説明

液滴を含有する供給ガス流からそれらを分離するための遠心液滴分離器

液滴を含有する供給ガス流から液滴を分離するための遠心液滴分離器であって、
垂直縦軸及び円形横断面と、ジャケット(1)と、ジャケット(1)の上端及び下端におけるフード(2)と、ジャケット(1)における、液滴を含有する供給流の接線供給部(3)と、遠心液滴分離器内で分離された液滴のための、下部フード(2)の領域における出口突出部(4)と、遠心液滴分離器内で浄化されたガス流のための、上部フード(2)の領域におけるガス出口突出部(7)と、を有し、
洗浄液の接線方向への供給のために上部フード(2)周縁部に対称的に配置された2個以上の入口オリフィス(9)を、液滴を含有する供給ガス流の供給部と同じ方向で備えていることを特徴とする遠心分離器を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を含有する供給ガス流からそれらを分離するための遠心液滴分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクロンともまた呼ばれる遠心液滴分離器は、プロセス技術で知られており、例えば、液滴を含有するガス流から液滴を分離するために用いられる。遠心液滴分離器(サイクロン)は、一般に垂直回転軸を有する回転対称の装置であって、しばしば、主に円筒形の装置である。接線方向に分離されるべき二相性の液体/ガス混合物を供給することにより、螺旋運動が装置の内壁に沿ってその上に課され、混合物の成分は、遠心力の作用の下で、その密度の関数として分離される。より重い液滴は遠心液滴分離器の内壁でガスから分離されてその装置の下部領域に集まり、出口突出部を介して排出される。
【0003】
遠心液滴分離器では、5μm以上の平均直径を有する液滴が、好ましくは50%の確率で分離され、12μm以上の平均直径を有する液滴が99%超の確率で分離される。
【0004】
粘性及び/又は粘着性の液体、及び/又は外皮形成(encrustation)傾向にある固形物を含有する液体の場合、液滴又は固体の外皮が装置の内壁に沈着してもはや出口突出部を介して流出せず、分離の悪化と相まって結果としてファウリングを生じ、最終的に装置の氾濫をもたらすという問題が生じ得る。
【0005】
低い液体負荷のガス流から液滴を分離するための、5μm超の平均直径を有する液滴を慣性力に基づき分離する更なる装置がまた知られている。上述のサイズの液滴は、ガス流の偏向に従うことはできず、場合によっては他の滴と合体した後に、壁に衝突し、ガス流(プロセスガス)から排出される。液体の分離が上記原則に従う装置は、例えば、層状分離器、サイクロン滴分離器又はワイヤメッシュ(wire meshes)である。しかしながら、これらの装置では、沈着物は外皮の形成を結果として生じ得る。そして、沈着に関する要素が非常に短時間の沈着物により非活性化又は閉塞されるので、絶えず高い程度の沈着物が長期間に亘って得られることはない。
【0006】
一般に、上述した装置の不連続あるいは連続的な洗浄が、スプレーノズルを用いて洗浄液中で噴霧することにより行われる。しかしながら、固体が層状分離器又はワイヤメッシュの収集溝等の保護された区域に捕捉されるので、効果的な洗浄は常には保証されず、それゆえ、しばしば放出されることができない。さらに、洗浄液はガス流中に分散されなければならず、及びまた、再びそこから分離されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、上記不具合を有さない、液体/ガス混合物の分離のための遠心液滴分離器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その目的は、液滴を含有するガス流から液滴を分離するための遠心液滴分離器であって、垂直縦軸及び円形横断面と、ジャケットと、そのジャケットの上端及び下端のフードと、ジャケットにおける、液滴を含有する供給ガス流の接線方向への供給部と、遠心液滴分離器内で分離された液体のための、下部フード領域の出口突出部と、遠心液滴分離器内で浄化されたガス流のための、上部フード領域のガス出口突出部と、を有し、
洗浄液の接線方向への供給のために上部フードの周囲に対称的に配置された2個以上の入口オリフィスが、液滴を含有する供給ガス流の供給部と同じ方向で提供されることを特徴とする遠心液滴分離器によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、縦断面における本発明に係る遠心液滴分離器の概略図である。
【図2】図2は、洗浄液の入口オリフィスの領域における遠心液滴分離器の一実施形態の横断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
