説明

液晶配向剤および液晶表示素子

【課題】保存安定性に優れ、液晶表示素子を長時間使用でも高品位な表示を持続可能な液晶配向剤を提供する。
【解決手段】液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤であって、前記テトラカルボン酸二無水物が、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を含み、このビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物に異性体の存在割合が70モル%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、保存安定性に優れ、特に耐熱性に優れる液晶配向剤、および高品位な表示が可能であり、熱ストレスによる表示劣化が抑制され、長時間駆動の可能な液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子に用いられる液晶配向膜の材料は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリエステルなどの樹脂材料が知られている。なかでもポリアミック酸またはポリイミドからなる液晶配向膜は耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などに優れており、多くの液晶表示素子に使用されている(特許文献1〜6)。
このうちポリアミック酸は、汎用の有機溶媒に対する溶解性が高いため、液晶表示素子の製造工程における印刷工程が容易な液晶配向剤を得ることができ、且つ樹脂価格が低廉であるという利点がある。しかしながら、ポリアミック酸からなる液晶配向膜を有する液晶表示素子は熱ストレスに脆弱であり、液晶表示素子を長時間駆動した際に、液晶配向膜の劣化による電圧保持率の低下が問題となっている。近年は、液晶テレビに代表されるように液晶表示素子の寿命が10年を超えることを前提に設計される。そのため、液晶表示素子を長時間駆動した場合でも高品位な表示を保つために長時間安定した電圧保持率を示すことが重要となり、配向膜の耐熱信頼性の向上が急務となっている。これまで知られている配向膜の耐熱信頼性(熱ストレス耐性)を向上する方法としては、液晶配向剤にエポキシ化合物を配合することにより液晶配向膜の化学的安定性を増加させる方法(特許文献7)、カルボン酸を有するモノマーを導入したポリアミック酸を適用することによって液晶配向膜の焼成時に分子間架橋を形成し、これにより膜の安定性を増加する方法(特許文献8)などが提案されている。しかしながら、これらの技術によると、所期の性能を発揮するためにはエポキシ化合物またはカルボン酸を多量に使用することが必要であり、液晶配向膜のリワーク性(液晶配向剤の印刷不良時の塗膜剥離の容易性)、ラビング耐性などが損なわれる場合があり、さらなる改善を要する。
一方ポリイミドを含有する液晶配向膜は、得られる液晶配向膜の熱ストレス耐性は比較的高いものの、従来知られているポリイミドは汎用の有機溶媒に対する溶解性が十分ではないため、液晶配向剤の保存安定性に問題を生ずる場合がある。
このような事情のもと、汎用の有機溶媒に対して十分な溶解性を有し、且つ熱ストレス耐性に優れる液晶配向膜を形成することができるポリアミック酸/ポリイミド系の液晶配向剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−153622号公報
【特許文献2】特開昭60−107020号公報
【特許文献3】特開平11−258605号公報
【特許文献4】特開昭56−91277号公報
【特許文献5】米国特許第5,928,733号明細書
【特許文献6】特開昭62−165628号公報
【特許文献7】特開2008−299318号公報
【特許文献8】特開2009−157351号公報
【特許文献9】特開2010−97188号公報
【特許文献10】特開平6−222366号公報
【特許文献11】特開平6−281937号公報
【特許文献12】特開平5−107544号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Org.Chem.,57,6075−6077(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、保存安定性に優れ、液晶表示素子を長時間駆動させた場合にも高品位な表示を持続することが可能な液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供することにある。
本発明の別の目的は、長時間駆動させた場合にも高品位な表示を持続することが可能な液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸二無水物が、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を含み、このビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物における下記式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
で表される異性体の存在割合が70モル%以上であることを特徴とする、前記液晶配向剤によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第2に、
上記の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶配向剤は、保存安定性に優れるとともに、液晶表示素子に用いたときにこれを長時間駆動させても高品位な表示を持続することが可能な液晶配向膜を与える。従って、かかる液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する本発明の液晶表示素子は、長時間駆動させた場合にも高品位な表示を持続することが可能である。
本発明の液晶表示素子は種々の装置に有効に適用することができ、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどなどの表示装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液晶配向剤は、上記のとおり、
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸二無水物が、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を含み、このビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物における上記式(1)で表される異性体の存在割合が70モル%以上であることを特徴とする。このような特定のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を、本明細書中で以下、「特定重合体」ということがある。
【0011】
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明における特定重合体を合成するためのテトラカルボン酸二無水物は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を含み、このビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物における上記式(1)で表される異性体の存在割合が70モル%以上である。上記式(1)で表される化合物は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−endo,3−endo,5−exo,6−exoテトラカルボン酸二無水物と命名される化合物である。
2,3,5,6位の立体構造が特定されないビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物は従来公知であった。公知のこの化合物は、上記式(1)で表される異性体と、下記式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
で表される異性体(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−exo,3−exo,5−exo,6−exoテトラカルボン酸二無水物)との、ほぼ1:1の混合物であると考えられる。しかし近年、上記式(1)で表される異性体のみを選択的に製造する方法が提案された。すなわち、非特許文献1(J.Org.Chem.,57,6075−6077(1992))によると、上記式(1)で表される化合物(異性体)は、下記スキーム1
【0014】
【化3】

【0015】
によって製造することができる。本発明者らは、液晶配向剤に含有される重合体として、上記式(1)で表される異性体の存在割合が70モル%以上であるビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物を用いて製造された特定重合体を用いることにより、得られる液晶表示素子の長時間駆動安定性が画期的に向上することを見出し、本発明に到った。このような効果は、立体非選択的な従来公知のビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の使用によっては得られない効果である。
特定重合体を合成するためのテトラカルボン酸二無水物中のビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物における上記式(1)で表される異性体の存在割合は、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。
特定重合体を合成するためのテトラカルボン酸二無水物におけるビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の使用割合(上記式(1)で表される異性体および上記式(2)で表される異性体の使用割合の合計)は、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは20モル%以上である。
