは、その各種態様)備えているため、上述した本発明の液晶装置が享受する各種効果と同様の効果を享受することができる。つまり、上述した本発明の液晶装置が享受する各種効果と同様の効果を享受することができる直視型表示装置(例えば、テレビ、携帯電話、電子手帳、携帯オーディオプレーヤ、ワードプロセッサ、デジタルカメラ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル等)などの各種電子機器を実現することができる。
【0026】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から更に明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係る液晶装置が備える液晶パネルを対向基板側から見た平面図である。
【図2】図1のII−II’断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶パネルの画像表示領域における回路構成を示した回路図である。
【図4】本実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す断面図である。
【図5】液晶装置が適用されたモバイル型のパーソナルコンピュータの斜視図である。
【図6】液晶装置が適用された携帯電話の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る液晶装置の実施形態を説明する。
【0029】
(1)液晶パネル
はじめに、図1から図3を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置1が備える液晶パネル100の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る液晶パネル100を対向基板20側から見た平面図であり、図2は、図1のII−II’断面図であり、図3は、本実施形態に係る液晶パネル100の画像表示領域10aにおける回路構成を示した回路図である。
【0030】
図1及び図2において、液晶装置1が備える液晶パネル100は、本発明における「第1基板」の一具体例を構成するTFTアレイ基板10、本発明における「第2基板」の一具体例を構成する対向基板20、シール部52、及び複数の端子102を備えている。
【0031】
液晶パネル100では、平面形状が各々矩形状であり、且つ相互に重なるTFTアレイ基板10及び対向基板20が互いに向い合うように対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に、液晶からなる液晶層50が封入されている。TFTアレイ基板10及び対向基板20は、画像表示領域10aの周囲に位置する領域の一部であるシール領域に設けられたシール部52により相互に接着されている。液晶層50は、液晶パネル100の駆動時において、画像信号に応じて画像のコントラスト及び液晶パネル100の透過率が可変となるように構成されている。
【0032】
TFTアレイ基板10は、画素スイッチング用TFT等の各種素子、及び配線がガラス基板等の透明な基板本体に形成されてなる。TFTアレイ基板10及び対向基板20の夫々は、シール部52によって一対の大型基板を相互に貼り合せた後、一対の大型基板からなる貼り合せ基板を、形成すべき液晶パネル100のサイズに対応する基板部分毎に分離することによって形成されている。TFTアレイ基板10及び対向基板20の夫々における液晶層50に臨む面には配向膜が形成されており、画像信号に応じて各画素部における液晶の配向状態が制御される。
【0033】
シール部52は、平面的に見て、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aを囲むように枠状に形成されている。シール部52は、両基板を貼り合わせるための、例えば、エポキシ樹脂等のシール材で構成されており、熱硬化性、若しくは光及び熱の両方によって硬化可能なシール材で構成されている。シール部52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されていてもよい。
【0034】
シール部52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、対向基板20上において、電極より上層側に配置されて形成されてもよいし、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として形成されてもよい。
【0035】
複数の端子102は、TFTアレイ基板10の基板面を規定する4辺のうち1辺に沿って延び、且つ画像表示領域10aの外側に延びる領域においてシール部52に重ならないように形成されており、画像表示領域10aを構成する画素部と、FPC(Flexible Printed Circuit)、或いは該FPCに搭載されたIC等の外部回路とを相互に電気的に接続する。
【0036】
液晶パネル100は、画像表示領域10aの周辺に位置する領域のうち、シール部52が配置されたシール領域の外側に位置する領域に形成され、且つ画像信号を画素部に供給するデータ線駆動回路101と、シール部52の内側の領域に形成され、且つ各画素部の動作をスイッチング制御する走査信号を供給する走査線駆動回路104とを備えている。但し、データ線駆動回路101が、シール部52が配置されたシール領域の内側に位置する領域に形成されてもよく、データ線駆動回路101の一部が、シール部52が配置されたシール領域に形成されてもよい。さらに、走査線駆動回路104についても同様にシール領域の外側に位置する領域に形成されてもよく、一部がシール領域に形成されてもよい。