洗浄液での壁の完全な湿潤を達成するために、その液体は好ましくは周縁部を流れる。
【0011】
分離されるべき液滴を含有する供給ガス流の供給と同じ向きで遠心分離機の内壁上端に、運転中に洗浄液を導入することにより、高い粘性及び/又は粘着性の液体、及び/又は一個以上の固体を含有する液体でさえ、実質的に遮られない流出が可能であり、それにより、実質的に又は完全に、遠心液滴分離器の内壁上での液体の、特に、高粘性及び/又は粘着性液体の沈着を防ぐことを可能となることがわかった。本発明に従って接線方向に、それゆえ装置の内壁に、洗浄液を導入することにより、洗浄液は、分離されるべき混合物から液体が分離するその領域に直接流れ、先にその混合物から除去される必要がない。その壁の完全な湿潤が達成され、その壁の乾燥部位が回避され、それゆえ外皮形成が防止されるので、これは効率を向上させ、全体的な低エネルギー消費をもたらす。
【0012】
使用する洗浄液は、特に、供給ガス流から除去されるべき液体から容易に除去され得る液体であり、且つ、より詳細には、前述の液体と化学的に反応しない液体である。
【0013】
使用する洗浄液は、供給ガス流から除去されるべき液体のための溶媒であるか、又は供給ガス流から除去されるべきものと同じ液体であってもまた良い。
【0014】
洗浄液は、添加剤の有無に関わらず使用することができる。
【0015】
洗浄液が、化学吸着又は物理吸着の反応に加わることもまた可能である。
【0016】
使用する洗浄液は、好ましくは水であってもよい。
【0017】
洗浄液の入口オリフィスは円形断面を有していても良い。好ましい実施形態では、洗浄液の入口オリフィスは、矩形断面で構成される。
【0018】
好ましい実施形態では、下部フードは出口突出部に向かって円錐形に狭くなる。この幾何学的構成が、分離した液体の流出を容易にする。
【0019】
フラストコーン(frustocone)勾配は、液体が自由に流出するように、すなわち、比較的高粘度の液体の場合には比較的高い勾配に選択されなければならない。例えば、蜂蜜の粘度等の高粘度液体の場合には、そのコーンは非常に急勾配である。容易に流出する水のような粘度を有する物質については、コーンは必要とされない。そのような液体の除去のためには、下部フードは平らであってもまた良く、あるいは皿のような端部として構成されていても良い。
【0020】
さらに好ましい実施の形態では、好ましくは−より単純な製造のために−底部が開放された頂点コーン(apex cone)が下部フードの基部に配されており、そして、液体の均一な流出を支援して装置内で分離されるべき混合物の流れを可能な限り妨げない金属シートが、下部フードの基部でこの基部に対して垂直且つ放射状に配されている。こうして、流出しない渦が回避される。
【0021】
頂点コーンの直径は、有利に遠心液滴分離器の内径に一致する。頂点コーンは、好ましくは遠心液滴分離器内径の0.6〜0.8倍に対応する直径を有する。頂点コーンの先端の角度は、好ましくは100〜130°の間である。しかしながら、板状の実施形態−頂点コーンを有さない−もまた可能である。
【0022】
下部フードの基部で頂点コーンの基部に対して垂直且つ放射状に配置された金属シートは、より詳細には調節装置(baffles)として機能する。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、上部フードの領域でガス出口突出部の周囲に配され、底部で開放するドリップスカートで、液滴はその出口突出部を介して放出されるガス流から分離され、そして装置へと滴り戻る。
【0024】
ドリップスカートは、好ましくは、装置内へと突出したガス出口突出部の長さの1.2倍に対応する長さを有する。
【0025】
洗浄液の接線方向への供給のための2個以上の入り口オリフィスを周縁部に備えた上部フードは、ジャケットの周囲に関し、ジャケットと上部フードの間の移行部で洗浄液が流れる溝を形成するフラストコーンの形状で有利に広がっている。
【0026】
また、本発明は、垂直縦軸及び円形横断面と、ジャケットと、ジャケットの上端及び下端のフードと、ジャケットにおける、液滴を含有する供給流の接線方向への供給部と、遠心液滴分離器内で分離された液滴のための、下部フードの領域における出口突出部と、遠心液滴分離器内で浄化されたガス流のための、上部フードの領域における中央ガス出口突出部と、を有する遠心液滴分離器内で液滴を含有する供給ガス流から液滴を分離する方法であって、洗浄液が、上部フードの周縁部に接線方向に対称的に配置された2個以上の入口オリフィスを介して液滴を含有する供給ガス流と同じ方向にその上部フード領域に供給されることを特徴とする方法を提供する。