従って、特定重合体を合成するためのテトラカルボン酸二無水物は、95モル%以下の範囲、好ましくは90モル%以下の範囲、より好ましくは80モル%以下の範囲で、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物以外の、その他のテトラカルボン酸二無水物を含むことができる。
【0016】
上記その他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、
特許文献9(特開2010−97188号公報)に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0017】
上記その他のテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物および4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンよりなる群から選択される少なくとも1種(以下。「特定テトラカルボン酸二無水物」という。)を含むものであることが好ましい。
上記特定テトラカルボン酸二無水物の使用割合は、上記その他のテトラカルボン酸二無水物の全体に対して、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
本発明における特定重合体を合成するためのテトラカルボン酸二無水物は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物のみからなるものであるか、あるいは
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物および特定テトラカルボン酸二無水物のみからなるものであることが好ましい。
【0018】
<ジアミン>
本発明における特定重合体を合成するために用いられるジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0019】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサンおよび下記式(A−1)
【0020】
【化4】

【0021】
(式(A−1)中、Xは炭素数1〜3のアルキレン基、−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、aは0または1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数である。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、
特許文献9(特開2010−97188号公報)に記載のジアミンを用いることができる。
【0022】
上記式(A−1)におけるXは炭素数1〜3のアルキレン基、−O−または−COO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基C2c+1−の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位または3,5−位にあることが好ましい。
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えばドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、下記式(A−1−1)〜(A−1−3)
【0023】
【化5】

【0024】
のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
上記式(A−1)において、aおよびbは、同時には0にならないことが好ましい。
上記ジアミンは、p−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルアミンおよび4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリンよりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「特定ジアミン1」という。)を含むものであることが好ましい。
また、本発明の液晶配向剤が垂直配向型(VA型)の液晶表示素子における液晶配向膜の形成に用いられるものである場合には、上記の如き特定ジアミンのほかに、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタンおよび上記式(A−1)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「特定ジアミン2」という。)をさらに含むものであることが好ましい。
本発明の液晶配向剤がVA型の垂直配向型の液晶表示素子における液晶配向膜の形成に用いられるものである場合、上記特定ジアミン1および特定ジアミン2の全ジアミンに対する好ましい使用割合は、下記のとおりである。
特定ジアミン1:好ましくは20〜97%、より好ましくは50〜95%、特に好ましくは60〜90%
特定ジアミン2:好ましくは3〜80モル%、より好ましくは5〜50%、特に好ましくは10〜40%
この場合、上記特定ジアミン1および特定ジアミン2の合計の使用割合を、全ジアミンに対して100モル%とすることが好ましい。
【0025】
一方、本発明の液晶配向剤がVA型以外の液晶表示素子(例えばTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、横電界方式(例えばIPS(In−Plane Switching)、FFS(Fringe Field Switching)など)などにおける液晶配向膜の形成に用いられるものである場合、上記特定ジアミン1および特定ジアミン2の全ジアミンに対する好ましい使用割合は、下記のとおりである。
特定ジアミン1:好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは100モル%
特定ジアミン2:好ましくは30モル%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは0モル%
この場合、ジアミンとしては、上記特定ジアミン1および特定ジアミン2の合計を100モル%とすることが好ましく、特定ジアミン1のみを使用することがより好ましい。
【0026】
<分子量調節剤>
前記ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物およびジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成してもよい。ポリアミック酸をかかる末端修飾型の重合体とすることにより、該ポリアミック酸およびこれを脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤は、本発明の効果を損なうことなくその塗布性(印刷性)がさらに向上されたものとなる。
前記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0027】
<ポリアミック酸の合成>
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノールおよびその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
【0028】
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
【0029】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒ならびにフェノールおよびその誘導体よりなる群(第1群の有機溶媒)から選択される1種以上、または前期第1群の有機溶媒から選択される1種以上とアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素および炭化水素よりなる群(第2群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第2群の有機溶媒の使用割合は、第1群の有機溶媒および第2群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに30重量%以下であることが好ましい。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。
この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離および精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0030】
<ポリイミドの合成>
前記ポリイミドは、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
本発明におけるポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、特に55%以上であることが好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、またはポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0031】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0032】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られる特定重合体は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0033】
<その他の添加剤>