【0037】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0038】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFT(Thin Film Transistor)や走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜16が形成されている。他方、詳細な構成については省略するが、液晶パネル100において、対向基板20に形成された共通電極21が、画素電極9aと対向するように配置されており、その上(図中下側)に配向膜22が形成されている。尚、TFTアレイ基板10及び対向基板20としては、ガラス基板、石英、プラスチック基板、或いはシリコン基板等の各種基板を使用可能である。尚、画像表示領域10aを構成し、且つマトリクス状に配列された複数の画素部の夫々において光が透過する領域は、画像表示領域10aに格子状に形成された、所謂ブラックマトリクスと称される遮光膜23によって規定されている。
【0039】
また、本実施形態では、TFTアレイ基板10上には、金属製の反射膜80が形成されている。この反射膜80は、対向基板20側から液晶パネル100内部に入射してくる光を対向基板20側へ反射させる。この反射膜80が形成されているため、本実施形態に係る液晶パネル100は、いわゆる反射型の液晶装置に用いられる。従って、本実施形態に係る液晶装置1は、反射型の液晶装置である。尚、反射層80を形成することに加えて又は代えて、金属製の画素電極9aを形成すると共に当該画素電極9aを反射層80として用いてもよい。
【0040】
次に、図3を参照しながら、液晶パネル100の画像表示領域10aにおける回路構成を説明する。
【0041】
図3において、液晶パネル100の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部72の夫々は、画素電極9a、TFT30、及び不図示の液晶素子を備えている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶パネル100の動作時に画素電極9aをスイッチング制御し、当該制御に応じて液晶素子を駆動する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0042】
TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、液晶パネル100は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板20に形成された共通電極21との間で一定期間保持される。
【0043】
液晶層50に含まれる液晶分子は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。
【0044】
(2)液晶装置
次に、本実施形態に係る液晶装置1全体の構成及び動作について図4を参照して説明する。ここに、図4は、液晶装置1の全体構成を示す断面図である。尚、図4における液晶パネル100では、説明の便宜上、図1及び図2に図示したような詳細な部材を適宜省略して図示してある。
【0045】
図4に示すように、本実施形態に係る液晶装置1は、ECB(Electrically Controlled Birefringence:電界制御複屈折)方式の反射型液晶装置であり、TFTアレイ基板10、対向基板20、液晶層50及び反射層80からなる液晶パネル100(つまり、ECB方式の反射型液晶パネル)と、液晶パネル100の視野角(或いは、液晶装置1の視野角)を補償するための視野角補償層500と、所定の入射角で入射してくる光を拡散すると共に所定の入射角以外の入射角で入射してくる光を透過する又は後方散乱する光拡散フィルム200と、入射する光に対して所定量の光学的位相差を付与する位相差板300(例えば、光の波長λの1/4の位相差を与える1/4波長板)と、一定方向に振動する光のみを透過する偏光板400とがこの順に積層された構成されている。また、視野角補償層500、光拡散フィルム200、位相差板300及び偏光板400は、液晶パネル100が備える対向基板20に対向するように設けられている。
【0046】
視野角補償層500は、厚み方向(つまり、図4中の上下方向)及び面内方向(つまり、図4中の左右方向或いは前後方向)の夫々において複屈折性を有する2軸位相差板である。つまり、視野角補償層500は、3次元屈折率がnx>ny>nz(但し、nx及びnyは面内方向の屈折率を示し且つnzは厚み方向の屈折率を示す)となる2軸位相差板である。
【0047】
本実施形態に係る液晶装置1の動作時には、例えば外部の光源(例えば、照明パネルや太陽等)から出射される光(入射光)は、先ず偏光板400及び位相差板300を透過した後に、光拡散フィルム200に入射する。ここで、光拡散フィルム200は、液晶層50とは反対側の面から入射してくる光をそのまま透過させる性質を有している(但し、設計によっては、光拡散フィルム200は、液晶層50とは反対側の面から入射してくる光を拡散する性質を有していてもよいし、その他の性質を有していてもよい)。従って、偏光板400及び位相差板300を透過した光は、光拡散フィルム200をそのまま透過する。その後、光拡散フィルム200を透過した光は、視野角補償層500を透過し他の値に液晶パネル100内に入射する。その後、液晶パネル100内に入射した光は、液晶層50によって位相差が付与された後又は付与されることなく反射層80によって反射される。