【0027】
分離されるべき供給ガス流の供給の全期間に亘って、洗浄液は連続的に供給され得る。
【0028】
本方法のさらなる実施の形態では、洗浄液は、時間間隔で断続的に供給される。
【0029】
本発明を、図面を参照して以下に詳細に説明する。
【実施例】
【0030】
具体的な図は:
図1 縦断面における本発明に係る遠心液滴分離器の概略図、及び
図2 洗浄液の入口オリフィスの領域における遠心液滴分離器の一実施形態の横断面の概略図
を示す。
【0031】
図1の縦断面図は、本発明に係る、ジャケット1、ジャケット1の上端及び下端におけるフード2、及び供給ガス流のための接線方向への供給部3を有する遠心液滴分離器の一実施の形態を示している。
【0032】
遠心液滴分離器で分離された液体を、その下部フード2の領域において出口突出部4を介して除去し、浄化したガス流を上部フード2の領域においてガス出口突出部7を介して除去する。
【0033】
好ましい実施の形態では、図示のように、頂点コーン5を、一例として下部フード2の領域に、且つ下部フードの基部に配置し、この下部フード2に対して垂直に、金属シート6を放射状に整列させる。ガス出口突出部7の回りの上部フード2の領域には、底部で開放するドリップスカート8を設けている。図1の縦断面図では、洗浄液のために接線方向に配置された入口オリフィス9を、上部フード2の領域に確認することができる。
【0034】
図2の断面図は、洗浄液9のための入口オリフィス9、一例として上部フード2の領域に接線方向に配置された3個のオリフィスを示している。この図では、接線方向への供給部3及び中央ガス出口突出部7を同様に確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を含む供給ガス流から該液滴を分離するための遠心液滴分離器であって、
垂直縦軸及び円形横断面と、ジャケット(1)と、ジャケット(1)の上端及び下端のフード(2)と、ジャケット(1)における、液滴を含有する供給ガス流の接線方向への供給部(3)と、遠心液滴分離器内で分離された液滴のための、下部フード(2)の領域における出口突出部(4)と、遠心液滴分離器内で浄化されたガス流のための、上部フード(2)の領域におけるガス出口突出部(7)と、を有し、
洗浄液の接線方向への供給のために上部フード(2)の周縁部に対称的に配置された2個以上の入口オリフィス(9)を、液滴を含有する供給ガス流の供給部と同じ方向で備えていることを特徴とする遠心分離器。
【請求項2】
頂点コーン(5)と、下部フードの基部で、該基部に対して放射状に且つ垂直に配置された金属シートとを出口突出部(4)上に備える請求項1に記載の遠心液滴分離器。
【請求項3】
上部フード(2)の領域内のガス出口突出部(7)の周囲に配置され、液滴がガス出口突出部(7)を介して流出するガス流から分離される、底部で開放するドリップスカートを備える請求項1又は2に記載の遠心液滴分離器。
【請求項4】
洗浄液の接線方向の供給のための2個以上の入口オリフィスを周縁部に備える上部フードが、ジャケット(1)の周囲に関して、ジャケット(1)と上部フード(2)の間の移行部において洗浄液が流れる溝を形成するフラストコーンの形状で広がっている請求項1〜3の何れか1項に記載の遠心液滴分離器。
【請求項5】
垂直縦軸及び円形横断面と、ジャケット(1)と、ジャケット(1)の上端及び下端のフード(2)と、ジャケット(1)における、液滴を含有する供給ガス流の接線方向への供給部(3)と、遠心液滴分離器内で分離された液滴のための、下部フード(2)の領域における出口突出部(4)と、遠心液滴分離器内で浄化されたガス流のための、上部フード(2)の領域におけるガス出口突出部(7)と、を有する請求項1〜4の何れか1項に記載の遠心液滴分離器内で液滴を含有する供給ガス流から液滴を分離する方法であって、
洗浄液を、上部フード(2)周縁部に接線方向に且つ対称的に配置された2個以上の入口オリフィスを介して液滴を含有する供給ガス流と同じ方向に供給する方法。
【請求項6】
洗浄液を連続的に供給する請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513476(P2013−513476A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543656(P2012−543656)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069521
【国際公開番号】WO2011/082975
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】