本発明の液晶配向膜は、上記の如き特定重合体を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えばその他の重合体、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
【0034】
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性および電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、特定重合体以外の重合体であり、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸であって、前記テトラカルボン酸二無水物がビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を含まないか、あるいはこれを含む場合にはビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物における上記式(1)で表される異性体の存在割合が70モル%未満(好ましくは50モル%以下、より好ましくは0モル%)である前記ポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、この「他のポリアミック酸」を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、他のポリアミック酸および他のポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。
【0035】
上記他のポリアミック酸または他のポリイミドを合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、特定重合体を合成するために好ましく使用されるその他のテトラカルボン酸二無水物として上述したものと同様のものを挙げることができるが、好ましくは1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
上記他のポリアミック酸または他のポリイミドを合成するために用いられるジアミンとしては、特定重合体を合成する際に用いられるジアミンとして上記に例示したもののうちから選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。他のポリアミック酸または他のポリイミドを合成するために用いられるジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸および1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
その他の重合体の使用割合としては、重合体の合計(上記の特定重合体およびその他の重合体の合計をいう。以下同じ。)に対して好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに30重量%以下であることが好ましい。その他の重合体を使用する場合、その使用割合を重合体の合計に対して0.1重量%以上とすれば、その添加の効果が有意に発現される。
【0036】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物は、得られる液晶配向膜の基板に対する接着性および耐熱性などをさらに向上する目的で、本発明の液晶配向剤に含有されることができる。
上記エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましく、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンなどを好ましいものとして挙げることができる。
エポキシ化合物は、その使用割合が過小であると上記のような所期の効果が十分に発現されず、一方、使用割合が過大であると液晶配向膜のリワーク性およびラビング耐性が損なわれる。かかる観点からエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、30重量部以下とすることが好ましく、0.1〜15重量部とすることがより好ましく、好ましくは0.5〜8重量部とすることがさらに好ましく、特に1〜3重量部とすることが好ましい。
【0037】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
これら官能性シラン化合物の使用割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは2重量部以下、より好ましくは0.02〜0.2重量部である。
【0038】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記の如き特定重合体および必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
本発明の液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これらは単独で使用することができ、または2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜である塗膜または液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、一方固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンコート法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0040】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記の如き本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備するものである。より詳しくは、本発明の液晶表示素子は、液晶セルの両外面に偏光板を配置してなるものであって、該液晶セルは、液晶配向膜を有する基板の2枚を各液晶配向膜面が相対するように対向配置した間隙に液晶層を挟持した構成を有し、そして前記液晶配向膜が本発明の液晶配向剤から形成されたものであることを特徴とする。
かかる本発明の液晶表示素子は、例えば以下(1)ないし(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)および(3)は各動作モードに共通である。
(1)先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
【0041】
(1−1)TN型、STN型またはVA型液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が片面に設けられている基板の2枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法またはインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の片面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶媒を完全に除去し、必要に応じてポリアミック酸を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。この焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃であるポストベーク時間は好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0042】
(1−2)一方、横電界方式の液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜の一対が片面に設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の片面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。
このとき使用される基板および透明導電膜の材質、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理、液晶配向剤の塗布方法、液晶配向剤を塗布した後の加熱方法ならびに形成される塗膜の膜厚については上記(1−1)と同様である。
【0043】
(2)本発明の方法により製造される液晶表示素子がVA型の液晶表示素子である場合には、上記のようにして形成された塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、所望に応じて次に述べるラビング処理を行った後に使用に供してもよい。
一方、VA型以外の液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜とする。
ラビング処理は、上記のようにして形成された塗膜面に対し、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
さらに、上記のようにして形成された液晶配向膜に対し、例えば液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理(特許文献10(特開平6−222366号公報)および特許文献11(特開平6−281937号公報)参照)、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成したうえで先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善すること(特許文献12(特開平5−107544号公報)参照)などが可能である。
【0044】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。ここで、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交または逆平行となるように対向配置される。