【0048】
その後、反射層80により反射された光(反射光)は、再び液晶層50を透過した後、視野角補償層500に入射する。視野角補償層500では、入射した光に対して位相差が適宜付与される。ここで、ECB方式の液晶パネル100では、電圧を液晶層50に印加した場合に液晶分子の一部が厚み方向に完全に立ち上がらない場合がある。この場合、厚み方向に完全に立ち上がらない液晶分子(つまり、寝ている液晶分子)による複屈折性は、視野角補償層500の面内方向の複屈折性によって補償される。また、厚み方向に駆動する液晶分子(つまり、立っている液晶分子)による複屈折性は、視野角補償層500の厚み方向の複屈折性によって補償される。このため、全体として広視野角な液晶装置1が実現される。
【0049】
その後、視野角補償層500を透過した反射光は、光拡散フィルム200に入射する。光拡散フィルム200は、液晶層50の側の面から入射してくる光を拡散する性質を有している(但し、設計によっては、光拡散フィルム200は、液晶層50の側の面から入射してくる光をそのまま透過する性質を有していてもよいし、その他の性質を有していてもよい)。或いは、光拡散フィルム200は、液晶層50の側の面から入射してくる光のうち所定の入射角(例えば、光拡散フィルム200の表面の法線に対して0°から50°となる入射角)で入射してくる光を拡散し、一方で液晶層50の側の面から入射してくる光のうち所定の入射角以外の入射角(例えば、光拡散フィルム200の表面の法線に対して50°から90°となる入射角)で入射してくる光をそのまま透過する(又は、後方散乱する)性質を有していることが好ましい。このような光拡散フィルム200として、例えば住友化学工業株式会社製の光制御フィルム(商品名:ルミスティ)を用いることができる。従って、反射層80において反射された後に液晶層50及び視野角補償層500を透過した光は、光拡散フィルム200によって様々な方向に向かって拡散されながら光拡散フィルム200を透過する。その後、光拡散フィルム200を透過した反射光は、位相差板300を透過し、偏光状態に応じて偏光板400を透過する又は偏光板400において遮断される。その結果、偏光板400を透過する光が存在する場合には白表示となり且つ偏光板400を透過する光が存在しない場合には黒表示となるため、画像表示が可能となる。
【0050】
このように、本実施形態では、まず、光拡散フィルム200が設けられているため、液晶装置1内に入射した光は、光拡散フィルム200において拡散される。従って、液晶装置1の広視野角を実現することができる。更には、ECBモードの液晶パネル100に対して2軸位相差板である視野角補償層500を適用しているため、液晶装置1全体としての視野角をより一層広くすることができる。これにより、液晶パネル100への光の入射角度(或いは、光拡散フィルム200への光の入射角度)に依存してユーザが様々な方向から液晶パネル100を視認する必要がある場合にも、液晶装置1の良好な視認性を好適に維持することができる。或いは、液晶パネル100への光の入射角度(或いは、光拡散フィルム200への光の入射角度)を最適に設定することで、当該最適な入射角度に対応する所定の角度から液晶パネル100を視認する必要がある場合にも、液晶装置1の良好視認性を好適に維持することができる。
【0051】
加えて、本実施形態では、視野角補償層500が、光拡散フィルム200と対向基板20との間に設けられている。このため、液晶層50と視野角補償層500の間の光路上において光が拡散されることがなくなる。これにより、液晶層50の表面に対して斜めの方向から液晶パネル100を視認したときに生じ得る位相差の変化を、視野角補償層500により確実に補償することができる。従って、液晶装置1の視認性を相対的には向上させることができる。但し、視野角補償層500は、必ずしも光拡散フィルム200と対向基板20との間に設けられていなくともよい。つまり、視野角補償層500は、光拡散フィルム200と対向基板20との間以外の箇所に設けられていてもよい。
【0052】
加えて、本実施形態では、光拡散フィルム200と偏光板400との間に位相差板300(例えば、1/4波長板)が設けられている。つまり、液晶パネル100の側から観察して、光拡散フィルム300と位相差板300と偏光板400とがこの順に積層されている。このため、光拡散フィルム200によって後方に散乱された光が発生しても、当該散乱光が偏光板400と位相差板300により吸収される。これにより、液晶パネル100のコントラストを高く保つことができる。但し、液晶パネル100の側から観察して、光拡散フィルム300と位相差板300と偏光板400とがこの順に積層されていなくともよい。
【0053】
尚、上述した説明では、2軸位相差板を視野角補償層500として用いる場合の例について説明している。しかしながら、2軸位相差板を視野角補償層500として用いることに代えて、液晶分子のハイブリッド配向を利用したOプレート(いわゆる、NRやNHと称される位相差板)を視野角補償層500として用いてもよい。この場合であっても、Oプレートは2軸位相差板と同様の機能を実現することができるため、上述した各種効果を好適に享受することができる。