液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第1の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第2の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶注入時の流動配向を除去することが望ましい。
【0045】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
前記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶などを用いることができ、これらのうちネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名C−15、CB−15(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、さらに添加して使用してもよい。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の合成例において使用した上記式(1)で表される化合物は、非特許文献1(J.Org.Chem.,57,6075−6077(1992))に記載された方法に従って上記スキーム1の経路にて合成した、異性体純度100%品である。
重合例における各重合体溶液の溶液粘度およびポリイミドのイミド化率は以下の方法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、各合成例に記載の溶媒および濃度において、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を少量分取してメタノールに投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1)で示される式によりイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 (1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、
はその他のプロトン由来のピーク面積であり、
αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0047】
<TN型液晶配向剤用重合体の合成>
[特定重合体としてのポリアミック酸の合成例]
合成例A−TN1
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物118g(0.50モル)およびピロメリット酸二無水物109g(0.50モル)ならびにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルメタン198g(1.0モル)を、N−メチル−2−ピロリドン246gおよびγ―ブチロラクトン2,213gからなる混合溶媒に溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら室温で20時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(A−TN1)を15重量%含有する溶液を得た。この溶液の溶液粘度は176mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0048】
[他のポリアミック酸の合成例]
合成例a−TN2
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物109g(0.50モル)および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物98g(0.50モル)ならびにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルメタン198g(1.0モル)を、N−メチル−2−ピロリドン230gおよびγ―ブチロラクトン2,068gからなる混合溶媒に溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら40℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(a−TN2)を15重量%含有する溶液を得た。この溶液の溶液粘度は193mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0049】
[特定重合体としてのポリイミドの合成例]
合成例B−TN1
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物118g(0.50モル)および2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン106g(0.985モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン7.8g(0.015モル)をN−メチル−2−ピロリドン3,042gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら60℃で6時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。ここで得られたポリアミック酸溶液の溶液粘度は160mPa・sであった。
得られたポリアミック酸溶液に、N−メチル−2−ピロリドン3,380gを追加し、ピリジン395gおよび無水酢酸306gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)、さらに濃縮することにより、イミド化率約94%のポリイミド(B−TN1)を10重量%含有する溶液を得た。
この溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えて濃度6重量%の溶液として測定した溶液粘度は28mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0050】
[他のポリイミドの合成例]
合成例b−TN2
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン155g(0.50モル)、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン92g(0.87モル)、ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン25g(0.10モル)および3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン13g(0.02モル)ならびにモノアミンとしてアニリン2.7g(0.030モル)をN−メチル−2−ピロリドン960gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら60℃で6時間反応を行って、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は59mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、N−メチル−2−ピロリドン2,700gを追加し、ピリジン396gおよび無水酢酸409gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなγ―ブチロラクトンで溶媒置換し、さらに濃縮することにより、イミド化率約95%のポリイミド(b−TN2)を15重量%含有する溶液約2,520gを得た。このポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度6.0重量%の溶液として測定した溶液粘度は18mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0051】
合成例b−TN3
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン106g(0.985モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン7.8g(0.015モル)をN−メチル−2−ピロリドン3,042gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。ここで得られたポリアミック酸溶液の溶液粘度は181mPa・sであった。
得られたポリアミック酸溶液に、N−メチル−2−ピロリドン3,380gを追加し、ピリジン395gおよび無水酢酸306gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、さらに濃縮することにより、イミド化率約95%のポリイミド(b−TN3)を10重量%含有する溶液を得た。
この溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えて濃度6重量%の溶液として測定した溶液粘度は35mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0052】
<VA型液晶配向剤用重合体の合成および安定性評価>
[特定重合体としてのポリイミドの合成例]
合成例B−VA1
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物118g(0.50モル)および2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)ならびにジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル52g(0.1モル)、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン49g(0.1モル)およびp−フェニレンジアミン87g(0.80モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,652gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は79mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン3,835gを追加し、ピリジン79gおよび無水酢酸102gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約51%のポリイミド(B−VA1)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は102mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0053】
合成例B−VA2
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物47g(0.20モル)および2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物180g(0.80モル)ならびにジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル105g(0.20モル)およびp−フェニレンジアミン87g(0.80モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,663gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は59mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン3,861gを追加し、ピリジン79gおよび無水酢酸102gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約47%のポリイミド(B−VA2)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は80mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0054】
合成例B−VA3
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物141g(0.60モル)および2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物90g(0.40モル)ならびにジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル105g(0.20モル)、p−フェニレンジアミン65g(0.60モル)および3,5ジアミノ安息香酸30g(0.20モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,697gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は50mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン3,939gを追加し、ピリジン119gおよび無水酢酸153gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約66%のポリイミド(B−VA3)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は79mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0055】
[他のポリイミドの合成例]
合成例b−VA4
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)ならびにジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル52g(0.10モル)、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン49g(0.10モル)およびp−フェニレンジアミン87g(0.80モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,652gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は70mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン3,835gを追加し、ピリジン79gおよび無水酢酸102gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約49%のポリイミド(b−VA4)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は80mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0056】
合成例b−VA5
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)ならびにジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル105g(0.20モル)、p−フェニレンジアミン65g(0.60モル)および3,5ジアミノ安息香酸30g(0.20モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,697gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は50mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン3,939gを追加し、ピリジン119gおよび無水酢酸153gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約67%のポリイミド(b−VA5)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は73mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0057】
<IPS型液晶配向剤用重合体の合成>
[特定重合体としてのポリアミック酸の合成例]
合成例A−IPS1
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物47g(0.20モル)およびピロメリット酸二無水物174g(0.80モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン108g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,900gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら室温で20時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(A−IPS1)を15重量%含有する溶液を得た。
この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は75mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0058】
合成例A−IPS2
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物189g(0.80モル)およびピロメリット酸二無水物44g(0.20モル)ならびにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル160g(0.80モル)およびp−フェニレンジアミン110g(0.20モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,300gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら室温で20時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(A−IPS2)を15重量%含有する溶液を得た。
この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は74mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0059】
合成例A−IPS3
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物189g(0.80モル)およびピロメリット酸二無水物44g(0.20モル)ならびにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルアミン200g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,400gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら室温で20時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(A−IPS3)を15重量%含有する溶液を得た。
この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は65mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0060】
[他のポリアミック酸の合成例]
合成例a−IPS4
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物220g(1.0モル)およびジアミンとしてp−フェニレンジアミン110g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,800gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら40℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(a−IPS4)を15重量%含有する溶液を得た。