【0054】
また、上述した説明では、ECB方式の液晶パネル100を用いる場合の例について説明をしている。しかしながら、ECB方式の液晶パネル100を用いることに代えて、VA(垂直配向)方式の液晶パネル100を用いてもよい。但し、VA方式の液晶パネル100を用いる場合には、2軸位相差板を視野角補償層500として用いることに代えて、3次元屈折率がnx=ny>nz(但し、nx及びnyは面内方向の屈折率を示し且つnzは厚み方向の屈折率を示す)となるネガティブCプレートを視野角補償層500として用いる。ここで、VA方式の液晶パネル100では、電圧を液晶層50に印加しない場合に液晶分子がTFTアレイ基板10の表面及び対向基板20の表面に対して略垂直となる。この場合、略垂直の液晶分子(つまり、立っている液晶分子)による複屈折性は、視野角補償層500(つまり、ネガティブCプレート)の厚み方向の複屈折性によって補償される。このため、VA方式の液晶パネル100を用いると共にネガティブCプレートを視野角補償層500として用いた場合であっても、上述した各種効果を享受することができる。
【0055】
また、上述の説明では、液晶装置1が反射型液晶装置である場合の例について説明をしている。しかしながら、反射型の液晶装置に限らず、半透過反射型の液晶装置における反射表示領域に対して上述した構成を適用してもよい。この場合であっても、上述した各種効果を享受することができる。
【0056】
(3)電子機器
続いて、図5及び図6を参照しながら、上述の液晶装置1を具備してなる電子機器の例を説明する。
【0057】
図5は、上述した液晶装置1が適用されたモバイル型のパーソナルコンピュータの斜視図である。図5において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、上述した液晶装置1を含んでなる液晶表示ユニット1206とから構成されている。
【0058】
次に、上述した液晶装置1を携帯電話に適用した例について説明する。図6は、電子機器の一例である携帯電話の斜視図である。図6において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302とともに、反射型の表示形式を採用し、且つ上述した液晶装置1と同様の構成を有する液晶装置1005を備えている。
【0059】
これらの電子機器においても、上述した液晶装置1を含んでいるため、上述した各種効果を好適に享受することができる。
【0060】
尚、図5及び図6を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0061】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう液晶装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…液晶装置、10…TFTアレイ基板、20…対向基板、80…反射層、100…液晶パネル、200…光拡散フィルム、500…視野角補償層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に挟持される液晶層と、前記第1基板の前記液晶層側に設けられると共に、前記第2基板側から前記液晶層に入射する光を前記第2基板側に反射する反射層とを備える反射型の液晶パネルと、
前記第2基板に対向して設けられると共に、前記反射層において反射された光を拡散する光拡散層と、
前記第2基板に対向して設けられると共に、前記液晶パネルの視野角を補償する視野角補償層と
を備えることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記視野角補償層は前記光拡散層と前記第2基板との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記光拡散層の前記第2基板とは反対側に偏光板が設けられ、前記光拡散層と前記偏光板の間に1/4波長板を備えることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記液晶パネルは、ECBモードの液晶パネルであり、
前記視野角補償層は、面内方向及び厚み方向の夫々において複屈折性を示す第1位相差板を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第1位相差板は、2軸位相差板又はOプレートであることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記液晶パネルは、VAモードの液晶パネルであり、
前記視野角補償層は、面内方向において複屈折性を示さず且つ厚み方向において複屈折性を示す第2位相差板を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第2位相差板は、ネガティブCプレートであることを特徴とする請求項6に記載の液晶装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−64885(P2011−64885A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214505(P2009−214505)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】