この溶液の溶液粘度は180mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0061】
合成例a−IPS5
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物220g(1.0モル)ならびにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル160g(0.80モル)およびp−フェニレンジアミン22g(0.20モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,300gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら40℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(a−IPS5)を15重量%含有する溶液を得た。
この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は71mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0062】
合成例a−IPS6
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物200g(0.90モル)および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物20g(0.10モル)ならびにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル160g(0.80モル)およびp−フェニレンジアミン22g(0.20モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,300gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら40℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(a−IPS6)を15重量%含有する溶液を得た。
この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は77mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0063】
[特定重合体としてのポリイミドの合成例]
合成例B−IPS1
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物118g(0.50モル)および2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン86g(0.80モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン23g(0.10モ
ル)および4,4’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル32g(0.10モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,100gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら室温で20時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加え、重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は40mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,800gを追加し、ピリジン400gおよび無水酢酸310gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒をγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、次いで濃縮することにより、イミド化率約92%のポリイミド(B−IPS1)を15重量%含有する溶液2,300gを得た。この溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した粘度は36mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0064】
合成例B−IPS2
テトラカルボン酸二無水物として上記式(1)で表される化合物118g(0.50モル)および2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン97g(0.90モル)および4,4’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル32g(0.10モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,000gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら室温で20時間反応を行い、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は46mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,700gを追加し、ピリジン400gおよび無水酢酸310gを添加して撹拌しながら110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒をγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、次いで濃縮することにより、イミド化率約93%のポリイミド(B−IPS2)を15重量%含有する溶液2,300gを得た。この溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は42mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0065】
[他のポリイミドの合成例]
合成例b−IPS3
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物220g(1.0モル)を用いた以外は合成例B−IPS1と同様にしてポリアミック酸溶液を得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は48mPa・sであった。
次いで、合成例B−IPS1と同様に脱水閉環反応を行った後、系内の溶媒をγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、次いで濃縮することにより、イミド化率約93%のポリイミド(b−IPS3)を15重量%含有する溶液2,300gを得た。この溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した粘度は45mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0066】
合成例b−IPS4
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物220g(1.0モル)を用いた以外は合成例B−IPS4と同様にしてポリアミック酸溶液を得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は45mPa・sであった。
次いで、合成例B−IPS4と同様に脱水閉環反応を行った後、系内の溶媒をγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、次いで濃縮することにより、イミド化率約93%のポリイミド(b−IPS4)を15重量%含有する溶液2,300gを得た。この溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した粘度は41mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0067】
<参考合成例>
合成例A−IPS5
テトラカルボン酸二無水物として1S,2S,4R,5R−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物224g(1.0モル)およびジアミンとしてp−フェニレンジアミン108g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン1,900gに溶解し、メカニカル撹拌機を使用して撹拌しながら40℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を15重量%含有する溶液を得た。
この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は99mPa・sであった。
この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化が観察され、保存安定性は不良であった。
【0068】
<TN型液晶配向剤の調製および評価>
実施例TN−1
(I)液晶配向剤の調製
特定重合体として上記合成例A−TN1で得られたポリアミック酸(A−TN1)を含有する溶液のポリアミック酸(A−TN1)に換算して80重量部に相当する量と、その他の重合体として上記合成例b−TN2で得られたポリイミド(b−TN2)を含有する溶液のポリイミド(b−TN2)に換算して20重量部に相当する量とを合わせ、これにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(BL)およびブチルセロソルブ(BC)を、最終の溶媒組成がNMP:BL:BC=17:71:12(重量比)となるように加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを2重量部加えて、固形分濃度3.5重量の溶液を調製した。この溶液を十分に撹拌後、孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
【0069】
(II)液晶配向剤の評価
(1)TN型液晶セルの製造
上記で調製した液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数500rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行ない、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布し、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように対向させて圧着した後、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
【0070】
(2)耐熱安定性の評価
電圧保持率を指標にして熱ストレスに対する耐久性を評価した。電圧保持率の測定装置としては、(株)東陽テクニカ製、型式「VHR−1」を使用した。
上記で製造した液晶セルにつき、60℃において、液晶表示素子に5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、電圧印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した(初期電圧保持率VHR0)。
次いで、熱ストレス印加前電圧保持率測定後の液晶表示素子につき、100℃のオーブン中で1,000時間静置して熱ストレスを印加した後、上記と同様にして再び電圧保持率を測定した(熱ストレス印加後電圧保持率VHR1)。
上記で測定したVHR0およびVHR1の値を用いて、下記数式(2)
ΔVHR=VHR0−VHR1 (2)
によって熱ストレス印加前後の電圧保持率の差△VHRを求めた。この値が5%以内である場合、耐熱安定性は良好であると評価できる。
評価結果は表1に示した。
【0071】
実施例TN−2およびTN−3ならびに比較例tn−1およびtn−2
上記実施例TN−1において、特定重合体およびその他の重合体として、それぞれ表1に記載の種類および量の重合体を含有する溶液を使用し、各溶媒を、最終の溶媒組成が表1に記載のとおりとなるように加えたほかは実施例TN−1と同様にして液晶配向剤を調製して評価した。
評価結果は表1に示した。
表1中の「−」は、当該欄に該当する重合体を使用しなかったことを表す。比較例tn−1では、その他の重合体として2種の重合体を混合使用した。
表1における溶媒の略称は、それぞれ以下の意味である。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BL:γ−ブチロラクトン
BC:ブチルセロソルブ
【0072】
【表1】

【0073】
<VA型液晶配向剤の調製および評価>
実施例VA−1
(I)液晶配向剤の調製
重合体として、上記合成例B−VA1で得られたポリイミド(B−VA1)を含有する溶液に、N−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブを加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンを、使用したポリイミドの100重量部に対して5重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(重量比)、固形分濃度3.5重量%の溶液とした。この溶液孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
【0074】
(II)液晶配向剤の評価
(1)VA型液晶セルの製造
厚さ1mmのガラス基板の片面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、上記で調製した液晶配向剤をスピンナーにより塗布し、ホットプレート上80℃で1分間のプレベークを行い、次いでホットプレート上210℃で30分間ポストベークすることにより、膜厚80nmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を2枚(一対)得た。
次に、上記一対の基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外縁に、直径3.5umの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布し、一対の基板を各液晶配向膜が相対するように対向させて圧着した後、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より基板間に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、液晶セルを製造した。
【0075】
(2)耐熱安定性の評価
上記で製造した液晶セルを用いて、上記実施例TN―1と同様にして耐熱安定性の評価をした。ただし、VA型の液晶セルの場合、熱ストレス印加前後の電圧保持率の差△VHRの値が2%以内である場合に耐熱安定性は良好であると評価できる。
評価結果は表2に示した。
実施例VA−2およびVA−3ならびに比較例va−1およびva−2
上記実施例VA−1において、重合体として、それぞれ表2に記載の重合体を含有する溶液を使用したほかは実施例VA−1と同様にして液晶配向剤を調製して評価した。
評価結果は表2に示した。
表2中の「−」は、当該欄に該当する重合体を使用しなかったことを表す。
表2における溶媒の略称は、表1の場合と同様である。
【0076】
【表2】

【0077】
<IPS型液晶配向剤の調製および評価>
実施例IPS−1
(I)液晶配向剤の調製
重合体として、上記合成例A−IPS1で得られたポリアミック酸(A−IPS1)を含有する溶液に、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブを加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンを、使用したポリアミック酸の100重量部に対して5重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=80:20(重量比)、固形分濃度3.5重量%の溶液とした。この溶液孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
【0078】
(II)液晶配向剤の評価
(1)液晶セルの製造
上記で調製した液晶配向剤を用いたほかは実施例TN−1におけるのと同様にして液晶セルを製造し、耐熱安定性の評価を行った。
評価結果は表3に示した。
なお、ここで製造した液晶セルはTN型液晶セルであるが、IPS型液晶セルの耐熱安定性評価用試料としてTN型液晶セルを代替的に用いることができることを、本発明者らは経験的に確認している。
実施例IPS−2およびIPS−3ならびに比較例ips−1〜ips−3
上記実施例IPS−1において、重合体として、それぞれ表3に記載の重合体を含有する溶液を使用したほかは実施例IPS−1と同様にして液晶配向剤を調製して評価した。
評価結果は表3に示した。
【0079】
実施例IPS−4および5ならびに比較例ips−4およびips−5
上記実施例IPS−1において、重合体として、それぞれ表3に記載の重合体を含有する溶液を、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(BL)およびブチルセロソルブ(BC)を、それぞれ使用し、これらの各溶媒を最終の溶媒組成がNMP:BL:BC=10:70:20(重量比)となるように加えたほかは、実施例IPS−1と同様にして液晶配向剤を調製して評価した。
評価結果は表3に示した。
表3中の「−」は、当該欄に該当する重合体を使用しなかったことを表す。
表3における溶媒の略称は、表1の場合と同様である。
【0080】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸二無水物が、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を含み、このビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物における下記式(1)
【化1】

で表される異性体の存在割合が70モル%以上であることを特徴とする、前記液晶配向剤。
【請求項2】
上記ジアミンが、p−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルアミンおよび4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリンよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物をさらに含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成されたことを特徴とする、液晶配向膜。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。

【公開番号】特開2013−88447(P2013−88447A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225601(P2011−225601)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(597040902)学校法人東京工芸大学 (28)
【Fターム(参考)】